(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両における制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/00 20060101AFI20231031BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20231031BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20231031BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20231031BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20231031BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20231031BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F02D29/00 G
F02D41/04
B60W10/00 102
B60W10/00 122
B60W10/00 148
B60W10/06
(21)【出願番号】P 2020218770
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 修司
(72)【発明者】
【氏名】原 京平
(72)【発明者】
【氏名】太田 朋子
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145286(JP,A)
【文献】特開2004-218580(JP,A)
【文献】特開平05-312076(JP,A)
【文献】特開2006-220159(JP,A)
【文献】特開2010-071141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
F02D 41/04
B60W 10/02
B60W 10/00
B60W 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、複数のギヤ段およびアクチュエータを有し、前記アクチュエータがシフトアップ又はシフトダウンの指示を受けて前記ギヤ段を切り替える変速機と、前記変速機を内燃機関側に接続し又は前記変速機を内燃機関側から遮断するクラッチとが搭載された車両における制御装置であって、
前記内燃機関の運転状態に応じて変化するパラメータの目標値と実際のパラメータの値の偏差に基づいてPI制御により、前記内燃機関の筒内に噴射される燃料噴射量を制御するエンジン制御部と、
前記アクチュエータに対しシフトダウンの指示を出した場合、かつ、前記クラッチが遮断状態である場合、
かつ、以下の条件(1)から(4)の中のいずれも満たさない場合、前記エンジン制御部に対し前記PI制御における積分項をリセットするリセット要求を行うアクチュエータ制御部と、
を備える、車両における制御装置。
(1)前記アクチュエータ制御部は、前記変速機における潤滑油の粘度と対応関係を有する潤滑油の油温を取得し、取得した油温が予め定められた粘度より高いことを示す所定値以下である場合
(2)前記アクチュエータ制御部は、前記シフトダウンの指示が発進ギヤ段へのシフトダウンの指示である場合
(3)前記シフトダウンの指示を出した後に、現ギヤ段から次ギヤ段への変速中における当該現ギヤ段のギヤ抜きが完了するまでの期間に、前記アクチュエータに対し当該現ギヤ段に戻るシフトの指示が出された場合
(4)アクセル開度が燃料の過剰噴射に至らないことを示す所定値以下である場合
【請求項2】
前記アクチュエータ制御部は、
前記アクチュエータに対しシフトダウンの指示を出した場合、かつ、前記クラッチが遮断状態である場合であっても、前記条件(1)から(4)の中の少なくとも一つを満たす場合、前記リセット要求を行わない、請求項1に記載の車両における制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両における制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、内燃機関(エンジン)の排気通路に配置された空燃比検出手段により得られた空燃比が予め定められた目標空燃比になるように、インジェクタに供給される燃料の噴射量をフィードバック制御するエンジンの制御装置が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献2には、変速機と、変速機をエンジン側に接続し又は変速機をエンジン側から遮断するクラッチと、自動運転モードにおいて、検出された実加速度が目標加速度となるように変速用アクチュエータおよびクラッチ用アクチュエータのそれぞれを制御することで、変速機を現ギヤ段から次ギヤ段へ変更させるアクチュエータ制御装置と、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-159302号公報
