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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/18 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
H02K5/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021214126
(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公開番号】P2023097805
(43)【公開日】2023-07-10
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 明範
(72)【発明者】
【氏名】村上 正憲
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180141(JP,A)
【文献】特開2021-118624(JP,A)
【文献】国際公開第2021/017189(WO,A1)
【文献】中国実用新案第203942406(CN,U)
【文献】特開2015-126583(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112366877(CN,A)
【文献】特開2021-061657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端側に開口端部を有する円筒状の樹脂外郭と、
前記樹脂外郭と一体的に形成されたコイルおよび固定子鉄心を備える固定子と、
前記固定子の内径側に配置された回転子と、
前記樹脂外郭の前記開口端部を覆う内面部と前記内面部とは反対側の外面部とを有する板部と、前記板部と一体的に形成され前記外面部から前記軸方向に突出するフィン部と、を有する金属製の蓋部材と、
前記樹脂外郭の外周面に配置され、前記樹脂外郭の外周面および前記蓋部材と熱的に接続される金属部材と
を備え、
前記金属部材は、前記樹脂外郭の外周面に前記軸方向に沿って配置された第1の金属部と、前記第1の金属部に接続され前記開口端部に前記樹脂外郭の径方向に沿って配置された第2の金属部と、前記第2の金属部に接続され前記前記樹脂外郭の内周面に前記軸方向に沿って配置された第3の金属部とをさらに有し、
前記第2の金属部または第3の金属部は、前記軸方向から見て、前記フィン部と重なる位置に配置され、
前記フィン部は、前記板部に放射状に設けられる複数のフィン部を含む
電動機。
【請求項2】
軸方向の一端側に開口端部を有する円筒状の樹脂外郭と、
前記樹脂外郭と一体的に形成されたコイルおよび固定子鉄心を備える固定子と、
前記固定子の内径側に配置された回転子と、
前記樹脂外郭の前記開口端部を覆う内面部と前記内面部とは反対側の外面部とを有する板部と、前記板部と一体的に形成され前記外面部から前記軸方向に突出するフィン部と、を有する金属製の蓋部材と、
前記樹脂外郭の外周面に配置され、前記樹脂外郭の外周面および前記蓋部材と熱的に接続される金属部材と、
前記回転子が固定され、前記軸方向に延びる回転シャフトと、
前記蓋部材に設けられた、前記回転シャフトを回転自在に支持する第1の軸受を収容する金属製の第1の軸受収容部と、
前記樹脂外郭に設けられた、前記回転シャフトを回転自在に支持する第2の軸受を収容する金属製の第2の軸受収容部と、
前記第1の軸受収容部の外周面に装着された防振部材と
を備え、
前記金属部材は、一端側が前記第1の軸受収容部と接触し、他端側が前記第2の軸受収容部と接触し、
前記蓋部材は、前記軸方向における前記フィン部側への前記防振部材の移動を規制することで前記防振部材と前記フィン部との間に所定の空隙を形成する規制部をさらに有する
電動機。
【請求項3】
軸方向の一端側に開口端部を有する円筒状の樹脂外郭と、
前記樹脂外郭と一体的に形成されたコイルおよび固定子鉄心を備える固定子と、
前記固定子の内径側に配置された回転子と、
前記樹脂外郭の前記開口端部を覆う内面部と前記内面部とは反対側の外面部とを有する板部と、前記板部と一体的に形成され前記外面部から前記軸方向に突出するフィン部と、を有する金属製の蓋部材と、
前記樹脂外郭の外周面に配置され、前記樹脂外郭の外周面および前記蓋部材と熱的に接続される金属部材と
前記樹脂外郭と前記蓋部材とで覆われた内部空間に配置される回路基板と、
を備え、
前記蓋部材は、前記内面部に形成され前記開口端部と当接する軸方向位置決め部と、前記内面部から前記回路基板側に突出し、前記樹脂外郭の内周面に接触する環状突出部と、前記内面部から前記回路基板側に向かって突出し前記回路基板と熱的に接触する突起部とをさらに有し、
前記樹脂外郭は、前記樹脂外郭の前記外周面に前記軸方向に沿った第1の溝部と、前記開口端部側の前記第1の溝部に接続され、前記開口端部に径方向に沿った第2の溝部と、前記樹脂外郭の内周面側の前記第2の溝部に接続され、前記樹脂外郭の前記内周面の前記軸方向に沿った第3の溝部とをさらに有し、
前記金属部材は、前記第1の溝部に収容された第1の金属部と、前記第1の金属部に接続され前記第2の溝部に収容された第2の金属部と、前記第2の金属部に接続され前記第3の溝部に収容された第3の金属部とをさらに有し、
前記第3の金属部は、前記環状突出部と熱的に接触するとともに弾性的に接触する接触部を有する
電動機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電動機であって、
前記樹脂外郭の前記外周面は、前記軸方向に沿った溝部を有し、
前記金属部材の少なくとも一部は、帯状であるとともに前記溝部に収容される
電動機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動機であって、
前記樹脂外郭は、前記外周面から外径方向へ突出し周方向に複数形成された外周面凸部を有し、
前記溝部は、前記周方向において隣り合った2つの前記外周面凸部の間に位置する
電動機。
【請求項6】
請求項1に記載の電動機であって、
前記電動機は、前記樹脂外郭と前記蓋部材とで覆われた内部空間に配置される回路基板をさらに備え、
前記蓋部材は、前記内面部から前記回路基板側に突出し、前記樹脂外郭の内周面に接触する環状突出部をさらに有し、
前記第3の金属部は、前記環状突出部と熱的に接触する接触部を有する
電動機。
【請求項7】
請求項2に記載の電動機であって、
前記金属部材は、前記樹脂外郭の外周面に前記軸方向に沿って配置された第1の金属部と、前記第1の金属部に接続され前記開口端部に前記樹脂外郭の径方向に沿って配置された第2の金属部と、前記第2の金属部に接続され前記前記樹脂外郭の内周面に前記軸方向に沿って配置された第3の金属部とをさらに有する
