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  • 特許-紙製包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】紙製包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 27/04 20060101AFI20231031BHJP
   D21H 27/10 20060101ALI20231031BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B65D27/04 C ZAB
D21H27/10
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020205272
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2021091481
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019224072
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 一輝
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩明
(72)【発明者】
【氏名】眞田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】塩野 順
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-262599(JP,A)
【文献】特開2004-352303(JP,A)
【文献】特開2006-077333(JP,A)
【文献】特開平11-061696(JP,A)
【文献】特開2013-028876(JP,A)
【文献】特開2001-354244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 27/04
D21H 11/00-27/42
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の紙部材から形成され、少なくとも1つの開口部を有する紙製包装体であり、
該紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されており、
該透明化樹脂が、UV硬化型透明化樹脂であり、
該紙製包装体の少なくとも一面において、面積の5%以上に透明化樹脂が付与されており、
透明化樹脂が付与された部分のステキヒトサイズ度が120秒以上であり、
紙基材の密度が0.95g/cm以下であり、
透明化樹脂の付与量が、紙基材の坪量の1.3倍以下である、
紙製包装体。
【請求項2】
前記透明化樹脂が付与されている部分の不透明度が60%以下である、請求項1に記載の紙製包装体。
【請求項3】
前記透明化樹脂の紙基材への付与量が、12g/m以上150g/m以下である、請求項1または2に記載の紙製包装体。
【請求項4】
前記紙基材の坪量が、20g/m以上150g/m以下である、請求項1~3のいずれかに記載の紙製包装体。
【請求項5】
前記透明化樹脂の紙基材への付与量が、紙基材の坪量の0.2倍以上1.3倍以下である、請求項1~4のいずれかに記載の紙製包装体。
【請求項6】
前記透明化樹脂が付与されている部分の引張強度が、3.5kN/m以上である、請求項1~5のいずれかに記載の紙製包装体。
【請求項7】
前記透明化樹脂が付与されている部分の引張強度が、前記透明化樹脂が付与されていない部分の引張強度の1.3倍以上である、請求項1~6のいずれかに記載の紙製包装体。
【請求項8】
前記紙製包装体が封筒である、請求項1~7のいずれかに記載の紙製包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部から視認可能な部分を有する、封筒などの包装体が求められており、たとえば、樹脂フィルムで作製した透明封筒、紙製封筒の視認部に樹脂フィルムやグラシン紙を貼り付けた封筒などが例示される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3153857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、グラシン紙を窓部に貼り付けたものでは、グラシン紙の耐水性が低く、封筒が濡れると、グラシン紙部分から水がしみこみ、特に視認性の必要な部分が水濡れしてしまうという問題があった。
また、樹脂フィルムで作製した封筒や、窓部に樹脂フィルムを貼り付けた封筒では、耐水性には優れるものの、分別廃棄を必要とするなど、安易に焼却処分をすることが困難であり、環境負荷低減の観点からは使用を控えることが求められている。
本発明の目的は、紙基材を使用しつつ、透明性および耐水性に優れ、カールの発生が抑制された紙製包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討の結果、一枚の紙部材から形成された紙製包装体において、透明化樹脂を付与することにより透明部分を形成し、かつ、該透明化樹脂が付与された部分のステキヒトサイズ度、紙基材の密度、および透明化樹脂の付与量と紙基材の坪量との関係を特定の範囲とすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<8>に関する。
