(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】モータ制御装置及び産業車両
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20231031BHJP
【FI】
H02P29/024
(21)【出願番号】P 2020155299
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓示
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】児玉 和也
(72)【発明者】
【氏名】小崎 智広
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-134678(JP,A)
【文献】特開平09-066816(JP,A)
【文献】特開平06-289037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの動作を制御するモータ制御装置であって、
前記モータのシャフトに接続されるギアが回転していないとき、ゼロレベルより大きい一定レベルを第1の信号として出力し、前記ギアが回転しているとき、ゼロレベルより大きい連続したパルス波を前記第1の信号として出力する第1のセンサと、
前記ギアが回転していないとき、ゼロレベルより大きい一定レベルを第2の信号として出力し、前記ギアが回転しているとき、ゼロレベルより大きく、かつ、前記第1の信号と異なる位相の連続したパルス波を前記第2の信号として出力する第2のセンサと、
第1の信号線を介して取得される前記第1の信号がゼロレベルであるとき、前記第1の信号線が断線している旨の異常を検出し、第2の信号線を介して取得される前記第2の信号がゼロレベルであるとき、前記第2の信号線が断線している旨の異常を検出する検出部と、
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御装置であって、
前記検出部は、前記第1及び第2の信号の少なくとも一方がゼロレベルであるときで、かつ、前記第1及び第2のセンサに電力を供給する電力線に流れる電流がゼロであるとき、前記電力線が断線している旨の異常、または、前記電力線とグランドとが互いに短絡している旨の異常を検出する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ制御装置であって、
前記検出部は、前記第1及び第2の信号のレベルがゼロレベルより大きいときで、かつ、前記第1の信号の連続したパルス波と前記第2の信号の連続したパルス波との位相差が閾値以下であるとき、前記第1及び第2の信号線が互いに短絡している旨の異常を検出する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ制御装置であって、
前記第1の信号により前記ギアの回転数を検出するとともに前記第1及び第2の信号により前記ギアの回転方向を検出し、前記回転数及び前記回転方向により前記モータの動作を制御する制御部を備え、
前記検出部は、前記異常を検出していないとき、前記第1の信号により検出される前記回転数と前記第2の信号により検出される前記回転数とが互いに一致しないとき、前記モータが搭載される産業車両の走行速度が目標速度と異なっている旨の異常を検出し、前記制御部から受け取った回転方向と前記第1及び第2の信号により検出した回転方向とが互いに一致しないとき、前記制御部において認識された前記産業車両の進行方向が誤っている旨の異常を検出する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のモータ制御装置であって、
前記検出部は、前記異常を検出したときで、かつ、前記モータを備える産業車両が走行中であるとき、前記車両を停止させ、前記異常を検出したときで、かつ、前記産業車両が停車中であるとき、前記車両の走行を禁止させる
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のモータ制御装置を備える産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの動作を制御するモータ制御装置及びそのモータ制御装置を備える産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
【0003】
図5に示すモータ制御装置11は、モータMのシャフトSに接続されるギアGの回転数及び回転方向によりモータMの動作を制御するものであって、モータMを駆動させるためのインバータ回路Invと、センサ部Se1と、センサ部Se2と、制御部12と、検出部13とを備える。なお、センサ部Se1、Se2は、モータMに内蔵される構成でもよい。
【0004】
センサ部Se1は、センサSe11と、センサSe12とを備える。
