(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】織機の経糸切れ位置検出装置
(51)【国際特許分類】
D03D 51/30 20060101AFI20231031BHJP
D03D 51/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
D03D51/30
D03D51/00 Z
(21)【出願番号】P 2020074573
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】上坂 威生
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04817678(US,A)
【文献】特公昭46-30978(JP,B1)
【文献】特開平01-292149(JP,A)
【文献】米国特許第04838320(US,A)
【文献】米国特許第05551485(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 51/30
D03D 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体と絶縁された抵抗体とを有するドロッパバーと、
前記抵抗体の第1位置における第1電圧(Va)を検出する第1電圧検出部と、
前記抵抗体の第1位置に接続された第1入力抵抗と、
前記抵抗体の第2位置における第2電圧(Vb)を検出する第2電圧検出部と、
前記抵抗体の第2位置に接続された第2入力抵抗と、
経糸切れが発生したときに、前記抵抗体の第1位置と第2位置との間の範囲の前記ドロッパバー上に落下し、前記導体と前記抵抗体とを短絡させる複数のドロッパと、
前記導体と前記抵抗体とが短絡したときに前記抵抗体と前記第1入力抵抗と前記第2入力抵抗とに印加電圧(Vd)を印加する電圧印加部と、
前記第1電圧(Va)、前記第2電圧(Vb)、前記第1入力抵抗の抵抗値(Ri1 )、前記第2入力抵抗の抵抗値(Ri2)、並びに前記印加電圧(Vd)に基づき、前記抵抗体の第1位置に最も近い前記ドロッパの落下位置までの間の前記抵抗体の第1抵抗値(R2)及び前記抵抗体の第2位置に最も近い前記ドロッパの落下位置までの間の前記抵抗体の第2抵抗値(R3)を計算する抵抗値計算部と
を有する織機の経糸切れ位置検出装置。
【請求項2】
前記第1抵抗値(R2)と前記第2抵抗値(R3)との和が、前記抵抗体の第1位置から第2位置までの間の第3抵抗値(R1)と等しい場合には、1本の経糸切れが発生したことを検出し、
前記第1抵抗値(R2)と前記第2抵抗値(R3)との和が、前記第3抵抗値(R1)未満である場合には、少なくとも2本の経糸切れが発生したことを検出する
糸切れ本数判断部を有する、請求項1に記載の織機の経糸切れ位置検出装置。
【請求項3】
前記糸切れ本数判断部が、1本の経糸切れが発生したことを検出した場合には、前記第1抵抗値(R2)及び前記第2抵抗値(R3)の値より経糸切れ位置を検出し、
前記糸切れ本数判断部が、少なくとも2本の経糸切れが発生したことを検出した場合には、前記第1抵抗値(R2)及び前記第2抵抗値(R3)の値より2本の経糸切れ位置を検出する
糸切れ位置検出部を有する、請求項2に記載の織機の経糸切れ位置検出装置。
【請求項4】
前記電圧印加部は前記導体に接続され、前記第1入力抵抗及び前記第2入力抵抗は接地され、
前記ドロッパが前記ドロッパバー上に落下したとき、前記抵抗値計算部は前記第1抵抗値(R2)を
【数1】
の数式により計算し、
前記第2抵抗値(R3)を
【数2】
の数式により計算する、請求項1~3のいずれか一項に記載の織機の経糸切れ位置検出装置。
【請求項5】
前記電圧印加部は前記第1入力抵抗及び前記第2入力抵抗に接続され、前記導体は接地され、
前記ドロッパが前記ドロッパバー上に落下したとき、前記抵抗値計算部は前記第1抵抗値(R2)を
【数3】
の数式により計算し、
前記第2抵抗値(R3)を
【数4】
の数式により計算する、請求項1~3のいずれか一項に記載の織機の経糸切れ位置検出装置。
【請求項6】