電動機。
【請求項8】
請求項7に記載の電動機であって、
前記電動機は、前記樹脂外郭と前記蓋部材とで覆われた内部空間に配置される回路基板をさらに備え、
前記蓋部材は、前記内面部から前記回路基板側に突出し、前記樹脂外郭の内周面に接触する環状突出部をさらに有し、
前記第3の金属部は、前記環状突出部と熱的に接触する接触部を有する
電動機。
【請求項9】
請求項3に記載の電動機であって、
前記樹脂外郭は、前記外周面から外径方向へ突出し周方向に複数形成された外周面凸部を有し、
前記第1の溝部は、前記周方向において隣り合った2つの前記外周面凸部の間に位置する
電動機。
【請求項10】
請求項3、7、8、又は9に記載の電動機であって、
前記第2の金属部または第3の金属部は、前記軸方向から見て、前記フィン部と重なる位置に配置される
電動機。
【請求項11】
請求項2、3、7、8、9、又は10のいずれか1つに記載の電動機であって、
前記フィン部は、前記板部に放射状に設けられる複数のフィン部を含む
電動機。
【請求項12】
請求項1、3、4、5、6、9、10又は11のいずれか1つに記載の電動機であって、
前記電動機は、
前記回転子が固定され、前記軸方向に延びる回転シャフトと、
前記蓋部材に設けられた、前記回転シャフトを回転自在に支持する第1の軸受を収容する金属製の第1の軸受収容部と、
前記樹脂外郭に設けられた、前記回転シャフトを回転自在に支持する第2の軸受を収容する金属製の第2の軸受収容部と
をさらに備え、
前記金属部材は、一端側が前記第1の軸受収容部と接触し、他端側が前記第2の軸受収容部と接触する
電動機。
【請求項13】
請求項12に記載の電動機であって、
前記電動機は、
前記第1の軸受収容部の外周面に装着された防振部材をさらに備え、
前記蓋部材は、前記軸方向における前記フィン部側への前記防振部材の移動を規制することで前記防振部材と前記フィン部との間に所定の空隙を形成する規制部をさらに有する
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、さらに詳しくは電動機の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動機で発生した熱を電動機の外部へ放熱する電動機が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、モータの外郭である円筒状の樹脂モールド体と、上記樹脂モールド体と一体的に形成されたステータと、上記ステータの内周側にモータ回転軸を有するロータとを有するモータであって、上記樹脂モールド体における外周面に、径方向に突出し軸方向に延びる凸部を有し、ステータで発生する熱を放熱する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5288065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電動機の出力の増加が求められている一方、電動機の出力の増加によって電動機の発熱量も増加している。しかしながら、特許文献1において、樹脂モールド体の外周面に設けられた凸部は、樹脂で形成されているため固定子の放熱性を十分に高められず、その結果、モータの出力電力を十分に増加させることが困難であるという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、放熱性を高めることができる電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電動機は、軸方向の一端側に開口端部を有する円筒状の樹脂外郭と、上記樹脂外郭と一体的に形成されたコイルおよび固定子鉄心を備える固定子と、上記固定子の内径側に配置された回転子と、上記樹脂外郭の上記開口端部を覆う内面部と上記内面部とは反対側の外面部と上記外面部から上記軸方向に突出するフィン部とを有する金属製の蓋部材と、上記樹脂外郭の外周面に配置され、上記樹脂外郭の外周面および上記蓋部材と熱的に接続される金属部材と、を備える。
【0008】
上記電動機によれば、上記金属部材は、上記樹脂外郭の外周面に配置され、上記樹脂外郭の外周面と上記蓋部材とを熱的に接続する。このため、上記固定子で生じた熱を上記樹脂外郭の外周面に配置された上記金属部材を介して金属製の上記蓋部材から放熱することができる。
【0009】
上記樹脂外郭の外周面は、上記軸方向に沿った溝部を有し、上記金属部材の少なくとも一部が、帯状であるとともに上記溝部に収容されてもよい。
【0010】
上記樹脂外郭は、上記外周面から外径側へ突出し周方向に複数形成された外周面凸部を有し、上記溝部は、上記周方向において隣り合った2つの上記外周面凸部の間に位置してもよい。
【0011】
上記金属部材は、上記樹脂外郭の外周面に上記軸方向に沿って配置された第1の金属部と、上記第1の金属部に接続され上記開口端部に上記樹脂外郭の径方向に沿って配置された第2の金属部と、上記第2の金属部に接続され上記樹脂外郭の内周面に上記軸方向に沿って配置された第3の金属部とをさらに有してもよい。
【0012】
上記電動機は、上記樹脂外郭と上記蓋部材とで覆われた内部空間に配置される回路基板をさらに備え、上記蓋部材は、上記内面部から上記回路基板側に突出し、上記樹脂外郭の内周面に接触する環状突出部をさらに有し、上記第3の金属部は、上記環状突出部と熱的に接触する接触部を有してもよい。
【0013】
上記第2の金属部または第3の金属部は、上記軸方向から見て、上記フィン部と重なる位置に配置されていてもよい。
【0014】
上記フィン部は、上記板部に放射状に設けられる複数のフィン部を含んでもよい。
【0015】
上記電動機は、上記回転子が固定され、上記軸方向に延びる回転シャフトと、上記蓋部材に設けられた、上記回転シャフトを回転自在に支持する第1の軸受を収容する金属製の第1の軸受収容部と、上記樹脂外郭に設けられた、上記回転シャフトを回転自在に支持する上記第2の軸受を収容する金属製の第2の軸受収容部とをさらに備え、上記金属部材は、一端側が上記第1の軸受収容部と接触し、他端側が上記第2の軸受収容部と接触してもよい。
【0016】
上記電動機は、上記第1の軸受収容部の外周面に装着された防振部材をさらに備え、上記蓋部材は、上記軸方向における上記フィン部側への上記防振部材の移動を規制することで上記防振部材と上記フィン部との間に所定の空隙を形成する規制部をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放熱性を高めることができる電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る電動機の斜視図である。
