(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20231031BHJP
E05B 1/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60J5/04 H
E05B1/00
(21)【出願番号】P 2020133276
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石本 恵嗣
(72)【発明者】
【氏名】播磨 弘康
(72)【発明者】
【氏名】郭 成▲ジュ▼
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-066722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0005016(US,A1)
【文献】特開2013-151799(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098563(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0000165(US,A1)
【文献】特開2010-024802(JP,A)
【文献】特開2020-094410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
E05B 49/00 - 49/04
E05B 77/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠を有する側部ドアと、
前記窓枠の下端縁より上側に配置され、前記側部ドアを車両外部から開閉する際に操作されるアウトサイドドアハンドルと、
前記アウトサイドドアハンドルのうち前記側部ドアの開動作時にユーザが手指で押す押圧面に設けられ、操作されることで解除信号を出力する解除スイッチと、
前記解除信号が出力された場合に、ラッチ機構による前記側部ドアのラッチを解除するラッチアクチュエータと、
前記アウトサイドドアハンドルに設けられた緊急スイッチであって、前記ラッチ機構に機械的に連結され、操作されることで前記ラッチ機構によるラッチを機械的に解除する緊急スイッチと、
を備え
、
前記緊急スイッチは、アウトサイドドアハンドルのうち、前記窓枠に隣接する箇所に設けられる、
ことを特徴とする車両側部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両側部構造であって、
前記アウトサイドドアハンドルは、
前記アウトサイドドアハンドルの周囲に位置するウィンドガラスと略平行な方向に延びるベース部と、
前記ベース部よりも車幅方向外側に位置し、前記ベース部との間にユーザの手指が差し込まれるポケット空間を形成するカバー部と、
を備えており、前記押圧面は、前記カバー部のうち、前記ベース部との対向面である、
ことを特徴とする車両側部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両側部構造であって、
前記アウトサイドドアハンドルは、前記窓枠で囲まれた窓開口の後下隅部に配置されており、
前記カバー部は、前記窓枠の下端縁および後端縁との間に架け渡されている、
ことを特徴とする車両側部構造。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか1項に記載の車両側部構造であって、
前記緊急スイッチの操作方向は、車両上下方向を主成分とする、ことを特徴とする車両側部構造。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の車両側部構造であって、さらに、
車両の走行中は、前記解除スイッチと前記ラッチアクチュエータとの間の信号経路を遮断する、ことを特徴とする車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、側部ドアと、当該側部ドアを外側から開ける際に操作されるアウトサイドドアハンドルと、を備えた車両側部構造を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の側部ドアには、当該側部ドアを外側から開けるためのアウトサイドドアハンドルが設けられている。例えば、特許文献1には、車両の側部ドアのうち、窓枠の下端縁より下側となる位置にアウトサイドドアハンドルが設けられている。このアウトサイドドアハンドルは、側部ドアを車両の外側から開ける際に、手指を引っかけて車幅方向外側に引っ張るレバーを有している。このレバーは、側部ドアをラッチするラッチ機構と機械的に連結されており、当該レバーを、車幅方向外側に引っ張ることでラッチが解除される。
