(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】セパレータ及びセパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20231031BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20231031BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20231031BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0206
H01M8/0221
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020170898
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小暮 智也
(72)【発明者】
【氏名】柳本 博
(72)【発明者】
【氏名】坂本 瑞樹
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062725(JP,A)
【文献】特開2017-199456(JP,A)
【文献】特開2000-260441(JP,A)
【文献】特開2000-323152(JP,A)
【文献】特開2015-038876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0228
H01M 8/0206
H01M 8/0221
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材と、金属基材表面上に存在する金属基材の金属由来の不動態層と、不動態層上に成膜されている導電性フィラーを含む導電性フィラー層とを含む燃料電池用セパレータであって、
導電性フィラーが、不動態層を貫通して金属基材と接触して
おり、
導電性フィラーが、1μm~30μmの等面積円相当径に基づく平均粒径を有しており、
導電性フィラーの量が、導電性フィラー層の総重量に対して、20重量%~90重量%である、
前記燃料電池用セパレータ
(ただし、導電性フィラーが、10μm以下の平均粒径を有している燃料電池用セパレータを除く。)。
【請求項2】
燃料電池用セパレータの製造方法であって、
(a)表面に不動態層を有する金属基材上に、導電性フィラー及び熱硬化性樹脂を含む導電性フィラー層前駆体を成膜して、導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程と、
(b)導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材をプレスして、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程と、
(c)プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を熱処理して、導電性フィラー層を形成することで燃料電池用セパレータを得る工程と
を含み、
(a)の工程において、導電性フィラーが、1μm~30μmの等面積円相当径に基づく平均粒径を有しており、且つ導電性フィラーの量が、導電性フィラー層の総重量に対して、20重量%~90重量%になるよう調整され、
(b)の工程において、プレスが、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触するように行われる、
前記方法
(ただし、導電性フィラーが、10μm以下の平均粒径を有している燃料電池用セパレータの製造方法を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ、及びセパレータの製造方法、具体的には燃料電池用セパレータ、及び燃料電池用セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(酸素)との反応により起電力を生じる単セルを所定数だけ積層したスタック構造を有する。単セルは、電解質膜の両面にアノード及びカソードの電極層(触媒層及びガス拡散層)を備える膜電極接合体と、当該膜電極接合体の両面にそれぞれ配置されるセパレータを有する。
【0003】
セパレータは、単セルを電気的に直列接続する機能並びに燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却水を互いに遮断する隔壁としての機能を有する。
【0004】
このようなセパレータについて、様々な研究が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、金属基板の少なくとも片面に導電剤を混合した合成樹脂層を被覆し、さらに合成樹脂層の表面下に導電性フィラーを没入してなる燃料電池用セパレータが開示されている。
【0006】
特許文献2には、基材層、中間層及び導電性薄膜層がこの順に積層され、前記基材層と前記中間層との間、及び、前記中間層と前記導電性薄膜層との間の少なくとも一方に、隣接する各層に由来する元素の混合層が設けられてなる、燃料電池用セパレータが開示されている。
【0007】
特許文献3には、金属板材からなり、それぞれ延在する複数の凸部及び凹部が交互に形成された基材と、前記基材の表面に形成された耐食性を有する樹脂材料からなる保護層と、前記凸部の頂面に形成された導電性粒子を含む導電層と、を有する燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記基材の前記凸部の各々の頂面をマスキング材でマスクするマスキング工程と、前記マスキング材で前記頂面がマスクされた前記基材に前記樹脂材料を塗工することで前記基材の表面に前記保護層を形成する保護層形成工程と、前記基材から前記マスキング材を除去する除去工程と、前記マスキング材が除去された前記基材の前記凸部の各々の頂面に前記導電層を形成する導電層形成工程と、を備える、燃料電池用セパレータの製造方法が開示されており、さらに、前記導電層は、樹脂材料からなる結合材及び前記導電性粒子を含み、前記基材の前記凸部の各々の頂面に形成された第1層と、樹脂材料からなる結合材及び導電性炭素材を含み、前記第1層の表面に形成された第2層と、を有するものであり、前記導電層形成工程は、一方の面に前記第2層が形成されるとともに当該第2層の表面に前記第1層が形成されたベースフィルムを、前記第1層が前記凸部の各々の頂面に当接された状態で前記基材に対して加圧するとともに加熱することにより、前記第1層及び前記第2層を前記基材の前記凸部の各々の頂面に熱転写することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-343375号公報
