(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】保湿ティシュペーパ
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A47K10/16 C
(21)【出願番号】P 2020108327
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】清水 遥絵
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-259706(JP,A)
【文献】特開2004-089492(JP,A)
【文献】特開2017-169682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿剤を含有する
二枚で一組のシートを備えた
2プライの保湿ティシュペーパであって、
二枚の前記シートが重ね合わせられた状態の厚み寸法である紙厚が105~140[μm]の範囲であり、
前記シート一枚あたりの単位面積あたりの質量を二倍したうえで前記紙厚で除算することにより算出した密度が0.250~0.350[g/cm
3
]であり、
前記保湿剤の塗布量が25.0[%]以上であり、
ISO12625-9;2015に準拠して測定され、四枚の前記シートが重ね合わせられた試験体
が乾燥状態
の測定子で前記シートの重合方向に前記試験体が突き破られたときの強度である乾燥破裂強度が1.80[N/4枚]以上であって3.00[N/4枚]以下である
ことを特徴とする保湿ティシュペーパ。
【請求項2】
ISO12625-9;2015に準拠して測定され、前記測定子の濡れた湿潤状態のもとで、前記湿潤状態の前記測定子で前記シートの重合方向に前記試験体が突き破られたときの強度である湿潤破裂強度が1.70[N/4枚]以上であって2.70[N/4枚]以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の保湿ティシュペーパ。
【請求項3】
圧縮回復率(RC)が36.00以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の保湿ティシュペーパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿剤を含有する薄膜状の衛生用紙、特に保湿ティシュペーパに関する。
【背景技術】
【0002】
衛生用紙の一つとして、保湿剤を含有するシートからなる保湿ティシュペーパが知られている。保湿ティシュペーパには、複数枚のシートで一組のティシュペーパに保湿剤が塗布されている。
上記の保湿ティシュペーパには、保湿剤の塗布されていないティシュペーパ(以下「ドライティシュ」と称する)よりもしっとりしていることや柔らかいことなどの良好な触感が求められる。このような付加物性のほか、ドライティシュと同様に破れにくさも求められる。このような基本物性を付加物性と両立した保湿ティシュペーパによれば、良好な触感であって破れにくいことから、ユーザの官能性を満たすことができる。
【0003】
そこで、CD方向(Cross Direction)やMD方向(Machine Direction)の引張強度を以下に示す閾値1′~閾値2′の範囲に特定することにより、官能性の向上を図る保湿ティシュペーパが検討されている(特許文献1参照)。
・閾値1′:基本物性を確保するための下限値
・閾値2′:付加物性を確保するための上限値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保湿ティシュペーパは、さまざまな方向に引っ張られうることから、CD方向やMD方向の引張強度が特定されるだけでは、引張強度の特定された方向以外に引っ張られたときに破れるおそれがあり、厚み方向に突き破られるおそれもある。このような基本物性の低下を抑えるために引張強度を高めると、触感の低下から付加物性の低下を招くおそれがある。よって、基本物性および付加物性の両立が困難であり、官能性を高めるうえで改善の余地がある。
【0006】
ここで開示する保湿ティシュペーパは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、保湿ティシュペーパの官能性を高めることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、乾燥破裂強度が所定範囲の保湿ティシュペーパによって官能性が満たされることを見出した。すなわち、以下に示す閾値1~閾値2の範囲に乾燥破裂強度を特定することにより、保湿ティシュペーパの官能性が向上するとの知見を得た。
・閾値1:基本物性を確保するための下限値
