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特許7375724サービスホールカバー及びドア用配線モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】サービスホールカバー及びドア用配線モジュール
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20231031BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20231031BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231031BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60J5/04 Z
H02G3/04
H02G3/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020175114
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066649
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】石田 愛
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-169214(JP,A)
【文献】特開2020-083075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60J 5/04
H02G 3/04
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアパネルにおけるインナーパネルに形成されたサービスホールを覆うサービスホールカバーであって、
前記サービスホールを覆うカバー本体部と、
前記カバー本体部から前記インナーパネル側に突出するように設けられた引っ掛かり部と、
を備え、
前記引っ掛かり部は、前記車両用ドアパネルの外側から作業者の手又はロボットハンドを入れることが可能なように、前記サービスホールの少なくとも一部を開放させた状態で、前記インナーパネルに引っ掛るサービスホールカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のサービスホールカバーであって、
前記カバー本体部に、配線部材が前記カバー本体部の両面間を通過する配線通過部が形成され、
前記配線通過部が前記引っ掛かり部の隣に形成されている、サービスホールカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のサービスホールカバーであって、
前記引っ掛かり部は、前記カバー本体部から前記車両用ドアパネル内に向けて突出する基部と、前記カバー本体部から離れた位置で前記基部から前記カバー本体部の外周側に突出する先端引っ掛かり部とを含み、前記基部が前記サービスホールの縁に接した状態で、前記先端引っ掛り部が前記車両用ドアパネルの内側から前記インナーパネルに引っ掛るサービスホールカバー。
【請求項4】
請求項3に記載のサービスホールカバーであって、
前記サービスホールカバーが前記インナーパネルに取付けられた状態で、前記先端引っ掛かり部は、前記インナーパネルの内面から離れる位置に設けられる、サービスホールカバー。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のサービスホールカバーであって、
前記引っ掛かり部が複数設けられ、
前記複数の引っ掛かり部が前記サービスホールの縁に引っ掛った状態で、前記車両用ドアパネルの外側から作業者の手又はロボットハンドを入れることが可能なように、前記サービスホールの少なくとも一部が開放された状態となる、サービスホールカバー。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のサービスホールカバーであって、
前記引っ掛かり部は、前記カバー本体部から前記車両用ドアパネル内に向けて突出する軸部と、前記カバー本体部から離れた位置で前記軸部の外周側に突出する抜け止部とを含み、前記軸部が前記インナーパネルに形成された孔部に回転可能に貫通した状態で、前記抜け止部が前記車両用ドアパネルの内側から前記インナーパネルに引っ掛る、サービスホールカバー。
【請求項7】
請求項6に記載のサービスホールカバーであって、
前記サービスホールカバーが前記インナーパネルに取付けられた状態で、前記抜け止部は、前記インナーパネルの内面から離れる位置に設けられる、サービスホールカバー。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のサービスホールカバーであって、
前記カバー本体部は、第1サービスホールを覆う第1カバー本体部と、第2サービスホールを覆う第2カバー本体部と、前記第1カバー本体部と前記第2カバー本体部とを繋ぐ連結部とを含み、
前記軸部が前記連結部に設けられ、前記インナーパネルのうち前記第1サービスホールと前記第2サービスホールとの間に形成された前記孔部に回転可能に挿入される、サービスホールカバー。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のサービスホールカバーであって、
前記カバー本体部が前記サービスホールを覆った取付姿勢から前記軸部周りに回転した状態で、前記サービスホールの縁に引っ掛る回転規制突出部をさらに備える、サービスホールカバー。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のサービスホールカバーと、
前記サービスホールカバーに保持された配線部材と、
を備えるドア用配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サービスホールカバー及びドア用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドアパネルと意匠トリムとの間に組込まれるドア用機能性面状部材と、ドア用機能性面状部材に保持された配線部材と、配線部材のうちドア用機能性面状部材から外方に延びる部分であり、かつドアに組込まれる部分が保持された外装部材とを備えるドア用配線モジュールを開示している。特許文献1では、ドア用機能性面状部材がドアパネルのうちインナーパネルに形成された開口を塞ぐ部品である場合が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-083075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インナーパネルに形成された開口は、ドアパネル内での作業を行うためのサービスホールとして利用されることがある。ドアパネル内での作業としては、例えば、配線部材をドアパネル内に配索する作業、及び、配線部材の端部のコネクタをドアパネル内のコネクタに接続する作業等が想定される。
【0005】
また、配線部材は、サービスホールを通ってドアパネルに組付けられることがある。この場合、配線部材は、サービスホールを覆うサービスホールカバーに保持されるか、当該サービスホールカバーに形成された貫通孔又は凹みを通るように組込まれることが想定される。
【0006】
このような場合において、ドアパネルに対する配線部材の組付作業を容易にするため、サービスホールにおける作業域を確保しつつ、サービスホールカバーをサービスホール近くに仮保持できるようにすることが望まれている。
【0007】
そこで、本開示は、サービスホールにおける作業域を確保しつつ、サービスホールカバーをサービスホール近くに仮保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のサービスホールカバーは、車両用ドアパネルにおけるインナーパネルに形成されたサービスホールを覆うサービスホールカバーであって、前記サービスホールを覆うカバー本体部と、前記カバー本体部から前記インナーパネル側に突出するように設けられた引っ掛かり部と、を備え、前記引っ掛かり部は、前記サービスホールの少なくとも一部を開放させた状態で、前記インナーパネルに引っ掛るサービスホールカバーである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、サービスホールにおける作業域を確保しつつ、サービスホールカバーをサービスホール近くに仮保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施形態1に係るサービスホールカバー及びドア用配線モジュールが組込まれたドアを示す概略側面図である。
