IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特許7375726ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー
<>
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図1
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図2
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図3
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図4
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図5
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図6
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図7
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図8
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図9
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図10
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図11
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図12
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図13
  • 特許-ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバー
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20231031BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20231031BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60R16/02 623Q
H02G3/32
H02G3/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020176004
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067341
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】白川 純一
(72)【発明者】
【氏名】青井 覚
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-132242(JP,A)
【文献】特開2020-083075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 3/32
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に溝が形成されたサービスホールカバーと、
前記溝に収容された配線部材と、
前記サービスホールカバーに固定されて前記溝の開口を塞ぐ配線カバーと、
を備え、
前記サービスホールカバーの前記主面のうち前記溝を挟んだ両側に第1取付部及び第2取付部が設けられ、
前記配線カバーの第1端部が前記第1取付部に取付けられると共に、前記配線カバーの第2端部が前記第2取付部に取付けられた取付状態となっており、
前記サービスホールカバー及び前記配線カバーは、前記第1端部が前記第1取付部に取付けられると共に前記第2端部が前記第2取付部に取付けられていない仮取付状態で、前記第2端部と前記第2取付部との間にスペースがあいて遊離した状態となることが可能に設けられ、
前記仮取付状態において、前記第1取付部は前記第1端部を前記第2端部が前記第2取付部の上方の遊離位置であって、前記第2取付部と離れた遊離位置に向けて延びることができる姿勢に支持し、かつ、前記サービスホールカバーに片持ち状に支持された前記配線カバーは前記第2端部が前記遊離位置にある状態を保つことができる剛性を有する、ドア用配線モジュール。
【請求項2】
請求項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記第2取付部の取付面が、前記第1取付部の取付面を延長した仮想平面よりも前記溝の高さ方向に沿って前記溝の底部の近くに位置する、ドア用配線モジュール。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記第1取付部の取付面が、前記溝から離れるにつれて前記溝の底部からの高さが低くなる傾斜面とされる、ドア用配線モジュール。
【請求項4】
請求項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記第2取付部の取付面が、前記溝から離れるにつれて前記溝の底部からの高さが高くなる傾斜面とされる、ドア用配線モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記溝の底部のうち、前記溝の幅方向に沿って前記第1取付部側の部分が前記第1取付部側に行くにつれて深さが深くなる傾斜面とされる、ドア用配線モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記溝の長手方向に沿って間隔をあけた第1箇所及び第2箇所においてそれぞれ前記配線カバーが設けられ、
前記第1箇所における前記配線カバーの前記第2端部と、前記第2箇所における前記配線カバーの前記第2端部とは、前記溝に対して互いに同じ側に設けられる、ドア用配線モジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記溝の長手方向に沿って間隔をあけた第1箇所及び第2箇所においてそれぞれ前記配線カバーが設けられ、
前記第1箇所における前記配線カバーの前記第2端部と、前記第2箇所における前記配線カバーの前記第2端部とは、前記溝に対して互いに反対側に設けられる、ドア用配線モジュール。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のドア用配線モジュールであって、
複数の前記配線部材が、互いにフリーな状態で前記溝内に収まる、ドア用配線モジュール。
【請求項9】
一方主面に溝が形成されたサービスホールカバーと、
第1端部及び第2端部を有する配線カバーと、
を備え、
前記サービスホールカバーの前記一方主面のうち前記溝を挟んだ両側に第1取付部及び第2取付部が設けられ、
