(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】美観及び防汚性に優れた陶器
(51)【国際特許分類】
C04B 41/86 20060101AFI20231031BHJP
C04B 33/22 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C04B41/86 A
C04B41/86 R
C04B33/22
(21)【出願番号】P 2023059110
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2023-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】川上 克博
(72)【発明者】
【氏名】小林 知貴
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 亜希
(72)【発明者】
【氏名】植木 京子
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-073435(JP,A)
【文献】特開2000-302530(JP,A)
【文献】特開2021-134133(JP,A)
【文献】特開2002-114588(JP,A)
【文献】特開2002-003282(JP,A)
【文献】特開昭54-153812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00-41/91
C04B 33/00-33/36
C04B 35/64-35/65
B28B 11/04-11/06
E03D 9/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地と、釉薬層とを少なくとも備える陶器であって、
前記釉薬層がジルコンを含む乳濁剤及び珪砂を含み、
前記釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が14μm以上41μm以下であり、かつ表面の表面粗さRaが0.10μm以下であり、
前記釉薬層の断面表層部の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が、前記釉薬層の断面素地境界部のそれよりも大である、陶器。
【請求項2】
前記釉薬層の表層部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が11μm以上20μm以下である、請求項1に記載の陶器。
【請求項3】
前記釉薬層の中心部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が16μm以上28μm以下である、請求項1又は2に記載の陶器。
【請求項4】
前記釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が12μm以上18μm以下である、請求項1又は2に記載の陶器。
【請求項5】
衛生陶器である、請求項1又は2に記載の陶器。
【請求項6】
その表面のL*が84以上である、請求項1又は2に記載の陶器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釉薬層を有する陶器に関し、詳しくは美観陶器に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生陶器、タイルなどの陶器には、近時、空間の美観要望の高まりにより、その外観には高い美観が求められてきている。さらに、スマートフォンの利用などトイレ空間の活用様式の変化に伴い、陶器に重量物が落とされるなど、陶器表面に傷がつく機会が増えている。
【0003】
乳濁剤により釉薬層を不透明化することが行われており、この乳濁剤を制御することで陶器の美観や、表面凹凸を制御して汚れの付着を防止し、または汚れを容易に落とすことができる工夫が行われている(例えば、特開2003-238274号公報(特許文献1)、特開2002-316885号公報(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-238274号公報
【文献】特開2002-316885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、今般、釉薬層における乳濁剤、さらに珪砂の存在を、その層中において三次元的に制御することで、陶器の美観、とりわけ光沢及び発色を向上させ、汚物付着に影響のない程度の傷であっても、美観への影響を抑えることができ、また防汚性にも優れるものとすることができる、との知見を得た。さらに釉薬層中における乳濁剤及び珪砂の三次元的制御は、釉薬原料の調製、その陶器素地への適用条件などの製造条件を適切に管理することで効率よく行うことができた。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0006】
したがって、本発明は美観及び防汚性に優れた陶器の提供をその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明による陶器は、その第1の態様によれば、陶器素地と、釉薬層とを少なくとも備えてなる陶器であって、釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽率が0.45%以上22.1%以下であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明による陶器は、その第2の態様によれば、陶器素地と、釉薬層とを少なくとも備えてなる陶器であって、釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽量が5μm以上25 μm以下であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明による陶器は、その第3の態様によれば、陶器素地と、釉薬層とを少なくとも備えてなる陶器であって、釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が4%以上24%以下 であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明による陶器は、その第4の態様によれば、陶器素地と、釉薬層とを少なくとも備えてなる陶器であって、釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が14μm以上41μm以下ことを特徴とするものである。
