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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ドア用配線モジュール
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20231031BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20231031BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231031BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
H02G3/30
H02G3/04
H01B7/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020175392
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066835
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-284966(JP,A)
【文献】特開2020-083075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 3/30
H02G 3/04
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターパネル及びインナーパネルを有する車両用ドアパネルに組付けられるドア用配線モジュールであって、
前記インナーパネルに形成された第1サービスホールを覆う第1サービスホールカバーと、
前記インナーパネルに形成された第2サービスホールを覆う第2サービスホールカバーと、
複数の配線部材と、
を備え、
前記複数の配線部材が、
第1ドア機器に向うように前記第1サービスホールカバーに保持された第1配線部材と、
第2ドア機器に向うように前記第2サービスホールカバーに保持された第2配線部材と、
を含み、
前記複数の配線部材が、前記第1サービスホールカバーと前記第2サービスホールカバーを繋ぎ、かつ、前記第1サービスホールと前記第2サービスホールとの間で曲った状態となっている連結経路部分を含む、ドア用配線モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のドア用配線モジュールであって、
前記第1配線部材は、車体機器から前記第1サービスホールカバーを経由して前記第1ドア機器に向けて案内され、
前記第2配線部材は、車体機器から前記第1サービスホールカバー、さらに、前記第2サービスホールカバーを経由して前記第2ドア機器に向けて案内され、
前記連結経路部分は、前記第2配線部材のうち前記第1サービスホールカバーと前記第2サービスホールカバーとの間に設けられる部分を含む、ドア用配線モジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のドア用配線モジュールであって、
前記第1配線部材は、前記第1ドア機器として電動ドアミラーに接続されるドアミラー用配線部材を含む、ドア用配線モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記第2配線部材は、前記第2ドア機器としてドアロック用アクチュエータに接続されるドアロック用配線部材及び前記第2ドア機器としてドアハンドル用機器に接続されるドアハンドル用配線部材のうちの少なくとも一方を含む、ドア用配線モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記連結経路部分は、前記複数の配線部材の延在方向の一部がフラットな状態となるように並べられた部分である、ドア用配線モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のドア用配線モジュールであって、
前記連結経路部分は、前記複数の配線部材の延在方向の一部をフラットな状態に保つベース部材を含み、
前記ベース部材が前記第1サービスホールカバー及び前記第2サービスホールカバーに固定されている、ドア用配線モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のドア用配線モジュールであって、
前記ベース部材は、曲げ可能なシート材であり、
前記複数の配線部材の延在方向の一部が前記シート材に固定されている、ドア用配線モジュール。
【請求項8】
アウターパネル及びインナーパネルを有する車両用ドアパネルに組付けられるドア用配線モジュールであって、
前記インナーパネルに形成された第1サービスホールを覆う第1サービスホールカバーと、
前記インナーパネルに形成された第2サービスホールを覆う第2サービスホールカバーと、
複数の配線部材と、
を備え、
前記複数の配線部材が、
第1ドア機器に向うように前記第1サービスホールカバーに保持された第1配線部材と、
第2ドア機器に向うように前記第2サービスホールカバーに保持された第2配線部材と、
を含み、
前記複数の配線部材が、前記第1サービスホールカバーと前記第2サービスホールカバーを繋ぎ、かつ、曲げ可能な連結経路部分を含み、
前記連結経路部分は、前記複数の配線部材の延在方向の一部がフラットな状態となるように並べられた部分であり、
前記連結経路部分は、前記インナーパネルのうち前記第1サービスホールと前記第2サービスホールとの間の突出部分を跨ぐように設けられる、ドア用配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドア用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドアパネルと意匠トリムとの間に組込まれるドア用機能性面状部材と、ドア用機能性面状部材に保持された配線部材と、配線部材のうちドア用機能性面状部材から外方に延びる部分であり、かつドアに組込まれる部分が保持された外装部材とを備えるドア用配線モジュールを開示している。特許文献1では、ドア用機能性面状部材がドアパネルのうちインナーパネルに形成された開口を塞ぐ部品である場合が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-83075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インナーパネルに形成される開口は、例えば、ドア内部での配線部材と電気機器との接続作業のために用いられる。車格が異なり、ドアの大きさが異なると、ドアの前後長に応じて開口の大きさも変ることが考えられる。ここにおいて、ドア用配線モジュールに関して、ドアの大きさ違いにさらに容易に対応できることが要請されている。
