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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/114 20060101AFI20231031BHJP
   A01B 33/12 20060101ALI20231031BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20231031BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20231031BHJP
   B60W 30/182 20200101ALI20231031BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20231031BHJP
【FI】
A01B63/114
A01B33/12 B
A01B69/00 303A
B60W50/10
B60W30/182
B60W50/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020101251
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021193898
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
(72)【発明者】
【氏名】高野 重幸
(72)【発明者】
【氏名】三輪田 克志
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-262415(JP,A)
【文献】特開2007-092807(JP,A)
【文献】特開2017-201911(JP,A)
【文献】特開2017-136023(JP,A)
【文献】特開2002-354905(JP,A)
【文献】特開2000-184804(JP,A)
【文献】特開平05-304802(JP,A)
【文献】特開平10-028408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0292179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/114
A01B 33/12
A01B 69/00
B60W 50/10
B60W 30/182
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に昇降自在に取り付けられ、圃場を耕耘する作業機と、
前記走行車体の位置を測定する車両測位装置と、
前記作業機の昇降位置を測定する作業機測位装置と、
前記作業機の後部を覆うリヤカバーと、
前記リヤカバーの位置を検出するリヤカバーセンサと、
前記作業機の昇降位置を制御する制御装置と、
耕深を調整する耕深調整ダイヤルと、を備え、
前記制御装置は、
前記作業機測位装置により得られる測位情報に基づいて前記作業機の昇降位置を所定の高さ基準値に維持する制御を行う測位制御モードと、前記リヤカバーセンサの検知結果に基づいて前記耕深調整ダイヤルで設定された耕深基準値で前記耕深が維持されるように前記作業機の昇降位置を制御するカバー制御モードとを、運転者の切替操作に応じて切り替え
前記カバー制御モードで作業した際に前記作業機測位装置により得られる前記昇降位置の平均値を前記高さ基準値に設定し、
前記測位制御モードに切り替わった場合に、前記リヤカバーが最初に接地を検知したときの前記作業機測位装置に基づく高さに応じた耕深を、前記測位制御モードの耕深調整ダイヤルにおける最浅位置の前記耕深基準値とすること
を特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両(例えば、農業用トラクタ)では、牽引する均平板を昇降可能に取付け、均平板と共に上下する3次元測位装置により、圃場等の区画内の高低位置を測定して基準高さを演算・記憶するとともに基準高さに均平板を保持し、高いところの土を低いところに運土することで区画全体を均平にする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-262773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の3次元測位装置により作業機の高さを制御する場合に加えて、例えば、耕耘作業機では、作業機の後部を覆うリヤカバーの回動角度を検出して耕耘深さを監視し、地面に対する耕耘深さを任意の深さに保持するシステムが併用される場合には、測位装置による昇降制御とリヤカバーによる昇降制御とを切り替える必要があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、測位装置による昇降制御とリヤカバーによる昇降制御とを切り替えることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、走行車体(2)と、前記走行車体(2)に昇降自在に取り付けた作業機(W)と、前記走行車体(2)の位置を測定する車両測位装置(30)と、前記作業機(W)の昇降位置を測定する作業機測位装置(31)と、前記作業機(W)の後部を覆うリヤカバー(40b)と、前記リヤカバー(40b)の位置を検出するリヤカバーセンサ(28)と、前記作業機(W)の昇降位置を制御する制御装置(40)と、を備え、前記制御装置(40)は、前記作業機測位装置(31)により得られる測位情報に基づいて前記作業機(W)の昇降位置を制御する測位制御モードと、前記リヤカバーセンサ(28)の検知結果に基づいて前記作業機(W)の昇降位置を制御するカバー制御モードとを、運転者の切替操作に応じて切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、測位装置による昇降制御とリヤカバーによる昇降制御とを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る作業車両の説明図であり、作業車両の概略左側面図である。