【文献】特開2020-104627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、変速機のシフト時にクラッチが変速機をエンジン側に接続する場合、変速機側の回転速度とエンジン側の回転速度とが合わず、変速ショックが発生するおそれがある。そのため、変速機のシフト時に燃料噴射量を調整する必要ある。例えば、特許文献2に係るアクチュエータ制御装置が変速用アクチュエータおよびクラッチ用アクチュエータに対しシフトダウンの指示を出す場合、特許文献1に係るエンジンの制御装置に対しフィードバック制御における積分項のリセット要求(以下、単に「リセット要求」という)をすることが考えられる。
【0006】
図1は、リセット要求を出すタイミングが半クラッチ状態の間である場合におけるエンジン側の回転速度および変速機側の回転速度を示す図である。
図1に、クラッチの状態(クラッチが変速機をエンジン側に完全に接続した状態である接続状態、クラッチが変速機をエンジン側に完全には接続しない状態である半クラッチ状態、クラッチが変速機をエンジン側から遮断した状態である遮断状態)を一点鎖線で示す。また、
図1に、エンジン側の回転速度を実線ELで示し、変速機側の回転速度を破線TLで示す。
図1に示すように、リセット要求を出すタイミングが半クラッチ状態の間である場合、燃料の過剰噴射により、エンジン側の回転速度が急上昇する噴き上がりが生じる。これにより、エンジン側の回転速度が変速機側の回転速度を大きく超えた中で、クラッチが変速機をエンジン側に接続する場合がある。この場合、変速ショックが発生し、変速フィーリングが悪化するという問題がある。
【0007】
本開示の目的は、シフトダウンする際の燃料の過剰噴射を防止することが可能な車両における制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示における車両における制御装置は、
内燃機関と、複数のギヤ段およびアクチュエータを有し、前記アクチュエータがシフトアップ又はシフトダウンの指示を受けて前記ギヤ段を切り替える変速機と、前記変速機を内燃機関側に接続し又は前記変速機を内燃機関側から遮断するクラッチとが搭載された車両における制御装置であって、
前記内燃機関の運転状態に応じて変化するパラメータの目標値と実際のパラメータの値の偏差に基づいてPI制御により、前記内燃機関の筒内に噴射される燃料噴射量を制御するエンジン制御部と、
前記アクチュエータに対しシフトダウンの指示を出した場合、かつ、前記クラッチが遮断状態である場合、かつ、以下の条件(1)から(4)の中のいずれも満たさない場合、前記エンジン制御部に対し前記PI制御における積分項をリセットするリセット要求を行うアクチュエータ制御部と、
を備える。
(1)前記アクチュエータ制御部は、前記変速機における潤滑油の粘度と対応関係を有する潤滑油の油温を取得し、取得した油温が予め定められた粘度より高いことを示す所定値以下である場合
(2)前記アクチュエータ制御部は、前記シフトダウンの指示が発進ギヤ段へのシフトダウンの指示である場合
(3)前記シフトダウンの指示を出した後に、現ギヤ段から次ギヤ段への変速中における当該現ギヤ段のギヤ抜きが完了するまでの期間に、前記アクチュエータに対し当該現ギヤ段に戻るシフトの指示が出された場合
(4)アクセル開度が燃料の過剰噴射に至らないことを示す所定値以下である場合
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、シフトダウンする際の燃料の過剰噴射を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、リセット要求を出すタイミングが半クラッチ状態の間である場合におけるエンジン側の回転速度および変速機側の回転速度を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る車両における制御装置の構成を示す全体図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態にける変速機の一例を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、リセット要求を出すタイミングがクラッチの遮断状態の間である場合におけるエンジン側の回転速度および変速機側の回転速度を示す図である。
【
図5】
図5は、アクチュエータ制御部の動作の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図2は、本開示の実施の形態に係る車両における制御装置100の構成を示す全体図である。車両には、内燃機関1(エンジン)、変速機2、および、クラッチ装置3が搭載される。内燃機関1は、例えば、四気筒エンジンである。内燃機関1は、筒内に吸気を送り込む吸気通路(不図示)、筒内噴射装置10等を備える。
【0012】
筒内噴射装置10は、インジェクタ11と、コモンレール12と、圧送ポンプ13とを備える。
インジェクタ11は、内燃機関1の筒内に燃料を噴射する。コモンレール12は、インジェクタ11に供給する燃料を高圧状態で蓄える。圧送ポンプ13は、コモンレール12に燃料を圧送する。
【0013】
