(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】量子化器出力コードに基づくプリチャージを伴うデルタシグマコンバータ
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20231031BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H03M3/02
H03M1/12 C
(21)【出願番号】P 2020542942
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 US2019017412
(87)【国際公開番号】W WO2019157414
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-07
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】アミット クマール グプタ
(72)【発明者】
【氏名】ペン カオ
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07489263(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0082481(US,A1)
【文献】米国特許第08907829(US,B1)
【文献】特開2005-210182(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0065403(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/02
H03M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログデジタルコンバータ(ADC)デバイスであって、
デルタシグマ変調器であって、
少なくとも1つの積分器と、
前記少なくとも1つの積分器の出力を受け取るように構成される量子化器と、
各々が前記少なくとも1つの積分器の入力ノードに選択的に結合される、デジタルアナログコンバータ(DAC)コンデンサバンクとサンプリングコンデンサバンクとプリチャージコンデンサバンクとを含む、コンデンサモジュールと、
前記プリチャージコンデンサバンクに選択的に結合されるプリチャージ信号生成器であって、前記プリチャージコンデンサバンクを充電するためにプリチャージ信号を生成するように構成され
、前記プリチャージ信号が、式:プリチャージ信号=(量子化器出力コード×基準電圧×重み付け係数)/2
N-1
、によって与えられ、Nが前記量子化器内のビットの数に依存する、前記プリチャージ信号生成器と、
を有する、前記デルタシグマ変調器を含む、ADCデバイス。
【請求項2】
請求項
1に記載のADCデバイスであって、
前記重み付け係数が事前に定義された値である、デバイス。
【請求項3】
請求項
1に記載のADCデバイスであって、
前記重み付け係数が調節可能である、デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のADCデバイスであって、
前記プリチャージコンデンサバンクが、入力ノードと出力ノードとの間に並列に結合される複数のプリチャージコンデンサを含み、前記入力ノードと前記出力ノードとの間に並列に結合される前記複数のプリチャージコンデンサの量が調節可能である、ADCデバイス。
【請求項5】
請求項
4に記載のADCデバイスであって、
前記入力ノードと前記出力ノードとの間に並列に結合される前記複数のプリチャージコンデンサの量が、プログラム可能な利得信号に基づいて調節される、ADCデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のADCデバイスであって、
前記サンプリングコンデンサバンクが、入力ノードと出力ノードとの間に並列に結合される複数のサンプリングコンデンサを含み、前記入力ノードと前記出力ノードとの間に並列に結合される前記複数のサンプリングコンデンサの量が調節可能である、ADCデバイス。
【請求項7】
請求項
6に記載のADCデバイスであって、
前記入力ノードと前記出力ノードとの間に並列に結合される前記複数のサンプリングコンデンサの量が、プログラム可能な利得信号に基づいて調節される、ADCデバイス。
【請求項8】
請求項
7に記載のADCデバイスであって、
前記プリチャージコンデンサバンクの前記少なくとも1つの積分器の各入力ノードへの選択的結合と、前記サンプリングコンデンサバンクの前記少なくとも1つの積分器の各入力ノードへの選択的結合とを指令するように構成されるクロック位相生成器を更に含む、ADCデバイス。
【請求項9】
