(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】自動走行カート
(51)【国際特許分類】
B60W 30/18 20120101AFI20231031BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20231031BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231031BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231031BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20231031BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60W30/18
B60W60/00
G08G1/16 A
G05D1/02 Y
B60P3/00 Z
B60R11/04
(21)【出願番号】P 2020152134
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100113011
【氏名又は名称】大西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】石井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】七原 正輝
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和実
(72)【発明者】
【氏名】田中 大敦
(72)【発明者】
【氏名】茂木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】林 貴志
(72)【発明者】
【氏名】楠本 光優
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-162893(JP,A)
【文献】特開平5-241651(JP,A)
【文献】特開2019-89520(JP,A)
【文献】特開2014-186693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
G05D 1/00- 1/12
B60P 3/00- 9/00
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人及び荷物を運搬の対象に含む自動走行カートにおいて、
前記対象を載せるデッキであって、
4隅に支柱を有し、前方の左右の支柱と後方の左右の支柱の間にそれぞれ腰掛として使用可能な梁が掛け渡され、左右両側の前後の支柱の間は常時開放されているデッキと、
前記デッキからの前記対象の消失を検知する検知装置と、
前記対象の消失が検知された場合、前記対象の運搬のための走行制御を停止する制御装置と、を備え
、
前記検知装置は、前記4隅の支柱のそれぞれに設けられて前記デッキ上を監視する4つのカメラを含み、前記4つのカメラで得られる前記対象の監視画像に基づいて前記対象の消失を検知する
ことを特徴とする自動走行カート。
【請求項2】
前記検知装置は、前記デッキの荷重を計測する荷重センサ
を含み、前記荷重の変化或いは前記荷重の単位時間当たりの変化と、前記
4つのカメラで得られる前記対象の監視画像とに基づいて前記対象の消失を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動走行カート。
【請求項3】
前記対象の消失が検知された場合、自車が走行したルートの付近に位置する他車両に対して警報する警報装置、をさらに備える
ことを特徴とする
請求項1又は2に記載の自動走行カート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人、荷物、或いはその両方を運搬の対象に含む自動走行カートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内事故を防止する車内事故防止システムに関する発明が記載されている。この車内事故防止システムは、車室内に設置された全方位カメラの撮影内容に基づいて設定された観察領域における危険性を判断し、その判断結果に応じて警報を通知するものである。このように、車内事故に対する安全策については、かねてより様々な提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本出願に係る出願人は、自動運転技術を利用した自動走行カートについての開発を進めている。