(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】包装袋用フィルム及びその製造方法並びに包装袋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B31B 70/14 20170101AFI20231031BHJP
【FI】
B31B70/14
(21)【出願番号】P 2023512661
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2022023475
(87)【国際公開番号】W WO2023042499
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2021149790
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠 源英
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-059943(JP,A)
【文献】特開2017-218199(JP,A)
【文献】特開2020-124870(JP,A)
【文献】特開2004-331087(JP,A)
【文献】特開2015-013670(JP,A)
【文献】特開2019-131287(JP,A)
【文献】特開2020-128250(JP,A)
【文献】特開2008-087826(JP,A)
【文献】特開2020-132172(JP,A)
【文献】特開平8-183133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 70/14
B65D 33/00
B65D 65/30
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
易開封加工が施された包装袋用フィルムの製造方法であって、
第1層上に
、複数のドットの集合である網点を印刷して印刷層を設ける段階と、
前記印刷層を介して前記第1層上に1又は複数の第2層を積層して積層フィルムを形成する段階と、
前記第1層側から前記積層フィルム内の前記印刷層に光を照射し、前記
印刷層に含まれる前記複数のドットの少なくとも一部に前記光を吸収させる
ことによって前記積層フィルムに線状溝
の一部を形成する段階と、を備え、
前記線状溝は、前記網点のドット間の領域よりもドットの位置で深い、包装袋用フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記光の走査方向に直交する方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの離間距離は、前記光のスポットサイズより小さい、請求項1に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記光の走査方向に直交する方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの中心間距離は、前記光のスポットサイズ以下である、請求項2に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記印刷層を設ける段階では、酸化チタンを含む印刷インキを用いて印刷し、
前記線状溝を形成する段階では、20~30WのCO
2レーザ光を用いる、請求項1に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記線状溝を形成する段階の後に、前記積層フィルムをロールする段階をさらに備える、請求項1に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の包装袋用フィルムの製造方法により製造された包装袋用フィルムを周縁部にてシールして包装袋を形成する包装袋の製造方法。
【請求項7】
前記包装袋の一方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの線状溝は直線状であり、他方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの別の線状溝は一部湾曲する、請求項
6に記載の包装袋の製造方法。
【請求項8】
前記包装袋用フィルムの線状溝及び別の線状溝の少なくとも一方は、前記周縁部において前記1又は複数の第2層のうちのいずれかの層の材料により充填される、請求項
6に記載の包装袋の製造方法。
【請求項9】
易開封加工が施された包装袋用フィルムであって、
第1層と、前記第1層上に網点を印刷して設けられた印刷層と、前記印刷層を介して前記第1層上に積層された1又は複数の第2層とを有する積層フィルムを備え、
前記積層フィルム内に
線状溝が形成され、
前記線状溝の一部は他の部分よりも深く、前記
一部が前記第1層側から前記印刷層を介して前記1又は複数の第2層に達する、包装袋用フィルム。
【請求項10】
前記網点は、複数のドットの集合であり、前記線状溝の幅方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの離間距離は、前記線状溝の幅より小さい、請求項
9に記載の包装袋用フィルム。
【請求項11】
前記線状溝の幅方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの中心間距離は、前記線状溝の幅以下である、請求項
10に記載の包装袋用フィルム。
【請求項12】
請求項
9から
11のいずれか一項に記載の包装袋用フィルムを用いて形成される包装袋。
【請求項13】
前記包装袋の一方の面上に形成される線状溝は直線状であり、他方の面上に形成される線状溝は一部湾曲する、請求項
12に記載の包装袋。
【請求項14】
前記包装袋に形成される線状溝は、周縁シール部において前記1又は複数の第2層のうちの少なくとも1つの層の材料により充填される、請求項
12に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋用フィルム及びその製造方法並びに包装袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肩部或いは上端部に易開封加工が施され、その一側端部を手指で摘まんで他側に向けて引き裂くことで容易に開封することができるパウチ容器(包装袋と呼ぶ)が知られている。例えば特許文献1には、複数のフィルムを貼り合わせて作製される2つの積層フィルムを表裏に重ね、周縁部をヒートシールして構成される包装袋が開示されている。斯かる包装袋は、粉末、その他の状態の内容物を取り出し可能に収容し保存するために開口部の全幅にファスナ(ジッパとも呼ぶ)が設けられ、これに沿って開口部を形成できるよう上端部側の全幅をレーザ加工して引き裂きをガイドする線状溝が設けられる。
特許文献1 特開2020-124870号公報
特許文献2 特開2017-218199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、積層フィルムにレーザ光を照射しても光吸収が弱く、引き裂きをガイドすることができる深い線状溝は形成されない。一方、特許文献2に開示されるように積層フィルム内の2つの層間に光吸収材を挿入してこれにレーザ光を照射して発熱させると、光吸収材が介在することで2つの層間の密着が弱くなって引き裂き困難となるうえに、光吸収が強く広範囲に熱が分散されることで線状溝の周囲に融解したフィルム材料が高く隆起してショルダが発生するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、易開封加工が施された包装袋用フィルムの製造方法であって、第1層上に網点を印刷して印刷層を設ける段階と、印刷層を介して第1層上に1又は複数の第2層を積層して積層フィルムを形成する段階と、第1層側から積層フィルム内の印刷層に光を照射して、積層フィルムに線状溝を形成する段階と、を備える包装袋用フィルムの製造方法が提供される。
【0005】
本発明の第2の態様においては、第1の態様の包装袋用フィルムの製造方法により製造された2つの包装袋用フィルムの周縁部をシールして包装袋を形成する包装袋の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の第3の態様においては、易開封加工が施された包装袋用フィルムであって、第1層と、第1層上に網点を印刷して設けられた印刷層と、印刷層を介して第1層上に積層された1又は複数の第2層とを有する積層フィルムを備え、第1層側から印刷層を介して積層フィルム内に線状溝が形成された、包装袋用フィルムが提供される。
【0007】
