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特許7375784酸素濃度計、酸素濃度検出システム及びジルコニアセンサの抵抗検出方法
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  • 特許-酸素濃度計、酸素濃度検出システム及びジルコニアセンサの抵抗検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】酸素濃度計、酸素濃度検出システム及びジルコニアセンサの抵抗検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20231031BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/26 391B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021035787
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135768
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 公一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 謙
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020856(JP,A)
【文献】特開2009-133713(JP,A)
【文献】特開2016-003882(JP,A)
【文献】特開2016-045050(JP,A)
【文献】特開平06-027077(JP,A)
【文献】特開平10-090218(JP,A)
【文献】特表平3-503935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニアセンサと、
前記ジルコニアセンサに並列に接続される抵抗と、
前記ジルコニアセンサ及び前記抵抗に並列に接続されて電流を供給する定電流回路と、
前記供給される電流に応じた前記ジルコニアセンサの電圧に基づいて前記ジルコニアセンサの抵抗を検出する抵抗検出部と、
前記ジルコニアセンサに供給される被測定ガス及び比較ガスの酸素濃度差に起因する前記ジルコニアセンサの電圧に基づいて前記被測定ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と
を具備することを特徴とする酸素濃度計。
【請求項2】
前記抵抗検出部は、前記抵抗が接続された際の前記ジルコニアセンサの電圧と前記定電流回路が更に接続されて電流が供給された際の前記ジルコニアセンサの電圧とに基づいて前記ジルコニアセンサの抵抗を検出することを特徴とする請求項1に記載の酸素濃度計。
【請求項3】
前記ジルコニアセンサの電圧を測定する電圧測定部を更に具備し、
前記抵抗検出部は、前記測定されたジルコニアセンサの電圧に基づいて前記抵抗を検出し、
前記酸素濃度検出部は、前記測定されたジルコニアセンサの電圧に基づいて前記酸素濃度を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の酸素濃度計。
【請求項4】
前記定電流回路は、前記電圧測定部と共通に接地されることを特徴とする請求項3に記載の酸素濃度計。
【請求項5】
ジルコニアセンサと、
前記ジルコニアセンサに並列に接続される抵抗と、
前記ジルコニアセンサ及び前記抵抗に並列に接続されて電流を供給する定電流回路と、
前記供給される電流に応じた前記ジルコニアセンサの電圧に基づいて前記ジルコニアセンサの抵抗を検出する抵抗検出部と、
前記ジルコニアセンサに供給される被測定ガス及び比較ガスの酸素濃度差に起因する前記ジルコニアセンサの電圧に基づいて前記被測定ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、
前記検出されたジルコニアセンサの抵抗に基づいて前記ジルコニアセンサの異常を検出する劣化検出部と
を具備することを特徴とする酸素濃度検出システム。
【請求項6】
前記検出されたジルコニアセンサの抵抗を保持する保持部を更に具備し、
前記劣化検出部は、前記保持されたジルコニアセンサの抵抗に基づいて前記ジルコニアセンサの劣化の予測を更に行う
ことを特徴とする請求項5に記載の酸素濃度検出システム。
【請求項7】
前記劣化を伝達する伝達部を更に具備することを特徴とする請求項6に記載の酸素濃度検出システム。
【請求項8】
