(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/00 20060101AFI20231031BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20231031BHJP
A47K 13/30 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E03D9/00 Z
E03D11/00 Z
A47K13/30 Z
(21)【出願番号】P 2022014098
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2023-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】島田 光浩
(72)【発明者】
【氏名】倉島 ひな子
(72)【発明者】
【氏名】須澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山中 勝美
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-6766(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124163(WO,A1)
【文献】特開2008-95446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00ー13/00
A47K 13/00ー17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上方に配置される便座と、
前記便器の便鉢内を撮影する画像センサと、
前記画像センサにより撮影された前記便鉢内の画像に基づいて使用者の大便の状態を判定する判定手段と、
前記便器の近傍に使用者が存在する場合に使用者検知信号を送信する使用者検知センサと、
前記便鉢内に光を照射するように点灯する第1照明装置及び第2照明装置と、
前記使用者検知信号を受信している場合に前記第1照明装置を点灯させ、前記画像センサが前記便鉢内を撮影する場合に前記第2照明装置を点灯させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記画像センサが前記便鉢内を撮影する場合に、前記第1照明装置を点灯させないことを特徴とする、トイレ装置。
【請求項2】
前記便座に使用者が着座している場合に着座検知信号を送信する着座検知センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記第1照明装置の点灯中に前記着座検知信号の受信を開始した場合に、前記第1照明装置を消灯させるとともに前記第2照明装置を点灯させることを特徴とする、請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記着座検知信号の受信が終了した場合に、前記第2照明装置を消灯させるとともに前記第1照明装置を点灯させ、その後に前記使用者検知信号の受信が終了した場合に、前記第1照明装置を消灯させることを特徴とする、請求項2に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、画像センサを備え、便器の便鉢内を撮影する便座装置を開示している。この便座装置は、撮影時に便鉢内に光を照射する照明装置(以下「撮影用照明装置」ともいう。)をさらに備えている。使用者が便座に着座している際、便鉢内は暗くなり易いが、撮影用照明装置が便鉢内に光を照射することにより、使用者の大便を含む便鉢内の鮮明な画像を得ることが可能になる。このようにして得られた画像に基づいて使用者の大便の状態を判定することにより、使用者の健康管理に資する情報の取得が期待できる。
【0003】
特許文献2は、便鉢内に光を照射する照明装置(以下「鉢内照明装置」ともいう。)を開示している。鉢内照明装置は、トイレルームの天井等に設けられる照明装置(以下「室内照明装置」ともいう。)の代わりにトイレルームを照らす間接照明装置としても機能し得る。例えば、夜間に、排便のために一時的に起床した使用者がトイレルームに入室した際に、室内照明装置を点灯させることなく鉢内照明装置が便鉢内に光を照射することにより、便鉢や溜水の表面において反射する光でトイレルーム内をほのかに明るくすることができる。これにより、室内照明装置の強い光で使用者を覚醒させることなく、使用者に便器を使用させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-55522号公報
