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特許7375843エレベータ換気制御装置、エレベータシステムおよびエレベータ換気制御装置の制御方法
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  • 特許-エレベータ換気制御装置、エレベータシステムおよびエレベータ換気制御装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】エレベータ換気制御装置、エレベータシステムおよびエレベータ換気制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/06 20060101AFI20231031BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20231031BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20231031BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B66B1/06 B
B66B11/02 F
B66B13/14 L
B66B3/00 Q
B66B3/00 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022021618
(22)【出願日】2022-02-15
(65)【公開番号】P2023118596
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2022-02-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】端 宏晃
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-213412(JP,A)
【文献】特開2013-170032(JP,A)
【文献】特開2017-210356(JP,A)
【文献】特開2005-015099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
B66B 11/00 - 11/08
B66B 13/00 - 13/30
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内の換気を制御するエレベータ換気制御装置であって、
前記乗りかごにおいて、乗場を有する階に前記乗りかごを停止し前記乗りかごの扉を開けて前記乗りかご内を換気する、開放換気を行う換気制御部と、
前記乗りかごの開放換気を行う予定の階において、前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無を検出する、カメラ、測距センサおよび人感センサのいずれかである乗場用人検出部からの前記所定範囲内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記換気制御部は、前記乗場検出情報に基づき、前記乗りかごの開放換気を制御する、エレベータ換気制御装置。
【請求項2】
前記乗りかごの開放換気は、停止した階の前記乗りかごの乗場に、前記乗りかご内の空気を排出することで行われる、請求項1に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項3】
前記換気制御部は、前記所定範囲内に人が居ることが検出された場合、前記開放換気を停止する、または、前記乗りかご内の空気を前記乗りかごの塔内に排出する、請求項1または2に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項4】
前記乗場検出情報は、前記所定範囲内の人の位置に関する情報を含み、
前記換気制御部は、検出された前記所定範囲内の人の位置に応じて、前記開放換気の単位時間当たりの換気量を変更する、請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項5】
前記乗場検出情報は、前記乗りかごの各階の乗場における所定範囲内の人の有無に関する情報を含み、
前記換気制御部は、前記乗りかごの各階の乗場における所定範囲内の人の有無に基づいて開放換気を行う階を決定する、請求項1から4のいずれか1項に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項6】
前記換気制御部は、開放換気中の所定時間内に、当該開放換気が行われている階の乗場の所定範囲内で検出された人数が閾値を超えた場合、当該階での開放換気を停止する制御を行う、請求項5に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項7】
前記乗場検出情報は、各階の前記乗りかごの乗場における所定範囲内にいる人数に関する情報を含み、
過去の前記乗場検出情報を蓄積する記憶部をさらに備え、
前記換気制御部は、蓄積された前記乗場検出情報に基づいて開放換気を行う階を決定する、請求項1から4のいずれか1項に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項8】
前記乗場検出情報は、各時間帯における各階の前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人数に関する情報を含み、
前記換気制御部は、前記乗りかごの開放換気を行う予定の時間帯において、蓄積された前記乗場検出情報に基づいて開放換気を行う階を決定する、請求項7に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項9】
前記乗りかごの乗場にいる人に前記開放換気の実施を報知する報知制御部を備えている、請求項1から8のいずれか1項に記載のエレベータ換気制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のエレベータ換気制御装置と、
前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無を検出する検出部と、
前記乗りかごの乗場にいる人に前記開放換気の実施を報知する報知部と、を備えているエレベータシステム。
【請求項11】
乗りかご内の換気を制御するエレベータ換気制御方法であって、
前記乗りかごにおいて、乗場を有する階に前記乗りかごを停止し前記乗りかごの扉を開けて前記乗りかご内を換気する、開放換気を行う換気制御ステップと、
前記乗りかごの開放換気を行う予定の階において、前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無を検出する、カメラ、測距センサおよび人感センサのいずれかである乗場用人検出部からの前記所定範囲内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報を取得する情報取得ステップと、を含み、
