(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】眠気兆候通知システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231031BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08B21/24
(21)【出願番号】P 2020114155
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山内 航一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匡駿
(72)【発明者】
【氏名】根本 広海
(72)【発明者】
【氏名】澤井 俊一郎
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-210375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眠気兆候を出しているドライバに対して眠気兆候通知を行う眠気兆候通知システムであって、
前記ドライバの状態であるドライバ状態を検出するドライバモニタと、
前記ドライバ状態に基づいて前記眠気兆候通知の要求を行う制御装置と、
を備え
前記制御装置は、
前記ドライバ状態に基づいて、前記ドライバの眠気の程度を示し前記眠気の程度に応じて分類される眠気レベルを推定する眠気レベル推定処理と、
前記眠気レベルに対応して定める値である眠気ポイントを積算する積算処理と、
前記積算処理により得られる積算値が所定の閾値を超える場合に前記ドライバに前記眠気兆候があると判定する眠気兆候判定処理と、
を
実行し、
前記眠気レベル推定処理において、
それぞれの前記眠気レベルには眠気動作が関連付けられており、
前記制御装置は、
前記眠気レベル毎に前記ドライバ状態から前記眠気動作の検出を行い、
前記眠気動作が検出された場合に、検出された前記眠気動作が関連付く前記眠気レベルを前記ドライバの前記眠気レベルとして推定し、
さらに前記眠気レベル推定処理において、前記制御装置は、
眠くなさそうなことを示す眠気レベルに関連付けられる前記眠気動作の検出を最優先で行い、その後は眠気の程度が高い眠気レベルの順に前記眠気動作の検出を行う
ことを特徴とする眠気兆候通知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の眠気兆候通知システムであって、
前記制御装置は、
推定した眠気レベルの頻度分布を記憶し、
前記頻度分布に基づいて前記眠気レベルに対応して定める前記眠気ポイントを動的に変更する
ことを特徴とする眠気兆候通知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の眠気兆候通知システムであって、
前記制御装置は、
推定した前記眠気レベルに信頼度を与えて、
前記信頼度に基づいて前記積算処理において積算する前記眠気ポイントを変更する
ことを特徴とする眠気兆候通知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドライバに眠気兆候があることを通知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数水準で状態を検知することができる状態検知装置を開示している。この状態検知装置では、操作量に対する出現頻度において複数の水準を定め、それぞれの水準に対応した閾値を用いることで、複数の状態レベルを検知することができるとしている。
【0003】
特許文献2は、車両の運転者の運転中の眠気を検知するための眠気検知装置を開示している。この眠気検知装置では、運転の中断があった場合等で眠気の判定の閾値を再設定する処理が行われる場合に、再設定を行うか否かについて必要性を考慮して判断することで、不要な閾値の再設定が行われることを回避することができるとしている。
【0004】
その他、本技術分野の技術レベルを示す文献として以下の特許文献3が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-116650号公報
【文献】特開2016-202419号公報
【文献】特開平7-108848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドライバの状態から眠気を推定する場合、運転中のドライバの複合的な動作のために、ドライバの眠気を時々刻々的確に推定することは難しく、誤推定が起きる可能性がある。このため、推定した眠気がある一定のレベルに達したことを条件としてドライバに眠気兆候があると判定して眠気兆候通知を与えると、誤推定に伴って必要のないタイミングで眠気兆候通知を行い、ドライバに煩わしさを与える虞がある。
