(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】接眼光学系、医療用ビューア及び医療用ビューアシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231031BHJP
G02B 30/22 20200101ALI20231031BHJP
H04N 13/344 20180101ALI20231031BHJP
G02B 25/00 20060101ALI20231031BHJP
G03B 35/18 20210101ALI20231031BHJP
A61B 34/20 20160101ALN20231031BHJP
【FI】
G02B27/02
G02B30/22
H04N13/344
G02B25/00
G03B35/18
A61B34/20
(21)【出願番号】P 2020108884
(22)【出願日】2020-06-24
(62)【分割の表示】P 2019563105の分割
【原出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2018081967
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長江 聡史
(72)【発明者】
【氏名】畠山 丈司
(72)【発明者】
【氏名】辻村 一郎
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-166556(JP,A)
【文献】特開2000-338416(JP,A)
【文献】特開2014-102419(JP,A)
【文献】特開2003-008950(JP,A)
【文献】特開2016-166930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0116742(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00871054(EP,A2)
【文献】国際公開第2017/128187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
G02B 30/00 - 30/60
H04N 13/30 - 13/398
G02B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、
前記画像表示デバイスは、表示面を前記第1偏光部材に対して
傾斜した角度で対向するように配置され、
前記第2偏光部材は、前記画像表示デバイスからの光線を所定の偏光状態にして射出し、
前記第1偏光部材は、前記所定の偏光状態と直交する偏光状態の光線を透過させ、前記所定の偏光状態の光線を透過させない、
接眼光学系。
【請求項2】
前記第1偏光部材と前記ミラーとの間の光路上に、接眼レンズが更に配置されており、
前記接眼レンズにおける前記ミラー側のレンズ面は、凸の曲率を有する、請求項1に記載の接眼光学系。
【請求項3】
前記接眼レンズの拡大倍率をβとすると、3<β<5の関係が成立する、請求項2に記載の接眼光学系。
【請求項4】
前記接眼レンズの角倍率をγとすると、1.2<γ<1.5の関係が成立する、請求項2に記載の接眼光学系。
【請求項5】
前記ミラーの反射面において、前記画像表示デバイスから出た光線のうち前記接眼レンズの前記ミラー側のレンズ面で反射した反射光が前記ミラーの反射面に到達する位置の近傍には、前記ミラーで反射した前記反射光を遮蔽する遮蔽物が設けられる、請求項2に記載の接眼光学系。
【請求項6】
前記第1偏光部材及び前記第2偏光部材は、それぞれ直線偏光板である、請求項1に記載の接眼光学系。
【請求項7】
前記第1偏光部材及び前記第2偏光部材は、それぞれ、直線偏光板及び1/4波長板からなる円偏光板である、請求項1に記載の接眼光学系。
【請求項8】
前記第1偏光部材は、直線偏光板であり、
前記第2偏光部材は、1/2波長板である、請求項1に記載の接眼光学系。
【請求項9】
前記第1偏光部材は、直線偏光板であり、
前記第2偏光部材は、観察者側から順に、直線偏光板及び1/2波長板が配置された偏光部材である、請求項1に記載の接眼光学系。
【請求項10】
観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、
前記画像表示デバイスは、表示面を前記第1偏光部材に対して
傾斜した角度で対向するように配置され、
前記第2偏光部材は、前記画像表示デバイスからの光線を所定の偏光状態にして射出し、
前記第1偏光部材は、前記所定の偏光状態と直交する偏光状態の光線を透過させ、前記所定の偏光状態の光線を透過させない接眼光学系を備える、医療用ビューア。
【請求項11】
手術が行われている部位である術部を撮像した画像を画像処理し、得られた術部撮像画像を出力する画像処理ユニットと、
前記画像処理ユニットから出力された前記術部撮像画像を、観察者に提示する医療用ビューアと、
を備え、
前記医療用ビューアは、
観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、
前記画像表示デバイスは、表示面を前記第1偏光部材に対して
傾斜した角度で対向するように配置され、
前記第2偏光部材は、前記画像表示デバイスからの光線を所定の偏光状態にして射出し、
前記第1偏光部材は、前記所定の偏光状態と直交する偏光状態の光線を透過させ、前記所定の偏光状態の光線を透過させない接眼光学系を有する、医療用ビューアシステム。
【請求項12】
前記画像処理ユニットから出力された前記術部撮像画像を、医療用ビューアへと伝送する画像伝送ユニットを更に備える、請求項11に記載の医療用ビューアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接眼光学系、医療用ビューア及び医療用ビューアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置の一例として、以下の特許文献1に開示されているような3Dヘッドマウントディスプレイ(3D-HMD)が知られている。この3D-HMDでは、右目と左目にそれぞれ対応する接眼光学系が、眼幅距離で2つ並列されており、それぞれの接眼光学系が備える画像表示ディスプレイに視差を有する画像を表示させる。これにより、3D-HMDを装着した観察者は、画像表示ディスプレイに表示される画像を、立体観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような3D-HMDでは、使用前に、左右の接眼光学系の眼幅距離を、観察者が自身の眼幅に応じて調整することが求められる。ここで、眼幅距離とは、右眼用の接眼光学系での観察者の覗き位置と、左眼用の接眼光学系での観察者の覗き位置と、の間の離隔距離に対応する。事前の調整が求められる理由は、調整を行わない場合には、画像表示デバイスに映し出される画像がケラれてしまい、観察できない領域が生じてしまうからである。しかしながら、上記のような眼幅距離の調整作業は煩雑であり、眼幅調整を無くすことが強く希求されている。
