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特許7375823物体検知装置、物体検知方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】物体検知装置、物体検知方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20231031BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20231031BHJP
   G01S 7/02 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S13/34
G01S7/02 210
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021545012
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035587
(87)【国際公開番号】W WO2021048929
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山之内 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田中 大地
(72)【発明者】
【氏名】住谷 達哉
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/147025(WO,A1)
【文献】特開平03-159482(JP,A)
【文献】特開2010-177919(JP,A)
【文献】特開2005-253702(JP,A)
【文献】特開2008-142146(JP,A)
【文献】Lu Xinfei et al.,”High-resolution Radar Imaging Using 2D Deconvolution with Sparse Echo Denoising”,Journal of Radars,中国,2018年06月,Vol.7, No.3,pp.285-293,DOI: 10.12000/JR17108,< URL: https://radars.ac.cn/en/article/doi/10.12000/JR17108 >
【文献】Sherif Sayed Ahmed et al.,"Near Field mm-Wave Imaging with Multistatic Sparse 2D-Arrays",2009 European Radar Conference (EuRAD),2009年,pp.180-183,ISBN:978-1-4244-4747-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
G06T 5/00-5/50
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波によって物体を検知するための装置であって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、前記物体に向けて電波を照射する、送信部と、
受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出し、
更に、前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数であって、ある位置1点のみに前記物体が存在する場合における、前記物体で反射された前記電波の電波振幅分布によって与えられる前記点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正し、前記位置1点は、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナで構築される開口面と、前記開口面と正対する正対領域と、を2面とした柱体の外側に位置している、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、及び前記送信アンテナから照射される電波の周波数に基づいて、前記点像分布関数を算出し、算出した前記点像分布関数に基づいて、前記補正演算子を算出し、そして、算出した前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、前記点像分布関数を要素とする行列の擬逆行列を算出し、算出した前記擬逆行列を前記補正演算子として用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、外部から前記補正演算子の入力を受け付け、入力を受け付けた前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、
前記物体が存在する特定の領域又は特定の空間を複数の部分に分割し、分割によって得られた前記部分毎に、当該部分を定義域として、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
電波によって物体を検知するための方法であって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、前記物体に向けて電波を照射する、送信部と、受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部とを備える、物体検知装置において、
(a)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出し、
(b)前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数であって、ある位置1点のみに前記物体が存在する場合における、前記物体で反射された前記電波の電波振幅分布によって与えられる前記点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正し、前記位置1点は、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナで構築される開口面と、前記開口面と正対する正対領域と、を2面とした柱体の外側に位置している、
ことを特徴とする物体検知方法。
【請求項7】
コンピュータを用いて電波による物体の検知を行うためのプログラムであって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、物体に向けて電波を照射する、送信部と、受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部と、コンピュータとを備える、物体検知装置において、前記コンピュータに、
(a)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出する、ステップと、
(b)前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数であって、ある位置1点のみに前記物体が存在する場合における、前記物体で反射された前記電波の電波振幅分布によって与えられる前記点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正し、前記位置1点は、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナで構築される開口面と、前記開口面と正対する正対領域と、を2面とした柱体の外側に位置している、ステップと、