図2】上記電動機の断面図である。
図3】上記電動機の蓋部材をフィン側から見た図である。
図4】上記電動機の蓋部材を突起部側から見た図である。
図5】上記電動機の底部側から見た図である。
図6】防振部材を上面側から見た斜視図である。
図7】防振部材を下面側から見た斜視図である。
図8】金属部材の斜視図である。
図9】上記金属部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0020】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
図1は、実施形態に係る電動機1の斜視図であり、図2は、実施形態に係る電動機1の断面図である。本実施形態の電動機1は、例えば、ブラシレスDCモータであり、建物の壁または天井等に取り付けられ、室内外を連通するダクトの送風機の駆動源に用いられる。
【0022】
[電動機の全体構成]
電動機1は、樹脂外郭10と、固定子2(固定子鉄心21)と、回転子3と、蓋部材4と、回路基板5と、金属部材11とを備える。
【0023】
以下では、例として、回転磁界を発生する円筒状の固定子2の径方向の内側に、永久磁石部32を有する円柱状の回転子3を回転可能に配置したインナーロータ型のブラシレスDCモータを電動機1として説明する。
【0024】
また以下の説明において、回転シャフト6の軸心Cは、電動機1の中心軸、つまり回転子3の回転軸でもある。径方向とは、軸心Cを通り、軸方向とは直交する方向である。また内径側とは、径方向の内側(円筒状の固定子2の内周面側)であり、外径側とは、径方向の外側(円筒状の固定子2の外周面側)である。さらに、周方向とは、軸心Cを中心とする回転方向である。
【0025】
(回転子)
図2に示すように、回転子3は、環状の永久磁石部31と、回転子本体30と、回転シャフト6とを有する。回転子本体30は、永久磁石部31に固定される外周面と、回転シャフト6に固定される内周面とを有する。
【0026】
回転子3は、上記外周面に環状に永久磁石部31が配置された表面磁石型である。永久磁石部31は、N極とS極が周方向に等間隔に交互に現れるように、複数(例えば8または10個)の永久磁石で環状に形成されている。なお、永久磁石部31は、典型的には、Nd-Fe-B系合金等の金属焼結体で構成されるが、これ以外にも、磁石粉末を樹脂で固めることで環状に形成されたプラスチックマグネットを用いてもよい。
【0027】
回転子本体30は、外周側鉄心32と、絶縁部材33と、内周側鉄心34とを有する。
【0028】
外周側鉄心32は、環状に形成されており、回転子本体30の外周面を形成する。外周側鉄心32は、複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。
内周側鉄心34は、環状に形成されており、回転子本体30の内周面を形成する複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。内周側鉄心34の中心には、回転シャフト6が圧入やカシメなどによって固着されている。
【0029】
絶縁部材33は、外周側鉄心32と内周側鉄心34との間を電気的に絶縁する。これにより、電動機1の固定子側の静電容量と回転子側の静電容量との差を低減して軸受けの電食を抑制することができる。絶縁部材33は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)などの誘電体の樹脂で形成されており、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に固定されている。絶縁部材33は、環状の成形体であってもよいし、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間にインサート成形等により充填された樹脂材料であってもよい。なお、回転子本体30が外周側鉄心32と内周側鉄心34とに分割されて間に絶縁部材33が形成された場合を例示したが、回転子本体30は絶縁部材33を備えない円筒状の鉄心で形成されてもよい。
【0030】
(固定子)
固定子2は、固定子鉄心21と、コイル22と、インシュレータ(図示略)とを有する。固定子鉄心21は、例えば複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。固定子鉄心21は、環状のヨーク部と、ヨーク部から内周側へ突出する複数のティース部とを有する。固定子鉄心21の各ティース部には、インシュレータを介してコイル22が巻回されている。複数のコイル22は、U相、V相およびW相の3相のそれぞれに対応するコイル22を含む。これらのコイルは、例えば、電気中性点(N点)で相互に接続される。この固定子2(固定子鉄心21)の外周面は、樹脂外郭10で覆われている(図2参照)。固定子2の固定子鉄心21は、回転子3の永久磁石部32と径方向に空隙(磁気ギャップ)を介して対向するように配置されている。
【0031】
(樹脂外郭)
樹脂外郭10は、絶縁性の樹脂材料で構成される。図1図2に示されるように、樹脂外郭10は、軸方向の一端側(本実施形態では回転シャフト6の反出力端部61側)に開口端部101と、軸方向の他端側(本実施形態では回転シャフト6の出力端部62側)に底部102とを有し、中空円筒状に形成される。ここで、反出力端部61とは、回転シャフト6の出力端部62とは反対側の端部である。出力端部62とは、電動機1の負荷側(負荷に接続される側)の端部である。
上述のように、樹脂外郭10は、固定子2と一体成形される。樹脂外郭10を構成する樹脂材料は特に限定されず、例えばBMC(Bulk Molding Compound:不飽和ポリエステルを主成分とする熱可塑性樹脂)で形成される。
【0032】
また、樹脂外郭10は、載置面9を有する。載置面9は、樹脂外郭10の内周面であって、回転子3から間隙を介して回転シャフト6の反出力端部61側に設けられる。載置面9は、後述する回路基板5を支持可能に設けられる。本実施形態において載置面9は、樹脂外郭10の内周面から内径側に突出するように設けられた段部の上記反出力端部61側の面である。載置面9は、樹脂外郭10の内周面に、その周方向に連続的に形成されてもよいし、その周方向に間隔をおいて複数個所に形成されてもよい。
【0033】
図5は、電動機1の底部102側から見た図であり、図2図5に示されるように、樹脂外郭10の底部102は、金属製の第2の軸受収容部82が収容される筒部102aを、さらに有する。第2の軸受収容部82は、底部102に設けられ、後述する第2の軸受81を収容する。