<1> 一枚の紙部材から形成され、少なくとも1つの開口部を有する紙製包装体であり、該紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されており、該紙製包装体の少なくとも一面において、面積の5%以上に透明化樹脂が付与されており、透明化樹脂が付与された部分のステキヒトサイズ度が120秒以上であり、紙基材の密度が0.95g/cm以下であり、透明化樹脂の付与量が、紙基材の坪量の1.3倍以下である、紙製包装体。
<2> 前記透明化樹脂が付与されている部分の不透明度が60%以下である、<1>に記載の紙製包装体。
<3> 前記透明化樹脂の紙基材への付与量が、12g/m以上150g/m以下である、<1>または<2>に記載の紙製包装体。
<4> 前記紙基材の坪量が、20g/m以上150g/m以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の紙製包装体。
<5> 前記透明化樹脂の紙基材への付与量が、紙基材の坪量の0.2倍以上1.5倍以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の紙製包装体。
<6> 前記透明化樹脂が付与されている部分の引張強度が、3.5kN/m以上である、<1>~<5>のいずれかに記載の紙製包装体。
<7> 前記透明化樹脂が付与されている部分の引張強度が、前記透明化樹脂が付与されていない部分の引張強度の1.3倍以上である、<1>~<6>のいずれかに記載の紙製包装体。
<8> 前記紙製包装体が封筒である、<1>~<7>のいずれかに記載の紙製包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、紙基材を使用しつつ、透明性および耐水性に優れ、カールの発生が抑制された紙製包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、紙製包装体の基本構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[紙製包装体]
本発明の紙製包装体は、一枚の紙部材から形成され、少なくとも1つの開口部を有する紙製包装体であり、該紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されており、該紙製包装体の少なくとも一面において、面積の5%以上に透明化樹脂が付与されており、透明化樹脂が付与された部分のステキヒトサイズ度が120秒以上であり、紙基材の密度が0.95g/cm以下であり、透明化樹脂の付与量が、紙基材の坪量の1.3倍以下である。
本発明の紙製包装体は、紙基材を使用しつつ、透明性および耐水性に優れる。
上記の効果が得られる理由としては、以下のように考えられる。
従来のように、開口部を設けて、該開口部にグラシン紙を貼り付けた封筒等の紙製包装体では、グラシン紙部分の耐水性が低く、また、貼り付け部分から水が浸入しやすいため、耐水性に問題があった。
本発明の紙製包装体では、一枚の紙部材が形成されているため、グラシン紙を用いた場合のように、窓部に貼り付け部分を有することがなく、耐水性の向上に寄与できる。
さらに、透明化樹脂を付与することにより、透明部分(窓部)を作製しており、透明化樹脂が付与された部分のステキヒトサイズ度を特定の範囲とすることにより、特に耐水性に優れることを見出した。
また、紙基材に透明化樹脂を付与することにより、透明化樹脂が付与された部分の引張強度が向上することを見出した。これにより、透明化樹脂が付与された紙製包装体全体としても、引張強度が向上するものと考えられる。
さらに、紙基材の密度および透明化樹脂を紙基材の坪量に対して特定の範囲とすることにより、透明化樹脂を付与した際に、紙基材が適度に紙基材中に浸透し、その結果、透明化樹脂の付与によるカールの発生が抑制されると考えられる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明において、紙製包装体は、一枚の紙部材から形成され、かつ、少なくとも1つの開口部を有していれば特に限定されず、たとえば、紙袋、封筒、クリアーホルダー、紙挟み等が例示される。これらの中でも、紙袋、封筒が好ましく、封筒がより好ましい。紙袋、封筒としては、まちがあっても、まちがなくてもよい。
なお、少なくとも1つの開口部を有しているとは、紙製包装体が、紙製包装体の内部に物品を収容するものであることを意味している。
図1は、紙製包装体の基本構成図である。
図1を用いて、本発明の紙製包装体について説明する。図1では、紙製包装体として封筒を図示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に示す封筒である紙製包装体10は、一枚の紙部材Sから形成されており、1つの開口部12を有する。
なお、一枚の紙部材から形成されているとは、二枚以上の紙部材から形成されたものではないことを意味する。従って、たとえば、紙部材の接着のために、接着用部材を有する態様や、紙製包装体が封筒である場合に、開閉を繰り返すことができるように、フラップ部分を止めるための玉紐が付してある態様や、紙袋に持ち手を付してある態様を含むものである。