【0003】
ところで、近年では、デザイン性向上等のために、アウトサイドドアハンドルを、窓枠の下端縁より上側に配置することがある。例えば、特許文献2では、窓枠で囲まれた窓開口の後下隅部に、アウトサイドドアハンドルを設けることが提案されている。この特許文献2のアウトサイドドアハンドルも、側部ドアを車幅方向外側に引っ張るためのレバーを有しており、当該レバーとラッチ機構とを機械的に連結している。特許文献2のように、アウトサイドドアハンドルを、窓枠の下端縁より上側に設けることで、側部ドアを、凹凸の少ないシンプルなデザインにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-177475号公報
【文献】特開2014-111869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のように、窓開口の後下隅部にアウトサイドドアハンドルを設けた場合、車室内からの斜め後方の視界が悪化する場合があった。かかる問題を避けるためには、アウトサイドドアハンドルを小型化する必要がある。しかし、特許文献2の場合、側部ドアを車幅方向外側に引っ張るためのレバーに、ラッチ機構を機械的に連結している。この場合、レバーの近傍に、機械的構造を配置する必要があり、アウトサイドドアハンドルの大幅な小型化は困難であった。
【0006】
そこで、本明細書では、車室内から車外の視界を良好に保ちつつ、意匠性に優れた車両側部構造を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する車両側部構造は、窓枠を有する側部ドアと、前記窓枠の下端縁より上側に配置され、前記側部ドアを車両外部から開閉する際に操作されるアウトサイドドアハンドルと、前記アウトサイドドアハンドルのうち前記側部ドアの開動作時にユーザが手指で押す押圧面に設けられ、操作されることで解除信号を出力する解除スイッチと、前記解除信号が出力された場合に、ラッチ機構による前記側部ドアのラッチを解除するラッチアクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0008】
アウトサイドドアハンドルを、窓枠の下端縁より上側に設けることで、側部ドアを凹凸の少ない、シンプルなデザインにできるため、意匠性を向上できる。また、ラッチを電気的に解除する解除スイッチを押圧面に設けることで、ラッチを機械的に解除するレバーを設けた場合に比べて、アウトサイドドアハンドルを小型化できる。そして、これにより、ウィンドガラスの面積の低下を抑制でき、車室内から車外の視界を良好に保つことができる。
【0009】
この場合、前記アウトサイドドアハンドルは、前記アウトサイドドアハンドルの周囲に位置するウィンドガラスと略平行な方向に延びるベース部と、前記ベース部よりも車幅方向外側に位置し、前記ベース部との間にユーザの手指が差し込まれるポケット空間を形成するカバー部と、を備えており、前記押圧面は、前記カバー部のうち、前記ベース部との対向面であってもよい。
【0010】
かかる構成とした場合、押圧面、ひいては、解除スイッチは、ポケット空間内に位置しており、外部に露出しない。その結果、解除スイッチの誤操作、ひいては、ラッチの誤解除を効果的に防止できる。
【0011】
この場合、前記アウトサイドドアハンドルは、前記窓枠で囲まれた窓開口の後下隅部に配置されており、前記カバー部は、前記窓枠の下端縁および後端縁との間に架け渡されていてもよい。
【0012】
かかる構成とすることで、アウトサイドドアハンドルの面積をより小さくでき、車室内から車外の視界をより良好に保つことができる。
【0013】
また、さらに、前記アウトサイドドアハンドルに設けられた緊急スイッチであって、前記ラッチ機構に機械的に連結され、操作されることで前記ラッチ機構によるラッチを機械的に解除する緊急スイッチを備えてもよい。
【0014】
かかる緊急スイッチを設けることで、解除スイッチまたはラッチアクチュエータに不具合が生じた場合でも、ラッチを解除できる。
【0015】
この場合、前記緊急スイッチの操作方向は、車両上下方向を主成分としてもよい。
【0016】
かかる構成とすることで、緊急スイッチが、急ブレーキや衝突時に受ける力により誤操作されることを効果的に防止できる。
【0017】