図2図2図1のII-II線における概略断面図である。
図3図3はドア用配線モジュールを示す概略側面図である。
図4図4図1のIV-IV線における概略断面図である。
図5図5は仮保持状態を示す概略断面図である。
図6図6は実施形態2に係るサービスホールカバー及びドア用配線モジュールが組込まれたドアを示す概略側面図である。
図7図7図6のVII-VII線における概略断面図である。
図8図8はサービスホールカバーが仮保持された状態を示す概略側面図である。
図9図9図8のIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本開示のサービスホールカバー又はドア用配線モジュールは、次の通りである。
【0013】
(1)車両用ドアパネルにおけるインナーパネルに形成されたサービスホールを覆うサービスホールカバーであって、前記サービスホールを覆うカバー本体部と、前記カバー本体部から前記インナーパネル側に突出するように設けられた引っ掛かり部と、を備え、前記引っ掛かり部は、前記サービスホールの少なくとも一部を開放させた状態で、前記インナーパネルに引っ掛るサービスホールカバーである。
【0014】
このサービスホールカバーによると、引っ掛かり部がインナーパネルに引っ掛ることによって、サービスホールカバーがサービスホール近くに仮保持される。また、引っ掛かり部がインナーパネルに引っ掛った状態で、サービスホールの少なくとも一部が開放されており、この開放されたエリアを、サービスホールにおける作業域とすることができる。このため、サービスホールにおける作業域を確保しつつ、サービスホールカバーをサービスホール近くに仮保持できる。
【0015】
(2)(1)のサービスホールカバーであって、前記カバー本体部に、配線部材が前記カバー本体部の両面間を通過する配線通過部が形成され、前記配線通過部が前記引っ掛かり部の隣に形成されていてもよい。カバー本体部のうち引っ掛かり部が設けられた部分がインナーパネルの近くに保持され、カバー本体部のうち引っ掛かり部から離れた部分がサービスホールから離れることによって、サービスホールの少なくとも一部を開放させることが想定される。このため、配線通過部が引っ掛かり部の隣に設けられていると、サービスホールカバーの仮保持状態と、インナーパネルへのサービスホールカバーの組付状態との間で、配線通過部を通過する配線部材の経路長差を少なくできる。これにより、配線部材の余長をなるべく短くできる。
【0016】
(3)(1)又は(2)のサービスホールカバーであって、前記引っ掛かり部は、前記カバー本体部から前記車両用ドアパネル内に向けて突出する基部と、前記カバー本体部から離れた位置で前記基部から前記カバー本体部の外周側に突出する先端引っ掛かり部とを含み、前記基部が前記サービスホールの縁に接した状態で、前記先端引っ掛り部が前記車両用ドアパネルの内側から前記インナーパネルに引っ掛ってもよい。この場合、引っ掛かり部がサービスホールの縁に引っ掛ることで、サービスホールカバーがインナーパネルに容易に仮保持される。
【0017】
(4)(3)のサービスホールカバーであって、前記サービスホールカバーが前記インナーパネルに取付けられた状態で、前記先端引っ掛かり部は、前記インナーパネルの内面から離れる位置に設けられてもよい。この場合、前記サービスホールカバーが前記インナーパネルに取付けられた状態で、前記先端引っ掛かり部が、前記インナーパネルの内面から離れている寸法に応じて、インナーパネルとサービスホールカバーとの間に隙間を設けることができる。この隙間によって、サービスホールの少なくとも一部を開放させることができる。
【0018】
(5)(2)から(4)のいずれか1つのサービスホールカバーであって、前記引っ掛かり部が複数設けられ、前記複数の引っ掛かり部が前記サービスホールの縁に引っ掛った状態で、前記サービスホールの少なくとも一部が開放された状態となってもよい。この場合、サービスホールカバーの仮保持状態が安定する。
【0019】
(6)(1)又は(2)のサービスホールカバーであって、前記引っ掛かり部は、前記カバー本体部から前記車両用ドアパネル内に向けて突出する軸部と、前記カバー本体部から離れた位置で前記軸部の外周側に突出する抜け止部とを含み、前記軸部が前記インナーパネルに形成された孔部に回転可能に貫通した状態で、前記抜け止部が前記車両用ドアパネルの内側から前記インナーパネルに引っ掛ってもよい。この場合、引っ掛かり部がインナーパネルの孔部に挿入されて抜け止状態に引っ掛ることで、サービスホールカバーがインナーパネルに仮保持される。この場合、サービスホールカバーが軸部周りに回転することで、前記サービスホールの少なくとも一部が開放した状態となることができる。
【0020】
(7)(6)のサービスホールカバーであって、前記サービスホールカバーが前記インナーパネルに取付けられた状態で、前記抜け止部は、前記インナーパネルの内面から離れる位置に設けられてもよい。この場合、前記サービスホールカバーが前記インナーパネルに取付けられた状態で、前記抜け止部が、前記インナーパネルの内面から離れている寸法に応じて、インナーパネルとサービスホールカバーとの間に隙間を設けることができる。この隙間によって、サービスホールカバーを軸部周りに容易に回転させることができ、これにより、サービスホールの少なくとも一部を開放させることができる。
【0021】
(8)(6)又は(7)のサービスホールカバーであって、前記カバー本体部は、第1サービスホールを覆う第1カバー本体部と、第2サービスホールを覆う第2カバー本体部と、前記第1カバー本体部と前記第2カバー本体部とを繋ぐ連結部とを含み、前記軸部が前記連結部に設けられ、前記インナーパネルのうち前記第1サービスホールと前記第2サービスホールとの間に形成された前記孔部に回転可能に挿入されてもよい。この場合、カバー本体部は、第1カバー本体部と第2カバー本体部との間の軸部周りに回転することができる。このため、第1サービスホールのうち軸部から離れた部分及び第2サービスホールのうち軸部から離れた部分を容易に開放させることができる。
【0022】
(9)(6)から(8)のいずれか1つのサービスホールカバーであって、前記カバー本体部が前記サービスホールを覆った取付姿勢から前記軸部周りに回転した状態で、前記サービスホールの縁に引っ掛る回転規制突出部をさらに備えてもよい。これにより、カバー本体部を取付姿勢から回転させてサービスホールの少なくも一部を開放させた状態を、安定して保ち易い。
【0023】
(10)(1)から(9)のいずれか1つのサービスホールカバーと、前記サービスホールカバーに保持された配線部材と、を備えるドア用配線モジュールとされてもよい。これにより、サービスホールカバーをサービスホール近くに仮保持した状態で、サービスホールカバーに保持された配線部材を、サービスホールを利用して車両用ドアパネルに取付ける作業を容易に行える。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のサービスホールカバー及びドア用配線モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係るサービスホールカバー及びドア用配線モジュールについて説明する。図1は実施形態1に係るサービスホールカバー40及びドア用配線モジュール30が組込まれたドア10を示す概略側面図である。図2図1のII-II線における概略断面図である。図3はドア用配線モジュール30を示す概略側面図である。図4図1のIV-IV線における概略断面図である。なお、図1から図3等において、1本の線で示されている配線部材は、1つの配線部材であってもよいし、複数の配線部材であってもよい。
【0026】
まず、車両におけるドア10の概要について説明する。ドア10は、全体として偏平な形状に形成されており、車両において車室内と車室外とを仕切るように開閉可能に設けられる部分である。ドア10としては、運転席側ドア、助手席側ドア、後部座席用ドアである場合等が想定される。ドア10は、車両用ドアパネル20と、意匠トリム16と、ドア用配線モジュール30とを備える。
【0027】