・閾値2:付加物性を確保するための上限値
【0008】
ここで開示する保湿ティシュペーパの具体的な構成は、保湿剤を含有するシートを備え、保湿剤の塗布量が25.0[%]以上であり、四枚の前記シートが重ね合わせられた試験体が内径50[mm]の円形枠体に取り付けられた測定状態のもとで、直径16±0.2[mm]の球状をなす測定子を押し込み速度125±5[mm/分]で前記円形枠体の中心に押し込む測定方法において、乾燥状態の前記測定子で前記シートの重合方向に前記試験体が突き破られたときの強度である乾燥破裂強度が1.80[N/4枚]以上であって3.00[N/4枚]以下である。
【発明の効果】
【0009】
開示の保湿ティシュペーパによれば、官能性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態としての保湿ティシュペーパを述べる。
本実施形態の保湿ティシュペーパは、所定範囲に特定された破裂強度を有する。
「破裂強度」とは、ISO12625-9;2015に準拠して測定された強度であり、所定の状態のもとで所定の方法によって測定される。ここでいう「所定の状態」とは、保湿ティシュペーパをなすシートの重ね合わせられた試験体が円形枠体に取り付けられた状態を意味する。「所定の方法」とは、球状の測定子でシートの重合方向に試験体が突き破られたとき(破裂するとき)の強度を測定する方法を意味する。
【0011】
このような破裂強度は、試験体の延在面に沿うさまざまな直線方向の強度と言える(このことから「二次元強度」とも言える)。一方、〔発明が解決しようとする課題〕の欄で上述したCD方向(「横方向」とも称する)やMD方向(「縦方向」とも称する)の引張強度は、限られた直線方向の強度であると言える(このことから「一次元強度」とも言える)。
上記の破裂強度が大きくなるほど、印加されうるさまざまな方向の外力によって保湿ティシュペーパが破れにくくはなるものの、保湿ティシュペーパの触感が低下する傾向にある。
【0012】
よって、所定の下限値が特定された破裂強度を有する試験体のシートを備えた保湿ティシュペーパは、所定の下限値が特定された引張強度を有するに過ぎない従来の保湿ティシュペーパに対して有利な下記の効果1を得ることができる。
・効果1:従来の保湿ティシュペーパにおいて引張強度の特定された方向以外に引
っ張られたときに破れにくいうえに、厚み方向に突き破られにくい。
【0013】
さらに、所定の上限値が特定された破裂強度を有する試験体のシートを備えた保湿ティシュペーパは、下記の効果2も得ることができる。
・効果2:良好な触感を得ることができる。
よって、効果1の基本物性と効果2の付加物性とを両立することができ、官能性を高めることができる。
【0014】
具体的に言えば、本実施形態の保湿ティシュペーパは、乾燥状態の測定子を用いて測定された乾燥破裂強度が、効果1の基本物性を確保する観点から1.80[N/4枚]以上であり、効果2の付加物性を確保する観点から3.00[N/4枚]以下である。
【0015】
さらに、湿潤状態の測定子を用いて測定された湿潤破裂強度は、効果1の基本物性を確保する観点から1.70[N/4枚]以上であり、効果2の付加物性を確保する観点から2.70[N/4枚]以下であることが好ましい。なお、濡れた状態の保湿ティシュペーパは、触感や強度の確保が求められないとすれば、湿潤状態の測定子を用いて測定される湿潤破裂強度の上限値や下限値は特定が不要である。
また、本実施形態の保湿ティシュペーパは、詳細を後述する保湿剤の塗布量が25.0[%]以上に特定されている。そのほか、保湿ティシュペーパは、付加物性を高める観点から、詳細を後述する圧縮回復率(RC)が36.00以下であることが好ましく、詳細を後述するハンドフィール値(HF)が80以上であることが好ましい。
【0016】
[I.一実施形態]
以下に述べる一実施形態では、保湿ティシュペーパの基本的な構成を項目[1]で概説する。そして、保湿ティシュペーパのパラメータを項目[2]で詳述する。さいごに、項目[1]で挙げたパラメータの調整例を項目[3]で付言する。
【0017】
[1.基本的な構成]
保湿ティシュペーパは、保湿剤を含有するシートを備える。ここでいう「シート」とは、薄膜状の枚葉紙(「プライ」とも称される)である。
この保湿ティシュペーパには、2プライあるいは3プライなどの複数枚のシートが重ね合わせられた一組のティシュペーパに保湿剤が塗布されている。ただし、一枚のシートに保湿剤が塗布された保湿ティシュペーパ(いわば「1プライ」の保湿ティシュペーパ)を本発明から排除するものではない。
【0018】
保湿ティシュペーパは、箱に包装された形態(いわゆる「ボックスティシュ」)や小袋に包装された形態(いわゆる「ポケットティシュ」)といったさまざまな形態で用いられる。
