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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/70 20160101AFI20231031BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20231031BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20231031BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231031BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20231031BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20231031BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231031BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20231031BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/40
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/80
H01F38/14
B60M7/00 X
B60L53/122
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020108703
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006477
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】大西 邦光
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-517265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154353(US,A1)
【文献】特開2014-150698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/70
H02J 50/40
H02J 50/10
H02J 7/00
H02J 50/80
H01F 38/14
B60M 7/00
B60L 53/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動車(RT1~RTm)に非接触で給電する非接触給電装置であって、
電力を非接触で送電する複数の送電装置(PTD)と、
前記送電装置から出力される電力を非接触で受電し、受電した電力を前記移動車の蓄電装置(BT)に供給する受電装置(PRD)と、を備え、
複数の前記送電装置には、4以上の前記送電装置が所定方向に列をなして並んで配置される送電装置群(PTU)が含まれ、
前記送電装置は、導体が捲回されたコイル部(21A)および前記コイル部からの磁束を誘導するコア部(22A)を有する送電コイル(20)を備え、前記送電コイルに流れる電流の位相を調整可能に構成され、
前記送電装置群のうち、前記所定方向の一方側に位置する4つの前記送電装置を第1装置(PTD1)、第2装置(PTD2)、第3装置(PTD3)、第4装置(PTD4)としたとき、前記第1装置、前記第2装置、前記第3装置、前記第4装置は、この順に前記送電装置群における前記所定方向の一方側の端部からの距離が大きくなるように配置され、
前記第2装置および前記第3装置は、通電時に各々の前記送電コイルに生ずる磁界の向きが、通電時に前記第1装置の前記送電コイルに生ずる磁界の向きと逆の方向となるように電流の位相が調整され、
前記第4装置は、通電時に前記第4装置の前記送電コイルに生ずる磁界の向きが通電時に前記第1装置の前記送電コイルに生ずる磁界の向きと同じ方向となるように電流の位相が調整される非接触給電装置。
【請求項2】
前記送電装置群は、5以上の前記送電装置が前記所定方向に列をなして並んで配置され、
前記送電装置群のうち、前記所定方向の他方側に位置する4つの前記送電装置を第5装置、第6装置、第7装置、第8装置としたとき、前記第5装置、前記第6装置、前記第7装置、前記第8装置は、この順に前記送電装置群における前記所定方向の他方側の端部からの距離が大きくなるように配置され、
前記第6装置および前記第7装置は、通電時に各々の前記送電コイルに生ずる磁界の向きが、通電時に前記第5装置の前記送電コイルに生ずる磁界の向きと逆の方向となるように電流の位相が調整され、
前記第8装置は、通電時に前記第8装置の前記送電コイルに生ずる磁界の向きが通電時に前記第5装置の前記送電コイルに生ずる磁界の向きと同じ方向となるように電流の位相が調整される請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記送電装置群は、一部の前記送電装置がマスタ装置となり、他の前記送電装置がスレーブ装置となるように各々の装置がマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続されている請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隣り合う送電装置の一方の送電コイルに交流電流を供給し、当該交流電流との位相差が180度となる交流電流を他方の送電コイルに供給することで、漏洩電磁界の低減を図った非接触給電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-5393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、4以上の送電装置が所定方向に列をなして並んで配置される送電装置群において、隣り合う送電装置に位相差が180度となる交流電流を供給した際に生ずる漏洩電磁界について検討した。これによると、送電装置群の端部側では、漏洩電磁界を思ったように低減できず、依然として改善の余地があることが判った。
【0005】
本開示は、送電装置群のうち少なくとも一方の端部側での漏洩電磁界を抑制可能な非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
移動車(RT1~RTm)に非接触で給電する非接触給電装置であって、
電力を非接触で送電する複数の送電装置(PTD)と、
送電装置から出力される電力を非接触で受電し、受電した電力を移動車の蓄電装置(BT)に供給する受電装置(PRD)と、を備え、
複数の送電装置には、4以上の送電装置が所定方向に列をなして並んで配置される送電装置群(PTU)が含まれ、
送電装置は、導体が捲回されたコイル部(21A)およびコイル部からの磁束を誘導するコア部(22A)を有する送電コイル(20)を備え、送電コイルに流れる電流の位相を調整可能に構成され、
送電装置群のうち、所定方向の一方側に位置する4つの送電装置を第1装置(PTD1)、第2装置(PTD2)、第3装置(PTD3)、第4装置(PTD4)としたとき、第1装置、第2装置、第3装置、第4装置は、この順に送電装置群における所定方向の一方側の端部からの距離が大きくなるように配置され、