前記換気制御ステップは、前記乗場検出情報に基づき、前記乗りかごの開放換気を制御する、エレベータ換気制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ換気制御装置、エレベータシステムおよびエレベータ換気制御装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗りかごは、乗降時以外は扉が閉じられていることから、塔内から給気される空気が排出されにくかった。これに対して、例えば特許文献1には、乗りかご内をより積極的に換気する例が示されている。この例では、換気が必要であると判断したエレベータの利用者が専用の釦を押すことで、当該乗りかごの停止中に乗りかごの扉を所定時間開放し、乗りかごに設置された換気扇を運転させることで乗りかご内の換気を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-213412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている換気方法では、換気が行われる際の乗場にいる人に対する影響が考慮されていない。すなわち、乗りかご内の換気中に当該乗りかごの乗場に人が居る場合、該人が、換気に伴う乗りかごからの風を不快に感じる場合がある。
【0005】
本発明の一態様は、乗場にいる人に不快感を与えずに乗りかご内の換気を行うエレベータ換気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るエレベータ換気制御装置は、乗りかご内の換気を制御するエレベータ換気制御装置であって、前記乗りかごにおいて、乗場を有する階に前記乗りかごを停止し前記乗りかごの扉を開けて前記乗りかご内を換気する、開放換気を行う換気制御部と、前記乗りかごの開放換気を行う予定の階において、前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報を取得する情報取得部と、を備え、前記換気制御部は、前記乗場検出情報に基づき、前記乗りかごの開放換気を制御する。
【0007】
上記の構成によれば、乗場を有する階に乗りかごを停止し扉を開けて乗りかごの開放換気を行う場合において、上記開放換気は、乗りかごの開放換気を行う予定の階において、乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報により制御される。そのため、乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無にあわせて、開放換気を制御することが可能となり、乗場にいる人に不快感を与えずに乗りかごの開放換気を行うことができる。
【0008】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記乗りかごの開放換気は、停止した階の前記乗りかごの乗場に、前記乗りかご内の空気を排出することで行われてもよい。
【0009】
上記の構成によれば、乗りかごの扉を開けて乗りかご内の空気を排出することで乗りかごの開放換気が行われるため、乗りかごから乗場に向けて空気の排出に伴う風が生じる。これに対して、上記のように乗場における所定範囲内の人の有無に応じて開放換気が制御されるので、人に対して風が当たるような状況を抑制することが可能となる。
【0010】
また、例えば、乗りかごの昇降時の扉が閉じられた状態で、乗りかごの塔内の空気を乗りかごに給気し、乗りかごの隙間から乗りかご内において余剰となった空気を塔内に排出する通常換気が行われていることがある。この場合、この換気動作を、乗場で乗りかごの扉を開けた状態で行うことにより、より強力な換気を開放換気として行うことが可能となる。
【0011】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記換気制御部は、前記所定範囲内に人が居ることが検出された場合、前記開放換気を停止する、または、前記乗りかご内の空気を前記乗りかごの塔内に排出してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、乗場の所定範囲内に人が居ることが検出された場合は、開放換気が停止される、または、乗りかご内の空気が乗りかごの塔内に排出されるので、乗りかごの開放換気に伴う乗りかごからの風が当該乗場に流れない。したがって、乗場にいる人に不快感を与えることを防止することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記乗場検出情報は、前記所定範囲内の人の位置に関する情報を含み、前記換気制御部は、検出された前記所定範囲内の人の位置に応じて、前記開放換気の単位時間当たりの換気量を変更してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、開放換気の単位時間当たりの換気量は乗場にいる人の位置に応じて変更されるため、上記換気量を乗りかごからの風が当該人に当たることを抑制するように調整することで、乗場にいる人に不快感を与えることを防止することができる。また、乗場に人がいない場合は、上記換気量を増して換気性能を向上させることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記乗場検出情報は、前記乗りかごの各階の乗場における所定範囲内の人の有無に関する情報を含み、前記換気制御部は、前記乗りかごの各階の乗場における所定範囲内の人の有無に基づいて開放換気を行う階を決定してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、乗場の所定範囲内に存在する人に換気の影響を与えにくい階を選定して開放換気を行うことができる。
【0017】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記換気制御部は、開放換気中の所定時間内に、当該開放換気が行われている階の乗場の所定範囲内で検出された人数が閾値を超えた場合、当該階での開放換気を停止する制御を行ってもよい。
【0018】
上記の構成によれば、開放換気が行われている階の乗場にいる人数が閾値を超えれば、当該階での開放換気を停止することができる。そのため、開放換気中に乗場に人が増えてきた場合に開放換気を停止させることによって、乗りかごからの風が人に不快感を与える可能性を抑制することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記乗場検出情報は、各階の前記乗りかごの乗場における所定範囲内にいる人数に関する情報を含み、過去の前記乗場検出情報を蓄積する記憶部をさらに備え、前記換気制御部は、蓄積された前記乗場検出情報に基づいて開放換気を行う階を決定してもよい。