車両用ドアパネル20は、アウターパネル21と、インナーパネル22とを備える。アウターパネル21は、ドア10のうち車両外側に面する部分に設けられる。アウターパネル21は、車両のボディ本体と共に車両の外観を構成する部分である。インナーパネル22は、アウターパネル21に対して車室側に設けられている。インナーパネル22は、側板部23と主板部25とを有する。側板部23はアウターパネル21から車室内側に突出する部分である。主板部25は側板部23に連なり、アウターパネル21と間隔をあけつつ、アウターパネル21に沿って広がる部分である。アウターパネル21と主板部25と側板部23との間には、空間が形成される。当該空間には、ドア10に設けられるドア機器が配置されたり、ウインドウが収容されたりする。インナーパネル22の主板部25には、第1サービスホール26と、第2サービスホール27とが設けられる。第1サービスホール26と第2サービスホール27とは、インナーパネル22の両面側に開口している。このため、作業者は、第1サービスホール26又は第2サービスホール27を通じて、車両用ドアパネル20内の空間にアクセスできる。作業者は、第1サービスホール26又は第2サービスホール27を利用することにより、車両用ドアパネル20内の空間における作業、例えば、配線部材の取回し作業、配線部材をドア機器に接続する作業等を容易に実施できる。
【0028】
第1サービスホール26と第2サービスホール27とは互いに離れて形成されている。本実施形態では、第1サービスホール26と第2サービスホール27とは、車両の前後方向において離れて形成される。
【0029】
より具体的には、第1サービスホール26及び第2サービスホール27は、作業者の手を通すことができる程度の大きさ、例えば、最小開口幅が10cm、好ましくは、15cm以上の大きさに設定される。図1に示す例では、第1サービスホール26及び第2サービスホール27は、四角形状に形成されている。第1サービスホール26の上下方向の大きさは、第2サービスホール27の上下方向の大きさより小さい。第1サービスホール26及び第2サービスホール27の下縁は、後方に向けて下方に向うように延在している。第1サービスホール26の下縁の少なくとも一部の延長上に、第2サービスホール27の下縁の少なくとも一部が位置している。第1サービスホール26及び第2サービスホール27の形状は、円形状、三角等の多角形状であってもよい。第1サービスホール26が第2サービスホール27よりも大きく開口していてもよく、また、第1サービスホール26と第2サービスホール27とは同じ大きさの開口であってもよい。
【0030】
第1サービスホール26は、インナーパネル22のうち前寄りの位置に形成される。第2サービスホール27は、インナーパネル22のうち後ろ寄りの位置に形成される。第2サービスホール27は、第1サービスホール26に対して間隔をあけて車両の前後方向後ろに位置する。
【0031】
インナーパネル22のうち第1サービスホール26と第2サービスホール27との間に位置する部分は、介在部分25pに形成されている。介在部分25pは、上下方向に沿うように延在する板状部分である。介在部分25pは、インナーパネル22の外側(車室側)に突出していてもよい。例えば、介在部分25pは、例えば、プレス加工等によってアウターパネル21とは反対側に凸となるように湾曲させることによって形成されてもよい。この場合、介在部分25pを車両用ドアパネル20の内部から観察すると、上下方向に沿って延びる凹溝が観察される。この凹溝に沿って、ウインドウを昇降移動させるためのランナを昇降可能に支持するレールが設けられてもよい。介在部分25pは、平坦に形成されていてもよいし、車室側から見て凹む形状に形成されていてもよい。
【0032】
意匠トリム16は、ドア10のうち車室内側に面する部分に設けられ、車両の内装を構成する部分である。意匠トリム16には例えば、インナーハンドル、車載機器の操作部等が取付けられる。
【0033】
サービスホールカバー40は、上記車両用ドアパネル20におけるインナーパネル22に形成されたサービスホール26、27を覆う。ドア用配線モジュール30は、当該サービスホールカバー40に配線部材60を保持することによって、サービスホールカバー40と配線部材60とを一体化した構成とされる。
【0034】
サービスホールカバー40は、カバー本体部42と、引っ掛かり部50とを備える。カバー本体部42は、サービスホール26、27を覆う部分であり、インナーパネル22に対してアウターパネル21とは反対側(車室側)で広がる形状に形成されている。引っ掛かり部50は、当該カバー本体部42からインナーパネル22側、より具体的には、車両用ドアパネル20の内部に向けてと突出するように設けられた部分である。このようなサービスホールカバー40は、例えば、ポリプロピレン(PP)などの樹脂によって金型成型された部品である。サービスホールカバー40は、溶融した樹脂が金型内に注入されて射出成型された部品であってもよいし、不織布等が簡易金型によって加熱及び加圧されて固められた部品であってもよい。サービスホールカバー40は、金型成型されたカバー本体部42と、これとは別に形成された引っ掛かり部50とが合体した部品であってもよい。この場合、引っ掛かり部50は、カバー本体部42に対して嵌込固定されてもよい。引っ掛かり部50をインサート部品としてカバー本体部42が金型成型されてもよい。そして、サービスホールカバー40がインナーパネル22に装着される前の状態で、引っ掛かり部50がインナーパネル22に引っ掛ることができる。この状態で、サービスホール26、27の少なくとも一部が開放された状態で、サービスホールカバー40がサービスホール26、27の近くに保持される。
【0035】
カバー本体部42は、インナーパネル22に形成されたサービスホール26、27に応じて当該サービスホール26、27を覆うことができる形状に形成される。本実施形態では、カバー本体部42は、第1カバー本体部44と、第2カバー本体部46と、連結部48とを備える。
【0036】
第1カバー本体部44は、上記第1サービスホール26を覆う形状に形成されている。より具体的には、第1カバー本体部44は、第1サービスホール26と同じ又は大きく広がる偏平な樹脂部分である。第1カバー本体部44は、第1サービスホール26の開口形状と相似形状に広がる形状であってもよい。第1カバー本体部44は、第1サービスホール26を塞ぐように取付けられる。これにより、サービスホールカバー40は、車両の内側と外側とを仕切ることができる。
【0037】
第2カバー本体部46は、第2サービスホール27を覆う形状に形成される。第2カバー本体部46は、第2サービスホール27と同じ又は大きく広がる偏平な樹脂部品である。第2カバー本体部46は、第2サービスホール27の開口形状と相似形状に広がる形状であってもよい。第2サービスホール27に対する第2カバー本体部46の役割及び取付構造は、上記した第1サービスホール26に対する第1カバー本体部44の役割及び取付構造と同様である。
【0038】
第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46がインナーパネル22のサービスホール26、27に取付けられた状態で、ネジ止、係止構造、接着等によって当該取付状態が保持される。例えば、第1カバー本体部44の周縁部のうちインナーパネル22に重なる部分がインナーパネル22に接着されれば、それらの間の隙間を可及的に塞ぐことができる。同様に、第2カバー本体部46の周縁部のうちインナーパネル22に重なる部分がインナーパネル22に接着されれば、それらの間の隙間を可及的に塞ぐことができる。
【0039】
上記のように第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46がサービスホール26、27に取付けられることで、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46は、アウターパネル21とインナーパネル22との間の空間の車室内側を仕切る。当該空間には、雨水環境に曝されるウインドウが収容され、また、当該空間の上方には、ウインドウが出入りするスリット状の開口が形成されている。このため、当該空間は、水が浸入する可能性がある空間である。また、当該空間は、外部空間と繋がる可能性のある空間であるため、外部からの風切り音等が侵入する恐れがある空間でもある。そこで、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46は、インナーパネル22と共に、車室空間と外部空間とをより完全に仕切る部材として設けられているとよい。
【0040】
より具体的には、第1カバー本体部44は、主カバー部44aと枠部44bとフランジ部44cとを含む。
【0041】
