(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20231031BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60W30/16
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2022522468
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019423
(87)【国際公開番号】W WO2021229790
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野戸 秀将
(72)【発明者】
【氏名】有田 寛志
(72)【発明者】
【氏名】川島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】川村 弘明
(72)【発明者】
【氏名】小暮 祐也
(72)【発明者】
【氏名】入山 正浩
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138740(JP,A)
【文献】特開2015-044432(JP,A)
【文献】特開2017-197019(JP,A)
【文献】特開2009-262709(JP,A)
【文献】特開2019-155992(JP,A)
【文献】特開2019-064336(JP,A)
【文献】特開2012-096617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
B60T 7/12
G08G 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する駆動源の駆動トルクを制御する駆動源制御部と、
ブレーキペダルのストローク量を検出するストロークセンサと、
運転者の前記ブレーキペダルの操作にかかわらず所望の制動トルクを発生する自動ブレーキを制御するブレーキ制御部と、
運転者の前記ブレーキペダルの操作と、前記自動ブレーキの作動のいずれによっても前記ブレーキペダルがストロークするとON信号を出力するブレーキスイッチと、
定速走行もしくは前方車両への追従走行に必要な駆動源要求トルク及びブレーキ要求トルクを演算し、前記駆動源制御部に駆動源要求トルクを出力し、前記ブレーキ制御部にブレーキ要求トルクを出力するクルーズ制御を行うクルーズ制御部と、
を備え
る車両制御装置において実行される車両制御方法であって、
前記クルーズ制御中に前記自動ブレーキの制御が作動した場合、
前記ストロークセンサにより運転者のブレーキ操作が検出されたときには、前記クルーズ制御部は、前記クルーズ制御を解除する一方、
前記ストロークセンサにより運転者のブレーキ操作が検出されないときには、前記駆動源制御部は、前記クルーズ制御部からの前記駆動源要求トルクの受け付けを禁止する、又は前記クルーズ制御部は、前記クルーズ制御中に前記自動ブレーキの制御が作動したときは、前記駆動源制御部に前記駆動源要求トルクを出力しないことを特徴とする車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御方法において、
前記駆動源制御部は、前記クルーズ制御部からの前記駆動源要求トルクの受け付けを禁止中に、車速が所定車速以下となったときは、前記クルーズ制御部からの前記駆動源要求トルクを受け付けることを特徴とする車両制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両制御方法において、
前記駆動源制御部は、前記クルーズ制御中に前記自動ブレーキ
の制御が作動し、かつ、
ブレーキ要求トルクが所定減速度より大きな減速度のときは、
予め設定された所定減速度より小さな減速度となる範囲でブレーキ要求トルクを受け付けることを特徴とする車両制御方法。
【請求項4】
車両を駆動する駆動源の駆動トルクを制御する駆動源制御部と、
ブレーキペダルのストローク量を検出するストロークセンサと、
運転者の前記ブレーキペダルの操作にかかわらず所望の制動トルクを発生する
自動ブレーキを制御するブレーキ制御部と、
運転者の前記ブレーキペダルの操作と、前記自動ブレーキの作動のいずれによっても前記ブレーキペダルがストロークするとON信号を出力するブレーキスイッチと、
定速走行もしくは前方車両への追従走行に必要な駆動源要求トルク及びブレーキ要求トルクを演算し、前記駆動源制御部に駆動源要求トルクを出力し、前記ブレーキ制御部にブレーキ要求トルクを出力するクルーズ制御を行うクルーズ制御部と、