ジルコニアセンサに抵抗を並列に接続した際の前記ジルコニアセンサの電圧と定電流回路を前記ジルコニアセンサ及び前記抵抗に並列に接続して電流を供給した際の前記ジルコニアセンサの電圧とに基づいて前記ジルコニアセンサの抵抗を検出することを特徴とするジルコニアセンサの抵抗検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸素濃度計、酸素濃度検出システム及びジルコニアセンサの抵抗検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ジルコニウム(ジルコニア)に安定化剤を添加して結晶構造を安定化した安定化ジルコニアを備えた酸素濃度計が使用されている。このような安定化ジルコニアは、酸素濃度差に応じた起電力を生じる。具体的には、安定化ジルコニアにより形成された隔壁の一方の面と他方の面とに酸素濃度が異なるガスを導入すると、高温下において安定化ジルコニアの隔壁に酸素濃度差に応じた起電力を生じる。このような安定化ジルコニアによるジルコニアセンサを使用して既知の酸素濃度のガス(比較ガス)と被測定ガスとの酸素濃度差を検出することにより、被測定ガスの酸素濃度を測定することができる。
【0003】
このようなジルコニアセンサは、経時変化によりセンサ出力が変動する。このため、ジルコニアセンサを使用する酸素濃度計は、センサ出力の校正を適宜行う必要がある。この校正は、所定の酸素濃度のガスである基準ガスを使用して行うことができる。この基準ガスには、酸素及び窒素をそれぞれ1%及び99%含んだ基準ガスであるゼロガスと酸素及び窒素をそれぞれ21%及び79%含んだ基準ガスであるスパンガスとを使用することができる。具体的には、ジルコニアセンサの隔壁の両方の面にスパンガスを導入した際の酸素濃度出力によりスパン校正を行い、ジルコニアセンサの隔壁の異なる面にスパンガス及びゼロガスをそれぞれ導入した際の酸素濃度出力によりゼロ点の校正を行うことができる。この校正の履歴に基づいて次回の校正実施日を決定する校正方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上述の経時変化に伴い、ジルコニアセンサは、起電力や応答時間等の性能が劣化する。この劣化は、ジルコニアセンサの内部抵抗の上昇により把握できることが知られている。初期のジルコニアセンサの内部抵抗は200Ω以下である。これに対し、経時変化したジルコニアセンサの内部抵抗は数kΩに上昇する。この内部抵抗は、ジルコニアセンサにスパンガス及びゼロガスを導入して起電力を生じさせた状態において、ジルコニアセンサの解放端子電圧と既知の抵抗により終端した際の端子電圧とに基づいて算出することができる。この抵抗の測定は、例えば、上述の校正の際に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-017695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の抵抗の測定では、スパンガス及び比較的高価なゼロガスが必要になり、利便性が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本開示では、抵抗測定の利便性を向上させる酸素濃度計、酸素濃度検出システム及びジルコニアセンサの抵抗検出方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の酸素濃度計は、ジルコニアセンサと、上記ジルコニアセンサに並列に接続される抵抗と、上記ジルコニアセンサ及び上記抵抗に並列に接続されて電流を供給する定電流回路と、上記供給される電流に応じた上記ジルコニアセンサの電圧に基づいて上記ジルコニアセンサの抵抗を検出する抵抗検出部と、上記ジルコニアセンサに供給される被測定ガス及び比較ガスの酸素濃度差に起因する上記ジルコニアセンサの電圧に基づいて上記被測定ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出部とを具備することを特徴とする。
【0009】
また、本開示の酸素濃度検出システムは、ジルコニアセンサと、上記ジルコニアセンサに並列に接続される抵抗と、上記ジルコニアセンサ及び上記抵抗に並列に接続されて電流を供給する定電流回路と、上記供給される電流に応じた上記ジルコニアセンサの電圧に基づいて上記ジルコニアセンサの抵抗を検出する抵抗検出部と、上記ジルコニアセンサに供給される被測定ガス及び比較ガスの酸素濃度差に起因する上記ジルコニアセンサの電圧に基づいて上記被測定ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、上記検出されたジルコニアセンサの抵抗に基づいて上記ジルコニアセンサの劣化を検出する劣化検出部とを具備することを特徴とする。