第2装置および第3装置は、通電時に各々の送電コイルに生ずる磁界の向きが、通電時に第1装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと逆の方向となるように電流の位相が調整され、
第4装置は、通電時に第4装置の送電コイルに生ずる磁界の向きが通電時に第1装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと同じ方向となるように電流の位相が調整される。
【0007】
これによると、送電装置群では、第1装置に近い第2装置および第3装置それぞれの送電コイルに生ずる漏洩電磁界が第1装置に生ずる漏洩電磁界を打ち消すように作用する。この場合、従来の如く、第3装置の送電コイルに生ずる磁界の向きを第1装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと同じ方向にする場合に比べて、第1装置に生ずる漏洩電磁界を充分に低減させることができる。
【0008】
また、第4装置の送電コイルに生ずる磁界の向きが、第2装置および第3装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと逆の方向になっているので、第2装置および第3装置の送電コイルに生ずる漏洩電磁界が必要以上に過大になってしまうことを抑制できる。
【0009】
したがって、本開示の非接触給電装置によれば、送電装置群のうち少なくとも一方側の端部側での漏洩電磁界の低減させることができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る非接触給電装置が適用される部品組付システムの各種構成機器の工場内における配置例を示す模式的な上面図である。
図2】実施形態に係る非接触給電装置の送電側および受電側の各種構成機器を示す模式図である。
図3】実施形態に係る非接触給電装置の模式的な全体構成図である。
図4】実施形態に係る非接触給電装置の各送電装置における制御回路同士を接続する伝送ラインを説明するための説明図である。
図5】実施形態に係る非接触給電装置の送電パッドと受電パッドとが対向している状態を示す模式的な斜視図である。
図6】実施形態に係る非接触給電装置の送電パッドをコイル軸方向から見た図である。
図7】実施形態に係る非接触給電装置の受電パッドをコイル軸方向から見た図である。
図8】実施形態に係る非接触給電装置の隣り合う送電装置の配置態様を示す模式的な斜視図である。
図9】実施形態に係る非接触給電装置の各送電装置への電流の流し方を説明するための説明図である。
図10】20台の送電装置に対して第1パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際のX-Y平面での漏洩電磁界のコンター図である。
図11】4台の送電装置に対して第2パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際のX-Y平面での漏洩電磁界のコンター図である。
図12】20台の送電装置に対して第2パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際のX-Y平面での漏洩電磁界のコンター図である。
図13】各送電装置に対して第2パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際の遠方漏洩電磁界の打ち消し効果を説明するための説明図である。
図14】実施形態に係る非接触給電装置において各送電装置に第3パターンに対応する電流を流す際の各インバータ回路のスイッチング素子の状態を説明するための説明図である。
図15】各送電装置に対して第3パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際の遠方漏洩電磁界の打ち消し効果を説明するための説明図である。
図16】4台の送電装置に対して第3パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際のX-Y平面での漏洩電磁界のコンター図である。
図17】20台の送電装置に対して第3パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際のX-Y平面での漏洩電磁界のコンター図である。
図18】4台の送電装置に対して第2パターンおよび第3パターンに対応する電流を流して給電する際の漏洩電磁界との差を説明するため説明図である。
図19】20台の送電装置に対して各パターンに対応する電流を流して給電する際の漏洩電磁界との差を説明するため説明図である。
図20】変形例に係る非接触給電装置の各送電装置における制御回路同士を接続する伝送ラインを説明するための説明図である。
図21】6台の送電装置に対して第2パターンに対応する電流を流して電力を伝送する際のX-Y平面での漏洩電磁界のコンター図である。
図22】6台の送電装置に対して変形例で示すパターンに対応する電流を流して電力を伝送する際のX-Y平面での漏洩電磁界のコンター図である。
図23】6台の送電装置に対して第2パターンおよび変形例に示すパターンに対応する電流を流して給電する際の漏洩電磁界との差を説明するため説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態について図1図19に基づいて説明する。本実施形態では、移動型ロボットRT1~RTmを用いた部品組付システムに本開示の非接触給電装置1を適用した例について説明する。各図面では、重力の方向である鉛直方向をZ方向とし、水平方向の一方向をX方向とし、Z方向およびX方向それぞれに直交する方向をY方向としている。
【0013】
部品組付システムは、工場内に構築されたオートメーションシステムである。図1に示すように、部品組付システムは、工場内に設定された2列の組付ラインAL1、AL2を有する。部品組付システムは、2列の組付ラインAL1、AL2それぞれに配置されるm台の移動型ロボットRT1~RTmによって部品Pの組付作業を実施する。
【0014】
2列の組付ラインAL1、AL2は、基本的な構成要素が同様である。本実施形態では、2列の組付ラインAL1、AL2それぞれの構成要素に対して同一の参照符号を付して説明する。
【0015】
組付ラインAL1、AL2には、移動型ロボットRT1~RTmよりも多いn個の棚SFが、Y方向に沿って一列に並んで配置されている。図1等では、一列に並ぶ棚SFを個別に特定できるように、棚SFの「SF」に対してY方向の一端側から数えた際の数字等を付加している。例えば、Y方向の一方側の端にある棚SFを「SF1」とし、Y方向の他方側の端にある棚SFを「SFn」としている。
【0016】
複数の棚SFそれぞれには、複数の通い箱RBがX方向に沿って並んで配置されている。通い箱RBは、或る製品を構成する複数種の部品Pを収容するための箱である。同じ棚SFに配置される通い箱RB(すなわち、X方向に並ぶ通い箱RB)には、同種の部品Pが収容されている。また、異なる棚SFに収容される通い箱RB(すなわち、Y方向に並ぶ通い箱RB)には、異種の部品Pが収容されている。
【0017】
図2に示すように、複数の棚SFそれぞれには、通い箱RBをY方向にスライド移動させる搬送装置CDが設けられている。この搬送装置CDによって、複数の棚SFの間で通い箱RBを入れ替えることが可能になっている。
