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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231031BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20231031BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231031BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20231031BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 611B
B60H1/22 611D
B60H1/22 671
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020156963
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050823
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 優
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-244439(JP,A)
【文献】特開2012-188062(JP,A)
【文献】特開2013-193681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0019896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
B60L 1/00
B60L 50/60
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリからの電力で作動される電動コンプレッサを備え且つユーザが乗車する前に予め車室内の空調を行うプレ空調が可能なヒートポンプ式の空調装置、および、前記バッテリからの電力で作動され且つ車室内に配置されて当該車室内で乗員の体が接触する部分を加熱することによって当該乗員に対して直接的に熱を加えるように構成された複数の補助装置それぞれを制御する車両用制御装置において、
暖房要求の前記プレ空調時、消費電力が、予め設定された使用許可電力を上回っているか否かを判定する消費電力判定部と、
前記消費電力判定部によって、消費電力が前記使用許可電力を上回っていると判定された際、前記複数の補助装置が作動している場合には、当該作動している前記補助装置のうち消費電力が大きい少なくとも一つの補助装置の作動を停止させることにより、前記乗員に対して直接的に熱を加えることよりも車室内空間の温度環境の改善を優先させる補助装置制御部と、
前記消費電力判定部によって、消費電力が前記使用許可電力を上回っていると判定された際、前記補助装置が作動していない場合には、前記電動コンプレッサの回転速度を制限するコンプレッサ制御部とを備えていることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用制御装置において、
前記補助装置制御部によって前記補助装置の作動が停止された後に当該補助装置の作動を許可する条件として、前記消費電力判定部によって、消費電力が前記使用許可電力を下回ったと判定されたことを含むことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用制御装置において、
前記補助装置制御部によって前記補助装置の作動が停止された後に当該補助装置の作動を許可する条件として、前記プレ空調の残り時間が予め設定された時間未満となったことを含むことを特徴とする車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用制御装置に係る。特に、本発明は、ユーザが乗車する前に予め車室内の空調を行うプレ空調が可能な空調装置を搭載した車両における制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車にあっては、電動コンプレッサを備えた空調装置が搭載されており、バッテリに蓄えられた電力を使用して電動コンプレッサを作動させることにより車室内の空調を行っている。また、電気自動車の走行駆動力源(走行用モータ)もバッテリに蓄えられた電力を使用しているため、電気自動車が目的地に到達するまでのバッテリの蓄電量が確保できるように空調装置の制御が行われている(特許文献1を参照)。特許文献1には、空調装置の作動に伴う消費電力がバッテリの残容量によって決まる消費電力許容値(使用許可電力)を上回ったときには電動コンプレッサの回転速度を低下させて消費電力を削減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-205302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザが車両に乗車する前に車室内環境(車室内の温度環境等)を改善しておくためのプレ空調が可能な空調装置を搭載した車両が知られている。このプレ空調は、乗車する前のユーザが電子キーやスマートフォン等の携帯通信端末を操作し、車両の空調装置に対してプレ空調開始指示信号を送信することで行われる。そして、プレ空調開始指示信号を受信した空調装置は、車室内温度や車室内設定温度等に応じて、空調風の吹出し温度の設定および吹出しモードの設定によるプレ空調を行う。これにより、ユーザが車両に乗車する際における車室内の温度環境が改善され、車室内の快適性を確保することができる。