アナログデジタルコンバータ(ADC)デバイスであって、
デルタシグマ変調器であって、
差動積分器と、
前記差動積分器に結合される量子化器と、
第1の差動入力信号を受信する第1の差動入力信号ノードと、
第2の差動入力信号を受信する第2の差動入力信号ノードと、
第1のプリチャージ信号を受信する第1のプリチャージ信号ノードと、
第2のプリチャージ信号を受信する第2のプリチャージ信号ノードと、
前記
差動積分器の入力に結合されるプリチャージ回路
であって、
前記
差動積分器に結合される第1の端子と、第2の端子とを有する
第1のプリチャージコンデンサ
と、
前記差動積分器に結合される第1の端子と、第2の端子とを有する第2のプリチャージコンデンサと、
前記第1のプリチャージ信号ノードと前記第1のプリチャージコンデンサの第2の端子との間に結合される第1のスイッチと、
前記第2のプリチャージ信号ノードと前記第2のプリチャージコンデンサの第2の端子との間に結合される第2のスイッチと、
前記第1の差動入力信号ノードと前記第1のプリチャージコンデンサの第2の端子との間に結合される第3のスイッチと、
前記第2の差動入力信号ノードと前記第2のプリチャージコンデンサの第2の端子との間に結合される第4のスイッチと、
を含む、前記プリチャージ回路と、
含む、前記デルタシグマ変調器を含み、
前記第1及び第2のスイッチが、前記デルタシグマ変調器のためのサンプリング位相の第1の部分の間に
閉じており、前記デルタシグマ変調器
のための積分位相の間に
開いており、
前記第3及び第4のスイッチが、前記デルタシグマ変調器のための前記サンプリング位相の第2の部分の間に
閉じており、前記デルタシグマ変調器のための前記積分位相の間に開いている、ADCデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のADCデバイスであって、
前記プリチャージ回路が、
前記第1及び第2の
プリチャージコンデンサの第2の端子に結合される第5のスイッチと、
前記第1の
プリチャージコンデンサの第1の端子と前記差動積分器との間に結合される第6のスイッチと、
前記第2
のプロチャージコンデンサの第1の端子と前記差動積分器との間に結合される7のスイッチと、
を更に含み、
前記第5、第6及び第7のスイッチが、前記デルタシグマ変調器のサンプリング位相の間に開いており、前記デルタシグマ変調器の積分位相の間に閉じている、ADCデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のADCデバイスであって、
前記プリチャージ回路が、前記第1
のプリチャージコンデンサと前記第2
のプリチャージコンデンサの第1の端子との間に結合される第8のスイッチを更に含み、
前記第8のスイッチが、前記デルタシグマ変調器の積分位相の間に開かれ、前記デルタシグマ変調器のサンプリング位相の間に閉じられる、ADCデバイス。
【請求項12】
アナログデジタル変換方法であって、
アナログ入力信号を受け取ることと、
デルタシグマ変調器サンプリング位相と積分位相とに基づいて前記アナログ入力信号に関する出力コードをつくることと、
前記出力コードに基づいてプリチャージ信号を生成すること
であって、前記プリチャージ信号が、式:プリチャージ信号=(前記出力コード×基準電圧×重み付け係数)/2
N-1
、によって与えられ、Nが前記出力コードのビットの数に依存する、前記生成することと、
前記生成されたプリチャージ信号に基づいて後続のデルタシグマ変調器サンプリング位相のためのプリチャージオペレーションを行うことと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記プリチャージオペレーションを行うことが、
前記プリチャージ信号に基づいてプリチャージコンデンサバンクを充電するために、前記サンプリング位相の第1の部分の間に
前記プリチャージコンデンサバンクに関連する第1のセットのスイッチを閉じることと、
前記サンプリング位相の第2の部分の間に前記第1のセットのスイッチを開くことと、
前記プリチャージコンデンサバンクをアナログ入力信号ノードに放電するために、前記サンプリング位相の第2の部分の間に前記プリチャージコンデンサバンクに関連する第2のセットのスイッチを閉じることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
異なる電気システム、又は電気システムを備える異なる構成要素は、アナログ信号又はデジタル信号で動作する。従って、デジタル信号をアナログ信号に及びその逆に変換することが継続的に必要とされている。アナログデジタルコンバータ(ADC)の場合、アナログ入力信号がサンプリングされて、各サンプルについて表現するデジタル値が得られる。現在、データレート、電力消費、精度、解像度などの変動と共に利用可能な、多くの異なるADCのデバイストポロジー及び製品がある。