上記の保湿ティシュペーパは、つぎに説明するパラメータを具備する。
【0019】
[2.パラメータ]
本実施形態では、下記の表1に示す実施例1~4および比較例5,6の保湿ティシュペーパのそれぞれについて、各パラメータを測定したうえで評価した。
【0020】
【0021】
以下、上記の表1に示すパラメータについて、質量や寸法といった基本的なパラメータを小項目[2-1]で述べ、破裂強度をはじめとした詳細なパラメータを小項目[2-2]で述べる。そして、評価について小項目[2-3]で述べる。
【0022】
[2-1.基本的なパラメータ]
本項目[2-1]では、プライ数,坪量,紙厚,密度の順にそれぞれを説明する。
――プライ数――
プライ数は、一組の保湿ティシュペーパを構成するシートの枚数である。
――坪量――
坪量とは、保湿ティシュペーパの単位面積あたりの質量である。この坪量は、保湿ティシュペーパを構成するシート一枚あたりの測定値である。坪量は、JIS P 8124の規定に従って測定した。
【0023】
――紙厚――
紙厚とは、保湿ティシュペーパの一組の厚み寸法である。具体的には、二枚のシートが重ね合わせられた状態の厚み寸法である。
この紙厚は、下記の環境,装置,方法で測定した。
・測定環境:ISO187に準拠した環境(23℃±1℃,湿度50%〈±2%〉)
・測定装置:厚さ計(ハイブリッジ製作所製)
・測定方法:JIS P 8118に準拠し、圧力100[kpa]±10[kpa
]、加圧面の直径16.0[mm]±0.5[mm]の測定子を1秒間
に1[mm]以下の速度で下ろしたときの値を読み取る。
上記の紙厚は、105~140[μm]の範囲であることが好ましく、105~120[μm]の範囲であることが更に好ましい。
【0024】
――密度――
密度とは、保湿ティシュペーパの単位体積あたりの質量である。この密度は、上記の坪量を二倍したうえで上記の紙厚で除算することにより算出した。
この密度は、0.250~0.350[g/cm3]の範囲であることが好ましく、0.295~0.350[g/cm3]の範囲であることが更に好ましい。
【0025】
[2-2.詳細なパラメータ]
本項目[2-2]では、破裂強度について詳述する。その後、保湿剤の塗布量(以下、単に「塗布量」と称する),引張強さ,伸び,ハンドフィール値(以下「HF」と略称する)を含むTSAによる測定値,滴下法吸水度,圧縮特性についても述べる。
【0026】
――破裂強度――
破裂強度とは、保湿ティシュペーパが破裂するときの強度である。
この破裂強度は、下記の環境および状態のもとで、下記の方法によって測定した。
・測定環境:ISO187に準拠した環境(23℃±1℃,湿度50%〈±2%〉)
・測定状態:保湿ティシュペーパを構成するシートの重ね合わせられた試験体が円
形の枠体に取り付けられた状態
・測定方法:球状の測定子でシートの積層方向に試験体が突き破られたときの強度
を測定する。
【0027】
ここでは、以下に示す二種の破裂強度を測定した。
・乾燥破裂強度:乾燥状態の測定子を用いて測定される破裂強度
・湿潤破裂強度:湿潤状態の測定子を用いて測定される破裂強度
乾燥破裂強度については、下記の試験体1,2を対象に測定した。
・試験体1:二枚のシートを重ね合わせた試験体(第二試験体)
・試験体2:四枚のシートを重ね合わせた試験体(第一試験体)
湿潤破裂強度については、上記の試験体2を対象に測定した。
【0028】
詳細には、下記の装置,対象,方法で測定した。
・測定装置:ティシュソフトネスアナライザ(「TSA」と略称される)
(Emtec Electronic GmbH〈ドイツ〉)
・測定対象:110[mm]×110[mm]角の大きさのシート
・測定方法:中央に穴の開いた固定具で測定対象のサンプルを上下から挟み、固定す
る。ボール状の端子(測定子)を穴の中央に降下させ、サンプルが破れ
たときの値を読み取る。この測定を10回実施し、これらの10回の測
定値の平均を取る。
【0029】
さらに、湿潤破裂強度については、サンプルを上下から挟んで固定した後であって、ボール状の端子を穴の中央に降下させる前に、下記の手順を実施してから測定した。
・測定手順:ピペッターに1000[μl]の水を取る。ボールの側面にピペッター
をあて、5秒かけながら水を全量出し切る。
【0030】
――塗布量――
塗布量とは、保湿ティシュペーパに塗布された保湿剤の量である。
この塗布量は、少ないほど保湿性の低下を招き、多すぎると保湿ティシュペーパの破損を招くおそれがある。
塗布量は、保湿性を確保する観点から、少なくとも25.0[%]以上であり、26.0[%]以上であることがより好ましく、27.0[%]以上であることが更に好ましく、28.0[%]以上であることが特に好ましい。一方、塗布量は、保湿ティシュペーパの破損を抑える観点から、35.0[%]以下であることが好ましく、34.0[%]以下であることがより好ましく、33.0[%]以下であることが更に好ましい。