前記配線カバーにおいて、前記第1端部が前記第1取付部に取付けられ、前記第1端部と前記第2端部との間の中間部が前記溝の開口を覆い、前記第2端部は前記第2取付部との間にスペースをあけており、
前記第1取付部は前記第1端部を前記第2端部が前記第2取付部の上方の遊離位置であって、前記第2取付部と離れた遊離位置に向けて延びることができる姿勢に支持し、かつ、前記サービスホールカバーに片持ち状に支持された前記配線カバーは前記第2端部が前記遊離位置にある状態を保つことができる剛性を有する、複合サービスホールカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドア用配線モジュール及び複合サービスホールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドアモジュールパネルとワイヤーハーネスとシート部材とを備えるドア用ワイヤーハーネスモジュールを開示している。特許文献1に記載のドア用ワイヤーハーネスモジュールにおいて、ドアモジュールパネルの一方主面に形成された溝内にワイヤーハーネスが収容されている。また、当該溝の開口を塞ぐように、シート部材がドアモジュールパネルの一方主面に貼付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-71333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のドア用ワイヤーハーネスモジュールのように、溝及び配線カバーによって配線部材が保持される場合に、配線部材の保持構造が簡易に形成可能であることが望まれている。
【0005】
そこで、溝及び配線カバーによる配線部材の保持構造を簡易に形成することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のドア用配線モジュールは、主面に溝が形成されたサービスホールカバーと、前記溝に収容された配線部材と、前記サービスホールカバーに固定されて前記溝の開口を塞ぐ配線カバーと、を備え、前記サービスホールカバーの前記主面のうち前記溝を挟んだ両側に第1取付部及び第2取付部が設けられ、前記配線カバーの第1端部が前記第1取付部に取付けられると共に、前記配線カバーの第2端部が前記第2取付部に取付けられており、前記サービスホールカバー及び前記配線カバーは、前記第1端部が前記第1取付部に取付けられると共に前記第2端部が前記第2取付部に取付けられていない仮取付状態で、前記第2端部と前記第2取付部との間にスペースがあいて遊離した状態となることが可能に設けられる、ドア用配線モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、溝及び配線カバーによる配線部材の保持構造を簡易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかるドア用配線モジュール及びこれが組み込まれるドアパネルを示す平面図である。
図2図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は溝に配線部材が収容される様子を示す模式図である。
図4図4は溝に配線部材が収容される様子を示す模式図である。
図5図5は溝に配線部材が収容された後に、配線カバーの第2端部が第2取付部に取付けられる様子を示す模式図である。
図6図6はドア用配線モジュールの第1変形例を示す断面図である。
図7図7は複合サービスホールカバーの第1変形例を示す断面図である。
図8図8はドア用配線モジュールの第2変形例を示す断面図である。
図9図9は複合サービスホールカバーの第2変形例を示す断面図である。
図10図10はドア用配線モジュールの第3変形例を示す断面図である。
図11図11は複合サービスホールカバーの第3変形例を示す断面図である。
図12図12はドア用配線モジュールの第3変形例を示す断面図である。
図13図13は複合サービスホールカバーの第4変形例を示す断面図である。
図14図15は複合サービスホールカバーの第5変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のドア用配線モジュールは、次の通りである。
【0011】
(1)主面に溝が形成されたサービスホールカバーと、前記溝に収容された配線部材と、前記サービスホールカバーに固定されて前記溝の開口を塞ぐ配線カバーと、を備え、前記サービスホールカバーの前記主面のうち前記溝を挟んだ両側に第1取付部及び第2取付部が設けられ、前記配線カバーの第1端部が前記第1取付部に取付けられると共に、前記配線カバーの第2端部が前記第2取付部に取付けられており、前記サービスホールカバー及び前記配線カバーは、前記第1端部が前記第1取付部に取付けられると共に前記第2端部が前記第2取付部に取付けられていない仮取付状態で、前記第2端部と前記第2取付部との間にスペースがあいて遊離した状態となることが可能に設けられる、ドア用配線モジュールである。配線カバー及びサービスホールカバーは、第1端部が第1取付部に取付けられると共に第2端部が第2取付部に取付けられていない仮取付状態で、前記第2端部と前記第2取付部との間にスペースがあいて遊離した状態となることが可能に設けられる。これにより、仮取付状態で、第2端部と第2取付部とのスペースを通じて配線部材が溝内に簡易に収容されることができる。また、第1端部が第1取付部に取付けられていることによって、配線部材が溝に収容された後に第2端部が第2取付部に取付けられるまでの間に、配線部材が溝から抜けにくい。以上より、溝及び配線カバーによる配線部材の保持構造を簡易に形成することができる。
【0012】
(2)(1)のドア用配線モジュールにおいて、前記仮取付状態において、前記第1取付部は前記第1端部を前記第2端部が前記第2取付部の上方の遊離位置に向けて延びることができる姿勢に支持し、かつ、前記サービスホールカバーに片持ち状に支持された前記配線カバーは前記第2端部が前記第2取付部の上方に遊離した状態を保つことができる剛性を有してもよい。これにより、第1取付部、第2取付部及び配線カバーの構成を簡易にすることができる。
【0013】
(3)(2)のドア用配線モジュールにおいて、前記第2取付部の取付面が、前記第1取付部の取付面を延長した仮想平面よりも前記溝の高さ方向に沿って前記溝の底部の近くに位置してもよい。これにより、平板状の配線カバーがサービスホールカバーに片持ち状に支持された状態で、第2端部が第2取付部から上方に遊離した状態となることができる。
【0014】
(4)(2)又は(3)のドア用配線モジュールにおいて、前記第1取付部の取付面が、前記溝から離れるにつれて前記溝の底部からの高さが低くなる傾斜面とされてもよい。これにより、配線カバーの第2端部が遊離位置にある状態で、配線カバーの第2端部と第2取付部とのスペースを大きくしやすくなる。
【0015】