を備え、
前記クルーズ制御中に前記自動ブレーキの制御が作動した場合、
前記ストロークセンサにより運転者のブレーキ操作が検出されたときには、前記クルーズ制御部は、前記クルーズ制御を解除する一方、
前記ストロークセンサにより運転者のブレーキ操作が検出されないときには、前記駆動源制御部は、前記クルーズ制御部からの前記駆動源要求トルクの受け付けを禁止する、又は前記クルーズ制御部は、前記クルーズ制御中に前記自動ブレーキの制御が作動したときは、前記駆動源制御部に前記駆動源要求トルクを出力しないことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定速走行もしくは前方車両への追従走行を行うクルーズ制御を備えた車両の制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クルーズ制御中に運転者がブレーキペダルの踏み込み操作が実施されるとクルーズ制御を一時停止させ、踏み込み操作が解除されると、クルーズ制御を一時停止状態から復帰させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のようにクルーズ制御を一時停止させる際、冗長系の観点から運転者がブレーキペダルを踏み込んだことを2つの検知手段(例えばストロークセンサとブレーキスイッチ)から判断することが求められている。ここで、自動ブレーキによって制動トルクを発生させる際、運転者のブレーキペダル操作に関わらずブレーキペダルがストロークするアクチュエータを備えた場合、ブレーキスイッチがオンとなるため、ブレーキスイッチを利用した冗長系を確保することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、ブレーキスイッチ以外でクルーズ制御の一時停止を実行する際の冗長系を確保可能な車両制御方法及び車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、クルーズ制御中に自動ブレーキの制御が作動した場合、ストロークセンサにより運転者のブレーキ操作が検出されたときには、クルーズ制御部は、クルーズ制御を解除する一方、ストロークセンサにより運転者のブレーキ操作が検出されないときには、駆動源制御部は、クルーズ制御部からの駆動源要求トルクの受け付けを禁止する、又はクルーズ制御部は、クルーズ制御中に自動ブレーキの制御が作動したときは、駆動源制御部に駆動源要求トルクを出力しないこととした。
【発明の効果】
【0007】
よって、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいない状態で、自動ブレーキ制御によりブレーキスイッチがオンとなり、運転者のブレーキペダルの踏み込みをブレーキスイッチに基づいて検知できない場合であっても、事前に駆動源制御部が駆動源要求トルクの受け付けを禁止することで、又はクルーズ制御部が駆動源制御部に駆動源要求トルクを出力しないことでクルーズ制御の一時停止判断における冗長系を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のクルーズ制御を実行可能な車両制御装置のシステム図である。
【
図2】実施例1の駆動力制御コントローラ31内で実施されるクルーズ制御中の駆動力制御処理を表すフローチャートである。
【
図3】実施例1の駆動力制御コントローラ31内で実施されるクルーズ制御中の駆動力制御処理の一例を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0009】
10 先進運転支援システム(ADAS)
20 制動力制御装置
21 制動力制御コントローラ
30 駆動力制御装置
31 駆動力制御コントローラ
33 駆動用電動モータ
200 ブレーキアクチュエータ
204 ブレーキペダル
207 ストロークセンサ
208 ブレーキスイッチ
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施例1〕