【0007】
本発明の1つの目的は、不必要なタイミングでドライバに眠気兆候通知を行うことを減らし、煩わしさを低減した眠気兆候通知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、眠気兆候を出しているドライバに対して眠気兆候通知を行う眠気兆候通知システムに関連する。眠気兆候通知システムは、ドライバモニタと、制御装置と、を備えている。ドライバモニタは、ドライバの状態であるドライバ状態を検出する装置である。制御装置は、ドライバ状態に基づいて眠気兆候通知の要求を行う装置である。
【0009】
制御装置は、ドライバ状態に基づいてドライバの眠気レベルを推定する眠気レベル推定処理と、眠気ポイントを積算する積算処理と、を実行する。眠気レベルは、ドライバの眠気の程度を示し、眠気の程度に応じて分類されている。眠気ポイントは、眠気レベル推定処理により推定された眠気レベルに対応して定める値である。
【0010】
制御装置は、さらに積算処理により得られる積算値が所定の閾値を超える場合にドライバに眠気兆候があると判定する処理を実行する。
【0011】
眠気レベル推定処理において、制御装置による眠気レベルの推定は、ドライバの状態から眠気動作を検出することにより行われる。眠気動作は、それぞれの眠気レベルに関連付けられているドライバの動作である。眠気動作が検出された場合は、検出された眠気動作が関連づく眠気レベルをドライバの眠気レベルと推定する。
【0012】
制御装置は、眠気動作の検出によりドライバの眠気レベルを推定する場合、眠気が無いことを示す眠気レベルの眠気動作の検出を最優先に行い、その後は眠気の程度が高い眠気レベルの順に眠気動作の検出を行うように構成されていても良い。
【0013】
制御装置は、推定した眠気レベルの頻度分布を記憶し、頻度分布に基づいて眠気レベルに対応して定める眠気ポイントを動的に変更しても良い。
【0014】
あるいは、制御装置は、推定した眠気レベルに信頼度を与えて、信頼度に基づいて積算処理において積算する眠気ポイントを変更しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、推定したドライバの眠気レベルに対応して与えられる眠気ポイントを積算し、積算値が所定の閾値を超える場合に眠気兆候通知を与える。これにより、不必要なタイミングでドライバに眠気兆候通知を行うことを減らし、煩わしさを低減することができる。
【0016】
さらに、推定した眠気レベルの頻度分布や信頼度を与えて、それら頻度分布や信頼度に応じて積算する眠気ポイントの値を変更することで、ドライバの個人差や運転環境等の影響による眠気動作のばらつきを考慮することができ、推定の精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態に係る眠気兆候通知システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】それぞれの眠気レベルに関連付けられる眠気動作の例を示す表である。
【
図3】本実施の形態に係る眠気兆候通知システムによりドライバの眠気レベルを推定する場合の決定木を示す図である。
【
図4】眠気レベルに対応して定める眠気ポイントの例を示す図である。
【
図5】本実施の形態に係る眠気兆候通知システムにより実行する眠気兆候通知プログラムの概要を示す図である。
【
図6】本実施の形態に係る眠気兆候通知システムによる処理を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る眠気兆候通知システムの頻度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
1.構成例
図1は、本実施の形態に係る眠気兆候通知システム10の構成例を示すブロック図である。眠気兆候通知システム10は、ドライバモニタ20、HMI(Human Machine Interface)ユニット30、シート装置40、及び制御装置50を含んでいる。ドライバモニタ20、HMIユニット30、及びシート装置40はCAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークによって制御装置50に接続されている。
【0020】
ドライバモニタ20は、車両に搭載されており、ドライバの状態(以下「ドライバ状態」とも称する。)を検出する。ドライバモニタ20は、運転席の前方で運転者の顔を撮影できる場所、例えば、ステアリングコラムの上部や車内リアビューミラーの近傍に設置されている。ドライバモニタ20により検出されるドライバ状態は、例えば、ドライバの眼の開き具合(以下「開眼度」とも称する。)、口の開き具合(以下「開口度」とも称する。)、顔の向き、等の顔の表情である。これら検出されたドライバ状態は、ドライバ状態情報DRSとして、後述するメモリ51に記憶される。