(5)(4)のドア用配線モジュールにおいて、前記第2取付部の取付面が、前記溝から離れるにつれて前記溝の底部からの高さが高くなる傾斜面とされてもよい。これにより、配線カバーの第2端部が第2取付部に取付けられた状態で、配線カバーに応力集中が生じにくくなる。
【0016】
(6)(1)から(5)のいずれか1つのドア用配線モジュールにおいて、前記溝の底部のうち、前記溝の幅方向に沿って前記第1取付部側の部分が前記第1取付部側に行くにつれて深さが深くなる傾斜面とされてもよい。これにより、溝に収容された配線部材が配線カバーの第1端部と第1取付部との間に噛み込まれることが抑制される。
【0017】
(7)(1)から(6)のいずれか1つのドア用配線モジュールにおいて、前記溝の長手方向に沿って間隔をあけた第1箇所及び第2箇所においてそれぞれ前記配線カバーが設けられ、前記第1箇所における前記配線カバーの前記第2端部と、前記第2箇所における前記配線カバーの前記第2端部とは、前記溝に対して互いに同じ側に設けられてもよい。これにより、第2端部と第2取付部とのスペースを通じて配線部材が溝に収められる際、第1箇所及び第2箇所において溝に対して同じ側から配線部材が収められることができ、配線部材が簡易に溝に収容可能となる。
【0018】
(8)(1)から(6)のいずれか1つのドア用配線モジュールにおいて、前記溝の長手方向に沿って間隔をあけた第1箇所及び第2箇所においてそれぞれ前記配線カバーが設けられ、前記第1箇所における前記配線カバーの前記第2端部と、前記第2箇所における前記配線カバーの前記第2端部とは、前記溝に対して互いに反対側に設けられてもよい。これにより、配線部材の収容後に配線カバーの第2端部が第2取付部に取付けられる際、第1箇所及び第2箇所において溝に対して反対側が閉じられているため、配線部材が溝から抜けにくい。
【0019】
(9)(1)から(8)のいずれか1つのドア用配線モジュールにおいて、複数の前記配線部材が、互いにフリーな状態で前記溝内に収まっていてもよい。これにより、互いにフリーな状態にある複数の配線部材が溝内に収められることによって、まとめられた状態となることができる。
【0020】
(10)また、本開示の複合サービスホールカバーは、一方主面に溝が形成されたサービスホールカバーと、第1端部及び第2端部を有する配線カバーと、を備え、前記サービスホールカバーの前記一方主面のうち前記溝を挟んだ両側に第1取付部及び第2取付部が設けられ、前記配線カバーにおいて、前記第1端部が前記第1取付部に取付けられ、前記第1端部と前記第2端部との間の中間部が前記溝の開口を覆い、前記第2端部は前記第2取付部との間にスペースをあけている、複合サービスホールカバーである。配線カバーにおいて、第1端部が第1取付部に取付けられ、第1端部と第2端部との間の中間部が溝の開口を覆い、第2端部は第2取付部との間にスペースをあけている。これにより、配線カバーの第2端部と第2取付部とのスペースを通じて配線部材が溝内に簡易に収容されることができる。また、配線カバーの第1端部が第1取付部に取付けられていることによって、配線部材の収容後に配線カバーの第2端部が第2取付部に取付けられるまでの間に、配線部材が溝から抜けにくい。以上より、溝及び配線カバーによる配線部材の保持構造を簡易に形成することができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のドア用配線モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかるドア用配線モジュールについて説明する。図1は、実施形態1にかかるドア用配線モジュール30及びこれが組み込まれるドアパネル20を示す平面図である。図2図1のII-II線に沿った断面図である。
【0023】
まず、車両におけるドア10の概要について説明する。ドア10は、全体として偏平な形状に形成されており、車両において車室内と車室外とを仕切るように開閉可能に設けられる部分である。ドア10は、運転席側ドア、助手席側ドア、後部座席用ドアである場合等が想定される。ドア10は、ドアパネル20と、意匠トリムと、ドア用配線モジュール30と、を備える。
【0024】
ドアパネル20は、アウターパネル21と、インナーパネル22とを備える。アウターパネル21は、ドア10のうち車両外側に面する部分に設けられ、ボディ本体と共に車両の外観を構成する部分である。インナーパネル22は、アウターパネル21の車室側に設けられている。インナーパネル22は、側板部23と主板部25とを有する。側板部23はアウターパネル21から車室内側に突出する部分である。主板部25は側板部23に連なり、アウターパネル21と間隔をあけつつ、アウターパネル21に沿って広がる部分である。アウターパネル21と主板部25と側板部23との間には、空間が形成される。当該空間には、ドア10に設けられるドア機器が配置されたり、窓ガラスが収容されたりする。インナーパネル22の主板部25には、サービスホール26が設けられている。作業者は、インナーパネル22の外側からサービスホール26を通じてアウターパネル21とインナーパネル22との間の空間にアクセスできる。
【0025】
意匠トリムは、ドア10のうち車室内側に面する部分に設けられ、車両の内観を構成する部分である。意匠トリムには例えば、インナーハンドル、車載機器の操作部等が取付けられる。ドア用配線モジュール30のうちドア10に組み込まれる部分は、意匠トリムと、アウターパネル21との間に配置される。
【0026】
ドア用配線モジュール30は、サービスホールカバー40と、配線部材50と、配線カバー60とを備える。
【0027】
サービスホールカバー40は、サービスホール26を覆う。サービスホールカバー40は、サービスホール26と同じ程度又はサービスホール26よりも大きく広がる偏平な樹脂部品である。サービスホールカバー40は、当該サービスホール26を塞ぐように取付けられる。サービスホールカバー40がインナーパネル22のサービスホール26に取付けられた状態で、ネジ止、係止構造、接着等によって当該取付状態が保持される。例えば、サービスホールカバー40の周辺部のうちインナーパネル22に重なる部分がインナーパネル22に接着されれば、それらの間の隙間を可及的に塞ぐことができる。
【0028】
サービスホールカバー40は、アウターパネル21とインナーパネル22との間の空間の車室内側を仕切る。当該空間には、雨水環境に曝される窓ガラスが収容され、また、当該空間の上方には、窓ガラスが出入りするスリット状の開口が形成されている。このため、当該空間は、水が浸入する可能性がある空間である。また、当該空間は、外部空間と繋がる可能性のある空間であるため、外部からの風切り音等が侵入する恐れがある空間でもある。そこで、サービスホールカバー40は、インナーパネル22と共に、車室空間と外部空間とをより完全に仕切る部材として設けられているとよい。より具体的には、サービスホールカバー40は、カバー本体部41と枠部42とフランジ部43とを含む。例えばサービスホールカバー40は、ポリプロピレン(PP)などの樹脂によって金型成型された部品であり、曲げ困難な剛性を有する。