【0005】
また、乗員の快適性を改善するためのデバイスとして、シートヒータや輻射ヒータ等の補助装置(ユーザに直接的に熱を加える装置)が知られており、この補助装置をプレ空調の実施時(例えば、冬季のプレ空調の実施時)に作動させることで、快適性をいっそう改善することができる。この補助装置の作動もユーザが携帯通信端末を操作することによって指示される。
【0006】
空調装置によるプレ空調と補助装置の作動とを同時に行った場合、消費電力が大きくなる。このような状況において、前記特許文献1の如く、消費電力が消費電力許容値を上回ったときに(空調装置と補助装置とを併用したことに起因して消費電力が消費電力許容値を上回ったときに)電動コンプレッサの回転速度を低下させてしまうと、ユーザが車両に乗車した際の車室内温度が十分に改善されておらず(例えば冬季にあっては車室内温度が十分に高くなっておらず)、車室内の快適性が十分に得られない可能性がある。
【0007】
本発明の発明者は、この点に鑑み、ユーザが未だ乗車していないプレ空調の実施中にあっては、乗員に対して直接的に熱を加える補助装置を作動させるよりも、空調装置の運転による車室内の温度環境の改善を優先させることが、ユーザが車両に乗車した際における車室内の快適性の確保を図る上で有益であることに着目し本発明に至った。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プレ空調における車室内の温度環境の改善を図ることができる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、バッテリからの電力で作動される電動コンプレッサを備え且つユーザが乗車する前に予め車室内の空調を行うプレ空調が可能なヒートポンプ式の空調装置、および、前記バッテリからの電力で作動され且つ車室内に配置されて当該車室内で乗員の体が接触する部分を加熱することによって当該乗員に対して直接的に熱を加えるように構成された複数の補助装置それぞれを制御する車両用制御装置を前提とする。そして、この車両用制御装置は、暖房要求の前記プレ空調時、消費電力が、予め設定された使用許可電力を上回っているか否かを判定する消費電力判定部と、前記消費電力判定部によって、消費電力が前記使用許可電力を上回っていると判定された際、前記複数の補助装置が作動している場合には、当該作動している前記補助装置のうち消費電力が大きい少なくとも一つの補助装置の作動を停止させることにより、前記乗員に対して直接的に熱を加えることよりも車室内空間の温度環境の改善を優先させる補助装置制御部と、前記消費電力判定部によって、消費電力が前記使用許可電力を上回っていると判定された際、前記補助装置が作動していない場合には、前記電動コンプレッサの回転速度を制限するコンプレッサ制御部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
この特定事項により、ユーザが乗車する前に行われるプレ空調時、消費電力が使用許可電力を上回っている際に、複数の補助装置が作動している場合には、当該作動している前記補助装置のうち消費電力が大きい少なくとも一つの補助装置の作動を停止させる。一方、消費電力が使用許可電力を上回っている際に、補助装置が作動していない場合には、空調装置の電動コンプレッサの回転速度を制限する。このように、消費電力が使用許可電力を上回っている際には、空調装置よりも補助装置の方を優先的に停止させ、空調装置によるプレ空調を継続させるようにしている。これにより、補助装置の作動を停止させることによる消費電力の削減を図りながらも、プレ空調による車室内の温度環境の改善を図ることができる。その結果、ユーザが車両に乗車した際における車室内の快適性を良好に確保することができる。
【0011】
また、前記補助装置制御部によって前記補助装置の作動が停止された後に当該補助装置の作動を許可する条件として、前記消費電力判定部によって、消費電力が前記使用許可電力を下回ったと判定されたことを含むようにしている。
【0012】
補助装置の作動が停止された後に消費電力が使用許可電力を下回った場合には、補助装置を作動させたとしてもバッテリの蓄電量が不足するといった状況を招くことがない(例えばプレ空調中に、車両の走行等に悪影響を及ぼす程度まで蓄電量が不足するといった状況を招くことがない)または蓄電量が不足するといった状況を招く可能性が低いと判断できるため、補助装置の作動(再始動)を許可する。これにより、ユーザが車両に乗車した際における快適性(補助装置が作動していることによる快適性)を良好に確保することができる。