本発明の第4の態様においては、2つの第3の態様の包装袋用フィルムの周縁部をシールして形成された包装袋が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本実施形態に係る包装袋用フィルム(原反フィルム)の構成を示す。
【
図4A】包装袋用フィルム(易開封加工の前状態)の断面構造を示す。
【
図5A】網点のドット部分における線状溝の横方向に関する断面構造を示す。
【
図5B】網点の間隙部分における線状溝の横方向に関する断面構造を示す。
【
図5D】均一印刷部分に形成される線状溝の断面構造を示す。
【
図5E】周縁部分における線状溝の断面構造を示す。
【
図8】レーザ加工機による線状溝の加工の一例を示す。
【
図10】レーザ出力65%で形成された包装袋用フィルムの線状溝の深さ分布の測定結果を示す。
【
図11A】レーザ出力80%で形成された包装袋用フィルムの線状溝の状態を示す。
【
図11B】レーザ出力70%で形成された包装袋用フィルムの線状溝の状態を示す。
【
図11C】レーザ出力65%で形成された包装袋用フィルムの線状溝の状態を示す。
【
図11D】レーザ出力55%で形成された包装袋用フィルムの線状溝の状態を示す。
【
図13】包装袋用フィルムの線状溝を形成する際に使用したレーザの出力の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1に、本実施形態に係る包装袋1の構成を示す。包装袋1は、上端部側の全幅に亘って線状溝15,25を設けて易開封加工し、一側から他側に向けて線状溝15,25に沿って引き裂くことで容易に開封することができる袋状のパウチ容器であり、フィルム10、20、30及びファスナ31を備える。なお、
図1等において、図面左右方向を左右方向又は横方向、図面上下方向を上下方向又は縦方向、図面手前を単に手前、図面奥方を単に奥方とも呼ぶ。
【0012】
フィルム10,20は、それぞれ包装袋1のおもて面及び裏面を構成する可撓性の積層フィルムである。フィルム10,20は、一例として矩形状を有し、ただし4つの角部は丸く加工され、周縁部に互いに又はフィルム30と貼り合わせるためのシール領域、すなわち、左端部に互いに貼り合わせるためシール領域18a,28a、右端部に互いに貼り合わせるためシール領域18b,28b、上端部に互いに貼り合わせるためのシール領域18c,28c、下端部にフィルム30と貼り合わせるためのシール領域18d,28dが設けられている。ここで、シール領域18d,28dは、左右の両端が中央に対して縦方向に幅広である。本実施形態では、それらの境界は放物線状に配置することとするが、これに限らず、例えばV字状に配置することとしてもよい。
【0013】
また、フィルム10,20は、印刷領域14,24、線状溝15,25、誘導溝16a,26a,16b,26b、及びノッチ17a,17bを含む。
【0014】
印刷領域14,24は、フィルム10,20の上端部側の全幅に亘って連続的に設けられた矩形状の領域である。印刷領域14,24において、フィルム10,20のそれぞれを構成する複数の層のうちのいずれか2つの層間に印刷インキを用いて形成された印刷層S14が含まれる。なお、印刷領域14,24をフィルム10,20の全幅に亘って連続的に設けることに代えて、ヒートシールされる周縁部を除いて設けてもよいし、一部の領域を除いて断続的に設けてもよい。印刷層S14の詳細については後述する。
【0015】
線状溝15,25は、包装袋1を開封する際にフィルム10,20の引き裂きをガイドするためにそれらの表面に設けられた加工溝で、印刷領域14,24内に包装袋1の全幅に亘ってそれぞれ形成されている。なお、一例として、線状溝15は直線状であり、線状溝25は一部湾曲する。或いは、線状溝15,25は、一部異なる方向にそれぞれ湾曲してもよい。線状溝15,25は、少なくともフィルム10,20の周縁部、すなわちシール領域18a,18b,28a,28bにおいて重なる。線状溝15,25の詳細については後述する。
【0016】
誘導溝16a,26a,16b,26bは、包装袋1を開封する際にフィルム10,20の引き裂きを補助するためにそれらの表面に設けられた加工溝で、印刷領域14,24内の左右端部において後述するノッチ17a,17bを囲み且つ線状溝15,25と交差するように半楕円状に湾曲して形成されている。ノッチ17a,17bから始まるフィルム10,20の引き裂きが線状溝15,25からずれてしまった場合に、いずれの方向にずれたとしても誘導溝16a,26a,16b,26bに達し、それらに誘導されて線状溝15,25に戻ることができる。
【0017】
ノッチ17a,17bは、フィルム10,20の引き裂きを開始するための切り欠きであり、フィルム10,20の左右端部に線状溝15,25に連続するように線状溝15,25に沿って形成されている。なお、ノッチ17a,17bは、互いに貼り合わされたシール領域18a,28a及び18b,28bにおいて形成されることで、包装袋1の密封が維持される。
【0018】
フィルム30は、包装袋1の底面を構成する可撓性の積層フィルムである。フィルム30は、一例として矩形状を有し、ただし4つの角部は丸く加工され、その中心を通って横方向に延びる基準線L30に対して山折りに折り曲げられ、手前側半部にフィルム10のシール領域18dとシールされるシール領域30c、奥方半部にフィルム20のシール領域28dとシールされるシール領域30dが設けられている。シール領域30c,30dの左右端部には、フィルム10,20の内面を互いに接着するための半円形状の2組の切欠き30eが設けられている。
【0019】
ファスナ31は、包装袋1の開封後、開口部1aを閉じて包装袋1の内部を密封するようフィルム10,20を互いに留める部材である。ファスナ31は、それぞれ樹脂を用いて形成された一対の雄部材及び雌部材を有する。雄部材及び雌部材の一方は、フィルム10の上端部側の内面上に全幅に亘って固定され、他方は、フィルム20の上端部側の内面上に全幅に亘って固定される。雄部材を雌部材に咬合してファスナ31を閉じることで、開口部1aが閉じ、包装袋1の内部が密封される。
【0020】
包装袋1は、上述の部材を用いて形成される。ファスナ31の雄部材及び雌部材は、それぞれフィルム10,20の内面上に固定されているとする。まず、フィルム10,20の内面を互いに対向し、それぞれの線状溝15,25を位置合わせし、フィルム30を基準線L30について二つ折りしてその折辺を上に向け、一片をフィルム10に、他片をフィルム20に対向してフィルム10,20の間に挿入する。次いで、フィルム10,20,30の周縁部、すなわちフィルム10,20のシール領域18a,28a並びにシール領域18b,28b、フィルム10のシール領域18d及びフィルム30のシール領域30c、フィルム20のシール領域28d及びフィルム30のシール領域30dをそれぞれヒートシール(熱融着)する。このとき、フィルム30の切欠き30eを介して、フィルム10のシール領域18d及びフィルム20のシール領域28dの一部が直接融着する。次いで、シールされたフィルム10,20の左右端部に、線状溝15,25に重ねてそれぞれノッチ17a,17bを設ける。最後に、包装袋1の上端側の開口から内容物を充填し、フィルム10,20のシール領域18c,28cをヒートシールする。それにより、二つ折りされたフィルム30の中央領域30aが広がって凹状の底面を形成するとともに、フィルム10,20の下端が、左右端部がフィルム30の切欠き30eを介して固定され且つ左右中央が広がって脚部を形成することで、包装袋1は自立可能なスタンディングパウチを構成する。
【0021】
図2に、包装袋1の開口部1aを示す。包装袋1を開封する際には、ユーザは、包装袋1の左又は右端部を手指で摘まみ、ノッチ17a,17bの下側に対して上側を手前に引く又は奥方に押すことでノッチ17a,17bを広げ、それらに連続する線状溝15,25に沿ってフィルム10,20を他側まで引き裂く。それにより、包装袋1から上端部が切り取られて開口部1aが形成され、包装袋1が開封する。ここで、フィルム10の線状溝15は直線であるのに対して、フィルム20の線状溝25は中央部分が下方に向かって最大幅Δまで湾曲する。フィルム10,20の開口端が中央で最大幅Δずれていることで、手指でフィルム20のみを摘まみ、フィルム10に対してフィルム20を離間して開口部1aを容易に広げること、そしてファスナ31を容易に開くことができる。
【0022】