【0029】
カバー本体部41は、サービスホール26よりもわずかに小さい程度の大きさで板状に広がる部分である。枠部42は、カバー本体部41の外縁からカバー本体部41の一方主面41a側(車室内側)に突出するように形成されている。フランジ部43は枠部42の外縁から外周側に張り出すように形成されている。枠部42は、フランジ部43からカバー本体部41に向けて順次高さ寸法が低くなる傾斜面状に形成されているとよい。サービスホールカバー40がインナーパネル22のサービスホール26の所定位置に取付けられた状態で、カバー本体部41がサービスホール26の内側(主板部25よりもアウターパネル21側)に配設され、フランジ部43がサービスホール26の外側(主板部25よりも車室内側)に配設され、枠部42が両者をつないでいる。これにより、カバー本体部41の開口縁部とサービスホール26の周縁部との間が、枠部42及びフランジ部43によって塞がれる。
【0030】
サービスホールカバー40の主面(カバー本体部41の主面41a)には、溝44が形成されている。ここでは溝44は、サービスホールカバー40のうち車室内側を向く主面41aに形成されている。溝44は、サービスホールカバー40のうち車室外側を向く主面41bに形成されていてもよい。溝44は主面41a、41bの両方に形成されていてもよい。
【0031】
溝44は、複数の配線部材50がまとめて収まることが可能な大きさに形成されている。溝44は偏平に形成されて、深さ寸法よりも幅寸法が大きくなっている。溝44の深さ寸法は配線部材50の直径(複数の配線部材50に太さの異なるものが含まれる場合、最大の配線部材50の直径)よりも大きいとよい。溝44の深さ寸法は配線部材50が2段以上に積み重なって収まることが可能に、配線部材50の直径(複数の配線部材50に太さの異なるものが含まれる場合、最小の配線部材50の直径)の2倍よりも大きいとよい。溝44としては、複数の配線部材50が分かれて収まることが可能な大きさの溝が複数並列状に形成されていてもよい。例えば、配線部材50が一本ずつ収まる大きさの溝が複数並列状に形成されていてもよい。
【0032】
溝44の開口部は、配線カバー60によって覆われる。サービスホールカバー40には、配線カバー60が取り付けられる第1取付部45及び第2取付部46が設けられる。第1取付部45及び第2取付部46は、主面41aのうち溝44を挟んだ両側に分かれて設けられる。第1取付部45及び第2取付部46について詳しくは後述する。
【0033】
溝44が形成される主面41aとは反対側の主面41bにおいて、溝44の反対側に位置する部分は、凸条部47とされる。これにより、溝44が形成された部分の厚みが小さくなることが抑制されている。もっとも、主面41bにおいて、溝44の反対側に位置する部分は、凸条部47とされていなくてもよい。主面41bにおいて、溝44の反対側に位置する部分とその周囲の部分とが平坦であってもよい。
【0034】
サービスホールカバー40には配線部材50を通す挿通孔48が形成されている。配線部材50は当該挿通孔48を通じてサービスホールカバー40を貫通する。挿通孔48は、サービスホールカバー40のうちカバー本体部41又は枠部42に形成されると良い。ここでは挿通孔48は枠部42に形成されている。特にここでは挿通孔48は枠部42のうち溝44の端部の位置に形成されている。これにより、溝44に収まる配線部材50が挿通孔48を通じてサービスホールカバー40を貫通できる。
【0035】
配線部材50は、ドア機器と車体に設けられた車体機器とを接続してドア機器に電力を供給したり、ドア機器と車体機器との間で信号を送ったりする。配線部材50は、電線52を含んでもよい。電線52としては、導体で構成された芯線の周囲に被覆層が形成された被覆電線を用いることができる。芯線は、単芯線であってもよいし、撚り合せ線であってもよい。電線52の種類は特に限定されるものではなく、単線、複合電線などが含まれてもよい。単線は、導電路が一つの電線である。複合電線は、導電路が複数の電線である。複合電線としては、例えば、ツイスト線又は複合ケーブルなどのように、単線が複数組み合わさって形成されたものであってもよい。配線部材50は、光ファイバーケーブルなどを含んでもよい。配線部材50の数は、ドア機器の数などに応じて設定される。通常、配線部材50は、複数設けられる。
【0036】
複数の配線部材50の経路はドア10の仕様に応じて適宜設定される。例えば、回転軸が車両の高さ方向に沿う一般的なヒンジドアの場合、ヒンジドアに組付けられる複数の配線部材50は、通常、ドアヒンジに近い位置で車体と接続されており、ドアヒンジ側からドアヒンジとは反対側に向う際に分岐して各種ドア機器に接続される。
【0037】
より詳細には、複数の配線部材50の一端部は、束ねられた状態で、ドア10の一部分(図1に示す例ではドアヒンジ側の側板部23)を経由して当該ドア10から延出し、車体内に導かれ、共通コネクタC1等を介して車体機器、又は車体機器から延びる配線部材の端部に設けられた中継コネクタに接続されることが想定される。かかる車体機器は特に限定されるものではないが、例えば、電子制御ユニット(ECU)又はバッテリなどが想定される。複数の配線部材50のうちドア10と車体との間に延びる部分には、通常、グロメットGが取付けられる。図1に示す例では、グロメットGは側板部23に形成された貫通孔に挿入係止される、いわゆる貫通タイプのグロメットである。これにより、当該貫通孔を通じた水の浸入が抑制される。グロメットGは側板部23及び主板部25の交わる縁部に形成された凹部に嵌る、いわゆる貫通レスタイプのグロメットであってもよい。複数の配線部材50は、一端部から他端部に向かう途中でグロメットGから延び出て、分岐しつつ各接続先となるドア機器に向けて延びる。複数の配線部材50の他端部には、接続先となるドア機器に応じたコネクタC2、C3が取付けられている。各コネクタC2、C3は、例えばドア機器側のコネクタC4、C5と接続される。図1及び図2では、2つのドア機器側のコネクタC4、C5と、コネクタC2、C3を介してコネクタC4、C5に接続される電線52A、52Bが例示されている。コネクタC4は例えばドア10をロック及びアンロックするためのアクチュエータ用のコネクタである。コネクタC5は例えばフットライト用のコネクタである。
【0038】
図1及び図2では、ドア用配線モジュール30において、コネクタC1-C3とこれに接続される電線52A、52B以外のコネクタ及び配線部材の記載は省略されている。もちろん、ドア用配線モジュール30は、コネクタC1-C3以外のコネクタを含んでいてもよいし、電線52A、52B以外の配線部材を含んでいてもよい。
【0039】
電線52A、52Bは、グロメットGが設けられた部分からコネクタC2、C3に向かう途中に、挿通孔48を通ってサービスホールカバー40を貫通して、サービスホールカバー40よりも車室内側に移る。電線52A、52Bは、グロメットGが設けられた部分からコネクタC2、C3に向かう途中に、インナーパネル22のうちサービスホール26以外の孔を貫通して、インナーパネル22よりも車室内側に移ってもよい。