図2図2は、作業車両の制御系の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る制御装置の制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係る制御装置の制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る制御装置の制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、図1を参照して実施形態に係る作業車両1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1の説明図であり、作業車両1の概略左側面図である。なお、以下では、作業車両1としてトラクタを例に説明する。
【0011】
作業車両であるトラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクタである。また、トラクタ1は、操縦者(作業者ともいう。)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行する他、後述する制御装置40(図2参照)を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自動走行しながら所定の作業を実行する。
【0012】
また、以下において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクタ1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席8からステアリングホイール9に向かう方向である。
【0013】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、トラクタ1の操縦者が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0014】
上下方向とは、鉛直方向に平行する方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。なお、各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、トラクタ1を指して「機体」という場合がある。
【0015】
図1に示すように、トラクタ1は、走行車体2と、作業機Wとを備える。走行車体2は、車体フレーム3と、前輪4と、後輪5と、ボンネット6と、エンジンEと、操縦部7と、ミッションケース10とを備える。車体フレーム3は、走行車体2のメインフレームである。
【0016】
前輪4は、左右一対であり、主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪5は、左右一対であり、主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。トラクタ1は、後輪5が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪4および後輪5が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されてもよい。この場合、駆動輪は、前輪4および後輪5の両方である。なお、走行車体2は、車輪(前輪4および後輪5)に代えてクローラ装置を備えてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
【0017】
ボンネット6は、走行車体2の前部において開閉自在に設けられる。ボンネット6は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能である。ボンネット6は、閉じた状態で、車体フレーム3上に搭載されたエンジンEを覆う。エンジンEは、トラクタ1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
【0018】
操縦部7は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席8やステアリングホイール9などを備える。操縦部7は、走行車体2の上部に設けられたキャビン7aに覆われることで形成されてもよい。操縦席8は、操縦者の座席である。ステアリングホイール9は、操舵輪である前輪4を操舵する場合に操縦者により操作される。なお、操縦部7は、ステアリングホイール9の前方に、各種情報を表示する表示部(メータパネル)を備える。