また、前記緊急スイッチは、アウトサイドドアハンドルのうち、前記窓枠に隣接する箇所に設けられてもよい。
【0018】
かかる構成とすることで、緊急スイッチとラッチ機構とを機械的に接続する機械的構造の大部分を、窓枠の外側、すなわち、側部ドアのアウタパネルとインナパネルとの間に隠すことができるため、アウトサイドドアハンドルの大型化を抑制できる。
【0019】
また、車両の走行中は、前記解除スイッチと前記ラッチアクチュエータとの間の信号経路を遮断されてもよい。
【0020】
かかる構成とすることで、車両走行中に、ノイズ等に起因して解除スイッチが誤操作しても、ラッチが誤解除されない。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示する車両側部構造によれば、車室内から車外の視界を良好に保ちつつ、優れた意匠性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】車両の側部ドアを車両外側から見た図である。
【
図5】緊急スイッチの構成の他の例を示す図である。
【
図6】緊急スイッチの構成の他の例を示す図である。
【
図7】側部ドアのラッチの解除に関係する構成を示すブロック図である。
【
図8】アウトサイドドアハンドルの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して車両側部構造について説明する。
図1は、車両の側部ドア10を車両外側から見た図である。また、
図2は、
図1のA部拡大図である。なお、以下の図面において、「Up」、「Fr」、「Out」は、それぞれ、車両上方、車両前方、車幅方向外方を意味する。
【0024】
図1に示す側部ドア10は、4ドア式車両に搭載されるドアである。4ドア式車両の場合、その側部には、二つの側部ドアが前後に並んで配置されるが、
図1の側部ドア10は、複数の側部ドア10のうち最も後方側に配置される側部ドアである。ただし、後述する側部ドア10の構成、特に、アウトサイドドアハンドル18の構成は、他の側部ドアに適用されてもよい。例えば、後述する側部ドア10の構成は、2ドア式車両の側部ドアに適用されてもよい。
【0025】
本例の側部ドア10は、当該側部ドア10の前端において車両上下方向に延びるヒンジ軸を中心して、鉛直軸周りに揺動することで、開閉される。また、側部ドア10には、窓枠16を有する。窓枠16は、ウィンドガラスが配置される窓開口を規定するものである。窓開口は、上下方向に延びる中間縦枠16cにより前側窓開口17fと、当該前側窓開口17fより後方に位置する後側窓開口17rと、に分割されている。前側窓開口17fには、ユーザの操作に応じて昇降可能な昇降ウィンドガラス12が配置される。後側窓開口17rには、窓枠16に嵌め殺しされたフィクスドウィンドガラス14が配置されている。なお、
図1では、ウィンドガラス12,14には、墨ハッチングを施している。
【0026】
側部ドア10には、さらに、当該側部ドア10を車外から開く際に、ユーザにより操作されるアウトサイドドアハンドル18も設けられている。本例において、アウトサイドドアハンドル18は、
図1、
図2に示すように、窓枠16の下端縁16bより上側位置、換言すれば、後側窓開口17r内に配置されている。より具体的に説明すると、アウトサイドドアハンドル18は、後側窓開口17rの後下隅部に配置されており、その前端辺(または後述するカバー部34)は、窓枠16の後端縁16aと下端縁16bとを架け渡すように傾斜している。そして、アウトサイドドアハンドル18全体は、車幅方向視で略三角形状となっている。このように、アウトサイドドアハンドル18を、窓枠16より下側ではなく、窓枠16の下端縁16bより上側に配置することで、側部ドア10を、凹凸の少ないシンプルなデザインにでき、より洗練された印象を観察者に与えることができる。
【0027】
このアウトサイドドアハンドル18のより詳細な構成について
図3を参照して説明する。
図3は、
図2におけるB-B断面図である。この
図3から明らかなとおり、アウトサイドドアハンドル18は、第一パネル24と第二パネル26と、を有する。第一パネル24および第二パネル26は、いずれも、樹脂からなるパネル部材である。第一パネル24は、フィクスドウィンドガラス14と略平行な方向に延びるベース部28と、ベース部28の後端から車幅方向外側に向かって延びる後部30と、ベース部28の下端から車幅方向外側に向かって延びる配置部32(
図3では見えず、