【0013】
また、前記補助装置制御部によって前記補助装置の作動が停止された後に当該補助装置の作動を許可する条件として、前記プレ空調の残り時間が予め設定された時間未満となったことを含むようにしている。
【0014】
プレ空調の残り時間が予め設定された時間未満である場合には、その時点で補助装置の作動を開始させたとしてもバッテリの蓄電量が不足するといった状況を招くことがないまたは蓄電量が不足するといった状況を招く可能性が低いと判断できるため、補助装置の作動(再始動)を許可する。これによっても、ユーザが車両に乗車した際における快適性(補助装置が作動していることによる快適性)を良好に確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ユーザが乗車する前に行われる車室内のプレ空調時、消費電力が使用許可電力を上回っている際に、複数の補助装置が作動している場合には、当該作動している前記補助装置のうち消費電力が大きい少なくとも一つの補助装置の作動を停止させる一方、消費電力が使用許可電力を上回っている際に、補助装置が作動していない場合には、空調装置の電動コンプレッサの回転速度を制限するようにしている。このように、補助装置の作動の停止を優先させることにより、消費電力の削減を図りながらも、プレ空調による車室内の温度環境の改善を図ることができる。その結果、ユーザが車両に乗車した際における車室内の快適性を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る電気自動車の概略構成を示すブロック図である。
図2】プレ空調を実施する状況を説明するための図である。
図3】エアコンECUの構成および補助暖房装置を説明するためのブロック図である。
図4】プレ空調制御の手順を説明するためのフローチャート図である。
図5】コンプレッサ回転速度制限マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、ユーザが乗車する前に車室内環境を改善しておくためのプレ空調の実施が可能とされた空調装置を搭載した電気自動車に本発明を適用した場合について説明する。
【0018】
-電気自動車の概略構成-
図1は、本実施形態に係る電気自動車100の概略構成を示すブロック図である。この図1に示すように、電気自動車100は、走行用モータ1と、空調装置2と、本発明でいう補助装置としての補助暖房装置3と、バッテリ4とを備えている。なお、図1において、実線の矢印は制御信号を示し、破線の矢印は電力のやり取りを示している。
【0019】
走行用モータ1は、バッテリ4からの電力で駆動され、電気自動車100の走行用の駆動力を発生させるために設けられている。この走行用モータ1は、電気自動車100の走行状態に応じて発電機として機能するように構成されている。走行用モータ1で発電された電力は、バッテリ4に蓄電されるようになっている。
【0020】
空調装置2は、温湿度が調整された空調風を吹出口から車室に吹き出すように構成されている。例えば、空調装置2の運転モードとして、冷房モードおよび暖房モードが設定可能とされ、空調装置2の吹出口モードとして、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードおよびデフロスタモードが設定可能とされている。この空調装置2は、ヒートポンプ21と、送風機22と、吹出口切替ドア23とを含んでいる。
【0021】
ヒートポンプ21は、例えば、電動コンプレッサ21a、室外熱交換器(図示省略)、室内熱交換器および暖房用膨張弁などを含み、運転モードに応じた冷媒の循環経路が形成されるようになっている。電動コンプレッサ21aは、冷媒を循環経路で循環させるために設けられている。電動コンプレッサ21aは、バッテリ4からの電力で作動され、例えばインバータ制御によって回転速度を調整可能に構成されている。室外熱交換器はモータコンパートメント(走行用モータ1が収容される車体前部の空間)に配置され、室内熱交換器は送風ダクトに配置されている。暖房用膨張弁は、循環経路で循環させる冷媒の減圧(例えば暖房運転時に室内熱交換器から流出した冷媒の減圧)を行うものである。
【0022】
送風機22は、外気および内気を選択的に取り込んで送風空気を生成して送風ダクトに送り出すように構成されている。送風機22は、バッテリ4からの電力で作動され、回転速度を調整可能に構成されている。
【0023】
そして、冷房モード時には、室外熱交換器がコンデンサとして機能するとともに、室内熱交換器がエバポレータとして機能することにより、送風空気が室内熱交換器で冷却される。暖房モード時には、室内熱交換器がコンデンサとして機能するとともに、室外熱交換器がエバポレータとして機能することにより、送風空気が室内熱交換器で暖められる。なお、送風ダクト内に室内熱交換器とは別に暖房用熱交換器が配設され、室内熱交換器において除湿された送風空気が暖房用熱交換器によって加熱される構成となっていてもよい。