【0010】
本発明において、紙部材Sは、紙基材の少なくとも一部に、透明化樹脂が付与されている。図1において、透明化樹脂が付与されている部分を、透明化部13として図示している。また、紙製包装体の少なくとも一面において、面積の5%以上に透明化樹脂が付与されている。
透明化樹脂は、紙基材の少なくとも一部に付与されていればよいが、内容物を視認するため、少なくとも一面の面積の5%以上に透明化樹脂が付与されている。なお、透明化樹脂の付与されている面積は特に限定されず、略一面に付与されていてもよい。また、少なくとも一面に付与されていればよく、たとえば、2つ以上の面に透明化樹脂が付与されていてもよい。後述するように、引張強度を向上させる観点からは、透明化樹脂が付与されている面積が広いことが好ましく、たとえば、少なくとも一面において、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。
図1では、内容物を視認するための窓部に透明化樹脂が付与されており、透明化部13が形成されている。
【0011】
透明化樹脂は、紙製包装体の内面に付与されていても、外面に付与されていてもよいが、透明化樹脂の塗りムラを少なくする観点から、内面に付与されていることが好ましい。
【0012】
本発明の紙製包装体において、透明化樹脂が付与された部分のステキヒトサイズ度は、十分な耐水性を得る観点から、120秒以上である。
ステキヒトサイズ度は、好ましくは130秒以上、より好ましくは140秒以上、さらに好ましくは200秒以上であり、そして、製造容易性の観点から、好ましくは1000秒以下、より好ましくは800秒以下、さらに好ましくは600秒以下である。
ステキヒトサイズ度は、JIS P 8122:2004に従って測定される。
ステキヒトサイズ度を上記範囲内に調整する方法は特に限定されないが、紙基材の種類、厚み、透明化樹脂の種類、塗布量等を調整することによって、所望のステキヒトサイズ度に調整することができる。特に、透明化樹脂の付与量を調整することによって、所望のステキヒトサイズ度に調整することが好ましい。
【0013】
本発明の紙製包装体において、透明化樹脂が付与されている部分の不透明度は、視認性を高める観点から、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下であり、そして、製造容易性の観点から、好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上、さらに好ましくは5%以上である。
不透明度は、JIS P 8149:2000に規定される不透明度試験方法により測定する。
【0014】
本発明の紙製包装体において、透明化樹脂が付与されている部分の引張強度は、紙製包装体全体としても優れた強度を得る観点から、好ましくは3.5kN/m以上、より好ましくは4.5kN/m以上、さらに好ましくは5.5kN/m以上である。
引張強度は、JIS P 8113:2006に規定される引張強度試験方法により測定する。
なお、透明化樹脂の付与により引張強度も向上するため、透明化樹脂が付与される面積が広範囲な方が引張強度向上の観点で好ましい。
また、引張強度は、繊維配向方向の縦方向および横方向で異なるが、少なくとも縦方向が上記の範囲内であることが好ましく、縦方向および横方向の双方において、上記の範囲内であることがより好ましい。なお、前記縦方向とは、抄紙方向(MD)であり、横方向は、抄紙方向に対して垂直方向(CD)となり、繊維の配向方向と同じである。
【0015】
また、本発明において、透明化樹脂が付与されている部分(透明化部)の引張強度は、透明化樹脂が付与されていない部分(未透明化部)の引張強度の1.3倍以上であることが好ましい。より好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.6倍以上、よりさらに好ましくは2.0倍以上である。上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、4.0倍以下である。
【0016】
本発明の紙製包装体は、一部に印刷が付与されていてもよく、印刷適性を有することが好ましい。紙製包装体の内面に内容物が透けないように模様や着色塗料を付与してもよく、また、意匠性を付与したり、内容物を示したりするために、紙製包装体の外部に印刷を付与してもよい。具体的には、内容物を示す「親展」「社外秘」等の文言を付したり、製造社名やバーコード等を印刷してもよく、郵便番号枠を印刷することもできる。また、意匠性を高めるために、模様や図柄を印刷してもよく、特に限定されない。
当該印刷処理は、いずれの印刷方法を適用してもよく、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷等が挙げられる。
【0017】
以下、本発明の紙製包装体に使用される紙基材、および透明化樹脂について記載する。
<紙基材>