【0011】
本発明による陶器は、その第5の態様によれば、陶器素地と、釉薬層とを少なくとも備えてなる陶器であって、釉薬層の表面の、ウェーブスキャンDOI測定装置によるdu値が32以上55以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による陶器は、その美観に優れ、とりわけ光沢及び発色が向上し、汚物付着に影響のない程度の傷であっても美観への影響が抑えられたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明における(1)釉薬層表面、(2)釉薬層表層部断面、(3)釉薬層中心部断面、及び(4)釉薬層界面部断面の説明図である。図中、釉薬層1は素地2の受けに設けられており、釉薬層1の表面11を(1)釉薬層表面と呼び、さらにその厚さ方向に3等分し、さらに垂直方向に(図中点線の箇所で)切断したそれぞれの断面12、13、及び14を、(2)釉薬層表層部断面、(3)釉薬層中心部断面、及び(4)釉薬層界面部断面と呼ぶ。
【
図2】実施例1の(1)釉薬層表面のSEM画像である。図中、周囲よりも白く見える箇所21が乳濁剤(ジルコン)であり、周囲より暗く見える箇所22が珪砂である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
陶器
本発明において、「陶器」とは、衛生陶器、タイルなど陶器素地に釉薬層が設けられた基本構成を備えた物を意味する。また、「衛生陶器」とは、バスルーム、トイレ空間、化粧室、洗面所、または台所などで用いられる陶器製品を意味する。具体的には、大便器、小便器、便器のサナ、便器タンク、洗面器、手洗い器などを意味する。
【0015】
釉薬
本発明による陶器の釉薬層を形成する釉薬は、乳濁剤を含むものであれば、特に限定されず種々の釉薬を利用することができる。
【0016】
例えば、本発明において釉薬は、珪砂、長石、石灰石などの天然鉱物粒子の混合物及び/又は非晶質釉薬に、乳濁剤を含み、さらに顔料を添加したものを使用できる。乳濁剤としては、ジルコン、酸化錫などが挙げられる。釉薬の組成は、たとえば、SiO2:52~80重量部、Al2O3:5~14重量部、CaO:6~17重量部、MgO:0.5~4.0重量部、ZnO:3~11重量部、K2O:1~5重量部、Na2O:0.5~2.5重量部、乳濁剤:0.1~15重量部、顔料:0.001~20重量部である。釉薬は、その他に糊剤、分散剤、防腐剤、抗菌剤などが含有されていてもよい。顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物などが挙げられる。また、非晶質釉薬とは、上記のような天然鉱物粒子などの混合物からなる釉薬原料を高温で溶融し、ガラス化させた釉薬をいい、例えばフリット釉薬が好適に利用可能である。
【0017】
乳濁剤隠蔽率(%)
本明細書において用いた「乳濁剤隠蔽率(%)」とは、釉薬層中に観察される乳濁剤、特にジルコン(ZrSiO4)の存在比率(体積比)をいい、好ましくはSEMによる観察において、一定深度まで電子が侵入し、表層だけでなく一定深度の領域における乳濁剤の存在量を、体積率として知ることができる。この体積率を、本明細書にあっては、乳濁剤隠蔽率(%)と呼ぶ。乳濁剤は釉薬層において、他の成分とはSEM画像において異なるコントラストで認識することができる。また、SEMによれば表面だけでなく一定深度の領域に存在する乳濁剤を、一次粒子の形態にあるものだけでなく凝集粒子の形態にあるものについてもその体積率として知ることができる。凝集粒子の形態にあることで大きさが一次粒子とは異なると、乳濁剤の存在の効果も変わるから、一次粒子のみならず凝集粒子としても乳濁剤を把握する「乳濁剤隠蔽率」は、乳濁剤の効果をより的確に反映する指標となり、またその三次元的な制御に有利である。
【0018】
さらに、釉薬層について、次の4か所で、それぞれ乳濁剤隠蔽率を観察する。すなわち(1)釉薬層表面、(2)釉薬層表層部断面、(3)釉薬層中心部断面、そして(4)釉薬層界面部断面である。ここで、(1)釉薬層表面とは、陶器の釉薬層表面から観察した場合をいう。他方、(2)釉薬層表層部断面、(3)釉薬層中心部断面、及び(4)釉薬層界面部断面とは、釉薬層を表面から陶器素地との界面までを3等分し、それぞれの釉薬層をほぼ垂直に切断した切断断面を意味する。図示すれば、
図1は、釉薬層1が素地2の上に設けられた陶器の断面図であり、(1)釉薬層表面は図中、釉薬層1の表面11を指し、また(2)釉薬層表層部断面、(3)釉薬層中心部断面、及び(4)釉薬層界面部断面とは、図中、釉薬層1をその厚さ方向に3等分し、さらに表面11に対し垂直方向に(図中点線の箇所で)切断したそれぞれの断面12、13、及び14を指す。なお、本明細書において、他の測定値について、(1)釉薬層表面、(2)釉薬層表層部断面、(3)釉薬層中心部断面、及び(4)釉薬層界面部断面に言及する場合も同様の意味である。
【0019】
乳濁剤隠蔽量(μm)