【0005】
更に、上記のようなHMD構成において、眼と接眼光学系との相対位置は、文字通りヘッドマウント方式によって、固定されてしまう。このため、上記のようなHMD構成は、眼鏡をかけた状態では使用することができない。すると、観察者の視力に応じて、接眼光学系のピント位置を調整すること(すなわち、視度調整)が必須となる。
【0006】
このような、眼幅調整及び視度調整は、迅速性が求められる医療の現場において、煩雑であり、無くすことが求められている。
【0007】
人間における右眼と左眼との間の間隔は、大きく個人差がある。異なる眼幅を有する観察者が使用する場合であっても、画像表示デバイスに表示される画像がケラれずに観察できるようにするためには、接眼光学系のアイボックス(虚像が視認される範囲)を広くすることが求められる。すなわち、眼の位置が偏心した場合であっても、有効光線がケラれないようにするために、接眼光学系を構成するレンズ等の部品有効径を大きく設定しなければならない。
【0008】
ところで、接眼光学系に用いる画像表示デバイスの大きさによっては、2つの接眼光学系を眼幅距離で並列させたときに、右眼用の接眼光学系における画像表示デバイスと、左眼用の接眼光学系における画像表示デバイスとが干渉して、問題となる場合がある。このような場合、用いる画像表示デバイスの大きさを小型化すれば、干渉回避が可能であるとも考えられる。しかしながら、実際上は、先に述べたアイボックスの広域化と、画像表示デバイスの小型化とを両立することは、以下の理由から困難である。
【0009】
観察像(画像表示デバイスに映る画像の虚像)の大きさは、仕様で定められている。そのため、仕様に定められた観察像の大きさを保持しつつ画像表示デバイスを小型化していくと、接眼光学系の焦点距離を短く(換言すれば、接眼光学系の倍率を大きく)することが求められる。このとき、有効径を大きく設定することを考慮すると、接眼光学系を構成する各レンズのエッジ厚を確保するために、レンズの曲率を緩めざるを得ず、各レンズのパワーが小さくなっていく。その結果、各レンズのパワーが小さいことを補うために、レンズ枚数が増大し、接眼光学系の大型化・重量化につながってしまう。
【0010】
上記のような理由から、画像表示デバイスの小型化には光学設計上の限界があるため、ミラーで光路を折り曲げることに思い至る。しかしながら、このような折り曲げ構成を採用した場合、ミラーでは反射せずに観察者に直接到達する虚像が生じてしまう。このような、ミラーでは反射せずに観察者に直接到達する虚像は、ゴーストと呼ばれる。このようなゴーストが発生した場合、観察者は、3次元像の左右両側に、本来不要なゴーストを見ることとなり、画質の低下が問題となる。
【0011】
そのため、上記事情に鑑みて、本開示では、眼幅調整を不要としながら、光学系の小型化を図りつつ、より高画質な像を提供することが可能な接眼光学系と、かかる接眼光学系を備えた医療用ビューア及び医療用ビューアシステムとを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示によれば、観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、前記画像表示デバイスは、表示面を前記第1偏光部材に対して傾斜した角度で対向するように配置され、前記第2偏光部材は、前記画像表示デバイスからの光線を所定の偏光状態にして射出し、前記第1偏光部材は、前記所定の偏光状態と直交する偏光状態の光線を透過させ、前記所定の偏光状態の光線を透過させない、接眼光学系が提供される。
【0013】
また、本開示によれば、観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、前記画像表示デバイスは、表示面を前記第1偏光部材に対して傾斜した角度で対向するように配置され、前記第2偏光部材は、前記画像表示デバイスからの光線を所定の偏光状態にして射出し、前記第1偏光部材は、前記所定の偏光状態と直交する偏光状態の光線を透過させ、前記所定の偏光状態の光線を透過させない接眼光学系を備える、医療用ビューアが提供される。
【0014】
また、本開示によれば、手術が行われている部位である術部を撮像した画像を画像処理し、得られた術部撮像画像を出力する画像処理ユニットと、前記画像処理ユニットから出力された前記術部撮像画像を、観察者に提示する医療用ビューアと、を備え、前記医療用ビューアは、観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、前記画像表示デバイスは、表示面を前記第1偏光部材に対して傾斜した角度で対向するように配置され、前記第2偏光部材は、前記画像表示デバイスからの光線を所定の偏光状態にして射出し、前記第1偏光部材は、前記所定の偏光状態と直交する偏光状態の光線を透過させ、前記所定の偏光状態の光線を透過させない接眼光学系を有する、医療用ビューアシステムが提供される。
【0015】
本開示によれば、画像表示デバイスに表示される画像を構成する光線は、第2偏光部材によって所定の偏光状態となり、ミラーの反射面で反射された後に、第1偏光部材へと到達する。第1偏光部材における偏光状態と第2偏光部材における偏光状態とは、互いに直交するため、上記経路で第1偏光部材に到達した光線は、第1偏光部材を透過して観察者へと至る一方で、ミラーで反射することなく第1偏光部材に到達した光線は、第1偏光部材を透過することができない。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本開示によれば、眼幅調整を不要としながら、光学系の小型化を図りつつ、より高画質な像を提供することが可能となる。
【0017】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、又は、本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本開示の実施形態に係る接眼光学系を模式的に示した説明図である。