【0021】
制御装置50は、メモリ51及びプロセッサ52を備えている。制御装置50は、典型的には、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)である。メモリ51は、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、プロセッサ52で実行可能な制御プログラムや制御プログラムに関連する種々のデータを保存するROM(Read Only Memory)とを含んでいる。メモリ51には、データとして、少なくともドライバ状態情報DRSが記憶されている。またメモリ51には、プログラムとして、少なくとも眠気兆候通知プログラムFBPが記憶されている。プロセッサ52は、制御プログラムやデータをメモリ51から読み出してプログラムを実行し、種々の制御信号を生成する。
【0022】
プロセッサ52は、少なくとも、メモリ51からドライバ状態情報DRS及び眠気兆候通知プログラムFBPを読み出してプログラムを実行する。これにより制御装置50は、ドライバ状態情報DRSに基づいてドライバの眠気兆候を判定し、HMIユニット30又はシート装置40に眠気兆候通知要求を出力する。
【0023】
HMIユニット30は、ドライバに情報を出力し、またドライバから情報の入力を受け付けるインターフェースである。HMIユニット30は、視覚デバイス31、スピーカ32、及び入力装置33を含んでいる。
【0024】
視覚デバイス31は、例えば、インストルメンタルパネルに設置されるディスプレイやヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)、発光装置(LED等)である。
【0025】
スピーカ32は、音声を出力する装置である。入力装置33は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイク等である。
【0026】
HMIユニット30は、制御装置50から眠気兆候通知要求を受け取ることにより、ドライバに表示や音による眠気兆候通知を行う眠気兆候通知装置としても機能する。
【0027】
HMI30による眠気兆候通知は、ディスプレイやHUDにテキストメッセージ(例:「眠くはありませんか?」)を表示する、ディスプレイやHUD、発光装置に点滅する表示を行う、スピーカにより音声メッセージを行う(例:「眠くはありませんか?」)、等によりドライバの覚醒を促すものである。
【0028】
シート装置40は、ドライバが座る運転席に関連する装置である。シート装置40は、例えば、運転席のシートベルトを振動させるアクチュエータである。他の例として、シート装置40は、運転席のシートバック及びシートクッション内のエアブラダを膨張させることで、運転者の背中や大腿部を押圧するリフレッシュシート機能を有していてもよい。
【0029】
シート装置40は、制御装置50から眠気兆候通知要求を受け取ることにより、ドライバに振動や押圧といった刺激による眠気兆候通知を行う眠気兆候通知装置としても機能する。
【0030】
シート装置40による眠気兆候通知は、シートベルトを振動させるようにアクチュエータを作動させたり、前述のリフレッシュシート機能を作動させたりすることによりドライバの覚醒を促すものである。
【0031】
2.眠気レベル
ここで、眠気兆候通知の前提となる眠気レベルについて説明する。眠気レベルとは、ドライバの眠気の程度を表したものである。眠気レベルは、例えば
図2に示すように、眠気の程度が小さい順にD0からD4までの5段階のレベルに分類することができる。
【0032】
眠気レベルD0はドライバが眠くなさそうな状態であることを示すレベル、眠気レベルD1はドライバがやや眠そうな状態であることを示すレベル、眠気レベルD2はドライバが眠そうな状態であることを示すレベル、眠気レベルD3はドライバがかなり眠そうな状態であることを示すレベル、眠気レベルD4はドライバが非常に眠そうな状態であることを示すレベルである。
【0033】
ドライバの眠気レベルは、所定時間(例:10秒)の間(以下「推定対象時間」とも称する。)のドライバ状態情報DRSからそれぞれの眠気レベルに関連付けられる眠気動作を検出することにより推定することができる。眠気レベルに関連付けられる眠気動作は、
図2により例示される。これらの眠気動作がそれぞれの眠気レベルに関連付けられることは、事前の検討や研究により与えられる。
【0034】