【0019】
また、操縦部7は、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバーなどの各種操作レバーや、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどの各種操作ペダルを備える。
【0020】
ミッションケース10は、トランスミッション(変速機構)を収容している。トランスミッションは、エンジンEから伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪である後輪5や、PTO(Power Take-off)軸50へ伝達する。
【0021】
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業機Wが連結され、作業機Wを駆動する動力を伝達するPTO軸50がミッションケース10から後方へ突出している。PTO軸50は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の少なくとも後部に装着された作業機Wへ伝達する。
【0022】
また、走行車体2の後部には、作業機Wを昇降させる昇降装置12が設けられる。昇降装置12は、作業機Wを上昇させることで、作業機Wを非作業位置に移動させる。非作業位置は、例えば、走行車体2が後退する場合や、走行車体2が旋回する場合、トラクタ1が路上を走行する場合に、作業機Wを上昇させる位置である。また、昇降装置12は、作業機Wを下降させることで、作業機Wを対地作業位置に移動させる。昇降装置12は、油圧式の昇降シリンダ121と、リフトアーム122と、リフトロッド123と、ロアリンク124と、トップリンク125とを備える。
【0023】
リフトアーム122は、昇降シリンダ121に作動油が供給されると、回動支点となる軸AXまわりに作業機Wを上昇させるように回動し、昇降シリンダ121から作動油が排出されると、軸AXまわりに作業機Wを下降させるように回動する。なお、リフトアーム122の基部(軸AX付近)には、リフトアーム122の回動角度を検知するリフトアームセンサ26が設けられる。作業機Wの高さは、リフトアームセンサ26の検知結果や、測位装置30,31の測位情報に基づいて算出される。
【0024】
また、リフトアーム122は、リフトロッド123を介してロアリンク124に連結される。リフトロッド123は、複動式の水平制御用油圧シリンダを含み、かかる水平制御用油圧シリンダの伸縮によって、作業機Wの左右片方が上げ下げ操作される。また、トップリンク125は、トップリンクブラケット125aを介して作業機Wに接続される。このように、昇降装置12は、ロアリンク124とトップリンク125とで、走行車体2に対して作業機Wを昇降可能に連結する。また、ロアリンク124の基端(リフトロッド123の連結部と反対側)である回動軸には、ロアリンクセンサ27が設けられており、作業機Wの高さは、ロアリンクセンサ27の検知結果に基づいて算出されてもよい。なお、ロアリンクセンサ27は省略されてもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、作業機Wがロータリ耕耘機である場合を例にとって示している。作業機Wとしてのロータリ耕耘機は、耕耘爪61と、ロータリカバー40aと、リヤカバー40bとを備える。耕耘爪61は、PTO軸50から動力を受けて回転し、土壌を耕起する。ロータリカバー40aは、耕耘爪61の上方を覆う。リヤカバー40bは、ロータリカバー40aの後部に上下方向へ回転可能に設けられる。また、リヤカバー40bの基端(ロータリカバー40a側)には、リヤカバーセンサ28が設けられている。
【0026】
後述する制御装置40は、リヤカバーセンサ28の検出値、または、後述する測位装置31の測位情報に基づいてリフトアーム122を回動することによって作業機Wの高さを変更させる。
【0027】
また、トラクタ1は、制御装置40(図2参照)を備える。制御装置40は、エンジンEを制御するとともに、走行車体2の走行速度を制御する。また、制御装置40は、作業機Wを制御する。
【0028】
また、トラクタ1は、2つの測位装置30,31を備える。測位装置30は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時を行うことができる。
【0029】
測位装置30は、走行車体2(キャビン7a)の上部に設けられ、走行車体2の上下位置(高さ位置)を含む3次元位置を測定する。
【0030】
測位装置31は、トップリンクブラケット125aを介して作業機Wに設けられ、作業機Wの上下位置(高さ位置)を含む3次元位置を測定する。このように、測位装置31は、トップリンク125aに設けられることで、測位装置31の着脱を容易化できる。また、測位装置31は、耕耘爪61の回転軸中心の真上(回転軸と上下方向で直線状に並ぶ位置)に設けられる。これにより、耕耘位置を高精度に測定することができる。なお、測位装置31は、作業機Wの左右方向の両端それぞれに設けられることが好ましい。これにより、トラクタ1のローリング(左右方向の傾き)により生じる高低差を考慮した制御が可能となる。
【0031】
なお、以下では、測位装置30を車両測位装置30と称し、測位装置31を作業機測位装置31と称する。
【0032】