本明細書において用いた「乳濁剤隠蔽量(μm)」とは、釉薬層表面に観察される乳濁材、特にジルコン(ZrSiO4)の比率(面積比)をいい、好ましくはSEMによる観察画像から乳濁剤が占める面積を知ることができる。この面積を円に近似し、その直径の平均を算出して、その数値を本明細書にあっては、「乳濁剤隠蔽量(μm)」と呼ぶ。したがって、この態様にあって「乳濁剤隠蔽量(μm)」は、釉薬層中における乳濁剤の三次元的な存在を、その形状を投影した形の面積を通じて把握する指標と理解される。乳濁剤は釉薬層において、他の成分とはSEM画像において異なるコントラストで認識することができる。また、SEMによれば表面だけでなく一定深度の領域に存在する乳濁剤を、一次粒子の形態にあるものだけでなく凝集粒子の形態にあるものについてもその体積率として知ることができる。凝集粒子の形態にあることで大きさが一次粒子とは異なると、乳濁剤の存在の効果も変わるから、一次粒子のみならず凝集粒子としても乳濁剤を把握する「乳濁剤隠蔽量」は、乳濁剤の効果をより的確に反映する指標となり、またその三次元的な制御に有利である。
【0020】
乳濁剤及び珪砂隠蔽率(%)
本明細書において用いた「乳濁剤及び珪砂隠蔽率」とは、釉薬層中に観察される乳濁剤、特にジルコン(ZrSiO4)と、乳濁剤及び珪砂の存在比率(体積比)をいい、好ましくはSEMによる観察において、一定深度まで電子が侵入し、一定深度の領域における乳濁剤及び珪砂の存在量を、体積率として知ることができる。この体積率を、本明細書にあっては、乳濁剤及び珪砂隠蔽率(%)と呼ぶ。乳濁剤及び珪砂は、それぞれ釉薬層において、他の成分とはSEM画像において異なるコントラストで認識することができる。また、SEMによれば表面だけでなく一定深度の領域に存在する乳濁剤及び珪砂を、一次粒子の形態にあるものだけでなく凝集粒子の形態にあるものについてもその体積率として知ることができる。凝集粒子の形態にあることで大きさが一次粒子とは異なると、乳濁剤及び珪砂の存在の効果も変わるから、一次粒子のみならず凝集粒子としても乳濁剤及び珪砂を把握する「乳濁剤及び珪砂隠蔽率」は、乳濁剤の効果をより的確に反映する指標となり、またその三次元的な制御に有利である。
【0021】
乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)
本明細書において用いた「乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)」とは、釉薬層表面に観察される乳濁剤及び珪砂の比率(面積比)をいい、好ましくはSEMによる観察画像から乳濁剤及び珪砂が占める面積を知ることができる。この面積を円に近似し、その直径の平均を算出して、その数値を本明細書にあっては、「乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)」と呼ぶ。したがって、この態様にあって「乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)」は、釉薬層中における乳濁剤及び珪砂の三次元的な存在を、その形状を投影した形の面積を通じて把握する指標と理解される。乳濁剤及び珪砂は、それぞれ釉薬層において、他の成分とはSEM画像において異なるコントラストで認識することができる。また、SEMによれば表面だけでなく一定深度の領域に存在する乳濁剤及び珪砂を、一次粒子の形態にあるものだけでなく凝集粒子の形態にあるものについてもその体積率として知ることができる。凝集粒子の形態にあることで大きさが一次粒子とは異なると、乳濁剤及び珪砂の存在の効果も変わるから、一次粒子のみならず凝集粒子としても乳濁剤及び珪砂を把握する「乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)」は、乳濁剤の効果をより的確に反映する指標となり、またその三次元的な制御に有利である。
【0022】
ウェーブスキャンDOI測定装置によるdu値
本明細書において用いた「ウェーブスキャンDOI測定装置によるDOI値およびdu値とは、具体的には、BYK Gardner社製(ドイツ国)Wave-ScanDIO(オレンジピール測定装置)により測定されるDOI値およびdu値であり、本装置は対象表面を、人間の目のように光学的に波長の明/暗パターンを測定する方法として知られている。このマイクロウェーブスキャンは、レーザーの点光源が試料表面に対する垂線から60°傾いた角度でレーザー光を照射し、検出器が前記垂線に対して反対の同角度の反射光を測定する。この装置は、レーザーの点光源を塗装試料面の上を移動させてスキャンすることで、反射光の明/暗を決められた間隔で一点ずつ測定し、試料表面の光学的プロファイルを検出できる。検出された光学的プロファイルは、周波数フィルターを通してスペクトル解析して、塗装などにおいては下地、内部、表面のストラクチャーを解析することができる。この装置の特性スペクトルは次のとおりである。
du:波長0.1mm以下
Wa:波長0.1~0.3mm
Wb:波長0.3~1mm
Wc:波長1~3mm
Wd:波長3~10mm
We:波長10~30mm
Sw:波長0.3~1.2mm
Lw:波長1.2~12mm
DOI:波長0.3mm以下
ここで、DOIはdu、Wa、Wbからなるパラメータで
DOI=f(du,Wa,Wb)
で表わされる。本発明にあっては、上記du値を用いる。
【0023】
本発明の第1の態様
本発明の第1の態様による陶器は、釉薬層が乳濁剤を含み、この釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽率が0.45%以上22.1%以下、好ましくは下限が15%以上とされる。このような釉薬層とされることで、陶器は、その美観に優れ、とりわけ光沢及び発色が向上し、汚物付着に影響のない程度の傷であっても美観への影響が抑えられたものとなる。
【0024】