【文献】特開2009-289707号公報
【文献】特開2020-68140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
燃料電池用のセパレータは、発生した電流を隣のセルに流す役割も担っているので、セパレータを構成する基材には、高い導電性及びその高い導電性が燃料電池のセル内部の高温・酸性雰囲気の中においても長期間維持されることとなる導電耐久性が要求される。ここで、高い導電性及び導電耐久性とは、接触抵抗が低いことを意味する。また、接触抵抗とは、電極とセパレータ表面との間で、界面現象のために電圧降下が生じることをいう。
【0010】
そのため、燃料電池用セパレータを構成する基材としては、純チタンやチタン合金を使用することが多い。
【0011】
しかしながら、このような金属基材の表面には不動態層が形成されてしまうため、当該不動態層の除去が必要であり、また、接触抵抗の点でもさらなる改善の余地があった。
【0012】
さらに、特許文献3のような導電層を有するセパレータでは、基材と、導電性粒子の導通パスと、表面処理膜と、他部材との接触点とを繋ぐために、第2層の導電層を必要とし、表面処理コスト、すなわち表面処理工程が増えることによるコスト(設備投資など)や原料費もまた高くなる。
【0013】
したがって、本発明は、接触抵抗が低いセパレータ及び当該セパレータを安価に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、金属基材と、金属基材表面上に存在する金属基材の金属由来の不動態層と、不動態層上に成膜されている導電性フィラーを含む導電性フィラー層とを含む燃料電池用セパレータの製造において、導電性フィラー及び熱硬化性樹脂を含む導電性フィラー層前駆体を金属基材の不動態層上に成膜した後に、熱硬化性樹脂を硬化させる前又は硬化させるときにプレスする工程を追加することにより、導電性フィラー層中の導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触し、接触抵抗を低減させた燃料電池用セパレータが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)金属基材と、金属基材表面上に存在する金属基材の金属由来の不動態層と、不動態層上に成膜されている導電性フィラーを含む導電性フィラー層とを含む燃料電池用セパレータであって、
導電性フィラーが、不動態層を貫通して金属基材と接触している、
前記燃料電池用セパレータ。
(2)燃料電池用セパレータの製造方法であって、
(a)表面に不動態層を有する金属基材上に、導電性フィラー及び熱硬化性樹脂を含む導電性フィラー層前駆体を成膜して、導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程と、
(b)導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材をプレスして、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程と、
(c)プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を熱処理して、導電性フィラー層を形成することで燃料電池用セパレータを得る工程と
を含み、
(b)の工程において、プレスが、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触するように行われる、
前記方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、接触抵抗が低いセパレータ及び当該セパレータを安価に製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の燃料電池用セパレータの製造方法を模式的に示す図である。
【
図2】実施例及び比較例の燃料電池用セパレータの接触抵抗を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明のセパレータ、及びセパレータの製造方法は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者がおこない得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
【0019】
本発明は、金属基材と、金属基材表面上に存在する金属基材の金属由来の不動態層と、不動態層上に成膜されている導電性フィラーを含む導電性フィラー層とを含む燃料電池用セパレータであって、導電性フィラーが、不動態層を貫通して金属基材と接触している、前記燃料電池用セパレータ、及びその製造方法に関する。
【0020】
ここで、金属基材としては、チタン、チタン合金などからなる板状の金属基材、板状のステンレスなどの表面上にチタンが成膜されている基材などが挙げられる。
【0021】
金属基材として前記基材を使用することで、耐食性を確保することができる。
【0022】
金属基材の厚さは、限定されないが、通常0.05mm~1mmである。
【0023】
金属基材の厚さが前記範囲であることで、物理的な耐久性を担保することができる。
【0024】
金属基材表面上には、金属基材の金属由来の不動態層が存在する。不動態層とは、金属基材表面の金属が空気中の酸素と反応することにより生じた、金属をさらなる腐食から保護するための酸化被膜層を意味する。
