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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両用ルーフ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022569326
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020046521
(87)【国際公開番号】W WO2022130449
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】龍田 美乃
(72)【発明者】
【氏名】鈴置 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 誠哉
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-196413(JP,A)
【文献】特開2020-147202(JP,A)
【文献】特開2003-212053(JP,A)
【文献】国際公開第2013/041177(WO,A1)
【文献】特開平9-76937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルと、前記ルーフパネルの下面で車幅方向に延びるルーフリインフォースとを備え、前記ルーフリインフォースは、断面U字形の溝状に形成されているとともに、溝開口部分の両端縁にフランジ部がそれぞれ形成されている車両用ルーフ構造において、
前記ルーフリインフォースのフランジ部間に架け渡されて固定された繋ぎ部材が設けられることで、前記ルーフリインフォースの延びる方向に、前記繋ぎ部材が設けられた高剛性部位と、前記繋ぎ部材の設けられていない一般部位とが形成されており、
前記ルーフリインフォースの延びる方向において、前記一般部位の高剛性部位側の端部には、その他の一般部位部分よりも低剛性とされた低剛性部位が設けられており、
車両高さ方向において、前記低剛性部位を構成するルーフリインフォースのフランジ部は、その他の一般部位部分を構成するルーフリインフォースのフランジ部よりも低い位置に配置されている車両用ルーフ構造。
【請求項4】
パネル状の前記繋ぎ部材には、前記ルーフリインフォースの延びる方向にビード状の凸部が設けられている請求項1又は2に記載の車両用ルーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルと、ルーフパネルの下面で車幅方向に延びるルーフリインフォースとを備えた車両用ルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用ルーフ構造が種々提案されている。例えば、特開2006-168423号公報に記載されている車内低減装置では、車両のルーフ部分に、ルーフパネルと、ルーフヘッダと、マップランプブラケットとが設けられている。ルーフヘッダは、ルーフパネルの下面に固定されて車幅方向に延びる梁状構造であり、本発明のルーフリインフォースに相当する。このルーフヘッダは、断面略U字形の溝状に形成されているとともに、溝開口部分の両端縁に形成された前後のフランジが、ルーフパネルの前端部の下面に結合されている。またマップランプブラケットは、ルーフヘッダの長手方向の中間部に固定された板状の部材である。このマップランプブラケットは、ルーフパネルの下面に固定された状態で、ルーフヘッダの後側のフランジから車両後方のルーフパネル部分(共振発生部位)まで延在している。
【0003】
ところで上記構成では、車両のNV性能(静粛性等)の確保の観点から、ルーフが車体の振動と共振し難い構成であることが望ましい。すなわち上記構成の車両では、走行時に路面から伝わる振動やエンジン等の振動が、車体を構成するピラーを通じてルーフに伝達される。このとき車体の振動と共振したルーフが振動することで、意図しない音(こもり音等の異音)が発生することがある。このため公知技術では、マップランプブラケットを、ルーフヘッダからルーフパネルの共振発生部位に延在させることで、ルーフの共振を抑制している。すなわち公知技術では、マップランプブラケットの質量や剛性を適宜調節して、ルーフの共振周波数をずらすことにより、ルーフの共振を抑制している。