【文献】特開2008-95446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉢内照明装置により間接照明を行うトイレ装置においても、画像センサを用いた撮影を行いたいという要請がある。しかしながら、鉢内照明装置に加えて、特許文献1に記載の撮影用照明装置を設けると、便鉢内の照度が過度に高まり、撮影により得られる画像の色彩が実物よりも白くなり(所謂「白飛び」)、使用者の大便の状態を正確に判定できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、間接照明と、使用者の大便の状態の判定とを適切に行うことが可能なトイレ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様に係るトイレ装置は、便器の上方に配置される便座と、便器の便鉢内を撮影する画像センサと、画像センサにより撮影された便鉢内の画像に基づいて使用者の大便の状態を判定する判定手段と、便器の近傍に使用者が存在する場合に使用者検知信号を送信する使用者検知センサと、便鉢内に光を照射するように点灯する第1照明装置及び第2照明装置と、使用者検知信号を受信している場合に第1照明装置を点灯させ、画像センサが便鉢内を撮影する場合に第2照明装置を点灯させる制御装置と、を備え、制御装置は、画像センサが便鉢内を撮影する場合に、第1照明装置を点灯させない。
【0008】
この構成によれば、便器の近傍に使用者が存在する場合に、第1照明装置が点灯して便鉢内に光を照射するため、この第1照明装置を間接照明に用いることができる。一方、画像センサが便鉢内を撮影する場合は、第1照明装置を点灯させることなく第2照明装置のみを点灯させることにより、便鉢内の照度が過度に高まることを抑制できる。この結果、撮影により得られる画像の色彩を適切なものとし、使用者の大便の状態を適切に判定することが可能になる。
【0009】
本発明の第2態様に係るトイレ装置は、便座に使用者が着座している場合に着座検知信号を送信する着座検知センサをさらに備え、制御装置は、第1照明装置の点灯中に着座検知信号の受信を開始した場合に、第1照明装置を消灯させるとともに第2照明装置を点灯させる。
【0010】
この構成によれば、使用者が便座に着座した場合に、それまで間接照明に用いていた第1照明装置を消灯させ、第2照明装置を点灯させて使用者の排便及び便鉢内の撮影に備えることができる。また、点灯する照明装置の切り替えを、便座への着座という使用者の動作をトリガとして行う本構成は、使用者の動作にかかわらず当該切り替えを行う他の構成と比べて、使用者に与える違和感を軽減することができる。
【0011】
本発明の第3態様に係るトイレ装置では、制御装置は、着座検知信号の受信が終了した場合に、第2照明装置を消灯させるとともに第1照明装置を点灯させ、その後に使用者検知信号の受信が終了した場合に、第1照明装置を消灯させる。
【0012】
この構成によれば、使用者が便座から離座した場合に、それまで便鉢内の撮影に用いていた第2照明装置を消灯させ、第1照明装置を点灯させて間接照明を再開させることができる。また、その後、使用者がトイレルームから退室して、便器の近傍に使用者が存在しなくなった場合に、第1照明装置を消灯させて間接照明を終了させることができる。つまり、上記構成によれば、排便後の使用者の動作に応じた実用性の高い照明を提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、間接照明と、使用者の大便の状態の判定とを適切に行うことが可能なトイレ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るトイレ装置が設置されたトイレルームを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のカバーを除いた便座装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0016】
<全体構成>
まず、
図1から
図5を参照しながら、本発明の実施形態に係るトイレ装置1の構成について説明する。
図1は、トイレ装置1が設置されたトイレルームRを示す斜視図であり、
図2は、カバー3aを除いた便座装置2を示す斜視図である。
図3は、便座4を示す斜視図である。
図4は、便座装置2の平面図であり、便座4の裏側の構成を破線で示している。
図5は、トイレ装置1のブロック図である。
【0017】
図1に示すように、トイレルームRの床面F上には便器9が設置されている。便器9は、大便器であり、使用者の便を受ける便鉢91と、便鉢91の周囲で立設するリム92と、を有している。例えば、トイレルームRに設けられた洗浄操作部(不図示)が使用者により操作されると、便鉢91に洗浄水が供給され、便鉢91の洗浄及び便鉢91からの便の排出が行われる。洗浄操作部は、トイレルームRに設けられる操作レバーや、後述する操作装置7に設けられたスイッチ等、種々の形態を採用し得る。
【0018】
トイレ装置1は、この便器9に適用される。トイレ装置1は、便座装置2と、操作装置7とを備える。なお、以下の説明では、後述する便座4に着座した使用者から見て前方を「前」、後方を「後」、左方を「左」、右方を「右」という。また、鉛直方向上方を「上」、鉛直方向下方を「下」という。
【0019】