この塗布量は、下記の式より算出(測定)される。
・式:塗布量[%]=[(抽出物の質量)/{(サンプル量)-(抽出物の質量)}]×100
上記の塗布量は、下記の装置,方法で測定した
・測定装置:ソックスレー抽出器
・測定方法:アセトン/エタノール混合溶媒(容積比1:1)を用いて、還流状態で4時
間抽出を行った。得られた抽出物およびサンプル量から塗布量を算出し
た。
【0031】
――引張強さおよび伸び――
<引張強さ>
引張強さは、乾燥状態の保湿ティシュペーパを引っ張って破断したときの負荷の大きさ(乾燥引張強さ)である。この引張強さは、二枚で一組のシートが重ね合わせられた状態で測定される。
上記の引張強さには、以下に列挙する四種が含まれる。
・T:縦方向の引張強さ(測定値)
・Y:横方向の引張強さ(測定値)
・√TY:縦方向の引張強さおよび横方向の引張強さの相乗平均(算出値)
・Y/T比:縦方向の引張強さに対する横方向の引張強さの比率(算出値)
【0032】
通常のティシュペーパは、原料繊維の配向が横方向よりも縦方向に沿っているため、横方向よりも縦方向の引張強さが大きい。このような引張強さの異方性は、本実施形態の保湿ティシュペーパも有している。
そのため、一つの側面としては、保湿ティシュペーパが種々の方向へ引っ張られた際に横方向の引張強さが律速となるため、縦方向の引張強さの大きさによらず、横方向の引張強さが大きいほど保湿ティシュペーパが破れにくくなる傾向にある。
もう一つの側面としては、縦方向の引張強さに対する横方向の引張強さの比率が大きいほど、保湿ティシュペーパにおける強度の異方性が抑えられ(強度の等方性が確保され)ることにより、引っ張られる方向によらず全体的な強度が確保される傾向にある。
【0033】
<伸び>
伸びは、保湿ティシュペーパの伸長しやすさを表すパラメータであり、所定の負荷が印加されたときの伸び度合いである。この伸びは、二枚で一組のシートが重ね合わせられた状態で測定される。
上記の伸びには、下記の二種が含まれる。
・縦方向の伸び(測定値)
・横方向の伸び(測定値)
【0034】
通常のティシュペーパは、製造過程においてヤンキーロールからこのロールに突き当てられたブレードによって剥がされるときに、微細な皺からなるクレープ(「クレーピング」とも称される)が形成される。このクレープは、ティシュペーパの縦方向に対応するMD方向に沿って微細な凹凸が連続した構造をなし、製品のティシュペーパにも存在する。
ティシュペーパにおいて、上記のクレープが縦方向への伸び代として機能するため、横方向よりも縦方向のほうが伸びやすい。このような伸び度合いの異方性は、本実施形態の保湿ティシュペーパも有している。
伸びが大きいほど保湿ティシュペーパに印加された負荷が吸収されると推察されるものの、伸びたときの保湿ティシュペーパが薄くなることによって破れやすさを招くとも推察される。
【0035】
<測定>
引張強さ,伸びのそれぞれは、下記の環境,装置,方法で測定した。
・測定環境:ISO187に準拠した環境(23℃±1℃,湿度50%〈±2%〉)
・測定装置:万能試験機TENSILON RTC-1250A(株式会社エー・
アンド・デイ社製)
・測定方法:保湿ティシュペーパを構成するシートを幅15[mm]およびスパン長
100[mm]にカットしたサンプル1組を引張速度が50[mm/
分]の条件で引っ張って測定し、十回の測定の平均を算出した値であ
る。
伸びに関しては、下記の式を用いて算出した。
伸び[%]=重ねられたサンプルの伸び量[mm]×100/スパン長[mm]
【0036】
――TSAによる測定値――
TSAによる測定値は、ティシュソフトネスアナライザ(略称「TSA」の測定装置)で測定された値であり、薄膜用紙の品質を表すパラメータである。
このTSAによる測定値には、HF,TS7,TS750,Dの四種が含まれる。なお、HF,TS7,TS750は無次元量であり、この無次元量を[-]で表1に記す。
<HF>
HFは、保湿ティシュペーパにおける外面の滑らかさを示す指標である。このHFは、数値が高いほど滑らかであることを示す指標となる。なお、「HF」は、保湿剤の塗布量が多いほど大きくなる傾向にあり、坪量が小さいほど大きくなる傾向もある。
【0037】
<TS7>
TS7は、保湿ティシュペーパの表面における柔らかさ(ソフトネス)を示す指標であり、柔らかいほど小さい値である。このTS7は、表面における凹凸の有無のみが相違する保湿ティシュペーパであれば、凹凸の有無にかかわらず同様またはほぼ同様の値が測定され、いわば「真の柔らかさ」に対応する指標である。
【0038】