また、トラクタ1は、作業者による情報処理端末(タブレット端末などの携帯端末)100の操作によって、特定の圃場における各種作業の設定などを行うことができる。情報処理端末100は、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部と、タッチパネルにより構成される表示部および操作部とを備える。なお、操作部として、各種キーやボタンなどが別に設けられてもよい。
【0033】
また、トラクタ1は、障害物センサ20を備える。障害物センサ20は、前方センサ21と、後方センサ22とを備える。前方センサ21は、たとえば、ボンネット6の前方に設けられたセンサ取付ステー13に取り付けられるなど、走行車体2の前部に配置され、走行車体2の前方に存在する障害物(人や、物体)を検知する。
【0034】
後方センサ22は、たとえば、キャビン7aの上部に取り付けられるなど、走行車体2の後部上側に配置され、走行車体2の後方に存在する障害物を検知する。
【0035】
また、前方センサ21および後方センサ22は共に、中距離センサであり、好ましくは赤外線センサである。前方センサ21および後方センサ22は、赤外線ビームを放射し、障害物からの反射光を検知する。前方センサ21は、前方に延びる検知領域を有する。また、後方センサ22は、後方へ延びる検知領域を有する。
【0036】
前方センサ21および後方センサ22は、たとえば、赤外線ビームを放射した後、障害物からの反射光を検知するまでの時間を測定することで、障害物までの距離を検知することができる。赤外線センサである前方センサ21および後方センサ22は、障害物を2次元的に検知し、たとえば、数メートルから数10メートル程度の検知領域である。なお、障害物センサ20として、赤外線センサ以外の他の中距離センサを用いることも可能である。
【0037】
また、本実施形態では、トラクタ1は、2つの走行モードを有する。具体的には、トラクタ1は、圃場を走行する圃場モード(作業走行モード)と、路上を走行する路上モード(非作業走行モード)とを所定のスイッチ(走行モード選択スイッチ)等によって手動で切り替え可能に構成されている。圃場モードとは、圃場で作業を行う際に選択される制御モードであり、例えば、車速が低速(1~10km/h)でのみ走行するように制御される。また、路上モードとは、例えば、圃場までの路上を走行する際に選択される制御モードであり、例えば、車速が高速(15km/h以上)で走行できるように制御される。
【0038】
また、実施形態に係るトラクタ1は、制御装置40が行う作業機Wの昇降制御に関して、2つの制御モードを有する。具体的には、制御装置40は、作業機測位装置31により得られる測位情報に基づいて作業機Wの昇降位置を制御する測位制御モードと、リヤカバーセンサ28の検知結果に基づいて作業機Wの昇降位置を制御するカバー制御モードとを有する。
【0039】
測位制御モードは、作業機Wにより耕耘しつつ運土することによって圃場の高さを均平にする作業を行う際に選択される制御モードであり、作業機測位装置31の測位情報(高さ情報)に基づいて作業機Wの高さ位置を所定の基準値に維持する制御モードである。測位制御モードにより、圃場の高さが基準値よりも高い位置の土が基準値よりも低い位置へ運ばれるため、基準値に応じた圃場の高さで均平化できる。
【0040】
カバー制御モードは、作業機Wにより圃場を耕耘する作業を行う際に選択される制御モードであり、リヤカバーセンサ28で検出されるリヤカバー40bの高さ位置に基づいて、耕耘深さが所定の基準値で一定となるように作業機Wの高さ位置を昇降させる。カバー制御モードにより、圃場の高さがばらついたとしても、耕耘深さを基準値に応じた一定の深さで耕耘できる。
【0041】
そして、実施形態に係る制御装置40は、かかる2つの制御モードを操縦者(運転者)の切替操作に応じて切り替える。例えば、制御装置40は、制御モードを切り替える物理的なスイッチ(ペダル型、ボタン型、レバー型等)による切替操作によって制御モードを切り替える。また、制御装置40は、情報処理端末100へのユーザ操作により送信される切替指示信号を受信することで制御モードを切り替えてもよい。
【0042】
これにより、作業機測位装置31による昇降制御とリヤカバー40bによる昇降制御とをユーザが任意のタイミングで切り替えることができる。
【0043】
また、実施形態に係る制御装置40は、リヤカバー制御モードで作業したときの作業機測位装置31の測位情報を図示しない記憶部に記憶し、記憶した測位情報(高さ情報)に基づく高さ位置の平均値を、測位制御モードにおける作業機Wの高さ制御の基準値とする。
【0044】
つまり、制御装置40は、リヤカバー制御モードにおいて耕耘深さを一定するために、圃場の高さに応じて作業機Wを昇降させるため、作業機測位装置31により作業機Wの昇降を測定することで、結果として、圃場全体の高さを計測することができる。すなわち、計測した圃場全体の高さの平均値を測位制御モードにおける作業機Wの高さ位置の基準値とすることで、圃場を高精度に均平化することができる。
【0045】