【0020】
上記の構成によれば、蓄積された過去の乗場検出情報により、乗場の所定範囲内に人が少ないことが予想される階を選定して開放換気を行うことができる。
【0021】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記乗場検出情報は、各時間帯における各階の前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人数に関する情報を含み、前記換気制御部は、前記乗りかごの開放換気を行う予定の時間帯において、蓄積された前記乗場検出情報に基づいて開放換気を行う階を決定してもよい。
【0022】
上記の構成によれば、蓄積された過去の乗場検出情報により、開放換気を行う予定の時間帯において乗場の所定範囲内に人が少ないことが予想される階を選定して開放換気を行うことができる。
【0023】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置では、前記乗りかごの乗場にいる人に前記開放換気の実施を報知する報知制御部を備えていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、乗りかごについて開放換気が実施中であることを乗場にいる人に報知することができる。
【0025】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記エレベータ換気制御装置と、前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無を検出する検出部と、前記乗りかごの乗場にいる人に前記開放換気の実施を報知する報知部と、を備えていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、乗場にいる人に不快感を与えずに乗りかごの開放換気を行うことができるエレベータシステムを実現することができる。
【0027】
本発明の他の態様に係るエレベータ換気制御装置の制御方法は、乗りかご内の換気を制御するエレベータ換気制御方法であって、前記乗りかごにおいて、乗場を有する階に前記乗りかごを停止し前記乗りかごの扉を開けて前記乗りかご内を換気する、開放換気を行う換気制御ステップと、前記乗りかごの開放換気を行う予定の階において、前記乗りかごの乗場における所定範囲内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報を取得する情報取得ステップと、を含み、前記換気制御ステップは、前記乗場検出情報に基づき、前記乗りかごの開放換気を制御する。
【0028】
本発明の各態様に係るエレベータ換気制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記エレベータ換気制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記エレベータ換気制御装置をコンピュータにて実現させるエレベータ換気制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、乗場にいる人に不快感を与えずに乗りかご内の換気を行うエレベータ換気制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態1に係るエレベータ換気制御装置の開放換気を説明する図である。
図2】本発明の実施形態1に係るエレベータ換気制御装置を含むエレベータシステムの機能ブロック図である。
図3】上記エレベータシステムの概略構成を説明する縦断面図である。
図4】上記エレベータ換気制御装置における乗りかごの乗場の所定範囲を示す平面図である。
図5】上記エレベータ換気制御装置の報知例を示す平面図である。
図6】上記エレベータ換気制御装置の動作を示すフロー図である。
図7】本発明の実施形態2に係るエレベータ換気制御装置における乗りかごの乗場の所定範囲を示す平面図である。
図8】上記エレベータ換気制御装置の動作を示すフロー図である。
図9】本発明の実施形態3に係るエレベータ換気制御装置における乗りかごの乗場の所定範囲の人検出例を示す平面図である。
図10】上記エレベータ換気制御装置の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係るエレベータ換気制御装置の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0032】
<エレベータ換気制御装置の概要>
まず、本発明の実施形態1に係るエレベータ換気制御装置1の概要について説明する。エレベータ換気制御装置1は、乗りかご内の換気を制御する装置であり、利用者がいないエレベータ20の乗りかご21において開放換気を行う。
【0033】
図1は、本発明の実施形態1に係るエレベータ換気制御装置1の開放換気を説明する図である。図1の1001は、乗場70を有する階に停止中の乗りかご21の縦断面図であり、図1の1002は、乗場70側から見た乗りかご21の正面図である。図1に示すように、開放換気とは、乗りかご21において、乗場70を有する階に乗りかご21を停止し、乗りかご21の扉を開けて乗りかご21内を換気する、乗りかご21の換気方式である。開放換気では、図1の1001の空気の流れF1に示すように、塔内T1の空気を乗りかご21内に給気し、乗降口23から乗場70に排気することで、乗りかご21内の換気を行う。
【0034】
図1の1001および図1の1002の空気の流れF1に示すように、開放換気を行うと、開放換気に伴い乗りかご21から乗場70に向かって空気が流れる。開放換気中に乗場70に人がいる場合、その乗りかご21から乗場70に向かって流れる空気(風)が当該人に当たると、その風により当該人に不快感を与えてしまう場合がある。
【0035】
そこで、エレベータ換気制御装置1は、乗場70の所定範囲内の人の有無の検出結果に基づいて開放換気の制御を行うことにより、乗場70にいる人に不快感を与えることを防ぐ開放換気を実現する。
【0036】
<エレベータシステム>
図2は、本発明の実施形態1に係るエレベータ換気制御装置1を含むエレベータシステム100の機能ブロック図である。図3は、エレベータシステム100の概略構成を説明する縦断面図である。図2に示すように、エレベータシステム100は、エレベータ換気制御装置1と、エレベータ20と、エレベータ制御装置30と、乗場用人検出部50と、報知部51と、を備えている。
【0037】
(エレベータ)