経糸切れが発生したときに前記経糸切れ位置を表示する表示部を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の織機の経糸切れ位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の経糸切れ位置検出装置に関し、特に、ドロッパとドロッパバーとを有する織機の経糸切れ位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機の経糸切れ位置検出装置の1つとして、ドロッパとドロッパバーとを有する織機の経糸切れ位置検出装置が知られている。特許文献1に記載の織機の経糸切れ位置検出装置では、各経糸にドロッパが支持されており、経糸切れが発生したときにドロッパバー上にドロッパが落下し、ドロッパバーの抵抗体と導体とを短絡させることで経糸切れと経糸切れ位置とを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経糸切れによる織機の機台停止が発生した場合には、作業者が目視又はドロッパに手で触ることにより経糸切れ位置を確認して修復し、織機を再起動する。
しかしながら、特許文献1に記載の織機の経糸切れ位置検出装置では、2本以上の経糸切れが発生したことを検出することができない。そのため、2本以上の経糸切れが発生した場合は作業者が1本目の経糸切れを修復し織機を再起動しようとするときに2本目の経糸切れに気付くため、経糸切れによる織機の停止時間が長くなるという問題点を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、2本以上の経糸切れを検出可能とした織機の経糸切れ位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る織機の経糸切れ位置検出装置は、導体と、導体と絶縁された抵抗体とを有するドロッパバーと、抵抗体の第1位置における第1電圧(Va)を検出する第1電圧検出部と、抵抗体の第1位置に接続された第1入力抵抗と、抵抗体の第2位置における第2電圧(Vb)を検出する第2電圧検出部と、抵抗体の第2位置に接続された第2入力抵抗と、経糸切れが発生したときに、抵抗体の第1位置と第2位置との間の範囲のドロッパバー上に落下し、導体と抵抗体とを短絡させる複数のドロッパと、導体と抵抗体とが短絡したときに抵抗体と第1入力抵抗と第2入力抵抗とに印加電圧(Vd)を印加する電圧印加部と、第1電圧(Va)、第2電圧(Vb)、第1入力抵抗の抵抗値(Ri1 )、第2入力抵抗の抵抗値(Ri2)、並びに印加電圧(Vd)に基づき、抵抗体の第1位置に最も近いドロッパの落下位置までの間の抵抗体の第1抵抗値(R2)及び抵抗体の第2位置に最も近いドロッパの落下位置までの間の抵抗体の第2抵抗値(R3)を計算する抵抗値計算部とを有する。
【0007】
また、第1抵抗値(R2)と第2抵抗値(R3)との和が、抵抗体の第1位置から第2位置までの間の第3抵抗値(R1)と等しい場合には、1本の経糸切れが発生したことを検出し、第1抵抗値(R2)と第2抵抗値(R3)との和が、第3抵抗値(R1)未満である場合には、少なくとも2本の経糸切れが発生したことを検出する糸切れ本数判断部を有してもよい。
また、糸切れ本数判断部が、1本の経糸切れが発生したことを検出した場合には、第1抵抗値(R2)及び第2抵抗値(R3)の値より経糸切れ位置を検出し、糸切れ本数判断部が、少なくとも2本の経糸切れが発生したことを検出した場合には、第1抵抗値(R2)及び第2抵抗値(R3)の値より2本の経糸切れ位置を検出する糸切れ位置検出部を有してもよい。
また、電圧印加部は導体に接続され、第1入力抵抗及び第2入力抵抗は接地され、ドロッパがドロッパバー上に落下したとき、抵抗値計算部は第1抵抗値(R2)を
【数1】
の数式により計算し、第2抵抗値(R3)を
【数2】
の数式により計算してもよい。
また、電圧印加部は第1入力抵抗及び第2入力抵抗に接続され、導体は接地され、ドロッパがドロッパバー上に落下したとき、抵抗値計算部は第1抵抗値(R2)を
【数3】
の数式により計算し、第2抵抗値(R3)を
【数4】
の数式により計算してもよい。
また、経糸切れが発生したときに経糸切れ位置を表示する表示部を有してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抵抗体の第1位置に最も近いドロッパの落下位置までの間の抵抗体の第1抵抗値(R2)及び抵抗体の第2位置に最も近いドロッパの落下位置までの間の抵抗体の第2抵抗値(R3)を計算する抵抗値計算部とを有するため、2本以上の経糸切れ位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る織機の経糸切れ位置検出装置の第1の状態を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る織機の経糸切れ位置検出装置の第2の状態を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る織機の経糸切れ位置検出装置の第3の状態を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態2に係る織機の経糸切れ位置検出装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る経糸切れ位置検出装置の構成を示す概略図である。