図2参照)と、ベース部28の上端から車幅方向外側に向かって延びる天部(図示せず)と、が滑らかに繋がっている。
【0028】
第二パネル26は、ベース部28より車幅方向外側に位置するカバー部34と、カバー部34の前端からベース部28の前端に延びる前部31とを有している。カバー部34は、ベース部28と略平行であり、フィクスドウィンドガラス14に連なるような形状となっている。このカバー部34とベース部28との間には、ユーザの指先を差し込むためのポケット空間36が形成される。側部ドア10を車両外側から開く際、ユーザは、当該ポケット空間36に指先を差し込み、カバー部34に手指を引っかける。そして、その状態で、手指を手前側に引くことで、側部ドア10が手前側、すなわち、開く方向に引っ張られることになる。ここで、この場合、カバー部34のうち、ベース部28との対向面は、側部ドア10を手前側に引っ張る際に、ユーザが手指で押す押圧面35として機能する。
【0029】
本例では、この押圧面35に、解除スイッチ38を設けている。解除スイッチ38は、操作されることで、側部ドア10のラッチを解除するための解除信号を出力する電気スイッチである。解除信号が出力されると、ラッチアクチュエータ72(
図3で図示せず、
図7参照)が駆動し、側部ドア10のラッチが自動的に解除される。そして、押圧面35に、解除スイッチ38を配置することで、側部ドア10を開けようとした際、ユーザは、意識しなくても、解除スイッチ38を操作することになる。結果として、ユーザは、側部ドア10を手前側に引っ張る動作とラッチを解除する動作とを意識せずに同時に行うことができ、スムーズに側部ドア10を開放できる。
【0030】
解除スイッチ38の操作面は、
図2において破線で示すように、カバー部34の長尺方向に長尺な幅広形状となっている。このように解除スイッチ38の操作面を、幅広形状とすることで、指先の形状や差し込み位置にばらつきがあったとしても、確実に解除スイッチ38を操作できる。
【0031】
こうした解除スイッチ38を設ける理由について、従来技術と比較して説明する。一般に、側部ドア10は、意図しない開放を防止するため、ラッチ機構74によりラッチされる。ラッチ機構74の構成は、特に限定されないが、通常、ラッチ機構74は、閉鎖状態の側部ドア10に係合する係合部材を有しており、当該係合部材が係合解除方向に動くことでラッチが解除される。
【0032】
従来のアウトサイドドアハンドルには、側部ドア10を手前側に引っ張るためのレバーが設けられており、このレバーの動きが伝達部材を介して係合部材に伝達されるようになっていた。換言すれば、従来のアウトサイドドアハンドルでは、レバーとラッチ機構74とが機械的に連結されていた。かかる構成の場合、側部ドア10を手前側に引っ張るための部材(すなわちレバー)の周辺に機械的な伝達機構を設ける必要があり、アウトサイドドアハンドル全体が、大型化しやすかった。
【0033】
ここで、本例のように、窓枠16の下端より上側にアウトサイドドアハンドル18を設ける構成において、当該アウトサイドドアハンドル18が大型化すると、その分、ウィンドガラスの面積が低下し、車内からの視認性が悪化する。本例では、こうした問題を避けるために、機械的な構成に替えて、電気スイッチである解除スイッチ38をアウトサイドドアハンドル18に設けている。この場合、側部ドア10を手前側に引っ張るための部位、すなわち、押圧面35の近傍には、当該解除スイッチ38の他には、電気信号を送受するための信号線を設けるだけでよいため、機械的構成を設ける場合に比べて、アウトサイドドアハンドル18を小型化できる。そして、これにより、ウィンドガラスの面積を大きくとることができ、車内からの視認性を良好に保つことができる。
【0034】
また、本例のアウトサイドドアハンドル18は、上記の解除スイッチ38に加えて、さらに、緊急スイッチ40も設けている。この緊急スイッチ40は、解除スイッチ38またはラッチアクチュエータ72に何らかの不具合が生じ、解除スイッチ38を操作しても、ラッチが解除できない場合に操作されるスイッチである。緊急スイッチ40は、側部ドア10をラッチするラッチ機構74と機械的に連結されており、緊急スイッチ40に付加された操作力が、伝達機構(例えばケーブル等)を介して、ラッチ機構74に機械的に伝達される。
【0035】