図3に、本実施形態に係る易開封加工が施された包装袋用フィルムSを示す。包装袋用フィルムSは、一例として、1つの包装袋1を構成する一対のフィルム10,20をそれぞれの下端を接続して左右方向に並べ且つ複数対のフィルム10,20をそれぞれの左右端を互いに接続して縦方向に連続して一体的に含む原反フィルムであり、これを図中に破線により示される境界線に沿ってスリットすることで複数対のフィルム10,20が形成される。なお、包装袋1の製造工程において、包装袋用フィルムSは、その中心線(破線)に沿ってフィルム10のみを含むフィルムS1とフィルム20のみを含むフィルムS2とに切断され、フィルムS1,S2のそれぞれが境界線(破線)に沿って切断されることで個々のフィルム10,20が得られる。
【0023】
包装袋用フィルムSは、それぞれ左右端部に沿って縦方向に延在する印刷領域14,24、印刷領域14,24内で縦方向に連続して設けられた線状溝15,25、印刷領域14,24内でフィルム10,20の境界(破線)近傍にそれぞれ個別に設けられた誘導溝16a,26a,16b,26bを含む。これらの構成は、複数のフィルム10,20を区画する複数の領域のそれぞれについて形成されることを除いて、先述の通りである。
【0024】
図4Aに、包装袋用フィルムSの断面構造を示す。ここで、包装袋用フィルムSの基本構成を説明するために、易開封加工の前状態(線状溝15,25が形成される前状態)における断面構造を示す。包装袋用フィルムSは、PET層S11、印刷層S14、NY層S12及びPE層S13を積層して形成される積層フィルムである。
【0025】
PET層S11は、第1層の一例であり、例えばポリエチレンテレフタレートを用いて12μm厚で形成されることで、高い透明性及び非伸縮性を備える。PET層S11は、印刷用の基層として好適である。なお、最外層である第1層の材料は、そのような特性を備えれば、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを構成成分とする単量体からの重合により得られる縮重合体を使用することができる。これらの中でも特にPET、PBTが好ましい。なお、後述するポリアミドを使用してもよい。
【0026】
印刷層S14は、PET層S11の裏面(下面)上の印刷領域14,24内に設けられ、PET層S11と後述するNY層S12とにより挟まれた極薄層である。印刷層S14は、例えば酸化チタンを含む白色インキを用いて網点をグラビア印刷することで設けられる。なお、有機マンガン、カーボン等を含む有色インキを用いて印刷してもよい。
【0027】
NY層S12は、印刷層S14を介して第1層であるPET層S11上に積層された第2層の一例であり、例えばナイロンを用いて15μm厚で形成される。NY層S12は、衝撃、折り曲げに強く且つ開穴困難な強度を確保するのに好適である。なお、第2層のうち上述の第1層とともに外層を構成する層の材料は、そのような特性を備えれば、ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6等を使用することができる。取り扱いやすさの観点よりナイロン6或いはナイロン66が好ましい。なお、先述のポリエステルを使用してもよい。
【0028】
なお、第1層及び第2層のうち外層のフィルムを構成する材料としてナイロン及びポリエステルを用いる場合、チューブラ法又はテンター法により成形された二軸延伸フィルムを使用することができる。
【0029】
PE層S13は、第2層の一例であり、例えばポリエチレンを用いて100~150μm厚、本実施形態では特に130μmで形成されることで、スタンディングパウチを形成した際に自立可能な高い剛性を備えるとともに、100~130℃で溶融してヒートシール(熱融着)するのに好適なシーラント層を構成する。なお、第2層のうちの最内層の材料は、ヒートシール(熱融着)するのに好適な材料であれば、ポリオレフィン、例えば低密度、中密度、又は高密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等のうちの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0030】
その他、第2層の一例として、酸素等のガス、水分が出入りしないよう、また光が入らないよう外部から遮断するためのアルミ等の金属層(又は金属箔)を設けてもよい。ここで、PET層S11、NY層S12、金属層、及びPE層S13の順に積層してよい。また、PET層S11を除いて、NY層S12、金属層、及びPE層S13の順に積層してよい。また、PET層S11、金属層、NY層S12、及びPE層S13の順に積層してよい。また、NY層S12を除いて、PET層S11、金属層、及びPE層S13の順に積層してよい。
【0031】
また、上述の金属層に代えて、ケミカルベーパーデポジション(CVD)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により、シリコンオキサイド等の無機物、或いはアルミナ等のセラミック、カーボン等を蒸着してなる蒸着層を設けてもよい。また、ポリカルボン酸系ポリマー、塩化ビニリデン、或いはエチレンビニルアルコール共重合体等からなるバリア性樹脂コーティング剤を塗膜して塗膜層を設けてもよい。
【0032】
なお、非加熱用パウチ容器の積層フィルムとして、上述のPET層、NY層、及びPE層の積層を使用することができる。PET層は印刷層、NY層は強度確保層、PE層はヒートシール層として好適である。ここで、PET層に代えて透明バリア(蒸着)PET層を使用してよい。透明バリアPET層は、PET層の内面側に透明なバリア層を設けたものであり、印刷層として好適である。また、NY層、アルミ蒸着PET層、及びPE層の積層を使用することもできる。斯かる場合、NY層上に印刷層が設けられる。PET層の蒸着面はNY層側に向けられる。また、NY層及びPE層の積層を使用することもできる。NY層上に印刷層を設けることでPET層が省略される。また、PET層、NY層、アルミ箔、及びPE層の積層を使用することもできる。アルミ箔は、PET層及びNY層の間に積層してもよい。NY層上に印刷層を設けて、NY層、アルミ箔、及びPE層の積層としてもよい。
【0033】
図4Bに、印刷層S14における網点の配列の一例を示す。ここで、網点は、複数のドットdtの集合である。本実施形態では、網点は、一例として、円形状のドットを45度傾斜した正方格子状に配列して構成されるものとする。ここで、ドット幅d、複数のドットdtのうち最も隣接する2つのドット間の離間距離w、最も隣接するドット間の中心間距離W(=w+d)、最も隣接する4つのドット間に形成される間隙領域の幅Dとする。一例として、ドット幅dは約120μm、離間距離wは約60μm、中心間距離Wは約180μm、間隙領域の幅Dは約120μmである。なお、レーザ光のスポットLSのサイズは例えば240μmとしてよい。
【0034】
ここで、離間距離wは、線状溝15,25の幅H及び線状溝15,25を形成する際に使用するレーザ光のスポットLSのサイズ(本実施形態では、線状溝15,25の幅Hはレーザ光のスポットサイズに等しいとする)より小さい。それにより、印刷層S14を、横方向に限らず斜め方向も含めて任意の方向にレーザ光で走査する際に、網点に含まれる複数のドットdtのうちの少なくとも1つのドットdtの少なくとも一部を照射して、線状溝15,25を形成することができる。それにより、網点の密度を通じてレーザ光の吸収量、すなわち発熱量を調整することが可能となる。
【0035】
また、中心間距離Wは、線状溝15,25の幅(レーザ光のスポットLSのサイズ)H以下としてよい。それにより、印刷層S14を任意の方向にレーザ光で走査する際に、走査方向に直交する方向に関して、網点のドットdtの少なくとも1つ分を照射して、線状溝15,25を形成することができる。それにより、走査方向に関するドットdtの離間距離、つまり網点の密度を通じてレーザ光の吸収量、すなわち発熱量を調整することが可能となる。
【0036】
なお、レーザ光の走査線(すなわち、線状溝)は直線部に限らず、少なくとも一部に湾曲部を含んでもよい。斯かる場合において、直線部及び湾曲部のいずれに対しても上述の条件を適用することができる。また、次のようにレーザ光の走査方向に直交する方向(又は線状溝の幅方向)について条件を適用してもよい。
【0037】
図4Bに示した45度傾斜した正方格子状に配列された網点に対して図面左右方向にレーザ光を走査する場合、複数のドットdtのうち隣接する2つのドット間の図面上下方向(すなわち、レーザ光の走査方向に直交する方向又は線状溝の幅方向)に関する離間距離w'がレーザ光のスポットLSのサイズHより小さいとしてよい。それにより、印刷層S14をレーザ光で走査する際に、網点に含まれる複数のドットdtのうちの少なくとも1つのドットdtの少なくとも一部を照射して、線状溝15,25を形成することができる。また、隣接する2つのドット間の図面上下方向(すなわち、レーザ光の走査方向に直交する方向又は線状溝の幅方向)に関する中心間距離W'がレーザ光のスポットLSのサイズH以下であるとしてよい。それにより、印刷層S14をレーザ光で走査する際に、網点のドットdtの少なくとも1つ分を照射して、線状溝15,25を形成することができる。