【0005】
そこで、本開示は、ドア用配線モジュールを、ドアの大きさ違いに容易に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のドア用配線モジュールは、アウターパネル及びインナーパネルを有する車両用ドアパネルに組付けられるドア用配線モジュールであって、前記インナーパネルに形成された第1サービスホールを覆う第1サービスホールカバーと、前記インナーパネルに形成された第2サービスホールを覆う第2サービスホールカバーと、複数の配線部材と、を備え、前記複数の配線部材が、第1ドア機器に向うように前記第1サービスホールカバーに保持された第1配線部材と、第2ドア機器に向うように前記第2サービスホールカバーに保持された第2配線部材と、を含み、前記複数の配線部材が、前記第1サービスホールカバーと前記第2サービスホールカバーを繋ぎ、かつ、曲げ可能な連結経路部分を含む、ドア用配線モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ドア用配線モジュールを、ドアの大きさ違いに容易に対応できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係るドア用配線モジュールが組込まれたドアを示す概略側面図である。
図2図2図1のII-II線における概略断面図である。
図3図3はドア用配線モジュール30を示す概略側面図である。
図4図4図3のIV-IV線における概略断面図である。
図5図5はドア用配線モジュールが組込まれた他のドアを示す概略側面図である。
図6図6図5のVI-VI線における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のドア用配線モジュールは、次の通りである。
【0011】
(1)アウターパネル及びインナーパネルを有する車両用ドアパネルに組付けられるドア用配線モジュールであって、前記インナーパネルに形成された第1サービスホールを覆う第1サービスホールカバーと、前記インナーパネルに形成された第2サービスホールを覆う第2サービスホールカバーと、複数の配線部材と、を備え、前記複数の配線部材が、第1ドア機器に向うように前記第1サービスホールカバーに保持された第1配線部材と、第2ドア機器に向うように前記第2サービスホールカバーに保持された第2配線部材と、を含み、前記複数の配線部材が、前記第1サービスホールカバーと前記第2サービスホールカバーを繋ぎ、かつ、曲げ可能な連結経路部分を含む、ドア用配線モジュールである。
【0012】
本開示によると、第1サービスホールカバーによってサービスホールを覆って第1配線部材を第1ドア機器に接続し、第2サービスホールカバーによって第2サービスホールを覆って第2配線部材を第2ドア機器に接続することが容易となる。この際、第1サービスホールと第2サービスホールとの距離に応じて、連結経路部分を延したり、曲げたりすることができる。このため、大きさが異なる複数種のドアに対して、第1サービスホールと第2サービスホールとの距離を異ならせれば、同種のドア用配線モジュールを組込むことができる。このため、ドア用配線モジュールを、ドアの大きさ違いに容易に対応できるようにすることができる。
【0013】
(2)(1)のドア用配線モジュールであって、前記第1配線部材は、車体機器から前記第1サービスホールカバーを経由して前記第1ドア機器に向けて案内され、前記第2配線部材は、車体機器から前記第1サービスホールカバー、さらに、前記第2サービスホールカバーを経由して前記第2ドア機器に向けて案内され、前記連結経路部分は、前記第2配線部材のうち前記第1サービスホールカバーと前記第2サービスホールカバーとの間に設けられる部分を含んでもよい。この場合、車体機器からの第1配線部材及び第2配線部材を、第1サービスホールカバーまでまとめた後、分岐させて、第1ドア機器及び第2ドア機器に接続することができ、第1配線部材及び第2配線部材の引回し作業が容易となる。また、第2配線部材の延在方向の一部によって第1サービスホールカバーと第2サービスホールカバーとを繋ぐことができる。
【0014】
(3)(1)又は(2)のドア用配線モジュールであって、前記第1配線部材は、前記第1ドア機器として電動ドアミラーに接続されるドアミラー用配線部材を含んでもよい。この場合、第1サービスホールカバーに保持された第1配線部材を、ドアにおける前側に設けられることが多い電動ドアミラーに容易に接続することができる。
【0015】
(4)(1)から(3)のいずれか1つのドア用配線モジュールであって、前記第2配線部材は、前記第2ドア機器としてドアロック用アクチュエータに接続されるドアロック用配線部材及び前記第2ドア機器としてドアハンドル用機器に接続されるドアハンドル用配線部材のうちの少なくとも一方を含んでもよい。この場合、第2サービスホールカバーに保持された第2配線部材を、ドアにおける後側に設けられることが多いドアロック用アクチュエータ及びドアハンドル用機器の少なくとも一方に容易に接続することができる。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれか1つのドア用配線モジュールであって、前記連結経路部分は、前記複数の配線部材の延在方向の一部がフラットな状態となるように並べられた部分であってもよい。連結経路部分を容易に曲げることができ、第1サービスホールと第2サービスホールとの距離に合わせた調整が容易となる。
【0017】
(6)(5)のドア用配線モジュールであって、前記連結経路部分は、前記複数の配線部材の延在方向の一部をフラットな状態に保つベース部材を含み、前記ベース部材が前記第1サービスホールカバー及び前記第2サービスホールカバーに固定されていてもよい。この場合、第1サービスホールカバーと第2サービスホールカバーとが互いに離れる方向に引っ張られたとしても、その引張り力がベース部材によって受止められる。これにより、連結経路部分における配線部材に大きな引っ張り力が作用することが抑制される。
【0018】
(7)(6)のドア用配線モジュールであって、前記ベース部材は、曲げ可能なシート材であり、前記複数の配線部材の延在方向の一部が前記シート材に固定されていてもよい。これにより、連結経路部分をシート材によってなるべく薄い形態に保つことができる。
【0019】
(8)(5)から(7)のいずれか1つのドア用配線モジュールであって、前記連結経路部分は、前記インナーパネルのうち前記第1サービスホールと前記第2サービスホールとの間の突出部分を跨ぐように設けられてもよい。インナーパネルのうち突出部分では、配線部材等を配設するためのスペースが狭くなる。そこで、フラットな連結経路部分が突出部分を跨ぐようにすることで、配線部材を狭いスペースに配設することができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のドア用配線モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