主カバー部44aは、第1サービスホール26と同じ又は小さい(わずかに小さい)程度の大きさで板状に広がる部分である。枠部44bは、主カバー部44aの外縁から主カバー部44aの一方主面側(車室内側)に突出するように形成されている。フランジ部44cは枠部44bの外縁から外周側に張り出すように形成されている。枠部44bは、主カバー部44aからフランジ部44cに向けて主カバー部44aの外側に広がる形成されている。第1カバー本体部44がインナーパネル22のうち第1サービスホール26が形成された部分に取付けられた状態で、主カバー部44aが第1サービスホール26の内側(主板部25よりもアウターパネル21側)に配設され、フランジ部44cが第1サービスホール26の外側(主板部25よりも車室内側)に配設され、枠部44bが両者をつないでいる。これにより、主カバー部44aの縁部と第1サービスホール26の内縁部との間が、枠部44b及びフランジ部44cによって塞がれる。
【0042】
第2カバー本体部46は、主カバー部46aと、枠部46bと、フランジ部46cとを含む。主カバー部46a、枠部46b及びフランジ部46cは、第2サービスホール27に合わせた構成とされている点を除き、上記主カバー部44a、枠部44b及びフランジ部44cと同様構成である。
【0043】
連結部48は、第1カバー本体部44と第2カバー本体部46とを繋ぐ部分である。ここでは、連結部48は、第1カバー本体部44のうち後縁部(第2カバー本体部46側の縁)と第2カバー本体部46のうち前縁部(第1カバー本体部44側の縁)とを繋いでいる。連結部48は、上記フランジ部44c、46cから外側に延びる部分であってもよい。連結部48は、例えば、上記第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46と一体形成された部分である。連結部48は、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部とは別に形成され、接着剤、溶着等によって第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46に接合された部分であってもよい。
【0044】
連結部48の前後両端間寸法は、サービスホール26、27の間隔に応じた大きさに設定されている。このため、連結部48によって保持された第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46を、両サービスホール26、27に対して容易に一括して配置することができる。また、ここでは、連結部48の上下寸法は、第1カバー本体部44のうち後縁部の上下寸法及び第2カバー本体部46のうち前縁部の上下寸法よりも小さく設定されている。これにより、第1カバー本体部44と第2カバー本体部46とを、軽量かつ少ない材料で繋いでいる。
【0045】
上記連結部48は、例えば、上記第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46と一体形成された部分であってもよい。連結部48は、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部とは別に形成され、接着剤、溶着等によって第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46に接合された部分であってもよい。
【0046】
なお、第1カバー本体部44と第2カバー本体部46とが連結部48によって連結されて一体化されていることは必須ではない。連結部48が省略され、第1カバー本体部44と第2カバー本体部46とは別体として構成されていてもよい。また、インナーパネル22に第1サービスホール26及び第2サービスホール27の両方が設けられることは必須ではない。インナーパネル22にはさらに別のサービスホールが設けられてもよい。インナーパネル22には、1つのサービスホールのみが設けられていてもよい。
【0047】
上記カバー本体部42には、配線部材60がカバー本体部42の両面間を通過する配線通過部44h、46hが形成されていてもよい。配線部材60が配線通過部44h、46hを通過することによって、配線部材60が、インナーパネル22、サービスホールカバー40によって仕切られる両空間に配設され得る。配線通過部44h、46hは、第1カバー本体部44又は第2カバー本体部46の両面に貫通する孔であってもよい。配線通過部44h、46hは、第1カバー本体部44又は第2カバー本体部46の縁から内側に凹むように形成された凹部であってもよい。配線通過部44h、46hは、カバー本体部44、46のうち主カバー部44a、46a又は枠部44b、46bに形成されるとよい。ここでは配線通過部44h、46hは枠部44b、46bに形成されている。
【0048】
図5は、図4に対応する概略断面において、引っ掛かり部50がインナーパネル22に引っ掛った状態で、サービスホール26、27の少なくとも一部が開放された状態を示している。図1から図5に示すように、引っ掛かり部50は、サービスホール26、27の少なくとも一部を開放させた状態で、インナーパネル22に引っ掛る部分である。ここで、サービスホール26、27の少なくとも一部が開放している状態とは、サービスホール26、27の少なくとも一部が車両用ドアパネル20の外側から作業者の手又はロボットハンドを入れることが可能なように開放している状態という。従って、車室側から見て、サービスホール26、27がサービスホールカバー40によって隠れていたとしても、サービスホールカバー40がサービスホール26、27から離れており、インナーパネル22とサービスホールカバー40との隙間を通って作業者の手等をサービスホール26、27に入れることができれば、サービスホール26、27の少なくとも一部は開放している状態である。
【0049】
本実施形態では、引っ掛かり部50は、複数設けられている。より具体的には、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46のそれぞれに、引っ掛かり部50が設けられている。引っ掛かり部50は、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46のうち下寄り(上下方向中央寄り下寄り)に形成されていてもよい。そして、複数の引っ掛かり部50がサービスホール26、27の縁(ここでは下縁)に引っ掛った状態で、サービスホール26、27の少なくとも一部が開放された状態となる。なお、引っ掛かり部50は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。サービスホールカバー40は、引っ掛かり部50がインナーパネル22に引っ掛った箇所付近を中心に傾いてサービスホール26、27の少なくとも一部を開放させる。このため、引っ掛かり部50が3つ以上設けられる場合、3つ以上の引っ掛かり部50は、直線状に並ぶ位置に設けられるとよい。
【0050】
引っ掛かり部50は、基部52と、先端引っ掛かり部54とを含む。基部52は、カバー本体部42から車両用ドアパネル20内に向けて突出する。基部52は、第1カバー本体部44(又は第2カバー本体部46)のうち車両用ドアパネル20内を向く面であって、第1カバー本体部44(又は第2カバー本体部46)の下縁の延在方向中間部よりも内側の位置に突設される。先端引っ掛かり部54は、カバー本体部42(第1カバー本体部44又は第2カバー本体部46)から距離D1離れた位置で基部52からカバー本体部42(第1カバー本体部44又は第2カバー本体部46)の外周側(つまり、フランジ部44c、46c側)に突出する形状に形成される。
【0051】
そして、自重によって基部52がサービスホール26、27の縁(ここでは下側縁)に接した状態で、先端引っ掛かり部54が車両用ドアパネル20の内側からインナーパネル22に引っ掛るように構成されている。より具体的には、引っ掛かり部50がインナーパネル22に引っ掛った状態では、サービスホールカバー40は、引っ掛かり部50がインナーパネル22に引っ掛った箇所付近を中心として傾く。そして、サービスホールカバー40のうち引っ掛かり部50よりも下側部分(例えば、下縁)がインナーパネル22に接触する迄、サービスホールカバー40の上側部分がインナーパネル22から離れる。これにより、サービスホール26、27の少なくとも一部(特に上側部分)が外側(車室側)に開放され、この部分に、作業者の手等を入れるための作業域E1が形成され、サービスホール26、27のほぼ全体W1が開放された状態となる。
【0052】