を実行させる命令を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を検知対象物に照射し、対象物によって反射又は拡散された電波を検知する事によって検知対象物を認識又は識別するための、物体検知装置及び物体検知方法に関し、更には、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波(マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波など)は、光と異なり、物体を透過する能力に優れている。このため、近年において、電波の透過能力を活用することによって、衣服下、鞄内に存在する物体を画像化するイメージング装置、更には、衛星又は航空機から雲を透過して地表を画像化するリモートセンシング装置が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、電波を用いたイメージング装置(物体検知装置)の一例を開示している。また、特許文献1に開示されたイメージング装置は、アクティブ型のアンテナアレイ方式を採用している。ここで、図18を用いて、特許文献1に開示されたイメージング装置の構成について説明する。図18は、従来からのアレイアンテナ方式のイメージング装置の概略構成を示す図である。
【0004】
図18に示すように、従来からのアレイアンテナ方式のイメージング装置は、送受信装置201によって構成されている。また、送受信装置201は、送受信アンテナ202、202、・・・、202を備えている。送受信装置201は、送受信アンテナ202、202、・・・、202の内の1つ又は複数のアンテナ202から送信波(電波)204を検知対象物203に向けて照射する。
【0005】
送信波204は、検知対象物203において反射され、反射波205、205、・・・、205が発生する。発生した反射波205、205、・・・、205は送受信アンテナ202、202、・・・、202において受信される。送受信装置201は、受信した反射波205、205、・・・、205に基づいて検知対象物203から反射されている電波振幅を算出する。そして、イメージング装置は、送受信装置201によって算出された電波振幅の分布を画像化することによって、検知対象物203を画像化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2014/0167784号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたアクティブ型のアンテナアレイ方式を採用したイメージング装置には、以下の問題点がある。
【0008】
アクティブ型のアレイアンテナ方式の第1の問題点は、検知可能な検知対象物203の位置が限定される事である。この問題点について具体的に説明する。まず、検知対象物203において発生する反射波205は、その反射角度に対する振幅依存性を持つ。特に反射角度が鏡面反射条件を満たす場合、即ち、検知対象物203への送信波204の入射角度と、検知対象物203からの反射波205の反射角度とが等しくなる場合に、反射波205の振幅が最大になる。一方で、反射角度が鏡面反射条件を満たさない場合、反射波205の振幅は微弱になる。
【0009】
図19は、従来からのアレイアンテナ方式における問題点を説明するための図である。まず、図19に示すように、送受信アンテナ202、202、・・・、202によって、開口面207が形成されている。そして、検知対象物203が、開口面207の範囲から外れたところに位置すると、この場合、鏡面反射条件を満たす振幅の強い反射波206は、送受信アンテナ202、202、・・・、202で受信できなくなるため、検知対象物203の検知は困難になる。即ち、検知可能な検知対象物203の位置は、開口面207の範囲内に限定される。従って、検知対象物203の検知可能な位置範囲を広くするためには、開口面207の開口長を大きくする必要がある。
【0010】
しかし、開口面207の開口長を大きくする事は、送受信装置201の大型化につながり、送受信装置201の設置容易性が損なわれてしまう。また、開口面207のサイズを大きくするためには、必要となる送受信アンテナ202、202、・・・、202の個数と、これらの送受信アンテナ202それぞれに接続する送受信機の個数とが増大することから、送受信装置201のコストが増大してしまう。
【0011】
また、アクティブ型のアレイアンテナ方式の第2の問題点は、電波振幅の分布の画像化において分解能が制約される事である。具体的には、まず、開口面207と平行なアジマス方向の長さ分解能は、λL/Dに比例する。ここで、λは送信波204の波長であり、Lは送受信装置201と検知対象物203との距離であり、Dは開口面207の開口長である。
【0012】
所望の分解能が得られない場合、検知対象物203の検知精度が劣化する。所望の分解能を得る手段として、開口面207の開口長Dを大きく設定する事が考えられるが、開口長Dを大きく設定する事は、上述した通り、送受信装置201の大型化と高コスト化とにつながる。また、その他の所望の分解能を得る手段として、送受信装置201と検知対象物203との距離Lを短くする事も考えられるが、この場合、検知可能な位置範囲は制約されてしまう。
【0013】
以上のように、特許文献1に開示されたイメージング装置を含む、従来からの、電波を用いてイメージング装置には、検知可能な検知対象物の位置範囲が制約されるという問題と、所望の分解能が得られず検知精度が悪いという問題とがある。また、従来からのイメージング装置において、これらの問題を解決しようとすると、装置のコストが増大し、更に、装置のサイズが非常に大きくなってしまい、実際に使用できる用途及び機会が、限定的となる。
【0014】
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、検知対象物の位置範囲の拡張及び分解能の向上を図りつつ、装置のサイズ及びコストの増加を抑制し得る、物体検知装置、物体検知方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における物体検知装置は、電波によって物体を検知するための装置であって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、前記物体に向けて電波を照射する、送信部と、
受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出し、
更に、前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における物体検知方法は、電波によって物体を検知するための方法であって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、前記物体に向けて電波を照射する、送信部と、受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部とを備えた、物体検知装置による、
(a)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出する、ステップと、
(b)前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正する、ステップと、
を有することを特徴とする。
【0017】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、コンピュータを用いて電波による物体の検知を行うためのプログラムであって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、物体に向けて電波を照射する、送信部と、受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部と、コンピュータとを備える、物体検知装置において、前記コンピュータに、
(a)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出する、ステップと、
(b)前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正する、ステップと、
を実行させる命令を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、検知対象物の位置範囲の拡張及び分解能の向上を図りつつ、装置のサイズ及びコストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態における物体検知装置の概略構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態における物体検知装置の送信部及び受信部の構成を具体的に示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態における物体検知装置の送信部及び受信部の他の例の構成を具体的に示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態における物体検知装置の構成を具体的に示す構成図である。