【0018】
複数の棚SFそれぞれには、X方向のうち移動型ロボットRT1~RTmの移動経路MR側に、非接触給電装置1の一部を構成する送電装置PTDが設けられている。具体的には、送電装置PTDは、各棚SFの移動経路MR側の側面に対して取り付けられている。本実施形態の組付ラインAL1、AL2には、各棚SFに対応してn個の送電装置PTDが設けられている。複数の送電装置PTDには、4以上の送電装置PTDが所定方向に列をなして並ぶ送電装置群PTUが含まれる。本実施形態では、n個の送電装置PTDがY方向に沿って所定の間隔(例えば、1m程度)をあけて配置されている。このため、送電装置群PTUは、Y方向に沿って列をなして並んで配置されたn個の送電装置PTDで構成される。なお、本実施形態の送電装置群PTUは、4台または4の倍数となる台数の送電装置PTDで構成される。
【0019】
ここで、図1等では、一列に並ぶ送電装置PTDを個別に特定できるように、送電装置PTDの「PTD」に対してY方向の一端側から数えた際の数字を付加している。例えば、Y方向の一方側の端にある送電装置PTDを「PTD1」とし、Y方向の他方側の端にある送電装置PTDを「PTDn」としている。
【0020】
送電装置PTDは、電力を非接触で送電するための装置である。送電装置PTDは、移動型ロボットRT1~RTmに搭載された受電装置PRDを介して移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTに電力を供給する。送電装置PTDの詳細は後述する。
【0021】
図2および図3に示すように、送電装置PTDは、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に並列接続されている。AD/DCコンバータADCは、系統電源SPの商用周波数の電圧を直流電圧に変換する電圧変換装置である。
【0022】
系統電源SPは、電力会社等によって提供され電力網である電力系統から電力を受ける交流電源である。系統電源SPは、例えば、出力電圧200V、周波数60Hzとなる三相の交流電圧を出力する。なお、系統電源SPは、出力電圧200V、周波数50Hzとなる単相の交流電圧を出力するようになっていてもよい。
【0023】
ここで、移動型ロボットRT1~RTmの移動経路MRは、複数の棚SFそれぞれの側方に設定され、Y方向に沿って延びている。移動経路MRにおいて送電装置PTDが配置されている位置が、移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTを充電するための充電スポットになっている。
【0024】
移動型ロボットRT1~RTmは、複数の棚SFの間を移動して必要な部品Pを通い箱RBからピックアップするとともに、複数の棚SFの間を移動する間にピックアップした部品同士の組付作業を実施する。移動型ロボットRT1~RTmは、運搬台車CV、マニピュレータMP、蓄電装置BT、機器制御回路CU、受電装置PRDを含んでいる。本実施形態では、移動型ロボットRT1~RTmが本開示の移動車に対応している。
【0025】
運搬台車CVは、マニピュレータMP等が設置される土台BS、図示しない電動モータによって回転駆動される車輪WLを有する。運搬台車CVは、機器制御回路CUからの指令に基づいて、車輪WLが回転駆動されることで任意の棚SFの前に移動可能になっている。
【0026】
マニピュレータMPは、双腕型のロボットアームAM1、AM2を備える。マニピュレータMPは、機器制御回路CUからの指令に基づいて、部品Pのピッキング作業や組付作業を実施可能になっている。マニピュレータMPは、例えば、一方のロボットアームAM1で通い箱RBからピックアップした部品Pを他方のロボットアームAM2と協働して他の部品Pに対して組み付ける。
【0027】
蓄電装置BTは、運搬台車CVの車輪WLおよびマニピュレータMP等の電気負荷ELの電力源である。蓄電装置BTは、リチウムバッテリLB、リチウムバッテリLBの蓄電残量(SOC:State Of Chargeの略称)を検出するSOC検出回路SCを備える。リチウムバッテリLB、充電および放電が可能な非水系の二次電池である。リチウムバッテリLBは、送電装置PTDから送電される電力を蓄えることが可能になっている。
【0028】
機器制御回路CUは、プロセッサおよびメモリを含むコンピュータ、当該コンピュータの周辺回路等によって構成されている。機器制御回路CUは、予めメモリに記憶されるコンピュータプログラムにしたがって各種の機器制御処理を実行する。この機器制御処理の実行によって運搬台車CVの車輪WLおよびマニピュレータMP等の電気負荷ELを制御する。
【0029】
受電装置PRDは、送電装置PTDから出力される電力を非接触で受電し、受電した電力を移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTに対して供給する装置である。受電装置PRDは、送電装置PTDとともに非接触給電装置1を構成している。
【0030】
ここで、図1等では、移動型ロボットRT1~RTmの受電装置PRDを個別に特定できるように、「PRD」に対してY方向の一端側から数えた際の数字を付加したものを受電装置PRDの参照符号としている。例えば、Y方向の一方側の端にある移動型ロボットRT1の受電装置PRDを「PRD1」とし、Y方向の他方側の端にある移動型ロボットRTmの受電装置PRDを「PRDm」としている。
【0031】
以下、非接触給電装置1の全体構成について図3を参照しつつ説明する。非接触給電装置1は、図2および図3に示すように、n台(n≧4)の送電装置PTDおよびm台(4≦m<n)の受電装置PRDを含んでいる。非接触給電装置1は、送電装置PTDおよび受電装置PRDがX方向に対向するように移動型ロボットRT1~RTmが位置合わせされると、送電装置PTDから受電装置PRDへと電力が供給されるように構成されている。
【0032】
送電装置PTDそれぞれは、送電コイル20、インバータ回路21、受電装置PRD側と通信する通信回路22、制御回路23、受光素子24等を備える。
【0033】
インバータ回路21は、送電コイル20に対して交流電流を出力するものである。インバータ回路21は、第1スイッチング素子211、第2スイッチング素子212、第3スイッチング素子213、第4スイッチング素子214、平滑コンデンサ215を備える。インバータ回路21は制御回路23によって制御される。
【0034】
平滑コンデンサ215は、AC/DCコンバータADCの出力電圧を平滑化するためのものである。平滑コンデンサ215は、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に接続されている。
【0035】
第1スイッチング素子211および第2スイッチング素子212は、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に直列に接続されている。第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214は、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に直列に接続されている。第1スイッチング素子211および第2スイッチング素子212の直列接続体と第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214の直列接続体とは、電気的に並列に接続されている。