図1は、実施例1のクルーズ制御を実行可能な車両制御装置のシステム図である。実施例1の車両制御装置を備えた車両は、駆動用電動モータ33により走行する電動車両である。尚、内燃機関により発電機を駆動し、その電力で走行するハイブリッド車両でもよいし、ハイブリッド車両に限らず通常のエンジン車両でもよく、特に限定しない。先進運転支援システム(以下、ADASと記載する。)10は、運転者が設定した車速での走行する定速走行制御や、レーダー,ステレオカメラ,GPSといった種々のセンサ信号に基づいて車両の外界環境を把握すると共に、車両前方の走行車両との車間距離を一定以上に保ちながら追従走行する追従走行制御といった各種運転支援制御(以下、クルーズ制御と記載する。)を実行する。
【0011】
クルーズ制御は、例えばステアリングコラムに備えられたクルーズ制御スイッチによって操作される。運転者がクルーズ制御を設定するときは、クルーズ制御スイッチをONとし、走行速度や車間距離を設定する一方、クルーズ制御を解除するときは、クルーズ制御スイッチをOFFとする。また、クルーズ制御中に運転者がブレーキペダルを踏み込んだ場合や、予め設定された所定条件が成立したときは、クルーズ制御スイッチの操作に関わらずクルーズ制御が解除される。
【0012】
ADAS10は、クルーズ制御の演算結果に基づいて制動力制御装置20にブレーキ要求トルクであるクルーズ制動要求を出力する。また、実施例1の車両は、駆動源として電動モータを備えているため、駆動トルクだけでなく回生制動トルクを発生可能である。よって、ADAS10は、クルーズ制御に基づいて駆動力制御コントローラ31にブレーキ要求トルクであるクルーズ制動要求及び駆動源要求トルクであるクルーズ駆動要求を出力する。例えば、予め設定された所定制動トルクの範囲まで駆動力制御コントローラ31で制動トルクを負担し、要求制動トルクに対して不足する制動トルク分を制動力制御装置20で発生させる。また、実施例1の車両は、アクセルペダルの踏み込み時は駆動トルク、踏み戻し時は制動トルクを発生させるワンペダル制御モードを有し、ワンペダル制御モードが選択されているときは、駆動用電動モータ33で駆動トルク及び制動トルクを発生させる。ワンペダル制御モード中にアクセルペダルが一気に踏み戻された場合には、大きな回生トルクを要求する強回生モードが実施される。
【0013】
制動力制御装置20は、制動力制御コントローラ21と、各輪のホイルシリンダにブレーキ液圧を供給する電動ブレーキ倍力装置としてのブレーキアクチュエータ200と、を有する。ブレーキアクチュエータ200は、ブレーキペダル204と接続されたピストン201と、ピストン201の押付力をアシストするブレーキ用モータ202と、ピストン201により押圧されたブレーキ液を貯留するマスタシリンダ203と、ボールねじ機構205と、を有する。尚、実施例1ではボールねじ機構を採用したが、ボールねじ機構に限らず回転トルクを軸方向の力に変換する機構であればよく特に限定しない。
【0014】
実施例1のブレーキアクチュエータ200は、ブレーキ用モータ202に回転トルクを発生させ、この回転トルクをボールねじ機構でピストンストローク方向の押付力に変換し、運転者のブレーキペダル踏力をアシストする。よって、運転者がブレーキペダル操作を行っていない場合であっても、クルーズ制御の要求に応じてブレーキ液圧を発生させる場合には、ブレーキ用モータ202の回転トルクの発生に伴ってブレーキペダル204がストロークする。また、ブレーキアクチュエータ200は、ブレーキペダル204のストローク量を検出するストロークセンサ207と、ブレーキペダル204が所定以上踏み込まれた際にONとなり、それ以外の場合はOFFとなるブレーキスイッチ208と、を有する。
【0015】
制動力制御コントローラ21は、ストロークセンサ207からのストローク信号に基づいて運転者のブレーキペダル踏力をアシストする倍力制御(EBA)や、車輪のアンチロック制御や車両挙動制御(VDC)を行う。また、ADAS10からのクルーズ制動要求に基づいて、要求された制動トルクを実現するようブレーキアクチュエータ200を作動させる。また、制動力制御コントローラ21は、運転者のブレーキペダル操作に関わらず各種運転支援制御に基づいて制動トルクを発生する際、駆動力制御コントローラ31に自動ブレーキ判定信号を出力する。同様に、制動力制御コントローラ21は、ストロークセンサ207の信号に基づいて運転者がブレーキペダル204を操作したと判定した場合、ブレーキ操作判定信号を駆動力制御コントローラ31に出力する。
【0016】
ボディーコントロールモジュール(以下、BCMと記載する。)40は、他の各種コントロールモジュールと通信線を介して接続され、各種コントロールモジュールの情報を受信するとともに、各種コントロールモジュールにBCM40の情報を送信する。BCM40は、制動力制御装置30に備えられたブレーキスイッチ208のON/OFF信号を受信し、駆動力制御コントローラ31に出力する。