【0038】
なお、レーザ光を直線に沿って走査するに限らず湾曲して走査してもよい。すなわち、線状溝15,25を直線状に限らず湾曲状に形成してもよい。斯かる場合、隣接する2つのドット間の離間距離及び中心間距離は、それら2つのドットに最接近する位置においてレーザ光の走査方向に直交する方向(又は線状溝の幅方向)に関して定めてもよい。
【0039】
なお、網点に含まれる複数のドットdtは円形状に限らず、楕円、三角形、四角形、菱形等の任意の形状でもよく、複数の形状及びサイズのドットdtが混在してもよい。複数のドットdtの配列も正方格子に限らず、六角格子等の規則的な配列でもよいし、不規則な配列でもよい。
【0040】
図5A及び
図5Bに、それぞれ、印刷層S14内の網点を構成する複数のドットdtのドット部分及び複数のドットdt間の間隙部分における線状溝15,25の横方向に関する断面構造(
図4Bの基準線AA及びBBに関する断面構造)を示す。
図4Aに示した積層フィルムに、PET層S11側から積層フィルム内の印刷層S14にレーザ光を照射することで、PET層S11側から印刷層S14を介して積層フィルム内部に向かう線状溝15,25が形成される。ここでは、
図4Bに示したように、レーザ光のスポットLSを網点に対して横方向に移動して、横方向に一定間隔で並ぶ複数のドットdtを走査したものとする。
【0041】
図5Aに示すように、網点のドット部分においては、レーザ光を吸収したドットdtが発熱し、その熱により印刷層S14を挟むPET層S11及びNY層S12が融解することで、PE層S13の表面又は表面付近まで達する線状溝15,25が形成される。
【0042】
一方、
図5Bに示すように、網点の間隙部分においては、レーザ光が積層フィルム(特にPET層S11及びNY層S12)内で吸収されて弱く発熱し、その少量の熱によりPET層S11及びNY層S12が融解し、PET層S11及びNY層S12が互いに密着した状態を維持してNY層S12の途中まで達する線状溝15,25が形成される。なお、レーザ光の強度及びフィルム内での発熱量によっては、PET層S11及びNY層S12が互いに密着した状態を維持してPET層S11の途中まで達する線状溝15,25が形成されることもある。
【0043】
図5Cに、線状溝15,25の縦方向に関する断面構造(
図4Bの基準線CCに関する断面構造)を示す。線状溝15,25は、溝方向に沿って、網点の間隙部分においてPET層S11及びNY層S12が互いに密着した浅い溝を構成し、網点のドット部分においてPE層S13の表面又は表面付近まで達するドットdtと同形状の深い穴部を構成する。それにより、線状溝15,25は、PET層S11及びNY層S12が互いに密着してなる浅い溝底に、溝方向に並ぶPE層S13の表面又は表面付近まで達する深い複数の穴部を含むこととなり、ドット部分の深い穴部にてフィルム10,20の引き裂きが始まり、PET層S11及びNY層S12が互いに密着している間隙部分でフィルム10,20の引き裂きが継続されることで、線状溝15,25に沿ってフィルム10,20を容易に引き裂くことが可能となる。
【0044】
図5Dに、印刷領域14,24内を、印刷インキを用いて均一に印刷して印刷層S14を設け、その印刷層S14にレーザ光を照射した場合に形成される線状溝15,25の横方向に関する断面構造を示す。均一に印刷された印刷層S14にレーザ光を照射すると光吸収が強く、過度に強く発熱してその熱が広範囲に広がることで、特にPET層S11及びNY層S12の融解した材料が線状溝15,25の周縁に高く隆起して幅広のショルダS11aが発生してしまう。
【0045】
それに対して、部分的に印刷された印刷層S14の網点にレーザ光を照射すると適度の光吸収により発熱し、それにより網点の間隙部分においてPET層S11及びNY層S12が密着した浅い溝底と、網点のドット部分において部分的に深い穴部とを含む線状溝15,25が形成されることで、先述の通りフィルム10,20を容易に引き裂くことが可能となる。このように、印刷層S14を網点より構成することで、フィルム10,20の容易な引き裂きに重要なフィルム間の密着性及び適度の発熱量を両立することができる。
【0046】
図5Eに、周縁部分、すなわちシール領域18a,18b,28a,28bにおける線状溝15,25の断面構造を示す。
図4Aに示した積層フィルムに、PET層S11側から積層フィルム内の印刷層S14にレーザ光を照射することで、
図5A及び
図5Bに示すように、PET層S11側から印刷層S14を介して積層フィルム内部に向かう線状溝15,25が形成される。さらに、フィルム10,20を用いて包装袋1を形成する際に、それらを重ねてシール領域18a,18b,28a,28bをヒートシール(熱融着)することで、特にPE層S13を構成する材料が融解して線状溝15,25内に充填される。なお、PE層S13を構成する材料に限らず、ヒートシール(熱融着)により融解し得る層を設けた場合にその層を構成する材料もともに線状溝15,25内に充填されてよい。それにより、フィルム10,20に線状溝15,25を形成することで包装袋1の引き裂きが容易になる一方で、意図せず包装袋1が引き裂かれるイレギュラーな開封が発生するおそれが生じるところ、周縁部分において線状溝15,25がPE層S13の材料で充填されることで意図しない包装袋1の引き裂きが発生するおそれが十分小さくなる。
【0047】
なお、上述のような意図しない包装袋1の引き裂きを防止するために、線状溝15,25にフィルム材料を充填することに代えて、包装袋1、すなわちフィルム10,20の周縁部、特にシール領域18a,18b,28a,28bにおいては、例えば印刷領域14,24にレーザ光を照射せず易開封加工を施さない、つまり線状溝を形成しないこととしてよい。斯かる場合、例えば、レーザ光のスポットLSがフィルム10,20の周縁部を走査する際に、光路上にシャッタを配してレーザ光を遮断することで、周縁部に線状溝を形成しないこととしてもよい。或いは、周縁部には、周縁部間領域の網点に対してドットの数が少ない又はドット面積が小さく、間隙部分に対するドット部分の面積比の小さい低密度の網点を含む印刷層S14を設ける又は印刷層S14を設けない、すなわち周縁部に、周縁部間領域に対して光吸収の弱い領域を設け、レーザ光を照射して浅い線状溝を形成することとしてもよい。或いは、周縁部間領域には網点を含み、周縁部には後述するような均一に印刷された領域を含む印刷層を設ける、すなわち周縁部に、周縁部間領域に対してフィルム10,20の密着度の低い領域を設け、レーザ光を照射して引き裂き困難な線状溝を形成することとしてもよい。
【0048】
図6に、本実施形態に係る易開封加工が施された包装袋用フィルムSの製造工程S100のフローを示す。
【0049】
ステップS101では、第1層であるPET層S11上に印刷層S14を設ける。印刷層S14は、グラビア印刷機により、例えば酸化チタンを含む白色インキを用いて網点を印刷することで設けられる。なお、アルミ、アルミ合金等を含む銀色インキ、カーボンブラック、グラファイト等を含む黒色インキ、雲母、イリオジン等を含むパール系色インキ、酸化鉄等を含む茶色インキ等の有色インキを用いて網点を印刷してもよい。
【0050】
ステップS102では、印刷層S14を介してPET層S11上にNY層S12等を含む1又は複数の第2層を積層して積層フィルムを形成する。本実施形態では、第2層としてNY層S12及びPE層S13を含む。さらに、アルミ層を含んでもよい。なお、積層は、PET層S11に接着剤を塗布し、乾燥装置内で溶剤を蒸発させて第2層を熱圧着するドライラミネートによってもよいし、第2層の材料を溶融しフィルム状に押し出してPET層S11上に積層する押出コートラミネートによってもよいし、或いは熱可塑性のウレタン系接着剤のように溶剤を含まない接着剤をPET層S11に塗布し、その上に第2層を乾燥工程無しで接着するノンソルラミネート(無溶剤ラミネートとも呼ぶ)によってもよい。
【0051】
ステップS103では、ステップS102で形成された積層フィルムを裁断して、幅が決められた原反フィルムを形成する。ここで、ステップS101の印刷工程及びステップS102の積層工程において積層フィルムに不良部分が検出された場合、フィルム端部にフラッグが挿入される。そこで、そのフラッグを目印にして不良部分を切断して除去し、分断された積層フィルムを接続してもよい。さらに、フィルムの滑り性を向上するために内面側に散紛してもよい。
【0052】
ステップS104では、ステップS103で形成された原反フィルムに易開封加工を施して包装袋用フィルムSを製造する。ここで、PET層S11側から積層フィルム内の印刷層S14にレーザ光を照射することで、積層フィルムの全幅に線状溝15,25が形成される。