図2および図3に示すように、エレベータ20は乗りかご21を備え、乗りかご21は扉22と、乗りかご用人検出部40と、ファン41と、を有している。なお、扉22は、乗りかご21側に設けられている扉と、各階の乗場70側に設けられている扉とによって構成されている。乗場70は、例えば、乗りかご21に乗車する予定の利用者が待機する領域である。
【0038】
(乗りかご用人検出部)
乗りかご用人検出部40は、乗りかご21に乗車している人の有無を検出する。乗りかご用人検出部40は、検出結果を乗りかご21の乗りかご検出情報としてエレベータ換気制御装置1の情報取得部11に送信する。なお、乗りかご用人検出部40は、検出結果をエレベータ制御装置30の通信制御部33を介して情報取得部11に送信してもよい。乗りかご用人検出部40は、例えば、乗りかご21が有する荷重センサであり、荷重センサが示す値を情報取得部11に送信してもよい。また、乗りかご用人検出部40は、例えば、カメラであり、カメラの撮像画像から人を検出してもよい。
【0039】
(ファン)
ファン41は、乗りかご21の天井に配置されている。ファン41は、塔内T1の空気を乗りかご21内に給気する。ファン41は、エレベータ換気制御装置1の開放換気制御部123により運転が制御される。
【0040】
ファン41は、ファン41が有する羽根を逆回転させることで、乗りかご21内の空気を塔内T1に排気することができる。ファン41は、上記に限らず、塔内T1の空気を乗りかご21内に給気するファンおよび乗りかご21内の空気を塔内T1に排気するファンの両方を備えていてもよい。
【0041】
(エレベータ制御装置)
エレベータ制御装置30は、エレベータ20を制御する。エレベータ制御装置30はエレベータ制御部31と、記憶部35と、を備えている。エレベータ制御部31はエレベータ制御装置30の各部を統括的に制御する。エレベータ制御部31の機能は、記憶部35に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。エレベータ制御部31は、エレベータ情報取得部32と、通信制御部33と、運行制御部34と、を備えている。
【0042】
エレベータ情報取得部32は、乗りかご21の運行情報を取得する。乗りかご21の運行情報は、乗りかご21の現在位置階情報、現在運転方向情報、呼び登録情報および乗りかご21の乗車状況情報等を含む。また、エレベータ情報取得部32は、エレベータ換気制御装置1から乗りかご21の開放換気を行うために停止する換気停止階情報を取得する。
【0043】
通信制御部33は、エレベータ換気制御装置1とエレベータ制御装置30との通信を制御する。具体的には、通信制御部33は、乗りかご21の運行情報を、エレベータ換気制御装置1の情報取得部11に送信する。また、通信制御部33は、乗りかご21の換気停止階情報をエレベータ換気制御装置1から受信する。
【0044】
運行制御部34は、例えば、エレベータ20の呼び登録等に基づき、乗りかご21を利用者の乗車階から降車階まで運行させる。また、運行制御部34は、換気停止階情報に基づき、開放換気を行う階まで乗りかご21を運行させ、停止させる。
【0045】
なお、図示にはないが、エレベータシステム100は、エレベータ20が複数備えられていてもよい。また、エレベータ制御装置30は複数のエレベータ20に対して個々に備えられていてもよく、複数のエレベータ20に対して全体を統括するエレベータ制御装置30が設置されていてもよい。
【0046】
(乗場用人検出部)
図4は乗りかご21の乗場70の所定範囲R1を示す平面図である。図4に示すように、乗場用人検出部50(検出部)は、乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人の有無を検出する。乗場用人検出部50は、検出した乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報をエレベータ換気制御装置1の情報取得部11に送信する。
【0047】
所定範囲R1の大きさは、乗りかご21から乗場70に流れる開放換気の風が当たると不快に感じる範囲として任意に設定される。所定範囲R1としては、例えば、乗降口23の中心Pを中心とする、半径rの半円に含まれる領域としてもよいし、任意の形状の領域であってもよい。
【0048】
図3および図4に示すように、本実施形態では、乗場用人検出部50として、カメラを用いている。乗場用人検出部50は、乗りかご21内のトランサムに設けられ、乗場70を撮影し、カメラによる撮像画像に対して画像認識を行うことによって得られる人の検出結果を情報取得部11に送信する。なお、情報取得部11が撮像画像を取得し、画像認識処理が装置制御部10において行われてもよい。
【0049】
乗場用人検出部50の設置個所は上記に限らず、各階の各乗場70のそれぞれに対して備えられていてもよい。乗場用人検出部50を乗りかご21に設置することで、各階に乗場用人検出部50を設ける必要がなくなるので、設置コストを抑えることができる。
【0050】
なお、乗場用人検出部50は、3D(3-Dimension)-TOF(Time Of Flight)方式の測距センサを用いてもよい。さらに、所定範囲内の人の有無を検出するだけであれば、カメラよりも設置コストの安い人感センサを乗場用人検出部50として用いてもよい。これにより、設置コストを抑えることができる。
【0051】
(報知部)
報知部51は、乗りかご21の乗場70にいる人に開放換気の実施を報知する。報知部51はエレベータ換気制御装置1の報知制御部13により制御される。報知部51について詳しくは後述する。
【0052】
(エレベータ換気制御装置)
エレベータ換気制御装置1は、乗場70の所定範囲R1内の人の有無の検出結果に基づいて開放換気の制御を行う。エレベータ換気制御装置1は、装置制御部10と、記憶部14と、を備えている。
【0053】
装置制御部10は、エレベータ換気制御装置1の各部を統括的に制御する。装置制御部10の機能は、記憶部14に記憶されたプログラムを、CPUが実行することで実現されてよい。装置制御部10の詳細については後述する。記憶部14は、装置制御部10が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。
【0054】
(装置制御部の構成)
装置制御部10は、情報取得部11と、換気制御部12と、報知制御部13と、を備えている。
【0055】
情報取得部11は、乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報を取得する。具体的には、情報取得部11は、乗場用人検出部50が検出した、乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人の有無に関する検出結果を乗場用人検出部50から乗場検出情報として取得する。
【0056】