<TS750>
TS750は、保湿ティシュペーパの表面の凹凸度合いを示す指標である。クレープ(「クレーピング」とも称される)あるいはエンボスといった表面の凹凸が大きいほど、TS750の値も大きくなる。
<D>
Dは、保湿ティシュペーパの剛性を示す指標である。剛性が高い(より堅い)ほど、「D」の値は小さくなる。
【0039】
<測定>
TSAによる測定値に含まれるHF,TS7,TS750,Dは、下記の環境,装置,対象,方法,手順で測定した。
・測定環境:ISO187に準拠した環境(23℃±1℃,湿度50%(±2%))
・測定装置:ティシュソフトネスアナライザ(「TSA」と略称される)
(Emtec Electronic GmbH〈ドイツ〉)
・測定対象:直径112.8mmのサンプル
・測定方法:以下に示す振動周波数からTS7,TS750を測定し、以下に示す変
形変位量からDを測定した。これらのTS7,TS750,Dをはじめ
、紙厚,坪量,プライ数を関数とする演算を下記の手順で実施し、HF
を算出(測定)した。
〈振動周波数〉
試料台に設置した測定対象のサンプルに対して、ブレード付きロータを1
00[mN]の押し込み圧力で上方から押し込んだ後に、2.0[回/se
c]で回転させたときの振動周波数。
〈変形変位量〉
試料台に設置した測定対象のサンプルに対して、ブレード付きロータを回
転させずに100[mN]と600[mN]の押し込み圧力でそれぞれに上
方から押し込んだときの上下方向に変形する変位量。
・ 手順 :付属の説明書に従いサンプル(emtec ref.2X〈nn.n〉
)で校正し、アルゴリズムをfacial IIに設定する。計算用ソ
フトウェアは,emetec measurement syste
mを使用した。
【0040】
――滴下法吸水度――
滴下法吸水度は、保湿ティシュペーパによる吸水度合いを示す指標である。
上記の滴下法吸水度は、下記の対象,方法で測定した。
・測定対象:100[mm]×100[mm]の保湿ティシュペーパ
・測定方法:イオン交換水0.1gを測定対象の保湿ティシュペーパへ10mmの高
さから滴下させ、液が吸収されて測定対象のサンプル表面から光の反射
がなくなるまで(目視)の時間を測定した。
【0041】
――圧縮特性――
圧縮特性は、保湿ティシュペーパが圧縮されたときの特性を示す指標である。
この圧縮特定には、LC,WC,RC,To,TM,(To-TM)/Toが含まれる。なお、LC,TM,(To-TM)/Toは無次元量であり、この無次元量を[-]で表1に記す。
【0042】
<LC>
LCは、「圧縮かたさ」とも称され、保湿ティシュペーパのシートを押し込んだときの深さに対する反発力の直線比例性を表すパラメータであり、その値が大きいほど圧縮が固く反発性があることを示す。
<WC>
WCは、「圧縮エネルギー」とも称され、保湿ティシュペーパのシートを圧縮したときに要したエネルギーを表し、その値が大きければ圧縮されやすいことを示す。
【0043】
<RC>
RCは、「圧縮回復率」とも称され、保湿ティシュペーパのシートが圧縮された状態から元に戻る際の回復性を示しており、高いほど回復性があることを示し、低いほど柔らかさが向上する傾向にあるとともにしっとり感も向上する傾向にある。RC(圧縮回復率)は、柔らかさをはじめしっとり感などの付加物性を向上させる観点から、36.00以下であることが好ましく、35.50以下であることがより好ましく、35.00以下であることが更に好ましい。
<ToおよびTM>
ToおよびTMのそれぞれは、保湿ティシュペーパのシートに圧力を印加した厚み寸法である。Toは、0.5[gf/cm2]の圧力を印加した際の厚みであり、TMは、50.0[gf/cm2]の圧力を印加した際の厚みである。
【0044】
<測定>
圧縮特性に含まれるLC,WC,RC,To,TM,(To-TM)/Toは、下記の環境,装置,対象,方法で測定した。
・測定環境:ISO187に準拠した環境(23℃±1℃,湿度50%(±2%))
・測定装置:KES FB3-AUTO-A自動化圧縮試験機
(カトーテック株式会社製)
・測定対象:10[cm]×20[cm]の大きさにカットしたサンプル
・測定方法:2[cm2]の加圧板と受圧板間に上記の測定対象を設置し、50[秒
/mm]の速さで加圧板を下降させ、その際に変化する圧力とそのとき
のサンプルの厚みを測定した。
【0045】
[2-3.評価]
上述した種々のパラメータが測定された保湿ティシュペーパについて、下記の手法で評価し、この評価結果を下記の対比で述べる。
【0046】
――評価手法――
上述した種々のパラメータが測定された保湿ティシュペーパについて、下記のように評価した。