【0053】
図7に、レーザ加工機50の概略構成を示す。レーザ加工機50は、ステップS103で形成された原反フィルム(積層フィルム)にレーザ光を照射して線状溝15,25及び誘導溝16a,16b,26a,26bを形成する装置であり、光源51、反射素子52、集光光学系53、走査光学系54、及び巻回機Rを備える。
【0054】
光源51は、レーザ光を発生する光源装置であり、本実施形態では一例としてCO2レーザを採用する。CO2レーザの出力は、酸化チタンを含む白色インキを用いて網点状に形成された印刷層S14にレーザ光を照射する場合に、20~30W、好ましくは24~30W、さらに好ましくは27~28Wとする。なお、積層フィルムに線状溝15,25を形成することができれば、つまり印刷層S14に光を照射して発熱させることができれば、任意の波長の任意のレーザ光源を採用してもよいし、レーザ光に限らず高強度の光ビームを発するその他の光源を使用してもよい。
【0055】
反射素子52は、レーザ光を反射して原反フィルムに向ける光学素子であり、例えばミラー素子が界面に設けられたプリズムを採用することができる。
【0056】
集光光学系53は、レーザ光を集光して原反フィルム上にスポットを成形するためのレンズ素子を含む光学系である。
【0057】
走査光学系54は、集光光学系53により成形されたレーザ光を原反フィルム上で二次元方向に走査するための光学系である。
【0058】
光源51から射出されたレーザ光は、反射素子52を介して原反フィルムに向けられ、集光光学系53により原反フィルム上でスポットを形成し、走査光学系54により原反フィルム上で二次元走査される。それにより、原反フィルムに線状溝15,25等が形成されて、包装袋用フィルムSが得られる。
【0059】
巻回機Rは、得られた包装袋用フィルムSをロール状に巻き取る装置である。一定量巻き取られたロール状の包装袋用フィルムSは、巻回機Rから取り外されて装置外に搬出される。
【0060】
図8に、レーザ加工機50による線状溝15,25の加工の一例を示す。レーザ加工機50は、
図3に示す原反フィルムに対して2台使用され、一方(左レーザと呼ぶ)が原反フィルムの左端側の印刷領域14内に線状溝15及び誘導溝16a,16bを形成し、他方(右レーザと呼ぶ)が原反フィルムの右端側の印刷領域24内に線状溝25及び誘導溝26a,26bを形成する。搬送装置(不図示)により原反フィルムを白抜き矢印の方向に送りつつ、まず、左レーザ及び右レーザを走査光学系54によりそれぞれ半楕円経路に沿って走査してフィルム10,20の一側端部に誘導溝16a,26aを形成する。
【0061】
次いで、左レーザを一部湾曲した経路に沿って走査すると同時に右レーザを直線経路に沿って走査して、フィルム10,20の全幅に線状溝15,25をそれぞれ形成する。ここで、先述の通り、線状溝25は直線であり、線状溝15は一部湾曲する。このとき、線状溝15,25は、先に形成された誘導溝16a,26aに交差する。
【0062】
最後に、左レーザ及び右レーザを走査光学系54によりそれぞれ半楕円経路に沿って走査してフィルム10,20の他側端部に誘導溝16b,26bを形成する。このとき、誘導溝16b,26bは、先に形成された線状溝15,25に交差する。
【0063】
誘導溝16a,26a、線状溝15,25、そして誘導溝16b,26bの形成を、原反フィルムにおいて縦方向に連続する複数のフィルム10,20に対して繰り返すことで、線状溝15,25及び誘導溝16a,26a,16b,26bが形成された包装袋用フィルムSが形成される。
【0064】
なお、ステップS104において原反フィルムに易開封加工を施して包装袋用フィルムSを形成した後、巻回機Rにより包装袋用フィルムSをロール状に巻き取る。ここで、包装袋用フィルムSは、
図8における白抜き矢印の方向、すなわち線状溝15,25に対して平行に巻き取られる。印刷領域14,24内に
図4Bに示した網点を印刷して形成された印刷層S14にレーザ光を照射することで、
図5A及び
図5Bに示したように包装袋用フィルムSの表面が線状溝15,25の周囲に隆起しにくい(ショルダが生じにくい)ため、表面に凹凸が少なく、皺が入りにくい包装袋用フィルムSのロールを得ることができる。
【0065】
ロール状に巻き取られた包装袋用フィルムSは、製袋装置60に搬送される。ここで、包装袋用フィルムSは、一定期間保管された後に製袋装置60に搬送されてもよい。
【0066】
ステップS200では、ステップS104で形成されたロール状の包装袋用フィルムSを用いて、周辺部をシールすることで製袋して包装袋1を形成する。ステップS200は、包装袋用フィルムSの製造工程S100に続けて実施されてもよいし、時間をおいて実施されてもよい。
【0067】
図9に、製袋装置60の概略構成を示す。製袋装置60は、製袋工程S200を実行する装置であり、レーザ加工機50を含む包装袋用フィルムSの製造工程S100を実行する装置システムに併設されてもよいし、独立に遠設されてもよい。製袋装置60は、裁断機62、ファスナ取付器61、ヒートシール機63、ノッチカッタ64、及び裁断機65を備える。
【0068】
裁断機62は、ロール状の包装袋用フィルムSからフィルムを繰り出し、包装袋用フィルムSを中心線(
図3における中央の破線)に沿って裁断してフィルム10のみを含むフィルムS1とフィルム20のみを含むフィルムS2とに分断する。
【0069】
ファスナ取付器61は、ファスナ31を構成する雄部材及び雌部材をそれぞれフィルムS1,S2に含まれるフィルム10,20の内面上に固定する。フィルムS1,S2は、それぞれの内面が対向するように重ね合わせられた状態で搬出される。このとき、フィルム10,20の線状溝15,25は、少なくとも周縁部で重なっている。
【0070】
ヒートシール機63は、重ね合わせられたフィルムS1,S2の間に二つ折りされたフィルム30を挿入し、それぞれ周縁部をヒートシール(熱融着)する。それにより、フィルムS1,S2に含まれる個々のフィルム10,20のシール領域18a,28a、シール領域18b,28bがそれぞれヒートシールされるとともに、フィルム10のシール領域18d及びフィルム30のシール領域30c、フィルム20のシール領域28d及びフィルム30のシール領域30dがそれぞれヒートシールされる。それにより、上端部が開口した状態の包装袋1が形成される。このとき、シール領域18a,28a,18b,28bにおいてフィルム10,20の線状溝15,25は、第2層をなすPE層の材料により充填される。それにより、先述の通り、意図しない包装袋1の引き裂きの発生を抑えることができる。
【0071】
ノッチカッタ64は、シールされたフィルムS1,S2に含まれる個々のフィルム10,20の端部に、線状溝15,25に重ねてノッチ17a,17bを設ける。すなわち、周縁部内でフィルム10,20に線状溝15,25に沿ってノッチ17a,17bを形成する。
【0072】
裁断機65は、シールされたフィルムS1,S2を裁断し、連続するフィルム10,20を切り離して、それぞれ上端部が開口した包装袋1を形成する。
【0073】
包装袋1は製袋装置60から搬出される。その後、包装袋1の開口から内容物が充填され、フィルム10,20のシール領域18c,28cをヒートシールすることで包装袋1の内部が密封される。
【0074】
図10及び
図11Aから
図11Dに、包装袋用フィルムSに形成された線状溝の状態を示す。ここで、印刷領域14,24内に印刷インキを用いて網点を含む印刷層S14を設け、これにレーザ光を照射することにより形成された線状溝25(左)、均一に印刷して印刷層S14を設け、これにレーザ光を照射することにより形成された線状溝25(右)を対比する。印刷インキとして、酸化チタンを含む白色インキを用いた。網点の構成は
図4Bに示した通りである。レーザ加工機50は、2つのレーザ加工機50のうちの右レーザ(CO
2レーザ)を使用した。レーザ出力の較正を
図13に示す。包装袋用フィルムSの搬送速度20m/分、レーザ光の走査速度1600mm/秒とした。
【0075】
図10に、レーザ出力65%で形成された包装袋用フィルムSの線状溝の深さ分布の測定結果を示す。均一印刷の場合(右)、印刷層による光吸収が強く、過度に強く発熱してその熱が広範囲に広がることで、線状溝は深く形成されるが、溶融したPET層及びNY層の材料が線状溝の周縁に高く隆起して幅広のショルダが発生していることがわかる。それに対して網点の場合(左)、印刷層の網点のドット部分が光吸収により強く発熱してその熱が広がることで深い穴部が形成され、網点の間隙部分が光吸収により弱く発熱してその熱が狭い範囲にのみ広がることで浅底を形成する。ここで、溶融したPET層及びNY層の材料が線状溝の周縁にわずかに隆起して幅狭のショルダが発生する。均一印刷の場合と比較すると、ショルダは低いことがわかる。