エアジェット織機及びウォータジェット織機等の各種織機に設けられている経糸切れ位置検出装置1は、抵抗体20と、ドロッパ22aと、導体23とを有している。抵抗体20は略一様な抵抗分布を有する金属等を織機の織幅に略等しい長さの棒状に形成した部材であり、模式的には複数の抵抗器21を直列に接続したものとして表すことができる。抵抗体20の一端から他端までの全長の抵抗値は既知の値である全長抵抗値R1である。導体23は、金属等の導体で形成された棒状部材であり抵抗体20とは絶縁された状態で設けられている。抵抗体20と導体23とは、経糸切れの検出部であるドロッパバーを構成している。なお、全長抵抗値R1は第3抵抗値である。
【0011】
ドロッパ22aは金属等の導体で形成された縦長の薄板状部材であり、抵抗体20及び導体23を挿入可能な孔を有している。ドロッパ22aは孔に抵抗体20及び導体23が挿入された状態で、抵抗体20及び導体23に接触しないように図示しない経糸により支持されている。これにより、経糸が切れていないときには抵抗体20と導体23とは絶縁された状態に保たれている。また、ドロッパ22aは支持している経糸が切れた場合に、抵抗体20の一端と他端との間の範囲で抵抗体20と導体23との上に落下し、抵抗体20と導体23とを短絡させることができるように構成されている。
【0012】
抵抗体20の一端には、第1電圧検出器30aと、第1入力抵抗31aの一方の端子とが接続されている。また、抵抗体20の他端には、第2電圧検出器30bと、第2入力抵抗31bの一方の端子とが接続されている。第1入力抵抗31a及び第2入力抵抗31bの他方の端子はそれぞれ接地されている。第1入力抵抗31aの抵抗値はRi1であり、第2入力抵抗31bの抵抗値はRi2である。抵抗値Ri1及びRi2は、あらかじめ設定された既知の値である。また、この実施の形態1においては、Ri1とRi2とは同じ値である。第1電圧検出器30aは第1電圧検出部を、第2電圧検出器30bは第2電圧検出部を構成している。また、抵抗体20の一端は、抵抗体20の第1位置を構成しており、抵抗体20の他端は抵抗体20の第2位置を構成している。
【0013】
第1電圧検出器30a及び第2電圧検出器30bは、経糸切れ位置検出装置1が設けられた織機全体の動作を制御する織機制御部32に電気的に接続されている。第1電圧検出器30a、第1入力抵抗31a、第2電圧検出器30b、第2入力抵抗31bとは検出回路を構成している。
【0014】
織機制御部32は、抵抗値計算部35、糸切れ本数判断部36及び糸切れ位置検出部37を有している。抵抗値計算部35は、第1電圧検出器30a及び第2電圧検出器30bに電気的に接続されている。また、糸切れ本数判断部36及び糸切れ位置検出部37は、抵抗値計算部35に電気的に接続されている。後に詳しく説明するように、抵抗値計算部35はドロッパ22aの落下位置に対応する抵抗値を計算し、糸切れ本数判断部36は抵抗値計算部35が計算する抵抗値に基づいて経糸切れの本数を検出する。また、糸切れ位置検出部37は、抵抗値計算部35が計算する抵抗値に基づいて経糸切れの位置を検出する。
【0015】
織機制御部32には、表示装置38が電気的に接続されている。表示装置38はタッチパネルであり、作業者に対し織機の運転状態を表示し、また作業者が画面に触れて操作することで織機を操作することができる。表示装置は表示部を構成している。なお、表示装置38はタッチパネルとしての機能を有さないモニタ等の表示装置であってもよく、その場合には、作業者が織機の運転操作を行うための操作装置を別途設けることが望ましい。
【0016】
導体23には、検出回路電源34が接続されている。検出回路電源34は直流電源であり、電圧Vdを導体23に印加する。検出回路電源34は電圧印加部を構成している。
【0017】
次に、この実施の形態1に係る経糸切れ位置検出装置1の動作を説明する。織機運転中に経糸切れが発生していない場合には、ドロッパ22aを含む各ドロッパは経糸に支持されているため抵抗体20と導体23とは絶縁された状態に保たれている。このときには抵抗体20には電圧が印加されていないため第1電圧検出器30aの検出する電圧Va(第1電圧)と第2電圧検出器30bの検出する電圧Vb(第2電圧)とは0であり、織機制御部32の抵抗値計算部35は抵抗値を計算しない。そのため、糸切れ本数判断部36は経糸切れが発生していないと判断する。