便座装置2は、便器9の上部に取り付けられ、本体3と、便座4と、ノズル5と、を備えている。便座装置2は、便器9に対して着脱可能に取り付けられてもよいし、便器9と一体となるように取り付けられてもよい。
【0020】
本体3は、
図1に示すカバー3aと、
図2に示すベースプレート3bと、を有している。ベースプレート3bは、便器9の後部の上面と当接するように配置され、種々の部品が固定されている。ベースプレート3bの前面には、本体LED34,34が設けられている。
【0021】
本体LED34,34は、電力の供給を受けて点灯する光源であり、本発明の「第1照明装置」の一例である。点灯した本体LED34,34が出射する光は強い指向性を示し、その指向角は比較的小さい。指向角の略中心を通る直線を中心軸CA,CAとすると、本体LED34,34は、
図4に示すようにこの光の中心軸CA,CAが前後方向に対して傾斜して延びるように、ベースプレート3bに取り付けられている。本体LED34,34は、左右方向に互いに間隔を開けて配置され、且つ、前後方向において便鉢91の後端部91a寄りの位置に設けられている。
【0022】
カバー3aは、本体LED34,34を露出させた状態でベースプレート3bの上方を覆う。
図1に示すように、カバー3aの前面には、使用者検知センサ32と、着座検知センサ33とが設けられている。
【0023】
使用者検知センサ32は、便器9の近傍に使用者が存在することを検知するために設けられている。使用者検知センサ32は、例えば焦電型赤外線センサであり、所定サイクルで信号を送信するとともに、使用者が放出する特定波長の赤外線を受けると、その信号に変化が生じるように構成されている。後述する制御装置31の判定部311は、この信号に基づいて、便器9の近傍に使用者が存在するか否かを判定する。本明細書では、使用者検知センサ32が送信する信号のうち、それに基づいて、便器9の近傍に使用者が存在すると判定部311が判定し得るものを、「使用者検知信号」という。
【0024】
着座検知センサ33は、使用者が便座4の着座面4bに着座していることを検知するために設けられている。着座検知センサ33は、例えば赤外線を用いる測距センサであり、所定サイクルで信号を送信するとともに、対象物と着座検知センサ33との距離の変化に応じてその信号に変化が生じるように構成されている。後述する制御装置31の判定部311は、この信号に基づいて、使用者が便座4の着座面4bに着座している否かを判定する。本明細書では、着座検知センサ33が送信する信号のうち、それに基づいて、使用者が便座4の着座面4bに着座していると判定部311が判定し得るものを、「着座検知信号」という。
【0025】
便座4は、環状を呈し、その中央部には開口4aが形成されている。開口4aは、便座4がリム92上に載置されているとき、便鉢91を開放する。便座4の後端部は軸支されており、これにより、便座4は、リム92上に載置される姿勢と、リム92から離れて便鉢91を大きく開放する姿勢との間で回動可能とされている。
【0026】
図3及び
図4に示すように、便座4の底面4cには、前脚部41,41と、後脚部42,42とが設けられている。前脚部41,41は、底面4cのうち前端部寄りの部位に、開口4aを挟んで左右方向に互いに対向するように配置されている。後脚部42,42は、便座4の底面4cのうち後端部寄りの部位に、開口4aを挟んで左右方向に互いに対向するように配置されている。後脚部42,42は、底面4cに対して傾斜する後端面42a,42aを有している。便座4がリム92上に載置されているとき、前脚部41,41及び後脚部42,42は、リム92の上面に当接する。また、
図4に示すように、便座4がリム92上に載置された姿勢にあるとき、後脚部42,42の後端面42a,42aは、本体LED34,34が出射する光の中心軸CA,CA上に配置される。
【0027】
図3に示すように、便座4の底面4cには、凹部43,44が形成されている。凹部43,44は、底面4cのうち開口4aよりも右側の部位に、前後方向に互いに離間するように形成されている。凹部43内には、画像センサ45が配置され、凹部44内には、便座LED46が配置されている。
【0028】
画像センサ45は、外部から光を入射させて撮影を行うカメラであり、画像信号を送信するように構成されている。便座4がリム92上に載置された姿勢にあるとき、画像センサ45は、便鉢91内を向くように凹部43内に配置されている。また、
図4に示すように、画像センサ45は、本体LED34,34が出射する光の中心軸CA,CAから離間した位置に配置されている。
【0029】
便座LED46は、電力の供給を受けて点灯する光源である。便座LED46は、本体LED34,34よりも小型で、出力が低い。便座4がリム92上に載置された姿勢にあるとき、便座LED46は、本体LED34,34よりも前方の位置に配置され、便鉢91内を向くように、凹部44内に配置されている。便座LED46は、本発明の「第2照明装置」の一例である。
【0030】
図1及び