【0034】
筒部102aは、樹脂外郭10の底部102から回転シャフト6の出力端部62側へ突出しており、第2の軸受収容部82が備える後述する円筒収容部821の外周を囲っている。筒部102aは、当該筒部102aの外周面に、軸方向から見て径方向の内側に窪む第2の凹部1021aと、径方向の外側に突出する第2の凸部1022aとが、交互に設けられている。筒部102aは、軸方向から見た中心に、回転シャフト6が挿通される貫通孔が形成されている。筒部102aは、同筒部102aの内周面側に第2の軸受収容部81の円筒部821を収容することで、第2の軸受収容部82を保持している。筒部102aの外周面には、第2の凹部1021a及び第2の凸部1022aと係合する第2の防振部材12b(後述)が取り付けられる。筒部102aが備える第2の凹部1021a及び第2の凸部1022aは、第2の防振部材12bに対する回り止めとして機能する。
【0035】
樹脂外郭10の外周面10Aには、放熱性能を向上させるために、外径方向へ突出する外周面凸部10aが軸方向に延びて形成されている。この外周面凸部10aは、樹脂外郭10の周方向に複数形成される。この外周面凸部10aが軸方向に延びる長さ、及び、外周面凸部10aが外径方向へ突出する突出高さは、適宜設定可能である。
【0036】
外周面凸部10aを形成することによって、樹脂外郭10の外周面10Aにおける表面積を増大することができるため、放熱性を高めることができる。
【0037】
また樹脂外郭10には、後述する金属部材11が配置される溝部10bが設けられる。溝部10bは、第1の溝部101bと第2の溝部102bと、第3の溝部103bと、第4の溝部104bとを有する。
【0038】
図1図2に示されるように、第1の溝部101bは、樹脂外郭10の外周面10Aのうち外周面凸部10aとは重ならない位置に設けられ、樹脂外郭10の外周面10Aに軸方向に沿って形成される。本実施形態では、第1の溝部101bは、樹脂外郭10の外周面10Aのうち、周方向において隣り合った2つの外周面凸部10aの間に位置している。
また、第2の溝部102bは、開口端部101側の第1の溝部101bに接続され、開口端部101に径方向に沿って形成される。また第2の溝部102bは、軸方向から見て後述する蓋部材4のフィン部45と重なる位置に形成される。
また第3の溝部103bは、樹脂外郭10の内周面10B側の第2の溝部102bに接続され、樹脂外郭10の内周面10Bに軸方向に沿って形成される。また第3の溝部103bは、軸方向から見て後述する蓋部材4のフィン部45と重なる位置に形成される。
また第4の溝部104bは、底部102側の第1の溝部101bに接続され、底部102に径方向に沿って形成される。また第4の溝部104bは、軸方向から見て後述する第2の軸受収容部82の少なくとも一部と重なる位置に形成される。
【0039】
溝部10bの幅は、後述する金属部材11が収容される大きさであればよい。
【0040】
第1の溝部101bの内径方向への深さは、特に限られないが、例えば後述する第1の金属部11Aが収容される深さである。
第2の溝部102bの軸方向への深さは、特に限られないが、例えば後述する第2の金属部11Bの軸方向の厚みと同一又は、ほぼ同一である。
第3の溝部103bの外径方向(樹脂外郭10側)への深さは、特に限られないが、例えば後述する第3の金属部11Cの径方向の厚みと同一又は、ほぼ同一である。
第4の溝部104bの軸方向への深さは、特に限られないが、例えば後述する第4の金属部11Dの軸方向の厚みが収容される深さである。
【0041】
第4の溝部104bは、後述する第2軸受収容部82のフランジ部822と金属部材11とを締結させる締結部材N(例えばねじ)が挿通される、貫通穴1041bを有する。
【0042】
(回路基板)
回路基板5は、配線基板50と、配線基板50の表面(回転シャフト6の反出力端部61側の面)に搭載された発熱性を有する電子部品51とを含む。回路基板5は、円板形状であり、回路基板5の周縁部は、載置面9に支持され、例えば、接着、粘着、ネジ締結、はんだ付け等によって樹脂外郭10に対して固定される。なお、回路基板5の周縁部に位置決め用の凸部を、そして樹脂外郭10の内周面に上記凸部と係合する位置決め用の凹部を、それぞれ設けてもよく、これにより回路基板5を周方向に位置決めした状態で載置面9に固定することができる。
【0043】
電子部品51は、主として、パワーMOSFETやIGBT等を集積したパワーIC、モータ駆動電流の制御用IC等の半導体パッケージ部品であるが、コンデンサ等の受動部品であってもよい。
【0044】
なお、配線基板50には、電子部品51のほか、電源ケーブルと接続されるコネクタ部品等の他の部品が搭載されるが、これらの図示は省略する。上記電源ケーブルは、樹脂外郭10の開口端部101の近傍にその周方向の所定角度範囲にわたって形成されたケーブル挿通部(図示略)を通して樹脂外郭10の外部に引き出され、図示しない電源に接続される。
【0045】
(軸受)
図2に示すように、第1の軸受71は、外輪711、内輪712、複数のボール713等を有するボールベアリングである。第2の軸受81は、外輪811、内輪812、複数のボール813等を有するボールベアリングである。
【0046】
第1の軸受71の外輪711は、蓋部材4(第1の軸受収容部41)に固定され、第1の軸受71の内輪712は、回転シャフト6の反出力端部61側に固定される。第2の軸受81の外輪811は、樹脂外郭10の底部102(第2の軸受収容部82)に固定される。第2の軸受81の内輪812は、回転シャフト6の出力端部62に固定される。これにより、回転シャフト6は、第1の軸受71および第2の軸受81により、蓋部材4および樹脂外郭10に対して軸心Cのまわりに回転可能に支持される。
【0047】
第2の軸受収容部82は、金属製であり、上述したように軸心Cを中心とする概ね円筒形状である。第2の軸受収容部82は、第2の軸受81を収容する円筒部821と、円筒部821から外径方向へ延びるフランジ部822とを有し、上述した筒部102aに収容される。
【0048】
フランジ部822は、円環状の板形状であり、軸方向から見てフランジ部822は上述した第4の溝部104bと重なる位置に設けられる。
【0049】
フランジ部822は、軸方向から見て、樹脂外郭10の第4の溝部104bに形成された貫通穴1041bと重なる位置に、フランジ穴822aを有する。フランジ穴822aは、貫通穴1041bを介して、後述する金属部材11と締結部材Nによって締結される。
【0050】
(蓋部材)
図3は、蓋部材4をフィン部45側から見た図であり、図4は蓋部材4を突起部44側から見た図である。
【0051】