眠気動作の検出は、ドライバ状態情報DRSに含まれる開眼度、開口度、顔の向き等のデータを分析することにより行われる。例えば、眠気レベルD2の眠気動作である「瞬きを頻発している」は、開眼度のデータを参照して、瞬きとする(例:短い時間で開眼度が急激に変化する)事象が、推定対象時間に所定回数以上発生していることにより検出される。他の例として、眠気レベルD3の眠気動作である「長いあくびをしている」は、開口度のデータを参照して、所定値以上の開口度が所定時間以上継続していることにより検出される。
【0035】
3.眠気レベルの推定
ドライバの眠気レベルの推定は、眠気レベル毎に眠気動作を検出することにより行われる。
図3は、本実施の形態において、眠気兆候通知プログラムFBPによりドライバの眠気レベルを推定する場合の決定木を示す図である。
【0036】
ステップS1において、眠気レベルD0の眠気動作が検出されるか否かを判定する。検出される場合(ステップS1;Yes)、ドライバの眠気レベルをD0と推定する。検出されない場合(ステップS1;No)、ステップS2に進む。
【0037】
ステップS2において、眠気レベルD4の眠気動作が検出されるか否かを判定する。検出される場合(ステップS2;Yes)、ドライバの眠気レベルをD4と推定する。検出されない場合(ステップS2;No)、ステップS3に進む。
【0038】
ステップS3において、眠気レベルD3の眠気動作が検出されるか否かを判定する。検出される場合(ステップS3;Yes)、ドライバの眠気レベルをD3と推定する。検出されない場合(ステップS3;No)、ステップS4に進む。
【0039】
ステップS4において、眠気レベルD2の眠気動作が検出されるか否かを判定する。検出される場合(ステップS4;Yes)、ドライバの眠気レベルをD2と推定する。検出されない場合(ステップS4;No)、ステップS5に進む。
【0040】
ステップS5において、眠気レベルD1の眠気動作が検出されるか否かを判定する。検出される場合(ステップS5;Yes)、ドライバの眠気レベルをD1と推定する。検出されない場合(ステップS5;No)、ドライバの眠気レベルをD0と推定する。
【0041】
図3に示すように、眠気レベル毎に眠気動作の検出を行い、対象とする眠気レベルの眠気動作が検出された時点で、その対象とする眠気レベルがドライバの眠気レベルと推定される。従って、例えば眠気レベルD0及びD4の眠気動作が検出されず、眠気レベルD3を対象として眠気動作が検出された場合、眠気レベルD1及びD2の眠気動作を検出することなく、ドライバの眠気レベルをD3と推定する。また、いずれの眠気レベルの眠気動作も検出されない場合は、ドライバの眠気レベルはD0と推定される。
【0042】
図3に示すように、本実施の形態に係るプロセッサ52は、眠気レベルD0の眠気動作の検出を最優先で行い、その後眠気レベルが高い順に眠気動作の検出を行う。このように極端な眠気レベルの眠気動作を優先的に検出することで、ドライバの眠気レベルが不当に推定されることを減らすことができる。
【0043】
4.眠気度の算出
次に、眠気度について説明する。プロセッサ52は、一定の制御周期で推定したドライバの眠気レベルに基づいて眠気ポイントを取得する。
【0044】
眠気ポイントは、推定したドライバの眠気レベルに対応して定められる値であり、例えば
図4に示されるように定められる。
図4に示す場合において、眠気レベルD0には-1の眠気ポイントが設定されている。眠気レベルD1には+1の眠気ポイントが設定されている。眠気レベルD2には+2の眠気ポイントが設定されている。眠気レベルD3には+3の眠気ポイントが設定されている。眠気レベルD4には+5の眠気ポイントが設定されている。つまり、眠気レベルが高いほど、より大きい値の眠気ポイントが設定されている。なお、眠気レベルに対応して定める眠気ポイントは、状況に応じて変更されても良い。
【0045】
図4に示す場合において眠気レベルD0の眠気ポイントは-1であるから、その積算値は負の値となりうる。積算値が負の値となる場合、積算値はゼロとされる。また、プログラム開始直後の積算値もゼロである。
【0046】
プロセッサ52は、
図5に示すように、一定の周期で取得される眠気ポイントを順次積算し、その積算値を眠気度Dとして算出する。眠気度Dは、運転者の眠気の強さを表すパラメータである。ただし、眠気ポイントを積算した結果が負の値になる場合、眠気度Dはゼロとされる。
【0047】
眠気度Dには、閾値が設定されている。プロセッサ52は、眠気度Dが所定の閾値超える場合(図中、時間td)に、運転者の眠気兆候が検出されたと判定する。つまり、プロセッサ52は、眠気のレベルの推移から眠気兆候を総合的に判定する。なお、閾値の値は、任意に設定することができる。ただし、居眠り運転の防止の確実性を高める上では、閾値は、最大の眠気レベルD4の眠気ポイントよりも小さい値であることが好ましい。