上記引っ掛かり部50は、サービスホールカバー40がサービスホール26、27を塞ぐようにインナーパネル22に組付けられた最終組付状態で、インナーパネル22に引っ掛るものではない。このため、最終組付状態では、上記先端引っ掛かり部54は、インナーパネル22の内面(車両用ドアパネル20内向きの面)から離れる位置に設けられる(図4参照)。これにより、インナーパネル22に対する引っ掛かり部50の引っ掛りによって、サービスホールカバー40を、インナーパネル22から離れた位置に仮保持することできる。かかる構成は、サービスホール26、27をより大きく開放させるのに役立つ。また、最終組付状態では、基部52もサービスホール26、27の縁から離れた位置に設けられていてもよい。
【0053】
上記先端引っ掛かり部54は、基部52に対して、基部52の基端部を向くように傾斜していてもよい。すなわち、上記のように、引っ掛かり部50がサービスホール26、27の縁に引っ掛った状態では、基部52は、サービスホール26、27の縁から離れる外方向に向けて斜め下方に向う。上記先端引っ掛かり部54が、基部52の基端部を向くように傾斜していると、前記姿勢においても、先端引っ掛かり部54が、インナーパネル22の内面に対して平行姿勢又は先端部をインナーパネル22の内面に接触させた状態を維持し易くなり、インナーパネル22から滑って外れ難くなる。
【0054】
上記配線通過部44h、46hの少なくとも1つは、引っ掛かり部50の隣に形成されていてもよい。好ましくは、サービスホールカバー40の周囲のいずれかの直線状縁又は弧状縁の部分において、配線通過部44h、46hの少なくとも1つが引っ掛かり部50の隣に形成されていてもよい。配線通過部44h、46hの少なくとも1つは、引っ掛かり部50に対して、20cm以下の間隔をあけた位置、好ましくは、10cm以下の間隔をあけた位置、より好ましくは、5cm以下の間隔をあけた位置に設けられてもよい。
【0055】
上記したように、サービスホールカバー40は、引っ掛かり部50による引っ掛かり箇所近くを中心として傾いて、サービスホール26、27の少なくとも一部を開放させる。ここで、配線通過部44h、46hを通過する配線部材60の配線経路の差が、上記仮保持状態と最終組付状態との間で少なければ、配線部材60を配線作業する際において必要な作業余長をなるべく少なくすることができる。配線通過部44h、46hの少なくとも1つが、引っ掛かり部50の隣に形成されていれば、配線部材60に必要となる作業余長をなるべく少なくすることができる。
【0056】
複数の配線部材60は、ドア機器と車体に設けられた車体機器14とを接続してドア機器に電力を供給したり、ドア機器と車体機器14との間で信号を送ったりする。配線部材60は、電線60であってもよい。電線60としては、導体で構成された芯線61の周囲に被覆層62が形成された被覆電線を用いることができる(図4参照)。芯線61は、単芯線であってもよいし、撚り合せ線であってもよい。電線60の種類は特に限定されるものではなく、単線、複合電線などが含まれてもよい。単線は、導電路が一つの電線である。複合電線は、導電路が複数の電線である。複合電線としては、例えば、ツイスト線又は複合ケーブルなどのように、単線が複数組み合わさって形成されたものであってもよい。配線部材60は、光ファイバーケーブルなどを含んでもよい。
【0057】
より具体的には、複数の配線部材60の一端部は、束ねられた状態で、ドア10の一部分(図1に示す例ではドアヒンジ側の側板部23)を経由して当該ドア10から延出し、車体内に導かれる。複数の配線部材60の一端部は、車体側コネクタ70等を介して車体機器14、又は車体機器から延びる配線部材の端部に設けられた中継コネクタに接続されることが想定される。かかる車体機器14は特に限定されるものではないが、例えば、電子制御ユニット(ECU)又はバッテリなどが想定される。複数の配線部材60のうちドア10と車体との間に延びる部分には、グロメット78が取付けられてもよい。図1に示す例では、グロメット78は、いわゆる貫通グロメットであり、側板部23に形成された貫通孔に挿入された状態で保持される。これにより、当該貫通孔を通じた水の浸入が抑制される。複数の配線部材60の一端部には、粘着テープ等が巻き回れていてもよい。複数の配線部材60の一端部には、コルゲートチューブ等の外装部材が装着されていてもよい。
【0058】
本実施形態では、配線部材60は、車体から貫通孔を通じて車両用ドアパネル20内に導かれ、接続先となるドア機器の位置に応じて第1サービスホール26又は第2サービスホール27を通って車両用ドアパネル20の外に導出される例が示される。本例とは異なり、配線部材は、インナーパネル22のうち車室側の面に沿って配置され、接続先となるドア機器の位置に応じて第1サービスホール26又は第2サービスホール27を通って車両用ドアパネル20内に導かれてもよい。
【0059】
なお、ドア10がヒンジを介して車体に開閉可能に支持される場合、上記貫通孔は、ドア10のうちヒンジ側の部分に設けられる。もっとも、ドア10は、車体に対してスライドして開閉可能に支持されてもよい。
【0060】
複数の配線部材60は、一端部から他端部に向かう途中でグロメット78から延び出て、分岐しつつ各接続先となるドア機器に向けて延びる。複数の配線部材60の分岐先の各端部には、接続先となるドア機器に応じたコネクタ72a、72b、72c、72d、72eが設けられている。コネクタ72a、72b、72c、72d、72eは、ドア機器76a、76b、76c、76d、76eに設けられたコネクタに接続される。なお、複数の配線部材60の分岐先の端部は、ドア機器76a、76b、76c、76d、76eに直接接続されていてもよい。
【0061】
ドア機器76aは、例えば、ドア10に組込まれるスピーカ機器76aである。スピーカ機器76aは、インナーパネル22のうち第1サービスホール26よりも下側の位置に設けられる。例えば、スピーカ機器76a側のコネクタは、車両用ドアパネル20の内部空間に設けられる。以下では、配線部材60のうち当該コネクタ等を介してスピーカ機器76aに接続されるものを、配線部材60aと表記する場合がある。かかる配線部材60aとしては、音声信号を伝送する電線であることが想定される。
【0062】
ドア機器76bは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも前寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76bは、例えば、電動ドアミラー76bである。電動ドアミラー76bは、ドアの前部、より具体的には、閉められたウインドウよりも前側の位置に設けられる。電動ドアミラー76bには、ミラーの向きを変えるためのアクチュエータ、電動ドアを格納及び展開するためのアクチュエータが組込まれる。これらのアクチュエータ側のコネクタは、車両用ドアパネル20の内部空間に設けられる。以下では、配線部材60のうち当該コネクタ等を介して電動ドアミラー76bに接続されるドアミラー用配線部材を、配線部材60bと表記する場合がある。かかる配線部材60bとしては、上記アクチュエータに電力を供給する電線であることが想定される。
【0063】
ドア機器76cは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも後ろ寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76cは、例えば、ドアハンドル用機器76cである。すなわち、ドア10には、ドア10を開閉するためのハンドル76Cが設けられる。ハンドル76Cは、アウターパネル21に対して車外に露出するように設けられる。ドアハンドル用機器76cは、キーの開閉操作を検知するセンサ、アウターハンドルの操作を検知するセンサ、キー側アンテナ装置との間で信号の送信及び受信の少なくとも一方を行うアンテナ装置、ハンドル76Cに設けられるスイッチ(例えば、ワイヤレス通信キーとの間の認証結果に応じてドアロックを解除するためのスイッチ)等である。かかるドアハンドル用機器76c側のコネクタは、アウターパネル21の内側部分に設けられる。以下では、配線部材60のうち当該コネクタを介してドアハンドル用機器76cに接続されるドアハンドル用配線部材を、配線部材60cと表記する場合がある。かかる配線部材60cとしては、ドアハンドル用機器76cに対して電力を供給し、又は信号を伝送する電線であることが想定される。
【0064】