【0002】
ADCトポロジーの一つのタイプは、デルタシグマ(ΔΣ)トポロジーと呼ばれる。ΔΣトポロジーにおいて、入力信号はΔΣ変調器によってオーバーサンプリングされ、ΔΣ変調器の出力は、デジタル/デシメーションフィルタを通過して高解像度データストリーム出力を生成する。サンプリングレートは、典型的に、デジタル/デシメーションフィルタのデジタル出力よりも数百倍速い。従って、ΔΣトポロジーでは、個々のサンプルが時間にわたって蓄積され、デジタル/デシメーションフィルタを介して他の入力信号サンプルと「平均」される。
【0003】
ADCデバイスが、より大きな電気システムの一部として含まれる場合、ADC入力による負荷がソースに与える影響を考慮する必要がある。例示の電気システムにおいて、ストレージ及び/又は分析のためにセンサのアナログ出力信号をデジタル信号に変換するために、ADCデバイスとともにセンサが用いられる。ADCデバイスが、高出力インピーダンスのソースから来る入力信号と確実に互換性があるようにするのを助けるため(例えば、高出力インピーダンスを備える受動センサからのアナログ出力信号が、ADCデバイスへの入力信号である場合)、ADCデバイストポロジーには、サンプリングのため、入力信号を増幅するかそれ以外の方式で入力信号の準備をするバッファを含むものがある。困ったことに、バッファベースのADCデバイストポロジーは、ADCコスト及びレイアウトサイズを増大させる。また、バッファは、電力消費を増やし、ADCノイズを増やす。高ソースインピーダンスの入力信号に関与するADCの場合、単にバッファをなくすことは実用可能な解決策ではない。ADC設計を改善し、市場性のあるADCのデバイスを提供する取り組みが進行中である。
【発明の概要】
【0004】
少なくとも本開示の一例に従って、アナログデジタルコンバータ(ADC)デバイスが、少なくとも1つの積分器を有するデルタシグマ変調器と、少なくとも1つの積分器の出力を受け取るように構成される量子化器とを含む。また、デルタシグマ変調器は、各々が少なくとも1つの積分器の入力ノードに選択的に結合される、デジタルアナログコンバータ(DAC)コンデンサバンク、サンプリングコンデンサバンク、及びプリチャージコンデンサバンクを含む。また、デルタシグマ変調器は、プリチャージコンデンサバンクに選択的に結合されるプリチャージ信号生成器を含む。プリチャージ信号生成器は、量子化器の出力コードに少なくとも部分的に基づいてプリチャージコンデンサバンクを充電するためプリチャージ信号を生成するように構成される。
【0005】
本開示の少なくとも一例に従って、ADCデバイスが、積分器と、積分器の入力に結合されるプリチャージ回路とを有する、デルタシグマ変調器を含む。プリチャージ回路は、積分器に結合される第1の端子とスイッチを介してプリチャージ信号ノードに結合される第2の端子とを備える、プリチャージコンデンサを含む。デルタシグマ変調器のためのサンプリング位相の第1の部分の間、プリチャージ信号ノードは、プリチャージ信号をプリチャージコンデンサに搬送するように構成され、プリチャージ信号は、デルタシグマ変調器に関連する量子化器出力コードに少なくとも部分的に基づいている。デルタシグマ変調器のためのサンプリング位相の第2の部分の間、プリチャージコンデンサは入力信号ノードに結合される。
【0006】
本開示の少なくとも一例に従って、ADC方法が、アナログ入力信号を受信することを含む。また、この方法は、デルタシグマ変調器サンプリング位相及び積分位相に基づいて、アナログ入力信号に関連する出力コードを生成することを含む。また、この方法は、出力コードに基づいてプリチャージ信号を生成することを含む。また、この方法は、生成されたプリチャージ信号に基づいて、後続のデルタシグマ変調器サンプリング位相のためのプリチャージオペレーションを行うことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】種々の例に従った、アナログデジタルコンバータ(ADC)モジュールのブロック図を示す。
【0008】
【
図2】種々の実施例に従った、デルタシグマ変調器に対する種々の構成要素の概略図を示す。
【0009】
【
図3】種々の例に従った、デルタシグマ変調器に対する制御信号のタイミング図を示す。
【0010】
【
図4】種々の例に従ったADコンバータデバイスのブロック図を示す。
【0011】
【