水準を隠した状態で官能評価を実施した。50人のモニターに実施例1~4および比較例1,2の保湿ティシュペーパのそれぞれを触ってもらい、これらの保湿ティシュペーパの「使用時の破れにくさ(使用感)」,「柔らかさ」および「しっとり感」について、下記の五段階で評価してもらった。「使用時の破れにくさ(使用感)」,「柔らかさ」および「しっとり感」のそれぞれについて、50人のモニターの評価点数の平均値を算出し、この算出値の小数点以下を四捨五入した値を各評価項目の点数とした。
・5点:特に優れている
・4点:特に優れている
・3点:やや優れている
・2点:やや劣る
・1点:劣る
【0047】
― 対比 ――
上記の表1に示されるように、実施例1~4の保湿ティシュペーパは、「使用時の破れにくさ(使用感)」,「柔らかさ」および「しっとり感」の各評価項目において少なくとも3点以上の評価が得られた。
一方、比較例5,6の保湿ティシュペーパは、「使用時の破れにくさ(使用感)」,「柔らかさ」および「しっとり感」の各評価項目において少なくとも一つに2点以下の評価しか得られなかった。
【0048】
上記の対比より、保湿剤の塗布量が25.0[%]以上であって乾燥破裂強度が1.80[N/4枚]以上であって3.00[N/4枚]以下である実施例1~4の保湿ティシュペーパは、「使用時の破れにくさ(使用感)」,「柔らかさ」および「しっとり感」の何れをも確保することができ、基本物性および付加物性を両立することができることがわかる。同様に、湿潤破裂強度が1.70[N/4枚]以上であって2.70[N/4枚]以下であるである実施例1~4の保湿ティシュペーパも、「使用時の破れにくさ(使用感)」,「柔らかさ」および「しっとり感」の全てを確保でき、基本物性および付加物性を両立できることがわかる。
よって、本実施例1~4の保湿ティシュペーパは、官能性を高めることができる。
【0049】
一方、保湿剤の塗布量が25.0[%]未満の比較例5,6の保湿ティシュペーパは、「しっとり感」が2点以下であり、付加物性が確保されていない。さらに、乾燥破裂強度が3.00[N/4枚]よりも大きく湿潤破裂強度が2.70[N/4枚]よりも大きい比較例5の保湿ティシュペーパは、「使用時の破れにくさ」は確保されるものの、「しっとり感」のほか「柔らかさ」も2点以下であり、付加物性が低い評価であった。また、乾燥破裂強度が1.80[N/4枚]よりも小さく湿潤破裂強度が1.70[N/4枚]よりも小さい比較例6の保湿ティシュペーパは、「柔らかさ」は確保されるものの、「しっとり感」のほか「使用時の破れにくさ」が2点以下であり、基本物性が確保されていない。
よって、比較例5,6の保湿ティシュペーパは、官能性を高めることができない。
【0050】
なお、実施例1~4の保湿ティシュペーパは、RC(圧縮回復率)が36.00以下であることにより「柔らかさ」や「しっとり感」などの付加物性が確実に確保されたものと推察される。
そのほか、実施例1~4の保湿ティシュペーパは、HFが80以上であるとこによっても「柔らかさ」や「しっとり感」の付加物性が確実に確保されたものと推察される。
【0051】
[3.調整例]
一実施形態で上述の保湿ティシュペーパは、以下に記す繊維材料,添加剤,製造方法によって得ることができる。
【0052】
[3-1.繊維原料]
本実施形態の保湿ティシュペーパとなる原紙は、繊維原料を含むスラリーを抄紙することによって得られる。この繊維原料にはパルプを用いることが好ましく、このパルプとしては下記の表2に例示するものが挙げられる。なお、本保湿ティシュペーパの原紙に用いられるパルプは、表2に例示されたものに限定されるものではない。表2のパルプは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
【0054】
繊維原料として針葉樹パルプが用いられる場合には、保湿ティシュペーパの原紙に含まれるパルプ成分の全質量に対する針葉樹パルプの含有量が下掲に列挙する値[質量%]以上であることが好ましい。
・好ましい値 :10[質量%]
・より好ましい値 :15[質量%]
・更に好ましい値 :20[質量%]
一方、保湿ティシュペーパの原紙に含まれるパルプ成分の全質量に対する針葉樹パルプの含有量は、下掲に列挙する値[質量%]以下であることが好ましい。
・好ましい値 :90[質量%]
・より好ましい値 :80[質量%]
【0055】
さらに、繊維原料として針葉樹パルプのほかに広葉樹パルプが併用されることが好ましい。この場合には、保湿ティシュペーパの原紙に含まれるパルプ成分の全質量に対する広葉樹パルプの含有量が下掲に列挙する値[質量%]以上であることが好ましい。
・好ましい値 :10[質量%]
・より好ましい値 :20[質量%]
一方、保湿ティシュペーパの原紙に含まれるパルプ成分の全質量に対する広葉樹パルプの含有量は、下掲に列挙する値[質量%]以下であることが好ましい。