次に、図2を参照して制御装置40を中心とする作業車両(トラクタ)1の制御系について説明する。図2は、作業車両1の制御系の一例を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置40は、エンジンECU(Electronic Control Unit)41と、走行系ECU42と、作業機昇降系ECU43とを備える。エンジンECU41は、エンジンEの回転数を制御する。走行系ECU42は、駆動輪の回転を制御することで、走行車体2(図1参照)の走行速度を制御する。作業機昇降系ECU43は、昇降装置12を制御して作業機Wを昇降制御する。
【0046】
制御装置40は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部をはじめ、各種プログラムや圃場ごとに予め設定された走行車体2の予定走行経路などの必要なデータ類が記憶される記憶部などを備える。
【0047】
図2に示すように、制御装置40には、測位装置(GNSS)30,31、エンジン回転センサ23、車速センサ24、切れ角センサ25、障害物センサ20(前方センサ21および後方センサ22)、リフトアームセンサ26、ロアリンクセンサ27、リヤカバーセンサ28などの各種センサ類、耕深調整ダイヤル300等が接続される。なお、エンジン回転センサ23は、エンジンEの回転数を検知する。車速センサ24は、走行車体2(図1参照)の走行速度(車速)を検知する。切れ角センサ25は、操舵輪である前輪4(図1参照)の切れ角を検知する。耕深調整ダイヤル300は、耕耘深さ(耕深)を調整するダイヤル型の操作部である。
【0048】
制御装置40には、測位装置30から圃場などにおける走行車体2の位置情報、エンジン回転センサ23からエンジンEの回転数、車速センサ24から走行車体2の走行速度、切れ角センサ25から前輪4の切れ角、障害物センサ20から障害物の検知結果、リフトアームセンサ26、ロアリンクセンサ27およびリヤカバーセンサ28から作業機Wの高さが入力される。制御装置40は、トラクタ1を自律走行させる場合、切れ角センサ25の検知結果を用いて、前輪4の切れ角をフィードバックしながらステアリングホイール9に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングホイール9を自動操舵する。
【0049】
また、制御装置40には、エンジンECU41がエンジンEに接続され、走行系ECU42が、操舵装置51、変速装置52および制動装置53などに接続され、作業機昇降系ECU43が昇降装置12に接続される。
【0050】
このうち、作業機昇降系ECU43は、昇降装置12に向けて作業機昇降信号を出力する。昇降装置12は、作業機昇降系ECU43から出力された作業機昇降信号に基づいて作業機Wを昇降駆動する。
【0051】
また、制御装置40は、たとえば、作業者が携行可能な情報処理端末100と無線接続される。制御装置40は、作業者の操作による情報処理端末100からの指示信号に基づいてトラクタ1の各部を制御する。また、制御装置40は、トラクタ1の機体情報データベースを保持し、型式などの情報の受け渡しを情報処理端末100などからも行うことができるように構成してもよい。
【0052】
また、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、走行車体2を停止させる。また、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、エンジンEを停止させたり、PTO軸への回転動力の伝達を中止させたりする。また、制御装置40は、制御装置40は、前方センサ21、または後方センサ22によって障害物が検知された場合には、警報器(不図示)を作動させて、障害物が検知されたことを報知してもよい。
【0053】
また、制御装置40は、トラクタ1が自律走行しつつ作業を行うモードである「自動運転モード」を有する。制御装置40は、自動運転モードにおいては、作業機Wによる作業内容に応じた予定走行経路が予め圃場ごとに定められ、データ化されて記憶部に記憶され、測位装置30の測定結果に基づいて、記憶された予定走行経路に沿って走行するように、エンジンE、操舵装置51、変速装置52、制動装置53および昇降装置12などの各部を制御する。なお、予定走行経路は、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、さらには作物の種類などに応じて設定される。
【0054】
また、制御装置40は、上述したように、圃場モード(作業走行モード)と、路上モード(非作業走行モード)とを有する。例えば、制御装置40は、圃場モードが選択された場合、圃場作業を行うための高さまで作業機Wを自動昇降させる。なお、圃場作業を行うための高さは、作業機Wの種別に応じて異なる高さを設定することができる。
【0055】
また、制御装置40は、上述したように、測位制御モードと、カバー制御モードとを操縦者の切替操作に応じて切り替える。具体的には、制御装置40は、制御モードを切り替える物理的なスイッチ(ペダル型、ボタン型、レバー型等)による切替操作によって制御モードを切り替える。また、制御装置40は、情報処理端末100へのユーザ操作によって送信される切替指示信号を受信することで制御モードを切り替えてもよい。
【0056】
例えば、制御装置40は、トラクタ1の電源投入時、まず、カバー制御モードに設定し、電源投入後において、最初に走行モード選択スイッチが作業走行モードに切り替えられたときに、操縦者(運転者)に対して所定の通知を行う。
【0057】