図5図5は、従来からの物体検知装置の構成を具体的に示す構成図である。
図6図6は、本発明の実施の形態における物体検知装置の動作を示すフロー図である。
図7図7は、図5に示した従来からの物体検知装置の動作を示すフロー図である。
図8図8は、図5に示した従来からの物体検知装置の開口面と対象物を検知可能な空間との位置関係を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態における物体検知装置の開口面と対象物を検知可能な空間との位置関係を示す図である。
図10図10は、本発明の実施の形態の変形例1における物体検知装置の機能を説明する図である。
図11図11は、本発明の実施の形態の変形例2における物体検知装置の構成を示す構成図である。
図12図12は、本発明の実施の形態における物体検知装置と検知対象となる物体との位置関係を示す図である。
図13図13は、従来からの物体検知装置によって検知された、検知空間の内側と外側とに渡って位置する物体の画像の一例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施の形態における物体検知装置によって検知された、検知空間の内側と外側とに渡って位置する物体の画像の一例を示す図である。
図15図15は、従来からの物体検知装置によって検知された物体の画像の一例を示す図である。
図16図16は、本発明の実施の形態における物体検知装置によって検知された物体の画像の一例を示す図である。
図17図17は、本発明の実施の形態における物体検知装置の演算装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
図18図18は、従来からのアレイアンテナ方式のイメージング装置(物体検知装置)の概略構成を示す図である。
図19図19は、従来からのアレイアンテナ方式における問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、物体検知装置、物体検知方法、及びプログラムについて、図1図17を参照しながら説明する。以降に示す各図面において、同一または相当部分の部位については、同一符号を付して示すこととし、その説明は繰り返さないことにする。
【0021】
[装置構成]
最初に、図1を用いて、本実施の形態における物体検知装置の概略構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態における物体検知装置の概略構成を示す構成図である。
【0022】
図1に示す本実施の形態における物体検知装置1000は、電波によって、検知対象となる物体(以下、「対象物」と表記する)1003を検知するための装置であり、いわゆる、イメージング装置である。図1に示すように、物体検知装置1000は、送信部1101と、受信部1102と、演算装置1211とを備えている。また、図1の例において、1005は、対象物1003が配置されている面(以下「対象物配置面」と表記する)を示している。
【0023】
送信部1101は、送信アンテナを有し、送信アンテナを用いて、対象物配置面1005上に存在する対象物1003に向けて、送信信号となる電波1002を照射する。受信部1102は、受信アンテナを有し、受信アンテナを用いて、対象物1003で反射された電波1004を受信信号として受信する。また、受信部1102は、更に、受信した受信信号から、中間周波数信号(以下「IF(Intermediate Frequency)信号」と表記する。)を生成する。
【0024】
具体的には、図1の例では、送信部1101は、受信部1102に向けて、端子1208を経由して送信信号を出力する。受信部1102は、対象物1003で反射されてきた電波(受信信号)1004と、端子1208を経由して出力されてきた送信信号とをミキシングして、IF信号を生成する。また、受信部1102は、生成したIF信号を、演算装置1211に出力する。
【0025】
また、図1の例では、送信部1101と受信部1102とによって、送受信装置1001が構成されている。更に、図1の例では、送信部1101及び受信部1102は、それぞれ一つのみが図示されているが、送信部1101及び受信部1102は、実際には複数備えられていても良い。送信部1101及び受信部1102が複数備えられている場合は、複数の受信部1102それぞれは、いずれかの送信部1101に対応している。
【0026】
また、演算装置1211は、まず、送信アンテナの配置、受信アンテナの配置、送信アンテナから照射される電波1002の周波数、及びIF信号に基づいて、対象物1003で反射された電波の振幅分布(以下「反射振幅分布」と表記する。)を算出する。そして、演算装置1211は、送信部1101及び受信部1102の特性を示す点像分布関数(Point Spread Function, PSF)から算出された補正演算子を用いて、算出した反射振幅分布を補正する。
【0027】
このように、本実施の形態では、電波の送信及び受信による測定で得られた対象物1003の反射振幅分布に対して、補正演算子を適用することで、PSFによる重み付けが解除された真の反射振幅分布が算出される。このため、本実施の形態によれば、電波を用いた一般的なイメージング装置(物体検知装置)と比較して、検知可能な対象物1003の位置範囲が拡張できると共に、検知の高分解能化が実現される。即ち、本実施の形態によれば、装置の高コスト化の原因及び設置容易性の損失の原因となる開口の大型化を回避しながら、検知可能な位置範囲の拡張と高分解能化とを実現でき、検知精度の向上が図られる。
【0028】
続いて、図1に加えて、図2図4を用いて、本実施の形態1における物体検知装置1000の送受信装置1001の構成についてより詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態における物体検知装置の送信部及び受信部の構成を具体的に示す図である。図3は、本発明の実施の形態における物体検知装置の送信部及び受信部の他の例の構成を具体的に示す図である。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態1では、送受信装置1001において、送信部1101は、発振器1201と、送信アンテナ1202とを備えている。また、受信部1102は、受信アンテナ1203と、ミキサ1204と、インターフェイス回路1205とを備えている。更に、図1でも示したように、送信部1101と受信部1102とは、端子1208を介して接続されている。
【0030】
送信部1101において、発振器1201は、RF信号(電波)を生成する。発振器1201で生成されたRF信号は、送信アンテナ1202から送信信号として送信され、対象物1003に照射される。対象物1003で反射された電波1004は、受信部1102において、受信アンテナ1203によって受信される。
【0031】
ミキサ1204は、発振器1201から端子1208を経由して入力されてきたRF信号と受信アンテナ1203で受信された電波(受信信号)とを、ミキシングする事で、IF信号を生成する。ミキサ1204で生成されたIF信号は、インターフェイス回路1205を経由して、演算装置1211へと送信される。
【0032】
インターフェイス回路1205は、アナログ信号であるIF信号を、演算装置1211で扱えるデジタル信号に変換する機能を持ち、得られたデジタル信号を演算装置1211へと出力する。
【0033】
また、図2に示した例では、一つの送信部1101には、一つの送信アンテナ1202が備えられているが、本実施の形態は、この態様に限定されるものではない。図3を用いて、一つの送信部1101において、複数の送信アンテナ1202が備えられている例について説明する。
【0034】