また、情報取得部11は、乗りかご用人検出部40が検出した、乗りかご21の乗りかご検出情報を乗りかご用人検出部40から取得する。情報取得部11は、取得した情報を換気制御部12に出力する。
【0057】
(換気制御部の構成)
換気制御部12は、乗りかご21の換気を制御し、乗りかご21の開放換気を行う。また、換気制御部12は、乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報に基づき、乗りかご21の開放換気を制御する。
【0058】
これにより、乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、開放換気は乗場検出情報により制御される。そのため、乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人の有無にあわせて、開放換気を制御することが可能となり、乗場にいる人に不快感を与えずに乗りかご21の開放換気を行うことができる。
【0059】
ここで、乗りかご21の運行時の換気および開放換気について説明する。運行時の乗りかご21は、扉22を閉じた状態でファン41により塔内T1の空気を乗りかご21内に給気することで換気を行う。乗りかご21内において余剰となった乗りかご21内に給気された塔内T1の空気は、乗りかご21の隙間から塔内T1に排出される。
【0060】
それに対して開放換気は、上述したように、乗場70を有する階に乗りかご21を停止させ、乗りかご21の扉22を開けて、停止した階の乗りかご21の乗場70に、乗りかご21内の空気を排出することで行われる。このように開放換気は扉22を開けて行われるため、乗りかご21内に給気された塔内T1の空気は、開けられた扉22から排出される。そのため、運行時における塔内T1の空気を乗りかご21内に給気する動作であっても、乗場70で乗りかご21の扉22を開けた状態で行うことにより、より強力な換気を行うことが可能となり、開放換気として機能させることができる。開放換気の換気量は適宜設定でき、運行時の換気の換気量と同じであってもよく、当該換気量よりも多くてもよい。
【0061】
このように乗りかご21の扉22を開けて乗りかご21内の空気を排出することで乗りかご21の開放換気が行われるため、乗りかご21から乗場70に向けて空気の排出に伴う風が生じる。それに対して、上記のように開放換気は乗場70における所定範囲R1内の人の有無に応じて制御されるので、人に対して風が当たるような状況を抑制することが可能となる。
【0062】
換気制御部12は、開始判定部121と、換気階決定部122と、開放換気制御部123と、終了判定部124と、を備えている。
【0063】
開始判定部121は、情報取得部11が取得した乗りかご21の運行情報等に基づき、乗りかご21について開放換気を開始するか否かを判定する。開始判定部121は、所定の開始条件が充たされた場合、乗りかご21の開放換気の開始を決定する。開始条件の例としては、(1)乗りかご21が一定時間以上利用されていない、(2)予めスケジュールされた時間となった、および、(3)利用者全員が乗りかご21から降車したあとに、他の利用者の呼び登録がされていない、などが挙げられる。なお、複数の開始条件が全て充たされた場合に開放換気を実施してもよいし、所定の組み合わせの開始条件が充たされた場合に開放換気を実施してもよい。
【0064】
換気階決定部122は、開始判定部121が開放換気の開始を決定した場合、開放換気を行う階を決定する。開放換気を行う階は任意に設定でき、例えば、開始判定部121が開放換気を決定した際の乗りかご21の最寄階でもよいし、予め定められた階でもよい。
【0065】
開放換気制御部123は、情報取得部11が取得した乗場検出情報に基づき、換気階決定部122が決定した乗りかごの開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居るか否かを判定する。開放換気制御部123は、所定範囲R1内に人が居ない場合、換気階決定部122が決定した階で開放換気を開始する。
【0066】
開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、乗りかごの開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居ることが検出された場合、開放換気の開始を停止する、または、乗りかご21内の空気を乗りかご21の塔内T1に排出する。
【0067】
さらに、開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、乗りかごの開放換気が行われている階において、所定範囲R1内に人が居ることが検出された場合、開放換気の開始を停止する、または、乗りかご21内の空気を乗りかご21の塔内T1に排出する。
【0068】
開放換気制御部123は、開放換気を停止する場合、例えば、扉22を閉める、またはファン41を停止することで開放換気を停止する。また、開放換気制御部123は、ファン41を逆回転させる、または、乗りかご21内の空気を塔内T1に排気するファンを稼動させることで、乗りかご21内の空気を乗りかご21の塔内T1に排出する。
【0069】
これにより、乗場70の所定範囲R1内に人が居ることが検出された場合は、開放換気が停止される、または、乗りかご21内の空気が乗りかご21の塔内T1に排出されるので、乗りかご21の開放換気に伴う乗りかご21からの風が当該乗場70に流れない。したがって、乗場70にいる人に不快感を与えることを防止することができる。
【0070】
終了判定部124は、乗りかご21について開放換気を終了するか否かを判定する。終了判定部124は、所定の終了条件が充たされた場合、乗りかご21の開放換気の終了を決定する。終了条件の例としては、(1)乗りかご21が一定時間以上、開放換気を実行した、および、(2)利用者により呼び登録がされた、などが挙げられる。なお、複数の終了条件が全て充たされた場合に開放換気を終了してもよいし、所定の組み合わせの終了条件が充たされた場合に開放換気を終了してもよい。終了判定部124は、例えば、扉22を閉めることで開放換気を終了する。
【0071】
報知制御部13は報知部51を制御し、乗りかご21の乗場70にいる人に開放換気の実施を報知する。本実施形態では、報知部51は、乗場70に対して画像を表示するプロジェクタであり、報知制御部13はプロジェクタの表示内容を制御する。
【0072】
図5は、エレベータ換気制御装置の報知例を示す平面図である。図5の5001に示すように、報知制御部13は、例えば、開放換気中に、報知部51により所定範囲R1を示す領域を床面に投影し、「換気中」というメッセージを含む画像Gを表示してもよい。これにより、乗りかご21について開放換気が実施中であることを乗場にいる人に報知することができ、所定範囲R1内に人が入ることを抑制することができるので、開放換気の風が人に当たらないように誘導することができる。