【発明の概要】
【0004】
しかし上記構成では、マップランプブラケットの寸法が、ルーフヘッダと共振発生部位間の距離に左右される。このためルーフヘッダから共振発生部位までの距離が長くなる程マップランプブラケットが大型化し、車両の重量が増加するおそれがあった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の重量増加を抑えつつ、ルーフの共振を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用ルーフ構造は、ルーフパネルと、ルーフパネルの下面で車幅方向に延びるルーフリインフォースとを備えている。またルーフリインフォースは、断面U字形の溝状に形成されているとともに、溝開口部分の両端縁にフランジ部がそれぞれ形成されている。この種の構成では、車両の重量増加を抑えつつ、ルーフの共振を抑制できることが望ましい。そこで本発明の車両用ルーフ構造では、ルーフリインフォースのフランジ部間に架け渡されて固定された繋ぎ部材が設けられることで、ルーフリインフォースの延びる方向に、繋ぎ部材が設けられた高剛性部位と、繋ぎ部材の設けられていない一般部位とが形成されている。そしてルーフリインフォースの延びる方向において、一般部位の高剛性部位側の端部には、その他の一般部位部分よりも低剛性とされた低剛性部位が設けられている。本発明の高剛性部位では、繋ぎ部材が錘の役割を担うため、一般部位に比して高質量となっている。そのうえで一般部位の高剛性部位側に低剛性部位を設けることにより、相対的に高質量の高剛性部位を、ルーフの共振を抑制するように振動させることが可能となる。そして本発明の高剛性部位では、フランジ部間に架け渡された繋ぎ部材とルーフリインフォースとにより閉断面が形成されて、一般部位に比して高剛性となっているため、繋ぎ部材を過度に重くする必要がなく、車両の重量増加を極力抑えることが可能となる。
【0006】
第2発明の車両用ルーフ構造は、第1発明の車両用ルーフ構造において、高剛性部位において、繋ぎ部材の単位面積当たりの質量は、ルーフリインフォースの単位面積当たりの質量よりも大きくされている。本発明では、相対的に高質量な繋ぎ部材を備えた高剛性部位を、より確実にルーフの共振を抑制するように振動させることができる。
【0007】
第3発明の車両用ルーフ構造は、第1発明又は第2発明の車両用ルーフ構造において、車両高さ方向において、低剛性部位を構成するルーフリインフォースのフランジ部は、その他の一般部位部分を構成するルーフリインフォースのフランジ部よりも低い位置に配置されている。本発明の低剛性部位は、そのフランジ部の高さ位置が相対的に低くされて、その他の一般部位部分よりも縦断面での剛性が低いため、高剛性部位を、さらに確実にルーフの共振を抑制するように振動させることができる。
【0008】
第4発明の車両用ルーフ構造は、第1発明~第3発明のいずれかの車両用ルーフ構造において、パネル状の繋ぎ部材には、ビード状の凸部がルーフリインフォースの延びる方向に延設されている。本発明では、ビード状の凸部によって、高剛性部位をなす繋ぎ部材の剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、車両の重量増加を抑えつつ、ルーフの共振を抑制することができる。また第2発明によれば、ルーフの共振をより確実に抑制することができる。また第3発明によれば、ルーフの共振を更に確実に抑制することができる。そして第4発明によれば、高剛性部位の剛性をより確実に確保しつつ、ルーフの共振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両の透視斜視図である。
図2】ルーフの前部側を下から見た概略斜視図である。
図3】繋ぎ部材を示すルーフリインフォース一部の拡大上面図である。
図4図3のIV-IV線断面に相当する一般部位の概略縦断面図である。
図5図3のV-V線断面に相当する高剛性部位の概略縦断面図である。
図6図3のVI-VI線断面に相当する低剛性部位の概略縦断面図である。