図3の例では、送信部1101は、一つの発振器1201と、複数の送信アンテナ1202とを備えている。また、送信部1101は、送信アンテナ1202毎に設けられた可変移相器1206も備えている。各送信アンテナ1202は、対応する可変移相器1206を介して、発振器1201に接続されている。各可変移相器1206は、発振器1201から送信アンテナ1202の各々に供給される送信信号の位相を制御する事で、送信アンテナ1202の指向性の制御を行なっている。
【0035】
なお、図3の例において、送信部1101は、複数の送信アンテナ1202に対して、発振器1201から、時分割によってRF信号を供給することもできる。この場合は、送信部1101には、可変移相器1206が設けられていなくても良い。
【0036】
続いて、図4及び図5を用いて、本実施の形態における物体検知装置の具体的構成について、従来からの物体検知装置の構成と比較しながら、詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態における物体検知装置の構成を具体的に示す構成図である。図5は、従来からの物体検知装置の構成を具体的に示す構成図である。
【0037】
図4に示すように、本実施の形態における物体検知装置1000において、演算装置1211は、振幅計算部1301と、アンテナ配置/RF周波数入力部1302と、PSF計算部1303と、補正演算子計算部1304と、補正振幅計算部1305とを備えている。また、本実施の形態では、演算装置1211は、実際には、コンピュータを備えており、コンピュータによって各部が構築されている。この点については後述する。
【0038】
アンテナ配置/RF周波数入力部1302は、外部から、送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、及び送信アンテナ1202から照射される電波1002の周波数(RF周波数)といった情報を取得する。また、アンテナ配置/RF周波数入力部1302は、取得した情報を、PSF計算部1303と、振幅計算部1301とに入力する。
【0039】
PSF計算部1303は、アンテナ配置/RF周波数入力部1302によって入力された情報に基づいて、PSF(点像分布関数)を算出する。補正演算子計算部1304は、PSF計算部1303によって算出されたPSFに基づいて、補正演算子を算出する。補正演算子は、上述したように、真の反射振幅分布を算出するために用いられる。
【0040】
振幅計算部1301は、送信部1101による電波1002の照射と、受信部1102による電波1004の受信とが行われると起動する。そして、振幅計算部1301は、アンテナ配置/RF周波数入力部1302によって入力された情報と、受信部1102で生成されたIF信号とに基づいて、反射振幅分布を算出する。
【0041】
補正振幅計算部1305は、振幅計算部1301によって反射振幅分布が算出されると、補正演算子計算部1304によって算出された補正演算子を用いて、反射振幅分布を補正する。そして、補正振幅計算部1305は、補正後の反射振幅分布を補正振幅として出力する。
【0042】
一方、図5に示すように、従来からの物体検知装置2000は、図4に示す物体検知装置1000と同様に、送受信装置1001と、演算装置2001とを備えているが、演算装置2001の構成の点で、物体検知装置1000と異なっている。
【0043】
具体的には、図5に示すように、従来からの物体検知装置2000においては、演算装置2001は、振幅計算部1301と、アンテナ配置/RF周波数入力部1302との2つのみを備えている。このため、従来からの物体検知装置2000では、反射振幅分布を補正することができないため、上述したように、検知可能な検知対象物の位置範囲が制約されるという問題と、所望の分解能が得られず検知精度が悪いという問題とがある。
【0044】
[装置動作]
次に、本発明の実施の形態における物体検知装置1000の動作について図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態における物体検知装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜図1図4を参酌する。また、本実施の形態では、物体検知装置1000を動作させることによって、物体検知方法が実施される。よって、本実施の形態1における物体検知方法の説明は、以下の物体検知装置1000の動作説明に代える。
【0045】
図6に示すように、最初に、アンテナ配置/RF周波数入力部1302は、送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、及び送信アンテナ1202から送信される電波(送信信号)の周波数(RF周波数)といった情報を取得する。そして、アンテナ配置/RF周波数入力部1302は、取得した情報、即ち、アンテナ配置及びRF周波数設定を、PSF計算部1303と、振幅計算部1301とに入力する(ステップA1)。
【0046】
次に、PSF計算部1303は、ステップA1で入力された情報(送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、及びRF周波数)に基づいて、物体検知装置1000が持つPSF(点像分布関数)を計算する(ステップA2)。なお、ステップA2の詳細については後述する。
【0047】
次に、補正演算子計算部1304は、点像分布関数を用いて、補正演算子を算出する(ステップA3)。補正演算子は、後述するように、振幅計算部1301で得た反射波の電波振幅分布から、対象物1003の真の反射振幅分布を逆算するための演算子である。
【0048】
次に、送受信装置1001において、送信部1101が、対象物1003に向けて、送信信号となる電波1002を照射する(ステップA4)。また、送信部1101は、送信信号となる電波1002の照射と同時に、端子1208を介して、送信信号を受信部1102に出力する。
【0049】
次に、送受信装置1001において、受信部1102は、受信アンテナ1203によって、対象物1003で反射された電波を、受信信号として受信する(ステップA5)。
【0050】
次に、送受信装置1001において、受信部1102は、ステップA5において受信した受信信号に、ステップA4で送信部1101から出力されてきた送信信号をミキシングして、IF信号を生成する(ステップA6)。
【0051】
次に、振幅計算部1301は、ステップA1で入力された情報(送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、及びRF周波数)と、ステップA6で生成されたIF信号とに基づいて、対象物1003で反射された電波の振幅分布(反射振幅分布)を算出する(ステップA7)。
【0052】
次に、補正振幅計算部1305は、ステップA7で算出された反射波の反射振幅分布を、ステップA3で算出された補正演算子によって補正する(ステップA8)。これにより、対象物1003の真の反射振幅分布が計算されたことになる。また、補正振幅計算部1305は、補正後の反射振幅分布を補正振幅として出力する。
【0053】
なお、ステップA1~A3は測定と独立した処理であり、ステップA4~A8は測定(電波の照射及び受信)と連動した処理である。従って、ステップA1~A3は、送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、及び送信信号のRF周波数が変更されない限り、測定前にそれぞれ一回だけ実行されれば良い。一方、ステップA4~A8は、測定の度に実行される。また、ステップA4~A8は、ステップA1~A3の実行後に、連続して実行されなくても良い。
【0054】
ここで、比較のため、図7を用いて、図5に示した従来からの物体検知装置2000の動作について説明する。図7は、従来からの物体検知装置の動作を示すフロー図である。
【0055】
図7に示すように、従来からの物体検知装置2000では、図6に示したステップA1~A8のうち、ステップA1、A4、A5、及びA7のみが実行される。即ち、図7から分かるように、従来からの物体検知装置では、ステップA2、A3及びA6が実行されておらず、これらのステップが、本実施の形態における特徴的な処理に該当する。
【0056】