また、本発明の第1の態様は、好ましくは、次の(a)乃至(c)のいずれか又は全てを備える。すなわち、(a)釉薬層の表層部断面の乳濁剤隠蔽率が4.0%以上20%以下とされるか、(b)釉薬層の中心部断面の乳濁剤隠蔽率が、3.5%以上16%以下とされるか、(c)釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤隠蔽率が、3.0%以上11%以下とされる。このような釉薬層中における乳濁剤隠蔽率とすることで、より好ましい陶器外観が得られる。
【0025】
本発明の第1の態様において、好ましくは、断面表層部の乳濁剤隠蔽率が、断面素地境界部のそれよりも大とされる。
【0026】
さらに、本発明の第1の態様によれば、陶器の表面美観の評価方法が提供され、この方法は、釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽率を測定・算出することを特徴とし、好ましくは、釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽率が0.45%以上22.1%以下である場合、陶器の表現が美観に優れると評価する工程を含む。
【0027】
本発明の第2の態様
本発明の第2の態様による陶器は、釉薬層が乳濁剤を含み、この釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽量が5μm以上25μm以下、好ましくは15μm以下とされる。このような釉薬層とされることで、陶器は、その美観に優れ、とりわけ光沢及び発色が向上し、汚物付着に影響のない程度の傷であっても美観への影響が抑えられたものとなる。
【0028】
また、本発明の第2の態様は、好ましくは、次の(a)乃至(c)のいずれか又は全てを備える。すなわち、(a)釉薬層の表層部断面の乳濁剤隠蔽量が5μm以上15μm以下とされるか、(b)釉薬層の中心部断面の乳濁剤隠蔽量が4μm以上15μm以下とされるか、(c)釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤隠蔽量が2μm以上10μm以下とされる。このような釉薬層中における乳濁剤隠蔽量とすることで、より好ましい陶器外観が得られる。
【0029】
さらに、本発明の第2の態様によれば、陶器の表面美観の評価方法が提供され、この方法は、釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽量を測定・算出することを特徴とし、好ましくは、釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽量が5μm以上25μm以下の範囲にある場合、陶器の表現が美観に優れると評価する工程を含む。
【0030】
本発明の第3の態様
本発明の第3の態様による陶器は、釉薬層が乳濁剤及び珪砂を含み、この釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が4%以上24%以下とされる。このような釉薬層とされることで、陶器は、その美観に優れ、とりわけ光沢及び発色が向上し、汚物付着に影響のない程度の傷であっても美観への影響が抑えられたものとなる。また、その防汚性にも優れるものとなる。
【0031】
また、本発明の第3の態様は、好ましくは、次の(a)乃至(c)のいずれか又は全てを備える。すなわち、(a)釉薬層の表層部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が3.0%以上17.5%以下とされるか、(b)釉薬層の中心部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が3.0%以上20%以下とされるか、(c)釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が3.0%以上11%以下とされる。このような釉薬層中における乳濁剤及び珪砂隠蔽率とすることで、より好ましい陶器外観が得られる。
【0032】
さらに、本発明の第3の態様によれば、陶器の表面美観の評価方法が提供され、この方法は、釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率を測定・算出することを特徴とし、好ましくは、釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が4%以上24%以下の範囲にある場合、陶器の表現が美観に優れると評価する工程を含む。
【0033】
本発明の第4の態様
本発明の第4の態様による陶器は、釉薬層が乳濁剤及び珪砂を含み、この釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が14μm以上41μm以下である。このような釉薬層とされることで、陶器は、その美観に優れ、とりわけ光沢及び発色が向上し、汚物付着に影響のない程度の傷であっても美観への影響が抑えられたものとなる。また、その防汚性にも優れるものとなる。
【0034】
また、本発明の第4の態様は、好ましくは、次の(a)乃至(c)のいずれか又は全てを備える。すなわち、(a)釉薬層の表層部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が11μm以上20μm以下とされるか、(b)釉薬層の中心部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が16μm以上28μmとされるか、(c)釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が12μm以上18μm以下とされる。このような釉薬層中における乳濁剤率と組み合わせることで、より好ましい陶器外観が得られる。
【0035】