この自動走行カートは、人、荷物、或いはその両方を運搬の対象に含み、目的地までの運転は全て自動で行われる。自動走行カートの利便性を高める上では、運搬対象が載るデッキへのアクセス性を確保することが大事である。つまり、運搬対象が人であるなら、人がデッキ上に簡単に乗ることができ、且つ、デッキから簡単に降りられるようにしたい。また、運搬対象が荷物であるなら、荷物をデッキに簡単に載せることができ、且つ、荷物をデッキから簡単に降ろせるようにしたい。ただし、アクセス性を良くすれば、その分、乗員や荷物に対するガードが緩くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、デッキへの運搬対象のアクセス性が良く、且つ、アクセス性を良くしたことで生じるマイナス面への対策もとられている自動走行カートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る自動走行カートは、人、荷物、或いはその両方を運搬の対象に含み、それら運搬対象を載せるデッキと、デッキからの運搬対象の消失を検知する検知装置とを備える。デッキは、デッキへの運搬対象のアクセス性を良くするため、周囲の少なくとも一部が開放されている。また、本発明に係る自動走行カートは、検知装置によって運搬対象の消失が検知された場合、運搬対象の運搬のための走行制御を停止する制御装置を備える。
【0007】
上記の構成によれば、デッキの周囲の少なくとも一部を開放することで、デッキへの運搬対象のアクセス性を良くすることができる。また、デッキの周囲の少なくとも一部を開放したため、走行中に運搬対象が消失するおそれがあるが、運搬対象の消失が検知された場合には運搬対象の運搬のための走行制御が停止される。つまり、本発明に係る自動走行カートでは、アクセス性を良くしたことで生じるマイナス面への対策はしっかりととられている。
【0008】
運搬対象の消失を検知する検知装置は、デッキの荷重を計測する荷重センサを含んでもよい。その場合、検知装置は、荷重の変化或いは荷重の単位時間当たりの変化に基づいて運搬対象の消失を検知することができる。
【0009】
運搬対象の消失を検知する検知装置は、デッキ上を監視するカメラを含んでもよい。その場合、検知装置は、カメラで得られる運搬対象の監視画像に基づいて運搬対象の消失を検知することができる。
【0010】
運搬対象の消失を検知する検知装置は、デッキの荷重を計測する荷重センサと、デッキ上を監視するカメラとを含んでもよい。その場合、検知装置は、荷重の変化或いは荷重の単位時間当たりの変化と、カメラで得られる運搬対象の監視画像とに基づいて運搬対象の消失を検知することができる。
【0011】
本発明に係る自動走行カートは、警報装置をさらに備えてもよい。この警報装置は、運搬対象の消失が検知された場合、自車が走行したルートの付近に位置する他車両に対して警報するように構成される。これによれば、自車から消失した運搬対象に他車両が接触する事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明に係る自動走行カートには、デッキへの運搬対象のアクセス性が良く、且つ、アクセス性を良くしたことで生じるマイナス面への対策もとられているという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動走行カートの概略構造を示すである。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る自動走行カートの車体及び車台の概略構造を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る自動走行カートの制御系の構成を示す図である。
【
図4】デッキに人が乗ったとき、及び、デッキから人が降りたときの荷重の変化を示すグラフである。
【
図5】デッキに人が乗ったとき、及び、デッキから人が降りたときの荷重の単位時間あたり変化量の変化を示すグラフである。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る自動走行カートの走行制御の制御フローを示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る自動走行カートの車両間連携について説明する図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る自動走行カートの概略構造を示すである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る自動走行カートにおいて運搬対象の消失を検知する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0015】