図7】低剛性部位を示すルーフリインフォース一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図7を参照して説明する。各図には、車両(ルーフ)の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示し、左右方向が車幅方向に相当する。また図3では、ルーフパネルを透視して、ルーフリインフォース及び繋ぎ部材を図示し、ブラケットを二点破線で図示する。そして図4図6では、便宜上、ルーフリインフォース及び繋ぎ部材を図示し、その他の部材を二点破線で簡略的に図示又は省略している。
【0012】
[車両のルーフの概要]
車両用ルーフ構造RMについて説明する前に、まず図1に示す車両2のルーフ3の概要について説明する。車両2のルーフ3には、前後に長い角形のルーフパネル4と、その車幅方向両側で前後方向に延びるルーフサイドレール5a,5bと、車幅方向に延びる複数のルーフリインフォース7~9とが設けられている。ここでルーフパネル4は、後方に向かうにつれて緩やかに上方に湾曲しており、その車幅方向両側の端縁はルーフサイドレール5a,5bに固定されている。また各ルーフサイドレール5a,5bは、車体6を構成する前後左右、及び中央部分の支柱であるピラー(6a,6b,6c)によって支持されている(図1では、便宜上、車両左側のピラーのみ図示する)。各ルーフサイドレール5a,5bは、図示しないインナパネルとアウタパネルとが、それぞれの左右のフランジで固定されることで中空の閉じ断面に形成される。そして各ルーフサイドレール5a,5bの車両内側のフランジ側に、ルーフパネル4の車幅方向端部が重ねられて固定されている。なおルーフパネル4の前端部と左右の前部側のピラー6aとによって囲まれた範囲にはフロントガラスFGがセットされている。
【0013】
また図1及び図2に示す複数のルーフリインフォース7~9は、ルーフパネル4を下方から支える梁状構造である(各図では、便宜上、ルーフの前部に位置するルーフリインフォースのみ図示する)。これら複数のルーフリインフォース7~9は、左右の前部側のピラー6aの上部(窓枠部分)または左右のルーフサイドレール5a,5b間に架け渡されている。そして車両2のルーフ3には、車両前後方向に適宜の間隔をあけて複数本のルーフリインフォースが設けられている。すなわちルーフ3の前端部には、前端ルーフリインフォース7が配設され、この前端ルーフリインフォース7の後方には、その他のルーフリインフォース8,9が前後に適宜の間隔をあけて配設されている。そして各ルーフリインフォース7~9は、その短手方向の端部(車両前後方向の端部)がルーフパネル4の下面に固定されている。また各ルーフリインフォース7~9は、その長手方向両端(車幅方向の両端)が、左右の前部側のピラー6a又はルーフサイドレール5a,5bに支持部S等を介して又は直接的に固定されている。
【0014】
[車両用ルーフ構造]
そして車両用ルーフ構造RMは、図2及び図3に示すように、上述したルーフパネル4と、前端ルーフリインフォース7とを備えている。また前端ルーフリインフォース7には、後述するように、左右の一般部位10,12と、左右の低剛性部位11,13と、高剛性部位14(繋ぎ部材20)とが設けられている。そして上記構成の車両用ルーフ構造RMでは、車両2の重量増加を極力回避しつつ、ルーフ3が車体の振動と共振しないように配慮すべきである。そこで本実施例では、後述する高剛性部位14(繋ぎ部材20)及び低剛性部位11,13によって、車両の重量増加を抑えつつ、ルーフ3の共振を抑制することとした。以下、車両用ルーフ構造RMの各構成について詳述する。
【0015】
[前端ルーフリインフォース(一般部位)]
図2に示す前端ルーフリインフォース7には、その延びる方向(車幅方向)において、繋ぎ部材20の設けられていない左右の一般部位10,12と、繋ぎ部材20の設けられている高剛性部位14とが形成されている。ここで左右の一般部位10,12は概ね同一の基本構成を有しているため、右側の一般部位10を一例にその詳細を説明する。図2図4に示す右側の一般部位10は、縦断面略U字形の溝状に形成され、下側を臨む底壁部70と、この底壁部70から上方に立ち上がる前後の縦壁部71,72とを有している。この前後の縦壁部71,72の各上端縁は、前端ルーフリインフォース7の溝開口部分の両端縁を構成している。なお後側の縦壁部72の上下の長さ寸法L1は、前側の縦壁部の長さ寸法L0よりも大きくなっている。