蓋部材4は、第1の軸受収容部41と、板部42と、環状突出部43と、突起部44と、フィン部45と、第1の規制部46と、を有する。蓋部材4は、樹脂外郭10の開口端部101に取り付けられ、固定される。蓋部材4は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の熱伝導性に優れた金属材料で形成される。蓋部材4は、板部42と、環状突出部43と、突起部44と、フィン部45とがそれぞれ一体に成形される。蓋部材4は例えば、ダイカスト(鋳造)によって成型される。
【0052】
蓋部材4は、樹脂外郭10の開口端部101を覆うことで樹脂外郭10の開口部を閉塞する蓋部材(ブラケット)としての機能と、第1の軸受71を支持する軸受収容部(ベアリングハウス)としての機能と、電動機内部の電子部品51で生じた熱を電動機外部へ放熱する放熱部材としての機能を有する。蓋部材4は、図示しない複数のネジ部材を用いて、樹脂外郭10の開口端部101に固定される。
【0053】
板部42は、軸心Cを中心とする中心孔40を有する円環形状である。板部42は、樹脂外郭10の開口端部101を覆う内面部424と、内面部424とは反対側(反出力端部61側)の外面部423と、を含む。本実施形態では、板部42の外径は、樹脂外郭10の開口端部101の外径と同一又はほぼ同一の大きさである。また図2図3に示すように、板部42の外面部423には、第1の軸受収容部41とフィン部45と第1の規制部46とが形成される。板部42の内面部424には、軸方向位置決め部420、環状突出部43および突起部44が設けられる。
【0054】
以下、板部42の内面部424に設けられる、軸方向位置決め部420、環状突出部43および突起部44について説明する。
【0055】
環状突出部43は、軸心Cを中心とする中空の円筒状であり、板部42の内面部424側から回路基板5側に突出し、樹脂外郭10の内周面10Bに接触する。環状突出部43は、中心孔40と同一又はほぼ同一の大きさの孔を有し、回転シャフト6が貫通する。環状突出部43は、回路基板5と対向しており、後述する突起部44が配置される配置面431を有する。
【0056】
環状突出部43の軸心Cに平行な断面は、概ね長方形状である。また、図4に示すように、環状突出部43は、切れ目なく周方向に連続的に形成されているが、この限りではなく、一部に切れ目があってもよい。
【0057】
環状突出部43は、径方向位置決め部430を有する。本実施形態では径方向位置決め部430は、樹脂外郭10の開口端部101の内周面に当接し環状突出部43の外周面に形成されている。すなわち、図2図4に示すように、径方向位置決め部430は、樹脂外郭10の内周面10Bに嵌合する円筒面形状である。
【0058】
突起部44は、環状突出部43の配置面431に配置され、板部42の内面部424側から回路基板5側に向かって突出し、回路基板5(本実施形態では電子部品51)に熱的に接触する。
【0059】
図2図4に示すように、本実施形態では、突起部44は、回路基板5上に搭載された電子部品51に向かって突出する直方体形状のブロックである。さらに、突起部44は、電子部品51と対向する対向面441を有する。なお、突起部44の形状は、直方体形状に限られず、例えば、円柱形状であってもよい。
【0060】
対向面441の電子部品51側から見た形状は、電子部品51の形状に合わせて形成されてもよく、例えば四角形状の平面である(図4参照)。対向面441は、例えば蓋部材4のダイカスト等による成形後、旋盤等により、平面に加工されてもよい。
【0061】
電子部品51と突起部44との間には、電子部品51側から順に伝熱部材52と接着部材53が配置されており、突起部44の対向面441は、伝熱部材52および接着部材53を介して電子部品51と熱的に接触する。対向面441と電子部品51との距離は、伝熱部材52の厚みと接着部材53の厚みを足した合計の厚み以下に設定される。これにより、伝熱部材52および接着部材53を介して対向面441を電子部品51の上面に安定して接触させることができる。なお、これに限られず、電子部品51と突起部44との間には伝熱部材52または接着部材53のいずれか一方のみが配置されてもよい。また、蓋部材4は板部42と一体に形成された突起部44を備えなくともよく、例えば、蓋部材4の板部42の内面と電子部品51との間に、蓋部材4とは別体の金属製の伝熱部材が配置されていてもよい。
【0062】
伝熱部材52としては、熱伝導性が良好で、絶縁性が高いものが好ましく、例えばシリコン樹脂製の放熱シートが用いられる。接着部材に関しても同様に、熱伝導性が良好で、絶縁性が高いものが好ましく、例えばシリコン樹脂製の接着剤が用いられる。接着部材53は、伝熱部材52と突起部44とを接着するだけでなく、接着部材53の変形により、突起部44と電子部品51との軸方向の位置のばらつきを吸収する。さらに、接着部材53は、ヒートシンク4が樹脂外郭10へ嵌合される際に、突起部44から電子部品51への押し付ける力を、接着部材53の変形により逃がす。これにより、電子部品51に過度な圧力が加わるのを防ぐとともに、突起部44と電子部品51との安定した熱的接続を確保できる。
【0063】
板部42は、軸方向位置決め部420を有する。図4に示すように、軸方向位置決め部420は、板部42の第1の外周縁部422の内面部424側に形成される。本実施形態において、第1の外周縁部422とは、板部42の、環状突出部43よりも外径側の領域である。
【0064】
軸方向位置決め部420は、第1の外周縁部422の内面部424側に形成され、樹脂外郭10の開口端部101と当接する。図2に示すように、軸方向位置決め部420は、開口端部101に軸心Cの方向に当接する。軸方向位置決め部420は、例えば蓋部材4のダイカスト等による成形後、旋盤等により、平面に加工されてもよい。本実施形態では、軸方向位置決め部420は、軸心Cに直交する平面に形成されている。
【0065】
軸方向位置決め部420は、図4に示すように、第1の外周縁部422の内面部424側全域が軸心Cに直交する平面で形成されるが、この限りではない。例えば、蓋部材4の軸方向位置決め部420は、開口端部101に向かって突出する環状の突出部を有してもよく、樹脂外郭10の開口端部101にはその突出部と対応する環状の溝部を有していてもよい。この突出部の径方向から見た断面は、台形状であってもよいし、曲面形状であってもよい。
【0066】