【
図1B】同実施形態に係る接眼光学系を模式的に示した説明図である。
【
図2】同実施形態に係る接眼光学系を模式的に示した説明図である。
【
図3A】同実施形態に係る接眼光学系を模式的に示した説明図である。
【
図3B】同実施形態に係る接眼光学系を模式的に示した説明図である。
【
図4】同実施形態に係る接眼光学系の一例を模式的に示した説明図である。
【
図5】同実施形態に係る接眼光学系における接眼レンズについて説明するための説明図である。
【
図6】同実施形態に係る接眼光学系における接眼レンズについて説明するための説明図である。
【
図7】同実施形態に係る接眼光学系における接眼レンズについて説明するための説明図である。
【
図8】同実施形態に係る接眼光学系を備える医療用ビューア、医療用ビューアシステム、及び、手術用システムを説明するための説明図である。
【
図9】実施例1の接眼光学系について説明するための説明図である。
【
図10】実施例1の接眼光学系について説明するためのグラフ図である。
【
図11】実施例2の接眼光学系について説明するためのグラフ図である。
【
図12】実施例3の接眼光学系について説明するためのグラフ図である。
【
図13】実施例4の接眼光学系について説明するための説明図である。
【
図14】実施例4の接眼光学系について説明するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.実施形態
1.1 接眼光学系について
1.2 医療用ビューア、医療用ビューアシステム、及び、手術用システムについて
2.実施例
【0021】
(実施形態)
<接眼光学系について>
まず、
図1A~
図7を参照しながら、本開示の第1の実施形態に係る接眼光学系について、詳細に説明する。
図1A~
図3Bは、本実施形態に係る接眼光学系を模式的に示した説明図である。
図4は、本実施形態に係る接眼光学系の一例を模式的に示した説明図である。
図5~
図7は、本実施形態に係る接眼光学系における接眼レンズについて説明するための説明図である。
【0022】
本実施形態に係る接眼光学系は、当該接眼光学系を観察者が覗き込んだ場合に、画像表示デバイスに表示された画像を、観察者の眼に到達させるための光学系である。この接眼光学系10では、
図1Aに模式的に示したように、観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材101、ミラー103、第2偏光部材105、及び、画像表示デバイス107が順に配置されている。
図1Aに示したように、本実施形態に係る接眼光学系10は、ミラー103で光路を折り曲げた状態となっているため、眼幅調整を不要としながら、アイボックスの広域化と画像表示デバイス107の小型化とを両立することが可能な光学設計を、実現することが可能となる。また、本実施形態に係る接眼光学系10は、いわゆるヘッドマウント方式を採用せずとも実現可能であるため、観察者が眼鏡を装着している場合であっても、観察者は視度調整を行うことなく画像表示デバイス107に出力された画像を観察することができる。
【0023】
また、
図1Aでは、単眼の接眼光学系10を示したが、
図1Bに示したように、
図1Aに示した接眼光学系10を2つ用い、一方を左眼用の接眼光学系10Lとし、もう一方を右眼用の接眼光学系10Rとすることができる。
図1Bに示したような左右一対の接眼光学系10L,10Rを設け、各接眼光学系10L,10Rに設けられた画像表示デバイス107から視差を有する画像をそれぞれ表示させることで、観察者は、立体像を観察することが可能となる。なお、以下の説明では、2つの接眼光学系10L,10Rを総称して、接眼光学系10ということがある。
【0024】
図1A及び
図1Bに示したような、本実施形態に係る接眼光学系10では、第1偏光部材101における偏光状態と、第2偏光部材105における偏光状態と、が互いに直交するようになっている。画像表示デバイス107に表示される画像を構成する光線は、第2偏光部材105によって所定の偏光状態となり、ミラー103の反射面で反射された後に、第1偏光部材101へと到達する。ここで、ミラー103の反射面では、光線の偏光状態が、反射によって、第2偏光部材105によって付与された偏光状態から当該偏光状態に直交する偏光状態へと変化する。先だって言及したように、第1偏光部材101における偏光状態と、第2偏光部材105における偏光状態とは、互いに直交するため、上記経路で第1偏光部材101に到達した光線は、光量が減衰することなく第1偏光部材101を透過して、観察者へと至る。
【0025】
一方、ミラー103で反射することなく第1偏光部材101に到達した光線(例えば、
図2に模式的に示した直接像ゴーストg)は、偏光状態が第2偏光部材105によって付与された偏光状態のままであるため、第1偏光部材101を透過することができない。これにより、ミラー103で反射することなく第1偏光部材101に到達した直接像ゴーストgは、観察者へと至ることは無いため、直接像ゴーストgの光量を減衰させて観察者に提供される画像の高画質化を図ることが可能となる。
【0026】
このように、偏光状態が互いに直交する2つの偏光部材を組み合わせて用いることで、直接像ゴーストの観察者への到達を抑制しつつ、有効光線は確実に観察者へと到達させるという効果を奏することが可能となる。
【0027】
本実施形態に係る接眼光学系のような光路の折り曲げ構造を採用した場合、直接像ゴーストgの光線(以下、「ゴースト光線」とも称する。)は、レンズ有効径付近を通過するようになる。そのため、レンズ有効径を大きくして、画像表示デバイス107の小型化を図るとともに、眼幅調整を不要なものとすると、ゴースト光線が観察者に到達しやすくなるというトレードオフが存在していた。しかしながら、上記のように、偏光状態が互いに直交する2つの偏光部材101,105を組み合わせて用いることで、効果的に直接像ゴーストを遮断することができる。
【0028】
ここで、本実施形態に係る接眼光学系10において、第1偏光部材101及び第2偏光部材105は、特に限定されるものではなく、公知の任意の偏光部材の組み合わせを使用することができる。
【0029】
例えば、第1偏光部材101及び第2偏光部材105は、それぞれ直線偏光板とすることが可能である。また、第1偏光部材101及び第2偏光部材105は、それぞれ、直線偏光板及び1/4波長板(λ/4板)からなる円偏光板とすることも可能である。