・好ましい値 :90[質量%]
・より好ましい値 :85[質量%]
・更に好ましい値 :80[質量%]
上述のような針葉樹パルプや広葉樹パルプの含有量(配合比)とすることにより、原紙(保湿ティシュペーパ)破裂強度や引張強さなどを確保することが容易となる。
【0056】
繊維原料の長さ加重平均繊維長は、下掲に列挙する範囲であることが好ましい。ここでいう「長さ加重平均繊維長」は、原料としての繊維長であり、叩解処理などを施す前の繊維長である。
・針葉樹パルプ:0.50[mm]よりも大きく5.00[mm]以下の範囲
・広葉樹パルプ:0.50[mm]以上であって2.00[mm]以下の範囲
【0057】
なお、保湿ティシュペーパの原紙に含有されるパルプの繊維成分の長さ加重平均繊維長は、下掲に列挙する値[mm]以上であることが好ましい。ここでいう「長さ加重平均繊維長」は、保湿ティシュペーパの原紙に含有されるパルプの繊維成分を離解して得られる繊維成分の繊維長であり、離解繊維長とも称される。
・好ましい値 :0.35[mm]
・より好ましい値 :0.40[mm]
【0058】
一方、この長さ加重平均繊維長(離解繊維長)は、下掲に列挙する値[mm]以下であることが好ましい。
・好ましい値 :5.00[mm]
・より好ましい値 :4.00[mm]
・更に好ましい値 :3.00[mm]
・一層好ましい値 :2.00[mm]
【0059】
上記の長さ加重平均繊維長(離解繊維長)は、繊維成分(パルプ成分)として針葉樹パルプと広葉樹パルプが併用されている場合には、両方のパルプの繊維長から離解繊維長の長さ加重平均繊維長が算出され、下記の測定方法で算出された繊維長である。
<測定方法>
まず、原紙を水に離解させて得られた繊維分散スラリーを用意する。繊維分散
スラリーは、500[ml]の水の中に、繊維成分が0.002[質量%]
以上0.01[質量%]以下となるよう希釈液を作製し、繊維長測定装置(Va
lmet社、Valmet FS5)を用いて測定し、離解繊維の長さ加重平均
値を算出する。
上述のような平均繊維長とすることにより、原紙(保湿ティシュペーパ)破裂強度や引張強さなどを確保することが容易となる。
【0060】
そのほか、保湿ティシュペーパの原紙に含有されるパルプの繊維成分のフリーネスは、特に限定されるものではないが、たとえば下掲に列挙する下限値以上であることが好ましく、下掲の上限値以下であることが好ましい。
・好ましい下限値 :350[ml]
・より好ましい下限値:400[ml]
・更に好ましい下限値:450[ml]
・好ましい上限値 :800[ml]
【0061】
フリーネスは、JIS P 8121に規定するカナダ標準ろ水度(C.S.F.)で示される値であり、繊維の叩解の度合いを示す値である。繊維の叩解は、繊維を分散させた紙料(スラリー)に対して、ビーダー,ディスクリファイナーといった公知の叩解機を用いて実施することができる。通常、繊維のフリーネスの値が小さいほど、叩解の度合いが強く、叩解による繊維の損傷が大きくてフィブリル化が進行している。繊維のフィブリル化が進行すると繊維間の結合点数が増加するため、強度が向上する。
【0062】
[3-2.添加剤]
本実施形態の保湿ティシュペーパの原紙には、上述の原料のほかに下記の表3に示す任意成分(添加剤)が含まれていてもよい。この場合には、表3の最右列に例示する割合で各種別の任意成分が含有されることが好ましい。なお、表3の任意成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0063】
【0064】
[3-3.製造方法]
本実施形態の保湿ティシュペーパを製造する方法には、下記の三工程が含まれる。
・前処理工程:抄紙工程の原料の前処理を実施する工程
・ 抄紙工程:前処理工程で処理された原料を抄紙する工程
・後処理工程:抄紙工程で得られた原紙の後処理を実施する工程
【0065】
――前処理工程――
前処理工程には、少なくとも繊維原料を含むスラリーを得る工程(以下「スラリー工程」と称する)が含まれる。スラリー工程には、繊維原料を叩解する工程(以下「叩解工程」と称する)を含むことが好ましい。叩解工程においては、たとえばダブルディスクリファイナーなどを用いて叩解処理を施すことができる。この叩解処理時には、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプをそれぞれ単独で叩解してもよいし、これらのパルプを混合させた後に叩解してもよい。
上記の前処理工程には、繊維原料を漂白する工程(以下「漂白工程」と称する)が含まれていてもよい。漂白工程で使用される漂白剤としては、酸素系漂白剤や塩素系漂白剤といった公知の漂白剤が挙げられる。
【0066】
――抄紙工程――