図5】種々の事例に従った、ADC方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示される例は、量子化器出力コードに基づくプリチャージを採用する、デルタシグマ(ΣΔ)アナログデジタルコンバータ(ADC)トポロジー、デバイス、及び、方法に向けられている。例示のデルタシグマADCトポロジーには、デルタシグマ変調器及びフィルタが含まれる。より具体的には、例示のデルタシグマ変調器が、サンプリング回路と、1つ又は複数の積分器と、量子化器と、デジタルアナログコンバータ(DAC)とを含み、DAC出力は、サンプリングされるアナログ入力信号と組み合わされる。例示のデルタシグマADCトポロジーでは、量子化器からの出力コードは、本明細書に記載されるようにプリチャージオペレーションのために用いられる。出力コードはフィルタにも供給され、フィルタ出力はADC出力に対応する。
【0013】
少なくとも幾つかの例において、プリチャージプロセスは、量子化器出力コード及び基準電圧に基づいてプリチャージ信号を生成することを含む(例えば、プリチャージ信号=ビットストリーム×基準電圧)。また、幾つかの例において、プリチャージ信号は、システム/構成要素変動を考慮するように重み付けされる(例えば、プリチャージ信号=ビットストリーム×基準電圧×重み付け係数)。生成されたプリチャージ信号は、デルタシグマ変調器のサンプリング位相の第1の部分の間、(例えば、プリチャージコンデンサバンクをプリチャージ信号ノードに結合することによって)プリチャージコンデンサバンクに印加される。デルタシグマ変調器のサンプリング位相の第2の部分において、プリチャージコンデンサバンクは、プリチャージ信号ノードの代わりにアナログ入力信号ノードに結合される。デルタシグマ変調器のサンプリング位相の第1の部分の間、アナログ入力信号ノードからの電荷移動は、概して、デルタシグマ変調器のサンプリング位相の第2の部分においてプリチャージコンデンサバンクからアナログ入力信号ノードに戻された電荷に等しい。従って、デルタシグマ変調器のサンプリング位相の間のプリチャージコンデンサバンク及び戦略的なスイッチングを用いること(例えば、サンプリング位相の第1の部分においてプリチャージ信号ノードに結合されることから、サンプリング位相の第2の部分においてアナログ入力信号ノードに結合されることへ切り替えること)で、アナログ入力信号ノードにおいて引き出される平均電流が減少し、その結果、プリチャージなしのデルタシグマADCトポロジーと比較して、入力インピーダンスがより高いデルタシグマADCトポロジーが得られる。本明細書に記載されるプリチャージ方式は、シングルビット量子化器又はマルチビット量子化器を備えるデルタシグマ変調器に対して機能する。よりよい理解のため、ビットストリーム(シングルビット量子化器)に基づくプリチャージを含む、種々のADCモジュール、デバイス、及び方法オプションについて、下記のように図を用いて説明する。
【0014】
図1は、種々の例に従ったADCモジュール100のブロック図を示す。図示されているように、ADCモジュール100は、フィルタ150に結合されるデルタシグマ変調器102を含む。より具体的には、デルタシグマ変調器102は積分器104を含む。積分器104の出力は、付加的な積分段を実施する任意の次段ブロック140に提供される。幾つかの例において、デルタシグマ変調器102は1つの集積段を採用する。他の例において、デルタシグマ変調器102は、2つ又はそれ以上の積分段を採用する。積分器104又は次段ブロック140からの出力は、量子化器142に供給され、量子化器142は、デジタル出力コードを生成する。幾つかの例において、量子化器142は、量子化器142への入力の符号(+又は-)に応じて、正又は負の値を出力するコンパレータである。量子化器142からの出力コードは、量子化器142からの出力コードをフィルタリング及びダウンサンプリングするフィルタ150に供給されて、ADCモジュール100のための出力が提供される。単一コンパレータを用いるシングルビット量子化器の場合、出力コードは、典型的にはビットストリームと呼ばれる。
【0015】
量子化器142からの出力コードは、プリチャージ信号生成器112にも供給される。シングルビットの例では、プリチャージ信号生成器112は、ビットストリームにADCモジュール100のための基準電圧(V_REF)を掛けることによって、プリチャージ信号を生成するように動作する。必要に応じて、重み付け係数(α)も、プリチャージ信号生成器112によって印加される(例えば、プリチャージ信号=ビットストリーム×V_REF×α)。プリチャージ信号は、スイッチ128を介してプリチャージコンデンサバンク110に印加される。異なる例において、プリチャージコンデンサバンク110は、1つのコンデンサ又は並列の複数コンデンサを含む。幾つかの例において、プリチャージコンデンサバンク110は、並列コンデンサのどれがその入力ノード170及び出力ノード172に結合されるかを変更するためのスイッチも含む。一例において、プリチャージコンデンサバンク110のための異なる組み合わせの並列コンデンサが、調節可能(プログラム可能)な利得選択信号に基づいて選択される。