1.第1実施形態
1-1.自動走行パレットの概略構造
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動走行パレットの概略構造を示す図である。本実施の形態に係る自動走行カート2は、パレット型の車体20を有する自動走行カートである。ゆえに、以下の説明では、本実施の形態に係る自動走行カート2を自動走行パレットと称する。自動走行パレット2は、人、荷物、或いはその両方を運搬の対象とする。
【0016】
自動走行パレット2は、車体20のデッキ21の高さが地面から30cm程度の低床車両である。車体20の下には、前輪11、中輪12、及び後輪13がそれぞれ左右に設けられている。これらの車輪11,12,13は、自動走行パレット2を、
図1において左方向と右方向のどちらの方向にも走行させることができる。ただし、ここでは、図中に矢印で示すように左方向を自動走行パレット2の基本的な進行方向とする。そして、進行方向を自動走行パレット2の前方、その反対方向を自動走行パレット2の後方と定義する。
【0017】
デッキ21には、前方と後方の左右それぞれに支柱22が立てられている。前方の左右の支柱22,22の間には梁23が掛け渡されている。同様に、後方の左右の支柱22,22の間にも梁23が掛け渡されている。梁23は、デッキ21に乗った乗員50A,50Bが腰掛として使用できるようになっている。デッキ21の中央には、一本の足24で支えられた小型のテーブル25が設けられている。
【0018】
前後の支柱22,22の間は開放されている。自動走行パレット2を人流に使用する場合、乗員50A,50Bはそこからデッキ21へ自由に乗ることができ、また、デッキ21から自由に降りることができる。自動走行パレット2を物流に使用する場合、自動走行パレット2のデッキ21に荷物を載せるときは、前後の支柱22,22の間から自由に荷物を載せることができる。デッキ21から荷物を降ろすときも、前後の支柱22,22の間から自由に荷物を降ろすことができる。このようにデッキ21の左右両側が開放されていることで、自動走行パレット2は、デッキ21への運搬対象のアクセス性に優れている。
【0019】
自動走行パレット2は、自動走行のための外部センサを備えている。第1の外部センサは、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)31である。ライダー31は、自動走行パレット2の前方と後方をそれぞれセンシングするように自動走行パレット2の前面上部と後面上部とに設けられている。
図1においては、前面上部のライダー31のみが見えている。第2の外部センサは、カメラ32である。カメラ32は、自動走行パレット2の右前方、左前方、右後方、及び左後方を撮影するように各支柱22に設けられている。
図1においては、左前方と左後方のカメラ32が見えている。
【0020】
次に、
図2を用いて自動走行パレット2の車体20及び車台10の概略構造について説明する。前輪11、中輪12、及び後輪13は、車台10に取り付けられている。各輪11,12,13はそれぞれが独立したモータ(図示略)によって駆動され、互いに独立した速度及び方向に回転することができる。詳しくは、中輪12は通常輪であるが、前輪11と後輪13はオムニホイールである。自動走行パレット2を停止させる機能は通常輪である中輪12のみが有する。
【0021】
車台10は、ボギー14とロッカー15とからなる。前輪11と中輪12はボギー14によって支持されている。詳しくは、前輪11を駆動するモータと、中輪12を駆動するモータとがボギー14に搭載されている。ボギー14は、ロッカー15に対して揺動自在に支持されている。ロッカー15には、後輪13を駆動するモータが搭載されている。また、図示は省略するが、ロッカー15にはリチウムイオン電池のような体積エネルギー密度の高い小型のバッテリが搭載されている。
【0022】
ロッカー15の上には、スプリング16とダンパー17を介して車体20が搭載されている。車体20は、スプリング16とダンパー17の上に載る底板26と、底板26の上に荷重センサ33を介して載る床板28とを有する。底板26には上下方向に延びるガイド27が固定されている。床板28は、このガイド27によって底板26に対して水平方向の移動を規制されている。床板28の上面がデッキ21であり、支柱22は床板28に取り付けられている。また、デッキ21にはマット21aが敷かれている。荷重センサ33は、自動走行パレット2が運搬する運搬対象からデッキ21に加わる荷重の変化量を計測するために用いられる。