[実施形態]
以下、実施形態に係るドア用配線モジュールについて説明する。図1は実施形態に係るドア用配線モジュール30が組込まれたドア10を示す概略側面図である。図2図1のII-II線における概略断面図である。図3はドア用配線モジュール30を示す概略側面図である。図4図3のIV-IV線における概略断面図である。なお、図4を除く各図において、1本の線で示されている配線部材は、1つの配線部材であってもよいし、複数の配線部材であってもよい。
【0022】
まず、車両におけるドア10の概要について説明する。ドア10は、全体として偏平な形状に形成されており、車両において車室内と車室外とを仕切るように開閉可能に設けられる部分である。ドア10は、運転席側ドア、助手席側ドア、後部座席用ドアである場合等が想定される。ドア10は、車両用ドアパネル20と、意匠トリム16と、ドア用配線モジュール30とを備える。
【0023】
車両用ドアパネル20は、アウターパネル21と、インナーパネル22とを備える。アウターパネル21は、ドア10のうち車両外側に面する部分に設けられる。アウターパネル21は、車両のボディ本体と共に車両の外観を構成する部分である。インナーパネル22は、アウターパネル21に対して車室側に設けられている。インナーパネル22は、側板部23と主板部25とを有する。側板部23はアウターパネル21から車室内側に突出する部分である。主板部25は側板部23に連なり、アウターパネル21と間隔をあけつつ、アウターパネル21に沿って広がる部分である。アウターパネル21と主板部25と側板部23との間には、空間が形成される。当該空間には、ドア10に設けられるドア機器が配置されたり、ウインドウが収容されたりする。インナーパネル22の主板部25には、第1サービスホール26と、第2サービスホール27とが設けられる。第1サービスホール26と第2サービスホール27とは、インナーパネル22の両面側に開口している。このため、作業者は、第1サービスホール26又は第2サービスホール27を通じて、車両用ドアパネル20内の空間にアクセスできる。作業者は、第1サービスホール26又は第2サービスホール27を利用することにより、車両用ドアパネル20内の空間における作業、例えば、配線部材の取回し作業、配線部材をドア機器に接続する作業等を容易に実施できる。
【0024】
第1サービスホール26と第2サービスホール27とは互いに離れて形成されている。本実施形態では、第1サービスホール26と第2サービスホール27とは、車両の前後方向において離れて形成される。
【0025】
より具体的には、第1サービスホール26及び第2サービスホール27は、作業者の手を通すことができる程度の大きさ、例えば、最小開口幅が10cm、好ましくは、15cm以上の大きさに設定される。図1に示す例では、第1サービスホール26及び第2サービスホール27は、方形状に形成されている。また、第1サービスホール26よりも第2サービスホール27の方が大きく開口している。第1サービスホール26及び第2サービスホール27の形状は、円形状、三角等の多角形状であってもよい。第1サービスホール26が第2サービスホール27よりも大きく開口していてもよく、また、第1サービスホール26と第2サービスホール27とは同じ大きさの開口であってもよい。
【0026】
第1サービスホール26は、インナーパネル22のうち前寄りの位置に形成される。第2サービスホール27は、インナーパネル22のうち後ろ寄りの位置に形成される。第2サービスホール27は、第1サービスホール26に対して間隔をあけて車両の前後方向後ろに位置する。第1サービスホール26と第2サービスホール27とは、距離D1離れている。距離D1は、車両用ドアパネル20の車両前後長L1に応じた大きさに設定される。
【0027】
インナーパネル22のうち第1サービスホール26と第2サービスホール27との間に位置する部分は、アウターパネル21とは反対側(即ち車室側)に向けて突出する突出部分25pに形成されている。突出部分25pは、上下方向に沿うように形成されている。突出部分25pは、例えば、プレス加工等によって、インナーパネル22のうち第1サービスホール26と第2サービスホール27との間で上下方向に延びる部分をアウターパネル21とは反対側に凸となるように湾曲させることによって形成される。このため、突出部分25pを車両用ドアパネル20の内部から観察すると、上下方向に沿って延びる凹溝が観察される。この凹溝に沿って、ウインドウを昇降移動させるためのランナを昇降可能に支持するレール18が設けられてもよい(図2参照)。このような突出部分25pが形成されることは必須ではない。インナーパネル22のうち第1サービスホール26と第2サービスホール27との間の部分は平坦に形成されていてもよいし、車室側から見て凹む形状に形成されていてもよい。
【0028】
意匠トリム16は、ドア10のうち車室内側に面する部分に設けられ、車両の内装を構成する部分である。意匠トリム16には例えば、インナーハンドル、車載機器の操作部等が取付けられる。
【0029】
上記車両用ドアパネル20に組付けられるドア用配線モジュール30は、第1サービスホールカバー40と、第2サービスホールカバー50と、複数の配線部材60とを備える。
【0030】
第1サービスホールカバー40は、第1サービスホール26を覆う形状に形成される。第1サービスホールカバー40は、第1サービスホール26と同じ又は大きく広がる偏平な樹脂部品である。第1サービスホールカバー40は、第1サービスホール26の開口形状と相似形状に広がる形状であってもよい。第1サービスホールカバー40は、第1サービスホール26を塞ぐように取付けられる。これにより、第1サービスホールカバー40は、車両の内側と外側とを仕切ることができる。第1サービスホールカバー40がインナーパネル22の第1サービスホール26に取付けられた状態で、ネジ止、係止構造、接着等によって当該取付状態が保持される。例えば、第1サービスホールカバー40の周辺部のうちインナーパネル22に重なる部分がインナーパネル22に接着されれば、それらの間の隙間を可及的に塞ぐことができる。
【0031】
第2サービスホールカバー50は、第2サービスホール27を覆う形状に形成される。第2サービスホールカバー50は、第2サービスホール27と同じ又は大きく広がる偏平な樹脂部品である。第2サービスホールカバー50は、第2サービスホール27の開口形状と相似形状に広がる形状であってもよい。第2サービスホール27に対する第2サービスホールカバー50の役割及び取付構造は、上記した第1サービスホール26に対する第1サービスホールカバー40の役割及び取付構造と同様である。