例えば、制御装置40は、操縦部7に設けられた表示部にカバー制御モードであることを示す通知を行う。なお、制御装置40は、例えば、スピーカ等によりカバー制御モードであることを示す音声を通知してもよい。あるいは、制御装置40は、表示部の特定位置を点灯させたり、スピーカ等により単一のビープ音等を発してもよい。
【0058】
このように、電源投入時にデフォルトとしてカバー制御モードを設定するとともに、所定の通知を行うことで、操縦者が前回作業時の昇降制御モードを覚えておく必要もなく、かつ、カバー制御モードから測位制御モードへのモード切替忘れ等を回避することができる。なお、測位制御モードで行う均平作業は頻繁に行うものではないため、カバー制御モードをデフォルトとして設定することが好ましい。これにより、操縦者のモード切替の回数を減らすことができる。
【0059】
また、制御装置40は、カバー制御モードで作業中にエンジンEの回転数が低下した場合、低下量に応じて作業機Wを下降させ、エンジンEの回転数が上昇した場合、上昇量に応じて作業機Wを上昇させる。
【0060】
これにより、土の量が多くエンジンに負荷がかかることで回転数が低下するところでは、作業機Wを下降させることで土を引きづりつつ運び、土の量が少なくエンジンに負荷がかからないことで回転数が上昇するところでは、作業機Wを上昇させることで土を開放できるため、耕耘作業中に圃場内の土の偏りを低減することができる。
【0061】
なお、制御装置40は、カバー制御モードで作業中にエンジン回転数の低下量が所定の閾値以上低下した場合、トラスミッションを制御して、車速を自動で低下させる。これにより、エンジンドロップが大きすぎることによるエンジンストールを回避できる。
【0062】
また、制御装置40は、カバー制御モードで作業中において、作業機測位装置31の測位情報を図示しない記憶部に記憶しておく。記憶する測位情報は、圃場全体を走行する間に一定間隔で受信する測位情報をすべて記憶してもよく、所定間隔毎の測位情報を抽出して記憶してもよい。なお、記憶した測位情報は、一定期間保持しておき、一定期間が経過した場合にはリセットする。これにより、経過日数が少なければ、過去の測位情報を今回の作業時に利用できるため、作業効率を高めることができるとともに、古い測位情報が利用されることを回避できる。
【0063】
そして、制御装置40は、昇降制御モードがカバー制御モードから測位制御モードへ切り替わった場合、記憶部に記憶した測位情報に基づく高さ位置の平均値を、測位制御モードにおける高さ制御の基準値とする。つまり、トラクタ1は、記憶部に記憶した測位情報に基づく高さ位置の平均値を、作業機Wの高さ位置として維持して均平作業を行う。
【0064】
また、制御装置40は、測位制御モードに切り替わった場合に、リヤカバー40bが最初に接地を検知したとき(リヤカバーセンサ28の変化量が所定値未満となったとき)の作業機測位装置31に基づく高さを、測位制御モードの耕深調整ダイヤル300における最浅位置の基準値とする。
【0065】
このように、リヤカバー40bの位置に基づいて測位制御モードの耕深調整ダイヤル300における最浅位置の基準値を設定することで、耕深調整ダイヤル300による耕深調整を高精度に行うことができる。
【0066】
また、制御装置40は、記憶部に記憶された作業機測位装置31の測位情報に基づく高さ位置の平均値を、測位制御モードの耕深調整ダイヤル300における中央位置の基準値とする。
【0067】
このように、カバー制御モード時の測位情報に基づいて測位制御モードの耕深調整ダイヤル300における中央位置の基準値を設定することで、耕深調整ダイヤル300による耕深調整を高精度に行うことができる。
【0068】
また、制御装置40は、測位制御モードにおいて、リヤカバーセンサ28がリヤカバー40bの上昇を検知した場合、上昇量に応じて作業機Wを下降させ、リヤカバー40bの下降を検知した場合、作業機Wを上昇させる。
【0069】
これにより、土の量が多くリヤカバー40bが上昇するところでは、作業機Wを下降させることで土を引きづりつつ運び、土の量が少なくリヤカバー40bが下降するところでは、作業機Wを上昇させることで土を開放できるため、圃場内の土の偏りを低減して高精度に均平化することができる。
【0070】
また、制御装置40は、記憶部に記憶した測位情報に基づいて、圃場の地面の高さに関する高低マップ情報を生成しておき、かかる高低マップ情報に基づいて測位制御モードにおける作業機Wの高さ制御を行ってもよい。なお、高低マップ情報とは、圃場における位置(絶対位置または相対位置)の情報と、測位情報における高さ情報とが紐づいた情報である。
【0071】
例えば、制御装置40は、測位制御モードでは、高低マップ情報に基づいて、地面の高さが所定値以上の地点では、地面の高さに応じて作業機Wを下降させ、地面の高さが所定値未満の地点では、地面の高さに応じて作業機Wを上昇させる。
【0072】
これにより、地面の高さが高い、すなわち土の量が多いところでは、作業機Wを下降させることで土を引きづりつつ運び、地面の高さが低い、すなわち土の量が少ないところでは、作業機Wを上昇させることで土を開放できるため、圃場内の土の偏りを低減して高精度に均平化することができる。
【0073】