【0030】
第1偏光部材101及び第2偏光部材105をそれぞれ直線偏光板とする場合には、一方の直線偏光板の偏光軸の方向(偏光方向)が例えば-45°であり、もう一方の直線偏光板の偏光方向が例えば+45°であるように、各直線偏光板を設置すればよい、これにより、互いに直交する偏光状態を容易に作り出すことができる。また、第1偏光部材101及び第2偏光部材105をそれぞれ円偏光板とする場合には、直線偏光板を用いる場合よりもコスト高になるものの、直線偏光板のような偏光方向の組み合わせの調整が不要となるため、接眼光学系のアラインメント(調整組立)が容易となる。
【0031】
また、第1偏光部材101及び第2偏光部材105の組み合わせは、上記の例に限定されるものではなく、例えば、第1偏光部材101を直線偏光板とし、第2偏光部材105を1/2波長板(λ/2板)とすることが可能である。なぜならば、画像表示デバイス107(例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)等)は、一般的にそれ自体が直線偏光で発光しているため、第2偏光部材105を殊更直線偏光板とする必要はなく、λ/2板を用いることで、任意の偏光方向にできるからである。そして、この考え方を推し進めれば、LCDの発光の偏光方向を±45度にすることで、第2偏光部材105自体を削除できる。また、第1偏光部材101は、直線偏光板とし、第2偏光部材105は、観察者側から順に、直線偏光板及び1/2波長板が配置された偏光部材とすることも可能である。
【0032】
なお、上記のような第1偏光部材101及び第2偏光部材105を設置する際、これらの偏光部材を、画像表示デバイス(LCDなど)の保護ガラスに貼り付けた上で設置してもよい。このように設置することで、画像表示デバイス107から発せられる熱と前方の低温の空気との温度差によって偏光部材が結露してしまう可能性を抑制することができ、観察者に提供される画像のより一層の高画質化を図ることが可能となる。ただし、偏光部材を保護ガラスに貼り付けると、偏光部材の表面に付着しているゴミ等が認識されやすくなってしまうため、偏光部材を保護ガラスに貼り付ける際には、偏光部材及び保護ガラスの表面における付着物の存在に注意を払うことが好ましい。
【0033】
ここで、第1偏光部材101及び第2偏光部材105の大きさは、画像表示デバイス107の大きさに応じて設定されることが好ましい。
【0034】
ミラー103は、画像表示デバイス107から発し、第2偏光部材105によって所定の偏光状態となった光線を、反射面にて反射させて、第1偏光部材101の方向へと導光する部材である。ミラー103の反射面で光線が反射する際に、光線が有している偏光状態が、第2偏光部材105によって付与された偏光状態に対して直交する状態へと変化する。これにより、ミラー103によって反射した光線は、第1偏光部材101を透過することができる。
【0035】
ミラー103については、特に限定されるものではなく、公知の各種のミラーを適宜用いることが可能であり、なるべく反射率の高いミラーを用いることが好ましい。このようなミラーとして、金属(例えば、アルミニウム等)蒸着ミラーや、誘電体多層膜ミラーが公知であるが、本実施形態に係るミラー103としては、金属蒸着ミラーを用いることが好ましい。その理由を
図4の接眼光学系10Lを例にとって説明する。
【0036】
画面左から発して観察者の眼に至る光線は、画面右から発して観察者の眼に至る光線よりも、ミラー法線から測ったミラーへの入射角度が大きいことがわかる。誘電体多層膜ミラーとは、基材に光学薄膜を多層蒸着することで、可視光波長帯域における反射特性を実現するものであるが、入射角度に応じて分光特性が変化してしまうことが知られている。このため、本実施形態に係る接眼光学系の光学構成において、ミラー103として誘電体多層膜ミラーを使用してしまうと、画面左から発して観察者の眼に至る光線は、画面右から発して観察者の眼に至る光線よりも、青みがかってしまう。このような状態は、画像の色シェーディングであり、医療(例えば外科手術)においては忠実な色再現が求められることから、好ましくない。
【0037】
また、ミラー103の大きさは、画像表示デバイス107の大きさに応じて設定されることが好ましい。また、ミラー103の設置角度(例えば、ミラー103の反射面と、第1偏光部材101の光軸とのなす角度)は、画像表示デバイス107の表示画面に表示された画像を全て観察者へと導光することが可能となるように設定されることが好ましい。
【0038】
画像表示デバイス107の表示画面には、各種の画像が表示されて、観察者へと提供される。本実施形態に係る画像表示デバイス107は、特に限定されるものではなく、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ等、公知の各種のディスプレイを用いることが可能である。
【0039】
画像表示デバイス107の大きさは、眼幅調整を不要としながら、かつ、アイボックスの広域化を実現可能な範囲で、なるべく小さなものとすることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態に係る接眼光学系10は、
図3A及び
図3Bに模式的に示したように、第1偏光部材101と、ミラー103との間の光路上に、接眼レンズ111を更に有することが好ましい。接眼レンズ111を設けることで、画像表示デバイス107の表示画面に表示されている画像を拡大して観察者に提供することが可能となる。そのため、接眼レンズ111を設けることで、画像表示デバイス107の更なる小型化を図ることができる。
【0041】
かかる接眼レンズ111は、1枚のレンズから構成されていてもよいし、複数枚のレンズから構成されるレンズ群であってもよい。また、接眼レンズ111のレンズ面は、球面であってもよいし、非球面であってもよい。更に、接眼レンズ111の硝材については、特に限定されるものではなく、公知の任意の硝材を適宜用いることが可能である。
【0042】
ただし、本実施形態に係る接眼光学系10において、接眼レンズ111におけるミラー103側のレンズ面(接眼レンズ111がレンズ群で構成される場合、少なくとも、最もミラー103側に位置するレンズのミラー103側のレンズ面)は、