【0040】
電線52のうちグロメットGとサービスホールカバー40との間を延びる区間は、結束部材によって束ねられた束線部分とされてもよい。図1に示す例では、複数の電線52は粘着テープTがらせん状に巻かれて結束されている。結束部材は、結束バンド、柔軟シート又はコルゲートチューブなどであってもよい。結束部材は、複数の電線52を曲げ可能に結束していると良い。
【0041】
電線52のうちサービスホールカバー40に沿って延びる区間は、サービスホールカバー40よりも車室内側に配置される。また電線52のうちサービスホールカバー40に沿って延びる区間は、サービスホールカバー40に経路規制される。電線52が経路規制されるとは、電線52の経路が所定の経路に維持されることを言う。
【0042】
電線52のうちサービスホールカバー40に沿って延びる区間が、溝44に収容されている。溝44は、サービスホールカバー40に対する電線52の経路に沿って形成されている。ここでは、溝44として、3つの溝44A、44B、44Cが形成されている。溝44Aは、サービスホールカバー40の前部から後部に向けて車両前後方向に沿って形成されている。サービスホールカバー40を車室側から観察すると、溝44Aは、車両前後方向に沿って延在する直線状に形成されている。溝44B、44Cは、溝44Aの端部から分岐する。溝44Bは、車両前後方向に沿って延在する直線状に形成されている。溝44Cは、車両高さ方向に沿って延在する直線状に形成されている。各溝44はカバー本体の主面41a上において直線状に延びている必要はなく、カバー本体の主面41a上において曲がって延びていてもよい。
【0043】
電線52A、52Bは、サービスホールカバー40上の分岐部において、1つの幹線部から2つの枝線部に分岐する。幹線部は電線52A、52Bが並行する部分である。2つの枝線部は電線52A、52Bが単独で延びる部分である。幹線部が溝44Aに収まり、2つの枝線部が溝44B、44Cにそれぞれ収まる。溝44A、44Bは、ドア10の後部に組込まれるドア機器、例えば、ドアロック及びアンロック用アクチュエータに接続される電線52Aを保持するのに用いることができる。溝44A、44Cは、ドア10の下部に組込まれるドア機器、例えば、フットライトに接続される電線52Bを保持するのに用いることができる。断面図における各溝44の大きさは収容する配線部材50に応じた大きさに形成されていてもよい。幹線部を収容する溝44Aの断面図における大きさは、枝線部を収容する溝44B、44Cの断面図における大きさよりも大きく形成されてもよい。
【0044】
複数の電線52は、互いにフリーな状態で溝44内に収まる。互いにフリーな状態とは、複数の電線52が結束部材で結束されていない状態を言う。複数の電線52は、溝44内において、1本1本がばらけた状態にある。複数の電線52のうちサービスホールカバー40上に配置される区間は、溝44に収容されると共に配線カバー60に覆われることによって結束された状態となっている。複数の電線52は、結束部材によって結束された状態で溝44内に収まっていてもよい。
【0045】
配線カバー60は、サービスホールカバー40に固定される。配線カバー60は、溝44の開口を塞ぐ。配線カバー60は、例えば板状に形成されて、溝44の上部に溝44を跨ぐように配置される。配線カバー60のうち溝44の両側にそれぞれ突出する部分が第1端部61及び第2端部62である。配線カバー60のうち第1端部61及び第2端部62をつなぐ部分であって、溝44の上方を覆う部分が中間部63である。第1端部61は第1取付部45に取付けられると共に、第2端部62は第2取付部46に取付けられている。
【0046】
図1に示す例では、各溝44の長手方向に沿った一端部及び他端部の位置に配線カバー60が設けられる。もっとも、サービスホールカバー40において、配線カバー60が設けられる位置は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、短尺な溝に対して、配線カバー60が1箇所のみに設けられていてもよい。また例えば、長尺な溝に対して、配線カバー60が溝の長手方向に沿った一端部及び他端部の位置に加えて、その間の位置にも設けられていてもよい。
【0047】
<配線部材の保持構造>
図1及び図2に加えて図3から図5を参照しつつ、溝44及び配線カバー60によって配線部材50が保持されて保持構造が形成される様子について説明する。図3及び図4は溝44に配線部材50が収容される様子を示す模式図である。図5は溝44に配線部材50が収容された後に、配線カバー60の第2端部62が第2取付部46に取付けられる様子を示す模式図である。
【0048】
図3及び図4に示すように、サービスホールカバー40及び配線カバー60は、第1端部61が第1取付部45に取付けられると共に第2端部62が第2取付部46に取付けられていない状態で、第2端部62と第2取付部46との間にスペースがあいて遊離した状態となることが可能に設けられる。本開示において、第1端部61が第1取付部45に取付けられると共に第2端部62が第2取付部46に取付けられていない状態を仮取付状態と呼び、第1端部61が第1取付部45に取付けられると共に第2端部62が第2取付部46に取付けられている状態を本取付状態と呼ぶことがある。仮取付状態下で、配線部材50が溝44に収容された後に、第2端部62が第2取付部46に取付けられて本取付状態とされる。また本例では、仮取付状態から本取付状態になる際、配線カバー60が変形することが想定される。以下では、本取付状態となる前の配線カバー60について、本取付状態における配線カバー60と区別が必要な場合、符号Bを追加して、配線カバー60Bと称することがある。なお、図4において、2つの配線カバー60Bの一方は仮取付状態にある。他方は仮取付状態になる前の状態を示している。他方の配線カバー60Bは、一方の配線カバー60Bと同様の仮取付状態となる。
【0049】
仮取付状態において、配線カバー60Bの延びる向き及び剛性により、第2端部62が第2取付部46の上方に遊離した状態が作られる。より詳細には、仮取付状態において、第1取付部45は第1端部61を第2端部62が第2取付部46の上方の遊離位置に向けて延びることができる姿勢に支持する。このとき、配線カバー60Bは、第1端部61が第1取付部45に取付けられることによってサービスホールカバー40に片持ち状に支持された状態となる。このように片持ち状に支持された配線カバー60Bは、自身の剛性によって、第2端部62が第2取付部46の上方に遊離した状態を保つ。従って、サービスホールカバー40に片持ち状に支持された配線カバー60Bは第2端部62が第2取付部46の上方に遊離した状態を保つことができる剛性を有する。
【0050】