本発明の紙製包装体に用いられる紙基材は、植物由来のパルプを主成分として一般的に用いられる紙であることが好ましく、木材パルプまたは非木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。また、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等が挙げられ、これらの中でも、晒または未晒クラフト紙、上質紙、片艶紙が好ましく、印刷適性や透明化樹脂付与の観点から、片艶紙がより好ましい。この場合、片艶紙の艶面を外面とし、内面に透明化樹脂を付与することが好ましい。
本発明の紙製包装体は、紙基材を使用することで、環境負荷低減、リサイクル性、廃棄容易性に優れる。
【0018】
紙基材には、内添サイズ剤の他、公知のその他の内添剤を添加してもよい。その他の内添剤としては、二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留まり向上剤、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料、顔料等が挙げられる。
前記内添サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、または反応性サイズ剤が好ましく、さらに反応性サイズ剤の中でもアルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系が好ましい。また、紙力増強剤の中でも、グリオキザール、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド樹脂、ケトン樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、グリセロールポリグリシジルエーテル樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等の樹脂などが好ましく使用される。これらの内添剤は単独または2種以上を併用して使用してもよい。
【0019】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機(たとえば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機)を適宜選択して使用することができる。抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0020】
また、上述のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0021】
(坪量)
紙基材の坪量は、特に限定されないが、所望のステキヒトサイズ度とすることで耐水性向上させる観点や、形状安定性および強度に優れる紙製包装体を得る観点から、好ましくは20g/m以上、より好ましくは25g/m以上、さらに好ましくは30g/m以上であり、そして、経済性および環境負荷低減、透明性に優れた紙製包装体を得る観点から、好ましくは150g/m以下、より好ましくは120g/m以下、さらに好ましくは100g/m以下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0022】
(紙厚)
紙基材の厚さ(紙厚)は、紙製包装体の形状安定性、十分な強度を得る観点、および透明度に優れた透明化部を得る観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは35μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは160μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。
紙基材の厚さ(紙厚)は、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0023】
(密度)
紙基材の密度は、透明化樹脂を塗工した際に、カールの発生を抑制する観点から、0.95g/cm以下、好ましくは0.90g/cm以下、より好ましくは0.85g/cm以下であり、そして、紙製包装体の形状安定性、十分な強度を得る観点から、好ましくは、0.50g/cm以上、より好ましくは0.60g/cm以上、さらに好ましくは0.65g/cm以上である。
紙基材の密度が低いと、透明化樹脂が浸透しやすく、その結果、紙基材と透明化樹脂が一体となることで、カールの発生が抑制されるので好ましい。一方、紙基材の密度が高いと、透明化樹脂が紙基材に浸透しにくく、紙基材または透明化樹脂のいずれかのカールの影響を強く受ける傾向がある。特に、透明化樹脂として、UV硬化型透明化樹脂を使用する場合には、UV硬化により体積が減少する傾向にあり、紙基材の密度を上記範囲内とすることにより、カールの発生が抑制されるので好ましい。
なお、紙基材の密度は、上述のようにして求めた紙基材の坪量および紙厚から、JIS P 8118:2014に準拠して算出される。
【0024】
<透明化樹脂>
本発明の紙包装体を構成する紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されている。
透明化樹脂としては、たとえば、UV硬化型透明化樹脂、ロジン系水性透明化樹脂、石油系炭化水素透明化樹脂、ポリエステル系透明化樹脂、ウレタン系透明化樹脂、ニトロセルロース系透明化樹脂等を好適に用いることができる。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