【0023】
1-2.自動走行パレットの制御系の構成
次に、
図3を用いて本実施形態に係る自動走行パレット2の制御系の構成について説明する。自動走行パレット2には、2種類のECU(Electronic Control Unit)、すなわち、自律走行ECU41と走行制御ECU42とが搭載されている。各ECUは、少なくとも1つのプログラムを含むメモリと、メモリと結合されたプロセッサとを備える。メモリとプロセッサの数はそれぞれ複数であってもよい。
【0024】
自律走行ECU41は、自動走行パレット2の自律走行を司るECUである。自律走行ECU41には、ライダー31、カメラ32、荷重センサ33、IMU34、及び無線通信機35が接続されている。ライダー31は、自動走行パレット2の周囲に存在する物体の検知と測距に用いられる。カメラ32は、自動走行パレット2の周囲に存在する物体の認識に用いられる。IMU(Inertial Measurement Unit)34は、3軸の角速度と加速度の計測に用いられる。無線通信機35は、920MHz帯を利用した車車間通信と路車間通信に用いられる。自律走行ECU41にはロッカー15に搭載されたバッテリ40から電源が供給される。ライダー31、カメラ32、荷重センサ33、IMU34、及び無線通信機35に対する電源の供給は自律走行ECU41から行われる。
【0025】
また、自律走行ECU41は、4Gや5G等の移動体通信によって図示しない管制サーバと通信する機能を有している。自動走行パレット2の利用者は、スマートフォンやタブレットPC等のユーザ端末を用いて管制サーバと通信し、希望する出発地と目的地を管制サーバに送信する。管制サーバは、利用可能な複数の自動走行パレット2の中から適当な自動走行パレット2を選択し、選択した自動走行パレット2に対して出発地と目的地を送信する。自律走行ECU41は、管制サーバ6から受信した出発地と目的地とに基づいて走行計画を作成する。
【0026】
自律走行ECU41は、走行計画をから計算した目標軌道を走行制御ECU42に入力する。走行制御ECU42は、目標軌道に沿って自動走行パレット2を走行させるためのモータ指令値を生成する。前輪11と後輪13はオムニホイールであるので、左右のモータの回転速度の差を制御することによって目標軌道に沿うように進行方向を制御することができる。走行制御ECU42が生成したモータ指令値はモータコントローラ43に入力される。また、モータコントローラ43には、バッテリ40から直接電源が供給されている。モータコントローラ43は、モータ指令値に従って左右各輪11,12,13のモータ44に対する電力供給を制御する。
【0027】
なお、自動走行パレット2は、図示しない照明装置を備えている。照明装置としてはLEDが用いられている。LEDを点灯させるLED回路45には、走行制御ECU42から電源が供給されている。走行制御ECU42にはバッテリ40から電源が供給される。LED回路45は、LEDを常時点灯させてもよいし、周囲の照度に応じてLEDを点灯させてもよい。
【0028】
1-3.自動走行パレットの制御
自動走行中の自動走行パレット2の動作は制御装置としての自律走行ECU41によって制御される。自律走行ECU41は、荷重センサ33から取得される荷重データに基づいて運搬対象の消失を検知する機能を有する。運搬対象が人の場合、運搬対象の消失とは、例えば、自動走行パレット2の走行中のように降車すべきでないタイミングで乗員が降車したことを意味する。この場合の乗員の降車には、意図的な降車と意図しない偶発的な降車の両方が含まれる。運搬対象が物の場合、運搬対象の消失とは、例えば、デッキ21から物が落下したことや、取り出されるべきでないタイミングで物が取り出されたことを意味する。
【0029】
荷重データに基づいた運搬対象の消失の検知の方法としては、荷重データに基づく方法と、荷重データの変化量に基づく方法とがある。荷重データの変化量とは、荷重データの単位時間あたりの変化量を意味する。どちらの方法も採用可能であるが、より好ましいのは、後者の方法である。以下、それぞれの方法について
図4及び
図5を用いて説明する。
【0030】