続いて、図6に示したステップA1~A7の内、演算装置1211によって行われるステップA2、A3、A7、A8について、以下に詳細に説明する。
【0057】
[ステップA2]
ステップA2における、PSF計算部1303の動作について説明する。PSF計算部1303は、アンテナ配置/RF周波数入力部1302から出力されてきた情報、即ち、送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、及び送信アンテナ1202から送信される送信信号のRF周波数の情報に基づいて、物体検知装置1000が持つPSF(r,r)を計算する。
PSF(r,r)は、位置rの1点のみに対象物1003が存在する場合における、対象物1003からの反射波の電波振幅分布P(r)によって与えられる。rは、対象物1003の存在位置である。また、PSF(r,r)は、送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、RF周波数f、及びスキャンする位置(以下「スキャン位置」と表記する)rの範囲を決定すれば、事前に計算可能である。なお、スキャン位置rは、対象物1003で反射された電波が受信される位置(受信アンテナの位置)を意味している。
【0058】
対象物1003の位置rにおける反射振幅分布がσ(r)で与えられる場合、測定で得られる対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)と、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)との関係は、以下の数1で与えられる。
【0059】
(数1)
P(r)=Bσ(r
【0060】
上記数1において、行列Bは、PSF行列である。PSF行列は、各行でスキャン位置rを一定とし、各列で対象物1003の存在位置rを一定として、更に、PSF(r,r)を要素として配置することで得られた行列である。
【0061】
なお、測定で得られる対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)と、PSF行列Bと、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)それぞれとして、複素値が設定されていても良い。
【0062】
[ステップA3]
次に、ステップA3における、補正演算子計算部1304の動作について説明する。補正演算子計算部1304は、上記数1の関係に基づいて、振幅計算部1301で得た反射波の反射振幅分布P(r)から、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)を逆算するための補正演算子Bを計算する。
【0063】
具体的には、補正演算子計算部1304は、以下に示す手順に沿って、数値安定性を得るため、補正演算子Bとして、PSF行列Bの逆行列ではなく、Bの正則化擬逆行列を生成する。まず、補正演算子計算部1304は、以下の数2を用いて、PSF行列Bの特異値分解を行う。
【0064】
(数2)
B=UΣV
【0065】
上記数2において、UとVとは、ユニタリ行列である。Σは、特異値を成分とする対角行列である。行列Σの内、正則化パラメータγ以下の要素を全て0に設定した上で、非零の要素を逆数にした行列をΣとする。この場合、補正演算子Bは、以下の数3によって計算される。
【0066】
(数3)
=VΣ
【0067】
[ステップA7]
次に、ステップA7における、振幅計算部1301の動作について説明する。対象物1003からの反射波の反射振幅分布を計算する方法の一つの例として、ビームフォーマ法が挙げられる。以下、ビームフォーマ法による処理手順について説明する。
【0068】
送信アンテナ1202の内m番目のアンテナから周波数fの電波1002が送信され、受信アンテナ1203の内n番目のアンテナを介して得られたIF信号がs(m,n,f)であるとする。以下、u=(m,n,f)と設定し、s(m,n,f)をs(u)と表記する。位置rに存在する対象物1003の反射振幅分布をσ(r)と設定する。IF信号s(u)と対象物1003の位置rにおける反射振幅分布σ(r)とが、列ベクトルだるとすると、下記の数4に示すように、両者は方向行列Aによって以下のように関係付けられる。
【0069】
(数4)
s(u)=Aσ(r)
【0070】
また、方向行列Aの要素は、以下の数5によって示されるa(u,r)で与えられる。
【0071】
(数5)
a(u,r)= exp[-j2πf/c・(RTX(m,r)+RRX(n,r))]
【0072】
ここで、RTX(m,r)は、送信アンテナ1202の内m番目のアンテナから位置rまでの距離である。RRX(nr)は、受信アンテナ1203の内n番目のアンテナから位置rまでの距離である。方向行列Aは、各行でu=(m,n,f)を一定として、各列で位置rを一定として、要素a(u,r)を配置することによって構成される。方向行列Aは、送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、送信周波数f、及びスキャンする位置rの範囲を決定すれば、事前に計算可能である。
【0073】
ビームフォーマ法では、測定で得られたIF信号s(u)と、事前計算した方向行列Aとから、対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)は、以下の数6によって計算される。また、以下の数6において、行列Aの添字Hは、複素共役を表している。
【0074】
(数6)
P(r) =As(u)
【0075】
なお、本実施の形態において、対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)は、上記のビームフォーマ法に基づいて算出されても良いが、他の手法に基づいて算出されても良い。
【0076】
[ステップA8]
次に、ステップA8における、補正振幅計算部1305の動作について説明する。補正振幅計算部1305は、振幅計算部1301によって算出された反射波の反射振幅分布P(r)を、補正演算子計算部1304によって算出された補正演算子Bに基づいて、補正する。これによって、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)が計算される。具体的には、補正振幅計算部1305は、以下の数7に基づいて、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)を計算する。
【0077】
(数7)
σ(r)=BP(r)
【0078】
また、補正振幅計算部1305は、計算した真の反射振幅分布σ(r)を、補正振幅として出力する。更に、補正振幅計算部1305は、ステップA8で計算した補正振幅を、対象物1003からの反射波の反射振幅分布を表す画像として出力することもできる。
【0079】
ここで、図8及び図9を用いて、本実施の形態における物体検知装置の開口面と従来からの物体検知装置の開口面とを比較する。図8は、図5に示した従来からの物体検知装置の開口面と対象物を検知可能な空間との位置関係を示す図である。図9は、本発明の実施の形態における物体検知装置の開口面と対象物を検知可能な空間との位置関係を示す図である。
【0080】
図8には、従来からの図5に示す物体検知装置の開口面207と、開口面207に正対している領域(以下「正対領域」と表記する。)1402と、対象物1003と、対象物1003を検知可能な空間(以下「検知空間」と表記する。)1400との位置関係が示されている。図8に示すように、従来からの物体検知装置では、発明が解決しようとする課題の欄で述べたとおり、対象物1003を検知可能な検知空間1400は、開口面207とその正対領域1402とで囲まれた空間に限定される。具体的には、図8の例では、検知空間1400は、開口面207と正対領域1402とを対向する2面とした直方体で構築される。
【0081】
図9には、本実施の形態における物体検知装置1000の開口面1401と、開口面1401に正対している正対領域1402と、対象物1003と、対象物1003を検知可能な空間(検知空間)1400との位置関係が示されている。開口面1401は、図2又は図3に示す送信アンテナ1202と受信アンテナ1203とで構築される。
【0082】