図4に一例を示したように、凸の曲率を有することが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る接眼光学系10のように光路が折り曲げられている場合には、先だって説明した直接像ゴーストg以外に、以下のようなゴーストが発生する可能性がある。すなわち、画像表示デバイス107及び第2偏光部材105を経た光線が、接眼レンズ111の表面に到達し、接眼レンズ111の表面で反射した光線がミラー103に達して、ミラー103に到達した光線が、接眼レンズ111及び第1偏光部材101を経て、観察者へと到達する可能性が考えられる。このような光線のことを、以下では「レンズ反射像ゴーストg’」と称することとする。
【0044】
図4に例示したように、少なくとも、最もミラー103側に位置するレンズ面の曲率が凸の曲率を有することで、ゴースト光線束のうち、接眼レンズ111の凸面の接線成分のみが反射して、ミラー103へと到達し、観察者に至らないようにすることができる。すなわち、接眼レンズ111の凸面が発散ミラーの働きをして、ゴースト光線を発散させて、観察眼における単位当たりのゴースト光線束の照度を抑制することが可能となる。実際、光線追跡シミュレーションを実施すると、
図5に模式的に示したように、レンズ反射像ゴーストg’の光線束は細く、輝度が弱くなる(換言すれば、レンズ反射像ゴーストg’のF値が暗くなる)ことが明らかとなった。このように、第1偏光部材101とミラー103との間に接眼レンズ111を設けることで、直接像ゴースト及びレンズ反射像ゴーストを抑制して、更に一層優れた高質化を実現することが可能となる。
【0045】
また、ミラー103の反射面において、画像表示デバイス107から出た光線のうち接眼レンズ111のミラー103側のレンズ面で反射した反射光が、ミラー103の反射面に到達する位置の近傍に対して、ミラー103で反射した反射光(レンズ反射像ゴースト)を遮蔽する遮蔽物を設けてもよい。また、遮蔽物の代わりに、レンズ反射像ゴーストがミラー103の反射面において反射しないように、レンズ反射像ゴーストを吸収するような部材を設けてもよい。このような機構を設けることで、更なる高画質化を実現することが可能となる。
【0046】
なお、
図6に一例を示したように、接眼レンズ111を、第1偏光部材101の観察者側に配置することも考えうる。この場合においても、直接像ゴーストを抑制しつつ、有効光線はしっかりと透過させるという効果を実現することは可能である。しかしながら、接眼レンズ111のミラー103側に第1偏光部材101が位置する場合、第1偏光部材101の表面が平面ミラーの働きをしてしまい、例えば
図7に模式的に示したように、全てのゴースト光線束が第1偏光部材101の表面で反射して、観察者に到達してしまう。そのため、ゴースト光線束の照度を抑制することが出来なくなる。
【0047】
上記のような接眼レンズ111の拡大倍率をβとすると、3<β<5の関係が成立することが好ましい。接眼レンズ111の拡大倍率βが3以下である場合、接眼レンズ111の焦点距離を長くすることが可能となり、アイボックスの広域化を実現することができるが、画像表示デバイス107のサイズが大きくなってしまう。この場合に、
図1B及び
図3Bに示したような2眼用の接眼光学系を設定する際に、2つの画像表示デバイス107間の干渉(物理的に近付きあってしまうこと)を避けることが困難となる可能性がある。一方、接眼レンズ111の拡大倍率βが5以上となる場合は、画像表示デバイス107の小型化を図ることが容易となるが、接眼レンズ111の焦点距離は短くなってアイボックスは狭小となり、眼振りに対応できなくなる可能性がある。接眼レンズ111の拡大倍率βは、より好ましくは、3.5超過4.5未満であり、更に好ましくは、3.7超過4.3未満である。
【0048】
また、上記のような接眼レンズ111の角倍率をγとすると、1.2<γ<1.5の関係が成立することが好ましい。接眼レンズ111の角倍率γが1.2以下である場合には、接眼レンズ111の焦点距離を長くすることが可能となり、アイボックスの広域化を実現することができるが、画像表示デバイス107のサイズが大きくなってしまう可能性があるため、好ましくない。一方、接眼レンズ111の角倍率γが1.5以上である場合には、画像表示デバイス107の小型化を図ることが容易となるが、接眼レンズ111の焦点距離は短くなってアイボックスは狭小となり、眼振りに対応できなくなる可能性があるため、好ましくない。接眼レンズ111の角倍率γは、より好ましくは、1.2超過1.4未満であり、更に好ましくは、1.2超過1.3未満である。
【0049】
以上、
図1A~
図7を参照しながら、本実施形態に係る接眼光学系10について、詳細に説明した。
【0050】
<医療用ビューア、医療用ビューアシステム及び手術用システムについて>
続いて、
図8を参照しながら、本実施形態に係る接眼光学系10を備える医療用ビューア200及び医療用ビューアシステム600、並びに、かかる医療用ビューア200を含む手術用システム1000について、簡単に説明する。
図8は、本実施形態に係る接眼光学系を備える医療用ビューア、医療用ビューアシステム及び手術用システムを説明するための説明図である。
【0051】
本実施形態に係る手術用システム1000は、
図8に模式的に示したように、手術ユニット300と、医療用ビューアシステム600と、を備える。また、本実施形態に係る医療用ビューアシステム600は、例えば
図8に模式的に示したように、医療用ビューア200と、画像処理ユニット400と、画像伝送ユニット500と、を備える。なお、
図8では、本実施形態に係る医療用ビューアシステム600が画像伝送ユニット500を備える場合について図示しているが、医療用ビューアシステム600は、画像伝送ユニット500を有していなくともよい。
【0052】
更に、本実施形態に係る手術用システム1000は、上記の手術ユニット300及び医療用ビューアシステム600に加えて、手術ユニット300を操作するための操作ユニット700を有していることが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る医療用ビューア200は、医療用ビューアシステム600を構成する装置の一つであり、後述する手術ユニット300の撮像ユニット301で撮像された各種の画像を表示させて、医師等のユーザに対して、撮像ユニット301で撮像された各種の画像を提供する。かかる医療用ビューア200のうち、医師等のユーザが覗き込む接眼ユニット付近(
図8において破線で囲った領域)に対し、先だって説明したような接眼光学系10が実装される。
【0054】