本発明の第4の態様において、好ましくは、断面表層部の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が、断面素地境界部のそれよりも大とされる。
【0036】
さらに、本発明の第4の態様によれば、陶器の表面美観の評価方法が提供され、この方法は、釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量を測定・算出することを特徴とし、好ましくは、釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が14μm以上41μm以下である場合、陶器の表現が美観に優れると評価する工程を含む。
【0037】
本発明の第5の態様
本発明の第5の態様による陶器は、釉薬層が乳濁剤を含み、この釉薬層の表面の、ウェーブスキャンDOI測定装置によるdu値が32以上55以下とされる。このような釉薬層とされることで、陶器は、その美観に優れ、とりわけ光沢及び発色が向上し、汚物付着に影響のない程度の傷であっても美観への影響が抑えられたものとなる。また、その防汚性にも優れるものとなる。
【0038】
さらに、本発明の第5の態様によれば、陶器の表面美観の評価方法が提供され、この方法は、釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、釉薬層の表面のdu値を測定することを特徴とし、好ましくは、釉薬層の表面のdu値が32以上55以下である場合、陶器の表現が美観に優れると評価する工程を含む。
【0039】
釉薬層の好ましい特性
本発明による陶器が備える釉薬層は、好ましい態様として、その表面のL*が84以上とされる。また、本発明による陶器は、好ましい態様として、その表面の表面粗さRaが0.10μm以下とされる。加えて、本発明による陶器は、好ましい態様として、その表面の最大高さRyが0.25μm以上0.50μm以下とされる。上で述べた本発明の諸要件と組み合わせされることにより、陶器は優れた美観を備えるものとなる。
【0040】
陶器素地
本発明において陶器素地は任意の原料から調製されてよく、例えば、珪砂、長石、石灰石、粘土などを原料として素地泥漿を調製し、これを成形し、焼成することにより得ることができる。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、陶器素地は、焼成時の全体の化学組成として、SiO2:50~75wt%、Al2O3:17~40wt%、K2O+Na2O:1~10wt%を含む。また、ガラス相25~70wt%、結晶相75~30wt%であることが好ましい。ガラス相を構成する主成分の化学組成は、ガラス相全体を100%として、SiO2:50~80wt%、Al2O3:10~40wt%、K2O+Na2O:4~12wt%であることが好ましい。結晶相を構成する主成分の鉱物組成は、素地全体を100%としてα-アルミナ0~60wt%、石英0~20wt%、ムライト2~20wt%であることが好ましい。結晶相を構成する主成分の鉱物組成は、α-アルミナを含まない素地材料(例えば、熔化質素地)であってよい。素地材料におけるSiO2/Al2O3比が1より大きいことが好ましい。
【0042】
陶器の製造方法
本発明による陶器は、陶器素地を用意し、これに釉薬スラリーを適用し、焼成することで製造されてよい。
【0043】
釉薬スラリーは、釉薬原料を好ましくは50%粒径10μm以下、より好ましくは5μm以下にボールミルなどで粉砕することにより得ることができる。釉薬スラリーにあっては、珪砂などの石英原料や乳濁剤の粒子径を他の釉薬原料とは別に制御することにより釉薬表面における石英・乳濁剤の残存を制御することができる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、その製造条件を制御することで、上記要件を充足する陶器を効率よく製造される。まず、釉薬スラリーの粘度について、これを800~1200mPa・sとする。これにより、釉薬スラリーの沈殿、分離を有効に防止でき、結果として得られる釉薬層の乳濁剤及び珪砂の存在形態を制御できる。
【0045】
また、釉薬スラリーの陶器素地への施釉は好ましくはスプレーコーティング法により行われ、かつ、以下の条件下で実施されるのが望ましい。すなわち、施釉にあたり、陶器素地を25~35℃とし、釉薬水分浸透時間が25~35分となるようにする。さらに、施釉の際の釉薬スラリーの温度を、生産場所の地理的又は季節的要因により変動する室温如何に関わらず、25~30℃に調整することが重要となる。つまりここでの温度管理は、生産場所の地理的又は季節的要因により変動する雰囲気温度の影響を受けないように温度制御することを意味する。
【0046】
また、陶器素地に釉薬スラリーを施釉した後の乾燥も適切に温度管理の下、行われることが好ましい。例えば、施釉後の乾燥は、25~30℃に調整された雰囲気で、2時間以上の時間なされる。施釉された釉薬における十分な水分浸透と粒子着肉化・固定化を通じ、本発明による陶器を製造することができる。
【0047】
本発明による陶器は、陶器素地及び釉薬の組成を考慮して、その焼成条件を適宜定め、製造されてよい。例えば、陶器素地に釉薬を適用した後、800~1300℃の温度で成形素地を焼結させ、かつ釉薬層を固着させることができる。
【実施例】
【0048】
本発明をさらに以下の実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
以下の実施例における数値は、以下の方法により測定、算出した。
【0050】
乳濁剤隠蔽率(%)の測定
サンプルを3cm×3cm程度のサイズに切り出して、十分に洗浄した。このサンプルを、日立製作所製卓上低真空走査電子顕微鏡TM4000のサンプル台に固定し、SEMでの観察を行った。観察条件は倍率500倍、加速電圧15kV、WD=12mm付近、BSEモードとして、ジルコンの極端な偏りが無い面を3箇所選び、撮影を行った。