【0017】
駆動力制御装置30は、駆動力制御コントローラ31と、インバータ32と、駆動用電動モータ33と、を有する。駆動力制御コントローラ31は、ADAS10からクルーズ駆動力要求、クルーズ制動力要求を受け付けるとともに、制動力制御コントローラ21から自動ブレーキ判定結果及びブレーキ操作判定結果を受信する。そして、受け付けた信号に基づいて駆動力を制御するとともに、所定の条件が成立したときは、クルーズ駆動力要求の受け付けを禁止し、予め設定されたコーストトルク制御の実施や、所定上限値が設定された制動トルクを出力する。
【0018】
図2は、実施例1の駆動力制御コントローラ31内で実施されるクルーズ制御中の駆動力制御処理を表すフローチャートである。
ステップS1では、自動ブレーキが作動中か否かを判断し、作動中の場合はステップS5に進み、非作動の場合はステップS2に進む。
ステップS2では、運転者がブレーキペダル204を踏んでいるか否かを判断し、踏んでいる場合はステップS3に進み、踏んでいない場合はステップS4に進む。ここで、自動ブレーキ非作動時にブレーキペダル204を踏んでいるか否かは、ストロークセンサ207の作動もしくはブレーキスイッチ208のON信号に基づいて判断する。
ステップS3では、クルーズ制御を解除する。
ステップS4では、クルーズ制御を継続し、クルーズ駆動力要求に基づく車両駆動力を発生させる。
【0019】
ステップS5では、クルーズ制御の要求に基づく自動ブレーキ作動か否かを判断し、クルーズ制御要求の場合はステップS9に進み、それ以外(例えば車両挙動制御による自動ブレーキ要求等)の場合はステップS6に進む。
ステップS6では、運転者がブレーキペダルを踏んでいるか否かを判断し、踏んでいる場合はステップS7に進み、踏んでいない場合はステップS8に進む。
ステップS7では、クルーズ制御を解除する。
ステップS8では、クルーズ制御を継続する。具体的には、クルーズ制御からのクルーズ駆動力要求を受け付ける。
【0020】
ステップS9では、運転者がブレーキペダルを踏んでいるか否かを判断し、踏んでいる場合はステップS10に進み、踏んでいない場合はステップS11に進む。
ステップS10では、クルーズ制御を解除する。
【0021】
ステップS11では、車両が発進時か否かを判断し、発進時と判断した場合はステップS12に進み、それ以外の場合はステップS13に進む。ここで、発進時か否かは車速が発進時を表す所定車速以下であるか否かに基づいて判断する。発進時には、登坂路での後退防止トルクが設定されている場合等があるため、コーストトルクで制御すると、運転者に違和感を与えるおそれがある。そこで、発進時にはADAS10からの要求を受け付けることで、安定した発進状態を確保する。
ステップS12では、クルーズ制御を継続する。具体的には、クルーズ制御からのクルーズ駆動力要求を受け付ける。
【0022】
ステップS13では、ADAS10からのブレーキ要求トルクが所定トルク以上(所定減速度aより大きな減速度)の条件を満たすか否かを判断し、条件を満たした場合はステップS14に進み、それ以外の場合はステップS15に進む。なお、ステップS13では所定トルクとしてコーストトルクが使われる。
ステップS14では、クルーズ制御を継続する。ただし、駆動力制御コントローラ31は、予め設定された所定減速度b(aより大きな減速度)より小さな減速度となる範囲でブレーキ要求トルクを受け付ける。
ステップS15では、クルーズ制御を継続する。ただし、駆動力制御コントローラ31は、ADAS10内のクルーズ制御から出力された駆動源要求トルクの受け付けを禁止し、予め設定されたコーストトルク(アクセルペダルを離したときのトルク)となるように制御する。
【0023】
図3は、実施例1の駆動力制御コントローラ31内で実施されるクルーズ制御中の駆動力制御処理の一例を表すタイムチャートである。タイムチャートの最初の状態は、クルーズ制御による自動ブレーキが非作動、運転者がブレーキペダルを踏み込んでおらず、クルーズ制御が作動し、運転者のブレーキペダル操作に伴うブレーキペダルストロークが生じておらず、ブレーキスイッチもOFF(非作動)であり、駆動力制御コントローラ31はクルーズ駆動要求を受け付けている状態である。
【0024】