【0010】
また、本開示のジルコニアセンサの抵抗検出方法は、ジルコニアセンサに抵抗を接続した際の上記ジルコニアセンサの電圧と定電流回路を上記ジルコニアセンサ及び上記抵抗に並列に接続して電流を供給した際の上記ジルコニアセンサの電圧とに基づいて上記ジルコニアセンサの抵抗を検出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る酸素濃度検出システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態に係るジルコニアセンサの構成例を示す図である。
図3A】実施形態に係るジルコニアセンサの抵抗の測定の一例を示す図である。
図3B】実施形態に係るジルコニアセンサの抵抗の測定の他の例を示す図である。
図4】実施形態に係るジルコニアセンサ電圧の変化の一例を示す図である。
図5】実施形態に係るジルコニアセンサの抵抗の測定手順の一例を示す図である。
図6】実施形態に係るジルコニアセンサの等価回路の一例を示す図である。
図7A】実施形態に係るジルコニアセンサ電圧の変化の一例を示す図である。
図7B】実施形態に係るジルコニアセンサ電圧の変化の他の例を示す図である。
図8】実施形態に係るジルコニアセンサの劣化の検出の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
[酸素濃度検出システムの構成]
図1は、実施形態に係る酸素濃度検出システムの構成例を示す図である。同図は、酸素濃度検出システム1の構成例を表すブロック図である。酸素濃度検出システム1は、酸素濃度計10と、劣化検出部20と、保持部30と、伝達部40とを備える。
【0014】
酸素濃度計10は、ジルコニアセンサ(同図のジルコニアセンサ100)を備えて被測定ガスの酸素濃度を測定するものである。この酸素濃度計10は、既知の酸素濃度の比較ガスと被測定ガスとの酸素濃度差を検出することにより、被測定ガスの酸素濃度を測定し、出力する。また、酸素濃度計10は、ジルコニアセンサ100の抵抗の測定を更に行う。この抵抗の変化によりジルコニアセンサ100の異常を検出することができる。ここでジルコニアセンサ100の異常とは、ジルコニアセンサ100の経時変化に伴う劣化や破損が該当する。酸素濃度計10は、測定したジルコニアセンサ100の抵抗を更に出力する。
【0015】
劣化検出部20は、ジルコニアセンサ100の異常を検出するものである。この劣化検出部20は、酸素濃度計10から出力されたジルコニアセンサ100の抵抗に基づいてジルコニアセンサ100の劣化を検出する。例えば、劣化検出部20は、ジルコニアセンサ100の抵抗が所定の閾値に達した場合に、ジルコニアセンサ100が劣化したものと判断することができる。また、劣化検出部20は、酸素濃度計10から出力されたジルコニアセンサ100の抵抗(抵抗値)を保持部30に保持させる。劣化検出部20は、保持部30に保持された抵抗に基づいて抵抗の変化を検出し、ジルコニアセンサ100の経時変化を検出することができる。劣化検出部20は、この経時変化により劣化の進行を解析し、劣化を予測することもできる。また、劣化検出部20は、ジルコニアセンサ100の破損を検出することもできる。具体的には、ジルコニアセンサ100の抵抗値が急に変化した場合にジルコニアセンサ100の破損を検出することができる。
【0016】
保持部30は、ジルコニアセンサ100の抵抗を保持するものである。この保持部30は、例えば、ハードディスク等の記憶装置により構成することができる。保持部30は、劣化検出部20の制御に基づいてジルコニアセンサ100の抵抗を時系列に保持する。例えば、劣化検出部20は、ジルコニアセンサ100の抵抗値に検出時刻を対応付けて保持(記憶)することができる。
【0017】
伝達部40は、劣化検出部20が検出したジルコニアセンサ100の異常を伝達するものである。例えば、伝達部40は、表示装置により構成することができる。この表示装置にジルコニアセンサ100の異常の解析結果を表示することにより、使用者に伝達することができる。また、例えば、伝達部40には、上位のシステムに警報を発する装置を適用することもできる。
【0018】
[酸素濃度計の構成]
同図の酸素濃度計10は、ジルコニアセンサ100と、抵抗110と、定電流回路120と、電圧測定部130と、抵抗検出部140と、酸素濃度検出部150とを備える。また、同図の酸素濃度計10は、接続部161及び162を更に備える。
【0019】