【0051】
画像解析ソフトWinroofを使って、撮影した画像を解析した。具体的には、例えば、
図2は後記する実施例1における釉薬層表面のSEM画像であり、ここで対象領域において画像の中で白く映っているジルコン(図中、21)の占める面積率を、自動2値化にて算出した。この面積率を乳濁剤隠蔽率とした。なお、画像中に白く映っているが短冊形状のような明らかな異物は、除外している。
【0052】
乳濁剤隠蔽量(μm)の測定
サンプルを3cm×3cm程度のサイズに切り出して、十分に洗浄した。このサンプルを、日立製作所製卓上低真空走査電子顕微鏡TM4000のサンプル台に固定し、SEMでの観察を行った。観察条件は倍率500倍、加速電圧15kV、WD=12mm付近、BSEモードとして、ジルコンの極端な偏りが無い面を3箇所選び、撮影を行った。
【0053】
画像解析ソフトWinroofを使って、撮影した画像を解析した。具体的には、例えば、
図2は後記する実施例1における釉薬層表面のSEM画像であり、ここで対象領域において、画像の中で白く映っているジルコン(図中、21)を特定し、自動2値化し、抽出された乳濁材粒子の面積を円に近似して、乳濁材粒子の直径の平均値を算出した。この乳濁材粒子の直径の平均値を乳濁材隠蔽量(μm)とした。なお、白く映っているが短冊形状のような明らかな異物は、除外している。
【0054】
乳濁剤及び珪砂隠蔽率(%)の測定
サンプルを3cm×3cm程度のサイズに切り出して、十分に洗浄した。このサンプルを、日立製作所製卓上低真空走査電子顕微鏡TM4000のサンプル台に固定し、SEMでの観察を行った。観察条件は倍率500倍、加速電圧15kV、WD=12mm付近、BSEモードとして、ジルコンの極端な偏りが無い面を3箇所選び、撮影を行った。
【0055】
画像解析ソフトWinroofを使って、撮影した画像を解析した。具体的には、例えば、
図2は後記する実施例1における釉薬層表面のSEM画像であり、ここで対象領域において、画像の中で白く映っているジルコン(図中、21)、及び濃いグレーの珪砂(図中、22)の占める面積率を、自動2値化にて算出した。白いまたは濃いグレーの閾値は画像の中で通常の釉薬部分を基準に設定した。対象領域におけるこの面積率を乳濁剤及び珪砂隠蔽率(%)とした。なお、白く映っているが短冊形状のような明らかな異物は、除外している。
【0056】
乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)の測定
サンプルを3cm×3cm程度のサイズに切り出して、十分に洗浄した。このサンプルを、日立製作所製卓上低真空走査電子顕微鏡TM4000のサンプル台に固定し、SEMでの観察を行った。観察条件は倍率500倍、加速電圧15kV、WD=12mm付近、BSEモードとして、ジルコンおよび珪砂の極端な偏りが無い面を3箇所選び、撮影を行った。
【0057】
画像解析ソフトWinroofを使って、撮影した画像を解析した。具体的には、例えば、
図2は後記する実施例1における釉薬層表面のSEM画像であり、ここで対象領域において、画像の中で白く映っているジルコン(図中、21)、及び濃いグレーの珪砂(図中、22)を特定し、自動2値化し、抽出された乳濁材および珪砂粒の面積を円に近似して、乳濁材および珪砂粒子の直径の平均値を算出した。白いまたは濃いグレーの閾値は画像の中で通常の釉薬部分を基準に設定した。この平均値を乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)とした。なお、白く映っているが短冊形状のような明らかな異物は、除外している。
【0058】
du値の測定
サンプルを3cm×3cm程度のサイズに切り出して、十分に洗浄した後、ウェーブスキャンDOI測定装置によって、du値を測定した。
【0059】
表面粗さRa,最大高さRyの測定
各衛生陶器の表面粗さRa及び最大高さRyを、レーザー顕微鏡でJIS B 0681-2:2019に従って測定した。測定条件は、S-フィルタ0.00025mm、L-フィルタ0.8mmとした。
【0060】
陶器の製造
釉薬の用意
表1の実施例1乃至4及び比較例1乃至4の組成からなる釉薬原料2Kgと水1Kg及び球石4Kgを、容積6リットルの陶器製ポットに入れ、レーザー回折式粒度分布計を用いた粉砕後の着色性釉薬スラリーの粒度測定結果が、10μm以下が65%、50%平均粒径(D50)が6.0μm程度になるように、ボールミルにより粉砕を行い、釉薬を得た。得られた釉薬の粘度について、これを800~1200mPa・sとした。
【0061】
実施例3は、他の実施例および比較例と異なりジルコンを除く釉薬材料をボールミルによりさらなる粉砕を行い10μm以下が88%、50%平均粒径(D50)が3.6μm程度になるようにし、ジルコンと混合し、釉薬を得た。
【0062】
実施例4及び比較例3は、他の実施例および比較例と異なり珪砂を別途平均粒子径10μm程度になるように、ボールミルにより粉砕を行いその他の材料と混合し、釉薬を得た。
【0063】
比較例4は、他の実施例および比較例と異なり珪砂を別途平均粒子径19μm程度になるように、ボールミルにより粉砕を行いその他の材料と混合し、釉薬を得た。
【0064】
【0065】
陶器素地への釉薬の適用