【0036】
各スイッチング素子211、212、213、214は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ等の各種の半導体素子が用いられる。
【0037】
第1スイッチング素子211および第2スイッチング素子212の接続部T1、第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214の接続部T2は、インバータ回路21における交流電圧の出力電極を構成している。インバータ回路21は、各スイッチング素子211、212、213、214のスイッチングによって、AC/DCコンバータADCの出力電圧に基づいて接続部T1、T2から交流電圧を出力する。インバータ回路21の制御方式は、例えば、フェーズ・シフト型のPWM制御が用いられる。
【0038】
送電コイル20は、インバータ回路21を流れる交流電流に基づいて電磁誘導によって送電する。送電コイル20は、互いに直列に接続されている。送電コイル20は、インバータ回路21の接続部T1、T2の間に接続されている。送電コイル20の詳細は後述する。
【0039】
制御回路23は、プロセッサおよびメモリを含むコンピュータ、当該コンピュータの周辺回路等によって構成されている。制御回路23は、予めメモリに記憶されるコンピュータプログラムにしたがって各種の制御処理を実行する。この制御処理の実行によってインバータ回路21等を制御する。
【0040】
受光素子24は、受電装置PRDに設けられた発光素子37とともに、送電装置PTDと受電装置PRDとの距離を測る距離センサDSを構成している。受光素子24は、発光素子37が発する光(例えば、赤外線)の強度を示す検出信号を出力する。
【0041】
ここで、各送電装置PTD1~PTDmは、一部がマスタ装置となり、他がスレーブ装置となるように、各々の装置がマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続されている。すなわち、各送電装置PTD1~PTDmは、各々のインバータ回路21を同期して駆動可能なように各々の制御回路23がマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続されている。各送電装置PTD1~PTDmは、Y方向の一方側に位置する送電装置PTD1の制御回路23が伝送ラインである差動ラインLのドライバDVを構成し、他の送電装置PTD2~PTDmの制御回路23が差動ラインLのレシーバRVを構成している。
【0042】
図4は、一列に並ぶ4台の第1送電装置PTD1、第2送電装置PTD2、第3送電装置PTD3、第4送電装置PTD4によって送電装置群PTUが構成される場合の各送電装置PTD1~PTD4の伝送形態を示している。
【0043】
図4に示すように、各送電装置PTD1~PTD4は、Y方向の一方側に位置する第1送電装置PTD1の制御回路23の一部が伝送ラインである差動ラインLのドライバDPを構成する。また、第2送電装置PTD2、第3送電装置PTD3、第4送電装置PTD4の制御回路23の一部が差動ラインLのレシーバRVを構成している。伝送ラインである差動ラインLの末端には、100Ω程度の抵抗値を有する終端抵抗ERが配置されている。
【0044】
マスタ装置である第1送電装置PTD1の制御回路23は、第2送電装置PTD2、第3送電装置PTD3、第4送電装置PTD4に対して同期信号および各スイッチング素子211~214の操作信号を出力する。
【0045】
一方、受電装置PRDは、受電コイル30、整流回路31、チョークコイル32、平滑コンデンサ33、電流センサ34、電圧センサ35、送電装置PTD側と通信する通信回路36、発光素子37、制御回路38等を備える。
【0046】
受電コイル30は、送電コイル20からの電磁誘導によって受電する。受電コイル30は、互いに直列に接続されている。受電コイル30は、送電コイル20と対向可能なように所定の間隔をあけて配置されている。受電コイル30の詳細は後述する。
【0047】
整流回路31は、受電コイル30から出力される交流電圧を整流し、整流した電圧を出力電極315、316から出力する。整流回路31は、第1ダイオード311、第2ダイオード312、第3ダイオード313、第4ダイオード314を有するブリッジ回路で構成されている。第1ダイオード311および第4ダイオード314は、受電コイル30の出力電極P1、P2の間に直列に接続されている。第2ダイオード312および第3ダイオード313は、受電コイル30の出力電極P1、P2の間に直列に接続されている。第1ダイオード311および第4ダイオード314の直列接続体と第2ダイオード312および第3ダイオード313の直列接続体とは、電気的に並列に接続されている。
【0048】
ここで、受電コイル30の出力電極P1は、第1ダイオード311のアノード電極と第2ダイオード312のカソード電極との接続部である。また、受電コイル30の出力電極P2は、第3ダイオード313のカソード電極と第4ダイオード314のアノード電極との接続部である。
【0049】
チョークコイル32および平滑コンデンサ33は、整流回路31の出力電力の脈動を抑えるフィルタ回路を構成する。チョークコイル32は、整流回路31の出力電極315と平滑コンデンサ33の正極電極との間に直列に接続されている。平滑コンデンサ33は、整流回路31の出力電極315、316の間に接続されている。
【0050】
整流回路31の出力電極315は、第1ダイオード311および第4ダイオード314のカソード電極同士の接続部である。また、整流回路31の出力電極316は、第2ダイオード312および第3ダイオード313のアノード電極同士の接続部である。
【0051】
電流センサ34および電圧センサ35は、蓄電装置BTと整流回路31との間に設けられている。電流センサ34は、蓄電装置BTの負極端子から整流回路31の出力電極316に流れる電流を検出する。電圧センサ35は、蓄電装置BTの両端子間の電圧を検出する。
【0052】
発光素子37は、受光素子24とともに距離センサDSを構成している。発光素子37は、光(例えば、赤外線)を発する発光ダイオードで構成される。発光素子37は、制御回路38によって作動が制御される。
【0053】
制御回路38は、プロセッサおよびメモリを含むコンピュータ、当該コンピュータの周辺回路等によって構成されている。制御回路38は、予めメモリに記憶されるコンピュータプログラムにしたがって各種の制御処理を実行する。
【0054】
制御回路38は、送電装置PTD側の制御回路23と協働して、蓄電装置BTへの充電を行う充電制御処理等を実行する。例えば、充電制御処理では、蓄電装置BTのSOCが所定値以下になると、制御回路38が通信回路36を介して蓄電装置BTへの給電を要求する給電信号を送電装置3側に送信する。そして、充電制御処理では、例えば、送電装置3が通信回路22で受信した給電信号、受光素子24で検出される光の強度等に基づいてインバータ回路21を制御する。
【0055】
次に、本実施形態の送電コイル20および受電コイル30の詳細について図5図7を参照する。
【0056】