また図3図4に示すように、板部42の第1の外周縁部422の複数個所には、ねじが挿通されるねじ孔部421が形成される。ねじ孔部421は、本実施形態では、第1の外周縁部422に等角度間隔で3箇所設けられる。なお、第1の外周縁部422に設けられるねじ孔部421の数や位置は適宜変更可能であり、第1の外周縁部422にねじ孔部421を設けなくともよい。樹脂外郭10の開口端部101には、ねじ孔部421と対向する位置にねじ受部(図示略)が形成される。蓋部材4は、各ねじ孔部421に挿通される複数のねじによって樹脂外郭10の開口端部101に固定される。この際、蓋部材4は、樹脂外郭10の開口端部101に対してその周方向に位置決めされる。
【0067】
以下、板部42の外面部423に設けられる、第1の軸受収容部41、フィン部45および第1の規制部46について説明する。
【0068】
フィン部45は、板部42の外面部423に設けられ、軸方向へ突出し、径方向に延びる。フィン部45は、複数のフィンを含み、板部42の中心孔40を中心に放射状に設けられる。
【0069】
蓋部材4は、電子部品51で生じた熱を、上述した突起部44を介してフィン部45へと伝達し、さらにフィン部45を介して電動機1の外部に放熱させる。本実施形態では、その上、電動機1の外部においてフィン部45の備える複数のフィン同士の間を流れる空気により、電動機1の冷却効果をより高めることができる。なお、フィン部45の材質は、アルミニウムに限らずアルミニウム合金や、マグネシウム合金など放熱フィンに好適なものを適宜選択することが可能である。
【0070】
第1の軸受収容部41は、回転シャフト6を回転自在に支持する第1の軸受71を収容する。第1の軸受収容部41は、軸心Cを中心とし、回転シャフト6が貫通する円筒形状を有し、第1の軸受71を収容する。本実施形態では、第1の軸受収容部41に収容される第1の軸受71は、フィン部45の軸方向への突出高さよりも高い位置に設けられる。
【0071】
第1の軸受収容部41の外周面には、周方向に交互に設けられた第1の凹部411a及び第1の凸部412aが形成される。第1の軸受収容部41の外周面は、第1の凹部411a及び第1の凸部412aに係合する後述する第1の防振部材12aが取り付けられる。本実施形態において第1の凹部411a及び第1の凸部412aは、第1の軸受収容部41の外周面の軸方向両端まで、軸方向に沿って形成されるがこれに限らず、第1の凹部411a及び第1の凸部412aは、第1の軸受収容部41の外周面の軸方向に沿って、第1の軸受収容部41の外周面の軸方向の一部に形成されてもよい。
【0072】
第1の規制部46は、蓋部材4の外面部423側に設けられ、後述する第1の防振部材12aと接触する第1の規制面46Aを有する。第1の規制面46Aは、第1の防振部材12aがフィン部45側へ移動するのを規制している。本実施形態では、第1の規制面46Aは、軸方向で第1の防振部材12aとフィン部45との間に配置され、上述したように第1の防振部材12aとフィン部45との間に所定の空隙H1を形成する。
【0073】
第1の規制部46は、軸心Cを中心に第1の軸受収容部41の周囲を囲う円環状である。所定の空隙H1とは、第1の防振部材12aに対して軸方向のフィン部45側への外力が働いた際に、第1の防振部材12aとフィン部45とが接触しない程度の空隙であればよく、例えば2mmである。
【0074】
(防振部材)
図6は防振部材12を上面側から見た斜視図であり、図7は防振部材12を下面側から見た斜視図である。
【0075】
防振部材12は、蓋部材4側に取り付けられる第1の防振部材12aと、樹脂外郭10の底部102側に取り付けられる第2の防振部材12bと、を有する。本実施形態では、第1の防振部材12aと第2の防振部材12bとを形状が共通の部材とすることで、2つの防振部材12a、12bを区別なく取り付けることができる。なお、第1の防振部材12aと第2の防振部材12bとは形状が異なっていてもよい。
【0076】
防振部材12は、例えば防振ゴムであり、振動エネルギーの吸収性に優れた材料が用いられる。
【0077】
第1の防振部材12aは、図6図7に示すように、中空の円筒形状である。第1の防振部材12aの内周側には、第1の軸受収容部41の第1の凹部411aと係合する第1の係合凸部121aと、第1の軸受収容部41の第1の凸部412aと係合する第1の係合凹部122aと、が形成される。また、第1の防振部材12aの下面123aには、当該下面123aからフィン部45側へと突出する環状の第1の接触部124aが形成される。ここで、第1の防振部材12aの下面123aとは、第1の防振部材12aが蓋部材4の第1の軸受収容部41に取り付けられた状態において、フィン部45側に位置する面を指す。
【0078】
第1の接触部124aが上述した第1の規制面46Aと接触することで、第1の防振部材12aは蓋部材4に対して軸方向に位置決めされる。これにより、蓋部材4側に形成された第1の規制部46だけでなく、第1の防振部材12a側に形成された第1の接触部124aによっても、第1の防振部材12aの下面123aとフィン部45との間に空隙を形成することができる。また本実施形態において下面123aからフィン部45側へと突出する第1の接触部124aは、周方向に繋がった環状に形成されているがこれに限らず、複数の突起が周方向に環状に並ぶようにして形成されてもよい。
【0079】
第1の防振部材12aの外周面には、第1の取付金具G1が装着され、第1の取付金具G1は、例えばダクト等に固定するための固定具(不図示)が取り付けられる。
【0080】
第2の防振部材12bは、図6図7に示すように中空の円筒形状である。第2の防振部材12bの内周側には、樹脂外郭10の筒部102aに形成された第2の凹部1021aと係合する第2の係合凸部121bと、筒部102aに形成された第2の凸部1022aと係合する第2の係合凹部122bとが形成される。
【0081】
また、第2の防振部材12bの下面123bには、当該下面123bから樹脂外郭10の底部102側へと突出する環状の第2の接触部124bが形成される。ここで、第2の防振部材12bの下面123bとは、第2の防振部材12bが樹脂外郭10の筒部102aに取り付けられた状態において、底部102側に位置する面を指す。
【0082】
第2の接触部124bは、上述した樹脂外郭10の底部102と接触し、第2の防振部材12bが樹脂外郭10に対して軸方向に位置決めされる。
【0083】
第2の防振部材12bの外周面には、第1の防振部材12aと同様に、第2の取付金具G2が装着され、第2の取付金具G2は、例えばダクト等に固定するための固定具(不図示)が取り付けられる。上述した第1の取付金具G1と第2の取付金具G2とに固定具が取り付けられることで、電動機1がダクト等に固定される。
【0084】
[蓋部材の作用]