【0005】
センサSe11は、ギアGが回転していないとき、ローレベルの信号S11を信号線SL11を介して制御部12及び検出部13にそれぞれ出力する。また、センサSe11は、ギアGが回転しているとき、ギアGの複数の歯にそれぞれ対応する連続したパルス波を信号S11として出力する。
【0006】
センサSe12は、ギアGが回転していないとき、ローレベルの信号S12を信号線SL12を介して制御部12及び検出部13にそれぞれ出力する。また、センサSe12は、ギアGが回転しているとき、ギアGの複数の歯にそれぞれ対応し、かつ、信号S11と異なる位相の連続したパルス波を信号S12として出力する。
【0007】
センサ部Se2は、センサSe21と、センサSe22とを備える。
【0008】
センサSe21は、ギアGが回転していないとき、ローレベルの信号S21を信号線SL21を介して検出部13に出力する。また、センサSe21は、ギアGが回転しているとき、ギアGの複数の歯にそれぞれ対応し、かつ、信号S11と同じ位相の連続したパルス波を信号S21として出力する。
【0009】
センサSe22は、ギアGが回転していないとき、ローレベルの信号S22を信号線SL22を介して検出部13に出力する。また、センサSe22は、ギアGが回転しているとき、ギアGの複数の歯にそれぞれ対応し、かつ、信号S12と同じ位相の連続したパルス波を信号S22として出力する。
【0010】
制御部12は、信号S11によりギアGの回転数を検出するとともに信号S11、S12によりギアGの回転方向を検出し、回転数及び回転方向によりモータMを駆動させるインバータ回路Invの動作を制御することでモータMの動作を制御する。
【0011】
検出部13は、信号S21が連続したパルス波であるときに信号S11がローレベルのままであると、信号線SL11が断線している旨の異常を検出する。また、検出部13は、信号S22が連続したパルス波であるときに信号S12がローレベルのままであると、信号線SL12が断線している旨の異常を検出する。
【0012】
このように、
図5に示すモータ制御装置11では、センサSe11、Se12の他にセンサSe21、Se22を備えているため、信号S11、S12がローレベルであるとき、信号S21、S22が連続したパルス波であるか否かを確認することで、ギアGが回転していない状態であるのか、信号線SL11、SL12が断線している状態であるのかを判別することができる。関連する技術として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、
図5に示すモータ制御装置11では、センサや信号線の数が比較的多くなるため、製造コストの増大が懸念される。
【0015】
そこで、本発明の一側面に係る目的は、ギアが回転していない状態であるか信号線が断線している状態かを判別しつつ、製造コストの増大を抑えることが可能なモータ制御装置及び産業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る一つの形態であるモータ制御装置は、モータのシャフトに接続されるギアが回転していないとき、ゼロレベルより大きい一定レベルを第1の信号として出力し、前記ギアが回転しているとき、ゼロレベルより大きい連続したパルス波を前記第1の信号として出力する第1のセンサと、前記ギアが回転していないとき、ゼロレベルより大きい一定レベルを第2の信号として出力し、前記ギアが回転しているとき、ゼロレベルより大きく、かつ、前記第1の信号と異なる位相の連続したパルス波を前記第2の信号として出力する第2のセンサと、第1の信号線を介して取得される前記第1の信号がゼロレベルであるとき、前記第1の信号線が断線している旨の異常を検出し、第2の信号線を介して取得される前記第2の信号がゼロレベルであるとき、前記第2の信号線が断線している旨の異常を検出する検出部とを備える。
【0017】
これにより、ギアが回転していない状態であるか信号線が断線している状態かを判別するために第1及び第2のセンサの他にセンサをさらに備える必要がないため、モータ制御装置の製造コストの増大を抑えることができる。
【0018】
また、前記検出部は、前記第1及び第2の信号の少なくとも一方がゼロレベルであるときで、かつ、前記第1及び第2のセンサに電力を供給する電力線に流れる電流がゼロであるとき、前記電力線が断線している旨の異常、または、前記電力線とグランドとが互いに短絡している旨の異常を検出するように構成してもよい。
【0019】
また、前記検出部は、前記第1及び第2の信号のレベルがゼロレベルより大きいときで、かつ、前記第1の信号の連続したパルス波と前記第2の信号の連続したパルス波との位相差が閾値以下であるとき、前記第1及び第2の信号線が互いに短絡している旨の異常を検出するように構成してもよい。
【0020】