ジルコニアセンサ100は、安定化ジルコニアにより構成されて酸素濃度を検出するセンサ素子である。このジルコニアセンサ100は、2端子素子に構成され、被測定ガスと比較ガスとの酸素濃度差に応じた電圧を出力する。ジルコニアセンサ100の構成の詳細については後述する。
【0020】
抵抗110は、ジルコニアセンサ100の抵抗の測定の際にジルコニアセンサ100に並列に接続される抵抗である。
【0021】
定電流回路120は、ジルコニアセンサ100の抵抗の測定の際にジルコニアセンサ100に並列に接続されて定電流を供給する回路である。この定電流回路120には、公知の回路を適用することができる。
【0022】
接続部161は、ジルコニアセンサ100の抵抗の測定の際に抵抗110をジルコニアセンサ100に接続するものである。接続部162は、ジルコニアセンサ100の抵抗の測定の際に定電流回路120をジルコニアセンサ100に接続するものである。これら接続部161及び162には、後述するスイッチを使用することができる。
【0023】
電圧測定部130は、ジルコニアセンサ100の端子電圧を測定するものである。この電圧測定部130は、電圧計(後述する電圧計131)を備える。この電圧計131によりジルコニアセンサ100の端子電圧を測定する。測定したジルコニアセンサ100の電圧は、抵抗検出部140及び酸素濃度検出部150に対して出力される。
【0024】
抵抗検出部140は、ジルコニアセンサ100の抵抗を検出するものである。この抵抗検出部140は、電圧測定部130から出力されたジルコニアセンサ100の電圧に基づいてジルコニアセンサ100の抵抗を検出する。抵抗検出部140によるジルコニアセンサ100の抵抗の検出の詳細については後述する。
【0025】
酸素濃度検出部150は、酸素濃度を検出するものである。この酸素濃度検出部150は、電圧測定部130から出力されたジルコニアセンサ100の電圧に基づいて被測定ガスの酸素濃度を検出する。酸素濃度検出部150による酸素濃度の検出の詳細については、後述する。
【0026】
[ジルコニアセンサの構成]
図2は、実施形態に係るジルコニアセンサの構成例を示す図である。同図は、ジルコニアセンサ100の構成例を表す模式断面図である。ジルコニアセンサ100は、ジルコニア管101と、電極102及び103とを備える。
【0027】
ジルコニア管101は、安定化ジルコニアを管状に加工したものである。このジルコニア管101は、自身の内側及び外側にそれぞれ導入されたガスの酸素濃度差に応じて起電力を生じる。なお、ジルコニア管101は、前述の隔壁に相当する。
【0028】
電極102及び103は、ジルコニア管101に配置される電極である。電極102はジルコニア管101の外側に配置され、電極103はジルコニア管101の内側に配置される。この電極102及び103は、多孔質の白金により構成することができる。電極102及び103により、ジルコニア管101の起電力を外部に取り出すことができる。電極102及び103は、ジルコニアセンサ100の2つの出力端子にそれぞれ接続される。
【0029】
ジルコニア管101は、不図示のヒータにより750℃に加熱される。高温のジルコニア管101は、固体電解質となり、酸素濃淡電池として作用する。同図は、このジルコニア管101の内側に被測定ガスを流し、ジルコニア管101の外側に比較ガスを流す場合の例を表したものである。この比較ガスには、空気のような既知の酸素濃度を有するガスを使用することができる。同図の白抜きの矢印が被測定ガスの流れを表し、黒の矢印が比較ガスの流れを表す。ジルコニア管101は、厚さ方向にこれらのガスの酸素濃度差に応じた起電力を生じる。この起電力に係る電圧を電極102及び103により取り出すことにより、酸素濃度差に応じた電圧を出力させることができる。
【0030】
[ジルコニアセンサの抵抗の測定]
図3Aは、実施形態に係るジルコニアセンサの抵抗の測定の一例を示す図である。同図は、ジルコニアセンサ100の抵抗を測定する際の回路の結線を表した図である。同図を使用してジルコニアセンサ100の抵抗の測定を説明する。同図の回路は、ジルコニアセンサ100と、抵抗110と、定電流回路120と、スイッチ191-193と、電圧計131とを備える。電圧計131は、電圧測定部130に含まれる電圧計である。
【0031】
なお、同図に表したように、ジルコニアセンサ100は、直列に接続された電圧源111及び抵抗112により表すことができる。電圧源111は、酸素濃度差に応じた起電力に相当する電圧の電圧源である。抵抗112は、ジルコニアセンサ100の内部抵抗である。同図の回路は、この抵抗112の抵抗値を測定する回路である。便宜上、ジルコニアセンサ100において、抵抗112が接続される端子を高電位側端子と称し、電圧源111が接続される端子を低電位側端子と称する。