車両における制御装置100は、エンジン制御部200と、アクチュエータ制御部300とを備える。エンジン制御部200およびアクチュエータ制御部300のぞれぞれは、車両の電子制御ユニット(Electronic Control Unit;以下、ECUという)に搭載される。ECUは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入力装置および出力装置を有している。CPUは、ROMに格納されたプログラムをRAMに展開して後述する各機能を実行する。
【0014】
エンジンの運転状態に応じて変化するパラメータである、例えば、コモンレール12の実レール圧、圧送ポンプの燃料圧送量、燃料噴射量、エンジン回転速度、排気空燃比などは、センサ等(不図示)により検出され、エンジン制御部200に入力される。エンジン制御部200は、これらのパラメータに基づいてエンジンの筒内に噴射される燃料噴射量を制御する。
【0015】
具体的には、エンジン制御部200は、排気空燃比の実測値と排気空燃比の目標値との偏差に基づいてPID制御を行うことにより、筒内に噴射される燃料噴射量を制御する。なお、以下の説明においては、エンジン制御部200がPID制御を行うものについて説明するが、本開示におけるエンジン制御部は、少なくともPI制御を行うものであればよい。
【0016】
図3は、本開示の実施の形態における変速機2の一例を概略的に示す図である。
図3において左右方向を軸方向又はX方向といい、右方向を軸方向一側または「+X方向」、左方向を軸方向他側又は「-X方向」という。
図3に示すように、変速機2は、入力軸21と、主軸22と、副軸23と、複数の主ギヤ24と、複数の副ギヤ25と、スリーブ26と、変速用アクチュエータ27と、を備える。
【0017】
主軸22は、入力軸21と同軸に配置されている。副軸23は、主軸22と平行に配置されている。複数の主ギヤ24のそれぞれは、主軸22に回転可能に支持されている。複数の副ギヤ25のそれぞれは、副軸23に固定され、それぞれの主ギヤ24に噛み合っている。スリーブ26は、ドグ歯(不図示)を有する。スリーブ26は、軸方向で互いに隣接する主ギヤ24の間の中立位置に配置される。ここで、「中立位置」とは、スリーブ26のドグ歯が、互いに隣接する軸方向一側(+X方向)の主ギヤ24のドグ歯(不図示)にも、軸方向他側(-X方向)の主ギヤ24のドグ歯(不図示)にも噛み合わない状態にある位置をいう。スリーブ26は、中立位置から軸方向一側(+X方向)に移動することで、スリーブ26のドグ歯が軸方向一側の主ギヤ24のドグ歯と噛み合う状態となる。また、スリーブ26は、中立位置から軸方向他側(-X方向)に移動することで、スリーブ26のドグ歯が軸方向他側の主ギヤ24のドグ歯と噛み合う状態となる。以下の説明で、スリーブ26のドグ歯と主ギヤ24のドグ歯とが噛み合うことを「ギヤ入れ」という。スリーブ26のドグ歯と主ギヤ24のドグ歯(不図示)とが噛み合わないことを「ギヤ抜き」という。なお、ギヤ入れがされた場合、主ギヤ24と副ギヤ25とが係合する(ギヤ段が確立する)。
【0018】
変速用アクチュエータ27は、移動部材28を有し、移動部材28がスリーブ26を軸方向(X方向)に移動することにより、ギヤ入れがされ、ギヤ段を確立する。変速用アクチュエータ27には公知の手段が用いられる。変速用アクチュエータ27は、例えば、油圧や空圧を利用したアクチュエータでもよく、電動アクチュエータでもよい。
【0019】
図2および
図3に示すように、クラッチ装置3は、クラッチ31と、クラッチ用アクチュエータ32とを備える。
【0020】
クラッチ31は、エンジンと入力軸21との間に配置され、入力軸21をエンジン側に接続し又は入力軸21をエンジン側から遮断する。
【0021】
クラッチ用アクチュエータ32は、クラッチ31を、入力軸21をエンジン側から遮断した状態(遮断状態)と、入力軸21をエンジン側に完全に接続した状態(接続状態)と、入力軸21をエンジン側に完全には接続していない状態(半クラッチ状態)とのいずれかの状態に駆動する。クラッチの状態を示す情報は、アクチュエータ制御部300に入力される。
【0022】
アクチュエータ制御部300は、クラッチ31が遮断状態、接続状態および半クラッチ状態のいずれかの状態になるように、クラッチ用アクチュエータ32を制御する。
【0023】
また、アクチュエータ制御部300は、取得部301、判定部302および制御部303としての各機能を有する。取得部301は、エンジンの運転状態に応じて変化するパラメータを取得する。また、取得部301は、車両の走行状態を示す各種情報である、車速、エンジンの回転速度、スロットル開度、走行モード(例えば、標準モード、エコモード、発進時モード)等を取得する。また、取得部301は、クラッチ31の状態(接続状態、半クラッチ状態、遮断状態)等を取得する。
【0024】
判定部302は、走行状態に応じたギヤ段を判定する。以下の説明で、判定部302により判定されたギヤ段を「目標ギヤ段」という。
【0025】
制御部303は、判定部302の判定結果に基づいて、変速用アクチュエータ27を制御する。具体的には、制御部303は、目標ギヤ段が現ギヤ段と異なる場合、変速用アクチュエータ27に対しギヤ段のシフト(シフトアップ又はシフトダウン)の指示を出す。