また、前記モータ制御装置は、前記第1の信号により前記ギアの回転数を検出するとともに前記第1及び第2の信号により前記ギアの回転方向を検出し、前記回転数及び前記回転方向により前記モータの動作を制御する制御部を備え、前記検出部は、前記異常を検出していないとき、前記第1の信号により検出される前記回転数と前記第2の信号により検出される前記回転数とが互いに一致しないとき、前記モータが搭載される産業車両の走行速度が目標速度と異なっている旨の異常を検出し、前記制御部から受け取った回転方向と前記第1及び第2の信号により検出した回転方向とが互いに一致しないとき、前記制御部において認識された前記産業車両の進行方向が誤っている旨の異常を検出するように構成してもよい。
【0021】
また、前記検出部は、前記異常を検出したときで、かつ、前記モータを備える産業車両が走行中であるとき、前記車両を停止させ、前記異常を検出したときで、かつ、前記産業車両が停車中であるとき、前記車両の走行を禁止させるように構成してもよい。
【0022】
また、前記モータ制御装置を産業車両に備えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、モータの動作を制御するモータ制御装置において、モータのシャフトに接続されるギアが回転していない状態であるかギアの回転数を検出するためのセンサに接続される信号線が断線している状態かを判別しつつ、製造コストの増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態のモータ制御装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0026】
図1は、実施形態のモータ制御装置の一例を示す図である。
【0027】
図1に示すモータ制御装置1は、電動フォークリフトなどの産業車両Veに備えられ、走行用のモータMのシャフトSに接続されるギアGの回転数及び回転方向によりモータMの動作を制御する。なお、産業車両Veには、モータMやモータ制御装置1の他に、走行中の産業車両Veを停止させるためのメカブレーキBなどが搭載されるものとする。
【0028】
また、モータ制御装置1は、モータMを駆動させるためのインバータ回路Invと、電源部Pと、電流計Siと、センサ部Seと、制御部2と、検出部3とを備える。なお、制御部2及び検出部3は、それぞれ、マイクロコンピュータなどにより構成されてもよい。また、検出部3の機能を制御部2に含めることにより制御部2と検出部3を一体に構成してもよい。また、センサ部Seは、モータMに内蔵される構成でもよい。
【0029】
電源部Pは、電力線PLを介してセンサSe1、Se2にそれぞれ電力を供給する。なお、モータ制御装置1に別の電源部Pをさらに備え、一方の電源部PがセンサSe1に電力を供給し、他方の電源部PがセンサSe2に電力を供給するように構成してもよい。
【0030】
電流計Siは、電力線PLに流れる電流を検出し、その検出した電流を検出部3に送る。
【0031】
センサ部Seは、センサSe1(第1のセンサ)と、センサSe2(第2のセンサ)とを備える。なお、センサSe1、Se2は、例えば、電流出力式センサにより構成される。このように、センサSe1、Se2を電流出力式センサにより構成する場合は、レゾルバなどの比較的高価なセンサによりセンサSe1、Se2を構成する場合に比べて、モータ制御装置1の製造コストの増大を抑えることができる。
【0032】
センサSe1は、信号線SL1(第1の信号線)を介して信号S1(第1の信号)を制御部2及び検出部3にそれぞれ出力する。また、センサSe2は、信号線SL2(第2の信号線)を介して信号S2(第2の信号)を制御部2及び検出部3にそれぞれ出力する。
【0033】
ここで、
図2(a)は、通常時(何れの異常も発生していないとき)で、かつ、ギアGが回転していないときの信号S1または信号S2の一例を示す図である。また、
図2(b)は、通常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S1の一例を示す図である。また、
図2(c)は、通常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S2の一例を示す図である。また、
図3(a)は、信号線SL1の断線異常時の信号S1、信号線SL1とグランドとの短絡異常時の信号S1、信号線SL2の断線異常時の信号S2、信号線SL2とグランドとの短絡異常時の信号S2、電力線PLの断線異常時の信号S1もしくは信号S2、または電力線PLとグランドとの短絡異常時の信号S1もしくは信号S2の一例を示す図である。
図3(b)は、信号線SL1、SL2同士の短絡異常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S1の一例を示す図である。また、
図3(c)は、信号線SL1、SL2同士の短絡異常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S2の一例を示す図である。なお、