図5および図6に示すように、送電コイル20は、送電パッドTPを構成するもので、磁束を遮蔽するカバーCで覆われている。このカバーCは、送電コイル20の双方を覆うことが可能な大きさを有する。カバーCは、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
【0057】
送電コイル20は、コイル軸心がX方向に沿って延びる姿勢で配置されている。なお、コイル軸心は、送電コイル20の巻線の中心軸である。送電コイル20は、導体が捲回されたコイル部21Aおよび通電時にコイル部21Aに生ずる磁束を誘導するコア部22Aを有する。
【0058】
コイル部21Aは、図示しないボビンに対して導体であるリッツ線が捲回された巻線である。本実施形態のコイル部21Aは、10ターン程度の巻き数になっている。
【0059】
コア部22Aそれぞれは、磁性材料であるフェライトで形成されるフェライトコアで構成されている。コア部22Aは、コイル部21Aの一部を覆う形状になっている。本実施形態のコア部22Aは、断面形状が「E」の字となる形状を有する。
【0060】
具体的には、コア部22Aは、コイル軸方向においてコイル部21Aに対向する主面部221、主面部221に連なるとともにコイル軸方向の直交する方向においてコイル部21Aの最外周面と対向する一対の側面部222、223を有する。具体的には、コア部22Aは、コイル部21Aを支持するセンタポール224を有するE型のコアで構成されている。
【0061】
主面部221は、X-Z平面に拡がる板状に形成されている。一対の側面部222、223は、コイル部21Aを介して互いに対向するように主面部221に立設されている。具体的には、一対の側面部222、223は、主面部221におけるZ方向の両端部からX方向の一方に向けて突き出ている。センタポール224は、コイル部21Aの中央部分(図示しないボビンの中央部分)を保持するものである。センタポール224は、一対の側面部222、223の間に配置され、主面部221におけるZ方向の中央部分からX方向の一方に向けて突き出ている。
【0062】
図5および図7に示すように、受電コイル30は、受電パッドRPを構成するもので、磁束を遮蔽するカバーCで覆われている。このカバーCは、受電コイル30の双方を覆うことが可能な大きさを有する。カバーCは、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
【0063】
受電コイル30は、送電コイル20と基本的に共通の構造になっている。このため、受電コイル30における各構成要素に関する説明を簡略化する。
【0064】
受電コイル30は、コイル軸心がX方向に沿って延びる姿勢で配置されている。受電コイル30は、導体が捲回されたコイル部31Aおよび通電時にコイル部31Aに生ずる磁束を誘導するコア部32Aを有する。
【0065】
受電コイル30のコイル部31Aは、送電コイル20のコイル部21Aよりも少ない巻き数(例えば、1ターン)になっている。これにより、受電装置PRDは大電流に対応可能になっている。
【0066】
受電コイル30のコア部32Aは、送電コイル20のコア部22Aと線対称となるように配置され、送電コイル20のコア部22Aとともに磁気経路(すなわち、磁路)を形成する。具体的には、コア部32Aは、コイル部31Aに対向する主面部321、主面部321に連なる一対の側面部322、323、コイル部31Aを支持するセンタポール324を有するE型のコアで構成されている。
【0067】
ここで、図8に示すように、隣り合う送電装置PTDは、Y方向に所定の間隔(例えば、1m程度)をあけて配置されている。隣り合う送電装置PTDは、各々のコイル部31Aの間に各々の側面部322、323が介在しないように、各々の側面部322、323が一列に並ぶように配置されている。隣り合う送電装置PTDは、各々の側面部222、223がY方向に沿って一列に並ぶように配置されている。
【0068】
このように構成される非接触給電装置1は、送電装置PTDから受電装置PRDに電力を供給する際、送電コイル20と受電コイル30とが互いに対向する位置に位置決めされた状態で、送電コイル20に電流を供給する。具体的には、送電装置PTDから受電装置PRDに電力を供給する際には、送電コイル20および受電コイル30は、X方向に所定の隙間をあけて対向する位置に位置決めされる。これにより、送電コイル20および受電コイル30は、非接触状態でトランス結合され、電磁誘導が効率よく行われる。
【0069】
次に、部品組付システムの作動の概略を説明する。部品組付システムは、機器制御回路CUによって運搬台車CVの車輪WLが駆動されると、移動型ロボットRT1~RTmが移動経路ML上を移動する。
【0070】
移動型ロボットRT1~RTmは、所定の棚SFの通い箱RBの前で停止し、マニピュレータMPによって通い箱RBから所望の部品Pをピックアップする。マニピュレータMPで部品Pをピックアップすると、移動型ロボットRT1~RTmは、部品Pの組付作業を実施しながら次に組み付ける部品Pがバラ積みされた通い箱RBの前に移動する。そして、当該通い箱RBの前で停止して、次に組み付ける部品Pをピックアップする。
【0071】
このように、部品組付システムでは、部品Pのピッキングおよび組付作業が移動型ロボットRT1~RTmによって自動的に繰り返される。
【0072】
非接触給電装置1は、受光素子24で検出される受光強度に基づいて、通い箱RBの前で停止しているか否かを判定する。そして、移動型ロボットRT1~RTmが通い箱RBの前で停止している場合に、各棚SFに設けた送電装置PTDから移動型ロボットRT1~RTmの受電装置PRDに向けて電力を供給する。すなわち、非接触給電装置1は、マニピュレータMPで部品Pをピックアップしている間に、送電装置PTDから受電装置PRDに向けて電力を供給する。受電装置PRDは、送電装置PTDからの受電電力を整流回路31で整流した後、蓄電装置BTに充電する。
【0073】
以上の如く、非接触給電装置1は、部品Pのピッキング時に移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTを充電する。非接触給電装置1によると、従来の如く、棚SFが配置されたエリアとは異なるエリアに移動型ロボットRT1~RTmの給電エリアを設定するものに比べて、給電に伴う稼働率低下を抑え、コストの高い移動型ロボットRT1~RTmの余剰を減らすことができる。すなわち、移動型ロボットRT1~RTmに対して非接触給電装置1を適用することで、余剰ロボットを減らして設備導入コストを削減できる。
【0074】
但し、例えば、単純に1m程度の間隔をあけて送電装置PTDを設置すると、複数台の移動型ロボットRT1~RTmを同時に充電する際に、送電パッドTPおよび受電パッドRPに生ずる漏洩電磁界が合成され、遠方に生ずる漏洩電磁界が規制値を超えてしまう。
【0075】
ここで、従来までの非接触給電装置1では、例えば、図9の第1パターンに示すように、送電装置群PTUを構成する各送電装置PTD1~PTDmの送電コイル20に同位相の電流を流し、複数台の移動型ロボットRT1~RTmを同時に充電する場合がある。この場合、各々の送電装置PTDおよび受電装置PRDに生ずる漏洩電磁界が合成される。
【0076】