【0032】
直列に接続された抵抗110及びスイッチ191がジルコニアセンサ100の高電位側端子及び低電位側端子の間に接続される。電圧計131がジルコニアセンサ100の高電位側端子及び低電位側端子の間に接続される。定電流回路120のシンク側端子がスイッチ192を介してジルコニアセンサ100の高電位側端子に接続される。定電流回路120のソース側端子は、接地される。スイッチ193の一端はジルコニアセンサ100の低電位側端子に接続され他端は接地される。
【0033】
スイッチ191を閉じる(オンする)ことにより、抵抗110をジルコニアセンサ100に並列に接続することができる。また、スイッチ192及び193をオンすることにより、定電流回路120をジルコニアセンサ100に並列接続することができる。
【0034】
定電流回路120の一端を接地し、スイッチ193を介して電圧源111の低電位側端子を接地することにより、定電流回路120の電流経路を構成することができ、定電流回路120の制御を簡略化することができる。また、定電流回路120を電圧測定部130の電圧計131と共通に接地することもできる。なお、電圧測定部130の内部においてジルコニアセンサ100の低電位側端子が接地される場合には、スイッチ193を省略することができる。
【0035】
図3Bは、実施形態に係るジルコニアセンサの抵抗の測定の他の例を示す図である。同図は、定電流回路120のソース側端子がスイッチ194を介してジルコニアセンサ100の低電位側端子に接続される例を表したものである。定電流回路120の両端をスイッチ192及び194を使用してジルコニアセンサ100に接続する構成を採ることにより、定電流回路120のジルコニアセンサ100への接続を解除した後の定電流回路120の影響を低減することができる。
【0036】
また、定電流回路120は、ジルコニアセンサ100に対して同図の逆方向に電流を流すこともできる。また、抵抗の測定の度に、定電流回路120の電流の方向を切り替えることもできる。
【0037】
[ジルコニアセンサの抵抗の測定手順]
図4は、実施形態に係るジルコニアセンサ電圧の変化の一例を示す図である。同図は、ジルコニアセンサ100の抵抗112を測定する際のジルコニアセンサ100の電圧の変化を表した図である。同図の「センサ電圧」は、電圧計131により測定したジルコニアセンサ100の電圧を表す。当初、酸素濃度計10は、酸素濃度を検出する状態にあり、ジルコニアセンサ100の電圧は、ジルコニアセンサ100に導入されたガスの酸素濃度に応じた電圧Vgasを出力する。また、初期状態において、スイッチ191-193は、オフの状態となる。なお、抵抗110の抵抗値をRrefと称する。
【0038】
(1)において、酸素濃度計10をシステムホールド状態に移行させる。これにより、酸素濃度の測定結果の上位の制御システムへの出力が停止される。
【0039】
(2)において、スイッチ191をオン状態にする。抵抗110がジルコニアセンサ100に並列に接続される。これにより、ジルコニアセンサ100の出力電圧がレベルシフトする。この際のジルコニアセンサ100の出力電圧をVrefと称する。このVrefを電圧計131により測定する(3)。
【0040】
(4)において、スイッチ192及び193をオン状態にする。定電流回路120がジルコニアセンサ100及び抵抗110に並列に接続される。ここで、定電流回路120が供給する電流をIrefと称する。このIrefによりジルコニアセンサ100の出力電圧が更にレベルシフトする。この際の電圧をVcellと称する。このVcellを電圧計131により測定する(5)。
【0041】
(6)において、スイッチ192及び193をオフ状態にする。定電流回路120からの電流の供給が停止される。
【0042】
(7)において、スイッチ191をオフ状態にする。抵抗110の接続が解除される。ジルコニアセンサ100の出力電圧がVgasに戻る。なお、ジルコニアセンサ100の出力電圧がVcellから変動(遷移)してVgasに戻るまでの時間を遷移時間と称する。
【0043】
(8)において、システムホールド状態を解除する。
【0044】
ジルコニアセンサ100の抵抗112の抵抗値(Rcell)は、Vref、Vcell、Iref及びRrefを用いて次式のように表すことができる。
【0045】
【数1】
【0046】