図2(a)~
図2(c)及び
図3(a)~
図3(c)にそれぞれ示す二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は信号S1または信号S2のレベル(電圧)を示している。また、グランドのレベルをゼロとする。
【0034】
図2(a)に示すように、通常時で、かつ、ギアGが回転していないときの信号S1または信号S2は、ゼロレベルより大きい一定レベル(V1)になる。すなわち、センサSe1は、通常時で、かつ、ギアGが回転していないとき、ゼロレベルより大きい一定レベルを信号S1として出力する。また、センサSe2は、通常時で、かつ、ギアGが回転していないとき、ゼロレベルより大きい一定レベルを信号S2として出力する。
【0035】
また、
図2(b)に示すように、通常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S1は、ギアGの複数の歯にそれぞれ対応する連続したパルス波(ローレベルがV1であり、ハイレベルがV1より大きいV2である矩形波)になる。すなわち、センサSe1は、通常時で、かつ、ギアGが回転しているとき、ゼロレベルより大きい連続したパルス波を信号S1として出力する。
【0036】
また、
図2(c)に示すように、通常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S2は、ギアGの複数の歯にそれぞれ対応する連続したパルス波(ローレベルがV1であり、ハイレベルがV1より大きいV2である矩形波)で、かつ、信号S1と異なる位相のパルス波になる。なお、信号S1、S2の位相差は、例えば、パルス波の立ち上がりから次の立ち上がりまでの位相のうちの1/4の位相とする。すなわち、センサSe2は、通常時で、かつ、ギアGが回転しているとき、ゼロレベルより大きく、かつ、信号S1と異なる位相の連続したパルス波を信号S2として出力する。
【0037】
また、
図3(a)に示すように、信号線SL1の断線異常時または信号線SL1とグランドとの短絡異常時、信号S1は、ゼロレベルになる。すなわち、センサSe1は、信号線SL1の断線異常時または信号線SL1とグランドとの短絡異常時、ゼロレベルを信号S1として出力する。
【0038】
また、
図3(a)に示すように、信号線SL2の断線異常時または信号線SL2とグランドとの短絡異常時、信号S2は、ゼロレベルになる。すなわち、センサSe2は、信号線SL2の断線異常時または信号線SL2とグランドとの短絡異常時、ゼロレベルを信号S2として出力する。
【0039】
また、
図3(a)に示すように、電力線PLの断線異常時または電力線PLとグランドとの短絡異常時、信号S1及び信号S2は、ゼロレベルになる。すなわち、センサSe1は、電力線PLの断線異常時または電力線PLとグランドとの短絡異常時、ゼロレベルを信号S1として出力する。また、センサSe2は、電力線PLの断線異常時または電力線PLとグランドとの短絡異常時、ゼロレベルを信号S2として出力する。
【0040】
また、
図3(b)に示すように、信号線SL1、SL2同士の短絡異常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S1の連続した各パルス波は、
図2(b)に示すパルス波と
図2(c)に示すパルス波とが合成された上方向に凸形状のパルス波になる。
【0041】
また、
図3(c)に示すように、信号線SL1、SL2同士の短絡異常時で、かつ、ギアGが回転しているときの信号S2の連続した各パルス波は、
図3(b)に示す信号S1と同様に、
図2(b)に示すパルス波と
図2(c)に示すパルス波とが合成された上方向に凸形状のパルス波になる。また、
図3(c)に示す信号S2は、
図3(b)に示す信号S1とほぼ同じ位相になる。すなわち、センサSe1、Se2は、信号線SL1、SL2同士の短絡異常時で、かつ、ギアGが回転しているとき、ゼロレベルより大きい連続したパルス波を互いにほぼ同じ位相で信号S1、S2として出力する。
【0042】
また、
図1に示す制御部2は、検出部3によって何れの異常も検出されていないとき、信号S1によりギアGの回転数N1を検出する。例えば、制御部2は、信号S1のパルス波の立ち上がりから次の立ち上がりまでの位相を、信号S1のパルス波の立ち上がりタイミングから次の立ち上がりタイミングまでの時間で除算した値を回転数N1とする。
【0043】
また、制御部2は、信号S1、S2によりギアGの回転方向D1を検出する。例えば、制御部2は、信号S2の位相が信号S1の位相より遅れているとき、ギアGの回転方向D1を正転とし、信号S2の位相が信号S1の位相より進んでいるとき、ギアGの回転方向D1を逆転とする。
【0044】