UV硬化型透明化樹脂(「UVニス」と称される場合もある。)は、(メタ)アクリレート系単量体と光重合開始剤とを含有するアクリル系透明化樹脂である。UV硬化型透明化樹脂は紙基材に付与することにより、紙基材の不透明度を低下させる作用を有する。また、紫外線を照射されると前記光重合開始剤が分解し、前記(メタ)アクリレート系単量体が重合することにより付与部分を硬化させる作用をも有する。
(メタ)アクリレート系単量体としては、(メタ)アクリレート系単量体の他、(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー、反応性希釈剤が挙げられ、これらの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、たとえば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等など好ましく使用される。これらアクリレート系単量体は単独または2種以上を併用して使用してもよい。また、(メタ)アクリレート系単量体と共に、その他の単量体を併用してもよく、その他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等が例示される。
光重合開始剤としては、ジクロロアセトフェノンおよびトリクロロアセトフェノンのようなアセトフェノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、アゾ化合物などが好ましく使用される。これらの光重合開始剤は単独または2種以上を併用して使用してもよい。
【0026】
UV硬化型透明化樹脂としては、たとえば、サイデン化学株式会社製の「サイビノールX-507-251V(商品名)」、オート化学工業株式会社製の「UVF-102A-2」等を好適に用いることができる。
UV硬化型透明化樹脂を紫外線硬化させる際には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ等の公知の光源を使用し、積算光量として、たとえば、500~1,000mJ/cmを照射して硬化する。
【0027】
ロジン系水性透明化樹脂は、天然ロジン系樹脂等のロジン系樹脂のエマルジョンおよび水を含有する組成物である。ロジン系水性透明化樹脂は紙基材に付与することにより、紙基材の不透明度を低下させる作用を有する。また、熱硬化性樹脂を混合させた組成物は加熱により付与部分を硬化させる作用をも有する。さらに、組成物が水性であるため、紙基材の再生が容易となる点においても好ましい。
ロジン系水性透明化樹脂としては、たとえば、いずれも日工化学株式会社製の「ユニットNo.10N冬(商品名)」、「エコロスイセイAC-130N(商品名)」等を好適に用いることができる。
ロジン系水性透明化樹脂に熱硬化性樹脂を混合する場合には、改質剤として変性エポキシ樹脂と溶媒の混合物を用いることができる。より具体的には、いずれも日工化学株式会社製の「改質剤M-14(商品名)」、「改質剤HS(商品名)」等を好適に用いることができる。また、粘度を調整するためにロジン系水性透明化樹脂に希釈溶媒を加えたものを用いてもよい。希釈溶媒の種類は特に限定されないが、水と親和性の高い溶媒、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテル等を好適に用いることができる。
【0028】
石油系炭化水素透明化樹脂としては、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2,2’-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の脂環族飽和炭化水素、芳香族不飽和炭化水素から得られる樹脂およびその他アミノ基、水酸基、ビニル基、ニトロ基、カルボニル基等の各種置換基を有する樹脂などが好ましく使用される。また、石油系炭化水素樹脂に、パラフィンワックス、イソパラフィン等の飽和炭化水素、菜種油、大豆油、牛脂硬化脂肪酸の動植物油脂、ステアリン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の飽和若しくは不飽和脂肪酸の1種または2種以上を配合したものも使用できる。
ポリエステル系透明化樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体などのエチレンコポリマーなどが好ましく使用される。
ウレタン系透明化樹脂は、ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応から得られるものであり、ウレタン結合および尿素結合を含む高分子化合物である。ポリウレタン樹脂製造用ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート類や、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族系および脂環族系ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく使用される。
【0029】