時刻t1において、クルーズ制御による自動ブレーキが作動すると、ストロークセンサ207がブレーキペダル204のストロークを検知するとともに、ブレーキスイッチ208もONとなる。このとき、発進時ではなく、ブレーキ要求トルクが所定以上でもないことから、クルーズ制御は継続される。ただし、駆動力制御コントローラ31は、クルーズ制御から出力されるクルーズ駆動要求の受け付けを禁止し、コーストトルク制御を行う。従来技術では、ストロークセンサ207がブレーキペダル204のストロークを検知し、かつ、ブレーキスイッチ208がONとなると、運転者のブレーキペダル操作を表す2つの条件を満たしたと判断してクルーズ制御を解除していた。これに対し、実施例1では、ブレーキスイッチ208のONが運転者の操作に基づかない場合が含まれるため、ブレーキスイッチ208がONとなっても、運転者のブレーキペダル操作を表す2つの条件を満たすとは言えない。そこで、実施例1では、上記2つの条件を満たしたとしても、クルーズ制御を解除せず、クルーズ駆動要求の受け付けを禁止することとした。よって、クルーズ制御を継続しつつも、意図しない加速が生じるといった状態を回避できる。
【0025】
時刻t2において、運転者がブレーキペダル204を踏み込むと、ストロークセンサ207がブレーキペダル204のストロークを検知し、クルーズ制御を解除する。すなわち、駆動力制御コントローラ31が事前にクルーズ駆動要求の受け付けを禁止した状態で、ストロークセンサ207の1つの情報に基づいてクルーズ制御を解除する構成とした。よって、クルーズ制御解除判断における冗長系を確保できる。
【0026】
以上説明したように、実施例1では、下記の作用効果を奏する。
(1)車両を駆動する駆動用電動モータ33(駆動源)の駆動トルクを制御する駆動力制御コントローラ31(駆動源制御部)と、
ブレーキペダル204のストローク量を検出するストロークセンサ207と、
ブレーキペダル204がストロークするとON信号を出力するブレーキスイッチ208と、
運転者のブレーキペダル操作にかかわらず所望の制動トルクを発生するときにブレーキペダル204がストロークする自動ブレーキ制御と、運転者のブレーキペダル操作を倍力する倍力制御とを実施可能なブレーキアクチュエータ200(電動ブレーキ倍力装置)を制御する制動力制御コントローラ21(ブレーキ制御部)と、
定速走行もしくは前方車両への追従走行に必要な駆動源要求トルク及びブレーキ要求トルクを演算し、駆動力制御コントローラ31に駆動源要求トルクを出力し、制動力制御コントローラ21にブレーキ要求トルクを出力するクルーズ制御を行い、該クルーズ制御中に運転者がブレーキペダル204を操作したと判断したときはクルーズ制御を解除するADAS10(クルーズ制御部)と、
を備え、
駆動力制御コントローラ31は、クルーズ制御中に自動ブレーキ制御が作動したときは、ADAS10からの駆動源要求トルクの受け付けを禁止する。
よって、運転者がブレーキペダル204を踏み込んでいない状態で、自動ブレーキ制御によりブレーキスイッチ208がオンとなり、運転者のブレーキペダル踏み込みをブレーキスイッチ208に基づいて検知できない場合であっても、事前に駆動力制御コントローラ31が駆動源要求トルクの受け付けを禁止することで、クルーズ制御の一時停止判断における冗長系を確保できる。
なお、クルーズ制御中に自動ブレーキ制御が作動したとき、実施例1では、駆動力制御コントローラ(駆動源制御部)がクルーズ制御部からの駆動源要求トルクの受け付けを禁止したが、これに代えて、クルーズ制御部が駆動力制御コントローラ(駆動源制御部)に駆動源要求トルクを出力しないことでも同様の作用効果を奏することができる。
【0027】
(2)駆動力制御コントローラ31は、ADAS10からの駆動源要求トルクの受け付けを禁止中に、車速が所定車速以下となったときは、ADAS10からの駆動源要求トルクを受け付ける。
すなわち、発進時には、登坂路での後退防止トルクが設定されている場合等があるため、ADAS10からの要求を受け付けることで、安定した発進状態を確保できる。
【0028】
(3)駆動力制御コントローラ31は、クルーズ制御中に自動ブレーキ制御が作動し、かつ、ブレーキ要求トルクが所定トルク以上(所定減速度より大きな減速度)のときは、ADAS10からのブレーキ要求トルクを受け付け、予め設定されたブレーキ要求トルク(減速度)の範囲内になるように駆動用電動モータ33を制御する。
よって、クルーズ制御を継続しつつも、意図しない加速が生じるといった状態を回避できる。また、クルーズ制御中に大きな減速度が要求される場合には、駆動力制御コントローラ31ではなく、制動力制御コントローラ21での制御を重視することで、安全性の高い制御構成が得られる。