【0076】
図11Aに、レーザ出力80%で形成された線状溝の拡大像を示す。均一印刷の場合(右)、印刷層による光吸収が強く、過度に強く発熱してその熱が広範囲に広がることで、線状溝は深く形成され、その底がPE層(中央の黒い部分)まで達するが、溶融したPET層及びNY層の材料が線状溝の周縁に高く隆起して幅広のショルダ(上下の白い部分)が発生していることがわかる。なお、ショルダが比較的幅広であることで、溝部分は幅狭となっている。それに対して網点の場合(左)、印刷層の網点のドット部分が光吸収により強く発熱してその熱が広がることでPE層まで達する深い穴部が形成され、網点の間隙部分が光吸収により弱く発熱してその熱が狭い範囲にのみ広がることでPET層及びNY層が互いに密着した状態を維持して浅底を形成する。ここで、溶融したPET層及びNY層の材料が線状溝の周縁にわずかに隆起して幅狭のショルダ(上下の白い部分)が発生する。均一印刷の場合(右)と比較すると、ショルダが比較的幅狭であることで、溝部分は幅広となっている。
【0077】
図11Bに、レーザ出力70%で形成された線状溝の拡大像を示す。均一印刷の場合(右)、出力80%の場合と比較すると、印刷層による光吸収が弱くなる分、発生した熱が広範囲に広がらないことで、線状溝の周縁に生じるショルダは低く且つ幅狭となっているが、線状溝も比較的浅く形成される。それに対して網点の場合(左)、出力80%の場合と比較すると、印刷層による光吸収が弱くなる分、線状溝は浅く(黒い部分が少なく)且つ狭く形成される。しかし、出力80%の場合と同様に、印刷層の網点のドット部分が光吸収により強く発熱してその熱が広がることでPE層まで達する深い穴部が形成され、網点の間隙部分が光吸収により弱く発熱してその熱が狭い範囲にのみ広がることでPET層及びNY層が互いに密着した状態を維持して浅底を形成している。
【0078】
図11Cに、レーザ出力65%で形成された線状溝の拡大像を示す。均一印刷の場合(右)、出力70%の場合と比較すると、印刷層による光吸収がさらに弱くなる分、線状溝は浅く且つ狭く形成される。それに対して網点の場合(左)、出力70%の場合と比較すると、印刷層による光吸収がさらに弱くなる分、線状溝は浅く(黒い部分が少なく)且つ狭く形成される。しかし、出力70%の場合と同様に、印刷層の網点のドット部分では深い穴部が形成され、網点の間隙部分ではPET層及びNY層が互いに密着した状態を維持して浅底を形成している。
【0079】
図11Dは、網点を含む印刷層に、レーザ光を出力55%で照射することにより形成された線状溝の拡大像を示す。出力65%の場合と比較すると、印刷層による光吸収がさらに弱くなる分、線状溝は浅く(黒い部分が少なく)狭く形成される。しかし、上述の線状溝の構造は維持されていることがわかる。
【0080】
図12に、包装袋の開封容易度の試験結果を示す。先述の通り、印刷領域14,24内に印刷インキを用いて網点を含む印刷層S14を設けた場合と、均一に印刷して印刷層S14を設けた場合とで、印刷層S14にレーザ光を照射して線状溝15,25を形成した包装袋用フィルムSを用いて包装袋1を形成し、包装袋1の端部を手指で摘まみ、ノッチ17a又はノッチ17bから線状溝15,25に沿ってフィルム10,20を他側まで引き裂いて包装袋1を開封した。ここで、包装袋1を開封するにあたって、包装袋1の左又は右端部を手指で摘まみ、ノッチ17a又はノッチ17bの下側に対して上側を手前に引く又は奥方に押すことの4通りを各10回試験した。フィルム10,20を他端まで引き裂いて包装袋1を開封することができた場合に成功、フィルム10,20を他端まで引き裂くことができず包装袋1の開封が途中で止まった場合に失敗とて、網点と均一印刷との場合のそれぞれについてレーザ出力に対して開封成功率を算出した。
【0081】
均一印刷の場合、レーザ出力80~90%では、線状溝15,25が深く形成されることでフィルム10,20を容易に引き裂くことができ、開封成功率は約90%と高い。しかし、レーザ出力が65~75%と低くなると、強く発熱するが広範囲に分散されて線状溝が浅く且つ広く形成されるため、さらにPET層S11とNY層S12との間に均一な印刷層S14が介在することでそれらの間の密着度が弱くなるために、フィルム10,20の引き裂きが困難となり、開封成功率が約60%まで下がる。
【0082】
それに対して、網点の場合、レーザ出力55~90%において、印刷層の網点のドット部分が光吸収により強く発熱してその熱が広がることでPE層まで達する深い穴部が形成され、網点の間隙部分が光吸収により弱く発熱してその熱が狭い範囲にのみ広がることでPET層及びNY層が互いに密着した状態を維持して浅底を形成する。ドット部分の深い穴部にてフィルム10,20の引き裂きが始まり、PET層S11及びNY層S12が互いに密着している間隙部分でフィルム10,20の引き裂きが継続され、これが線状溝の一端から他端まで繰り返されることで、フィルム10,20の引き裂きが容易となり、開封成功率は80%以上と高くなっている。
【0083】
図13に、上述の包装袋用フィルムSの線状溝15,25を形成する際に使用したレーザ出力の測定結果(較正)を示す。網点の場合に開封成功率80%以上を実現したレーザ出力55~90%は、少なくとも20~30Wに相当する。網点の場合に開封成功率100%以上を実現したレーザ出力65~90%は、少なくとも24~30Wに相当する。レーザ加工機を安定に使用する上でレーザ出力75~85%が好ましく、これは少なくとも27~28Wに相当する。
【0084】
【0085】
実施例に係る包装袋(実施例1~5)は、上述の実施形態に係る包装袋1の製造方法に従って印刷S101、積層S102、スリットS103、易開封加工S104、及び製袋S200の順で製造した。印刷S101では、PET層S11の内面側(すなわち、NY層S12側)に酸化チタンを含む白色インキを用いて網点をグラビア印刷することで印刷層S12を設けた。積層S102では、12μm厚のPET層S11、15μm厚のNY層S12、及び130μm厚のPE層S13を用いて積層フィルムを形成した。易開封加工S104では、25WのCO
2レーザ光を用いて印刷層に光を照射して積層フィルムに線状溝を形成した。製袋S200では、積層フィルムを周縁部にてヒートシールして包装袋を形成する。このとき、周縁部内の線状溝15,25はNY層S12及びPE層S13の材料、特にシーラント層をなすPE層S13の材料により充填される(
図5E参照)。
【0086】
比較例に係る包装袋(比較例1~5)は、印刷S101、積層S102、スリットS103、製袋S200、及び易開封加工S104の順で製造した。印刷S101では、PET層S11の内面側(すなわち、NY層S12側)に酸化チタンを含む白色インキを用いて網点をグラビア印刷することで印刷層S12を設けた。積層S102では、12μm厚のPET層S11、15μm厚のNY層S12、及び130μm厚のPE層S13を用いて積層フィルムを形成した。製袋S200では、積層フィルムを周縁部にてヒートシールして包装袋を形成する。易開封加工S104では、25WのCO2レーザ光を用いて印刷層に光を照射して包装袋1の両面の積層フィルムにそれぞれ線状溝を形成した。製袋S200の後に易開封加工S104を行ったことで、実施例に係る包装袋と異なり、比較例に係る包装体の周縁部内の線状溝15,25には何も充填されていない。
【0087】
実施例に係る包装袋(実施例1~5)及び比較例に係る包装袋(比較例1~5)のそれぞれについて、初期開封強度測定を行った。初期開封強度測定では、包装袋の上部をプッシュプルゲージ(DS2-200N、株式会社イマダ)にチャックし、包装袋の下部を固定し、チャックを左から右に3000mm/分の速度で移動させることで包装袋を引き裂きつつチャックに加わる荷重をプッシュプルゲージで測定し、引き裂きが周縁部(シール領域18a,28a)を通過した後に引き裂きを停止してプッシュプルゲージから引き裂き中にチャックに加わった最大荷重を読み取る。実施例1~5に係る包装袋では最大荷重は平均12.18N、比較例1~5に係る包装袋では最大荷重は平均10.98Nであった。実施例に係る包装袋は、周縁部内の線状溝15,25がシーラント層をなすPE層S13の材料により充填されることで初期開封強度が上がり、それによりイレギュラーな引き裂きの開始を抑制することが可能となる。また、PE層S13の材料により充填された線状溝15,25に沿ってノッチ17a,17bを設ける際に積層フィルムがデラミネーションするのを防止することもできる。
【0088】