第2取付部46の取付面46aは、平坦である。第2取付部46の取付面46aが、第1取付部45の取付面45aを第2取付部46側に延長した仮想平面IPよりも溝44の高さ方向に沿って溝44の底部の近くに位置する。これにより、配線カバー60Bとして図4に示すような両面が平坦な平板状部材が用いられても、仮取付状態において、第2端部62と第2取付部46との間にスペースが生じる。
【0051】
第1取付部45の取付面45aは、溝44から離れるにつれて溝44の底部からの高さが低くなる傾斜面とされる。この取付面45aに平板状の配線カバー60Bの第1端部61が取付けられることによって、配線カバー60Bの中間部63及び第2端部62が斜め上方に向けて延びる。これにより、平板状の配線カバー60Bが用いられても、仮取付状態において、第2端部62と第2取付部46との間にスペースが大きくなる。
【0052】
取付面45aとしての傾斜面が、溝44の長手方向に沿って部分的に設けられることによって、サービスホールカバー40において、第1取付部45の位置が認識容易となる。さらに、取付面45aに対して溝44の長手方向に沿った両側に取付面45aと交差する規制面が設けられる。これにより、第1取付部45と第1端部61との融着時などに、溝44の長手方向に沿って配線カバー60Bが位置ずれすることが抑制される。溝44の長手方向に沿った傾斜面の寸法は、例えば、配線カバー60Bの幅寸法と同じであってもよいし、それより大きく設定されていてもよい。もっとも、取付面45aとしての傾斜面が、溝44の長手方向に沿って部分的に設けられる必要はなく、溝44の側方部分が溝44の長手方向に沿って全体にわたって傾斜面とされてもよい。
【0053】
第1取付部45の取付面45aのうち溝44側の縁部とは反対側の縁部に、当該取付面45aと交差する規制面が設けられる。配線カバー60Bの第1端部61の先端が規制面に当たる。これにより、溝44の幅方向に沿った配線カバー60Bの位置が規制される。取付面45aに対して、三方に規制面が設けられる。別の見方をすると、第1取付部45は規制面にかこまれた部分が部分的に凹んだ凹部であり、凹部の底面が取付面45aとされる。
【0054】
ここでは、第1端部61と第1取付部45との取付構造は、融着であるものとして説明される。この場合、サービスホールカバー40と配線カバー60Bとは、同系の樹脂製であることが好ましい。例えば、サービスホールカバー40と配線カバー60Bとは、PPを主成分として形成されることができる。もっとも、第1端部61と第1取付部45との取付構造は融着である必要はなく、適宜設定可能である。例えば、第1端部61と第1取付部45との取付構造は、間に配置される接着部材を介した接着であってもよい。また例えば、第1端部61と第1取付部45との取付構造は、一方に形成された凸条部47が他方に形成された凹部に嵌る係止構造であってもよい。
【0055】
取付面45aのうち溝44側の縁部が第1端部61と融着されていることが好ましい。これにより、電線52の収容後に仮取付状態から本取付状態となる際、取付面45aと第1端部61との間に電線52が噛み込まれることが抑制される。
【0056】
溝44の長手方向に沿って間隔をあけた第1箇所及び第2箇所においてそれぞれ配線カバー60Bが設けられる。第1箇所における配線カバー60Bの第2端部62と、第2箇所における配線カバー60Bの第2端部62とは、溝44に対して互いに同じ側に設けられる。このため、図4に示すように、第1箇所及び第2箇所において、溝44に対して同じ側から配線部材50が溝44に向けて移動することができる。
【0057】
配線部材50が溝44に収容された後に、図5に示すように、配線カバー60Bに外力Fが加えられて、第2端部62が第2取付部46への取付位置に移動する。外力Fは作業者が直接押したり、融着機でプレスしたりする力であることが想定される。このとき、外力Fによって配線カバー60Bのうち第2端部62を含む部分が第1端部61に対して曲げられる。さらに、外力Fによって配線カバー60Bが曲がることによって、配線カバー60Bに応力が生じる。
【0058】
仮取付状態における第1端部61と第1取付部45との取付強度は、仮取付状態において第2端部62と第2取付部46とを取付けるために配線カバー60Bが外力Fによって曲げられたときの配線カバー60Bの応力に耐えられる強度を有する。より詳細には、外力Fによって配線カバー60Bが曲げられることによって配線カバー60Bに生じた応力が、第1端部61と第1取付部45との取付状態を解除しようとする。仮取付状態における第1端部61と第1取付部45との取付強度は、当該応力がかかった状態で、取付状態を保つことができる強度を有する。
【0059】
第2端部62が第2取付部46への取付位置に移動した状態で、第2端部62が第2取付部46に取付けられて本取付状態とされる。第2端部62と第2取付部46との取付構造も適宜設定可能であり、例えば、第1端部61と第1取付部45との取付構造で説明した上記取付構造の一つが採用されてもよい。第2端部62と第2取付部46との取付構造は、第1端部61と第1取付部45との取付構造と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
仮取付状態で外力Fによって曲がった配線カバー60Bは、本取付状態となって外力Fが除去された後も、曲がった状態に保たれる。従って、本取付状態において、配線カバー60は第1端部61と第2端部62との間で曲がっている。本取付状態において、配線カバー60には当該曲げによる応力がかかっている。配線カバー60は応力がかかった状態でサービスホールカバー40に取付けられる。
【0061】
本取付状態における第1端部61と第1取付部45との取付強度及び第2端部62と第2取付部46との取付強度は、本取付状態における配線カバー60に生じる応力に耐えられる強度を有する。より詳細には、本取付状態の配線カバー60におけるこの曲げ変形は、第2端部62が第2取付部46の取付面46aに突き当てられることによって生じる変形である。このため、配線カバー60の曲げ変形は、弾性変形であるか、塑性変形としても永久ひずみが小さい塑性変形である。例えば、永久ひずみは、仮取付状態における第2端部62と第2取付部46との間の当初のスペースより小さいことが想定される。このため、配線カバー60には、この曲げ変形に伴う応力が残る。かかる応力が、第1端部61と第1取付部45との取付状態及び第2端部62と第2取付部46の取付状態を解除しようとする。第1端部61と第1取付部45との取付強度及び第2端部62と第2取付部46との取付強度は、当該応力がかかった状態で、取付状態を保つことができる強度を有する。
【0062】
本取付状態において配線カバー60に曲げ変形に伴う応力が残る場合、第1端部61と第1取付部45との取付状態及び第2端部62と第2取付部46の取付状態のいずれかが解除されると、配線カバー60は当該応力を解放しようとする。より詳細には、解除された部分において、配線カバー60の端部がサービスホールカバー40の取付部とスペースをあけて遊離するように、配線カバー60が変形する。
【0063】