【0025】
不動態層の厚さは、通常1nm~10nm、例えば約3nmである。
【0026】
金属基材表面上に不動態層が存在することによって、耐食性が確保される。
【0027】
不動態層上には、導電性フィラー層が成膜されており、導電性フィラー層は、導電性フィラー及び熱硬化性樹脂を含む。
【0028】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば限定されないが、例えば、カーボンブラックなどのカーボン、酸化スズ、貴金属、窒化チタン、これらの混合物などが挙げられる。導電性粒子としては、カーボン、窒化チタンが好ましい。
【0029】
導電性フィラーの形状は、限定されない。導電性フィラーは、不動態層を貫通して金属基材と接触しやすくするために、一部に尖形を有する歪形状を有することが好ましい。
【0030】
導電性フィラーは、限定されないが、通常1μm~30μmの平均粒径を有する。ここで、平均粒径は、等面積円相当径を示す。
【0031】
導電性フィラーの量は、限定されないが、導電性フィラー層の総重量に対して、通常20重量%~90重量%である。
【0032】
導電性フィラーの量が前記範囲であることによって、導電性フィラー層の導電性を確保することができる。
【0033】
熱硬化性樹脂は、公知の熱硬化性樹脂を使用することができ、限定されないが、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。
【0034】
導電性フィラー層の厚さは、限定されないが、通常1μm~30μmである。
【0035】
導電性フィラー層の厚さが前記範囲であることによって、適切な導電性を確保することができる。
【0036】
本発明の燃料電池用セパレータでは、導電性フィラー層中の導電性フィラーは、不動態層を貫通して金属基材と接触している。
【0037】
導電性フィラーが、金属基材と接触していることによって、金属基材と、導電性フィラー層と、導電性フィラー層と接触することになる表面処理層や他部材との導通パスが増加され、導電性を向上することができる。
【0038】
本発明における燃料電池用セパレータは、固体高分子形燃料電池などの各種電気化学デバイスにおける、燃料電池セル(単セル)の構成要素であり、膜電極接合体(電解質膜、該電解質膜の両面に配置されるアノード及びカソードの電極層)の両面に配置される。
【0039】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、(a)表面に不動態層を有する金属基材上に、導電性フィラー及び熱硬化性樹脂を含む導電性フィラー層前駆体を成膜して、導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程と、(b)導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材をプレスして、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程と、(c)プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を熱処理して、導電性フィラー層を形成することで燃料電池用セパレータを得る工程とを含み、(b)の工程において、プレスが、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触するように行われることを特徴とする。
【0040】
以下に(a)~(c)の各工程について説明する。
【0041】
(a)表面に不動態層を有する金属基材上に、導電性フィラー及び熱硬化性樹脂を含む導電性フィラー層前駆体を成膜して、導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程
(a)の工程では、表面に不動態層を有する金属基材上に、導電性フィラー及び熱硬化性樹脂を含む導電性フィラー層前駆体を成膜して、導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る。
【0042】
ここで、表面に不動態層を有する金属基材、導電性フィラー、熱硬化性樹脂としては、前記で説明した材料を使用することができる。なお、金属基材としては、板状の金属基材を使用してもよいが、予め燃料電池用セパレータの形状にプレス加工されたものを使用してもよい。
【0043】
導電性フィラー層前駆体の成膜方法としては、当該技術分野において公知の方法を使用することができ、限定されない。例えば、導電性フィラー層前駆体は、導電性フィラーを、最終的な導電性フィラー層中において前記範囲の量になるように、場合により溶剤を含む熱硬化性樹脂に分散させて、導電性フィラー層分散体を調製し、導電性フィラー層分散体を、表面に不動態層を有する金属基材の表面に、最終的な導電性フィラー層の厚さが前記範囲になるように、例えばグラビアロール、ダイコーターなどによって、成膜することで形成することができる。
【0044】
(b)導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材をプレスして、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る工程
(b)の工程では、(a)の工程で調製された導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材をプレスして、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得る。
【0045】
ここで、プレスは、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触するように行われる。
【0046】
導電性フィラー層前駆体中の熱硬化性樹脂は、硬化前、すなわち半硬化の状態であることから、ある程度の流動性を有し(すなわち、柔らかく)、さらに、導電性フィラー層前駆体中の導電性フィラーは、不動態層の厚さと比較して、十分に大きな平均粒径を有するため、導電性フィラーは、プレスにより容易に金属基材と接触することができる。