陶器素地として、主たる組成がSiO2:50~75wt%、Al2O3:17~40wt%、K2O+Na2O:1~10wt%の範囲となるように、原料として、骨格形成材料であるセリサイト陶石およびカオリン陶石を38~75重量%、可塑性材料であるチャイナクレー(粉体)およびボールクレー(粉体)を8~45重量%、主焼結助剤である長石を8~20重量%、およびドロマイトを1~4重量%秤量し、水と解膠剤として珪酸ソーダを適量添加したものを一括してボールミルに入れ湿式粉砕し、陶器素地材料を得た。得られた陶器素地材料を、石膏型を用いた泥漿鋳込み成形法により成形し、成形体を得て、成形体を電気炉により焼成して陶器素地を得た。これに上記実施例及び比較例の釉薬をスプレーコーティング法により塗布した。ここで、陶器素地を25~35℃の温度に必要に応じて加温又は冷却しておき、また釉薬の温度も25~35℃の温度とし、さらに25~35℃の雰囲気温度で、釉薬をスプレーコーティングした。施釉後25~30℃に調整された雰囲気で、2時間以上の静置した後、焼成条件約1200℃、18時間として焼成することにより陶器を得た。
【0066】
物性評価試験
乳濁剤隠蔽率(%)、乳濁剤隠蔽量(μm)、乳濁剤及び珪砂隠蔽率(%)、乳濁剤及び珪砂隠蔽量(μm)、そしてウェーブスキャンDOI測定装置によるdu値を、上記に従い測定した。その結果は、表2に記載のとおりであった。
【0067】
色の評価
得られた陶器について、目視で外観を次のように評価した。すなわち、標準色サンプルと比較した色・光沢について、それぞれ5点満点で点数化し、その合計点で評価した。その結果は表2に記載のとおりであった。具体的には、まず、4人の衛生陶器を見慣れた技術者が、標準サンプルと比較して色・光沢について、差異を全く感じないもの5点から、色・光沢について全く別のもの0点の間で点数をつけ、4人の平均点で評価した。9点以上を合格点とした。
【0068】
摺動試験
実施例及び比較例の陶器について下記摺動試験を行った。すなわち、家庭用洗浄ウレタンスポンジに研磨剤入りの家庭用洗剤をつけて、100g/cm2の荷重で2000回、陶器表面を擦った。
【0069】
試験後の釉薬層表面を次のとおり評価した。まず、レーザー顕微鏡で表面粗さ突出谷部の空間の容積である突出谷空間Vvv[ml/m2]を測定した。各衛生陶器の表面の突出谷空間(Vvv)は、JIS B 0681-2:2019に従って測定した。コア部と突出谷部を分離する負荷面積率を80%に指定し、測定条件はS-フィルタ0.00025mm、L-フィルタ0.8mmとした。その結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0070】
試験後の釉薬層表面を目視で観察して傷を次のように評価した。6人の衛生陶器を見慣れた技術者が、摺動操作前と後の陶器を並べて比較し、6人中何人が、全く差異を感じないとするかで評価した。その結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0071】
【0072】
本発明の好ましい態様
本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
本発明の第1の態様について、
(1) 素地と、釉薬層とを少なくとも備える陶器であって、
前記釉薬層が乳濁剤を含み、
前記釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽率が0.45%以上22.1%以下である、衛生陶器。
(2) 前記釉薬層の表層部断面の乳濁剤隠蔽率が4.0%以上20%以下である、(1)に記載の陶器。
(3) 前記釉薬層の中心部断面の乳濁剤隠蔽率が3.5%以上16%以下である、(1)又は(2)に記載の陶器。
(4) 前記釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤隠蔽率が3.0%以上11%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の陶器。
(5) 前記断面表層部の乳濁剤隠蔽率が、前記断面素地境界部のそれよりも大である、(1)~(4)のいずれかに記載の陶器。
(6) 衛生陶器である、(1)~(5)のいずれかに記載の陶器。
(7) その表面のL*が84以上である、(1)~(6)のいずれかに記載の陶器。
(8) その表面の表面粗さRaが0.10μm以下である、(1)~(7)のいずれかに記載の陶器。
(9) 陶器の表面美観の評価方法であって、
釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、
前記釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽率を測定・算出する工程を含んでなる、方法。
(10) 前記釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽率が0.45%以上22.1%以下である場合、陶器の表現が美観に優れると評価する、(9)に記載の方法。
【0073】
本発明の第2の態様について、
(1) 素地と、釉薬層とを少なくとも備える陶器であって、
前記釉薬層が乳濁剤を含み、
前記釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽量が5μm以上25μm以下である、陶器。
(2) 前記釉薬層の表層部断面の乳濁剤隠蔽量が5μm以上15μm以下である、(1)に記載の陶器。
(3) 前記釉薬層の中心部断面の乳濁剤隠蔽量が4μm以上15μm以下である、(1)又は(2)に記載の陶器。
(4) 前記釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤隠蔽量が2μm以上10μm以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の陶器。
(5) 衛生陶器である、(1)~(4)のいずれかに記載の陶器。
(6) その表面のL*が84以上である、(1)~(5)のいずれかに記載の陶器。
(7) その表面の表面粗さRaが0.10μm以下である、(1)~(6)のいずれかに記載の陶器。
(8) 陶器の表面美観の評価方法であって、
釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、