【0026】
制御部303は、変速用アクチュエータ27に対しシフトダウンの指示を出した場合、かつ、クラッチ31が遮断状態である場合、エンジン制御部200に対しPID制御における積分項をリセットするリセット要求を行う。以下の説明では、PID制御における積分項をリセットするリセット要求を、単に「リセット要求」という場合がある。
【0027】
図4は、リセット要求を出すタイミングがクラッチ31の遮断状態の間である場合におけるエンジン側の回転速度および変速機2側の回転速度を示す図である。
図4に、クラッチ31の状態(接続状態、半クラッチ状態および遮断状態)を一点鎖線で示す。また、
図4に、エンジン側の回転速度を実線ELで示し、変速機2側の回転速度を破線TLで示す。なお、クラッチ31の接続状態においては、エンジン側の回転速度および変速機2側の回転速度とは一致する。これにより、
図4において、クラッチ31の接続状態では、エンジン側の回転速度を示す実線ELと変速機2側の回転速度を示す破線TLとは重なることになるが、実線ELと破線TLとを分かりやすくするため、互いに少し離して表示する。
【0028】
図4に示すように、リセット要求を出すタイミングがクラッチ31の遮断状態の間である場合、燃料の過剰噴射を防止することが可能となる。その結果、エンジンの回転速度が急上昇する噴き上がりの発生を抑制することで、エンジン側の回転速度が変速機2側の回転速度を超えることがなく、このような中で、クラッチ31が変速機2をエンジン側に接続するため、変速ショックの発生を抑えることが可能となる。
【0029】
<リセット要求を行わない条件>
次に、リセット要求を行わない条件(1)から(4)について説明する。
【0030】
(1)制御部303は、変速機2の潤滑油の油温が所定値以下である場合、リセット要求を行わない。潤滑油の低温時においては、潤滑油の粘度が高いため(固いため)、ギヤ入れ性能が低下する場合がある。そこで、ギヤ入れの性能を確保するため、潤滑油の油温が所定値以下である場合、エンジンの回転速度を上げてギヤ入れ負荷を軽減することができるため、リセット要求を行わないことで、積分項の噴射量を維持する。
【0031】
(2)制御部303は、変速用アクチュエータ27に対し発進ギヤ段へのシフトダウンの指示を出した場合、リセット要求を行わない。その理由は、シフトダウン後の急な環境の変化により、噴射量を増大させる場合に備えて、積分項をリセットせず、積分項の噴射量を維持するためである。
【0032】
(3)制御部303は、現ギヤ段(例えば、6段)から次ギヤ段(例えば、5段)への変速中における現ギヤ段のギヤ抜きが完了するまでの期間に、変速用アクチュエータ27に対し該現ギヤ段に戻るシフトの指示を出した場合、リセット要求を行わない。上記のように現ギヤ段に戻るシフトの指令を出した場合、リセット要求を行わないことで、積分項の噴射量を維持する。その結果、シフト前後においてエンジン側の回転速度が概略変わらないため、エンジン側の回転速度と変速機2側の回転速度との間の速度差が大きくならない。これにより、変速機2を現ギヤ段に容易に戻すことが可能となる。
【0033】
(4)制御部303は、アクセル開度が所定値以下である場合、リセット要求を行わない。この場合、リセット要求を行わなくとも、積分項の噴射量が増大しないことで、燃料の過剰噴射にならないため、リセット要求により燃料噴射量を減少させる必要がない。そこで、リセット要求を行わないことで、積分項の噴射量を維持する。ここでは、アクセル開度に、燃料噴射量から算出されたアクセル開度が用いられる。
【0034】
次に、アクチュエータ制御部300の動作の一例について説明する。
図5は、アクチュエータ制御部300の動作の一例を示すフローチャートである。本フローは、エンジンの始動に伴い開始される。以下の説明では、アクチュエータ制御部300の各機能(取得部301、判定部302、制御部303)については、CPUが行うものとして説明する。
【0035】
先ず、ステップS100において、CPUは、クラッチ用アクチュエータ32にシフトダウンの指示を出したか否かについて判定する。シフトダウンの指示を出した場合(ステップS100:YES)、処理はステップS110に遷移する。シフトダウンの指示を出していない場合(ステップS100:NO)、処理はステップS170に遷移する。
【0036】
ステップS110において、CPUは、クラッチ31が切断状態であるか否かについて判定する。クラッチが切断状態である場合(ステップS110:YES)、処理はステップS120に遷移する。クラッチが切断状態でない場合(ステップS110:NO)、処理はステップS170に遷移する。
【0037】
ステップS120において、CPUは、変速機2の潤滑油の油温が所定値以下であるか否かについて判定する。油温が所定値以下である場合(ステップS120:YES)、処理はステップS170に遷移する。油温が所定値以下でない場合(ステップS120:NO)、処理はステップS130に遷移する。
【0038】