上述のように、本実施形態の蓋部材4は、樹脂外郭10の開口端部101と当接する軸方向位置決め部420と、樹脂外郭10の開口端部101の内周面に当接する径方向位置決め部430とを有する。このため、樹脂外郭10への蓋部材4の組み付けと同時に、樹脂外郭10に対して蓋部材4が軸方向および径方向のそれぞれの方向に位置決めされる。
【0085】
より具体的には、蓋部材4に、樹脂外郭10に対する蓋部材4の軸方向の相対位置を位置決めする軸方向位置決め部420が設けられるとともに、回路基板5の電子部品51に対する蓋部材4の軸方向の相対位置を位置決めする突起部44の対向面441が設けられる。そのため、蓋部材4の樹脂外郭10に対する軸方向の相対位置の精度が確保される。これにより、電子部品51に過度な圧力が加わるのを防ぐとともに、電子部品51から蓋部材4へと安定的に伝熱し、電動機1の外部へと十分に放熱することができる。
【0086】
また、蓋部材4に径方向位置決め部430が形成されていることにより、蓋部材4と樹脂外郭10の径方向との組立時に生じる各部品同士の相対位置(一方の部品の位置を基準としたときの他方の部品の位置)のばらつきを小さくできるので、蓋部材4の突起部44の対向面441を、樹脂外郭10に固定された回路基板5上の電子部品51に軸方向に精度よく対向させることができる。これにより、電子部品51から蓋部材4へと安定的に伝熱し、電動機1の外部へと十分に放熱することができる。
【0087】
また、軸方向におけるフィン部45側への第1の防振部材12aの移動が、第1の規制部46の第1の規制面46Aによって規制されることで、軸方向で第1の防振部材12aの下面123aとフィン部45との間に所定の空隙H1が形成される。これにより、フィン部45が第1の防振部材12a覆われてフィン部45からの放熱が第1の防振部材12aによって遮られることを抑制し、放熱性を向上させることができる。さらに、上述の所定の空隙H1が形成されることで、第1防振部材12aの外周面に取り付けられた第1の取付金具G1と蓋部材4のフィン部45とが接触するのを防止でき、これにより、いずれも金属で形成された第1の取付金具G1と蓋部材4とが直接接触してしまうことによる破損を防止できる。
【0088】
図8は金属部材11の斜視図であり図9は金属部材11の側面図である。
【0089】
(金属部材)
金属部材11は、図1図2図8図9に示されるように、樹脂外郭10の内周面10Bから底部102までの外形に沿って、折れ曲がった形状に形成される。金属部材11は、上述した溝部10bに収容される。
【0090】
金属部材11は、例えば導電性の金属材料(ステンレス鋼のSUS304など)を帯状に加工して形成される。なお、金属部材11は、合金で形成されていてもよい。
【0091】
また図9図10に示されるように、金属部材11は、第1の金属部11Aと第2の金属部11Bと第3の金属部11Cと第4の金属部11Dとを有する。
【0092】
第1の金属部11Aは、樹脂外郭10の外周面10Aに軸方向に沿って配置され、第1の溝部101bに収容される。本実施形態では、第1の溝部101bは、樹脂外郭10の外周面10Aのうち、周方向において隣り合った2つの外周面凸部10aの間に位置している。
第2の金属部11Bは、開口端部101側の第1の金属部11Aに連続し開口端部101に樹脂外郭10の径方向に沿って配置され、第2の溝部102bに収容される。
第3の金属部11Cは、第2の金属部11Bに連続し樹脂外郭10の内周面10Bに軸方向に沿って配置され、第3の溝部103bに収容される。
第4の金属部11Dは、第1の金属部11Aに連続し第2の軸受収容部82と接触する。第4の金属部11Dは、底部102に径方向に沿って配置され、第4の溝部104bに収容される。
【0093】
本実施形態では、金属部材11(第1の金属部11A~第4の金属部11D)が、樹脂外郭10に形成された対応する溝部10b(第1の溝部101b~第4の溝部104b)に収容されることにより、金属部材11が周方向にずれて固定されてしまうことを防止できる。また、金属部材11が厚みの大きな板状の部材で形成された場合であっても、樹脂外郭10の外周面から金属部材11が突出することを抑制できる。
【0094】
また、本実施形態の樹脂外郭10には、樹脂外郭10の外周面10Aから外径方向へ突出する外周面凸部10aが周方向に複数形成されているため、樹脂外郭10の外周面10Aにおいて外周面凸部10aの間に位置する部分は、電動機1の外部を流れる空気が通過しにくい。そこで本実施形態では、樹脂外郭10の外周面10Aに形成された第1の溝部101bを、周方向において隣り合った2つの外周面凸部10aの間に位置させている。これにより、樹脂外郭10の外周面10Aで周方向に隣り合った2つの外周面凸部10aの間に、金属部材11の第1の金属部11Aを位置させることができ、樹脂外郭10の外周面10Aにおいて空気が通過しにくい部分の熱を、金属部材11を介して蓋部材4に伝えることで、放熱性を高めることができる。
【0095】
なお、第1の金属部11Aは、帯状の板で形成された場合を例示したがこれに限らず、樹脂外郭10の外周面凸部10aと同様の径方向に突出するフィン形状であってもよいし、定格銘板が用いられてもよい。定格銘板の場合、定格銘板に接続され、定格銘板の軸方向の両端から延びる帯状の金属板が配置されてもよい。これにより、樹脂外郭10の外周面10Aにおける表面積を増大することができるため、放熱性を高めることができる。
【0096】
また第1の金属部11Aが樹脂外郭10の外周面凸部10aと同様のフィン形状である場合、樹脂外郭10の外周面10Aにおける表面積を増大することができるため、放熱性を高めることができる。
【0097】
本実施形態において、第2の金属部11Bは、蓋部材4の軸方向位置決め部420と所定の間隔をもって対向する。また第2の金属部11Bは、図1図2に示されるように、軸方向から見て、フィン部45と重なる位置に配置される。所定の間隔とは特に限られないが、例えば0.3mmである。
【0098】
第3の金属部11Cは、環状突出部43(径方向位置決め部430)と熱的に接触するとともに弾性的に接触する弾性接触部111Cを有する。ここで、熱的に接触(接続)するとは、互いに接触(接続)した2つの部材間で熱伝導により伝熱していることを指す。また第3の金属部11Cは、軸方向から見て、フィン部45と重なる位置に配置される。
【0099】
弾性接触部111Cは、蓋部材4が樹脂外郭10にはめ込まれたときに、樹脂外郭10の内周面10Bの第3の溝部103bへ、環状突出部43によって押し込まれる。このとき、金属部材11の弾性接触部111Cが蓋部材4と弾性的に接触することにより、金属部材11と蓋部材4との導通状態を安定的に得ることができる。第3の金属部11Cの軸方向への長さは、環状突出部43の軸方向への長さと同一又はほぼ同一である。第3の金属部11Cは、環状突出部43によって樹脂外郭10の内周面10B側へ押し込まれたときに、第3の溝部103bに収容される場合を例示したが、これに限らず、弾性接触部111Cの一部が、第3の溝部103bから内径方向へ突出してもよい。