【0018】
次に、織機運転中に1本の経糸の経糸切れが発生した場合には、ドロッパ22aが経糸による支持を失いドロッパバー上、すなわち抵抗体20及び導体23上に落下する。ドロッパ22aは抵抗体20及び導体23を短絡させる。ドロッパ22aが抵抗体20及び導体23を短絡させると、電圧Vdが抵抗体20に印加される。
【0019】
このとき、抵抗体20の一端からドロッパ22aの落下位置までの長さに対応する抵抗体20の抵抗値を第1抵抗値R2とする。第1電圧検出器30aが検出する電圧Vaは、抵抗体20に印加される電圧Vdを、第1抵抗値R2と第1入力抵抗31aの抵抗値Ri1とで分圧した値となる。すなわち、電圧Vaは以下の式で表される。
【数5】
【0020】
また、このとき抵抗体20の他端からドロッパ22aの落下位置までの長さに対応する抵抗体20の抵抗値を第2抵抗値R3とする。第2電圧検出器30bが検出する電圧Vbは、抵抗体20に印加される電圧Vdを、第2抵抗値R3と第2入力抵抗31bの抵抗値Ri2とで分圧した値となる。すなわち、電圧Vbは以下の式で表される。
【数6】
【0021】
次に上記の式を第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3について変形すると、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3は以下の式により表される。
【数7】
【数8】
織機制御部32の抵抗値計算部35は、上記の式により第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3の値を計算する。そして、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が、既知の値である抵抗体20の全長における全長抵抗値R1と等しいとき、すなわち
【数9】
であるときには、織機制御部32の糸切れ本数判断部36は、はドロッパのうち1つのドロッパ22aのみが落下しており、1本の経糸について経糸切れが発生していると判断する。そして、織機制御部32は織機の運転を停止する。
【0022】
また、織機制御部32の糸切れ位置検出部37は、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3の値から織幅全体に対するドロッパ22aの落下位置、すなわち経糸切れの発生位置を検出する。そして、織機制御部32は、糸切れ本数判断部36が判断した経糸切れの発生本数と、糸切れ位置検出部37が検出した経糸切れの発生位置とに基づいて、表示装置38に経糸切れの発生本数と経糸切れの発生位置とを表示させる。なお、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が全長抵抗値R1と等しいか否かを判断するとき及び経糸切れの発生位置を検出するときには、予め知られている全長抵抗値R1、第1抵抗値R2、第2抵抗値R3、第1入力抵抗31aの値Ri1及び第2入力抵抗31bの値Ri2等の誤差を考慮する。例えば、全長抵抗値R1の値を誤差を考慮した一定の範囲とし、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和がその範囲内であれば全長抵抗値R1と等しいと判断してもよい。すなわち、この実施の形態1において第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が全長抵抗値R1と等しいとは、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が全長抵抗値R1とほぼ等しい場合を含む。
【0023】
次に、
図2に示すように織機運転中に2本の経糸切れが発生した場合には、ドロッパ22a及びドロッパ22bが抵抗体20及び導体23上に落下する。ドロッパ22a及びドロッパ22bは、抵抗体20及び導体23を短絡させる。ドロッパ22a,22bが抵抗体20及び導体23を短絡させると、電圧Vdが抵抗体20に印加される。
【0024】
このとき第1電圧検出器30aが検出する電圧Vaは、以下の式で表されるように、抵抗体20に印加される電圧Vdを抵抗体20の一端からドロッパ22aの落下位置までの長さに対応する第1抵抗値R2と、第1入力抵抗31aの抵抗値Ri1とで分圧した値となる。
【数10】
【0025】