【0016】
そして図2図4を参照して、前側の縦壁部71の上端縁には前側のフランジ部73が折り曲げ成形されており、この前側のフランジ部73がルーフパネル4の下面にスポット溶接により固定されている(図2では、スポット溶接時の打点となる箇所にXを付す)。また後側の縦壁部72の上端縁(稜線R)に後側のフランジ部74が折り曲げ成形されることで、前端ルーフリインフォース7の後部側の剛性が確保されている。そして後側のフランジ部74の車両高さ方向の位置(高さ位置T1)は、後側の縦壁部72の長さ寸法L1だけ、底壁部70の高さ位置T0よりも上方に設定されている。
【0017】
[高剛性部位(繋ぎ部材)]
また図2及び図3に示す前端ルーフリインフォース7には、その左右の一般部位10,12の間に、繋ぎ部材20の設けられた高剛性部位14が形成されている。ここで繋ぎ部材20は、上面視で概ね角形に形成されたパネル状の部材であり、その車幅方向の寸法は、各一般部位10,12及び高剛性部位14の寸法等を考慮して前端ルーフリインフォース7よりも短くなるように設定される。そして高剛性部位14を構成する前端ルーフリインフォース7は、図5に示すように、左右の一般部位と同様に縦断面略U字形の溝状に形成されて、前後のフランジ部73,74が設けられている。また繋ぎ部材20は、前後のフランジ部73,74間に架け渡されて固定されている。すなわち繋ぎ部材20は、その一段低い前端部21が、図3に示すように、前端ルーフリインフォース7の前側のフランジ部73に重ねられてスポット溶接で固定されている(図3では、スポット溶接時の打点となる箇所にXを付す)。なお前側のフランジ部73には、前端部21のスポット溶接箇所となる凹部位730が設けられており、この凹部位730は、繋ぎ部材20の前端部21を重ねられるように一段低くなっている。また同様に繋ぎ部材20の後端部22も、前端ルーフリインフォース7の後側のフランジ部74に重ねられて固定されている。こうして高剛性部位14は、図5に示すように前後のフランジ部73,74間に架け渡された繋ぎ部材20と前端ルーフリインフォース7とが閉断面を構成することで、左右の一般部位10,12に比して高剛性となっている。
【0018】
[凸部]
ここで繋ぎ部材20には、図3及び図5に示すようにビード状の凸部23が設けられていることで、前端ルーフリインフォース7の延びる方向(車幅方向)における剛性が確保されている。この凸部23は、繋ぎ部材20の後端部22の前側を一段高くなるように変形させることで形成され、繋ぎ部材20を横断するように車幅方向に延設されている。そして凸部23がビード状に作用することで、繋ぎ部材20の車幅方向における曲げ剛性が確保されている。また繋ぎ部材20には、その凸部23の前側に、前後方向に延びるビード状の前後凸部24a,24b,24cが形成されている。これら各前後凸部24a~24cは、車幅方向に適宜の間隔をあけて形成され、それぞれ凸部23から前端部21に向かって直線的に延びている。そして各前後凸部24a~24cがビード状に作用することで、繋ぎ部材20の前後方向における剛性が向上している。
【0019】
また図3及び図5に示す繋ぎ部材20には、オーバーヘッドコンソールのランプ用のブラケット30の固定のために、概ね円形状の貫通孔Hが複数形成されている。このランプ用のブラケット30は、上方視で概ね角形に形成されており、前端ルーフリインフォース7の後部側に固定された状態で繋ぎ部材20の後方に延在している。そしてランプ用のブラケット30は、その前端側が前端ルーフリインフォース7の底壁部70にスポット溶接で固定される。このとき繋ぎ部材20の各貫通孔Hを通じて、スポット溶接用の器具(図示省略)を、前端ルーフリインフォース7側に向けて差し込むことができる。
【0020】