なお、制御装置40は、操縦者の切替操作による手動切替により昇降制御モードを切り替える場合を示したが、昇降制御モードを自動で切り替えてもよい。例えば、制御装置40は、リヤカバー40が装着されている場合には、自動でカバー制御モードを設定する。また、制御装置40は、作業機測位装置31から測位情報が入力される場合には、自動で測位制御モードを設定する。なお、制御装置40は、リヤカバー40が装着され、かつ、作業機測位装置31から測位情報が入力される場合には、使用頻度が高いカバー制御モードを優先的に設定してもよい。このように、昇降制御モードの切替優先度を設定することで、操縦者の混乱を回避できる。また、制御装置40は、カバー制御モードを優先的に設定する場合に限らず、操縦者に通知して昇降制御モードの選択操作を受け付けるようにしてもよい。
【0074】
次に、図3図5を用いて、実施形態に係る制御装置40の制御処理の処理手順について説明する。図3図5は、実施形態に係る制御装置40の制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0075】
なお、図3では、制御装置40による昇降制御モードの切替処理について説明し、図4では、耕深調整ダイヤルの設定処理について説明し、図5では、作業機Wの昇降制御処理について説明する。
【0076】
まず、図3を用いて、制御装置40による昇降制御モードの切替処理について説明する。
【0077】
まず、制御装置40は、操縦者の操作に従って電源投入を開始する(ステップS101)。
【0078】
つづいて、制御装置40は、電源投入後、昇降制御モードをカバー制御モードに設定する(ステップS102)。
【0079】
つづいて、制御装置40は、走行モードが作業走行モードであるか否かを判定する(ステップS103)。
【0080】
制御装置40は、走行モードが作業走行モードである場合(ステップS103:Yes)、操縦部7の表示部にカバー制御モードを示す表示を行う(ステップS104)。
【0081】
つづいて、制御装置40は、カバー制御モードを示す表示後、操縦者による昇降制御モードの切替の有無を判定する(ステップS105)。
【0082】
制御装置40は、昇降制御モードの切替操作が無かった場合(ステップS105:Yes)、カバー制御モードで作業を開始し(ステップS106)、処理を終了する。
【0083】
一方、ステップS105において、制御装置40は、昇降制御モードの切替操作があった場合(ステップS105:No)、カバー制御モードから測位制御モードへ切り替え、測位制御モードで作業を開始し(ステップS107)、処理を終了する。
【0084】
また、ステップS103において、制御装置40は、走行モードが非作業走行モードである場合(ステップS103:No)、作業機Wを非作業位置で維持した状態で走行を開始し(ステップS108)、処理を終了する。
【0085】
つづいて、図4を用いて、耕深調整ダイヤルの設定処理について説明する。
【0086】
まず、制御装置40は、カバー制御モードで作業中であることとする(ステップS201)。
【0087】
つづいて、制御装置40は、カバー制御モード中において、作業機測位装置31の測位情報である作業機Wの高さ位置の情報を記憶する(ステップS202)。
【0088】
つづいて、制御装置40は、記憶した複数の測位情報に基づく高さ位置の平均値を算出する(ステップS203)。
【0089】
つづいて、制御装置40は、耕深調整ダイヤルの基準値を設定し(ステップS204)、処理を終了する。具体的には、制御装置40は、算出した平均値を、耕深調整ダイヤルにおける中央値として設定する。
【0090】
つづいて、図5を用いて、作業機Wの昇降制御処理について説明する。
【0091】
まず、制御装置40は、測位制御モードで作業中であることとする(ステップS301)。
【0092】
つづいて、制御装置40は、測位制御モード中において、リヤカバー40bが所定値以上上昇したか否かを判定する(ステップS302)。
【0093】
制御装置40は、リヤカバー40bが所定値以上上昇した場合(ステップS302:Yes)、リヤカバー40bの上昇量に応じた量だけ作業機Wを下降させ(ステップS303)、処理を終了する。
【0094】
一方、ステップS302において、制御装置40は、リヤカバー40bが所定値以上上昇しなかった場合(ステップS302:No)、リヤカバー40bが所定値以上下降したか否かを判定する(ステップS304)。
【0095】
制御装置40は、リヤカバー40bが所定値以上下降した場合(ステップS304:Yes)、リヤカバー40bの下降量に応じた量だけ作業機Wを上昇させ(ステップS305)、処理を終了する。
【0096】
一方、ステップS304において、制御装置40は、リヤカバー40bが所定値以上下降しなかった場合(ステップS304:No)、作業機Wの高さ位置を維持し(ステップS306)、処理を終了する。
【0097】
上述したように、実施形態に係るトラクタ1は、走行車体2と、走行車体2に昇降自在に取り付けた作業機Wと、走行車体2の位置を測定する車両測位装置30と、作業機Wの昇降位置を測定する作業機測位装置31と、作業機Wの後部を覆うリヤカバー40bと、リヤカバー40bの位置を検出するリヤカバーセンサ28と、作業機Wの昇降位置を制御する制御装置40と、を備え、制御装置40は、作業機測位装置31により得られる測位情報に基づいて作業機Wの昇降位置を制御する測位制御モードと、リヤカバーセンサ28の検知結果に基づいて作業機Wの昇降位置を制御するカバー制御モードとを、運転者の切替操作に応じて切り替える。これにより、作業機測位装置31による昇降制御とリヤカバー40bによる昇降制御とを切り替えることができる。