【0024】
送風ダクトの下流端には複数の吹出口が設けられ、その吹出口には吹出口切替ドア23が設けられている。複数の吹出口は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口と、車室内の乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口と、フロントガラスの内面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口とを含んでいる。
【0025】
フェイスモード時には、吹出口切替ドア23がフェイス吹出口を開くことにより、フェイス吹出口から空調風が吹き出される。バイレベルモード時には、吹出口切替ドア23がフェイス吹出口およびフット吹出口を開くことにより、フェイス吹出口およびフット吹出口から空調風が吹き出される。フットモード時には、吹出口切替ドア23がフット吹出口を開くことにより、フット吹出口から空調風が吹き出される。デフロスタモード時には、吹出口切替ドア23がデフロスタ吹出口を開くことにより、デフロスタ吹出口から空調風が吹き出される。
【0026】
補助暖房装置3は、バッテリ4からの電力で作動される電気ヒータであり、車室内の乗員に直接的に熱を加えるように構成されている。補助暖房装置3としては、図3(エアコンECU52の構成および補助暖房装置3を説明するためのブロック図)に示すように、輻射ヒータ31、シートヒータ32、ステアリングヒータ33およびネックヒータ34を挙げることができる。
【0027】
輻射ヒータ31は、車室内に配置され、熱源からの電磁波が乗員に照射されるようになっている。シートヒータ32は、乗員が着座するシートに配置され、乗員の背面側を暖めるように設けられている。ステアリングヒータ33は、ステアリングに配置され、ドライバの手を暖めるように設けられている。ネックヒータ34は、例えば乗員が着座するシートのヘッドレスト内に配置され、乗員の首部周辺に温風を吹き出すように設けられている。補助暖房装置3としてはこれらに限定されるものではなく、種々の装置が挙げられる。また、これらの補助暖房装置31~34の全てを備えている必要もない。
【0028】
バッテリ4は、充放電可能であり、走行用モータ1を駆動する電力を供給するとともに、その走行用モータ1で発電された電力を蓄電するように構成されている。また、バッテリ4は、空調装置2および補助暖房装置3にも作動用の電力を供給するように構成されている。具体的に、バッテリ4からの電力は、空調装置2のヒートポンプ21の電動コンプレッサ21a、送風機22、吹出口切替ドア23に供給され、これらを作動させる。また、バッテリ4からの電力は、前記各補助暖房装置31~34に供給され、これらを作動させる。
【0029】
また、電気自動車100は、モータECU51と、エアコンECU52と、バッテリECU53とを備え、それらがバス54によって接続されている。モータECU51、エアコンECU52およびバッテリECU53は、バス54を介して通信可能に構成されている。
【0030】
モータECU51は、走行用モータ1を制御するために設けられている。バッテリECU53は、バッテリ4を管理するために設けられている。例えば、バッテリECU53は、バッテリ4の充電率(SOC;State Of Charge)を算出し、その結果をエアコンECU52に送信するように構成されている。
【0031】
エアコンECU52は、空調装置2および補助暖房装置3を制御するために設けられている。また、このエアコンECU52(より具体的にはエアコンECU52のROM)には、後述するプレ空調の制御および各補助暖房装置31~34の制御等を行う制御プログラムが記憶されている。このエアコンECU52の機能については後述する。
【0032】
また、エアコンECU52は、通信部55が接続されている。この通信部55は、電気自動車100の外部との通信が可能となっている。具体的には、ユーザU(図2を参照)が携帯する電子キーKとの間で無線通信を行うようになっている(この無線通信によってエアコンECU52が受信する信号については後述する)。
【0033】
-プレ空調-
本実施形態における空調装置2は、ユーザが電気自動車100に乗車する前に車室内環境を改善しておくためのプレ空調の実施が可能となっている。
【0034】
図2は、このプレ空調を実施する状況を説明するための図であって、電気自動車100に充電ケーブルCが接続されてバッテリ4に外部電源による充電が行われている状態を示している。この図2に示すように、ユーザUは、電気自動車100が駐車している状態(ユーザUが乗車していない状態)であっても、携帯している電子キーKを操作して、電気自動車100を制御することが可能となっている。電子キーKに代えて、スマートフォン等の携帯通信端末が利用されるようになっていてもよい。電子キーKは、電気自動車100との間で無線通信が可能に構成されている。電子キーKの操作には、電気自動車100の空調操作(プレ空調を実施するための操作)が含まれる。また、この電子キーKの操作には、ユーザ照合や車両ドアのロック制御などが含まれていてもよい。