図5は、実施形態に係るジルコニアセンサの抵抗の検出手順の一例を示す図である。まず、ジルコニアセンサ100に並列抵抗を接続する(ステップS101)。これは、ジルコニアセンサ100に抵抗110を並列に接続することにより行うことができる。次に、ジルコニアセンサ100の出力電圧(Vref)を測定する(ステップS102)。次に、ジルコニアセンサ100に定電流を供給する(ステップS103)。これは、ジルコニアセンサ100に定電流回路120を接続することにより行うことができる。次に、ジルコニアセンサ100の出力電圧(Vcell)を測定する(ステップS104)。
【0047】
次に、Vref及びVcellに基づいてジルコニアセンサ100の抵抗を検出する(ステップS105)。これは、上述の数式(1)を使用して抵抗値(Rcell)を算出することにより行うことができる。次に、定電流の供給を停止する(ステップS106)。これは、定電流回路120の接続を解除することにより行うことができる。次に、並列抵抗の接続を解除する(ステップS107)。これは、抵抗110の接続を解除することにより行うことができる。以上の手順によりジルコニアセンサ100の抵抗を検出することができる。
【0048】
このように、基準ガス等を使用することなくジルコニアセンサ100の抵抗112を測定することができ、利便性を向上させることができる。また、抵抗110をジルコニアセンサ100に並列に接続することにより、更に利便性を向上させることができる。抵抗110の効果について説明する。
【0049】
[並列抵抗の効果1]
図3の回路から抵抗110及びスイッチ191を除去した回路においても、ジルコニアセンサ100の抵抗112を検出することは可能である。この場合、抵抗112は、次式により算出することができる。
Rcell=(Vgas-Vcell)/Iref
ここで、ジルコニアセンサ100の抵抗が比較的低い値、例えば、100Ωの場合、Irefを0.5mAとすることにより、Vgas-Vcellの値を50mV程度にすることができる。この電圧は、酸素濃度測定の際のジルコニアセンサ100の出力電圧と略同じ電圧であり、電圧計131により容易に測定できる範囲の電圧である。
【0050】
その後、経時変化によりジルコニアセンサ100の抵抗が5kΩに上昇すると、Vgas-Vcellの値は、2.5Vに上昇する。この電圧を測定するため、電圧計131のレンジ切り替え等が必要となる。電圧計131の構成が複雑になるという問題がある。
【0051】
これに対し、100Ω程度の抵抗110を並列に接続することにより、ジルコニアセンサ100の抵抗112が数kΩに上昇した場合であっても、Vgas-Vcellを数100mVにすることができる。電圧計131による電圧の測定を簡略化することができる。
【0052】
[並列抵抗の効果2]
また、抵抗110を接続することによりジルコニアセンサ100の抵抗測定後の復帰時間を短縮することもできる。これについてジルコニアセンサ100の交流等価回路を用いて説明する。
【0053】
[ジルコニアセンサの等価回路]
図6は、実施形態に係るジルコニアセンサの等価回路の一例を示す図である。同図は、容量分を付加したジルコニアセンサ100の等価回路を表した図である。同図に表したように、ジルコニアセンサ100は、電圧源111、抵抗113-116及びキャパシタ117-119により構成される。同図のジルコニアセンサ100は、並列接続された抵抗113及びキャパシタ117と、抵抗114と、並列接続された抵抗115及びキャパシタ118と、並列接続された抵抗116及びキャパシタ119と、電圧源111とが直列に接続されて構成される。同図は、ジルコニアセンサ100の交流的な等価回路を表す。これに対し、図3のジルコニアセンサ100は、直流等価回路に該当する。
【0054】
抵抗113及び116は、電極界面抵抗を表す。抵抗114は、粒子抵抗を表す。抵抗115は、粒界抵抗を表す。これら、抵抗113-116が図3における抵抗112を構成する。また、抵抗113、115及び116には、それぞれキャパシタ成分(キャパシタ117-119)を有する。これらのキャパシタ成分は、比較的大きな静電容量となる。このキャパシタにより、図4において説明した遷移時間が増加する。
【0055】
[ジルコニアセンサ電圧の変化]
図7Aは、実施形態に係るジルコニアセンサ電圧の変化の一例を示す図である。同図は、並列抵抗(抵抗110)がない場合のジルコニアセンサ100の出力電圧の変化を比較例として表した図である。同図の実線は、ジルコニアセンサ100にキャパシタ成分が付加されない場合の電圧の変化を表す。点線は、キャパシタ成分を考慮した場合の電圧の変化を表す。
【0056】