図4は、デッキ21に人が乗ったとき、及び、デッキ21から人が降りたときの荷重の変化の例を示すグラフである。このグラフに示すように、デッキ21に人が乗るたびに荷重M[kg]はステップ的に増大する。このステップ的な荷重の増大を検知することにより、デッキ21に人が乗った時間と、デッキ21に何人乗ったのかを判別することができる。一方、デッキ21から人が降りたときは、その降車が意図的なものか意図しない偶発的なものかによらず、荷重はステップ的に減少する。しかし、デッキ21上で人が柱に寄り掛かったり、動いたりすることでも荷重の減少は生じる。荷重の減少量に閾値を設けることで、人が降車したのか、単にデッキ21上で動いただけなのか判定することは可能である。しかし、体重には個人差があるので、荷重データの変化に基づく方法では、十分な判定精度を得られないおそれがある。
【0031】
図5は、デッキ21に人が乗ったとき、及び、デッキ21から人が降りたときの荷重の変化量の変化の例を示すグラフである。このグラフに示すように、デッキ21に人が乗るたびに荷重の変化量δM/δt[kg/s]はパルス的に増大する。このパルス的な荷重の変化量の増大を検知することにより、デッキ21に人が乗った時間と、デッキ21に何人乗ったのかを判別することができる。一方、デッキ21に人が降りたときは、その降車が意図的なものか意図しない偶発的なものかによらず、荷重の変化量はパルス的に減少する。そして、人が降りたときの荷重の変化は急激であるので、デッキ21上で人が柱に寄り掛かったり、動いたりした場合に生じる荷重の変化量に比較して、人が降りたときの荷重の変化量は明確に大きい。ゆえに、荷重が減少方向に変化するときの変化量に閾値を設けることで、荷重の変化量が閾値よりも減少したとき、デッキ21から人が降りたと判定することができる。
【0032】
本実施形態では、自律走行ECU41は、荷重データの変化量に基づく方法で運搬対象の消失を検知し、その検知結果に基づいて自動走行パレット2の動作を制御する。
図6は、自律走行ECU41による自動走行パレット2の走行制御の制御フローを示すフローチャートである。
【0033】
自律走行ECU41は、運搬対象である人や物の運搬のための走行制御を自動で開始する。走行制御の開始時、自律走行ECU41は、荷重センサ33から取得されるデータの初期設定を行う。具体的には、荷重センサ33から取得される荷重データM(t)を初期値m0にリセットする(以上、ステップS101)。
【0034】
自律走行ECU41は、GPSによる位置情報と地図情報とを用いて、自動走行パレット2の現在位置が走行計画で定められた停車場所かどうか判定する(以上、ステップS102)。自動走行パレット2が停車場所に止まっている間は、自律走行ECU41は、荷重データM(t)を初期値m0に維持する。
【0035】
自動走行パレット2の停車場所からの移動の開始と同時に、自律走行ECU41は、荷重センサ33からの荷重データの取得を開始する。荷重データの取得は一定の周期で行われる(以上、ステップS103)。自律走行ECU41は、取得した荷重データから荷重の単位時間当たりの変化量である荷重変化量を演算する(ステップS104)。
【0036】
自律走行ECU41は、ステップS104で演算された荷重変化量が閾値よりも減少したかどうか判定する(ステップS105)。荷重変化量が閾値以上である間は、自律走行ECU41は、人や物の運搬のための走行制御を続行し、ステップS103乃至S104の処理を繰り返す。そして、荷重変化量が閾値よりも減少したとき、自律走行ECU41は、人や物の運搬のための走行制御を停止し、自動走行パレット2を緊急停止させる(ステップS106)。
【0037】
自動走行パレット2の緊急停止後、自律走行ECU41は、例えば、カメラ32で自動走行パレット2の周囲を撮影し、撮影した画像データを管制サーバに送信する。管制サーバが設置された管制センターでは、オペレータが自動走行パレット2から送信された画像データに基づいて状況の確認を行い、状況に応じて必要な措置を取る。必要な措置には、例えば、自動走行パレット2を遠隔操作すること、警報を鳴らすこと、関係各所に連絡すること等が含まれる。
【0038】
また、自動走行パレット2の緊急停止後、自律走行ECU41は、無線通信機35による車車間通信を用いた車両間連携を実施する。
図7は、自律走行ECU41による自動走行カート2の車両間連携について説明する図である。自律走行ECU41は、目標軌道に沿って自動走行パレット2を走行させているので、緊急停止までに自動走行パレット2が走行したルートTRを把握している。自動走行パレット2のデッキ21から運搬対象60が消失した場合、運搬対象60は自動走行パレット2が走行したルートTR上またはその周辺に存在している確率が高い。そこで、自律走行ECU41は、自動走行パレット2が走行したルートTRの付近に位置する他車両3,5との間で車車間通信を行い、他車両3,5に対して警報する。この場合、自律走行ECU41と無線通信機35は、他車両3,5に対して警報する警報装置として機能する。