【0016】
図1に表わされるように、デルタシグマ変調器102は、また、サンプリングコンデンサバンク108を含む。異なる例において、サンプリングコンデンサバンク108は、1つのコンデンサ又は並列の複数コンデンサを含む。幾つかの例において、サンプリングコンデンサバンク108は、並列コンデンサのどれがその入力ノード174及び出力ノード176に結合されるかを変更するためのスイッチも含む。一例において、サンプリングコンデンサバンク108のための異なる組み合わせの並列コンデンサが、調節可能(プログラマブル)な利得選択信号に基づいて選択される。
【0017】
デルタシグマ変調器102のサンプリング位相の間、スイッチ130が閉じて、アナログ入力信号ノード178においてサンプリングコンデンサバンク108にアナログ入力信号を提供する。少なくとも幾つかの例において、デルタシグマ変調器102のためフィードバックループにおけるDACコンデンサバンク144によってデルタシグマフィードバックが提供される。サンプリング位相の間、サンプリングコンデンサバンク108は、アナログ入力信号に基づいて充電される。加えて、サンプリング位相の第1の部分の間、プリチャージ信号生成器112によって提供されるプリチャージ信号に基づいて、スイッチ128が閉じてプリチャージコンデンサバンク110の充電を可能にする。
【0018】
サンプリング位相の第2の部分の間、スイッチ130は閉じたままであり、スイッチ128は開き、スイッチ132は閉じている。従って、サンプリング位相の第2の部分において、プリチャージコンデンサバンク110は、スイッチ130が閉じている一方で、アナログ入力信号ノード178に結合し、その結果、サンプリング位相の第1の部分においてプリチャージコンデンサバンク110によって取得された電荷の少なくとも一部が、アナログ入力信号線114に渡される。
【0019】
デルタシグマ変調器102の積分位相において、スイッチ128、130、及び132は開いている。一方、サンプリング位相の間開いているスイッチ120、122、及び123は、積分位相の間閉じている。積分位相の場合、積分器104は、(例えば、スイッチ120、122、及び123を閉じることによって)サンプリングコンデンサバンク108、DACコンデンサバンク144、及びプリチャージコンデンサバンク110に結合される。オペレーションにおいて、積分器104は、フィルタ150による後の除去のため、量子化ノイズをより高い周波数にシフトさせる。
【0020】
図1において、種々のスイッチ(例えば、スイッチ120、122、123、128、130、132)は、前述した異なる変調器位相(例えば、積分位相、サンプリング位相、サンプリング位相の第1の部分、サンプリング位相の第2の部分)に基づいて、各スイッチにオン/オフ制御信号を提供するデルタシグマ変調器クロック位相生成器134によって指令される。そのため、異なるスイッチはサンプリング位相スイッチに(例えば、スイッチ128及び130は、サンプリング位相の間閉じられる)に、積分位相スイッチ(例えば、スイッチ120、122、及び123は、積分位相の間閉じられる)に、サンプリング位相スイッチの第1の部分(例えば、スイッチ128は、サンプリング位相の第1の部分の間閉じられる)に、及びサンプリング位相スイッチの第2の部分(例えば、スイッチ132は、サンプリング位相の第2の部分の間閉じられる)に対応する。
【0021】
幾つかの例において、デルタシグマ変調器構成要素のオペレーション(例えば、クロック位相生成器134)及び/又はADCモジュール100の他の構成要素は、ADCモジュール100及び/又はストアされる命令に提供される外部制御信号152に基づいて調節可能である。一例において、デルタシグマ変調器102のための、サンプリング位相、サンプリング位相の第1の部分、サンプリング位相の第2の部分、積分位相のタイミングは、調節可能である。また、幾つかの例において、デルタシグマ変調器102及びフィルタ150を備えるADCモジュール100は、差動シグナリングの場合において用いられる。
【0022】
図2は、種々の実施例に従った、デルタシグマ変調器200(例えば、
図1のデルタシグマ変調器102)に対する種々の構成要素の概略図を示す。より具体的には、デルタシグマ変調器200のための構成要素は、差動シグナリングの場合のために配置される。図示されるように、デルタシグマ変調器200は、差動積分器104A(
図1における積分器104の一例)、種々のコンデンサ(C1~C8)、種々のスイッチ(S1~S20)、及び種々の信号ノード(N1~N10)を含む。デルタシグマ変調器200の場合、プリチャージオペレーションが、本明細書で説明されるようにビットストリームに基づく。