本取付状態で、配線カバー60には曲げ変形に伴う応力が小さくされてもよい。第1端部61と第1取付部45との取付状態及び第2端部62と第2取付部46の取付状態のいずれかが解除された場合、解除された部分の端部と取付部とは接した状態を維持可能であってもよい。例えば、配線カバー60の曲げ変形が、永久ひずみが大きい塑性変形であることによって、配線カバー60には曲げ変形に伴う応力が小さくされてもよい。この場合、永久ひずみが仮取付状態の第2端部62と第2取付部46との当初のスペースと同じかそれより大きいことが想定される。また例えば、配線カバー60が加熱されつつ本取付状態とされて、配線カバー60には曲げ変形に伴う応力が小さくされてもよい。
【0064】
<実施形態1の効果等>
以上のように構成されたドア用配線モジュール30によると、配線カバー60及びサービスホールカバー40は、仮取付状態で、第2端部62と第2取付部46との間にスペースがあいて遊離した状態となることが可能に設けられる。これにより、仮取付状態で、第2端部62と第2取付部46とのスペースを通じて配線部材50が溝44内に簡易に収容されることができる。また、仮取付状態で第1端部61が第1取付部45に取付けられていることによって、配線部材50が溝44に収容された後に第2端部62が第2取付部46に取付けられるまでの間に、配線部材50が溝44から抜けにくい。以上より、溝44及び配線カバー60による配線部材50の保持構造を簡易に形成することができる。
【0065】
また、仮取付状態において、第1取付部45は第1端部61を第2端部62が第2取付部46の上方の遊離位置に向けて延びることができる姿勢に支持し、かつ、サービスホールカバー40に片持ち状に支持された配線カバー60Bは第2端部62が第2取付部46の上方に遊離した状態を保つことができる剛性を有する。これにより、第1取付部45、第2取付部46及び配線カバー60Bの構成を簡易にすることができる。
【0066】
また、第2取付部46の取付面46aが、第1取付部45の取付面45aを延長した仮想平面IPよりも溝44の高さ方向に沿って溝44の底部の近くに位置する。これにより、平板状の配線カバー60Bがサービスホールカバー40に片持ち状に支持された状態で、第2端部62が第2取付部46から上方に遊離した状態となることができる。
【0067】
また、第1取付部45の取付面45aが、溝44から離れるにつれて溝44の底部からの高さが低くなる傾斜面とされる。これにより、配線カバー60Bの第2端部62が遊離位置にある状態で、配線カバー60Bの第2端部62と第2取付部46とのスペースを大きくしやすくなる。またこの傾斜面が、溝44の長手方向に沿って配線カバー60Bが設けられる部分に応じた位置に部分的に設けられると、サービスホールカバー40において、配線カバー60Bの取付けられる位置が分かりやすくなる。
【0068】
また、溝44の長手方向に沿って間隔をあけた第1箇所及び第2箇所においてそれぞれ配線カバー60が設けられ、第1箇所における配線カバー60の第2端部62と、第2箇所における配線カバー60の第2端部62とは、溝44に対して互いに同じ側に設けられる。これにより、第2端部62と第2取付部46とのスペースを通じて配線部材50が溝44に収められる際、第1箇所及び第2箇所において溝44に対して同じ側から配線部材50が収められることができ、配線部材50が簡易に溝44に収容可能となる。
【0069】
また、複数の電線52が互いにフリーな状態で溝44内に収まる。これにより、互いにフリーな状態にある複数の電線52が溝44内に収められることによって、まとめられた状態となることができる。ここで、複数の電線52が互いにフリーな状態だと、各電線52が任意の位置で局所的に曲がり得る。このため、配線カバー60の両端を閉じる前に複数の電線52が溝44内に収まった状態を保つことが難しい。この場合でも、本例では、仮固定状態で第1端部61が第1取付部45に取付けられ、第2端部62が第2取付部46の上方に遊離し、中間部63が溝44を覆っていることによって、配線カバー60の取付位置において、配線カバー60の両端を閉じる前に複数の電線52が溝44内に収まった状態を保つことが容易となる。
【0070】
また、本開示において、図3から図5に示すように、配線カバー60付きのサービスホールカバー40であって、仮取付状態のものは、複合サービスホールカバー100ととらえることができる。複合サービスホールカバー100は、主面41aに溝44が形成されたサービスホールカバー40と、第1端部61及び第2端部62を有する配線カバー60と、を備える。サービスホールカバー40の主面41aのうち溝44を挟んだ両側に第1取付部45及び第2取付部46が設けられる。配線カバー60において、第1端部61が第1取付部45に取付けられ、第1端部61と第2端部62との間の中間部63が溝44の開口を覆い、第2端部62は第2取付部46との間にスペースをあけている。
【0071】
このように構成された複合サービスホールカバー100によると、配線カバー60において、第1端部61が第1取付部45に取付けられ、第1端部61と第2端部62との間の中間部63が溝44の開口を覆い、第2端部62は第2取付部46との間にスペースをあけている。これにより、配線カバー60の第2端部62と第2取付部46とのスペースを通じて配線部材50が溝44内に簡易に収容されることができる。また、配線カバー60の第1端部61が第1取付部45に取付けられていることによって、配線部材50の収容後に配線カバー60の第2端部62が第2取付部46に取付けられるまでの間に、配線部材50が溝44から抜けにくい。以上より、溝44及び配線カバー60による配線部材50の保持構造を簡易に形成することができる。
【0072】
[変形例]
図6はドア用配線モジュール30の第1変形例を示す断面図である。図7は複合サービスホールカバー100の第1変形例を示す断面図である。第1変形例にかかる複合サービスホールカバー200は、第1変形例にかかるドア用配線モジュール130に用いられる。
【0073】
本例でも、溝44の長手方向に沿って間隔をあけた第1箇所及び第2箇所においてそれぞれ配線カバー60が設けられる点では上記例と同じである。本例では、第1箇所における配線カバー60の第2端部62と、第2箇所における配線カバー60の第2端部62とは、溝44に対して互いに反対側に設けられる点で上記例と異なる。このように構成されたドア用配線モジュール130及び複合サービスホールカバー200によると、配線部材50の収容後に配線カバー60の第2端部62が第2取付部46に取付けられる際、第1箇所及び第2箇所において溝44に対して互いに反対側が閉じられているため、配線部材50が溝44から抜けにくい。
【0074】
図8はドア用配線モジュール30の第2変形例を示す断面図である。図9は複合サービスホールカバー100の第2変形例を示す断面図である。第2変形例にかかる複合サービスホールカバー300は、第2変形例にかかるドア用配線モジュール230に用いられる。
【0075】