図9に示すように、本実施の形態では、対象物1003の検知空間1400は、図8の例と異なり、開口面1401と正対領域1402とを対向する2面とした直方体よりも大きな空間となっている。図9の例では、検知空間1400は、開口面1401と正対領域1402とを対向する2面とした直方体の外側の空間も含んだ空間となっている。つまり、本実施の形態における物体検知装置1000によれば、開口面1401の範囲を超えた位置においても対象物1003を検知可能である。なお、この点の詳細については後述する。
【0083】
[変形例1]
続いて、図10を用いて、本実施の形態における物体検知装置1000の変形例1について説明する。図10は、本発明の実施の形態の変形例2における物体検知装置の機能を説明する図である。
【0084】
本変形例1においては、演算装置1211の補正振幅計算部1305は、まず、対象物1003が存在する特定の領域又は特定の空間を複数の部分に分割する。そして、補正振幅計算部1305は、分割によって得られた部分(以下「部分空間」と表記する。)毎に、この部分空間を定義域として、振幅分布を補正する。
【0085】
具体的には、図10には、本実施の形態における物体検知装置1000の開口面1401と、対象物1003を検知可能な検知空間1400とが示されている。この検知空間1400において、真の反射振幅分布σ(r)および反射振幅分布P(r)が算出される。ここで、検知空間1400に存在する対象物1003の個数がN個であるとした場合、上記数7を用いて補正振幅を算出するために必要となる計算量は、O(N)となる。
【0086】
また、図10には、図9の例と同様に、物体検知装置1000の開口面1401と、検知空間1400とが示されている。図10の例では、検知空間1400は、x軸方向にK個、y軸方向にK個、z軸方向にK個に分割されている。即ち、図10の例では、補正振幅計算部1305は、K=Kとして、検知空間1400をK個の部分空間に分割している。
【0087】
このように、本変形例1では、検知空間1400がK個の部分空間に分割されているので、部分空間当たりの上記数7による計算量は、O((N/K))となる。また、検知空間1400には、K個の部分空間が含まれているので、検知空間1400全体での上記数7による計算量は、O(N/K)となる。つまり、本変形例1のように、検知空間1400がK個の部分空間に分割されると、分割されない場合に比べて、計算量は1/K倍に削減される。従って、ステップA8においては、検知空間1400を複数の部分空間に分割した上で、上記数7による補正処理が実行されるのが好ましい態様である。
【0088】
[変形例2]
続いて、図11を用いて、本実施の形態における物体検知装置1000の変形例2について説明する。図11は、本発明の実施の形態の変形例2における物体検知装置の構成を示す構成図である。
【0089】
本変形例2では、物体検知装置1000は、外部の別の演算装置1212に接続されている。また、本変形例2では、演算装置1211は、図4に示した演算装置1211と異なり、アンテナ配置/RF周波数入力部1302、PSF計算部1303、及び補正演算子計算部1304を備えておらず、代わりに、補正演算子入力部1306を備えている。補正演算子入力部1306は、本変形例2では、別の演算装置1212に対する演算装置1211のインターフェイスとして備えられている。また、本変形例2においても、演算装置1211は、図4に示した演算装置1211と同様に、振幅計算部1301及び補正振幅計算部1305については備えている。
【0090】
一方、図11に示すように、外部の別の演算装置1212は、アンテナ配置/RF周波数入力部1302、PSF計算部1303、及び補正演算子計算部1304を備えている。このため、本変形例では、別の演算装置1212において、送信アンテナ1202の配置、受信アンテナ1203の配置、及び送信アンテナ1202から照射される電波1002の周波数(RF周波数)といった情報が取得される。
【0091】
そして、取得された情報は、別の演算装置1212から、演算装置1211の振幅計算部1301に入力される。また、別の演算装置1212において、PSFの算出、及びPSFに基づく補正演算子の算出が行われ、補正演算子は、別の演算装置1212から、演算装置1211の補正演算子入力部1306に入力される。この場合、補正演算子入力部1306は、別の演算装置1212によって入力された補正演算子を、補正振幅計算部1305に入力する。
【0092】
このような構成により、本変形例2では、図6に示したステップA1~A8のうち、測定と独立した処理(ステップA1~A3)は、外部の別の演算装置1212によって実行される。一方、測定と連動した処理(ステップA4~A8)は、物体検知装置1000の演算装置1211によって実行される。
【0093】
また、本変形例2では、演算装置1211によって測定と連動した処理(ステップA4~A8)が実行される前に、別の演算装置1212によって、測定と独立した処理(ステップA1~A3)が一回のみ実行される。その後、演算装置1211は、測定と連動した処理(ステップA4~A8)を、測定の度に実行する。
【0094】
このように、本変形例2では、比較的処理時間がかかる、測定と独立した処理(ステップA1~A3)が、物体検知装置1000とは別の演算装置によって行われる。このため、本変形例2によれば、物体検知装置1000における処理負担の軽減が図られると共に、処理時間が短縮される。
【0095】
[実施の形態における効果]
以下において、図12図16を用いて、本実施の形態による効果について説明する。
【0096】
図12は、本発明の実施の形態における物体検知装置と検知対象となる物体との位置関係を示す図である。図12においては、物体検知装置1000の送信アンテナ1202及び受信アンテナ1203で構成された開口面1401と、開口面1401に正対する正対領域1402と、対象物1003とが示されている。
【0097】
従来からの物体検知装置では、発明が解決しようとする課題の欄で述べたとおり、検知可能な対象物1003の位置が、図12で示す所の開口面1401と正対領域1402とで囲まれた検知空間1400に限定されるという問題がある(図8参照)。図12の例においても、検知空間1400は、開口面207と正対領域1402とを対向する2面とした直方体で構築されている。
【0098】
このような問題が生じるのは、従来からの物体検知装置では、検知空間1400の外側にある対象物1003からの反射波は、検知空間1400の内側にある対象物1003からの反射波に比べて、微弱になり、検知空間1400の外側にある対象物1003の検知が困難になるためである。
【0099】
つまり、対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)は、上記数1で示したように、PSF行列Bによる重み付けを受けた反射振幅分布σ(r)の干渉の結果として得られる。そのため、従来からの物体検知装置では、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)は、検知空間1400の内側と外側とで振幅差が無かったとしても、PSF行列Bによる重み付けを受けた反射振幅分布σ(r)の干渉の結果として、反射振幅は、検知空間1400の内側で強くなり、外側で振幅が微弱になり、像が消失する。
【0100】
図13を用いて、対象物1003が検知空間1400の内側と外側とに渡って存在する場合(図12参照)に、従来からの物体検知装置が、ビームフォーマ法を用いて対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)を画像化した結果を示す。図13は、従来からの物体検知装置によって検知された、検知空間の内側と外側とに渡って位置する物体の画像の一例を示す図である。図13に示すように、対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)は、検知空間1400の内側では強い振幅を持つ。しかし、検知空間1400の外側では、振幅が微弱になるため、像が消失している。
【0101】