また、このとき抵抗体20の他端からドロッパ22bの落下位置までの長さに対応する抵抗体20の抵抗値を第2抵抗値R3aとする。第2電圧検出器30bが検出する電圧Vbは、抵抗体20に印加される電圧Vdを、第2抵抗値R3aと第2入力抵抗31bの抵抗値Ri2とで分圧した値となる。すなわち、電圧Vbは以下の式で表される。
【数11】
【0026】
そして、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3aは以下の式により表される。
【数12】
【数13】
このとき、抵抗体20の一端からドロッパ22aの落下位置までの長さと、抵抗体20の他端からドロッパ22bの落下位置までの長さとの和は抵抗体20の全長より短くなる。すなわち、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3aとの和は、抵抗体20の全長抵抗値R1よりも小さくなる。すなわち、全長抵抗値R1、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3aの関係は以下の式で表される。
【数14】
【0027】
また、
図3に示すように織機運転中に3本の経糸切れが発生した場合には、3つのドロッパ22a,22b,22cが抵抗体20及び導体23上に落下する。このときはドロッパ22a,22b,22cが抵抗体20及び導体23を短絡させる。そして、2本の経糸切れが発生した場合と同様に、第1電圧検出器30aが検出する電圧Vaは、抵抗体20に印加される電圧Vdを第1抵抗値R2と、第1入力抵抗31aの抵抗値Ri1とで分圧した値となる。また、第2電圧検出器30bが検出する電圧Vbは、抵抗体20に印加される電圧Vdを第2抵抗値R3aと、第2入力抵抗31bの抵抗値Ri2とで分圧した値となる。そして、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3aとの和は、抵抗体20の全長抵抗値R1よりも小さくなる。さらに、4本以上の経糸切れが発生した場合も3本の経糸切れが発生した場合と同じである。
【0028】
したがって、織機制御部32の抵抗値計算部35が計算した第1抵抗値R2と第2抵抗値R3aとの和が全長抵抗値R1よりも小さい場合には、ドロッパのうち少なくとも2つのドロッパ22a,22bが落下しているため、糸切れ本数判断部36は少なくとも2本の経糸について経糸切れが発生していると判断する。そして、織機制御部32は織機の運転を停止する。また、糸切れ位置検出部37は第1抵抗値R2、第2抵抗値R3aの値から織幅全体に対する外側のドロッパ22a,22bの落下位置、すなわち経糸切れの発生位置を検出する。そして、織機制御部32は、糸切れ本数判断部36が判断した経糸切れの発生本数と糸切れ位置検出部37が検出した経糸切れの発生位置とを表示装置38に表示させる。なお、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が全長抵抗値R1と等しいと判断するときと同じように、経糸切れが発生したこと及び経糸切れの発生した位置を判断するときには、予め知られている全長抵抗値R1、第1抵抗値R2、第2抵抗値R3a、第1入力抵抗31aの抵抗値Ri1及び第2入力抵抗31bの抵抗値Ri2等の値の誤差を考慮する。
【0029】
この実施の形態1の織機の経糸切れ位置検出装置は、2本以上の経糸切れが発生した場合に2本の経糸切れが発生したことが検出可能であることにより、作業者が初めから2本の経糸切れ箇所があることを知ることができるため、作業者が1本目の経糸切れを修復し織機を再起動しようとするときにはじめて2本目の経糸切れに気付くという可能性が低減され、作業者の作業効率を向上させることができる。また、複数本の経糸切れが発生した場合であっても、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3から経糸切れ本数及び経糸切れ位置を求めることができる。
【0030】