また、制御部2は、回転数N1が所定の回転数になるとともに回転方向D1が所定の回転方向になるようにインバータ回路Invの動作を制御することでモータMの動作を制御する。なお、所定の回転数は、ユーザのアクセル操作などにより入力される産業車両Veの目標速度に対応するモータMの回転数とする。また、所定の回転方向は、ユーザのシフトレバー操作などにより入力される産業車両Veの進行方向に対応するモータMの回転方向とする。
【0045】
検出部3は、信号S1が継続してゼロレベルであるとき、信号線SL1が断線している旨の異常を検出する。なお、検出部3は、信号S1が継続してゼロレベルであるとき、信号線SL1がグランドに短絡している旨の異常を検出するように構成してもよい。
【0046】
また、検出部3は、信号S2が継続してゼロレベルであるとき、信号線SL2が断線している旨の異常を検出する。なお、検出部3は、信号S2が継続してゼロレベルであるとき、信号線SL2がグランドに短絡している旨の異常を検出するように構成してもよい。
【0047】
また、検出部3は、信号S1、S2のレベルがゼロレベルより大きいときで、かつ、信号S1の連続したパルス波と信号S2の連続したパルス波との位相差が閾値以下であるとき、信号線SL1、SL2が互いに短絡している旨の異常を検出する。なお、閾値は、信号S1、S2に含まれるノイズに応じた値に設定されてもよい。
【0048】
また、検出部3は、信号S1によりギアGの回転数N1を検出するとともに信号S2によりギアGの回転数N2を検出する。例えば、制御部2は、信号S1のパルス波の立ち上がりから次の立ち上がりまでの位相を、信号S1のパルス波の立ち上がりタイミングから次の立ち上がりタイミングまでの時間で除算した値を回転数N1とし、信号S2のパルス波の立ち上がりから次の立ち上がりまでの位相を、信号S2のパルス波の立ち上がりタイミングから次の立ち上がりタイミングまでの時間で除算した値を回転数N2とする。
【0049】
また、検出部3は、回転数N1、N2が互いに一致しないとき、産業車両Veの走行速度が目標速度と異なっている旨の異常を検出する。
【0050】
また、検出部3は、制御部2から回転方向D1を受け取るとともに信号S1、S2によりギアGの回転方向D2を検出し、回転方向D1、D2が互いに一致しないとき、制御部2により認識された産業車両Veの進行方向が誤っている旨の異常を検出する。
【0051】
図4は、検出部3の動作の一例を示す図である。なお、
図4に示す動作は単位時間経過毎に検出部3により実行されるものとする。
【0052】
まず、検出部3は、信号S1、S2を取得する(ステップS1)。
【0053】
次に、検出部3は、信号S1及び信号S2の少なくとも一方がゼロレベルであるときで(ステップS2:Yes)、かつ、電力線PLに流れる電流がゼロでないとき(ステップS3:No)、信号線SL1または信号線SL2が断線している旨の異常を検出する(ステップS4)。すなわち、検出部3は、ステップS4において、信号S1がゼロレベルであるとき、信号線SL1が断線している旨の異常を検出し、信号S2がゼロレベルであるとき、信号線SL2が断線している旨の異常を検出する。なお、検出部3は、ステップS4において、信号S1及び信号S2がゼロレベルであるとき、モータMが停止している旨を検出した後、ステップS1に戻るように構成してもよい。
【0054】
また、検出部3は、信号S1及び信号S2の少なくとも一方がゼロレベルであるときで(ステップS2:Yes)、かつ、電力線PLに流れる電流がゼロであるとき(ステップS3:Yes)、電力線PLが断線している旨の異常または電力線PLがグランドに短絡している旨の異常を検出する(ステップS5)。
【0055】
また、検出部3は、信号S1及び信号S2のレベルがゼロレベルより大きいときで(ステップS2:No)、かつ、信号S1の連続したパルス波と信号S2の連続したパルス波との位相差が閾値以下であるとき(ステップS6:Yes)、信号線SL1と信号線SL2が互いに短絡している旨の異常を検出する(ステップS7)。
【0056】
また、検出部3は、信号S1及び信号S2のレベルがゼロレベルより大きいときで(ステップS2:No)、かつ、信号S1の連続したパルス波と信号S2の連続したパルス波との位相差が閾値より大きいとき(ステップS6:No)、回転数N1、N2を検出する(ステップS8)。
【0057】
次に、検出部3は、回転数N1、N2が互いに一致しないとき(ステップS9:Yes)、産業車両Veの走行速度が目標速度と異なっている旨の異常を検出する(ステップS10)。これにより、産業車両Veの走行速度の監視処理に冗長性をもたせることができる。なお、検出部3は、回転数N1、N2が所定の回転数と一致しないとき、産業車両Veの走行速度が目標速度と異なっている旨の異常を検出するように構成してもよい。
【0058】
また、検出部3は、回転数N1、N2が互いに一致するとき(ステップS9:No)、制御部2から回転方向D1を受け取り(ステップS11)、信号S1、S2によりギアGの回転方向D2を検出する(ステップS12)。なお、ステップS11、S12を入れ替えてもよい。