図10は、各々の送電装置PTDの送電コイル20に第1パターンの電流(同位相の電流)を流して20台の移動型ロボットRT1~RTmを充電した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。なお、図10は、送電パッドTPおよび受電パッドRPの隙間が4mm、送電パッドTPおよび受電パッドRPが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=4mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)での磁束分布を示している。
【0077】
図10に示すように、各々の送電装置PTDの送電コイル20に同位相の電流を流す場合、各々の送電装置PTDおよび受電装置PRDに生ずる漏洩電磁界が合成される。これにより、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界が規制値を示すVaを超えてしまう。
【0078】
これに対して、例えば、図9に示す第2パターンのように、隣り合う送電装置PTD1~PTDmの送電コイル20に位相差が180度となる交流電流(逆位相の電流)を流して、複数台の移動型ロボットRT1~RTmを同時に充電することが考えられる。この場合、隣り合う送電装置PTDおよび受電装置PRDに生ずる漏洩電磁界が互いに打ち消し合うように作用する。
【0079】
図11は、隣り合う送電装置PTDの送電コイル20に第2パターンの電流(逆位相の電流)を流して4台の移動型ロボットRT1~RTmを充電した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。また、図12は、隣り合う送電装置PTDの送電コイル20に第2パターンの電流を流して20台の移動型ロボットRT1~RT20を充電した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。なお、図11および図12は、送電パッドTPおよび受電パッドRPの隙間が4mm、送電パッドTPおよび受電パッドRPが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=4mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)での磁束分布を示している。
【0080】
図11および図12に示すように、隣り合う送電装置PTDの送電コイル20に逆位相の電流を流す場合、隣り合う送電装置PTDおよび受電装置PRDに生ずる漏洩電磁界が互いに打ち消し合うように作用する。これにより、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界が規制値を示すVaよりも小さくなる。
【0081】
しかし、本発明者らの検討によると、隣り合う送電装置PTDの送電コイル20に逆位相の電流を流して移動型ロボットRT1~RTmを充電する場合、送電装置群PTUの中央側に比べて送電装置群PTUの端部側での漏洩電磁界が顕著になることが判った。すなわち、隣り合う送電装置PTDの送電コイル20に第2パターンの電流(逆位相の電流)を流して移動型ロボットRT1~RTmを充電した場合、送電装置群PTUの端部側で漏洩電磁界を思ったように低減できない。
【0082】
ここで、図13および図15に示すように、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDおよび受電装置PRDをY方向に隣り合う微小な電流要素Idyと仮定する。また、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDについて、Y方向の一方側に位置するものから順に第1送電装置PTD1、第2送電装置PTD2、第3送電装置PTD3、第4送電装置PTD4とする。この第1送電装置PTD1、第2送電装置PTD2、第3送電装置PTD3、および第4送電装置PTD4は、この順に送電装置群PTUのY方向の一方側の端部からの距離が大きくなるように配置される。なお、本実施形態では、第1送電装置PTD1、第2送電装置PTD2、第3送電装置PTD3、および第4送電装置PTD4が、本開示の第1装置、第2装置、第3装置、および第4装置に対応している。
【0083】
隣り合う4つの送電装置PTDに逆位相の電流を流して移動型ロボットRT1~RTmを充電する場合、Y方向の端部の第1送電装置PTD1からR[m]離れた遠方位置XPでの漏洩電磁界ΔHは、ビオ・サバールの法則により図13に示す数式F1で表される。なお、図13に示すαは、Y方向における隣り合う送電装置PTD同士の間隔である。また、図13に示すθ1、θ2、θ3は、Y方向に平行な第1仮想線IL1と、遠方位置XPおよび第2送電装置PTD2、第3送電装置PTD3、第4送電装置PTD4を結ぶ第2~第4仮想線IL2~IL4とがなす角度である。
【0084】
図13に示す数式F1によれば、第1送電装置PTD1に生ずる漏洩電磁界は、隣り合う第2送電装置PTD2に生ずる漏洩電磁界と打ち消し合うように作用する。その一方で、第2送電装置PTD2に隣接する第3送電装置PTD3に生ずる漏洩電磁界が合成されるように作用する。このため、隣り合う送電装置PTDに第2パターンの電流(逆位相の電流)を流して4台の移動型ロボットRT1~RTmを充電する場合、送電装置群PTUの端部側で漏洩電磁界を思ったように低減できない。
【0085】
これらを加味して、本実施形態では、図9の第3パターンに示すように、第1送電装置PTD1および第4送電装置PTD4の送電コイル20に同位相の電流を流し、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3の送電コイル20に逆位相の電流を流す。すなわち、非接触給電装置1では、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3は、通電時に各々の送電コイル20に生ずる磁界の向きが、通電時に第1送電装置PTD1の送電コイル20に生ずる磁界の向きと逆の方向となるように電流の位相が調整される。また、第4送電装置PTD4は、通電時に第4送電装置PTD4の送電コイル20に生ずる磁界の向きが通電時に第1送電装置PTD1の送電コイル20に生ずる磁界の向きと同じ方向となるように電流の位相が調整される。具体的には、非接触給電装置1は、図14に示すように、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3の送電コイル20に対して、第1送電装置PTD1および第4送電装置PTD4の送電コイル20に流す交流電流と位相差が180度となる交流電流を流す。
【0086】
このような給電態様によって移動型ロボットRT1~RTmを充電する場合、Y方向の端部に位置する第1送電装置PTD1からR[m]離れた遠方位置XPでの漏洩電磁界ΔHは、ビオ・サバールの法則により図15に示す数式F2で表される。
【0087】
図15に示す数式F2によれば、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3に生ずる漏洩電磁界が、第1送電装置PTD1に生ずる漏洩電磁界を打ち消すように作用する。このため、隣り合う送電装置PTDに第2パターンの電流(逆位相の電流)を流す場合に比べて、第1送電装置PTD1に生ずる漏洩電磁界を充分に低減させることができる。
【0088】