【0032】
第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50は、アウターパネル21とインナーパネル22との間の空間の車室内側を仕切る。当該空間には、雨水環境に曝されるウインドウが収容され、また、当該空間の上方には、ウインドウが出入りするスリット状の開口が形成されている。このため、当該空間は、水が浸入する可能性がある空間である。また、当該空間は、外部空間と繋がる可能性のある空間であるため、外部からの風切り音等が侵入する恐れがある空間でもある。そこで、第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50は、インナーパネル22と共に、車室空間と外部空間とをより完全に仕切る部材として設けられているとよい。
【0033】
より具体的には、第1サービスホールカバー40は、カバー本体部41と枠部42とフランジ部43とを含む。第1サービスホールカバー40は、ポリプロピレン(PP)などの樹脂によって金型成型された部品である。第1サービスホールカバー40は、溶融した樹脂が金型内に注入されて射出成型された部品であってもよいし、不織布等が簡易金型間で加熱及び圧縮された固められた部品であってもよい。第1サービスホールカバー40は、面状に広がった状態を保ち得る程度の剛性を有しているとよい。
【0034】
カバー本体部41は、第1サービスホール26と同じ又は小さい(わずかに小さい)程度の大きさで板状に広がる部分である。枠部42は、カバー本体部41の外縁からカバー本体部41の一方主面側(車室内側)に突出するように形成されている。フランジ部43は枠部42の外縁から外周側に張り出すように形成されている。枠部42は、カバー本体部41からフランジ部43に向けてカバー本体部41の外側に広がる形成されている。第1サービスホールカバー40がインナーパネル22のうち第1サービスホール26が形成された部分に取付けられた状態で、カバー本体部41が第1サービスホール26の内側(主板部25よりもアウターパネル21側)に配設され、フランジ部43が第1サービスホール26の外側(主板部25よりも車室内側)に配設され、枠部42が両者をつないでいる。これにより、カバー本体部41の縁部と第1サービスホール26の内縁部との間が、枠部42及びフランジ部43によって塞がれる。
【0035】
第2サービスホールカバー50は、カバー本体部51と、枠部52と、フランジ部53とを含む。カバー本体部51、枠部52及びフランジ部53は、第2サービスホール27に合わせた構成とされている点を除き、上記カバー本体部41、枠部42及びフランジ部43と同様構成である。
【0036】
なお、第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50には配線部材60が通る配線通過部44、54が形成されていてもよい。配線部材60が配線通過部44、54を通過することによって、配線部材60が、インナーパネル22、第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50によって仕切られる両空間に配設され得る。配線通過部44、54は、第1サービスホールカバー40又は第2サービスホールカバー50の両面に貫通する孔であってもよい。配線通過部44、54は、第1サービスホールカバー40又は第2サービスホールカバー50の縁から内側に凹むように形成された凹部であってもよい。配線通過部44、54は、サービスホールカバー40、50のうちカバー本体部41、51又は枠部42、52に形成されるとよい。ここでは配線通過部44、54は枠部42、52に形成されている。
【0037】
複数の配線部材60は、ドア機器と車体に設けられた車体機器14とを接続してドア機器に電力を供給したり、ドア機器と車体機器14との間で信号を送ったりする。配線部材60は、電線60であってもよい。電線60としては、導体で構成された芯線61の周囲に被覆層62が形成された被覆電線を用いることができる(図4参照)。芯線61は、単芯線であってもよいし、撚り合せ線であってもよい。電線60の種類は特に限定されるものではなく、単線、複合電線などが含まれてもよい。単線は、導電路が一つの電線である。複合電線は、導電路が複数の電線である。複合電線としては、例えば、ツイスト線又は複合ケーブルなどのように、単線が複数組み合わさって形成されたものであってもよい。配線部材60は、光ファイバーケーブルなどを含んでもよい。
【0038】
より具体的には、複数の配線部材60の一端部は、束ねられた状態で、ドア10の一部分(図1に示す例ではドアヒンジ側の側板部23)を経由して当該ドア10から延出し、車体内に導かれる。複数の配線部材60の一端部は、車体側コネクタ70等を介して車体機器14、又は車体機器から延びる配線部材の端部に設けられた中継コネクタに接続されることが想定される。かかる車体機器14は特に限定されるものではないが、例えば、電子制御ユニット(ECU)又はバッテリなどが想定される。複数の配線部材60のうちドア10と車体との間に延びる部分には、グロメット78が取付けられてもよい。図1に示す例では、グロメット78は、いわゆる貫通グロメットであり、側板部23に形成された貫通孔に挿入された状態で保持される。これにより、当該貫通孔を通じた水の浸入が抑制される。複数の配線部材60の一端部には、粘着テープ等が巻き回れていてもよい。複数の配線部材60の一端部には、コルゲートチューブ等の外装部材が装着されていてもよい。
【0039】
本実施形態では、配線部材60は、車体から貫通孔を通じて車両用ドアパネル20内に導かれ、接続先となるドア機器の位置に応じて第1サービスホール26又は第2サービスホール27を通って車両用ドアパネル20の外に導出される例が示される。本例とは異なり、配線部材は、インナーパネル22のうち車室側の面に沿って配置され、接続先となるドア機器の位置に応じて第1サービスホール26又は第2サービスホール27を通って車両用ドアパネル20内に導かれてもよい。
【0040】
なお、ドア10がヒンジを介して車体に開閉可能に支持される場合、上記貫通孔は、ドア10のうちヒンジ側の部分に設けられる。もっとも、ドア10は、車体に対してスライドして開閉可能に支持されてもよい。
【0041】
複数の配線部材60は、一端部から他端部に向かう途中でグロメット78から延び出て、分岐しつつ各接続先となるドア機器に向けて延びる。複数の配線部材60の分岐先の各端部には、接続先となるドア機器に応じたコネクタ72a、72b、72c、72d、72eが設けられている。コネクタ72a、72b、72c、72d、72eは、ドア機器76a、76b、76c、76d、76eに設けられたコネクタに接続される。なお、複数の配線部材60の分岐先の端部は、ドア機器76a、76b、76c、76d、76eに直接接続されていてもよい。