本実施形態に係る接眼光学系10は、以上説明したように、視度調整及び眼幅調整を不要としながら、光学系の小型化を図りつつ、より高画質な像を提供することが可能である。そのため、医師等のユーザは、視度調整及び眼幅調整を実施することなく、ただ接眼ユニットを覗き込むだけで、高画質な術部(手術が行われている部位)に関する撮像画像(術部撮像画像)を、観察することができる。
【0055】
上記のような機能を有する本実施形態に係る医療用ビューア200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力装置、出力装置、通信装置等といった各種のハードウェアから構成されている。
【0056】
また、上記のように、本実施形態に係る手術用システム1000には、手術ユニット300及び医療用ビューアシステム600とは異なるユニットとして、医師等のユーザが手術ユニット300を操作するための操作ユニット700が設けられていることが好ましい。この操作ユニット700は、医師等のユーザが手で操作する操作アーム701と、医師等のユーザが足で操作する操作ペダル703と、が設けられている。また、操作ユニット700には、上記の構成に加えて、手術ユニット300を操作するための各種のボタン等(図示せず。)等が設けられていてもよい。医師等のユーザは、これら操作アーム701及び操作ペダル703等を操作することで、手術ユニット300に設けられた撮像ユニット301や手術器具ユニット303を、所望の状態に制御することができる。
【0057】
具体的には、医師等のユーザは、医療用ビューア200の接眼光学系10から提供される画像を観察しながら、操作アーム701及び/又は操作ペダル703等を操作して、撮像ユニット301の撮像位置や撮像倍率を制御したり、手術器具ユニット303に設けられた高周波ナイフや鉗子やスネアワイヤ等といった各種手術器具を操作したりすることができる。
【0058】
医師等のユーザは、術部に関する術部撮像画像を観察しながら、操作ユニット700の操作を行うため、かかる操作ユニット700は、医療用ビューア200の近傍に設けられていることが好ましく、医療用ビューア200と操作ユニット700とが一体となっていてもよい。
【0059】
手術ユニット300は、医療用ビューアシステム600及び操作ユニット700のそれぞれと有線又は無線で互いに接続されている。手術ユニット300では、操作ユニット700から送信された、医師等のユーザの操作に関するユーザ操作情報に基づき、撮像ユニット301及び手術器具ユニット303が稼働する。これにより、医師等のユーザが、手術を受ける患者と離れた位置に存在する場合であっても、患者に対して手術操作を行うことができる。
【0060】
撮像ユニット301は、例えば無影灯の近傍に設けられた各種の撮像カメラであってもよいし、内視鏡ユニットや顕微鏡ユニット等に設けられた各種のカメラユニットであってもよい。これらの撮像ユニット301で随時撮像される画像は、医療用ビューアシステム600が備える画像処理ユニット400へと送信される。
【0061】
手術器具ユニット303は、高周波ナイフ、鉗子、スネアワイヤ等といった各種の手術で用いられる手術器具が、各種のロボットアーム(図示せず)等に保持されているユニットである。手術器具ユニット303は、操作ユニット700の操作アーム701及び/又は操作ペダル703等に対して行われたユーザ操作に応じて稼働する。
【0062】
画像処理ユニット400は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力装置、出力装置、通信装置等により実現されるプロセッサユニットの一例である。画像処理ユニット400は、医療用ビューア200及び手術ユニット300のそれぞれと、有線又は無線で互いに接続されている。画像処理ユニット400は、手術ユニット300の撮像ユニット301が随時撮像した、術部を撮像した画像に対し所定の画像処理を施して、術部撮像画像とする。ここで、画像処理ユニット400が実施する画像処理は、特に限定されるものではなく、デモザイク処理等の公知の各種の画像処理が実施される。画像処理ユニット400は、術部撮像画像を生成すると、生成した術部撮像画像を、画像伝送ユニット500へと出力する。
【0063】
画像処理ユニット400は、撮像ユニット301(例えば、内視鏡ユニットや顕微鏡ユニットに設けられたカメラユニット)から供給された2D/3D画像と、ユーザインタフェース(User Interface:UI)等の加工された画像(補助画像)と、を合成して、様々な情報が重畳された合成画像を術部撮像画像として生成することも可能である。また、画像処理ユニット400は、上記のような術部撮像画像を、外部に設けられた外付けモニタ等の外部出力装置に出力する、DVI端子等の各種端子を有していることが好ましい。更に、画像処理ユニット400は、画像伝送ユニット500との間で音声情報の伝送を行うことも可能である。
【0064】
画像伝送ユニット500は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力装置、出力装置、通信装置等により実現されるリレーユニットの一例であり、画像処理ユニット400から出力された術部撮像画像を、医療用ビューア200に出力する中継用ボックスとして機能する。そのため、画像処理ユニット400と医療用ビューア200との間で実施される情報の送受信に際して、中継が不要である場合には、本実施形態に係る医療用ビューアシステム600に画像伝送ユニット500を設けなくともよい。
【0065】
画像伝送ユニット500は、医療用ビューア200及び画像処理ユニット400のそれぞれと、有線又は無線で互いに接続されている。画像伝送ユニット500は、画像処理ユニット400から出力された術部撮像画像を、医療用ユーザへと伝送する。これにより、医療用ビューア200を使用している医師等の観察者に対して、術部撮像画像が提示されるようになる。
【0066】
また、画像伝送ユニット500には、画像処理ユニット400から供給された術部撮像画像を、外部に設けられた外付けモニタ等の外部出力装置に出力する、DVI端子等の各種端子を有していることが好ましい。また、画像伝送ユニット500は、DVI端子等の各種端子から入力された画像を、医療用ビューア200に伝送することも可能である。更に、画像伝送ユニット500は、各種のトレーニング機器を接続する端子等を有しており、トレーニング機器から入力されたトレーニング画像を医療用ビューア200や外付けモニタ等の外部出力装置に出力させる機能を有していてもよい。