抄紙工程で用いられる抄紙機としては、円網タイプや長網タイプのサクションブレストフォーマー,ツインワイヤーフォーマー,CラップタイプやSラップタイプの円網フォーマー,クレセントフォーマーといった種々の紙機が挙げられる。
抄紙工程におけるスラリーの形成方法としては、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプを混合したパルプスラリーを抄紙して均一な一つの層として湿紙を形成する方法,針葉樹パルプ層と広葉樹パルプ層を抄き合わせて一枚の湿紙を形成する方法などが挙げられ、これらの形成方法の何れの方法を採用してもよい。
【0067】
抄紙工程では、保湿ティシュペーパの縦方向の引張強さ(引張強度)をTとするとともに横方向の引張強さ(引張強度)をYとした場合に、Y/T比が35[%]以上であって65[%]以下となるように下記のジェットワイヤー比を調整することが好ましい。このようなジェットワイヤー比とすることにより、原紙(保湿ティシュペーパ)破裂強度や引張強さなどを確保することが容易となる。
ジェットワイヤー比〈J/W比〉=抄き出し水流速度/ワイヤー速度
ジェットワイヤー比とは、スラリーの供給速度とワイヤー走行速度との比であり、ジェットワイヤー比が1よりも大きい場合は、スラリーの供給速度がワイヤーの走行速度よりも速く、「押し地合」と称される。一方、ジェットワイヤー比が1未満の場合は、スラリーの供給速度がワイヤーの走行速度よりも遅く、この場合を「引き地合」と称される。
【0068】
上記の抄紙工程では、網状のワイヤー上に繊維原料を含むスラリーが供給されてパルプの薄層が形成される。その後、以下に列挙する各工程が実施される。
・脱水工程:パルプの薄層を脱水して湿紙を得る工程
・搾水工程:脱水工程で得られた湿紙をプレスして搾水する工程(プレス工程)
・乾燥工程:搾水工程でプレスされた湿紙を乾燥させる工程
【0069】
<脱水工程および搾水工程>
脱水工程では、搾水工程へ向けてパルプの薄層の水分が網状のワイヤーの下へ抜かれる。この脱水工程で薄層が搾水されると湿紙が得られる。なお、脱水工程で用いられるワイヤーには、一般に金属またはプラスチック製の網を環にしたものが用いられる。
搾水工程では、脱水工程で得られた湿紙をワイヤーからフェルトへと移動し、このフェルトを介してプレスロールで湿紙に圧力が印加されることにより、湿紙が機械的に搾水される。
【0070】
<乾燥工程>
乾燥工程としては、湿紙に向かって熱風を吹き付ける工程や湿紙をヤンキードライヤーの外周面に圧着させる工程が好ましい。ヤンキードライヤーによる乾燥工程では、乾燥された紙をヤンキードライヤーからドクターブレードで掻き取ることにより、ちりめん上の皺を形成させるクレープ処理(クレープ工程)を実施することが好ましい。
【0071】
本製造方法でクレープ処理された原紙(クレープ紙)を本実施形態の保湿ティシュペーパに用いる場合には、そのクレープ率が10[%]以上であって30[%]以下であることが好ましい。クレープ率を10[%]以上とすることで、原紙ないしプライに柔らかさを付与することができる。一方、クレープ率を30[%]以下とすることで、原紙ないしプライの厚みを出すことができ、手触りがよく、高級感のあるローションペーパーを得ることができる。
上記のクレープ率は、クレープ率を「Rc[%]」とし、抄紙機のドライヤーシェルの周速を「Va[m/分]」とし、巻き取りロールの周速の「Vb[m/分]」としたときに、下記の式によって算出することができる。
Rc={(Va-Vb)/Vb}×100
【0072】
――後処理工程――
後処理工程には、乾燥工程で乾燥された原紙を巻き取る巻取工程が少なくとも含まれ、乾燥工程の後であって巻取工程の前にカレンダー工程が含まれていてもよい。
カレンダー工程では、乾燥工程で乾燥された原紙のカレンダー処理が実施される。このカレンダー処理としては、二本の金属ロールによるカレンダー処理や、二本のロールのうち一本を弾性ロールとするソフトカレンダー処理などが挙げられる。
【0073】
カレンダー処理におけるカレンダーの線圧は、たとえば下掲に列挙する下限値以上であることが好ましく、下掲の上限値以下であることが好ましい。線圧を下掲の範囲内とすることにより、原紙を所望の厚みと柔らかさに調整することが容易となる。
・好ましい下限値 :0.1[kg/cm]
・より好ましい下限値:1.0[kg/cm]
・更に好ましい下限値:2.0[kg/cm]
・好ましい上限値 :13.0[kg/cm]
・より好ましい上限値:12.0[kg/cm]
・更に好ましい上限値:11.0[kg/cm]
【0074】
なお、上述した実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。