【0073】
また、所定範囲R1に人が入った場合には、図5の5002に示すように、操作盤52を示して「(乗場70の)ボタンを押してください」や、「(乗りかご21内の)行先階ボタンを押せば、ご乗車いただけます」などのようなメッセージを含むように画像Gを変更してもよい。これにより、開放換気中であっても利用者にエレベータ20が利用可能であることを知らせることができるので、開放換気よりも利用者を優先することができ、利用者の利便性を損ねることを防止することができる。
【0074】
本実施形態では、報知部51は、乗りかご21内のトランサムに設けられている。報知部51は、乗りかご21内に限らず、乗場70に設置されてもよい。報知部51を乗りかご21内に設置することで、各階に報知部51を設置する必要がなくなるので、設置コストを抑えることができる。
【0075】
報知部51が報知を行う場所は、乗場70の床面に限らない。乗りかご21周辺に設置されている既設の表示部に表示してもよく、音声により報知してもよい。また、例えば、所定範囲R1に人が来たら表示かつ音声により報知を行ってもよい。
【0076】
<エレベータ換気制御装置における処理の流れの一例>
本実施形態に係る乗りかご21内の換気を制御するエレベータ換気制御方法は、乗りかご21において、乗場70を有する階に乗りかご21を停止し乗りかご21の扉22を開けて乗りかご21内を換気する、開放換気を行う換気制御ステップと、乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人の有無に関する情報を含む乗場検出情報を取得する情報取得ステップを含む。また、換気制御ステップは、乗場検出情報に基づき、乗りかご21の開放換気を制御する。
【0077】
図6は、エレベータ換気制御装置1の動作を示すフロー図である。図6に基づき、エレベータ換気制御装置1における処理の流れの一例について説明する。
【0078】
図6に示すように、まず、開始判定部121は、運行情報等に基づき、乗りかご21について開始条件が充たされたか否かを判定する(S11)。開始条件が充たされている場合(S11でYES)、開始判定部121は開放換気の開始を決定し、換気階決定部122は、開放換気を行う階を決定する。
【0079】
開始条件が充たされていない場合(S11でNO)、開始判定部121は開始条件が充たされるまで待機する。
【0080】
開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、換気階決定部122が決定した乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居るか否かを判定する(S12)。当該階において、所定範囲R1内に人が居ない場合(S12でNO)、開放換気制御部123は、換気階決定部122が決定した階にて乗りかご21の開放換気を行う(S13)。
【0081】
その後、終了判定部124は、乗りかご21について終了条件が充たされたか否かを判定する(S14)。終了条件が充たされている場合(S14でYES)、終了判定部124は開放換気の終了を決定し、開放換気を終了する。終了条件が充たされていない場合(S14でNO)、S12の処理に戻る。
【0082】
乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居る場合(S12でYES)、開放換気制御部123は、開放換気の開始を停止する、または、乗りかご21内の空気を乗りかご21の塔内T1に排出する(S15)。その後、S14の処理を行う。
【0083】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るエレベータ換気制御装置1Aについて、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0084】
実施形態2では、換気制御部12は、検出された所定範囲R1内の人の位置に応じて、開放換気の単位時間当たりの換気量を変更する点が実施形態1と異なり、その他の構成および手順は実施形態1と同様である。また、本実施形態では、乗場検出情報は、所定範囲R1内の人の位置に関する情報を含む。
【0085】
これにより、開放換気の単位時間当たりの換気量(以降「換気量」と記載する)は乗場70にいる人の位置に応じて変更される。そのため、換気量を乗りかご21からの風が当該人に当たることを抑制するように調整することで、乗場70にいる人に不快感を与えることを防止することができる。また、乗場70に人が居ない場合は、換気量を増して換気性能を向上させることができる。
【0086】
(エレベータ換気制御装置1A)
エレベータ換気制御装置1Aの開放換気制御部123は、情報取得部11が取得した乗りかご21が開放換気を行う予定の階の乗場70の乗場検出情報に基づき、乗りかご21が開放換気を行う予定の階の乗場70の所定範囲R1内に人がいるか否かを判定する。開放換気制御部123は、当該階において所定範囲R1内に人が居ない場合、当該階において、予め設定した所定換気量で開放換気を開始する。
【0087】
開放換気制御部123は、当該階において所定範囲R1内に人が居ることが検出された場合、検出された所定範囲R1内の人の位置に応じて、開放換気の換気量を変更し、当該階おいて開放換気を行う。
【0088】
図7は、本発明の実施形態2に係るエレベータ換気制御装置1Aにおける乗りかご21の乗場70の所定範囲R1を示す平面図である。図7に示すように、所定範囲R1は、乗降口23の中心Pからの距離に応じて、内側から順に領域R11、領域R12および領域R13に区分されている。乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居ることが検出された場合、開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、所定範囲R1内に検出された人が、どの位置にいるかを判定する。例えば、図7では、開放換気制御部123は、所定範囲R1内に検出された人が、領域R13にいると判定する。
【0089】
開放換気制御部123は、所定範囲R1内に検出された人がいる位置に応じて開放換気の換気量を決定する。開放換気制御部123は、例えば、記憶部14に記憶された各領域と換気量とが対応付けられたテーブルを参照することで、開放換気の換気量を決定する。
【0090】
開放換気を行う際の換気量は、所定範囲R1内に人が検出されない場合が最大となり、領域R11から領域R13に対応する開放換気の換気量は、所定範囲R1内に人が居ない場合の開放換気の換気量よりも少ない。さらに、乗降口23に近づくにつれて開放換気の換気量は少なく設定され、領域R13、領域R12、領域R11の換気量はこの順に少なくなり、領域R11の換気量が最少となる。これにより、乗りかご21からの風が所定範囲R1内の人に当たることを抑制するように開放換気の換気量を調整することが可能となるので、乗場70にいる人に不快感を与えることを防止しつつ、開放換気を行うことができる。