一方、本実施の形態によれば、対象物1003が検知空間1400の外側に位置する場合であっても、対象物1003の検知が可能になるという効果が得られる。その理由は、本実施の形態では、PSF行列Bによる重み付けを受けて検知空間1400の内側と外側とで振幅差が生じる電波振幅分布P(r)ではなく、PSF行列Bによる重み付けが解除された対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)が、最終的に出力されるからである。
【0102】
図14を用いて、対象物1003が検知空間1400の内側と外側とに渡って存在する場合(図12参照)に、本実施の形態における物体検知装置1000が、ビームフォーマ法を用いて対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)を画像化した結果を示す。図14は、本発明の実施の形態における物体検知装置によって検知された、検知空間の内側と外側とに渡って位置する物体の画像の一例を示す図である。
【0103】
図14の例では、対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)が振幅計算部1301によって計算され、補正振幅計算部1305によって、この計算された反射振幅分布が、補正演算子計算部1304で得られた補正演算子を用いて補正される。この結果、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)が補正画像として得られる。図14に示すように、本実施の形態による物体検知装置1000によれば、従来からの物体検知装置と異なり、検知空間1440の内側と外側に渡って存在する対象物1003の像が得られている。
【0104】
このように、本実施の形態においては、検知可能な対象物1003は、検知空間1400の内側に位置していなくても良く、その位置は、開口面1401で制限される範囲内に限定されない。このため、本実施の形態によれば、対象物1003を検知可能な範囲を拡げるために、開口面1401を大きくする必要は無く、従って、物体検知装置1000の大型化は不要であり、物体検知装置1000の設置容易性を損なう事もない。
【0105】
また、本実施の形態においては、物体検知装置1000の大型化が必要ないので、それに伴い、送信アンテナ1202の個数、受信アンテナ1203の個数、及び送受信機の個数を増大させる必要も無い。結果、本実施の形態によれば、コストを増大させることなく、検知範囲の拡張が可能となる。
【0106】
更に、本実施の形態における物体検知装置1000では、従来の物体検知装置に比べて、高い分解能を実現できるという効果が得られる。従来の物体検知装置では、上記数1で示すように、点の広がり具合を表すPSFの影響を受けて、対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)よりも広がって分布した像が、反射振幅分布P(r)として得られる。一方で、本実施の形態における物体検知装置は、点の広がり具合を表すPSFの影響を排除した対象物1003の真の反射振幅分布σ(r)を最終的な出力とするため、従来の物体検知装置よりも分解能が改善する。
【0107】
ここで、図15及び図16を用いて、本実施の形態における物体検知装置の分解能と、従来の物体検知装置の分解能とについて、両者を比較して説明する。図15は、従来からの物体検知装置によって検知された物体の画像の一例を示す図である。図16は、本発明の実施の形態における物体検知装置によって検知された物体の画像の一例を示す図である。図15及び図16において、検知対象となった対象物1003は、4つの穴の開いた四角形を呈している。また、図15及び図16に示した画像は、対象物1003からの反射波の電波振幅分布P(r)を画像化した結果を示している。
【0108】
図15に示すように、従来の物体検知装置では、分解能が低いため、対象物1003に存在する穴の検知に失敗している。一方、本実施の形態では、対象物1003からの反射波の反射振幅分布P(r)は、補正演算子によって補正され、真の反射振幅分布σ(r)として計算される。このため、図16に示すように、本発明の実施の形態における物体検知装置1000では、従来に比べて分解能が向上しているため、結果、対象物1003に存在する4つの穴の検知に成功している。このように、本実施の形態によれば、従来の方式に比べて、高い分解能が実現されるので、対象物1003の検知精度が改善するという効果が得られる。
【0109】
[プログラム]
本実施の形態におけるプログラムは、演算装置1211が備えるコンピュータに、図6に示すステップA1~A3、及びA7~A8を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における物体検知装置1000と物体検知方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、演算装置1211の振幅計算部1301、アンテナ配置/RF周波数入力部1302、PSF計算部1303、補正演算子計算部1304、及び補正振幅計算部1305として機能し、処理を行なう。
【0110】
また、本実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、演算装置1211の振幅計算部1301、アンテナ配置/RF周波数入力部1302、PSF計算部1303、補正演算子計算部1304、及び補正振幅計算部1305のいずれかとして機能しても良い。
【0111】
ここで、本実施の形態におけるプログラムを実行することによって、物体検知装置1000の演算装置1211を実現するコンピュータについて図17を用いて説明する。図17は、本発明の実施の形態における物体検知装置の演算装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0112】
図17に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。
【0113】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0114】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0115】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0116】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0117】
なお、本実施の形態における物体検知装置1000の演算装置1211は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、物体検知装置1000の演算装置1211は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0118】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)~(付記15)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0119】
(付記1)
電波によって物体を検知するための装置であって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、前記物体に向けて電波を照射する、送信部と、
受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部と、
演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出し、
更に、前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【0120】
(付記2)
付記1に記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、及び前記送信アンテナから照射される電波の周波数に基づいて、前記点像分布関数を算出し、算出した前記点像分布関数に基づいて、前記補正演算子を算出し、そして、算出した前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【0121】
(付記3)