ステップS130において、CPUは、ステップS100におけるシフトダウンの指示が発進ギヤ段へのシフトダウンの指示であるか否かについて判定する。発進ギヤ段へのシフトダウンの指示である場合(ステップS130:YES)、処理はステップS170に遷移する。発進ギヤ段へのシフトダウンの指示でない場合(ステップS130:NO)、処理はステップS140に遷移する。
【0039】
ステップS140において、CPUは、ステップS100におけるシフトダウンの指示が現ギヤ段から次ギヤ段への変更中における現ギヤ段のギヤ抜きが完了するまでの期間に、現ギヤ段に戻るシフトの指示であるか否かについて判定する。現ギヤ段に戻るシフトの指示である場合(ステップS140:YES)、処理はステップS170に遷移する。現ギヤ段に戻るシフトの指示でない場合(ステップS140:NO)、処理はステップS150に遷移する。
【0040】
ステップS150において、CPUは、アクセル開度が所定値以下であるか否かについて判定する。アクセル開度が所定値以下である場合(ステップS150:YES)、処理はステップS170に遷移する。アクセル開度が所定値以下でない場合(ステップS150:NO)、処理はステップS160に遷移する。
【0041】
ステップS160において、CPUは、エンジン制御部200に対し、積分項のリセット要求を行う。その後、
図5に示すフローは終了する。
【0042】
ステップS170において、CPUは、エンジン制御部200に対し、積分項のリセット要求を行わない。その後、
図5に示すフローは終了する。
【0043】
上記実施の形態に係る車両における制御装置100は、エンジンと、複数のギヤ段および変速用アクチュエータを有し、変速用アクチュエータがシフトアップ又はシフトダウンの指示を受けてギヤ段を切り替える変速機2と、変速機2をエンジン側に接続し又は変速機2をエンジン側から遮断するクラッチ31とが搭載された車両における制御装置100であって、エンジンの運転状態に応じて変化するパラメータの目標値と実際のパラメータの値の偏差に基づいてPID制御により、エンジンの筒内に噴射される燃料噴射量を制御するエンジン制御部200と、変速用アクチュエータ27に対しシフトダウンの指示を出した場合、かつ、クラッチ31が遮断状態である場合、エンジン制御部200に対しPID制御における積分項をリセットするリセット要求を行うアクチュエータ制御部300と、を備える。
【0044】
上記構成により、クラッチ31が遮断状態である場合、リセット要求を行うため、シフトダウンする際の燃料の過剰噴射を防止することが可能となる。これにより、エンジンの回転速度が急上昇する噴き上がりが生じない。そのため、エンジン側の回転速度と変速機2側の回転速度との間の速度差が許容範囲内にある中で、クラッチが変速機2をエンジン側に接続するため、変速ショックの発生を防止し、変速フィーリングの悪化を抑えることが可能となる。
【0045】
また上記実施の形態に係る車両における制御装置100では、アクチュエータ制御部300は、変速機2における潤滑油の油温が所定値以下である場合、リセット要求を行わない。これにより、エンジンの回転速度を上げてギヤ入れ負荷を軽減することができるため、ギヤ入れの性能を確保することが可能となる。
【0046】
また上記実施の形態に係る車両における制御装置100では、アクチュエータ制御部300は、シフトダウンの指示が発進ギヤ段へのシフトダウンの指示である場合、リセット要求を行わない。。その理由は、シフトダウン後の急な環境の変化により、噴射量を増大させる場合に備えて、積分項をリセットせず、積分項の噴射量を維持するためである。
【0047】
また上記実施の形態に係る車両における制御装置100では、アクチュエータ制御部300は、シフトダウンの指示が現ギヤ段から次ギヤ段への変速中における現ギヤ段のギヤ抜きが完了するまでの期間に、変速用アクチュエータ27に対し現ギヤ段に戻るシフトの指示である場合、リセット要求を行わない。これにより、シフト前後においてエンジン側の回転速度が変わらないため、エンジン側の回転速度と変速機2側の回転速度との間の速度差が大きくならない。その結果、現ギヤ段に容易に戻すことが可能となる。
【0048】
また上記実施の形態に係る車両における制御装置100では、アクセル開度が所定値以下である場合、前記リセット要求を行わない。アクセル開度が所定値以下である場合、リセット要求を行わなくとも、積分項の噴射量が増大しない。これにより、燃料の過剰噴射にならないため、リセット要求により燃料噴射量を減少させる必要がない。
【0049】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示は、シフトダウンする際の燃料の過剰噴射を防止することが要求される制御装置を備えた車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0051】
1 内燃機関
2 変速機
3 クラッチ装置
10 筒内噴射装置
11 インジェクタ
12 コモンレール
13 圧送ポンプ
21 入力軸
22 主軸
23 副軸
24 主ギヤ
25 副ギヤ
26 スリーブ
27 変速用アクチュエータ
31 クラッチ
32 クラッチ用アクチュエータ
100 制御装置
200 エンジン制御部
300 アクチュエータ制御部
301 取得部
302 判定部
303 制御部