本実施形態に係る包装袋用フィルムSの製造方法は、PET層S11上に網点を印刷して印刷層S14を設ける段階、印刷層S14を介してPET層S11上にNY層S12及びPE層S13を積層して積層フィルムを形成する段階、PET層S11側から積層フィルム内の印刷層S14にレーザ光を照射して、積層フィルムに線状溝15,25を形成する段階を備える。これによれば、積層フィルム内に重ねられた印刷層S14にレーザ光を照射することで、印刷層S14の網点を構成する複数のドットのうちレーザ光を吸収したドットが発熱し、その熱により印刷層S14を挟む層が融解して積層フィルムに線状溝15,25が形成される。ここで、印刷層S14が網点状に分布する印刷インキを含むことでこれを挟む2つの層間の密着が得られるとともに、その網点状の印刷インキにレーザ光を照射することで、低い光強度で効率良く発熱させるとともにヒュームの発生を抑えて、包装袋用フィルムSに引き裂き容易な線状溝15,25を形成することができる。
【0089】
ここで、無印刷領域に光を照射すると光吸収が弱く、発熱が弱いために線状溝は浅く形成されてフィルム10,20は引き裂き困難となり、均一に印刷して印刷層S14を設けるとこれを挟むPET層S11及びNY層S12間の密着が弱く引き裂き困難となり、その印刷層S14にレーザ光を照射すると光吸収が強く、発熱が過度に強く熱が広範囲に広がるために線状溝の周縁に幅広の大きなショルダが発生してしまうのに対し、部分的に印刷された網点にレーザ光を照射すると適度の光吸収により発熱し、それによりドットの間隙部分において浅いがPET層S11及びNY層S12が密着し、ドット部分において部分的に深い線状溝が形成されて、引き裂き容易となる。従って、本実施形態に係る包装袋用フィルムSの製造方法は、低強度のレーザ光を用いて効率良く、ヒュームの発生量を少なく抑えて包装袋用フィルムSを易開封加工することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る包装袋1の製造方法は、先述の包装袋用フィルムSの製造方法により製造された2つのフィルム10,20の周縁部をシールすることで包装袋1を形成する。ここで、印刷領域14,24内に設けられた印刷層S14が網点状に形成されていることで、フィルム10,20のうちの一方のフィルムの印刷領域14又は24を介して裏側の他方のフィルムを目視して表裏のフィルム10,20のずれを確認することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る包装袋用フィルムSは、PET層S11、PET層S11上に網点を印刷して設けられた印刷層S14、印刷層S14を介してPET層S11上に積層されたNY層S12及びPE層S13を有する積層フィルムを備え、PET層S11側から印刷層S14を介して積層フィルム内に線状溝15,25が形成されている。ここで、線状溝15,25は、PET層S11及びNY層S12が互いに密着した浅い溝底に、溝方向に並ぶPE層の表面まで達する複数の穴部を含む。それにより、ドット部分の穴部にてフィルム10,20の引き裂きが始まり、PET層S11及びNY層S12が互いに密着している間隙部分でフィルム10,20の引き裂きが継続されることで、線状溝15,25に沿ってフィルム10,20を容易に引き裂くことが可能となる。ここで、線状溝15,25が長くても、フィルム10の線状溝15とフィルム10の線状溝25とが一部においてずれていても、フィルム10,20の内面層、すなわちPE層S13が厚くても、線状溝15,25に沿ってフィルム10,20を容易に引き裂くことが可能となる。
【0092】
また、本実施形態に係る包装袋1は、先述の包装袋用フィルムSの周縁部をシールして形成される。
【0093】
なお、本実施形態に係る包装袋用フィルムSは、1つの包装袋1を構成する一対のフィルム10,20を左右に並べ且つ複数対のフィルム10,20をそれぞれの側端を互いに接続して連続的に含むものとしたが、これに限らず、一対のフィルム10,20の一方のみを複数連続して含むものとしてもよいし、複数対のフィルム10,20を左右に並べ且つ複数対のフィルム10,20をそれぞれの側端を互いに接続して連続的に含むものとしてもよい。
【0094】
なお、本実施形態に係る包装袋1では、フィルム10,20の左右方向の全幅にわたって線状溝15,25を設けることとしたが、左肩又は右肩の近傍に上端から側端に向かって斜めに線状溝を設けることとしてもよい。また、線状溝15,25は、直線状に限らず湾曲線状に設けてもよい。
【0095】
なお、本実施形態に係る包装袋1では、フィルム10,20の左右方向の両端にノッチ17a,17bを設けることとしたが、一端のみに設けることとしてもよい。
【0096】
なお、本実施形態に係る包装袋用フィルムSの製造方法では、その製造工程S100の最後、つまり製袋工程S200の前に包装袋用フィルムSにレーザ光を照射して易開封加工することとしたが、これに代えて、製袋工程S200において、例えばヒートシール機63によりフィルム10,20,30をヒートシールして上端部が開口した状態の包装袋1を形成した後、裁断機65により個々の包装袋1に分断するまでの間に、包装袋1にレーザ光を照射して易開封加工することとしてもよい。斯かる場合、イレギュラーな開封を防止するために、包装袋1のシール領域18a,18b,28a,28bを除いて易開封加工してもよい。
【0097】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0098】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0099】
本明細書によれば、以下の各項目に記載の構成もまた開示される。
[項目1]易開封加工が施された包装袋用フィルムの製造方法であって、第1層上に網点を印刷して印刷層を設ける段階と、前記印刷層を介して前記第1層上に1又は複数の第2層を積層して積層フィルムを形成する段階と、前記第1層側から前記積層フィルム内の前記印刷層に光を照射して、前記積層フィルムに線状溝を形成する段階と、を備える包装袋用フィルムの製造方法。
[項目2]前記網点は、複数のドットの集合であり、前記光の走査方向に直交する方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの離間距離は、前記光のスポットサイズより小さい、項目1に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目3]前記光の走査方向に直交する方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの中心間距離は、前記光のスポットサイズ以下である、項目2に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目4]前記線状溝は、前記網点のドット間の領域よりもドットの位置で深い、項目1に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目5]前記印刷層を設ける段階では、酸化チタンを含む印刷インキを用いて印刷し、前記線状溝を形成する段階では、20~30WのCO2レーザ光を用いる、項目1に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目6]前記線状溝を形成する段階の後に、前記積層フィルムをロールする段階をさらに備える、項目1に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目7]項目1から6のいずれか一項に記載の包装袋用フィルムの製造方法により製造された包装袋用フィルムを周縁部にてシールして包装袋を形成する包装袋の製造方法。
[項目8]前記包装袋の一方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの線状溝は直線状であり、他方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの別の線状溝は一部湾曲する、項目7に記載の包装袋の製造方法。
[項目9]前記包装袋用フィルムの線状溝及び別の線状溝の少なくとも一方は、前記周縁部において前記1又は複数の第2層のうちのいずれかの層の材料により充填される、項目7に記載の包装袋の製造方法。
[項目10]易開封加工が施された包装袋用フィルムであって、第1層と、前記第1層上に網点を印刷して設けられた印刷層と、前記印刷層を介して前記第1層上に積層された1又は複数の第2層とを有する積層フィルムを備え、前記第1層側から前記印刷層を介して前記積層フィルム内に線状溝が形成された、包装袋用フィルム。
[項目11]前記網点は、複数のドットの集合であり、前記線状溝の幅方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの離間距離は、前記線状溝の幅より小さい、項目10に記載の包装袋用フィルム。