ドア機器76dは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも後ろ寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76dは、例えば、ドアロック用アクチュエータ76dである。すなわち、ドア10には、車体に対してドア10をロック及びアンロックするためのドアロック装置が組込まれ、当該ドアロック装置にドアロック用アクチュエータ76dが設けられる。当該ドアロック用アクチュエータ76d側のコネクタは、インナーパネル22の外側(室内側)に設けられてもよい。以下では、配線部材60のうち当該コネクタを介してドアロック用アクチュエータ76dに接続されるドアロック用配線部材を、配線部材60dと表記する場合がある。かかる配線部材60dとしては、ドアロック用アクチュエータ76dに電力を供給する電線であることが想定される。
【0065】
ドア機器76eは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも後ろ寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76eは、例えば、ドア10が開かれたときに、足下を照らすフットランプ76eである。フットランプ76e側のコネクタは、インナーパネル22の外側(室内側)に設けられてもよい。以下では、配線部材60のうち当該フットランプ76eに接続されるものを、配線部材60eと表記する場合がある。かかる配線部材60eとしては、フットランプ76eに電力を供給する電線であることが想定される。
【0066】
このように配線部材60は、インナーパネル22に対して車両用ドアパネル20の内側に設けられるドア機器に接続されたり、車両用ドアパネル20の外側に設けられるドア機器に接続されたりする。このため、配線部材60は、サービスホール26、27を通ってインナーパネル22の内外に取回される。また、配線部材60の少なくとも一部は車両用ドアパネル20内に配設され、その内部でドア機器にコネクタ接続される。このため、配線部材60を、車両用ドアパネル20に取付ける際には、配線部材60をサービスホール26、27に通す作業、車両用ドアパネル20内で配線部材60を取回して必要に応じて車両用ドアパネル20で固定する作業、さらに、車両用ドアパネル20内でコネクタ接続する作業等が生じる。
【0067】
なお、上記ドア機器76a、76b、76c、76d、76eの全てが存在することは必須ではなく、一部が省略されてもよい。また、ドア機器76a、76b、76c、76d、76eの位置は、機能上又はデザイン上の都合に応じて変更されてもよい。例えば、スピーカ機器76aは、ドア10の後ろ寄りに設けられてもよい。また、他のドア機器、例えば、各種スイッチ機器(ウインドウ開閉用のスイッチ、ドアロック開閉用のスイッチ等)、車内機器から非接触で電力供給を受ける受電用アンテナ、車内機器との間で無線通信を行う通信機器、車内ドアハンドル機器等が設けられてもよい。
【0068】
複数の配線部材60は、ドア10に設けられるドア機器に応じたものを含む。配線部材60は、車体機器に接続されず、ドア機器同士を接続するものを含んでいてもよい。
【0069】
複数の配線部材60は、一端部から他端部に向かう途中で、上記各ドア機器76a、76b、76c、76d、76eに応じて分岐する。本実施形態では、配線部材60aは、車両用ドアパネル20内において、グロメット78から延出した部分で、他の配線部材60b、60c、60d、60eから分岐する。配線部材60aは、車両用ドアパネル20内において、第1サービスホール26の下方でスピーカ機器76a側のコネクタに接続される。
【0070】
配線部材60bは、電動ドアミラー76bに向うように第1カバー本体部44に保持される。つまり、配線部材60bは、車体機器14から第1カバー本体部44を経由して電動ドアミラー76bに向けて案内される。なお、カバー本体部42は、配線部材60を接続先となるドア機器近くに向けて案内していればよく、従って、配線部材60は、カバー本体部42と接続先となるドア機器との間で曲っていてもよい。配線部材60bについても、カバー本体部42と電動ドアミラー76bとの間で曲っていてもよい。
【0071】
配線部材60c、60d、60eは、ドアハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eに向うように第2カバー本体部46に保持される。より具体的には、配線部材60c、60d、60eは、車体機器14から第1カバー本体部44、連結部48及び第2カバー本体部46を経由してドアハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eに向うように案内される。なお、配線部材60c、60d、60eの全てが第1カバー本体部44を経ることは必須ではない、配線部材60c、60d、60eの一部又は全部が、車体機器14から第1カバー本体部44を経ずに、第2カバー本体部46によって案内される構成であってもよい。
【0072】
より具体的には、配線部材60b、60c、60d、60eは、第1カバー本体部44に形成された下側の配線通過部44hを通って車両用ドアパネル20内から外(室内側)に導出される。ここでは、第1カバー本体部44における枠部44bの下部に配線通過部44hが形成されている。車両用ドアパネル20内において、グロメット78を延出した配線部材60b、60c、60d、60eは、配線部材60aに対して上方に分岐して、第1カバー本体部44の上記配線通過部44hを通って第1カバー本体部44の外面(車内側の面)に導かれる。少なくともこの通過部分によって、第1カバー本体部44に対して配線部材60b、60c、60d、60eが保持される。配線部材60b、60c、60d、60eは、第1カバー本体部44に対して一定の経路に沿って保持されてもよい。例えば、第1カバー本体部44上において配線部材60bが配線部材60c、60d、60eに対して分岐し、配線部材60bが上方に向い、配線部材60c、60d、60eが第2カバー本体部46(後方)に向うように保持されてもよい。
【0073】
第1カバー本体部44に対する配線部材60b、60c、60d、60eの経路保持構造は、配線部材60b、60c、60d、60eの少なくとも一部を第1カバー本体部44に対して一定の経路に沿って保持できる構造であれば、特に限定されない。第1カバー本体部44に対する配線部材60b、60c、60d、60eの保持態様は、例えば、接触部位固定態様、非接触部位固定態様であってもよい。
【0074】
ここで接触部位固定態様とは、配線部材60と固定相手とが接触する部分がくっついて離れないことによって固定された状態に維持されているものである。接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよい。接触部位間接固定とは、配線部材60と固定相手とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、配線部材60と固定相手とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば配線部材60と固定相手とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶けて相手側部材にくっついて固定されることが想定される。
【0075】
非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。例えば、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、配線部材60を固定相手に向けて押え込んだり、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、配線部材60と固定相手とを囲む状態などとなって、配線部材60と固定相手とを挟み込んだりして、配線部材60と固定相手とが固定された状態に維持するものである。
【0076】
ここでは配線部材60の第1カバー本体部44への固定態様として非接触部位固定が採用されている。より具体的には、配線部材60が第1カバー本体部44の一方面上に配設された状態で、シート状の押付部材90が配線部材60を跨いだ状態で第1カバー本体部44の一方面に取付けられている。第1カバー本体部44に対する押付部材90の取付は、粘着層(又は粘着剤)、接着剤、溶着等によりなされてもよい。押付部材90が粘着テープであれば、配線部材60に沿って粘着テープをサービスホールカバー40に貼付けていくことで、配線部材60がサービスホールカバー40に対して容易に保持される。サービスホールカバー40には、配線部材60の経路に沿った溝が形成されていてもよい。この場合、配線部材60が当該溝に収容された状態で、押付部材90が溝を跨ぐようにサービスホールカバー40に貼付けられればよい。これにより、配線部材60の位置ずれが抑制される。