【0048】
そして眠気度Dが閾値を超え、運転者の眠気兆候が検出された場合、プロセッサ52は、ドライバに眠気兆候があると判定し、眠気兆候通知要求を行う。
【0049】
5.眠気兆候の判定及び眠気兆候通知要求
本実施の形態に係る制御装置50によるドライバの眠気兆候の判定及び眠気兆候通知要求は、プロセッサ52によって眠気兆候通知プログラムFBPが実行されることにより実現される。
図6は、プロセッサ52により実行する眠気兆候通知プログラムFBPの処理を示すフローチャートである。なお
図6に示される処理は、制御装置50の所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0050】
ステップS11(眠気レベル推定処理)において、プロセッサ52は、ドライバ状態情報DRSからドライバの眠気レベルを推定する。眠気レベルの推定は、前述するように、
図3に示される決定木に従って眠気レベル毎に眠気動作が検出されるか否かにより行う。
【0051】
次に、ステップS12(積算処理)において、プロセッサ52は、眠気ポイントを積算して眠気度Dの算出を行う。プロセッサ52は、推定したドライバの眠気レベルに基づいて眠気ポイントを取得し、制御周期毎に取得される眠気ポイントを順次積算する。その積算値を眠気度Dとして算出する。
【0052】
ステップS13(眠気兆候判定処理)において、プロセッサ52は、ステップS12において算出した眠気度Dが閾値を超えるか否かを判定する。プロセッサ52は、眠気度Dが閾値を超える場合に、ドライバに眠気兆候があると判定する。閾値は、眠気兆候通知システム10の適合等により調整される所定の値であり、プログラムにあらかじめ与えられている。
【0053】
ドライバに眠気兆候があると判定される場合(ステップS13;Yes)、ステップS14に進み、プロセッサ52は眠気兆候通知要求を行いこの制御周期における処理を終了する。ドライバに眠気兆候がないと判定される場合(ステップS13;No)、この制御周期における処理を終了する。
【0054】
6.効果
以上説明したように、本実施の形態に係る眠気兆候通知システム10によれば、眠気動作を検出することでドライバの眠気レベルを推定し、推定した眠気レベルに対応する眠気ポイントを積算して眠気度を算出する。そして、眠気度が所定の閾値を超える場合にドライバに眠気兆候があると判定し眠気兆候通知を行う。これにより、ドライバの眠気の誤推定に伴う不必要なタイミングでの眠気兆候通知を減らし、煩わしさを低減することができる。
【0055】
7.本実施の形態に係る眠気兆候通知システムの変形例
本実施の形態に係る眠気兆候通知システム10は、以下のように変形した態様を採用しても良い。
【0056】
7-1.眠気レベルの頻度分布による眠気ポイントの動的変更
メモリ51は、ベースとする眠気レベルの頻度分布(以下「ベース頻度分布」とも称する。)と、実際に推定したドライバの眠気レベルの頻度分布(以下「実頻度分布」とも称する。)と、を記憶し、プロセッサ52は、ベース頻度分布と実頻度分布を比較して眠気ポイントを動的に変更しても良い。
【0057】
ベース頻度分布及び実頻度分布は、それぞれの眠気レベル毎にその頻度が与えられている。ベース頻度分布は、例えば一般的な運転におけるドライバの眠気レベルの頻度分布が与えられる。
【0058】
プロセッサ52は、ベース頻度分布と実頻度分布を比較し、比較結果に応じて眠気ポイントを変更する。比較結果に応じた眠気ポイントの変更は、例えば次のように行われる。
【0059】
図7は、ベース頻度分布と実頻度分布の比較の例を示すグラフである。
図7に示される例では、実頻度分布における眠気レベルD2の頻度だけが、ベース頻度分布と比較して多くなっている。このような場合、ドライバ特有の動作のために誤って眠気レベルD2と推定している可能性が考えられる。このため眠気レベルD2に対応する眠気ポイントを相対的に下げることを行う。
【0060】
例えば
図4に示すようにそれぞれの眠気レベルに対して眠気ポイントが設定されている場合は、眠気レベルD2に設定されている眠気ポイントを+2から+0.5に変更する。どの程度変更するかは、比較した場合の差に応じてマップにより与えても良いし、ベース頻度分布とバランスするように与えられても良い。
【0061】
このように眠気ポイントを変更することで、誤推定の影響を小さくすることができる。
【0062】
あるいは、以下の状況C1乃至C4で眠気レベルD3やD4といった高い眠気レベルの頻度がベース頻度分布と比較して多くなる場合に、眠気レベルD3やD4に対応する眠気ポイントを相対的に上げることを行う。
C1:生体的に眠気のピークとされる時間帯(午後2時から午後4時、及び午前2時から午前4時)に走行している時