本発明において、透明化樹脂の中でも、ロジン系水性透明化樹脂、UV硬化型透明化樹脂を用いることが好ましく、UV硬化型透明化樹脂を用いることがより好ましい。
UV硬化型透明化樹脂を用いることが好ましい理由は、水性透明化樹脂を紙基材へ塗工すると、熱風により乾燥させる工程が入るため、紙に含有されている水分が揮発してしまい紙基材にカールが生じる恐れがあるためである。UV硬化型透明化樹脂では水分の揮発の恐れがなくカールの発生が抑制されるので好ましい。
また、アクリル系透明化樹脂を用いることが好ましい理由は、その他の透明化樹脂と比較し透明化度が高く、比較的少量の塗工で透明性を発揮でき、また、耐久性、耐候性、強度、加工性等の観点から、総合的に優れるためである。
なお、紙基材に透明化樹脂を付与することにより、上述した不透明度が達成されるように、透明化樹脂の種類、付与量等を適宜調整することが好ましい。
【0030】
透明化樹脂の紙基材への付与量は、透明性および耐水性を向上させる観点、およびカールの発生を抑制する観点から、好ましくは12g/m以上、より好ましくは15g/m以上、さらに好ましくは25g/m以上、よりさらに好ましくは50g/m以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは150g/m以下、より好ましくは120g/m以下である。
【0031】
透明化樹脂の紙基材への付与量は、透明性および耐水性を向上させる観点、およびカールの発生を抑制する観点から、紙基材の坪量の1.3倍以下であり、好ましくは1.2倍以下、より好ましくは1.1倍以下、さらに好ましくは1.0倍以下であり、そして、好ましくは紙基材の坪量の0.2倍以上であり、より好ましくは0.3倍以上、さらに好ましくは0.5倍以上、よりさらに好ましくは0.8倍以上である。
透明化樹脂の紙基材への付与量が、紙基材の坪量の1.3倍以下であると、透明化樹脂の付与によるカールの発生が抑制されるので好ましい。
【0032】
透明化樹脂が付与されていない紙基材の厚さ、すなわち、紙基材そのものの厚さと、透明樹脂が付与された紙基材の厚さ、すなわち、透明化部との厚さとの差(透明化樹脂を付与前後の紙基材の厚さの差)は、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下、よりさらに好ましくは4μm以下であり、そして、透明性および耐水性を付与する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
透明樹脂を付与前後の紙基材の厚さの差が10μm以下であると、透明化樹脂の付与によるカールの発生が抑制されるため、好ましい。
透明化樹脂が紙基材に浸透すると、透明化樹脂を付与前後の紙基材の厚みの差は小さくなる傾向にあり、密度の低い紙基材を使用することにより、透明化樹脂を付与前後の紙基材の厚さの差を小さくすることができる。また、透明化樹脂の付与量が多すぎる場合には、透明化樹脂の付与前後における紙基材の厚みの差が大きくなる傾向にあるため、透明化樹脂の紙基材の付与量を調整することにより、前記厚みの差を小さくすることができる。
【0033】
透明化樹脂の付与方法は特に限定されず、必要な部分のみを含浸する方法、種々の印刷方法(たとえば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷)を使用すればよい。
また、透明化樹脂がUV硬化型透明化樹脂である場合、紙基材への付与後に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
【0034】
本発明において、透明化樹脂を付与された紙基材は、カールの発生が抑制されていることが好ましい。カールが発生すると、紙製包装体とした際に、応力が発生し、皺や破れの原因となる可能性がある。
カールの発生の問題を抑制する手段としては、上述したように、紙基材の密度、紙基材への透明化樹脂の付与量、透明化樹脂を塗工前後の紙厚差などを制御することが例示される。
【実施例
【0035】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0036】
実施例および比較例で使用した紙基材、透明化樹脂の種類、UV照射装置等は、以下の通りである。なお、坪量および紙厚は、表1に示す通りである。
<紙基材>
A:中越パルプ工業株式会社製、「竹純白」
B:王子マテリア株式会社製、「白夜」
C:王子マテリア株式会社製、「OKブリザード」
D:王子エフテックス株式会社製、「グラシン」
【0037】
<透明化樹脂>
オート化学工業株式会社製、「UVF-102A-2」、アクリル系紫外線硬化型樹脂
<UV照射装置>
アイグラフィックス株式会社製、「アイグランデージ ECS-301G1」
【0038】
実施例1
表1に示す紙基材の略一面に、透明化樹脂を、フレキソ印刷を用いて、15g/mで付与した後、UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製、アイグランデージ ECS-301G1)を使用して、積算光量50mJ/cm、照度100mW/cmにて、紫外線を照射して、硬化させた。なお、透明化樹脂は、紙基材が片艶紙である場合には、片艶紙のより粗い面(艶面の反対面)に付与し、これが内側(裏面)になるようにした。