本例では、第2取付部246の取付面246aが、溝244から離れるにつれて溝244の底部からの高さが高くなる傾斜面とされる。これにより、本取付状態で、配線カバー60に応力集中が生じにくくなる。第1取付部45の取付面45aの傾斜度と、第2取付部246の取付面246aの傾斜度とは同じであってもよいし、いずれか一方がいずれか他方よりも大きくてもよい。
【0076】
取付面246aとしての傾斜面は、取付面45aとしての傾斜面と同様に、溝244の長手方向に沿って部分的に設けられていてもよい。取付面246aとしての傾斜面は、溝244の長手方向に沿って全体に設けられていてもよい。
【0077】
ここでは溝244の幅方向において、取付面246aとしての傾斜面の寸法は、第2端部62の長さ寸法と同程度に設定されている。取付面246aとしての傾斜面の側方に当該傾斜面とは逆向きに傾斜するガイド用傾斜面が設けられている。これにより、図9に示すように、第2端部62と第2取付部246との間のスペースを通じて配線部材50を溝244に収める際、配線部材50が第2端部62と第2取付部246との間のスペースに案内されやすくなる。また、サービスホールカバー40の厚みが増す領域が大きくなることを抑制できる。配線部材50を第2端部62と第2取付部246との間にガイドするとの観点では、取付面246aとしての傾斜面の頂部の側方に当該頂部と同じ高さの平坦面が広がっていてもよい。また、取付面246aとしての傾斜面が、配線部材50を載せられる程度に第2端部62の長さより長くされていてもよい。
【0078】
また本例では、溝244の底部のうち、溝244の幅方向に沿って第1取付部45側の部分が第1取付部45側に行くにつれて深さが深くなる傾斜面とされる。これにより、溝244のうち第1取付部45側に収容された配線部材50が溝244からあふれにくくなり、配線カバー60の第1端部61と第1取付部45との間に噛み込まれることが抑制される。ここでは、溝244の底部のうち幅方向に沿った中間部63よりも第1取付部45側の部分が傾斜面とされている。溝244の底部のうち幅方向に沿った全体が傾斜面とされてもよい。第1取付部45の取付面45aの傾斜度と、溝244の底部の傾斜度とは同じであってもよいし、いずれか一方がいずれか他方よりも大きくてもよい。
【0079】
図10はドア用配線モジュール30の第3変形例を示す断面図である。図11は複合サービスホールカバー100の第3変形例を示す断面図である。第3変形例にかかる複合サービスホールカバー400は、第3変形例にかかるドア用配線モジュール330に用いられる。
【0080】
本例では、第1端部61と第1取付部345との取付構造、及び第2端部62と第2取付部346との取付構造が融着ではなく、凸部45b、46b及び凹部61a、62aを用いた係止構造である。ここでは、第1取付部345及び第2取付部346にそれぞれ凸部45b、46bが設けられる。第1取付部345の凸部45bは取付面45aから突出し、第2取付部346の凸部46bは取付面246aから突出する。第1端部61及び第2端部62にそれぞれ凹部61a、62aとして貫通孔が形成される。凸部45bが凹部61aに挿入係止されて第1端部61と第1取付部345とが取付けられる。凸部46bが凹部62aに挿入係止されて第2端部62と第2取付部346とが取付けられる。
【0081】
仮取付状態において、第2端部62の先端と第2取付部346の取付面246aとが間にスペースをあけて遊離していればよい。凸部46bと第2端部62の先端より中間側部分とが接していてもよい。この場合、図11の二点鎖線に示されるように、配線カバー360Bの第2端部62が凸部46bとの間にスペースをあけて開くように配線カバー360Bが変形可能であるとよい。もちろん、配線カバーは、仮取付状態の初期状態において、第2端部62が凸部46bと間にスペースをあけて遊離していてもよい。
【0082】
図12はドア用配線モジュール30の第4変形例を示す断面図である。図13は複合サービスホールカバー100の第4変形例を示す断面図である。第4変形例にかかる複合サービスホールカバー500は、第4変形例にかかるドア用配線モジュール430に用いられる。
【0083】
本例では、仮取付状態時の第2端部62と第2取付部46とがスペースをあけて遊離した状態が配線カバー460Bの形状によって作られている。第2取付部46の取付面46aの高さは、第1取付部445の取付面445aを第2取付部46側に延長した仮想平面IPの高さと一致する。また取付面445a、46aはいずれも平坦面である。配線カバー460Bのうち、第1端部61から第2端部62の遊離位置に向かう途中に曲げ部が設けられる。ここでは第1端部61と中間部63との間に曲げ部64が設けられている。本取付状態における配線カバー460にも当該曲げ部64の痕跡64aが残る。すなわち、痕跡64aの部分において、配線カバー460が平坦ではなく、歪んでいる。また痕跡64aとして折目が残っていることも考えられる。
【0084】
図14は複合サービスホールカバー100の第5変形例を示す断面図である。
【0085】
第5変形例にかかる複合サービスホールカバー600では、配線カバー560Bにおいて、第2端部562を含む部分がV字状に曲っている。第2端部562の先端は第2取付部46との間にスペースをあけて遊離している。配線カバー560Bは第2端部562の先端からV字の底の部分に向けて徐々に第2取付部46に接近していく。この場合、図14の二点鎖線に示されるように、V字の底の部分が第2取付部46との間にスペースをあけて開くように配線カバー60Bが変形可能であるとよい。配線カバー560Bにおいて、V字の底の部分が第2取付部46と融着されて、本取付状態とされてもよい。配線カバー560Bにおいて、V字の底の部分よりも第2端部562の先端側の部分が第2取付部46の取付面46aと接するように曲げられつつ第2取付部46の取付面46aと融着されて、本取付状態とされてもよい。
【0086】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 ドア
20 ドアパネル
21 アウターパネル
22 インナーパネル
23 側板部
25 主板部
26 サービスホール
30、130、230、330、430 ドア用配線モジュール
40 サービスホールカバー
41 カバー本体部
41a、41b 主面
42 枠部
43 フランジ部
44、44A、44B、44C、244 溝
45、345、445 第1取付部
45a、46a、246a 取付面
45b、46b 凸部
46、246、346 第2取付部
47 凸条部
48 挿通孔
50 配線部材
52、52A、52B 電線
60、60B、460B、560B 配線カバー
61 第1端部
61a、62a 凹部
62 第2端部
63 中間部
64 曲げ部
64a 痕跡
100、200、300、400、500、600 複合サービスホールカバー
C1、C2、C3、C4、C5 コネクタ
G グロメット
IP 仮想平面
T 粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14