【0035】
ユーザUは、電気自動車100に乗車する前に、電子キーKを操作することによって空調装置2による車室内の空調(プレ空調)を行わせることができる。この電子キーKを操作することにより電気自動車100のエアコンECU52に送信される信号は、プレ空調の開始指令信号、車室内設定温度信号が含まれる。また、電子キーKの操作によって前記補助暖房装置3の作動を指示することも可能となっている。このため、ユーザUが電子キーKを操作してプレ空調の開始の指示および補助暖房装置3の作動の指示を行った場合には、空調装置2と補助暖房装置3とを併用したプレ空調が行われることになる。前記補助暖房装置3に対する作動の指示は、輻射ヒータ31、シートヒータ32、ステアリングヒータ33およびネックヒータ34それぞれに対して個別に行えるようになっていてもよいし、全ての補助暖房装置31~34に対して一括した指示が行えるようになっていてもよい。
【0036】
図3は、エアコンECU52の構成および各補助暖房装置31~34を説明するためのブロック図である。前述したようにエアコンECU52は、補助暖房装置3である輻射ヒータ31、シートヒータ32、ステアリングヒータ33およびネックヒータ34に対して作動開始信号および作動停止信号等の送信が可能となっている。また、エアコンECU52は、ユーザUが電子キーKを操作することに伴って発信される各種信号を、通信部55を介して受信する。つまり、電子キーKから発信されたプレ空調の開始の指示信号や、補助暖房装置3の作動の指示信号等が通信部55によって受信されてエアコンECU52に入力されるようになっている。
【0037】
本実施形態の特徴として、エアコンECU52は、その機能部として、消費電力判定部201、補助装置制御部202、および、コンプレッサ制御部203を備えている。これら消費電力判定部201、補助装置制御部202、および、コンプレッサ制御部203は、エアコンECU52のROMに記憶された制御プログラムによって実現される。
【0038】
消費電力判定部201は、前記プレ空調時、消費電力が、予め設定された使用許可電力を上回っているか否かを判定する機能部分である。消費電力の算出手法としては、従来と同様の手法が適用可能である。例えば、空調装置2の作動状態(電動コンプレッサ21aの回転速度等)および補助暖房装置3の作動状態(複数の補助暖房装置31~34のうち作動している補助暖房装置)をモニタしておくことで消費電力を算出する(作動している各機器の消費電力を合算する)ようにしてもよいし、バッテリ4の充電率(SOC)の単位時間当たりの変化量をモニタしておくことで消費電力を算出するようにしてもよい。また、使用許可電力は、車両の走行等に悪影響を及ぼす程度まで蓄電量が不足することのない電力として、実験やシミュレーション等に基づいて予め設定されたものである。
【0039】
補助装置制御部202は、消費電力判定部201によって、消費電力が前記使用許可電力を上回っていると判定された際、補助暖房装置3が作動している場合には、その補助暖房装置3の作動を停止させる機能部分である。ここで停止させる補助暖房装置3としては、各補助暖房装置31~34の全てであってもよいし、予め設定された一部の補助暖房装置31~34(例えば消費電力が大きい少なくとも一つの補助暖房装置)であってもよい。
【0040】
コンプレッサ制御部203は、消費電力判定部201によって、消費電力が前記使用許可電力を上回っていると判定された際、補助暖房装置3が作動していない場合には、電動コンプレッサ21aの回転速度を制限する機能部分である。ここでいう補助暖房装置3が作動していない場合とは、前記補助装置制御部202によって補助暖房装置3の作動が停止された(消費電力が使用許可電力を上回っていると判定された際、補助暖房装置3が作動している場合に、その補助暖房装置3の作動が停止された)場合に限らず、電子キーKからプレ空調の開始の指示信号のみが発信された(補助暖房装置3の作動の指示信号が発信されなかった)ことで、補助暖房装置3が作動していないプレ空調が行われている場合も含む。
【0041】
-プレ空調制御-
次に、プレ空調の実施時における補助暖房装置3および電動コンプレッサ21aの制御について説明する。図4は、プレ空調制御の手順を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、電気自動車100にユーザUが乗車していない状態で、ユーザUが電子キーKを操作することによりプレ空調の実施を指示する度に実行される。
【0042】
なお、本実施形態におけるプレ空調は、電気自動車100に充電ケーブルCが接続されてバッテリ4が充電されている状態、および、電気自動車100に充電ケーブルCが接続されていない状態の何れにおいても、バッテリ4の充電率(SOC)が所定値以上であることを条件として実施が可能となっている。
【0043】