【0042】
ドア機器76aは、例えば、ドア10に組込まれるスピーカ機器76aである。スピーカ機器76aは、インナーパネル22のうち第1サービスホール26よりも下側の位置に設けられる。例えば、スピーカ機器76a側のコネクタは、車両用ドアパネル20の内部空間に設けられる。以下では、配線部材60のうち当該コネクタ等を介してスピーカ機器76aに接続されるものを、配線部材60aと表記する場合がある。かかる配線部材60aとしては、音声信号を伝送する電線であることが想定される。
【0043】
ドア機器76bは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも前寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76bは、例えば、電動ドアミラー76bである。電動ドアミラー76bは、ドアの前部、より具体的には、閉められたウインドウよりも前側の位置に設けられる。電動ドアミラー76bには、ミラーの向きを変えるためのアクチュエータ、電動ドアを格納及び展開するためのアクチュエータが組込まれる。これらのアクチュエータ側のコネクタは、車両用ドアパネル20の内部空間に設けられる。以下では、配線部材60のうち当該コネクタ等を介して電動ドアミラー76bに接続されるドアミラー用配線部材を、配線部材60bと表記する場合がある。かかる配線部材60bとしては、上記アクチュエータに電力を供給する電線であることが想定される。
【0044】
ドア機器76cは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも後ろ寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76cは、例えば、ドアハンドル用機器76cである。すなわち、ドア10には、ドア10を開閉するためのハンドル76Cが設けられる。ハンドル76Cは、アウターパネル21に対して車外に露出するように設けられる。ドアハンドル用機器76cは、キーの開閉操作を検知するセンサ、アウターハンドルの操作を検知するセンサ、キー側アンテナ装置との間で信号の送信及び受信の少なくとも一方を行うアンテナ装置、ハンドル76Cに設けられるスイッチ(例えば、ワイヤレス通信キーとの間の認証結果に応じてドアロックを解除するためのスイッチ)等である。かかるドアハンドル用機器76c側のコネクタは、アウターパネル21の内側部分に設けられる。以下では、配線部材60のうち当該コネクタを介してドアハンドル用機器76cに接続されるドアハンドル用配線部材を、配線部材60cと表記する場合がある。かかる配線部材60cとしては、ドアハンドル用機器76cに対して電力を供給し、又は信号を伝送する電線であることが想定される。
【0045】
ドア機器76dは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも後ろ寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76dは、例えば、ドアロック用アクチュエータ76dである。すなわち、ドア10には、車体に対してドア10をロック及びアンロックするためのドアロック装置が組込まれ、当該ドアロック装置にドアロック用アクチュエータ76dが設けられる。当該ドアロック用アクチュエータ76d側のコネクタは、インナーパネル22の外側(室内側)に設けられてもよい。以下では、配線部材60のうち当該コネクタを介してドアロック用アクチュエータ76dに接続されるドアロック用配線部材を、配線部材60dと表記する場合がある。かかる配線部材60dとしては、ドアロック用アクチュエータ76dに電力を供給する電線であることが想定される。
【0046】
ドア機器76eは、例えば、ドア10のうち前後方向中央よりも後ろ寄りの位置に設けられる機器である。ドア機器76eは、例えば、ドア10が開かれたときに、足下を照らすフットランプ76eである。フットランプ76e側のコネクタは、インナーパネル22の外側(室内側)に設けられてもよい。以下では、配線部材60のうち当該フットランプ76eに接続されるものを、配線部材60eと表記する場合がある。かかる配線部材60eとしては、フットランプ76eに電力を供給する電線であることが想定される。
【0047】
本例において、上記電動ドアミラー76bは、第1機器、特に、ドア10に対して前寄りの位置に設けられる第1機器の一例である。また、ハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eは、第2機器、特に、ドア10に対して後ろ寄りの位置に設けられる第2機器の一例である。
【0048】
なお、上記ドア機器76a、76b、76c、76d、76eの全てが存在することは必須ではなく、一部が省略されてもよい。また、ドア機器76a、76b、76c、76d、76eの位置は、機能上又はデザイン上の都合に応じて変更されてもよい。例えば、スピーカ機器76aは、ドア10の後ろ寄りに設けられてもよい。また、他のドア機器、例えば、各種スイッチ機器(ウインドウ開閉用のスイッチ、ドアロック開閉用のスイッチ等)、車内機器から非接触で電力供給を受ける受電用アンテナ、車内機器との間で無線通信を行う通信機器、車内ドアハンドル機器等が設けられてもよい。
【0049】
複数の配線部材60は、ドア10に設けられるドア機器に応じたものを含む。上記配線部材60bは、第1配線部材60bの一例であり、配線部材60c、60d、60eは、第2配線部材の一例である。配線部材60は、車体機器に接続されず、ドア機器同士を接続するものを含んでいてもよい。
【0050】
複数の配線部材60は、一端部から他端部に向かう途中で、上記各ドア機器76a、76b、76c、76d、76eに応じて分岐する。
【0051】
本実施形態では、配線部材60aは、ドアパネル20内において、グロメット78から延出した部分で、他の配線部材60b、60c、60d、60eから分岐する。配線部材60aは、ドアパネル20内において、第1サービスホール26の下方でスピーカ機器76a側のコネクタに接続される。
【0052】
第1配線部材の一例である配線部材60bは、第1ドア機器の一例である電動ドアミラー76bに向うように第1サービスホールカバー40に保持される。つまり、配線部材60bは、車体機器14から第1サービスホールカバー40を経由して電動ドアミラー76bに向けて案内される。なお、カバー40、50は、配線部材60を接続先となるドア機器近くに向けて案内していればよく、従って、配線部材60は、カバー40、50と接続先となるドア機器との間で曲っていてもよい。配線部材60bについても、第1サービスホールカバー40と電動ドアミラー76bとの間で曲っていてもよい。
【0053】