本例では、この緊急スイッチ40を、アウトサイドドアハンドル18のうち窓枠16に隣接する箇所、具体的には、第一パネル24の配置部32に配置している。配置部32は、アウトサイドドアハンドル18の下端面として機能する部位で、車幅方向内側に進むにつれ車両上方に進むように傾斜している。このように、緊急スイッチ40を、窓枠16に隣接する位置に配置することで、緊急スイッチ40と機械的に連結された機械的構造の大部分は、窓枠16の外側、換言すれば、側部ドア10のアウタパネルとインナパネルとの間に隠すことができる。結果として、緊急スイッチ40を設けたとしても、アウトサイドドアハンドル18の大型化を避けることができる。
【0036】
緊急スイッチ40を所定の操作方向に動かすことで、ラッチが解除される。本例において、この緊急スイッチ40の操作方向は、車両上下方向を主成分としている。かかる構成とすることで、緊急スイッチ40の誤操作を効果的に防止できる。すなわち、急ブレーキをかけた際や障害物に衝突した際、車両には、車両前後方向または車幅方向の力が作用しやすい。そのため、緊急スイッチ40の操作方向が車両前後方向または車幅方向の場合、こうした急ブレーキまたは衝突で受けた力により、緊急スイッチ40が誤作動するおそれがあった。一方、車両には、車両上下方向の力は作用しにくいため、緊急スイッチ40の操作方向の主成分を車両上下方向とすれば、当該緊急スイッチ40の誤操作を効果的に防止できる。
【0037】
こうした緊急スイッチ40は、操作されることで、ラッチ機構74によるラッチを機械的に解除できるのであれば特に限定されない。したがって、緊急スイッチ40は、
図4に示すような構成でもよい。
図4は、
図2のC-Cを通る鉛直断面図であり、緊急スイッチ40の構成の一例を示す図である。
図4において、緊急スイッチ40は、配置部32に形成された配置孔42内に配置されており、伝達ケーブル50を介してラッチ機構74に機械的に接続されている。伝達ケーブル50が解除方向Dに引っ張られると、ラッチ機構74によるラッチが解除される。そして、かかる構成とした場合、緊急スイッチ40を、二点鎖線で示すように、上方に引っ張ると、伝達ケーブル50が解除方向Dに引っ張られ、ラッチが解除される。
【0038】
また、緊急スイッチ40は、
図5に示すような構成でもよい。
図5において、緊急スイッチ40は、配置部32に形成された配置孔42内に配置されている。緊急スイッチ40の下方には、回転軸を中心として揺動可能なベルクランク56が設けられている。ベルクランク56の一端は、緊急スイッチ40の下端に接触しており、ベルクランク56の他端には、伝達ケーブル50が接続されている。伝達ケーブル50の始端は、ラッチ機構74に機械的に接続されている。伝達ケーブル50が解除方向Dに引っ張られると、ラッチ機構74によるラッチが解除される。かかる構成において、緊急スイッチ40を下方に押圧すると、二点鎖線で示すように、ベルクランク56の他端、ひいては、伝達ケーブル50の末端が上方に移動し、伝達ケーブル50が解除方向Dに引っ張られる。そして、これにより、ラッチが解除される。
【0039】
また、緊急スイッチ40は、
図6に示すような構成でもよい。
図6において、緊急スイッチ40は、配置部32に形成された配置孔42内に配置されている。この緊急スイッチ40の下端には、伝達ロッド58が固着されている。この伝達ロッド58の他端には、貫通孔が形成されており、当該貫通孔に揺動レバー59が挿通される。この揺動レバー59を解除方向Dに揺動すれば、ラッチ機構74によるラッチが解除される。かかる構成において、緊急スイッチ40を下方に押圧すると、伝達ロッド58も下方に移動し、揺動レバー59が解除方向Dに揺動する。そして、これによりラッチが解除される。
【0040】
このように、その操作の動きを機械的にラッチ機構74に伝達することでラッチを解除する緊急スイッチ40を設けることで、電気的なトラブルにより解除スイッチ38またはラッチアクチュエータ72が動作しない場合でも、側部ドア10を車外から開放できる。
【0041】
次に、側部ドア10のラッチの解除について
図7を参照して説明する。
図7は、側部ドア10のラッチの解除に関係する構成を示すブロック図である。繰り返し述べる通り、側部ドア10は、意図しない開放を防止するために、ラッチ機構74によりラッチされている。
【0042】
本例では、このラッチ機構74によるラッチを、電動で解除するために、解除スイッチ38と、ラッチアクチュエータ72と、を設けている。解除スイッチ38は、上述した通り、アウトサイドドアハンドル18のうち、カバー部34のうち押圧面35に設けられる電気スイッチである。この解除スイッチ38から出力される解除信号は、信号線78を介して、ボデーECU70に入力される。ボデーECU70は、プロセッサとメモリとを有したコンピュータであり、ラッチに関する電気的動きを制御する。このボデーECU70は、解除信号を受信した場合、ラッチアクチュエータ72を駆動させるための駆動信号を生成し、出力する。