【0100】
第4の金属部11Dは、樹脂外郭10の底部102側の第1の金属部11Aに設けられ、第1の金属部11Aと連続する屈曲部111Dと、屈曲部111Dに連続し内径方向へ延びる直線部112Dとを有する。
【0101】
屈曲部111Dは、底部102に沿って屈曲した形状に形成される。屈曲部111Dは、樹脂外郭10への取り付けを考慮したばね性を有する。また直線部112Dは、締結穴113Dと判別穴114Dとを有する。締結穴113Dは、軸方向から見て、第4の溝部104bの貫通穴1041b、及び、第2軸受収容部82のフランジ穴822aと、重なる位置に設けられる。判別穴114Dは、締結穴113Dよりも屈曲部111D側に位置する。そして締結部材Nによって、貫通穴1041bを介して締結穴113Dとフランジ穴822aとが締結される。また判別穴114Dは、本実施形態における電動機1に取り付けられる金属部材11と他の電動機に用いられる金属部材とを識別するための穴である。
【0102】
これにより、蓋部材4に配置された第1の軸受収容部41と、樹脂外郭10に配置された第2の軸受収容部82とが導通される。
【0103】
(金属部材の作用)
電動機1は、高周波スイッチングを行うPWM方式のインバータで駆動される場合に、第1の軸受収容部41と第2の軸受収容部82とが電気的に導通していないことで、第1の軸受71の内輪712と外輪711との間、および第2の軸受81の内輪812と外輪811との間に、それぞれ電位差(軸電圧)が生じる。
【0104】
この軸電圧が軸受の内部にある油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受の内部に電流が流れて軸受に電食を発生させる。電食は、第1の軸受71の内輪712と外輪711との間、および第2の軸受81の内輪812と外輪811との間のそれぞれの軸電圧が高いときに生じる放電(電気火花)によって、軸受が損傷する現象である。軸受に電食が発生すると、軸受の転走面に生じた傷によって軸受の回転時に異音が生じたり、電動機の回転効率の低下を招いたりしてしまう。
【0105】
金属部材11は、第1の軸受71が収容される第1の軸受収容部41と、第2の軸受81が収容される第2の軸受収容部82と、を導通させることにより、第1の軸受71および第2の軸受81の各々の外輪711、811の電位を同電位とすることができ、各軸受の内外輪間の電位差を相対的に小さくすることで電食の発生を抑制できる。本実施形態では、金属部材11の一端側である第3の金属部11Cが、第1の軸受収容部41(蓋部材4)に接触し、金属部材11の他端側である第4の金属部104bが、第2の軸受収容部82に接触することで、第1の軸受収容部41と第2の軸受収容部82とが導通されている。
【0106】
また、固定子2で発生した熱を樹脂外郭10の外周面10Aに配置された第1の金属部11Aから第3の金属部11Cへ伝え、第3の金属部11Cに熱的に接触する環状突出部43からフィン部45を介して放熱される。これにより、通電により発熱するコイル22と固定子鉄心21で発生した熱を、放熱性の高いフィン部45を有する蓋部材4へ伝えることができるので、電動機1の放熱特性を向上させることができる。一例として、本実施形態では、樹脂外郭10の材料であるBMCの熱伝導率が約0.9(W/m・K)であるのに対し、金属部材11の材料であるステンレス鋼(SUS304)の熱伝導率が約16.7(W/m・K)であり、金属部材11は樹脂外郭10よりも熱伝導率が10倍以上高い。そして、蓋部材4の材料であるアルミニウムの熱伝導率が約230(W/m・K)であるから、蓋部材4は樹脂外郭10よりも熱伝導率が200倍以上高い。したがって本発明では、固定子3で生じた熱を、樹脂外郭10よりも熱伝導率が高い金属部材11を介して、熱伝導率が更に高い蓋部材4へと伝え、電動機1の放熱特性を向上させることができる。
【0107】
第2の金属部11Bは、蓋部材4の軸方向位置決め部420と所定の間隔をもって対向するが、これに限らず、軸方向位置決め部420と接触してもよい。この場合、固定子2で発生した熱は、軸方向位置決め部420を介してフィン部45へ伝わり、そのフィン部45の熱が内径方向へ伝わり、その伝わった熱が複数のフィン部45へ放射状に拡散されて放熱される。これにより、環状突出部43だけでなく蓋部材4全体を使って固定子2で発生した熱を放出することができるため、電動機1の放熱特性を向上させることができる。
【0108】
また、樹脂外郭10の外周面10に第1の溝部101bが設けられているため、図2に示されるように、固定子2と第1の金属部11Aとの距離が短くなるため、より固定子2で発生した熱を放出しやすくなる。
【0109】
さらに第4の金属部11Dの屈曲部111Dは、ばね特性を有しているため、金属部材11と樹脂外郭10とを取り付けるときに、第1の金属部11Aと第1の溝部101bとの接触面積(接触密度)を増加させるように取り付けることが可能となる。そのため、固定子2で発生した熱を第1の金属部11Aを介して放出しやすくなる。
【0110】
<変形例>
以上の各本実施形態では、金属部材11が樹脂外郭10の外周面10Aから開口端部101に沿って樹脂外郭10の内周面10Bに沿うように形成されたが、勿論これに限られず、蓋部材4に直接取り付けられてもよい。つまり、樹脂外郭10の外周面10Aに配置された金属部材11が軸方向に沿って延び、蓋部材4の外面部423に接触する構成であってもよい。また本実施形態において金属部材11は単数であったが、金属部材11は複数であってもよく、これにより、放熱性を向上させることができる。
【0111】
さらに本実施形態において、金属部材11は、樹脂外郭10に直接接触しているが、これに限らず、熱伝導性に優れた接着剤等を介して樹脂外郭10に熱的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1…電動機
2…固定子
21…固定子鉄心
3…回転子
31…永久磁石部
32…外周側鉄心
33…絶縁部材
34…内周側鉄心
4…蓋部材
41…第1の軸受収容部
42…板部
43…環状突出部
44…突起部
420…軸方向位置決め部
430…環状突出部
5…回路基板
51…電子部品
52…伝熱部材
6…回転シャフト
10…樹脂外郭
101…開口端部
11…金属部材
C…軸心
図1
図2
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図9