そして図3及び図5に示す繋ぎ部材20の質量は、車種や室内エリア(例えば運転席側のエリア等)を考慮して、ルーフ3の共振を抑制できるように、即ち、ルーフ3の共振周波数をずらせるように設定される。この繋ぎ部材20(貫通孔Hを除く部分)の単位面積当たりの質量(kg/cm2)は、例えば厚み寸法Dや面積を変えることで調整可能であり、素材の種類を変更することでも調整することができる。このとき繋ぎ部材20の単位面積当たりの質量は共振を抑制できる限り特に限定しないが、例えば高剛性部位14を構成する前端ルーフリインフォース7部分と同等以上、とりわけ前端ルーフリインフォース7部分よりも大きくなるように設定されることが望ましい。そして高剛性部位14は、上述したように閉断面化されて高剛性であるため、共振の抑制を繋ぎ部材20の質量だけに頼る場合に比して、繋ぎ部材20の質量を少なくする(軽くする)ことが可能となる。
【0021】
[低剛性部位]
また図2及び図3に示す前端ルーフリインフォース7には、左右の一般部位10(12)の高剛性部位14側の端部に、各々、高剛性部位14の上下の振動を許容するための低剛性部位11(13)が設けられている。ここで右側の一般部位10と左側の一般部位12には、左右対称となっている以外は同一の構成の低剛性部位11,13が形成されている。例えば右側の一般部位10は、その高剛性部位14側となる左側の端部に、右側の低剛性部位11が形成されている。この右側の低剛性部位11は、図6に示すように縦断面略U字形の溝状に形成されており、その前部側は、その他の一般部位部分と同一構成(底壁部70、前側の縦壁部71、前側のフランジ部73)を備えている。
【0022】
一方、図3に示す右側の低剛性部位11の後部は、その他の右側の一般部位10部分よりも剛性が低くなるように構成されている。すなわち図6及び図7を参照して、右側の低剛性部位11では、その後側の縦壁部72の高さ寸法L2(L2<L1)が短くされ、その上端縁(稜線R)に後側のフランジ部74が設けられている。このため低剛性部位11を構成する後側のフランジ部74は、その他の右側の一般部位10部分を構成する後側のフランジ部よりも低い高さ位置T2(T2<T1)に配置されている。このように右側の低剛性部位11では、稜線Rに位置する後側のフランジ部74の高さ位置T2が低くなることで、その他の右側の一般部位10部分よりも縦断面での剛性が低くなるように構成されている。そして図2に示す左側の一般部位12においても、その高剛性部位14側となる右側の端部に、その他の左側の一般部位12部分よりも低剛性とされた左側の低剛性部位13が形成されている。
【0023】
[車両用ルーフ構造の挙動(高剛性部位及び低剛性部位の働き)]
図1及び図2に示す車両2では、車両2のNV性能(静粛性等)の確保の観点から、ルーフ3が車体6の振動と共振し難いように構成されることが望ましい。そこで図2及び図3に示す車両用ルーフ構造RMでは、前端ルーフリインフォース7の延びる方向に、繋ぎ部材20が設けられた高剛性部位14と、繋ぎ部材20の設けられていない各一般部位10,12とが形成されている。そして各一般部位10(12)の高剛性部位14側の端部には、その他の一般部位部分よりも低剛性とされた低剛性部位11(13)が設けられている。上記構成によると、高剛性部位14は、繋ぎ部材20が錘の役割を担うため、左右の一般部位10(12)に比して高質量となっている。そのうえで各一般部位10(12)に低剛性部位11(13)を設けることにより、相対的に高質量の高剛性部位14を、一般部位10(12)に対して上下に振動させることが可能となる。
【0024】
そこで本実施例では、図5に示す高剛性部位14(繋ぎ部材20)の質量が、上述したようにルーフ3の共振を抑制できるように、即ち、ルーフ3の共振周波数をずらせるように設定されている。このとき高剛性部位14は、上述したように閉断面が形成されて各一般部位10(12)よりも高剛性であるため、繋ぎ部材20を過度に重くする必要がない。そして上記構成では、車両走行時等の振動が、ルーフパネル4及びこのルーフパネル4に固定された前端ルーフリインフォース7に伝達される。このとき前端ルーフリインフォース7の高剛性部位14が、左右の低剛性部位11,13を支点に振動して(マスダンパとして機能して)、ルーフ3の共振周波数がずらされることにより、ルーフ3の共振を抑制することができる(図3の白矢印を参照)。こうして車両用ルーフ構造RMによれば、ルーフ3の共振を抑制することにより、当該共振に起因する異音の発生を極力回避することが可能となる。
【0025】