先ず、ステップST1において、プレ空調時における消費電力が、予め設定された使用許可電力を上回っているか否かが判定される。この判定は、前記消費電力判定部201によって行われる。
【0044】
プレ空調時における消費電力が使用許可電力を上回っておらず、ステップST1でNO判定された場合には、現在のプレ空調を継続することが可能であるとしてそのままリターンされる。
【0045】
一方、プレ空調時における消費電力が使用許可電力を上回っており、ステップST1でYES判定された場合には、ステップST2に移り、補助暖房装置3が作動している(ONとなっている)か否かを判定する。
【0046】
補助暖房装置3が作動しており、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、現在作動している補助暖房装置3の作動を停止(OFF)させる。例えば、現在作動している全ての補助暖房装置31~34の作動を停止させる。この補助暖房装置3の作動の停止は前記補助装置制御部202によって行われる。
【0047】
補助暖房装置3が作動しておらず、ステップST2でNO判定された場合には、ステップST4に移り、電動コンプレッサ21aの回転速度制限動作を実行する。この電動コンプレッサ21aの回転速度制限動作は、前記コンプレッサ制御部203によって行われるものであって、エアコンECU52のROMに記憶された図5に示すコンプレッサ回転速度制限マップに従って実行される。
【0048】
具体的に、コンプレッサ回転速度制限マップ(図5)は、横軸がバッテリ4の過不足電力であって、縦軸が電動コンプレッサ21aの制限回転速度となっており、バッテリ4の過不足電力に応じて電動コンプレッサ21aの制限回転速度の制限値を規定するマップとなっている。つまり、バッテリ4の過不足電力が正側に大きくなる程(バッテリ4の蓄電量が多い程)、電動コンプレッサ21aの制限回転速度も正側に大きくなり(電動コンプレッサ21aの回転速度の許容値を高くし)、バッテリ4の過不足電力が負側に大きくなる程(バッテリ4の蓄電量が少ない程)、電動コンプレッサ21aの制限回転速度も負側に大きくなる(電動コンプレッサ21aの回転速度の許容値を低くする)ようになっている。つまり、バッテリ4の蓄電量が少なくなる程、電動コンプレッサ21aの回転速度に対する制限を大きくしていき、これによって電動コンプレッサ21aの作動に起因する消費電力を小さくしていくようになっている。
【0049】
ステップST3において補助暖房装置3の作動が停止された場合、ステップST5において、消費電力が使用許可電力を下回ったか否かが判定される。つまり、補助暖房装置3の作動が停止されたことに起因して、消費電力が使用許可電力を下回ったか否かが判定される。
【0050】
消費電力が使用許可電力を下回っておらず、ステップST5でNO判定された場合には、ステップST6に移り、前述したステップST4の場合と同様に電動コンプレッサ21aの回転速度制限動作を実行する。つまり、前述したコンプレッサ回転速度制限マップに従って回転速度制限動作が実行される。ここで使用されるコンプレッサ回転速度制限マップとしては、前述したステップST4で使用したもの(図5に示すもの)と同一のマップであってもよいし、これとは異なるコンプレッサ回転速度制限マップであってもよい。
【0051】
一方、補助暖房装置3の作動が停止されたことに起因して、消費電力が使用許可電力を下回り、ステップST5でYES判定された場合にはステップST7に移り、プレ空調の残り時間が所定時間T未満となったか否かを判定する。プレ空調の残り時間の算出は、プレ空調の実施時間(プレ空調が実施される全期間)から、プレ空調の実施経過時間を減算することによって求められる。プレ空調の実施時間は、一定時間に設定されていてもよいし、車室内温度(図示しない車室内温度センサによって検出された車室内温度)と車室内設定温度との差に応じて設定されていてもよい。車室内温度と車室内設定温度との差に応じてプレ空調の実施時間を設定する場合には、これらの温度差が大きい程(暖房要求時にあっては、車室内設定温度から車室内温度を減算した値が大きい程、冷房要求時にあっては、車室内温度から車室内設定温度を減算した値が大きい程)、プレ空調の実施時間は長く設定されることになる。また、前記所定時間Tは実験やシミュレーションによって適宜設定される。
【0052】
プレ空調の残り時間が所定時間T以上であって、ステップST7でNO判定された場合にはステップST3に戻り、前述したステップST3以降の動作を繰り返す。
【0053】
一方、プレ空調の残り時間が所定時間T未満となっており、ステップST7でYES判定された場合には、ステップST8に移り、消費電力が使用許可電力を下回ったか否かが判定される。
【0054】
そして、消費電力が使用許可電力を下回っておらず、ステップST8でNO判定された場合にはステップST3に戻り、前述したステップST3以降の動作を繰り返す。
【0055】