付記2に記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、前記点像分布関数を要素とする行列の擬逆行列を算出し、算出した前記擬逆行列を前記補正演算子として用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【0122】
(付記4)
付記1に記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、外部から前記補正演算子の入力を受け付け、入力を受け付けた前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【0123】
(付記5)
付記1~4のいずれかに記載の物体検知装置であって、
前記演算装置は、
前記物体が存在する特定の領域又は特定の空間を複数の部分に分割し、分割によって得られた前記部分毎に、当該部分を定義域として、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【0124】
(付記6)
電波によって物体を検知するための方法であって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、前記物体に向けて電波を照射する、送信部と、受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部とを備えた、物体検知装置による、
(a)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出する、ステップと、
(b)前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正する、ステップと、
を有することを特徴とする物体検知方法。
【0125】
(付記7)
付記6に記載の物体検知方法であって、
前記物体検知装置による、
(c)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、及び前記送信アンテナから照射される電波の周波数に基づいて、前記点像分布関数を算出し、算出した前記点像分布関数に基づいて、前記補正演算子を算出する、ステップを更に有し、
前記(b)のステップにおいて、算出した前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知方法。
【0126】
(付記8)
付記7に記載の物体検知方法であって、
前記(c)のステップにおいて、前記点像分布関数を要素とする行列の擬逆行列を前記補正演算子として算出し、
前記(b)のステップにおいて、前記擬逆行列を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知方法。
【0127】
(付記9)
付記6に記載の物体検知方法であって、
前記(b)のステップにおいて、外部から前記補正演算子の入力を受け付け、入力を受け付けた前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知方法。
【0128】
(付記10)
付記6~9のいずれかに記載の物体検知方法であって、
前記(b)のステップにおいて、前記物体が存在する特定の領域又は特定の空間を複数の部分に分割し、分割によって得られた前記部分毎に、当該部分を定義域として、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とする物体検知方法。
【0129】
(付記11)
コンピュータを用いて電波による物体の検知を行うためのプログラムであって、
送信アンテナを有し、前記送信アンテナを用いて、物体に向けて電波を照射する、送信部と、受信アンテナを有し、前記受信アンテナを用いて、前記物体で反射された前記電波を受信信号として受信し、受信した前記受信信号から中間周波数信号を生成する、受信部と、コンピュータとを備える、物体検知装置において、前記コンピュータに、
(a)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、前記送信アンテナから照射される電波の周波数、及び前記中間周波数信号に基づいて、前記物体で反射された前記電波の振幅分布を算出する、ステップと、
(b)前記送信部及び前記受信部の特性を示す点像分布関数から算出された補正演算子を用いて、算出した前記振幅分布を補正する、ステップと、
を実行させる命令を含む、ことを特徴とするプログラム
【0130】
(付記12)
付記11に記載のプログラムであって、
記コンピュータに、
(c)前記送信アンテナの配置、前記受信アンテナの配置、及び前記送信アンテナから照射される電波の周波数に基づいて、前記点像分布関数を算出し、算出した前記点像分布関数に基づいて、前記補正演算子を算出する、ステップを実行させる命令を更に含み、
前記(b)のステップにおいて、算出した前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とするプログラム
【0131】
(付記13)
付記12に記載のプログラムであって、
前記(c)のステップにおいて、前記点像分布関数を要素とする行列の擬逆行列を前記補正演算子として算出し、
前記(b)のステップにおいて、前記擬逆行列を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とするプログラム
【0132】
(付記14)
付記11に記載のプログラムであって、
前記(b)のステップにおいて、外部から前記補正演算子の入力を受け付け、入力を受け付けた前記補正演算子を用いて、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とするプログラム
【0133】
(付記15)
付記11~14のいずれかに記載のプログラムであって、
前記(b)のステップにおいて、前記物体が存在する特定の領域又は特定の空間を複数の部分に分割し、分割によって得られた前記部分毎に、当該部分を定義域として、前記振幅分布を補正する、
ことを特徴とするプログラム
【0134】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、前述の各特許文献等に開示されている内容は、本発明に引用をもって繰り込むことも可能とする。本発明の全開示(特許請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施の形態の変更・調整が可能である。また、本発明の特許請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせあるいは選択も可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって、当業者であればなし得ることが可能な各種変形、修正を含むことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0135】
以上のように、本発明によれば、検知対象物の位置範囲の拡張及び分解能の向上を図りつつ、装置のサイズ及びコストの増加を抑制することができる。本発明は、電波を利用して物体を検知する、イメージング装置、リモートセンシング装置等に有用である。
【符号の説明】
【0136】
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
1000 物体検知装置
1001 送受信装置
1002 電波(送信信号)
1003 対象物(検知対象となる物体)
1004 電波(受信信号)
1005 対象物配置面
1101 送信部
1102 受信部
1201 発振器
1202 送信アンテナ
1203 受信アンテナ
1204 ミキサ
1205 インターフェイス回路
1206 可変移相器
1208 端子
1211 演算装置
1301 振幅計算部
1302 アンテナ配置/RF周波数入力部
1303 PSF(点像分布関数)計算部
1304 補正演算子計算部
1305 補正振幅計算部
1306 補正演算子入力部
1400 検知空間
1401 開口面
1402 正対領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19