このように、導体23と、導体23と絶縁された抵抗体20とを有するドロッパバーと、抵抗体20の第1位置における第1電圧Vaを検出する第1電圧検出器30aと、抵抗体20の第1位置に接続された第1入力抵抗31aと、抵抗体20の第2位置における第2電圧Vbを検出する第2電圧検出器30bと、抵抗体20の第2位置に接続された第2入力抵抗31bと、経糸切れが発生したときに、抵抗体20の第1位置と第2位置との間の範囲のドロッパバー上に落下し、導体23と抵抗体20とを短絡させる複数のドロッパ22a,22b,22cと、導体23と抵抗体20とが短絡したときに抵抗体20と第1入力抵抗31aと第2入力抵抗31bとに印加電圧Vdを印加する検出回路電源34と、第1電圧Va、第2電圧Vb、第1入力抵抗31aの抵抗値Ri1、前記第2入力抵抗31bの抵抗値Ri2、並びに印加電圧Vdに基づき、抵抗体20の第1位置に最も近いドロッパ22aの落下位置までの間の抵抗体20の第1抵抗値R2及び前記抵抗体の第2位置に最も近いドロッパ22bの落下位置までの間の抵抗体20の第2抵抗値R3を計算する抵抗値計算部35とを有するため、2本以上の経糸切れが生じた場合であっても2本の経糸切れを検出することができる。
【0031】
また、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が、抵抗体20の第1位置から第2位置までの間の第3抵抗値R1と等しい場合には、1本の経糸切れが発生したことを検出し、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が、第3抵抗値R1未満である場合には、少なくとも2本の経糸切れが発生したことを検出する糸切れ本数判断部36を有するため、複数本の経糸切れが発生した場合であっても、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3より経糸切れの本数を求めることができる。
【0032】
また、糸切れ本数判断部36が、1本の経糸切れが発生したことを検出した場合には、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3の値より経糸切れ位置を検出し、糸切れ本数判断部36が、少なくとも2本の経糸切れが発生したことを検出した場合には、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3の値より2本の経糸切れ位置を検出する糸切れ位置検出部37を有するため、複数本の経糸切れが発生した場合であっても、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3より経糸切れの位置を求めることができる。
【0033】
また、電圧印加部は導体23に接続され、第1入力抵抗31a及び第2入力抵抗31bは接地され、ドロッパ22a,22bがドロッパバー上に落下したとき、抵抗値計算部35は第1抵抗値R2を
【数15】
の数式により計算し、
第2抵抗値R3及びR3aを
【数16】
【数17】
の数式により計算するため、経糸切れが1本の場合でも経糸切れを検出可能であり、さらに2本以上の経糸切れが生じた場合であっても経糸切れが1本の場合と同様の精度で2本の経糸切れ位置を検出することができる。
【0034】
また、経糸切れが発生したときに経糸切れ位置を表示する表示装置38を有するため、作業者が容易に経糸切れ発生と経糸切れ位置とを確認することが可能となり、作業者の作業効率が向上する。
【0035】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の
図1~
図3の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。この実施の形態2は、実施の形態1に対して検出回路電源及び第1,第2入力抵抗31a,31bの接続を変更したものである。
【0036】
図4に示すように、経糸切れ位置検出装置1の抵抗体20の一端には第1入力抵抗31aの一方の端子が接続され、抵抗体20の他端には第2入力抵抗31bの一方の端子が接続されている。第1入力抵抗31aの他方の端子及び第2入力抵抗31bの他方の端子には、検出回路電源34が接続されている。導体23は接地されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0037】
次に、この実施の形態2における経糸切れ位置検出装置1の動作について説明する。
織機の運転中には、検出回路電源34より第1入力抵抗31a及び第2入力抵抗31bに電圧Vdが印加されている。経糸切れが発生しドロッパ22aが抵抗体20及び導体23上に落下すると、抵抗体20と導体23とが短絡する。このときの第1電圧検出器30aで検出される電圧Vaは、電圧Vdを第1入力抵抗31aの抵抗値Ri1と抵抗体20の一端からドロッパ22aの落下位置までの長さに対応する第1抵抗値R2とで分圧した値となる。すなわち、電圧Vaは以下の式で表される。
【数18】
【0038】