【0043】
ラッチアクチュエータ72は、電動の駆動源を有し、当該駆動源の動力でラッチ機構74の係合部材を係合解除の方向に駆動させるアクチュエータである。ラッチアクチュエータ72の駆動源としては、例えば、モータや、電磁シリンダ、エアシリンダ、空圧シリンダ等を用いることができる。また、ラッチアクチュエータ72は、ケーブル等の機械的な動力伝達部材79を介してラッチ機構74に接続されており、ラッチアクチュエータ72の動きが、ラッチ機構74の係合部材に伝達されるようになっている。例えば、ラッチアクチュエータ72は、モータと、当該モータの正回転により正回転するボビンと、ケーブルと、付勢部材と、を有してもよい。この場合、ケーブルの一端は、ボビンに固着され、他端は、ラッチ機構に固着される。そして、ボビンが正回転した場合、ケーブルは、当該ボビンに巻き取られる。また、付勢部材は、ボビンを逆回転方向に付勢する。そして、モータの正回転に伴いボビンが、付勢力の付勢力に抗して正方向に回転した場合に、ケーブルが巻き取られ、ラッチ機構によるラッチが解除されるようにしてもよい。
【0044】
解除スイッチ38とラッチアクチュエータ72との間には、両者の間の信号経路を接続/遮断するためのリレー80が設けられている。ボデーECU70は、車両の走行状態を随時確認し、車両の走行中は、リレー80を開放する。これにより、車両の走行中、解除スイッチ38とラッチアクチュエータ72との間の信号経路が遮断される。そして、かかる構成とすることで、ノイズ等に起因して、車両走行中に、解除スイッチ38から解除信号が誤出力されたとしても、ラッチが誤解除されることが確実に防止される。なお、
図7の例では、このリレー80を、解除スイッチ38とボデーECU70との間に設けているが、リレー80は、ボデーECU70とラッチアクチュエータ72との間に設けてもよい。
【0045】
また、上述した通り、本例のアウトサイドドアハンドル18には、緊急スイッチ40も設けられている。緊急スイッチ40は、動力伝達部材79、例えば、伝達ケーブル50や伝達ロッド58を介してラッチ機構74に機械的に連結されており、緊急スイッチ40に付加された動きが、ラッチ機構74に伝達される。そして、かかる緊急スイッチ40を設けることで、解除スイッチ38またはラッチアクチュエータ72に不具合が生じた場合でも、ラッチを解除できる。
【0046】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、窓枠16の下端縁16bより上側に配置され、側部ドア10を車両外部から開閉する際に操作されるアウトサイドドアハンドル18と、操作されることで解除信号を出力する解除スイッチ38と、解除信号が出力された場合に、ラッチ機構74による側部ドア10のラッチを解除するラッチアクチュエータ72と、を備え、解除スイッチ38が、アウトサイドドアハンドル18のうち側部ドア10の開動作時にユーザが手指で押す押圧面35に設けられているのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上記の説明では、アウトサイドドアハンドル18を、後側窓開口17rの後下隅部に設けているが、アウトサイドドアハンドル18は、窓枠16の下端縁16bより上側であれば、他の箇所に設けられてもよい。例えば、
図8に示すように、アウトサイドドアハンドル18は、後側窓開口17rの中央部分に設けられてもよい。この場合、アウトサイドドアハンドル18から引き出される信号線78や伝達ケーブル50を隠す樹脂モール82を設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 側部ドア、12 昇降ウィンドガラス、14 フィクスドウィンドガラス、16 窓枠、16a 窓枠の後端縁、16b 窓枠の下端縁、17f 前側窓開口、17r 後側窓開口、18 アウトサイドドアハンドル、24 第一パネル、26 第二パネル、28 ベース部、30 後部、31 前部、32 配置部、34 カバー部、35 押圧面、36 ポケット空間、38 解除スイッチ、40 緊急スイッチ、42 配置孔、50 伝達ケーブル、56 ベルクランク、58 伝達ロッド、59 揺動レバー、70 ボデーECU、72 ラッチアクチュエータ、74 ラッチ機構、78 信号線、79 動力伝達部材、80 リレー、82 樹脂モール。