また、第4送電装置PTD4に生ずる漏洩電磁界が、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3に生ずる漏洩電磁界と打ち消すように作用する。このため、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3に生ずる漏洩電磁界が必要以上に過大になってしまうことを抑制できる。
【0089】
図16は、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDの送電コイル20に第3パターンの電流を流して4台の移動型ロボットRT1~RTmを充電した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。また、図17は、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDの送電コイル20に第3パターンの電流を流して20台の移動型ロボットRT1~RT20を充電した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。なお、図16および図17は、送電パッドTPおよび受電パッドRPの隙間が4mm、送電パッドTPおよび受電パッドRPが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=4mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)での磁束分布を示している。
【0090】
図16および図17に示すように、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDの送電コイル20に第3パターンの電流を流す場合、第2パターンの電流を流す場合に比べて、送電装置群PTUの端部側で漏洩電磁界を低減することができる。具体的には、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界の最大値は、図18および図19に示すように、第2パターンの電流を流す場合に比べて大幅に小さくなる。
【0091】
以上説明した非接触給電装置1は、送電装置群PTUのY方向の一方側の第1送電装置PTD1および第4送電装置PTD4の送電コイル20に同位相の電流を流し、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3の送電コイル20に逆位相の電流を流す。
【0092】
これによると、送電装置群PTUでは、第1送電装置PTD1に近い第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3それぞれの送電コイル20に生ずる漏洩電磁界が第1送電装置PTD1に生ずる漏洩電磁界を打ち消すように作用する。この場合、従来の如く、第3送電装置PTD3の送電コイル20に生ずる磁界の向きを第1送電装置PTD1の送電コイル20に生ずる磁界の向きと同じ方向にする場合に比べて、第1送電装置PTD1に生ずる漏洩電磁界を充分に低減させることができる。
【0093】
また、第4送電装置PTD4の送電コイル20に生ずる磁界の向きが、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3の送電コイル20に生ずる磁界の向きと逆の方向になっている。このため、第2送電装置PTD2および第3送電装置PTD3の送電コイル20に生ずる漏洩電磁界が必要以上に過大になってしまうことを抑制できる。
【0094】
以上の如く、本実施形態の非接触給電装置1によれば、送電装置群PTUのうち少なくとも一方側の端部側での漏洩電磁界の低減させることができる。この結果、移動型ロボットRT1~RTmの給電エリアの設置の自由度が高まり、給電エリアの増加をさせることができるので、給電に伴う稼働率低下を抑制することができる。すなわち、移動型ロボットRT1~RTmに対して非接触給電装置1を適用すれば、余剰ロボットを減らして設備導入コストを削減できる。
【0095】
ところで、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDが5以上ある場合、送電装置群PTUのうち、Y方向の他方側に位置する送電装置PTDから順に第5装置、第6装置、第7装置、第8装置とする。なお、第5装置、第6装置、第7装置、および第8装置は、この順に送電装置群PTUのY方向の他方側の端部からの距離が大きくなるように配置される。
【0096】
送電装置群PTUを構成する送電装置PTDが5以上ある場合、第5装置および第8装置の送電コイル20に同位相の電流を流し、第6装置および第7装置の送電コイル20に逆位相の電流を流す。すなわち、非接触給電装置1では、第6装置および第7装置は、通電時に各々の送電コイル20に生ずる磁界の向きが、通電時に第5装置の送電コイル20に生ずる磁界の向きと逆の方向となるように電流の位相が調整される。また、第8装置は、通電時に第8装置の送電コイル20に生ずる磁界の向きが通電時に第5装置の送電コイル20に生ずる磁界の向きと同じ方向となるように電流の位相が調整される。これにより、Y方向の一方側だけでなく他方側の端部でも漏洩電磁界を低減させることができる。すなわち、送電装置群PTUの両端部側での漏洩電磁界の低減させることができる。
【0097】
また、送電装置群PTUは、一部の送電装置PTDがマスタ装置となり、他の送電装置PTDがスレーブ装置となるように各々の装置がマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続されている。このように、送電装置群PTUを構成する各々の装置をマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続すれば、送電装置群PTUを構成する各々の装置の送電コイル20に流す電流の位相調整を簡易に実現することができる。
【0098】
(変形例)
送電装置群PTUは、4以上の送電装置PTDで構成されていれば、4台および4の倍数以外の台数の送電装置PTDで構成されていてもよい。
【0099】
送電装置群PTUは、例えば、図20に示すように、6台の送電装置PTDで構成されていてもよい。この構成の場合、送電装置群PTUの一端側から1つ目の送電装置PTD1と一端側から4つ目の送電装置PTD4の送電コイル20に同位相の電流を流し、一端側から2つ目と3つ目の送電装置PTD2、PTD3の送電コイル20に逆位相の電流を流す。加えて、送電装置群PTUの他端側から1つ目の送電装置PTD6と他端側から4つ目の送電装置PTD3の送電コイル20に同位相の電流を流し、他端側から2つ目と3つ目の送電装置PTD5、PTD4の送電コイル20に逆位相の電流を流す。このように構成すれば、上述の実施形態と説明したものと同様の効果を得ることができる。
【0100】