【0091】
<エレベータ換気制御装置における処理の流れの一例>
図8は、本実施形態に係るエレベータ換気制御装置1Aの動作を示すフロー図である。図8に基づき、本実施形態に係るエレベータ換気制御装置1Aにおける処理の流れの一例について説明する。
【0092】
図8に示すように、まず、開始判定部121は、運行情報等に基づき、乗りかご21について開始条件が充たされたか否かを判定する(S21)。開始条件が充たされている場合(S21でYES)、開始判定部121は開放換気の開始を決定し、換気階決定部122は、開放換気を行う階を決定する。
【0093】
開始条件が充たされていない場合(S21でNO)、開始判定部121は開始条件が充たされるまで待機する。
【0094】
開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、換気階決定部122が決定した乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居るか否かを判定する(S22)。乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居ない場合(S22でNO)、開放換気制御部123は、換気階決定部122が決定した階において、予め設定した所定換気量で開放換気を行う(S23)。
【0095】
その後、終了判定部124は、乗りかご21について終了条件が充たされたか否かを判定する(S24)。終了条件が充たされている場合(S24でYES)、終了判定部124は開放換気の終了を決定し、開放換気を終了する。終了条件が充たされていない場合(S24でNO)、S22の処理に戻る。
【0096】
乗りかご21の開放換気を行う予定の階において、所定範囲R1内に人が居る場合(S22でYES)、開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、所定範囲R1内に検出された人が、さらにどの位置にいるかを判定する。そして、開放換気制御部123は、所定範囲R1内に検出された人がいる位置に応じた換気量で開放換気を行う(S25)。その後、S24の処理を行う。
【0097】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係るエレベータ換気制御装置1Bについて、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0098】
実施形態3では、換気制御部12は、乗りかご21の各階の乗場70における所定範囲R1内の人の有無に基づいて開放換気を行う階を決定する点が実施形態1と異なり、その他の構成および手順は実施形態1と同様である。また、本実施形態では、乗場検出情報は、乗りかご21の各階の乗場における所定範囲内の人の有無に関する情報を含む。
【0099】
これにより、乗場70の所定範囲R1内に存在する人に開放換気の影響を与えにくい階を選定して開放換気を行うことができる。なお、本実施形態では乗場用人検出部50は各階に設置されるのが望ましい。
【0100】
(エレベータ換気制御装置1B)
(開放換気開始前)
図9は、本発明の実施形態3に係るエレベータ換気制御装置1Bにおける乗りかご21の乗場70の所定範囲R1の人検出例を示す平面図である。
【0101】
図9に示すように、エレベータ換気制御装置1Bの開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、開放換気前の所定時間内に、開放換気を行う予定の階の乗場70の所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えたか否かを判定する。
【0102】
所定時間内の人数を検出することで、人の流れの傾向を把握することでき、人が多い可能性が高い場合を判断し、人が多い可能性が高い階を避けて開放換気を行うことができる。例えば、所定時間を1分とし、閾値は4人とすることで人が多い可能性を判断することができる。
【0103】
開放換気前の所定時間内に、開放換気が行う予定の階の乗場70の所定範囲R1内で検出された人数(以降「時間内検出人数」と称する)が閾値を超えていない場合、開放換気制御部123は、当該階で乗りかご21の開放換気を行う。
【0104】
また、時間内検出人数が閾値を超えた場合、開放換気制御部123は、別の階において時間内検出人数が閾値を超えたか否かを判定する。
【0105】
開放換気制御部123は、当該別の階において時間内検出人数が閾値を超えなかった場合、当該別の階で開放換気を行う。開放換気制御部123は、当該別の階において時間内検出人数が閾値を超えた場合、さらに別の階の時間内検出人数が閾値を超えたか否かを判定する。これにより、乗場70の人が多い可能性が高い階の開放換気を避けることができる。
【0106】
なお、開放換気制御部123は、各階の乗場70において時間内検出人数が閾値を超えているか否かを判断し、各階の乗場70において時間内検出人数が閾値を超えていない階を、開放換気を行う階として選定してもよい。
【0107】
(開放換気開始後)
開放換気制御部123は、開放換気中の所定時間内に、開放換気が行われている階の乗場70の所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えた場合、当該階での開放換気を停止する制御を行う。これにより、開放換気中に乗場に人が増えてきた場合に、開放換気を停止させることによって、乗りかご21からの風が人に不快感を与える可能性を抑制することができる。
【0108】
また、開放換気中の所定時間内に、開放換気が行われている階の時間内検出人数が閾値を超えた場合、開放換気制御部123は、別の階の時間内検出人数が閾値を超えたか否かを判定する。当該別の階の時間内検出人数が閾値を超えなかった場合、開放換気制御部123は、乗りかご21を当該別の階に移動させて乗りかご21の開放換気を行う。これにより、乗場70の所定範囲R1内に存在する人に開放換気の影響を与えにくい階を選定して開放換気を行うことができる。
【0109】
なお、開放換気制御部123は、各階の乗場70において時間内検出人数が閾値を超えているか否かを判断し、各階の乗場70において時間内検出人数が閾値を超えていない階を、開放換気を行う階として選定してもよい。
【0110】
<エレベータ換気制御装置における処理の流れの一例>
図10は、本実施形態3のエレベータ換気制御装置1Bの動作を示すフロー図である。図10に基づき、エレベータ換気制御装置1Bにおける処理の流れの一例について説明する。
【0111】