【0098】
また、トラクタ1は、耕深を調整する耕深調整ダイヤルを有する。制御装置40は、測位制御モードに切り替わった場合に、リヤカバー40bが最初に接地を検知したときの作業機測位装置31に基づく高さを、測位制御モードの耕深調整ダイヤルにおける最浅位置の基準値とする。これにより、リヤカバー40bの位置に基づいて測位制御モードの耕深調整ダイヤル300における最浅位置の基準値を設定することで、耕深調整ダイヤル300による耕深調整を高精度に行うことができる。
【0099】
また、トラクタ1は、走行車体2の走行モードを、作業走行モードと非作業走行モードとに切り替える走行モード選択スイッチを有する。制御装置40は、電源投入時、カバー制御モードに設定し、電源投入後において最初に走行モード選択スイッチが作業走行モードに切り替えられたときに、運転者に対して所定の通知を行う。これにより、電源投入時にデフォルトとしてカバー制御モードを設定するとともに、所定の通知を行うことで、操縦者が前回作業時の昇降制御モードを覚えておく必要もなく、かつ、カバー制御モードから測位制御モードへのモード切替忘れ等を回避することができる。
【0100】
また、トラクタ1は、エンジンEの回転数を検出するエンジン回転センサ23をする。制御装置40は、カバー制御モードで作業中にエンジンEの回転数が低下した場合、低下量に応じて作業機Wを下降させ、エンジンEの回転数が増加した場合、増加量に応じて作業機Wを上昇させる。これにより、土の量が多くエンジンに負荷がかかることで回転数が低下するところでは、作業機Wを下降させることで土を引きづりつつ運び、土の量が少なくエンジンに負荷がかからないことで回転数が上昇するところでは、作業機Wを上昇させることで土を開放できるため、耕耘作業中に圃場内の土の偏りを低減することができる。
【0101】
また、トラクタ1は、変速装置(トランスミッション)を有する。制御装置40は、カバー制御モードで作業中にエンジンEの回転数の低下量が所定の閾値以上となった場合、変速装置を制御して、車速を低下させる。これにより、エンジンドロップが大きすぎることによるエンジンストールを回避できる。
【0102】
上述したように、実施形態に係るトラクタ1は、走行車体2と、走行車体2に昇降自在に取り付けた作業機Wと、走行車体2の位置を測定する車両測位装置30と、作業機Wの昇降位置を測定する作業機測位装置31と、作業機Wの後部を覆うリヤカバー40bと、リヤカバー40bの位置を検出するリヤカバーセンサ28と、作業機Wの昇降位置を制御する制御装置40と、を備え、制御装置40は、作業機測位装置31により得られる測位情報に基づいて作業機Wの昇降位置を制御する測位制御モードと、リヤカバーセンサ28の検知結果に基づいて作業機Wの昇降位置を制御するカバー制御モードとを有する。また、制御装置40は、カバー制御モードで作業したときの作業機測位装置31の測位情報を記憶部に記憶し、当該測位情報に基づく高さ位置の平均値を、測位制御モードにおける高さ制御の基準値とする。これにより、圃場を高精度に均平化することができる。
【0103】
また、トラクタ1は、耕深を調整する耕深調整ダイヤルを有する。制御装置40は、作業機測位装置31の測位情報に基づく高さ位置の平均値を、測位制御モードの耕深調整ダイヤルにおける中央位置の基準値とする。これにより、カバー制御モード時の測位情報に基づいて測位制御モードの耕深調整ダイヤル300における中央位置の基準値を設定することで、耕深調整ダイヤル300による耕深調整を高精度に行うことができる。
【0104】
また、制御装置40は、測位制御モードにおいて、リヤカバーセンサ28がリヤカバー40bの上昇を検知した場合、上昇量に応じて作業機Wを下降させ、リヤカバー40bの下降を検知した場合、作業機Wを上昇させる。これにより、土の量が多くリヤカバー40bが上昇するところでは、作業機Wを下降させることで土を引きづりつつ運び、土の量が少なくリヤカバー40bが下降するところでは、作業機Wを上昇させることで土を開放できるため、圃場内の土の偏りを低減して高精度に均平化することができる。
【0105】
また、制御装置40は、作業機測位装置31の測位情報に基づいて圃場の地面の高さに関する高低マップ情報を生成する。また、制御装置40は、測位制御モードでは、高低マップ情報に基づいて、地面の高さが所定値以上の地点では、地面の高さに応じて作業機Wを降下させ、地面の高さが所定値未満の地点では、地面の高さに応じて作業機Wを上昇させる。これにより、地面の高さが高い、すなわち土の量が多いところでは、作業機Wを下降させることで土を引きづりつつ運び、地面の高さが低い、すなわち土の量が少ないところでは、作業機Wを上昇させることで土を開放できるため、圃場内の土の偏りを低減して高精度に均平化することができる。
【0106】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 トラクタ(作業車両)
2 走行車体
28 リヤカバーセンサ
30 車両測位装置
31 作業機測位装置
40 制御装置
40a ロータリカバー
40b リヤカバー
W 作業機
図1
図2
図3
図4
図5