図2に示すノズル5は、使用者の局部の洗浄に用いられる。ノズル5は、電動モータ(不図示)により本体3から便鉢91内に進退可能に構成されている。ノズル5が便鉢91内に位置しているときに電磁バルブ(不図示)が開かれることにより、ノズル5は、使用者の局部に向けて水を吐出する。
【0031】
図1に示す操作装置7は、例えばトイレルームRの壁面に設置される。操作装置7は、便座装置2の複数の動作(例えば、局部洗浄の開始や停止)にそれぞれ対応する複数のスイッチ(不図示)を有している。
図5に示すように、操作装置7は、さらに、通信部71と、表示部72とを有している。通信部71は、後述する便座装置2の通信部312と無線で信号の送受信を行う。表示部72は、操作装置7の外側面に設けられた液晶パネルであり、種々の情報を表示する。
【0032】
図2及び
図5に示すように、便座装置2の本体3内には、制御装置31が配置されている。制御装置31は、その一部又は全部が、アナログ回路で構成されるか、デジタルプロセッサとして構成され、
図5に示すように、機能ブロックとして判定部311及び通信部312を有している。判定部311は、制御装置31が外部から受信した信号等に基づいて種々の判定を行う。通信部312は、便座装置2の外部の機器との信号の送受信を行う。判定部311は、本発明の「判定手段」の一例である。
【0033】
なお、制御装置31に組み込まれるソフトウェアのモジュールは、必ずしも
図5に示される機能ブロックのように分割されている必要はない。すなわち、実際のアナログ回路やモジュールは、
図5に示す複数の機能ブロックの働きをするものとして構成されていてもよいし、更に細分化されていてもよい。制御装置31の構成は、後述する処理を実行できるように構成されていれば、当業者が適宜変更できる。
【0034】
制御装置31は、ノズル5、本体LED34,34、画像センサ45及び便座LED46に制御信号を送信可能に接続されている。また、制御装置31は、画像センサ45、使用者検知センサ32及び着座検知センサ33から信号を受信することができる。
【0035】
<動作例>
次に、
図6及び
図7も参照しながら、トイレ装置1の動作の一例について説明する。
図6及び
図7は、便座装置2の側面図であり、便器9の内部の便鉢91や封水部93を破線で示している。
【0036】
(間接照明の開始)
使用者がトイレルームRに入室して便器9に接近すると、使用者検知センサ32が使用者検知信号の送信を開始する。その使用者検知信号に基づいて、便器9の近傍に使用者が存在すると判定部311が判定すると、制御装置31は、本体LED34,34への制御信号の送信を開始する(つまり、本体LED34,34への電力供給を開始する)。これにより、本体LED34,34が点灯する。
【0037】
点灯した本体LED34,34は、主に、
図4に示す中心軸CA,CAに沿う方向に光を出射する。本体LED34,34が中心軸CA,CAに沿うように出射した光は、
図6に矢印L1で示すように、便座4の後脚部42,42の後端面42a,42aにおいて反射し、便鉢91内を指向する。この光は、便鉢91内のうち、主に、後端部91a近傍の領域A1に照射される。領域A1は、便器9に正対した使用者(つまり、便器9の前方に立って便器9側を向いた使用者)から視認し易い部位となるように設定されている。
【0038】
領域A1に照射された光が便鉢91や溜水Wの表面において反射し、その反射光がトイレルームR内をほのかに照らすことにより、本体LED34,34による間接照明が行われる。これにより、夜間に、排便のために一時的に起床した使用者がトイレルームR内に入室した場合でも、トイレルームRの室内照明装置を点灯させることなく、使用者に便器9の位置を確認させることが可能になる。
【0039】
(間接照明の終了と便座LEDの点灯)
次に、使用者が便座4に着座すると、着座検知センサ33が着座検知信号の送信を開始する。その着座検知信号に基づいて、使用者が便座4に着座していると判定部311が判定すると、制御装置31は、本体LED34,34への制御信号の送信を停止する(つまり、本体LED34,34への電力供給を停止する)とともに、便座LED46への制御信号の送信を開始する(つまり、便座LED46への電力供給を開始する)。これにより、本体LED34,34が消灯して本体LED34,34による間接照明が終了するとともに、便座LED46が点灯し、光を出射する。
【0040】
便座LED46が出射した光は、
図7に矢印L2で示すように便鉢91内を指向し、主に、封水部93近傍の領域A2に照射される。領域A2は、本体LED34,34が光を照射する領域A1(
図6参照)と異なるように設定されているが、領域A1と部分的に重複してもよい。便座LED46が出射した光は、封水部93の奥部まで達する。
【0041】
(局部洗浄)
便座4に着座している使用者が、局部洗浄の開始に対応する操作装置7のスイッチを操作すると、操作装置7の通信部71がこのスイッチに対応する信号を生成し、無線で便座装置2に送信する。便座装置2は、この信号を制御装置31の通信部312で受信し、制御装置31は、ノズル5に制御信号を送信する。制御信号を受信したノズル5は、本体3から便鉢91内に進出するとともに、開かれた電磁バルブから供給される水を、使用者の局部に向けて吐出する。