また、第2電圧検出器30bが検出する電圧Vbは、電圧Vdを第2入力抵抗31bの抵抗値Ri2と抵抗体20の他端からドロッパ22aの落下位置までの長さに対応する第2抵抗値R3とで分圧した値となる。すなわち、電圧Vbは以下の式で表される。
【数19】
【0039】
よって、第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3は以下の式で表される。
【数20】
【数21】
【0040】
織機制御部32の抵抗値計算部35は、第1抵抗値R2、第2抵抗値R3の値を計算する。第1抵抗値R2と第2抵抗値R3との和が、既知の値である抵抗体20の全長における全長抵抗値R1と等しいとき、すなわち
【数22】
であるときには、織機制御部32の糸切れ本数判断部36は、ドロッパのうち1つのドロッパ22aのみが落下しており、経糸切れは1本であると判断する。そして、織機制御部32は織機の運転を停止する。また、織機制御部32の糸切れ位置検出部37は、第1抵抗値R2,第2抵抗値R3の値から織幅全体に対するドロッパ22aの落下位置、すなわち経糸切れの発生位置を検出する。そして、織機制御部32は表示装置38に経糸切れの発生と経糸切れの発生位置とを表示させる。
【0041】
また、実施の形態1の
図2と同様に2本の経糸切れが発生しドロッパ22a,22bが落下した場合の、抵抗体20の一端からドロッパ22aの落下位置までの第1抵抗値R2と、抵抗体20の他端からドロッパ22bの落下位置までの第2抵抗値R3aとは以下の式で表される。
【数23】
【数24】
そして、抵抗体20の一端からドロッパ22aの落下位置までの長さと、抵抗体20の他端からドロッパ22bの落下位置までの長さとの和は抵抗体20の全長より短くなる。すなわち、第1抵抗値R2と第2抵抗値R3aとの和は、抵抗体20の全長抵抗値R1よりも小さくなる。したがって全長抵抗値R1と第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3aとの関係は以下の式で表される。
【数25】
このとき、織機制御部32の糸切れ本数判断部36は、ドロッパのうち少なくとも2つのドロッパ22a,22bが落下しており、少なくとも2本の経糸切れが発生していると判断する。そして、織機制御部32は、織機の運転を停止する。また、織機制御部32の糸切れ位置検出部37は、は第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3aの値から織幅全体に対する外側のドロッパ22a,22bの落下位置、すなわち経糸切れの発生位置を検出する。そして、織機制御部32は表示装置38に経糸切れの発生と経糸切れの発生位置とを表示させる。
図3に示すように3本以上の経糸切れが発生したときも、2本の経糸切れが発生した場合と同じである。
【0042】
このように、電圧印加部は第1入力抵抗31a及び第2入力抵抗31bに接続され、導体23は接地され、ドロッパ22a,22bがドロッパバー上に落下したとき、抵抗値計算部35は第1抵抗値R2を
【数26】
の数式により計算し、
第2抵抗値R3及びR3aを
【数27】
【数28】
の数式により計算するため、実施の形態1に対して検出回路電源及び第1,第2入力抵抗31a,31bの接続を変更したものであっても、実施の形態1と同様に複数本の経糸切れの発生を検知することができ、また複数本の糸切れであっても第1抵抗値R2及び第2抵抗値R3から経糸切れ本数及び経糸切れ位置を求めることができる。
【0043】
なお、この発明の実施の形態1及び2においては第1入力抵抗31aの抵抗値Ri1及び第2入力抵抗31bの抵抗値Ri2は同じ値であったが、第1入力抵抗31a及び第2入力抵抗31bの値があらかじめ知られていれば違う値であってもよい。
【0044】
また、この発明の実施の形態1及び2においては抵抗体20の一端が第1位置であり、抵抗体20の他端が第2位置であったが、第1位置は抵抗体20の一端ではなく抵抗体20の中央側に近づいた位置であってもよいし、第2位置は抵抗体20の他端ではなく抵抗体20の中央側に近づいた位置であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
20 抵抗体、22a,22b,22c ドロッパ、23 導体、30a 第1電圧検出器(第1電圧検出部)、30b 第2電圧検出器(第2電圧検出部)、31a 第1入力抵抗、31b 第2入力抵抗、34 検出回路電源(電圧印加部)、35 抵抗値計算部、36 糸切れ本数判断部、37 糸切れ位置検出部、R1 全長抵抗値(第3抵抗値)、R2 第1抵抗値、R3,R3a 第2抵抗値、Va 第1電圧、Vb 第2電圧、Vd 印加電圧。