【0067】
なお、
図8では、画像処理ユニット400及び画像伝送ユニット500が別個の装置であるように図示されているが、画像処理ユニット400及び画像伝送ユニット500は、ある一つの制御装置の一機能として、それぞれ実装されていてもよい。
【0068】
以上、本実施形態に係る医療用ビューア200、医療用ビューアシステム600及び手術用システム1000について、簡単に説明した。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例を示しながら、本開示に係る接眼光学系について、より具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本開示に係る接眼光学系の一例にすぎず、本開示に係る接眼光学系が下記に示す例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
以下に示す実施例1では、
図4に示した、2つのレンズからなる接眼レンズを有する左右同一の接眼光学系について設計し、結像シミュレーションを行った。
【0071】
かかるシミュレーションでは、第1偏光部材101及び第2偏光部材105は、保護ガラスに貼り付けられて存在しているものとした。また、画像表示デバイス107として、液晶ディスプレイパネル(5.2インチ、半対角66.1mm)のものを使用した。かかる液晶ディスプレイパネルは、フルHD(1920×1080画素)の解像度を有する液晶ディスプレイパネルである。更に、ミラー103の反射面と、接眼レンズの光軸とのなす角は、37度とした。
【0072】
アイレリーフは、レンズ面から20mmの位置とし、眼から液晶ディスプレイパネル(LCDパネル)の虚像までの距離(虚像距離)は、550mmとした。左右のLCDパネルを、4.923mmだけ水平方向にオフセットすることで、両眼輻輳距離を870mmと設定している。また、眼幅の基準を62mmとし、水平方向に±10.72mmまでの眼振りに対応したアイレリーフ設定とした。最大眼振り時の光線図を、
図9に模式的に示した。
【0073】
その他の設定条件については、以下の表1にまとめて示した。また、本実施例の接眼光学系のレンズパラメータは、表2に示した通りである。
【0074】
【0075】
【0076】
図10は、ナイキスト周波数における、白色光スルーフォーカスMTFを示したものである。このMTFは、眼から画像表示デバイスへ逆光線追跡した場合(すなわち、結像光学系として捉えた場合)の接眼光学系の結像性能を意味するものである。
図10において、横軸は、像面(画像表示デバイス面)を基準0としたときの前後スルーフォーカス位置(mm)である。また、縦軸は、MTF(コントラスト値)である。MTFが10%(0.1)以上あれば、目視で解像して見えると考えてよい。
【0077】
実施例1~4において、画像表示デバイスとして用いた各LCDのinchサイズは異なっており、このため、画素ピッチも異なっている。実施例1においては、画素ピッチから算出されるナイキスト周波数は、表1に示したように、8(lp/mm)である。従って、
図10は、8(lp/mm)で描いた。なお、表1と、以下に示す表3、表5、表7とを比較すると、inchサイズが小さくなるほど、ナイキスト周波数が大きくなっていくことがわかる。すなわち、より高い周波数でレンズ設計を行う必要が生じ、設計難易度は高まる方向となる。
【0078】
図10において、F1:画面中心、F2:画面左下70%、F3:画面左上70%、F4:画面右下70%、F5:画面右上70%の各画面位置における、垂直方向(Y軸方向)のMTFと水平方向(X軸方向)のMTFを表している。また、DiffRaction limit(Diff.lim)とは、回折限界を表す。
図10から明らかなように、本実施例における接眼光学系は、画面中心から画面周辺の対角70%の範囲にわたって、ナイキスト周波数まで解像していることから、フルHDの観察が可能であることがわかる。このように、本実施例に係る接眼光学系は、優れたコントラストを示しており、高画質な画像を観察者に提供可能であることがわかる。
【0079】
(実施例2)
以下に示す実施例2では、
図4に示した、2つのレンズからなる接眼レンズを有する左右同一の接眼光学系について設計し、結像シミュレーションを行った。
【0080】
かかるシミュレーションでは、第1偏光部材101及び第2偏光部材105は、保護ガラスに貼り付けられて存在しているものとした。また、画像表示デバイス107として、液晶ディスプレイパネル(4.5インチ、半対角57.0mm)のものを使用した。かかる液晶ディスプレイパネルは、フルHD(1920×1080画素)の解像度を有する液晶ディスプレイパネルである。更に、ミラー103の反射面と、接眼レンズの光軸とのなす角は、37度とした。
【0081】
アイレリーフは、レンズ面から20mmの位置とし、眼から液晶ディスプレイパネル(LCDパネル)の虚像までの距離(虚像距離)は、550mmとした。左右のLCDパネルを、4.474mmだけ水平方向にオフセットすることで、両眼輻輳距離を870mmと設定している。また、眼幅の基準を62mmとし、水平方向に±10.72mmまでの眼振りに対応したアイレリーフ設定とした。
【0082】
その他の設定条件については、以下の表3にまとめて示した。また、本実施例の接眼光学系のレンズパラメータは、表4に示した通りである。
【0083】
【0084】
【0085】
シミュレーションにより得られた接眼光学系のMTFを、
図11に示した。
図11に示したMTFの表記方法は、実施例1と同様である。
図11から明らかなように、本実施例における接眼光学系は、画面中心から画面周辺の対角70%の範囲にわたって、ナイキスト周波数まで解像していることから、フルHDの観察が可能であることがわかる。このように、本実施例における接眼光学系は、優れたコントラストを示しており、高画質な画像を観察者に提供可能であることがわかる。
【0086】
(実施例3)
以下に示す実施例3では、
図4に示した、2つのレンズからなる接眼レンズを有する左右同一の接眼光学系について設計し、結像シミュレーションを行った。
【0087】
かかるシミュレーションでは、第1偏光部材101及び第2偏光部材105は、保護ガラスに貼り付けられて存在しているものとした。また、画像表示デバイス107として、液晶ディスプレイパネル(4.0インチ、半対角50.7mm)のものを使用した。かかる液晶ディスプレイパネルは、フルHD(1920×1080画素)の解像度を有する液晶ディスプレイパネルである。更に、ミラー103の反射面と、接眼レンズの光軸とのなす角は、37度とした。