以上説明した通り本実施例の高剛性部位14では、繋ぎ部材20が錘の役割を担うため、左右の一般部位10(12)に比して高質量となっている。そのうえで左右の一般部位10(12)の高剛性部位14側に低剛性部位11(13)を設けることにより、相対的に高質量の高剛性部位14を、ルーフ3の共振を抑制するように振動させることが可能となる。そして高剛性部位14では、前後のフランジ部73,74間に架け渡された繋ぎ部材20と前端ルーフリインフォース7とにより閉断面が形成されて、左右の一般部位10,12に比して高剛性となっているため、繋ぎ部材20を過度に重くする必要がなく、車両2の重量増加を極力抑えることが可能となる。特にパネル状の繋ぎ部材20を用いることにより、この繋ぎ部材20の質量を過度に大きくしなくとも、所望のNV性能を確保することができる。このため本実施例によれば、車両2の重量増加を抑えつつ、ルーフ3の共振を抑制することができる。また車両用ルーフ構造RMのアッセンブリに際しては、パネル状の繋ぎ部材20の固定手法を、前端ルーフリインフォース7と同様にスポット溶接としている。こうすることで、複数の固定手法(例えばスポット溶接と締結を併用する手法)を使用する場合に比して、車両用ルーフ構造RMの組付け費(製造コスト)の低減に資する構成となる。
【0026】
更に本実施例では、相対的に高質量な繋ぎ部材20を備えた高剛性部位14を、より確実にルーフ3の共振を抑制するように振動させることができる。また本実施例の低剛性部位11,13は、その後側のフランジ部74の高さ位置T2が相対的に低くされて、その他の一般部位部分よりも縦断面での剛性が低いため、高剛性部位14を、さらに確実にルーフ3の共振を抑制するように振動させることができる。また本実施例では、ビード状の凸部23によって、高剛性部位14をなす繋ぎ部材20の剛性を確保することができる。
【0027】
[変更例]
本実施形態の車両用ルーフ構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、高剛性部位(繋ぎ部材)の構成を例示したが、高剛性部位の構成を限定する趣旨ではない。例えば高剛性部位は、閉断面状に形成されておればよく、繋ぎ部材は、パネル状(板状)の部材のほか、複数の柱状やワイヤ状の部材で形成することができる。またパネル状の繋ぎ部材には、ビード状の凸部と前後凸部のいずれかを設けることができ、各凸部を格子状につなげることもでき、各凸部を省略することもできる。また各凸部は、繋ぎ部材の一部を盛り上げたり、縦板などの別部材で形成したりすることもできる。また繋ぎ部材の固定手法として、スポット溶接等の溶接手法(差厚結合を含む)や締結等の各種手法を採用できる。
【0028】
また本実施形態では、一般部位(低剛性部位)の構成を例示したが、一般部位(低剛性部位)の構成を限定する趣旨ではない。例えば低剛性部位は、切欠き状や孔状や薄肉状の部位で形成することが可能であり、いずれの場合においても、ルーフリインフォースの梁状構造を構成する稜線(例えば図6に示す後側の縦壁部の上端縁)に形成することが望ましい。なおルーフパネルに対する一般部位の固定手法も適宜選択可能である。また低剛性部位は、一般部位の高剛性部位側の端部に形成されることにより、高剛性部位に隣接する場合のほか、近接して配置されることもある。
【0029】
また車両及びルーフの構成も適宜変更可能であり、例えば車両用ルーフ構造は、ルーフリインフォースの位置する適宜の位置に設けることができる。例えば車両用ルーフ構造は、ルーフの前端(運転席側)のほか、中央や後端(センター席やリヤ席側)などの位置に設定することが可能である。なおルーフリインフォースの断面U字形とは、底壁部と、この底壁部から起立する一対の縦壁部とから形成される形状のことである。そして底壁部は、平坦又は湾曲又は屈曲していてもよく、各縦壁部も、上下に平行に形成してもよく、互いに離れる方向又は近づく方向に傾斜させて形成してもよい。またルーフリインフォースの一般部位では、その一対のフランジ部の少なくとも一方をルーフパネルに固定できる。また高剛性部位及び低剛性部位では、その一対のフランジ部のいずれかをルーフパネルに固定でき、両フランジ部を固定しない構成とすることも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7