図10に示すように、まず、開始判定部121は、運行情報等に基づき、乗りかご21について開始条件が充たされたか否かを判定する(S31)。開始条件が充たされている場合(S31でYES)、開始判定部121は開放換気の開始を決定し、換気階決定部122は、開放換気を行う階を決定する。
【0112】
開始条件が充たされていない場合(S31でNO)、開始判定部121は開始条件が充たされるまで待機する。
【0113】
開放換気制御部123は、乗場検出情報に基づき、開放換気前の所定時間内に、開放換気を行う予定の階の乗場70の所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えたか否かを判定する(S32)。当該階において、所定時間内に、当該階の乗場70の所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えていない場合(S32でNO)、開放換気制御部123は、当該階において、乗りかご21の開放換気を行う(S33)。
【0114】
その後、終了判定部124は、乗りかご21について終了条件が充たされたか否かを判定する(S34)。終了条件が充たされている場合(S34でYES)、終了判定部124は開放換気の終了を決定し、開放換気を終了する。終了条件が充たされていない場合(S34でNO)、S32の処理に戻る。
【0115】
開放換気前の所定時間内に、開放換気を行う予定の階の乗場70の所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えた場合(S32でYES)、開放換気制御部123は、開放換気の開始を停止する(S35)。そして、開放換気制御部123は、別の階の乗場70において所定時間内に所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えたか否かを判定する(S36)。
【0116】
当該別の階の乗場70において所定時間内に所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えなかった場合(S36でNO)、開放換気制御部123は、当該別の階にて乗りかご21の開放換気を行う(S37)。その後、S34の処理を行う。
【0117】
当該別の階の乗場70において所定時間内に所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えた場合(S36でYES)、開放換気制御部123は、終了条件を充たさない限り、さらに別の階の乗場70において所定時間内に所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えたか否かを判定する(S36)。なお、当該別の階の乗場70において所定時間内に所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超え(S36でYES)、終了条件を充たした場合は、開放換気を終了する。
【0118】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係るエレベータ換気制御装置1Cについて、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0119】
実施形態4では、換気制御部12は、蓄積された乗場検出情報に基づいて開放換気を行う階を決定する点が実施形態1と異なり、その他の構成および手順は実施形態1と同様である。本実施形態では、乗場検出情報は、各階の前記乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内にいる人数に関する情報を含む。より詳しくは、乗場検出情報は、各時間帯における各階の乗りかご21の乗場70における所定範囲R1内の人数に関する情報を含む。
【0120】
これにより、蓄積された過去の乗場検出情報により、開放換気を行う予定の時間帯において乗場70の所定範囲R1内に人が少ないことが予想される階を選定して開放換気を行うことができる。なお、本実施形態では乗場用人検出部50は各階に設置されるのが望ましい。
【0121】
(エレベータ換気制御装置1C)
情報取得部11は、常に乗場検出情報を取得し、取得した乗場検出情報は記憶部14に記憶される。言い換えると、記憶部14は、過去の乗場検出情報を蓄積する。
【0122】
換気階決定部122は、蓄積された乗場検出情報に基づいて開放換気を行う階を決定する。さらに詳しくは、換気階決定部122は、蓄積された乗場検出情報に基づいて、乗りかご21の開放換気を行う予定の時間帯において乗場70の所定範囲R1内に人が少ないことが予想される階を、開放換気を行う階として決定する。
【0123】
なお、実施形態3と実施形態4とを組み合わせ、例えば、図10のS36において、下記の(1)または(2)により、開放換気を行う階を決定してもよい。(1)開放換気制御部123は、別の階の乗場70において所定時間内に所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えたか否かを判定し、所定時間内に所定範囲R1内で検出された人数が閾値を超えない階を、開放換気を行う階として決定する。(2)開放換気制御部123は、蓄積された乗場検出情報に基づいて、乗場70の所定範囲R1内に人が少ないことが予想される階を、開放換気を行う階として決定する。
【0124】
〔ソフトウェアによる実現例〕
エレベータ換気制御装置1(1A・1B・1C)(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に装置制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0125】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0126】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0127】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0128】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0129】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1、1A、1B、1C エレベータ換気制御装置
11 情報取得部
12 換気制御部
13 報知制御部
14、35 記憶部
20 エレベータ
21 乗りかご
22 扉
50 乗場用人検出部(検出部)
70 乗場
100 エレベータシステム
R1 所定範囲
T1 塔内
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10