並列抵抗がない場合、(4)において電圧の遷移に遅れを生じる。しかし、キャパシタ成分は定電流回路120により急速に充電されるため、比較的短い遅延時間となる。一方、(6)において、定電流回路120の接続が解除された際にも遅れを生じる。キャパシタ成分の放電時間の影響によるものである。キャパシタ成分の放電は並列に接続された抵抗113等を介して行われるため、比較的長い遅延時間となる。このため、システムホールド状態の解除タイミングを遅らせる等により、システムホールド状態の時間を長くする必要がある。
【0057】
図7Bは、実施形態に係るジルコニアセンサ電圧の変化の他の例を示す図である。同図は、並列抵抗(抵抗110)がある場合のジルコニアセンサ100の出力電圧の変化を表した図である。この場合、(6)において抵抗110がキャパシタ成分の放電に寄与することになるため、放電時間が短くなる。システムホールド状態の時間を短くすることができる。このように、抵抗110をジルコニアセンサ100に並列に接続することにより、システムホールド状態の時間を短くすることができる。ジルコニアセンサ100の抵抗の測定のためにシステムを停止する時間を短くすることができる。
【0058】
このような抵抗110は、経時変化前のジルコニアセンサ100の抵抗値の2乃至10倍の抵抗値にすると好適である。電圧計131によるジルコニアセンサ100の抵抗の測定を容易に行うことができるためである。また、抵抗110は、経時変化前のジルコニアセンサ100の抵抗値の4乃至5倍にすると更に好適である。ジルコニアセンサ100のキャパシタ成分の放電時間をより短縮することができるためである。
【0059】
[ジルコニアセンサの劣化検出]
図8は、実施形態に係るジルコニアセンサの劣化の検出の一例を示す図である。同図は、ジルコニアセンサ100の抵抗の変化を表した図である。同図の横軸は経過時間を表す。縦軸は、ジルコニアセンサ100の抵抗を表す。また、閾値2は、ジルコニアセンサ100の劣化を検出する抵抗値を表す。抵抗値が閾値2に達したジルコニアセンサ100は、劣化により酸素濃度の測定に使用できなくなったと判断することができる。また、閾値1は、ジルコニアセンサ100が劣化するまでの時間を予測する予測診断を行う抵抗値である。閾値1に達したジルコニアセンサ100は、予測診断の対象にすることができる。この予測診断は、図1において説明した劣化検出部20により行うことができる。
【0060】
同図のグラフ301-303は、それぞれ異なるジルコニアセンサ100における抵抗の変化を表すグラフである。これらは、使用状態等により異なる形状のグラフとなる。閾値1に達したグラフ301及び302のジルコニアセンサ100は、予測診断を行うことができる。同図の一点鎖線のグラフは、予測診断の結果を表したものである。この予測診断は、図1において説明した保持部30に保持した抵抗値により行うことができる。例えば、劣化検出部20は、同図のグラフ301等を延長することにより予測診断を行うことができる。また、回帰分析等により近似曲線を算出し、予測診断を行うこともできる。予測診断の結果は、伝達部40を介して使用者等に伝達される。
【0061】
また、劣化検出部20は、予測診断に加えてジルコニアセンサ100の酸素濃度のデータや周囲温度及び湿度等の環境データからなるビックデータを使った機械学習や、AIによる診断を行うこともできる。これにより、使用条件に応じたジルコニアセンサ100の寿命予測等の解析を行うことが可能となる。
【0062】
なお、劣化検出部20や保持部30は、パソコンやサーバのアプリケーションソフトとして実現することもできる。
【0063】
このように、定電流回路120をジルコニアセンサ100に接続してジルコニアセンサ100の抵抗を測定することにより、基準ガス等を省略することができ、利便性を向上させることができる。また、ジルコニアセンサ100の抵抗の測定を容易に行うことができるため、抵抗測定データの母数を増やすことができ、ジルコニアセンサ100の寿命予測等の解析が可能となる。
【0064】
また、ジルコニアセンサ100の抵抗の測定の際、抵抗110を並列に接続することにより、出力電圧の測定範囲を狭くするとともに定常状態への復帰時間を短縮することができる。これにより、利便性を更に向上させることができる。
【0065】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 酸素濃度検出システム
10 酸素濃度計
20 劣化検出部
30 保持部
40 伝達部
100 ジルコニアセンサ
110 抵抗
120 定電流回路
130 電圧測定部
131 電圧計
140 抵抗検出部
150 酸素濃度検出部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8