【0047】
プレスの方法は、当該技術分野において公知の方法を使用することができ、限定されないが、例えば、ロールプレス機によるプレスが挙げられる。
【0048】
プレスの圧力は、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触する圧力であれば限定されず、通常1MPa以上である。
【0049】
(b)の工程において、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触するようにプレスを実施することによって、金属基材と、導電性フィラー層と、導電性フィラー層と接触することになる表面処理層や他部材との導通パスが増加され、導電性を向上することができる。
【0050】
(c)プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を熱処理して、導電性フィラー層を形成することで燃料電池用セパレータを得る工程
(c)の工程では、(b)の工程で調製されたプレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を熱処理して、導電性フィラー層を形成することで燃料電池用セパレータを得る。
【0051】
熱処理の温度や熱処理の時間などの熱処理条件は、使用した熱硬化性樹脂の種類に依存して変更することができる。
【0052】
プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を熱処理することによって、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触している、金属基材と、金属基材表面上に存在する金属基材の金属由来の不動態層と、不動態層上に成膜されている導電性フィラーを含む導電性フィラー層とを含む燃料電池用セパレータが得られる。
【0053】
なお、(c)の工程は、(b)の工程の後に実施しても、(b)の工程と同時に(すなわち、プレスしながら熱処理する)実施してもよい。
【0054】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法によって、従来の表面処理工程を省略することが可能となり、表面処理コストを低減することができる。
【0055】
図1に、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法を模式的に示す。
図1では、まず、(a)の工程において、表面に不動態層2を有する金属基材1の表面上に、導電性フィラー3及び熱硬化前の熱硬化性樹脂4を含む導電性フィラー層前駆体を成膜して、導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材1を得る。次いで、(b)の工程において、(a)の工程で調製された導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材1を、導電性フィラー3が不動態層2を貫通して金属基材1と接触するようにプレスして、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材1を得る。最後に、(c)の工程において、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材1を熱処理して、熱硬化前の熱硬化性樹脂4を硬化させて熱硬化後の熱硬化性樹脂5にし、導電性フィラー層を形成することで燃料電池用セパレータを得る。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0057】
1.試料調製
実施例
まず、(a)の工程として、表面に不動態層を有する金属基材上に、導電性フィラーとしての窒化チタンと、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂とを含む導電性フィラー層前駆体を大気圧中で成膜して、導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得た。
【0058】
続いて、(b)の工程として、(a)の工程で得られた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を以下のプレス条件でプレスして、プレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を得た。
【0059】
プレス条件
・プレス方法:ロールプレス機によるプレス
・ロールクリアランス:0.45μm
・(a)の工程で得られた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材の厚さ:0.47μm
【0060】
最後に、(c)の工程として、(b)の工程で調製されたプレスされた導電性フィラー層前駆体が成膜されている金属基材を熱処理炉に入れることで熱処理して、熱硬化性樹脂を硬化させて導電性フィラー層を形成することで燃料電池用セパレータを得た。
【0061】
比較例
実施例の製造工程において、(b)の工程を実施しなかった以外は、実施例と同様に燃料電池用セパレータを得た。
【0062】
図2に、実施例及び比較例の燃料電池用セパレータの接触抵抗を示す。実施例の接触抵抗は、比較例の接触抵抗を100%としたときの割合で示している。
【0063】
図2より、(b)の工程を実施した実施例の燃料電池用セパレータは、(b)の工程を実施しなかった比較例の燃料電池用セパレータよりも、低い接触抵抗を示すことがわかった。したがって、(b)の工程を実施することにより、導電性フィラーが不動態層を貫通して金属基材と接触することで、金属基材と、導電性フィラー層との導通パスが増加され、導電性を向上することができることがわかった。
【符号の説明】
【0064】
1:金属基材、2:不動態層、3:導電性フィラー、4:熱硬化前の熱硬化性樹脂、5:熱硬化後の熱硬化性樹脂