【0042】
(画像センサによる便鉢内の撮影)
制御装置31は、使用者の排便後又は排便中に、画像センサ45に制御信号を送信し、便鉢91内を撮影させる。画像センサ45は、撮影した便鉢91内の画像に対応する画像信号を制御装置31に送信する。画像信号を受信した制御装置31は、判定部311において、予め定められたプログラムに基づいて、使用者の大便の有無、大便の色、形、大きさ、及び量のうち少なくとも1つを判定する。制御装置31の通信部312は、この判定結果に対応する信号を生成し、外部のクラウドサービスCに送信する。医療従事者等は、このクラウドサービスCにアクセスして上記判定結果を取得することにより、使用者の健康状態を把握し、それに基づく助言をすることが可能になる。
【0043】
ここで、制御装置31は、画像センサ45に制御信号を送信して便鉢91内を撮影させている間、本体LED34,34に制御信号を送信することなく、便座LED46への制御信号の送信を継続し、便座LED46のみを点灯させる。これにより、画像センサ45による便鉢91内の撮影は、
図7に示すように、便座LED46のみから便鉢91内に光が照射される状況にて行われる。
【0044】
(便座LEDの消灯と間接照明の再開)
画像センサ45による便鉢91内の撮影後、使用者が起立して便座4から離座すると、着座検知センサ33が着座検知信号の送信を停止する。着座検知信号の受信が終了したことに基づいて、使用者が便座4から離座したと判定部311が判定すると、制御装置31は、便座LED46への制御信号の送信を停止する(つまり、便座LED46への電力供給を停止する)とともに、本体LED34,34への制御信号の送信を開始する。この結果、
図6に示すように、便座LED46が消灯して本体LED34,34のみが点灯し、本体LED34,34による間接照明が再び行われる。これにより、使用者は、トイレルームRの室内照明装置を点灯させることなく、トイレルームRから退室することが可能となる。
【0045】
(間接照明の終了)
使用者が便器9から所定距離以上離間すると、使用者検知センサ32は使用者検知信号の送信を停止する。使用者検知信号の受信が終了したことに基づいて、便器9の近傍に使用者が存在しなくなったと判定部311が判定すると、制御装置31は、本体LED34,34への制御信号の送信を停止する。これにより、本体LED34,34が消灯して本体LED34,34による間接照明が終了する。
【0046】
<作用効果>
この構成によれば、便器9の近傍に使用者が存在する場合に、本体LED34,34が点灯して便鉢91内に光を照射するため、この本体LED34,34を間接照明に用いることができる。一方、画像センサ45が便鉢91内を撮影する場合は、本体LED34,34を点灯させることなく便座LED46のみを点灯させることにより、便鉢91内の照度が過度に高まることを抑制できる。この結果、撮影により得られる画像の色彩を適切なものとし、使用者の大便の状態を適切に判定することが可能になる。
【0047】
また、トイレ装置1は、便座4に使用者が着座している場合に着座検知信号を送信する着座検知センサ33をさらに備えている。制御装置31は、本体LED34,34の点灯中に着座検知信号の受信を開始した場合に、本体LED34,34を消灯させるとともに便座LED46を点灯させる。
【0048】
この構成によれば、使用者が便座4に着座した場合に、それまで間接照明に用いていた本体LED34,34を消灯させ、便座LED46を点灯させて使用者の排便及び便鉢91内の撮影に備えることができる。また、点灯する照明装置の切り替えを、便座4への着座という使用者の動作をトリガとして行う本構成は、使用者の動作にかかわらず当該切り替えを行う他の構成と比べて、使用者に与える違和感を軽減することができる。
【0049】
また、制御装置31は、着座検知信号の受信が終了した場合に、便座LED46を消灯させるとともに本体LED34,34を点灯させ、その後に使用者検知信号の受信が終了した場合に、本体LED34,34を消灯させる。
【0050】
この構成によれば、使用者が便座4から離座した場合に、それまで便鉢91内の撮影に用いていた便座LED46を消灯させ、本体LED34,34を点灯させて間接照明を再開させることができる。また、その後、使用者がトイレルームRから退室して、便器9の近傍に使用者が存在しなくなった場合に、本体LED34,34を消灯させて間接照明を終了させることができる。つまり、上記構成によれば、排便後の使用者の動作に応じた実用性の高い照明を提供することが可能になる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1…トイレ装置、31…制御装置、311…判定部(判定手段)、32…使用者検知センサ、33…着座検知センサ、34…本体LED(第1照明装置)、4…便座、45…画像センサ、46…便座LED(第2照明装置)、9…便器、91…便鉢