ここで、図21は、隣り合う送電装置PTDの送電コイル20に逆位相の電流を流して6台の移動型ロボットRT1~RTmを充電した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。また、図22は、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDの送電コイル20に本変形例の態様で電流を流して6台の移動型ロボットRT1~RTmを充電した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。なお、図21および図22は、送電パッドTPおよび受電パッドRPの隙間が4mm、送電パッドTPおよび受電パッドRPが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=4mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)での磁束分布を示している。
【0101】
図21および図22に示すように、送電装置群PTUを構成する送電装置PTDの送電コイル20に本変形例の態様で電流を流す場合、隣り合う送電装置PTDに逆位相の電流を流す場合に比べて、送電装置群PTUの端部側で漏洩電磁界を低減することができる。具体的には、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界の最大値は、図23に示すように規制値を示すVaに比べて大幅に小さくなる。
【0102】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0103】
上述の実施形態では、2列の組付ラインAL1、AL2を有するシステムに本開示の非接触給電装置1を適用した例について説明したが、非接触給電装置1は、例えば、1列または3列以上の組付ラインを有するシステムにも適用可能である。
【0104】
上述の実施形態では、4以上の送電装置PTDが所定の間隔をあけてY方向に沿って一列に並んでいるものを例示したが、非接触給電装置1は、これに限定されず、例えば、複数の送電装置PTDの一部が、Y方向に沿って一列に並んでいなくてもよい。なお、送電装置群PTUは、例えば、X方向に沿って一列に並ぶ送電装置PTDによって構成されていてもよい。
【0105】
上述の実施形態では、送電装置群PTU全体での漏洩電磁界のバランスを考慮すると、送電装置群PTUが偶数となる台数の送電装置PTDで構成されていることが望ましいが、これに限定されない。送電装置群PTUを構成する送電装置PTDの数は、偶数に限らず、奇数であってもよい。
【0106】
ここで、非接触給電装置1は、上述の実施形態の如く、送電装置群PTUの両端部側で漏洩電磁界を低減させる構成になっていることが望ましいが、これに限定されない。非接触給電装置1は、例えば、送電装置群PTUの一端側および他端側の一方で漏洩電磁界を低減させる構成になっていてもよい。なお、送電装置群PTUのうち、中央に位置する送電装置PTDに関しては、従来と同様に隣り合う送電装置PTDに逆位相となる電流が供給されるようになっていてもよい。
【0107】
上述の実施形態では、送電装置群PTUを構成する複数の送電装置PTDがマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続されているものを例示したが、送電装置群PTUは、これに限定されない。送電装置群PTUは、送電装置群PTUを構成する複数の送電装置PTDそれぞれの送電コイル20に流れる電流の位相を適切に調整可能であれば、マスタ・スレーブ方式以外の伝送形態で接続されていてもよい。
【0108】
上述の実施形態では、送電コイル20のコア部22AがE型のコアで構成されているものを例示したが、コア部22Aは、これに限らず、例えば、他の形状を有するコアで構成されていてもよい。
【0109】
上述の実施形態では、移動型ロボットRT1~RTmを用いた部品組付システムに本開示の非接触給電装置1を適用した例について説明したが、非接触給電装置1の適用対象は、これに限定されない。非接触給電装置1は、部品組付システム以外の移動車(例えば、無人搬送車AGV)を用いたシステムに対して適用可能である。また、非接触給電装置1は、工場以外の場所に設置されていてもよい。
【0110】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0111】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0112】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0113】
上述の実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記にした説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0114】
(まとめ)
上記の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、非接触給電装置は、4以上の送電装置が所定方向に列をなして並んで配置される送電装置群を含む。送電装置群には、所定方向の一方側に位置する4つの送電装置を第1装置、第2装置、第3装置、第4装置を有し、第1装置、第2装置、第3装置、第4装置が、この順に所定方向の一方側の端部からの距離が大きくなるように配置される。第2装置および第3装置は、通電時に各々の送電コイルに生ずる磁界の向きが、通電時に第1装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと逆の方向となるように電流の位相が調整される。第4装置は、通電時に第4装置の送電コイルに生ずる磁界の向きが通電時に第1装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと同じ方向となるように電流の位相が調整される。
【0115】
第2の観点によれば、送電装置群は、5以上の送電装置が所定方向に列をなして並んで配置される。送電装置群のうち、所定方向の他方側に位置する4つの送電装置を第5装置、第6装置、第7装置、第8装置としたとき、第5装置、第6装置、第7装置、第8装置は、この順に送電装置群における所定方向の他方側の端部からの距離が大きくなるように配置される。第6装置および第7装置は、通電時に各々の送電コイルに生ずる磁界の向きが、通電時に第5装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと逆の方向となるように電流の位相が調整される。第8装置は、通電時に第8装置の送電コイルに生ずる磁界の向きが通電時に第5装置の送電コイルに生ずる磁界の向きと同じ方向となるように電流の位相が調整される。これによると、送電装置群の両端部側での漏洩電磁界の低減させることができる。
【0116】
第3の観点によれば、送電装置群は、一部の送電装置がマスタ装置となり、他の送電装置がスレーブ装置となるように各々の装置がマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続されている。このように、送電装置群を構成する各々の装置をマスタ・スレーブ方式の伝送形態で接続すれば、送電装置群を構成する各々の装置の送電コイルに流す電流の位相調整を簡易に実現することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 非接触給電装置
2 送電装置
20 送電コイル
21A コイル部
22A コア部
RT 移動型ロボット(移動車)
PTD 送電装置
PTU 送電装置群
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