C2:運転開始からの経過時間が長いとき(例:2時間以上)
C3:居眠り運転による事故が多発する地点を走行しているとき
C4:眠気が大きくなりやすい道路を走行しているとき
【0063】
これにより、特に眠気が大きくなりやすい状況で高い眠気レベルを推定した場合に、対応する眠気ポイントが高くなることで推定の精度を高めることができる。
【0064】
なお状況C1乃至C4の判断は、制御装置50が車載ネットワークを介して取得する時間情報、地図情報、位置情報により行われる。特に状況C4の判断は、本実施の形態に係る眠気兆候通知システム10が適用されるそれぞれの車両から、位置情報、及びそれぞれの車両が推定した眠気レベルを収集することにより行われても良い。
【0065】
7-2.眠気レベルの信頼度による積算する眠気ポイントの変更
プロセッサ52は、推定した眠気レベルに信頼度を与えて、信頼度に応じて積算する眠気ポイントを変更しても良い。
【0066】
信頼度は、例えば次の観点P1乃至P3で与えることができる。
P1:眠気レベルを推定した眠気動作の確からしさ
P2:複数の眠気動作の検出
P3:特定の状況において推定された眠気レベル
【0067】
観点P1では、眠気動作の確からしさから推定した眠気レベルの信頼度を与える。例えば、ドライバ状態情報DRSから「長いあくびをしている」眠気動作が検出され、ドライバの眠気レベルがD3と推定される場合について考える。プロセッサ52は、ドライバ状態情報DRSの開口度を参照して、開口度が所定値以上であり、かつその状態が所定時間以上継続する場合に、「長いあくびをしている」眠気動作を検出する。このとき、開口度の値が大きく、継続時間が長いほど眠気動作の確からしさが高いといえる。従って、「長いあくびをしている」眠気動作を検出した場合には、開口度の値が大きく、継続時間が長いほど高い信頼度を与えるようにすることができる。
【0068】
他の例として、「瞼を閉じている」眠気動作を検出した場合には、「瞼を閉じている」と検出される時間が長いほど高い信頼度を与える、「瞬きの速度が低下している」眠気動作を検出した場合には、瞬きの速度が遅いほど高い信頼度を与える、等がある。
【0069】
観点P2では、複数の眠気動作が検出された場合に推定した眠気レベルの信頼度を高くする。例えば、眠気レベルD2の眠気動作を検出する場合に、ドライバ状態情報DRSから「頭を動かしている」眠気動作と「瞼がやや重い」眠気動作の両方が検出された場合、何れか一方のみが検出される場合と比べて、眠気レベルD2であることの信頼度は高いといえる。従って、このように複数の眠気動作が検出される場合に高い信頼度を与えるようにすることができる。
【0070】
観点P3では、運転環境や周囲環境等が特定の状況にある場合に眠気レベルの信頼度を高くする。例えば、状況C1乃至C4で眠気レベルがD2以上と推定される場合、通常の状況で推定される眠気レベルと比べて信頼度が高いといえる。従って、このような特定の状況において推定された眠気レベルには高い信頼度を与えるようにすることができる。
【0071】
他の例として、運転開始直後に眠気レベルD0又はD1と推定される場合に信頼度を高くする、緊急車両が近くにいる状況で眠気レベルがD0又はD1と推定される場合に信頼度を高くする、車両がふらついていると判定される状況で眠気レベルがD2以上と推定される場合に信頼度を高くする、等がある。
【0072】
信頼度に応じて積算する眠気ポイントの変更は、例えば次のように行われる。
【0073】
推定した眠気レベルに前述するような観点から、信頼度を0~1の値で与える。0に近づくほど信頼度が低く、1に近づくほど信頼度が高いことを示している。このとき積算する眠気ポイントは、信頼度を乗算した値とする。
【0074】
例えば、それぞれの眠気レベルに
図4に示すような眠気ポイントが設定されているとする。このとき、眠気レベルD2で信頼度0.8である場合、積算する眠気ポイントは2×0.8=1.6となる。眠気レベルD2で信頼度0.4である場合、積算する眠気ポイントは2×0.4=0.8となる。つまり、信頼度が低くなるほど積算する眠気ポイントが低くなる。
【0075】
このように推定した眠気レベルに信頼度を与えて、信頼度に応じて積算する眠気ポイントを変更することで、眠気レベルの誤推定の影響を減らすことができ、不必要なタイミングでの眠気兆候通知に伴う煩わしさを低減することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 眠気兆候通知システム
20 ドライバモニタ
30 HMIユニット
31 視覚デバイス
32 スピーカ
33 入力装置
40 シート装置
50 制御装置
51 メモリ
52 プロセッサ
DRS ドライバ状態情報
FBP 眠気兆候通知プログラム