第2配線部材の一例である配線部材60c、60d、60eは、第2ドア機器の一例であるドアハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eに向うように第2サービスホールカバー50に保持される。より具体的には、配線部材60c、60d、60eは、車体機器14から第1サービスホールカバー40、さらに、第2サービスホールカバー50を経由してドアハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eに向うように案内される。なお、配線部材60c、60d、60eの全てが第1サービスホールカバー40を経ることは必須ではない、配線部材60c、60d、60eの一部又は全部が、車体機器14から第1サービスホールカバー40を経ずに、第2サービスホールカバー50によって案内される構成であってもよい。配線部材60c、60d、60eの一部又は全部が第1サービスホールカバー40を経て第2サービスホールカバー50に至る構成であれば、配線部材60c、60d、60eのうち第1サービスホールカバー40と第2サービスホールカバー50とを繋ぐ部分が、後述する連結経路部分46として利用され得る。
【0054】
より具体的には、配線部材60b、60c、60d、60eは、第1サービスホールカバー40に形成された配線通過部44を通って車両用ドアパネル20内から外(室内側)に導出される。ここでは、第1サービスホールカバー40における枠部42の下部に配線通過部44が形成されている。車両用ドアパネル20内において、グロメット78を延出した配線部材60b、60c、60d、60eは、配線部材60aに対して上方に分岐して、第1サービスホールカバー40の上記配線通過部44を通って第1サービスホールカバー40の外面(車内側の面)に導かれる。第1サービスホールカバー40に対して配線部材60b、60c、60d、60eが保持される。配線部材60b、60c、60d、60eは、第1サービスホールカバー40に対して一定の経路に沿って保持されてもよい。例えば、第1サービスホールカバー40上において配線部材60bが配線部材60c、60d、60eに対して分岐し、配線部材60bが上方に向い、配線部材60c、60d、60eが第2サービスホールカバー50(後方)に向うように保持されてもよい。
【0055】
第1サービスホールカバー40に対する配線部材60b、60c、60d、60eの保持構造は、配線部材60b、60c、60d、60eの少なくとも一部を第1サービスホールカバー40に対して一定位置に保持できる構造であれば、特に限定されない。第1サービスホールカバー40に対する配線部材60b、60c、60d、60eの保持態様は、例えば、接触部位固定態様、非接触部位固定態様であってもよい。
【0056】
ここで接触部位固定態様とは、配線部材60と固定相手とが接触する部分がくっついて離れないことによって固定された状態に維持されているものである。接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよい。接触部位間接固定とは、配線部材60と固定相手とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、配線部材60と固定相手とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば配線部材60と固定相手とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶けて相手側部材にくっついて固定されることが想定される。
【0057】
非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。例えば、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、配線部材60を固定相手に向けて押え込んだり、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、配線部材60と固定相手とを囲む状態などとなって、配線部材60と固定相手とを挟み込んだりして、配線部材60と固定相手とが固定された状態に維持するものである。
【0058】
ここでは配線部材60の第1サービスホールカバー40への固定態様として非接触部位固定が採用されている。より具体的には、配線部材60が第1サービスホールカバー40の一方面上に配設された状態で、シート状の押付部材90が配線部材60を跨いだ状態で第1サービスホールカバー40の一方面に取付けられている。第1サービスホールカバー40に対する押付部材90は、粘着層(又は粘着剤)、接着剤、溶着等によりなされてもよい。押付部材90が粘着テープであれば、配線部材60に沿って粘着テープを第1サービスホールカバー40に貼付けていくことで、配線部材60が第1サービスホールカバー40に対して容易に保持される。第1サービスホールカバー40には、配線部材60の経路に沿った溝が形成されていてもよい。この場合、配線部材60が当該溝に収容された状態で、押付部材90が溝を跨ぐように第1サービスホールカバー40に貼付けられればよい。これにより、配線部材60の位置ずれが抑制される。
【0059】
配線部材60bは、第1サービスホールカバー40におけるカバー本体部41の一方面に、下方から上方に向う経路に沿って保持され、枠部42の上部に形成された配線通過部44を通って車両用ドアパネル20内に導かれる。そして、配線部材60bの端部のコネクタ72bが、電動ドアミラー76b側のコネクタに接続される。
【0060】
配線部材60c、60d、60eは、第1サービスホールカバー40におけるカバー本体部41の一方面に、下方から上方に向い、途中で配線部材60bと分岐して後方に向う経路に沿って保持され、枠部42及びフランジ部43上を越えて後方に向かう。
【0061】
配線部材60c、60d、60eは、第1サービスホールカバー40から第2サービスホールカバー50に向い、第2サービスホールカバー50に保持される。第2サービスホールカバー50に対する配線部材60c、60d、60eの保持構造は、上記第1サービスホールカバー40における保持構造と同様構造が適用され得る。
【0062】
配線部材60c、60d、60eは、第2サービスホールカバー50の前部の枠部52及びフランジ部53を越えて、カバー本体部51の一方面上に一定経路に沿って保持される。ここでは、配線部材60c、60d、60eは、共通する経路に沿って前方から後方に向う。その途中で、配線部材60eが、配線部材60c、60dに対して分岐して下方に向う。その分岐箇所よりもさらに後方で、配線部材60cが、配線部材60dに対して分岐して上方に向う。配線部材60dは、そのまま後方に向う。
【0063】