【0059】
次に、検出部3は、回転方向D1、D2が互いに一致しないとき(ステップS13:Yes)、制御部2により認識された産業車両Veの進行方向が誤っている旨の異常を検出する(ステップS14)。これにより、産業車両Veの進行方向の監視処理に冗長性をもたせることができる。なお、検出部3は、回転方向D1、D2が所定の回転方向に一致しないとき、制御部2により認識された産業車両Veの進行方向が誤っている旨の異常を検出するように構成してもよい。
【0060】
また、検出部3は、回転方向D1、D2が互いに一致するとき、すなわち、何れの異常(信号線SL1、SL2の断線異常、信号線SL1、SL2とグランドとの短絡異常、電力線PLの断線異常、電力線PLとグランドとの短絡異常、信号線SL1、SL2同士の短絡異常、産業車両Veの走行速度異常、及び産業車両Veの進行方向異常)も発生していない状態であるとき(ステップS13:No)、ステップS1の処理に戻る。
【0061】
また、検出部3は、何れか1つの異常を検出したときで、かつ、産業車両Veが走行中であるとき(ステップS15:Yes)、産業車両Veの走行速度を徐々に低下させた後、産業車両Veを停止させる(ステップS16)。例えば、検出部3は、モータMの回転数が徐々に低下するように制御部2からインバータ回路Invに出力される制御信号のデューティ比を徐々に小さくさせた後、制御信号のデューティ比をゼロにさせてモータMを停止させる。または、検出部3は、メカブレーキBの動作を制御することで、産業車両Veの走行速度を徐々に低下させた後、産業車両Veを停止させる。なお、検出部3は、何れか1つの異常を検出したときで、かつ、産業車両Veが走行中であるとき、産業車両Veの現在の進行方向が保たれるように、モータMの動作を制御させるように構成してもよい。
【0062】
一方、検出部3は、何れか1つの異常を検出したときで、かつ、産業車両Veが走行中でないとき(ステップS15:No)、産業車両Veの走行を禁止させる(ステップS17)。例えば、検出部3は、制御信号のデューティ比をゼロにさせてモータMの回転を禁止させる。または、検出部3は、メカブレーキBの動作を制御することで、産業車両Veの走行を禁止させる。
【0063】
このように実施形態のモータ制御装置1では、センサSe1、Se2を使用して、信号線SL1、SL2の断線異常などを検出する構成であるため、センサSe1、Se2の数や信号線SL1、SL2の数を比較的少なくすることができる。例えば、
図5に示す既存のモータ制御装置11に比べて、センサの数と信号線の数を2つずつ減らすことができる。これにより、モータ制御装置1の製造コストの増大を抑えることができる。
【0064】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0065】
<変形例1>
検出部3は、
図4に示すステップS3、S5、S6~S17の処理を省略してもよい。このように構成する場合、検出部3は、信号S1及び信号S2の少なくとも一方がゼロレベルであるとき(ステップS2:Yes)、信号線SL1または信号線SL2が断線している旨の異常を検出する(ステップS4)。また、検出部3は、信号S1及び信号S2のレベルがゼロレベルより大きいとき(ステップS2:No)、ステップS1の処理に戻る。また、このように構成する場合、制御部2は、検出部3の代わりにステップS15~S17の処理を実行してもよい。
【0066】
<変形例2>
検出部3は、
図4に示すステップS6~S17の処理を省略してもよい。このように構成する場合、検出部3は、信号S1及び信号S2のレベルがゼロレベルより大きいとき(ステップS2:No)、ステップS1の処理に戻る。また、このように構成する場合、制御部2は、検出部3の代わりにステップS15~S17の処理を実行してもよい。
【0067】
<変形例3>
検出部3は、
図4に示すステップS8~S17の処理を省略してもよい。このように構成する場合、検出部3は、信号S1の連続したパルス波と信号S2の連続したパルス波との位相差が閾値より大きいとき(ステップS6:No)、ステップS1の処理に戻る。また、このように構成する場合、制御部2は、検出部3の代わりにステップS15~S17の処理を実行してもよい。
【0068】
<変形例4>
検出部3は、
図4に示すステップS15~S17の処理を省略してもよい。このように構成する場合、制御部2は、検出部3の代わりにステップS15~S17の処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 モータ制御装置
2 制御部
3 検出部
Ve 産業車両
M モータ
G ギア
Inv インバータ回路
P 電源部
PL 電力線
Si 電流計
Se センサ部
Se1、Se2 センサ
SL1、SL2 信号線
B メカブレーキ