【0077】
配線部材60bは、第1カバー本体部44における主カバー部44aの一方面に、下方から上方に向う経路に沿って保持され、枠部44bの上部に形成された配線通過部44hを通って車両用ドアパネル20内に導かれる。そして、配線部材60bの端部のコネクタ72bが、電動ドアミラー76b側のコネクタに接続される。
【0078】
配線部材60c、60d、60eは、第1カバー本体部44における主カバー部44aの一方面に、下方から上方に向い、途中で配線部材60bと分岐して後方に向う経路に沿って保持され、枠部44b及びフランジ部44c上を越え、さらに、連結部48上を経て後方に向かう。配線部材60c、60d、60eは、第2カバー本体部46に保持される。第2カバー本体部46に対する配線部材60c、60d、60eの保持構造は、上記第1カバー本体部44における保持構造と同様構造が適用され得る。なお、配線部材60c、60d、60eは、連結部48に対して、上記第1カバー本体部44における構成と同様構成によって保持されていてもよい。
【0079】
配線部材60c、60d、60eは、第2カバー本体部46の前部の枠部46b及びフランジ部46cを越えて、主カバー部46aの一方面上に一定経路に沿って保持される。ここでは、配線部材60c、60d、60eは、共通する経路に沿って前方から後方に向う。その途中で、配線部材60eが、配線部材60c、60dに対して分岐して下方に向う。その分岐箇所よりもさらに後方で、配線部材60cが、配線部材60dに対して分岐して上方に向う。配線部材60dは、そのまま後方に向う。
【0080】
配線部材60cは、第2カバー本体部46における枠部46bの上部に形成された配線通過部46hを通って車両用ドアパネル20内に導かれる。そして、配線部材60cの端部のコネクタ72cが、車両用ドアパネル20内で、ドアハンドル用機器76c側のコネクタに接続される。
【0081】
配線部材60dは、後部の枠部46b及びフランジ部46c上を越えて後方に向かい、車両用ドアパネル20外のドアロック用アクチュエータ76d側のコネクタに接続される。
【0082】
配線部材60eは、下部の枠部46b及びフランジ部46c上を越えて下方に向かい、車両用ドアパネル20外のフットランプ76e側のコネクタに接続される。
【0083】
上記配線部材60が車両用ドアパネル20に組付けられる際には、引っ掛かり部50を利用してサービスホールカバー40がインナーパネル22に対して保持される(図5参照)。より具体的には、引っ掛かり部50がインナーパネル22のうちサービスホール26、27の縁に引っ掛り、サービスホールカバー40がインナーパネル22に対して斜め姿勢で当該インナーパネル22に仮保持される。この姿勢では、サービスホールカバー40の下部がインナーパネル22の外向き面(車室向きの面)に接触すると共に、サービスホールカバー40のウエブがインナーパネル22から離れた状態となる。
【0084】
この状態で、サービスホール26、27の少なくとも上方が開放された状態となっているのでは、作業者の手又はロボットハンドは、サービスホール26、27の開口を通じて、配線部材60の布線作業を行うことができる。布線作業としては、配線部材60をサービスホール26、27に通す作業、配線部材60を車両用ドアパネル20内の空間に配設し、必要に応じて、当該空間内で固定する作業、当該空間内でドア機器にコネクタ接続する作業等が想定される。この際、配線部材60がサービスホールカバー40に保持されると、サービスホール26、27近くにサービスホールカバー40を介して保持された配線部材60を、車両用ドアパネル20に組付けていく作業を容易に実施できる。この後、引っ掛かり部50とインナーパネル22との引っ掛り状態を解除し、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46によってサービスホール26、27を塞ぐように、サービスホールカバー40をインナーパネル22に取付ける。これにより、ドア用配線モジュール30の取付作業が終了する。
【0085】
このように構成されたサービスホールカバー40及びドア用配線モジュール30によると、引っ掛かり部50がインナーパネル22に引っ掛ることによって、サービスホールカバー40がサービスホール26、27の近くに仮保持される。また、引っ掛かり部50がインナーパネル22に引っ掛った状態で、サービスホール26、27の少なくとも一部が開放されており、この開放されたエリアを、サービスホール26、27における作業域とすることができる。このため、サービスホール26、27における作業域を確保しつつ、サービスホールカバー40をサービスホール26、27近くに仮保持できる。この状態で、車両用ドアパネル20に対する配線部材60の組付作業を容易に実施できる。
【0086】
また、配線通過部44h、46hの少なくとも1つが引っ掛かり部50の隣に設けられていると、サービスホールカバー40の仮保持状態と、インナーパネル22へのサービスホールカバー40の最終組付状態との間で、当該配線通過部44h、46hを通過する配線部材60の経路長差を少なくできる。これにより、配線部材60の余長をなるべく少なくできる。
【0087】
また、引っ掛かり部50がサービスホール26、27の縁に引っ掛る構成とすることで、インナーパネル22に引っ掛け用の特別な孔を設けなくても、サービスホールカバー40がインナーパネル22に容易に保持される。
【0088】
また、最終取付状態で、先端引っ掛かり部54がインナーパネル22の内面から離れている。この離れた寸法D1に応じて、インナーパネル22とサービスホールカバー40との間に隙間を設けつつ、引っ掛かり部50をインナーパネル22に引っ掛けることができる。この隙間を利用して、サービスホールカバー40をインナーパネル22に対して大きく傾ける等して、サービスホール26、27の少なくとも一部をなるべく大きく開放させることができる。
【0089】
また、サービスホールカバー40に複数の引っ掛かり部50が設けられており、複数の引っ掛かり部50がサービスホール26、27の縁に引っ掛った状態で、サービスホール26、27の少なくとも一部が開放された状態となり、サービスホールカバー40の仮保持状態が安定する。
【0090】
また、配線部材60は、サービスホールカバー40に保持されているため、配線部材60の一部をサービスホール26、27近くで保持した状態で、配線部材60を車両用ドアパネル20内に組付ける作業等を容易に実施できる。
【0091】
なお、本実施形態において、引っ掛かり部50は、サービスホール26、27の縁に引っ掛る必要は無い。インナーパネル22に、仮保持用の孔又はU字状棒状の受部が形成され、引っ掛かり部50が当該受部に引っ掛けられてもよい。
【0092】
[実施形態2]
実施形態2に係るサービスホールカバー及びドア用配線モジュールについて説明する。図6は実施形態2に係るサービスホールカバー140及びドア用配線モジュール130が組込まれたドア110を示す概略側面図である。図7図6のVII-VII線における概略断面図である。図8はサービスホールカバー140が仮保持された状態を示す概略側面図である。図9図8のIX-IX線断面図である。なお、本実施形態2の説明において、実施形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略し、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0093】
本実施形態2では、実施形態1における引っ掛かり部50に代えて、次の引っ掛かり部150を備える。引っ掛かり部150は、軸部152と、抜け止部154とを含む。軸部152は、サービスホールカバー140におけるカバー本体部42から車両用ドアパネル20内に向けて突出するように形成される。軸部152は、円柱状であってもよいし、多角柱状であってもよい。抜け止部154は、カバー本体部42から離れた位置で軸部152の外周側に突出する。そして、軸部152がインナーパネル22に形成された孔部22hに貫通した状態で、抜け止部154が車両用ドアパネル20の内側からインナーパネル22に引っ掛る。抜け止部154は、例えば、軸部152の先端部から軸部152の基端側に向けて外向き傾斜する一対の弾性片154aを含む構成であってもよい。この場合、引っ掛かり部150をインナーパネル22の孔部22hに挿入すると、一対の弾性片154aが孔部22hの縁に接触して容易に軸部152側に近づくように弾性変形することができる。そして、引っ掛かり部150を孔部22hの奥にさらに挿入し、一対の弾性片154aが孔部22hを越えると、一対の弾性片154aが元の形状に弾性復帰する。これにより、一対の弾性片154aの先端部が孔部22hの周縁部でインナーパネル22に抜け止状に引っ掛ることができる。抜け止部154の構成は上記例に限られない。例えば、抜け止部は、孔部22hの内径よりもわずかに大きい環状形状に形成され、抜け止部及びインナーパネル22の少なくとも一方の弾性変形によって孔部22hを抜出て孔部22hに抜け止状に引っ掛る構成であってもよい。