配線部材60cは、第2サービスホールカバー50における枠部52の上部に形成された配線通過部54を通って車両用ドアパネル20内に導かれる。そして、配線部材60cの端部のコネクタ72cが、車両用ドアパネル20内で、ハンドル用機器76c側のコネクタに接続される。
【0064】
配線部材60dは、後部の枠部52及びフランジ部53上を越えて後方に向かい、車両用ドアパネル20外のドアロック用アクチュエータ76d側のコネクタに接続される。
【0065】
配線部材60eは、下部の枠部52及びフランジ部53上を越えて下方に向かい、車両用ドアパネル20外のフットランプ76e側のコネクタに接続される。
【0066】
複数の配線部材60は、第1サービスホールカバー40と第2サービスホールカバー50とを繋ぎ、かつ、曲げ可能な連結経路部分46を含む。本実施形態では、複数の配線部材60のうち配線部材60c、60d、60eにおける延在方向の一部が連結経路部分46である。より具体的には、第2配線部材である配線部材60c、60d、60eのうち第1サービスホールカバー40と第2サービスホールカバー50との間の部分が連結経路部分46である。連結経路部分46は、他の配線部材、例えば、ドア機器同士を接続する配線部材の延在方向の一部を含んでいてもよい。
【0067】
配線部材60c、60d、60eは、第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50のそれぞれにおいて、同じ並びで並列状態に保持されている。このため、連結経路部分46において、配線部材60c、60d、60eの延在方向の一部は、フラットな状態となるように並べられている。
【0068】
連結経路部分46において、配線部材60c、60d、60eの延在方向の一部をより確実にフラットな状態に保つベース部材48が設けられてもよい。本実施形態では、ベース部材48は、曲げ可能なシート材48である。例えば、ベース部材48は、不織布、中身が埋った樹脂シート、或いは、これらの積層シート等、曲げ可能なシート材48である。配線部材60c、60d、60eの延在方向の一部は、上記シート材48の一方面上に並列状態で固定される。シート材48に対する配線部材60c、60d、60eの固定構造は、上記第1サービスホールカバー40に対する配線部材60の固定構造と同様であってもよい。例えば、配線部材60c、60d、60eの延在方向の一部がシート材48に対して、超音波溶着等の溶着によって固定されていてもよい。
【0069】
なお、ベース部材48は、シート材でなくてもよい。例えば、ベース部材48は、偏平コルゲートチューブであってもよい。
【0070】
上記ベース部材48は、第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50に固定されている。本実施形態では、シート材48の一方の端部が第1サービスホールカバー40のうち後部のフランジ部43に固定され、シート材48の他方の端部が第2サービスホールカバー50のうち前部のフランジ部53に固定されている。サービスホールカバー40、50に対するシート材48の固定は、粘着層(又は粘着剤)、接着剤、溶着等によりなされてもよいし、ネジ止、びょう留、クリップ固定等によりなされてもよい。
【0071】
上記連結経路部分46は、インナーパネル22のうち第1サービスホール26と第2サービスホール27との間の突出部分25pを、その突出する側から跨ぐように設けられる(図2参照)。連結経路部分46がフラットな状態に保たれていれば、突出部分25pを跨ぐとしても、連結経路部分46がインナーパネル22から車内側に大きく突出することが抑制され、当該連結経路部分46が、インナーパネル22と意匠トリム16との間の狭い空間に容易に配置され得る。
【0072】
なお、連結経路部分46において、ベース部材48が設けられることは必須ではない。また、連結経路部分46は曲げ可能であればよく、フラットな状態に保たれていることは必須ではない。連結経路部分46において、複数の配線部材60がばらばらな状態であってもよいし、粘着テープ又は結束バンド等によって束ねられていてもよい。
【0073】
このドア用配線モジュール30によると、複数の配線部材60が、第1ドア機器である電動ドアミラー76bに向うように第1サービスホールカバー40に保持された配線部材60bと、第2機器であるハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eに向うように第2サービスホールカバー50に保持された配線部材60c、60d、60eを含む。このため、第1サービスホールカバー40によって第1サービスホール26を覆いつつ配線部材60bを電動ドアミラー76bに容易に接続することができる。同様に、第2サービスホールカバー50によって第2サービスホール27を覆いつつ、配線部材60c、60d、60eを、ハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eに容易に接続することができる。
【0074】
また、複数の配線部材60が、第1サービスホールカバー40と第2サービスホールカバー50とを繋ぎ、かつ、曲げ可能な連結経路部分46を含む。このため、第1サービスホール26と第2サービスホール27との距離に応じて、連結経路部分46を延したり、曲げたりすることができる。このため、大きさが異なる複数種のドア10に対して、第1サービスホール26と第2サービスホール27との距離を異ならせれば、同種のドア用配線モジュール30を組込むことができる。このため、ドア用配線モジュール30を、ドア10の大きさ違いに容易に対応できるようにすることができる。
【0075】
この点について、図1図2に示されるドア10と、図5及び図6に示されるドア110とを参照しつつ、より詳細に説明する。
【0076】
すなわち、自動車の車格が異なると、ドア10、110の前後長が異なる場合がある。例えば、ドア10の前後長はL1であり、ドア110の前後長はL2であるとする。一方、車格が異なってもドア10、110に組込まれるドア機器76a、76b、76c、76d、76eについては、大きく異ならない場合が想定される。このような場合において、ドア10、110別にドア用配線モジュールを専用に設計すると、設計コスト、製造コスト、管理コストが高くなってしまう。そこで、ドア10及びドア110において、作業用のサービスホールを第1サービスホール26と第2サービスホール27とに分ける。そして、第1サービスホール26に設けられた第1サービスホールカバー40によって第1サービスホール26に近いドア機器76bに対する配線部材60bの経路を案内する。また、第2サービスホール27に設けられた第2サービスホールカバー50によって、第2サービスホール27に近いドア機器76c、76d、76eに対する配線部材60c、60d、60eの経路を案内する。
【0077】