一方、消費電力が使用許可電力を下回っており、ステップST8でYES判定された場合には、ステップST9に移り、補助暖房装置3の作動を再開させる。つまり、プレ空調の残り時間が所定時間T未満であり、且つ消費電力が使用許可電力を下回っていることを条件として補助暖房装置3の作動を再開させる。
【0056】
プレ空調にあっては以上の動作が繰り返される。
【0057】
-実施形態の効果-
以上説明したように本実施形態では、ユーザUが乗車する前に行われる車室内のプレ空調時、消費電力が使用許可電力を上回っている際に、補助暖房装置3が作動している場合には、この補助暖房装置3の作動を停止させる一方、消費電力が使用許可電力を上回っている際に、補助暖房装置3が作動していない場合には、空調装置2の電動コンプレッサ21aの回転速度を制限するようにしている。このように、補助暖房装置3の作動の停止を優先させることにより、消費電力の削減を図りながらも、プレ空調による車室内の温度環境の改善を図ることができる。その結果、ユーザUが電気自動車100に乗車した際における車室内の快適性を良好に確保することができる。
【0058】
また、本実施形態では、補助装置制御部202によって補助暖房装置3の作動が停止された後に当該補助暖房装置3の作動を許可する条件として、消費電力判定部201によって、消費電力が使用許可電力を下回ったと判定されたこと、および、プレ空調の残り時間が予め設定された時間T未満となったことを含むようにしている。補助暖房装置3の作動が停止された後に消費電力が使用許可電力を下回った場合には、補助暖房装置3を作動させたとしてもバッテリ4の蓄電量が不足するといった状況を招くことがない(例えばプレ空調中に、電気自動車100の走行等に悪影響を及ぼす程度まで蓄電量が不足するといった状況を招くことがない)または蓄電量が不足するといった状況を招く可能性が低いと判断できる。また、プレ空調の残り時間が予め設定された時間T未満である場合には、その時点で補助暖房装置3の作動を開始させたとしてもバッテリ4の蓄電量が不足するといった状況を招くことがないまたは蓄電量が不足するといった状況を招く可能性が低いと判断できる。このため、これらを条件として補助暖房装置3の作動(再始動)を許可することにより、バッテリ4の蓄電量が不足するといった状況を招くことなしに、ユーザUが電気自動車100に乗車した際における快適性(補助暖房装置3が作動していることによる快適性)を良好に確保することができる。
【0059】
-他の実施形態-
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態では、プレ空調の実施が可能とされた空調装置2を搭載した電気自動車100に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、プレ空調の実施が可能とされた空調装置2を搭載したプラグインハイブリッド車両に対しても適用が可能である。
【0061】
また、前記実施形態では、補助装置として車室内の乗員に対して直接的に熱を加える補助暖房装置3を備えた電気自動車100に本発明を適用した場合について説明したが、これに加えて、車室内の乗員に対して直接的に熱を奪う補助冷房装置を備えた電気自動車に対しても本発明は適用が可能である。この補助冷房装置としては、例えばSVS(Seat Ventilation System)が挙げられる。このSVSは、運転席、助手席等のシートに内蔵された送風ファンを備えており、夏季等においてシートに蓄積されている熱を送風ファンの作動によって放出させることによってシートの温度を低下させるものである。
【0062】
また、前記実施形態では、プレ空調時における消費電力が使用許可電力を上回っていることで補助暖房装置3の作動を停止させた場合、プレ空調の残り時間が所定時間T未満であり、且つ消費電力が使用許可電力を下回っていることを条件として補助暖房装置3の作動を許可するようにしていた。つまり、これら2つの条件をand条件として補助暖房装置3の作動を許可するようにしていた。本発明はこれに限らず、これら2つの条件をor条件として補助暖房装置3の作動を許可するようにしてもよい。つまり、プレ空調の残り時間が所定時間T未満となった時点で補助暖房装置3の作動を許可するようにしたり、消費電力が使用許可電力を下回った時点で補助暖房装置3の作動を許可するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、プレ空調が可能な空調装置および乗員に対して直接的に熱を加えるまたは熱を奪うように構成された補助装置を搭載した車両における制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 電気自動車
2 空調装置
21 ヒートポンプ
21a 電動コンプレッサ
3 補助暖房装置(補助装置)
31 輻射ヒータ
32 シートヒータ
33 ステアリングヒータ
34 ネックヒータ
4 バッテリ
52 エアコンECU
201 消費電力判定部
202 補助装置制御部
203 コンプレッサ制御部
U ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5