得られた紙部材について、透明化樹脂付与部のステキヒトサイズ度、不透明度、引張強度、およびカール性を評価した。
結果を以下の表1に示す。
【0039】
<測定方法>
用いた紙基材の坪量、紙厚、並びに得られた紙部材の透明化樹脂付与部分の不透明度、ステキヒトサイズ度、引張強度、およびカール性を測定した。
〔ステキヒトサイズ度〕
ステキヒトサイズ度は、JIS P 8122:2004に従って測定した。なお、測定は、透明化樹脂を付与した側を裏面として、表面から測定した。
【0040】
〔坪量〕
紙基材の坪量(g/m)は、JIS P 8124:2011に従って測定した。なお、JIS P 8118:2014に記載の測定に必要なサンプルサイズが得られなかった場合、採取可能なサンプルサイズにて測定を行う。
【0041】
〔紙厚〕
紙基材と紙部材中の透明樹脂が付与されている部分の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0042】
〔密度〕
紙基材の密度は、JIS P 8118:2014に準拠して、坪量および紙厚から算出した。
【0043】
〔不透明度〕
不透明度は、JIS P 8149:2000に規定される不透明度試験方法により測定した。また、不透明度は、透明化樹脂を付与した面を裏面として、表面から測定した。
【0044】
〔引張強度〕
引張強度は、JIS P 8113:2006に従い、株式会社島津製作所製、オートグラフ、RTC-1250Aを使用して測定した。実施例1~11、比較例2、7、8では、透明化樹脂付与部での引張強度を測定した。一方、比較例1、3~6では、未塗布部での引張強度を測定した。なお、表中、「縦」とは、繊維の配向方向を意味し、「横」とは、縦方向に垂直な方向を意味する。繊維の配向は、配向性測定機(野村商事株式会社製、SST-2500)にて測定した。また、前記の繊維の配向性は、透明化樹脂を付与した部分においても測定可能であった。
【0045】
[カール性]
実施例の手順で、透明化樹脂を塗工して得られた紙部材、または紙基材をA4サイズ用意し、その紙部材または紙基材を23℃±5℃、50%±10%環境下で水平な硬質面に平置き静置し、紙部材の頂点が硬質面からどの程度浮いているかを、4ヶ所全て測定し、その平均値を算出し、以下の基準でカール評価を行った。
なお、耐カール性が良好であるとは、透明化樹脂の付与により、カールの発生が見られない、すなわち、カールの発生が抑制されていることを意味する。
A:0.0mm以上1.0mm未満の浮きが見られた。
B:1.0mm以上3.0mm未満の浮きが見られた。
C:3.0mm以上の浮きが見られた。
【0046】
実施例2~11、比較例1~8
実施例1で使用した紙基材の種類、透明化樹脂の付与量等を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2~11、比較例1~8の紙部材を作製し、評価を行った。なお、比較例1、3~6については、ステキヒトサイズ度および不透明度は、樹脂を付与していない部分について行った。また、比較例7については、予め紙基材に対してカレンダー処理を行い、紙基材の厚みを低くし密度を向上させた上で透明化樹脂を塗工した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1~11では、ステキヒトサイズ度が本発明の範囲内(120秒以上)であり、かつ、透明性に優れる紙基材が得られた。一方、透明化樹脂を付与していない比較例1、3~5では、十分な透明性が得られなかった。また、グラシン紙を使用した比較例6では、ステキヒトサイズ度が3秒であり、本発明の範囲(120秒以上)とならず、耐水性に劣るものであった。
さらに、透明化樹脂の付与量が少ない場合には、比較例2に示すように、十分な透明性が得られなかった。また、ステキヒトサイズ度も120秒未満であり(101秒)、本発明の範囲とはならず、耐水性の低下が認められた。
また、透明化樹脂が付与された部分は、いずれも、透明化樹脂を付与していない部分に比べて、引張強度が向上していることが見出された。
また、実施例1~11では、紙基材への透明化樹脂の付与量が紙基材の坪量の1.3倍以下、かつ、紙基材の密度が0.95g/cm以下であり、紙基材へ透明化樹脂を塗工後のカールの発生が抑制され、耐カール性が良好であることが分かった。これは、紙基材の密度が低い程、透明化樹脂が紙基材内部に浸透し一体となるためカールの発生が抑制されると推察される。また、透明が樹脂の付与量が適切であるために、カールの発生が抑制されたと推察される。耐カール性が悪いと、紙製包装体として加工後に皴や破れ等が発生してしまう。一方、比較例7では、密度が0.95g/cmを超えており、密度の高い基材を用いたため、カールが発生し、耐カール性に劣るものであった。さらに、比較例8では、透明化樹脂の付与量が、紙基材の坪量の1.3倍を超えており、透明化樹脂の付与量が多いため、カールが発生し、カール性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の紙製包装体は、紙基材を使用しつつ、透明性および耐水性に優れ、カールの発生が抑制される。従来、プラスチック樹脂フィルム製の可視部が使用されていた種々の包装体への適用が期待される。
【符号の説明】
【0050】
S:紙部材
10:紙製包装体
12:開口部
13:透明化部
図1