【0088】
アイレリーフは、レンズ面から20mmの位置とし、眼から液晶ディスプレイパネル(LCDパネル)の虚像までの距離(虚像距離)は、550mmとした。左右のLCDパネルを、3.986mmだけ水平方向にオフセットすることで、両眼輻輳距離を870mmと設定している。また、眼幅の基準を62mmとし、水平方向に±10.72mmまでの眼振りに対応したアイレリーフ設定とした。
【0089】
その他の設定条件については、以下の表5にまとめて示した。また、本実施例の接眼光学系のレンズパラメータは、表6に示した通りである。
【0090】
【0091】
【0092】
シミュレーションにより得られた接眼光学系のMTFを、
図12に示した。
図12に示したMTFの表記方法は、実施例1と同様である。
図12から明らかなように、本実施例における接眼光学系は、画面中心から画面周辺の対角70%の範囲にわたって、ナイキスト周波数まで解像していることから、フルHDの観察が可能であることがわかる。このように、本実施例における接眼光学系は、優れたコントラストを示しており、高画質な画像を観察者に提供可能であることがわかる。
【0093】
(実施例4)
以下に示す実施例4では、
図13に示した、3つのレンズからなる接眼レンズを有する左右同一の接眼光学系について設計し、結像シミュレーションを行った。
【0094】
かかるシミュレーションでは、第1偏光部材101及び第2偏光部材105は、保護ガラスに貼り付けられて存在しているものとした。また、画像表示デバイス107として、液晶ディスプレイパネル(4.0インチ、半対角50.7mm)のものを使用した。かかる液晶ディスプレイパネルは、フルHD(1920×1080画素)の解像度を有する液晶ディスプレイパネルである。更に、ミラー103の反射面と、接眼レンズの光軸とのなす角は、37度とした。
【0095】
アイレリーフは、レンズ面から20mmの位置とし、眼から液晶ディスプレイパネル(LCDパネル)の虚像までの距離(虚像距離)は、550mmとした。左右のLCDパネルを、3.959mmだけ水平方向にオフセットすることで、両眼輻輳距離を870mmと設定している。また、眼幅の基準を62mmとし、水平方向に±10.72mmまでの眼振りに対応したアイレリーフ設定とした。
【0096】
その他の設定条件については、以下の表7にまとめて示した。また、本実施例の接眼光学系のレンズパラメータは、表8に示した通りである。
【0097】
【0098】
【0099】
シミュレーションにより得られた接眼光学系のMTFを、
図14に示した。
図14に示したMTFの表記方法は、実施例1と同様である。
図14から明らかなように、本実施例における接眼光学系は、画面中心から画面周辺の対角70%の範囲にわたって、ナイキスト周波数まで解像していることから、フルHDの観察が可能であることがわかる。このように、本実施例における接眼光学系は、優れたコントラストを示しており、高画質な画像を観察者に提供可能であることがわかる。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0102】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、
前記第1偏光部材における偏光状態と、前記第2偏光部材における偏光状態と、が互いに直交する、接眼光学系。
(2)
前記第1偏光部材と前記ミラーとの間の光路上に、接眼レンズが更に配置されており、
前記接眼レンズにおける前記ミラー側のレンズ面は、凸の曲率を有する、(1)に記載の接眼光学系。
(3)
前記接眼レンズの拡大倍率をβとすると、3<β<5の関係が成立する、(2)に記載の接眼光学系。
(4)
前記接眼レンズの角倍率をγとすると、1.2<γ<1.5の関係が成立する、請求項(2)又は(3)に記載の接眼光学系。
(5)
前記ミラーの反射面において、前記画像表示デバイスから出た光線のうち前記接眼レンズの前記ミラー側のレンズ面で反射した反射光が前記ミラーの反射面に到達する位置の近傍には、前記ミラーで反射した前記反射光を遮蔽する遮蔽物が設けられる、(2)~(4)の何れか1つに記載の接眼光学系。
(6)
前記第1偏光部材及び前記第2偏光部材は、それぞれ直線偏光板である、(1)~(5)の何れか1つに記載の接眼光学系。
(7)
前記第1偏光部材及び前記第2偏光部材は、それぞれ、直線偏光板及び1/4波長板からなる円偏光板である、(1)~(5)の何れか1つに記載の接眼光学系。
(8)
前記第1偏光部材は、直線偏光板であり、
前記第2偏光部材は、1/2波長板である、(1)~(5)の何れか1つに記載の接眼光学系。
(9)
前記第1偏光部材は、直線偏光板であり、
前記第2偏光部材は、観察者側から順に、直線偏光板及び1/2波長板が配置された偏光部材である、(1)~(5)の何れか1つに記載の接眼光学系。
(10)
観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、前記第1偏光部材における偏光状態と、前記第2偏光部材における偏光状態と、が互いに直交する接眼光学系を備える、医療用ビューア。
(11)
手術が行われている部位である術部を撮像した画像を画像処理し、得られた術部撮像画像を出力する画像処理ユニットと、
前記画像処理ユニットから出力された前記術部撮像画像を、観察者に提示する医療用ビューアと、
を備え、
前記医療用ビューアは、観察者側からみた光路上に、少なくとも、第1偏光部材、ミラー、第2偏光部材、及び、画像表示デバイスが順に配置されており、前記第1偏光部材における偏光状態と、前記第2偏光部材における偏光状態と、が互いに直交する接眼光学系を有する、医療用ビューアシステム。
(12)
前記画像処理ユニットから出力された前記術部撮像画像を、医療用ビューアへと伝送する画像伝送ユニットを更に備える、(11)に記載の医療用ビューアシステム。
【符号の説明】
【0103】
10 接眼光学系
101 第1偏光部材
103 ミラー
105 第2偏光部材
107 画像表示デバイス
111 接眼レンズ
200 医療用ビューア
300 手術ユニット
301 撮像ユニット
303 手術器具ユニット
400 画像処理ユニット
500 画像伝送ユニット
600 医療用ビューアシステム
700 操作ユニット
701 操作アーム
703 操作ペダル
1000 手術用システム