前記釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽量を測定・算出する工程を含んでなる、方法。
(9) 前記釉薬層の表面の乳濁剤隠蔽量が5μm~25μmの範囲にある場合、陶器の表現が美観に優れると評価する、(8)に記載の方法。
【0074】
本発明の第3の態様について、
(1) 素地と、釉薬層とを少なくとも備える陶器であって、
前記釉薬層が乳濁剤を含み、
前記釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が4%以上24%以下である、陶器。
(2) 前記釉薬層の表層部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が3.0%以上17.5%以下である、(1)に記載の陶器。
(3) 前記釉薬層の中心部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が3.0%以上20%以下である、(1)又は(2)に記載の陶器。
(4) 前記釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が3.0%以上11%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の陶器。
(5) その表面のL*が84以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の陶器。
(6) その表面の表面粗さRaが0.10μm以下である、(1)~(5)のいずれかに記載の陶器。
(7) 陶器の表面美観の評価方法であって、
釉薬層が乳濁剤及び珪砂を含む陶器を用意し、
前記釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率を測定・算出する工程を含んでなる、方法。
(8) 前記釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽率が4%以上24%以下の範囲にある場合、陶器の表現が美観に優れると評価する、(9)に記載の方法。
【0075】
本発明の第4の態様について、
(1) 素地と、釉薬層とを少なくとも備える陶器であって、
前記釉薬層が乳濁剤及び珪砂を含み、
前記釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が14μm以上41μm以下である、陶器。
(2) 前記釉薬層の表層部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が11μm以上20μm以下である、(1)に記載の陶器。
(3) 前記釉薬層の中心部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が16μm以上28μm以下である、(1)又は(2)に記載の陶器。
(4) 前記釉薬層の素地界面部断面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が12μm以上18μm以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の陶器。
(5) 前記断面表層部の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が、前記断面素地境界部のそれよりも大である、(1)~(4)のいずれかに記載の陶器。
(6) 衛生陶器である、(1)~(5)のいずれかに記載の陶器。
(7) その表面のL*が84以上である、(1)~(6)のいずれかに記載の陶器。
(8) その表面の表面粗さRaが0.10μm以下である、(1)~(7)のいずれかに記載の陶器。
(9) 陶器の表面美観の評価方法であって、
釉薬層が乳濁剤及び珪砂を含む陶器を用意し、
前記釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量を測定・算出する工程を含んでなる、方法。
(10) 前記釉薬層の表面の乳濁剤及び珪砂隠蔽量が14μm以上41μm以下である場合、陶器の表現が美観に優れると評価する、(9)に記載の方法。
【0076】
本発明の第5の態様について、
(1) 素地と、釉薬層とを少なくとも備える陶器であって、
前記釉薬層の表面の、ウェーブスキャンDOI測定装置によるdu値が32以上55以下である、陶器
(2) その表面の最大高さRyが0.25μm以上0.50μm以下である、(2に記載の陶器。
(3) 衛生陶器である、(1)又は(2)に記載の陶器。
(4) その表面のL*が84以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の陶器。
(5) その表面の表面粗さRaが0.10μm以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の陶器。
(6) 陶器の表面美観の評価方法であって、
釉薬層が乳濁剤を含む陶器を用意し、
前記釉薬層の表面のウェーブスキャンDOI測定装置によるdu値を測定する工程を含んでなる、方法。
(7) 前記釉薬層の表面のウェーブスキャンDOI測定装置によるdu値が32以上55以下である場合、陶器の表現が美観に優れると評価する、(6)に記載の方法。
【要約】
【課題】 美観に優れ、とりわけ光沢及び発色が向上し、汚物付着に影響のない程度の傷であっても美観への影響が抑えられた陶器の提供。
【解決手段】 素地と、釉薬層とを少なくとも備える陶器であって、釉薬層における乳濁剤、さらに珪砂の存在を、その層中において三次元的に制御する。この陶器は、美観、とりわけ光沢及び発色が向上され、また汚物付着に影響のない程度の傷であっても、美観への影響を抑えることができ、また防汚性にも優れるものとなる、
【選択図】 なし