【0039】
自律走行ECU41が警報を送信する他車両は、具体的には、現時点において自動走行パレット2のルートTRに沿って走行している他車両5と、ルートTRに近づいている他車両3である。ルートTRの付近に存在している他車両であっても、ルートTRから遠ざかっている他車両4に対しては警報の送信は行われない。警報を受けた他車両3,5は、その辺に存在している可能性のある運搬対象60との接触を回避するため、その場に緊急停止する。緊急停止した他車両3,5は、例えば、カメラで周囲を撮影し、撮影した画像データを管制サーバに送信するか、或いは、自動走行パレット2に送信してもよい。
【0040】
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係る自動走行カートの概略構造を示すである。
図8において、第1実施形態と共通する部位や部品には、同一の符号が付されている。
【0041】
本実施形態は、デッキ21からの運送対象の消失を検知する検知装置の構成において第1実施形態と相違する。本実施形態では、自動走行カート2は、4つの支柱22のそれぞれにインサイドカメラ36を備える。カメラ32(
図1参照)が外側を撮影するのに対し、インサイドカメラ36は自動走行カート2の内側のデッキ21の上方の空間を監視する。4つのインサイドカメラ36の監視領域MAは、デッキ21の上方の空間をカバーしているので、デッキ21に乗員50A,50Bが乗っている場合、4つのインサイドカメラ36の少なくも1つには必ず映るようになっている。
【0042】
本実施形態では、インサイドカメラ36がデッキ21からの運送対象の消失を検知する検知装置として機能する。
図9は、本実施形態において運搬対象の消失を検知する方法を説明する図である。自動走行カート2の図示しない自律走行ECUは、一定の周期でインサイドカメラ36から監視画像を取得する。例えば、走行開始時に二人の乗員50A,50Bがデッキ21に乗っていたとする。そして、あるタイミングで一人の乗員50Bがインサイドカメラ36の全ての監視領域MAから消えた場合、自律走行ECUは、その乗員50Bがデッキ21から消失したと判定する。この場合、自律走行ECUは、自動走行カート2を緊急停止させる。
【0043】
なお、本実施形態では、インサイドカメラ36にて撮影されているデッキ21上での運送対象の動きから、運送対象がデッキ21の外に出そうかどうかを判定することもできる。自動走行カート2の走行中に運送対象がデッキ21の外に出そうになった場合、自律走行ECUは、自動走行カート2を緊急停止させる。これにより、運送対象のデッキ21からの消失を未然に防ぐことができる。
【0044】
3.他の実施形態
最後に、本発明の他の実施形態をいくつか説明する。
【0045】
デッキ21からの運送対象の消失を検知する検知装置として、デッキ21の荷重を計測する荷重センサ33と、デッキ21上を監視するインサイドカメラ36の両方を備えてもよい。前述の通り、荷重の単位時間当たりの変化によれば、荷重の変化よりも正確にデッキ21からの運送対象の消失を検知できる。しかし、例えば、乗員が飛び上がることで荷重が急減した場合には、閾値の設定によっては誤検知の可能性が有る。一方、インサイドカメラ36のみによる検知では、多人数が乗車している場合、小柄な人や座り込んだ人が他の人の陰に隠れてしまうことで誤検知が起こる可能性がある。そこで、荷重の変化或いは荷重の単位時間当たりの変化による検知結果と、インサイドカメラ36による検知結果とを組み合わせることにより、より精度の高い検知を可能にする。
【0046】
デッキ21からの運送対象の消失を検知する検知装置として、外側のカメラ32を用いることもできる。例えば、自動走行カート2の走行中に右前方のカメラ32に映っていなかった人が右後方のカメラ32に映った場合、その人は意図的に或いは意図せずにデッキ21から降りた人であると推測される。外側のカメラ32と荷重センサ33とを組み合わせることや、外側のカメラ32とインサイドカメラ36とを組み合わせることももちろん可能である。
【0047】
また、荷重センサ33は、自動走行カート2の定員オーバーや過積載の検知にも使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
2 自動走行パレット(自動走行カート)
20 車体
21 デッキ
22 支柱
31 ライダー
32 カメラ
33 荷重センサ
35 無線通信機
36 インサイドカメラ
41 自律走行ECU
42 走行制御ECU