また、ドア10とドア110との間で、第2サービスホール27と第2サービスホール27とを実質的に同じ形状及び大きさに設定する。ここで、第1サービスホール26と第2サービスホール27とを実質的に同じ形状及び大きさに設定するとは、例えば、同じ第1サービスホールカバー40又は第2サービスホールカバー50で覆うことが可能な範囲で同じ形状及び大きさであることを意味する。そして、ドア10及びドア110の大きさ違い、特に、前後長L1、L2を、第1サービスホール26と第2サービスホール27との距離D1、D2の違いによって対応することを考える。つまり、前後長L1のドア10については、第1サービスホール26と第2サービスホール27との距離D1とし、L1より短い前後長L2のドア110については、第1サービスホール26と第2サービスホール27との距離D2を、上記距離D1と小さくする。
【0078】
この場合、例えば、前後長L1のドア10については、第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50を第1サービスホール26及び第2サービスホール27に装着し、上記連結経路部分46を、ホール26、27間で、インナーパネル22の表面部分に沿わせるように延した状態とすればよい。一方、L1よりも短い前後長L2のドア10については、上記と同様に、第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50を第1サービスホール26及び第2サービスホール27に装着し、上記連結経路部分46については、ホール26、27間で、距離D2に応じて曲げた状態とすればよい。例えば、連結経路部分46が上記ドア10の間隔D1に合わせた大きさであるとすると、同じように設計及び製造されたドア用配線モジュール30をドア110に組込むと、連結経路部分46のうち間隔D1から間隔D2を引いた分が余ってしまう。この余剰部分を折畳むようにしてインナーパネル22上に重ねるようにしてもよい。連結経路部分46は、ホール26、27間で上又は下方に湾曲するように曲げられてもよい。いずれにせよ、連結経路部分46が曲げ可能な状態であれば、間隔D1、D2に応じて、当該連結経路部分46を曲げてホール26、26間に収めることができる。前後長が異なる他の異なるドアについても、上記と同様に、ホール26、27間隔に応じて連結経路部分46を曲げることで容易に対応できる。なお、さらに追加のサービスホールが設けられてもよく、この場合において、さらに追加のサービスホールカバーが設けられてもよい。
【0079】
このように、本ドア用配線モジュール30によると、ホール26、27の間隔に応じて連結経路部分46を曲げることで、同種のドア用配線モジュール30を異なる前後長のドア10に組付けることが可能となる。結果、ドア用配線モジュール30を、ドア10、110の大きさ違いに容易に対応できることになる。
【0080】
もちろん、車格等が異なる場合において、組込まれるドア機器、ドア機器の位置が異なる場合もあり、このような場合において、組込まれるドア機器、及び、ドア機器の位置に応じて、配線部材60が追加又は削除されたり、配線部材の経路の一部が変更されたりすることもあり得る。
【0081】
また、配線部材60bは、車体機器14から第1サービスホールカバー40を経由して電動ドアミラー76bに向けて案内され、配線部材60c、60d、60eは、車体機器14から第1サービスホールカバー40、さらに、第2サービスホールカバー50を経由してハンドル用機器76c、ドアロック用アクチュエータ76d、フットランプ76eに向けて案内される。このため、配線部材60b、60c、60d、60eを第1サービスホールカバー40に至るまでまとめた後、分岐させることができ、配線部材60b、60c、60d、60eの引回し作業が容易となる。また、配線部材60c、60d、60eの一部を連結経路部分46として利用することができる。
【0082】
また、第1サービスホールカバー40に保持された配線部材60bを、ドア10における前側に設けられることが多い電動ドアミラー76bに容易に接続することができる。
【0083】
また、第2サービスホールカバー50に保持された配線部材60c、60dを、ドア10における後ろ側に設けられることが多いハンドル用機器76c及びドアロック用アクチュエータ76dの少なくとも一方に容易に接続することができる。
【0084】
また、連結経路部分46がフラットな状態とされているため、連結経路部分46を容易に厚み方向に曲げることでき、ホール26、27の間隔D1、D2に応じた連結経路部分46の曲げ調整が容易となる。また、曲げた状態が安定し易い。
【0085】
また、連結経路部分46のベース部材48が第1サービスホールカバー40及び第2サービスホールカバー50に固定されているため、ドア用配線モジュール30の製造後の運搬、組付時等において、第1サービスホールカバー40と第2サービスホールカバー50とが離れる方向に引っ張られたとしても、その引張り力がベース部材48によって受止められる。これにより、連結経路部分46における配線部材60c、60d、60eに大きな引っ張り力が作用することが抑制される。
【0086】
また、ベース部材48は、シート材48であり、配線部材60c、60d、60eが当該シート材48に並列状態で固定されているため、連結経路部分46をなるべく薄い形態に保つことができる。
【0087】
また、このようなフラットな連結経路部分46が、インナーパネル22の突出部分25pを跨ぐため、突出部分25pと意匠トリム16との間の狭いスペースに、配線部材60c、60d、60eを容易に配設することができる。
【0088】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0089】
10、110 ドア
14 車体機器
16 意匠トリム
18 レール
20 車両用ドアパネル
21 アウターパネル
22 インナーパネル
23 側板部
25 主板部
25p 突出部分
26 第1サービスホール
27 第2サービスホール
30 ドア用配線モジュール
40 第1サービスホールカバー
41、51 カバー本体部
42、52 枠部
43、53 フランジ部
44、54 配線通過部
46 連結経路部分
48 シート材(ベース部材)
50 第2サービスホールカバー
60、60a 配線部材
60b 配線部材(第1配線部材)
60c、60d、60e 配線部材(第2配線部材)
61 芯線
62 被覆層
70 車体側コネクタ
72a、72b、72c、72d、72e コネクタ
76C ハンドル
76a スピーカ機器(ドア機器)
76b 電動ドアミラー(第1ドア機器)
76c ドアハンドル用機器(第2ドア機器)
76d ドアロック用アクチュエータ(第2ドア機器)
76e フットランプ(第2ドア機器)
78 グロメット
90 押付部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6