【0094】
引っ掛かり部50と同様に、引っ掛かり部150は、カバー本体部42と一体的に金型成型された部分であってもよいし、カバー本体部42とは別に形成された部材が、カバー本体部42と組合わされた部材であってもよい。
【0095】
サービスホールカバー140がインナーパネル22に最終取付された状態で、抜け止部154は、インナーパネル22の内面(アウターパネル21側の面)から距離D2離れた位置に設けられてもよい。つまり、引っ掛かり部150は、引っ掛かり部50と同様に、最終組付状態で、インナーパネル22に引っ掛らず、固定用途に供されなくてもよい。この場合、抜け止部154がインナーパネル22の内面に接触した状態で、サービスホールカバー140がインナーパネル22から離れる。このため、サービスホールカバー140は、インナーパネル22から離れて回転すること容易となる。
【0096】
軸部152は、カバー本体部42のうちいずれの位置に設けられてもよい。軸部152は、連結部48に設けられてもよい。この場合、軸部152は、インナーパネル22のうち第1サービスホール26と第2サービスホール27との間に形成された孔部22hに回転可能に挿入されてもよい。この場合、軸部152の両側で、第1カバー本体部44及び第2カバー本体部46のそれぞれを、軸部152周りで回転させることができる。このため、各サービスホール26、27のうち軸部152から離れた部分を容易に開放させることができる。
【0097】
また、サービスホールカバー140には、回転規制突出部160が設けられてもよい(図8及び図9参照)。回転規制突出部160は、カバー本体部42がサービスホール26、27を覆った最終取付姿勢から軸部152の周りに回転した状態で、サービスホール26、27(ここではサービスホール27)の縁に引っ掛る部分である。本実施形態では、第2カバー本体部46に回転規制突出部160が形成されている。
【0098】
回転規制突出部160は、作業に適した程度にサービスホール26、27が開放されるまでサービスホールカバー140が回転した状態で、サービスホール27に接触する。本実施形態では、第2カバー本体部46の下縁より上方に離れた位置に回転規制突出部160が形成される。回転規制突出部160は、サービスホール27の縁に対して当該サービスホール27の内側から接触する部分に加えて、車両用ドアパネル20の内側から接触する部分を含むことが好ましい.本実施形態では、回転規制突出部160は、下向きに開口する溝部162gを含む。溝部162gは、サービスホール27の縁を嵌込可能な形状に形成されている。サービスホール27の縁が溝部162gに嵌った状態で、サービスホールカバー140の回転が規制される。加えて、インナーパネル22の厚み方向において、サービスホールカバー140の位置が規制される。このため、サービスホールカバー140が軸部152を中心として回転して、サービスホール26、27の少なくとも一部を開放させた仮保持状態が安定する。なお、回転規制突出部160に溝部162gが形成されることは必須ではない。回転規制突出部160は省略されてもよい。
【0099】
上記配線部材60が車両用ドアパネル20に組付けられる際には、引っ掛かり部150を利用してサービスホールカバー140がインナーパネル22に対して保持される(図8参照)。より具体的には、引っ掛かり部が孔部22hに挿入され抜け止部154がインナーパネル22に抜け止された状態で、サービスホールカバー140が軸部152を中心として回転される。ここでは、第1カバー本体部44よりも大きくて重い第2カバー本体部46が、第1カバー本体部44よりも下に位置するように、サービスホールカバー40が軸部152を中心として回転される。そして、回転規制突出部160がサービスホール26、27の縁に接触した状態で、サービスホールカバー140が仮保持される。この仮保持状態では、第1サービスホール26のうち軸部152より離れた下側領域E2が開放され、第2サービスホール27のうち軸部152より離れた上側領域E3が開放される。このため、作業者の手又はロボットハンドは、サービスホール26、27の開口の領域E2、E3を通じて、上記実施形態1と同様に、配線部材60の組付作業を行うことができる。
【0100】
配線部材60の組付作業が終了した後は、回転規制突出部160をサービスホール27から離すように、サービスホールカバー140を軸部152周りに回転させる。そして、第1カバー本体部44で第1サービスホール26を覆うと共に、第2カバー本体部46で第2サービスホール27を覆った状態とする。この後、軸部152が孔部22hに挿入された状態のまま、引っ掛かり部150を孔部22hにさらに押込んで、サービスホールカバー140をインナーパネル22に取付ける。なお、最終取付状態において、引っ掛かり部150と孔部22hとの位置が一致していなくてもよく、この場合、引っ掛かり部150は、孔部22hから引抜かれてもよい。
【0101】
本実施形態2によると、引っ掛かり部150が孔部22hに挿入された抜け止状態に引っ掛ることで、サービスホールカバー140がインナーパネル22に仮保持される。このため、サービスホールカバー140が軸部152周りに回転することで、サービスホール26、27の少なくとも一部が開放した状態となることができる。これにより、上記実施形態1と同様に、車両用ドアパネル20に対する配線部材60の組付を容易に行うことができる。
【0102】
なお、実施形態1と同様に、配線通過部は、引っ掛かり部150の隣に設けられてもよい。これにより、作業のために必要な配線部材の余長をなるべく短くできる。
【0103】
また、サービスホールカバー40がインナーパネル22に最終取付された状態で、抜け止部154がインナーパネル22の内面から離れていれば、インナーパネル22とサービスホールカバー140との間に隙間を設けることができる。この隙間によってサービスホールカバー140を軸部152の周りに容易に回転させることができる。これにより、サービスホール26、27の少なくとも一部を容易に開放させることができる。
【0104】
また、第1カバー本体部44と第2カバー本体部46との間の連結部48に軸部152が設けられているため、両カバー本体部44、46は、それらの間の軸部152の周りに回転することができる。これにより、サービスホール26、27のうち軸部152から離れた部分を容易に開放させることができる。
【0105】
また、サービスホールカバー140は回転規制突出部160を備えるため、カバー本体部42が取付姿勢から回転されてサービスホール26、27の少なくとも一部が開放された状態が安定して保たれる。
【0106】
また、サービスホールカバー140に配線部材60が保持されているため、配線部材60がサービスホール26、27の近くに保持された状態で、配線部材60が車両用ドアパネル20に容易に組付けられる。
【0107】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
10、110 ドア
14 車体機器
16 意匠トリム
20 車両用ドアパネル
21 アウターパネル
22 インナーパネル
22h 孔部
23 側板部
25 主板部
25p 介在部分
26 第1サービスホール
27 第2サービスホール
30、130 ドア用配線モジュール
40、140 サービスホールカバー
42 カバー本体部
44 第1カバー本体部
44a、46a 主カバー部
44b、44b 枠部
44c、44c フランジ部
44h、46h 配線通過部
46 第2カバー本体部
48 連結部
50、150 引っ掛かり部
52 基部
54 先端引っ掛かり部
60、60a、60b、60c、60d、60e 配線部材
61 芯線
62 被覆層
70 車体側コネクタ
72a、72b、72c、72d、72e コネクタ
76C ハンドル
76a、76b、76c、76d、76e ドア機器
78 グロメット
90 押付部材
152 軸部
154 抜け止部
154a 弾性片
160 回転規制突出部
162g 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9