[項目12]前記線状溝の幅方向に関して、前記複数のドットのうちの隣接する2つのドットの中心間距離は、前記線状溝の幅以下である、項目11に記載の包装袋用フィルム。
[項目13]前記線状溝は、複数の深い部分を含む、項目10に記載の包装袋用フィルム。
[項目14]項目10から13のいずれか一項に記載の包装袋用フィルムを用いて形成される包装袋。
[項目15]前記包装袋の一方の面上に形成される線状溝は直線状であり、他方の面上に形成される線状溝は一部湾曲する、項目14に記載の包装袋。
[項目16]前記包装袋に形成される線状溝は、周縁シール部において前記1又は複数の第2層のうちの少なくとも1つの層の材料により充填される、項目14に記載の包装袋。
[項目17]易開封加工が施された包装袋の製造方法であって、第1層上に1又は複数の第2層を積層して積層フィルムを形成する段階と、前記積層フィルムの前記第1層側に線状溝を形成する段階と、前記積層フィルムを周縁部にてシールして包装袋を形成するとともに前記周縁部内の前記積層フィルムの線状溝を前記1又は複数の第2層のうちのいずれかの層の材料により充填する段階と、を備える包装袋の製造方法。
[項目18]前記周縁部内で前記包装袋に前記線状溝に沿ってノッチを形成する段階をさらに備える、項目17に記載の包装袋の製造方法。
[項目19]前記積層フィルムを形成する段階に先立って、前記第1層上に網点を印刷して印刷層を設ける段階をさらに備える、項目17に記載の包装袋の製造方法。
[項目20]前記印刷層を設ける段階では、酸化チタンを含む印刷インキを用いて印刷し、前記線状溝を形成する段階では、20~30WのCO2レーザ光を用いて前記第1層側から前記積層フィルム内の前記印刷層に光を照射して前記線状溝を形成する、項目19に記載の包装袋の製造方法。
[項目21]前記包装袋の一方の面上に位置する前記積層フィルムの線状溝は直線状であり、他方の面上に位置する前記積層フィルムの別の線状溝は一部湾曲する、項目17に記載の包装袋の製造方法。
[項目22]前記包装袋の一方の面上に位置する前記積層フィルムの線状溝と他方の面上に位置する前記積層フィルムの別の線状溝とは、少なくとも前記周縁部で重なる、項目17に記載の包装袋の製造方法。
[項目23]前記線状溝は、前記1又は複数の第2層のうちのシーラント層の材料により充填される、項目17に記載の包装袋の製造方法。
[項目24]易開封加工が施された包装袋であって、第1層と、前記第1層上に積層された1又は複数の第2層とを有し、前記第1層側に線状溝が形成された積層フィルムを少なくとも一面側に備え、前記積層フィルムの線状溝はシールされた周縁部内で前記1又は複数の第2層のうちのいずれかの層の材料により充填されている、包装袋。
[項目25]前記周縁部内で前記線状溝に沿って形成されたノッチを含む、項目24に記載の包装袋。
[項目26]前記積層フィルムは、さらに、前記第1層上に網点を印刷して形成される印刷層を有する、項目24に記載の包装袋。
[項目27]前記包装袋の一方の面上に位置する前記積層フィルムの線状溝は直線状であり、他方の面上に位置する前記積層フィルムの別の線状溝は一部湾曲する、項目24に記載の包装袋。
[項目28]前記包装袋の一方の面上に位置する前記積層フィルムの線状溝と他方の面上に位置する前記積層フィルムの別の線状溝とは、少なくとも前記周縁部で重なる、項目24に記載の包装袋。
[項目29]前記線状溝は、前記1又は複数の第2層のうちのシーラント層の材料により充填される、項目24に記載の包装袋。
[項目30]易開封加工が施された包装袋用フィルムの製造方法であって、第1層上に印刷層を設ける段階と、前記印刷層を介して前記第1層上に1又は複数の第2層を積層して積層フィルムを形成する段階であり、前記積層フィルムは、周縁部に、周縁部間領域に対して光吸収の弱い領域を含む又は周縁部に、周縁部間領域に対して前記第1層及び前記1又は複数の第2層の間の密着度の低い領域を含む、段階と、前記第1層側から前記積層フィルム内の前記印刷層に光を照射して、前記積層フィルムに線状溝を形成する段階と、を備える包装袋用フィルムの製造方法。
[項目31]前記印刷層を設ける段階では、前記第1層上に網点を印刷して前記印刷層を設け、前記印刷層は、前記周縁部に、前記周縁部間領域に対して低密度の網点を含む、項目30に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目32]前記印刷層を設ける段階では、前記第1層上の前記周縁部間領域に網点を印刷し、前記周縁部に均一に印刷して前記印刷層を設ける、項目30に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目33]前記印刷層を設ける段階では、酸化チタンを含む印刷インキを用いて印刷し、前記線状溝を形成する段階では、20~30WのCO2レーザ光を用いる、項目30に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目34]前記線状溝を形成する段階の後に、前記積層フィルムをロールする段階をさらに備える、項目30に記載の包装袋用フィルムの製造方法。
[項目35]項目30から34のいずれか一項に記載の包装袋用フィルムの製造方法により製造された包装袋用フィルムを前記周縁部にてシールして包装袋を形成する段階を備える包装袋の製造方法。
[項目36]前記周縁部内で前記線状溝に沿ってノッチを形成する段階をさらに備える、項目35に記載の包装袋の製造方法。
[項目37]前記包装袋の一方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの線状溝は直線状であり、他方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの別の線状溝は一部湾曲する、項目35に記載の包装袋の製造方法。
[項目38]前記包装袋の一方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの線状溝と他方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの別の線状溝とは、少なくとも前記周縁部で重なる、項目35に記載の包装袋の製造方法。
[項目39]易開封加工が施された包装袋用フィルムであって、第1層と、前記第1層上に設けられた印刷層と、前記印刷層を介して前記第1層上に積層された1又は複数の第2層とを有し、周縁部に、周縁部間領域に対して光吸収の弱い領域を含む又は周縁部に、周縁部間領域に対して前記第1層及び前記1又は複数の第2層の間の密着度の低い領域を含む積層フィルムを備え、前記第1層側から前記印刷層を介して前記積層フィルム内に線状溝が形成された、包装袋用フィルム。
[項目40]前記印刷層は、前記第1層上に網点を印刷することで設けられ、前記周縁部に、前記周縁部間領域に対して低密度の網点を含む、項目39に記載の包装袋用フィルム。
[項目41]前記印刷層は、前記第1層上の前記周縁部間領域に網点を印刷し、前記周縁部に均一に印刷することで設けられる、項目39に記載の包装袋用フィルム。
[項目42]項目39から41のいずれか一項に記載の包装袋用フィルムを用いて形成される包装袋。
[項目43]前記周縁部内で前記線状溝に沿って形成されたノッチを含む、項目42に記載の包装袋。
[項目44]前記包装袋の一方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの線状溝は直線状であり、他方の面上に位置する前記包装袋用フィルムの別の線状溝は一部湾曲する、項目42に記載の包装袋。
[項目45]前記包装袋の一方の面上に位置する前記積層フィルムの線状溝と他方の面上に位置する前記積層フィルムの別の線状溝とは、少なくとも前記周縁部で重なる、項目42に記載の包装袋。
【符号の説明】
【0100】
1…包装袋、1a…開口部、10,20,30…フィルム、14,24…印刷領域、15,25…線状溝、16a,16b,26a,26b…誘導溝、17a,17b…ノッチ、18a,18b,18c,18d,28a,28b,28c,28d…シール領域、30a…中央領域、30c,30d…シール領域、30e…切欠き、31…ファスナ、50…レーザ加工機、51…光源、52…反射素子、53…集光光学系、54…走査光学系、60…製袋装置、61…ファスナ取付器、62…裁断機、63…ヒートシール機、64…ノッチカッタ、65…裁断機、L30…基準線、LS…スポット、R…巻回機、S…包装袋用フィルム、S1,S2…フィルム、S100…包装袋用フィルムの製造工程、S11…PET層、S11a…ショルダ、S12…NY層、S13…PE層、S14…印刷層、S200…製袋工程。