図2のデルタシグマ変調器200のために表される構成要素と、
図1のデルタシグマ変調器102のために表される種々の構成要素との間の関係の説明を以下に示す。
【0023】
図2において、C2及びC3は、サンプリングコンデンサバンクの構成要素(例えば、
図1のサンプリングコンデンサバンク108を参照)に対応し、C1及びC4は、DACコンデンサバンクの構成要素(例えば、
図1のDACコンデンサバンク144を参照)に対応し、C7及びC8は、プリチャージコンデンサバンク構成要素(例えば、
図1のプリチャージコンデンサバンク110を参照)に対応する。また、S1~S8は、積分位相スイッチ(例えば、
図1のスイッチ120、122、及び123を参照)に対応し、S9~16は、サンプリング位相スイッチ(例えば、
図1のスイッチ130を参照)に対応し、S17及びS18は、サンプリング位相スイッチの第1の部分(例えば、
図1のスイッチ128を参照)に対応し、S19及びS20は、サンプリング位相スイッチの第2の部分(例えば、
図1のスイッチ132を参照)に対応する。
【0024】
デルタシグマ変調器200のサンプリング位相の間、以下のように、サンプリング位相制御信号(φ_SMP)を用いて種々のキャパシタが充電又は放電される。サンプリング位相の間S9が閉じられると、C1はN2に結合し、その結果、N2で利用可能な信号REFCM(共通モード基準)に基づいてC1が充電される。サンプリング位相の間S10が閉じられると、C2はN3に結合し、その結果、C2は、N3で利用可能な信号INP(第1の差動アナログ入力信号)に基づいて充電される。サンプリング位相の間S11が閉じられると、C3はN4に結合し、その結果、C3は、N4で利用可能な信号INN(第2の差動アナログ入力信号)に基づいて充電される。サンプリング位相の間S2が閉じられると、C4はN5に結合し、その結果、C4は、N5で利用可能な信号REFCM(ADC基準電圧に対応する共通モード基準)に基づいて充電される。サンプリング位相の間S14及びS15が閉じられると、同相信号(INCM、積分器104Aのための入力共通モードに対応する)が、C1~C4のそれぞれの端子に提供される。サンプリング位相の間S16が閉じられると、C7とC8のそれぞれの端子が結合される。
【0025】
サンプリング位相の間、サンプリング位相制御信号の第1の部分(φ_SMP1)が、種々のプリチャージオペレーションを制御するために用いられる。より具体的には、サンプリング位相の第1の部分の間S17が閉じられると、C7はN7に結合し、その結果、C7は、N7で利用可能な信号b×V_REF×αに基づいて充電される。また、サンプリング位相の第1の部分の間S18が閉じられると、C8はN10に結合し、その結果、C8は、N10で利用可能な信号-1×b×V_REF×αに基づいて充電される。シングルビット変調器の場合、bは+1又は-1とすることができる。Nビット量子化器を備える変調器の場合、出力コード(OC)は-2N-1から+2N-1まで変化する。そのような場合、N7上のプリチャージ信号はOC×V_REF×α×21-Nであり、N10上のプリチャージ信号は-1×OC×V_REF×α×21-Nである。
【0026】
図2において、C1及びC4は、単一ユニット要素を備えるシングルビットフィードバックDAC(
図1におけるDACコンデンサバンク144の例)を表す。Nビット量子化器の場合、フィードバックDAC(
図1におけるDACコンデンサバンク144の一例)は、2
Nユニット要素でNビットである必要がある。
図2に表される1ビット量子化器において、C1とC4及びそれぞれのスイッチS1、S9、S12、及びS3が、シングルビットオペレーションに用いられる。2ビット量子化器の場合、C1は4つの同一コンデンサで置換され、関連するスイッチが用いられ得る。C1の差動対応物であるC4は、4つの同一のコンデンサで同様に置換され得、関連するスイッチが用いられ得る。3ビット量子化器の場合、C1とC4の各々が、8コンデンサと関連するスイッチで置換される。少なくとも幾つかの例において、プリチャージコンデンサバンク構成要素は、DACコンデンサバンク構成要素の複製である。従ってNビット量子化器の場合、それぞれのプリチャージコンデンサバンク(例えば、プリチャージコンデンサバンク110)は、同じ出力コード及びフィードバックDACへの基準を用いてプリチャージされる2
Nユニット要素を有し得る。
【0027】
前述のように、プリチャージ信号はαに基づいて調節可能である。理想的な回路の場合、α=1となる。実際の回路設計では、有限の電荷注入及びスイッチからのクロックフィードスルーにより、何らかの付加的な電荷が入力源に伝達され、非常に高いインピーダンスを達成するためにはαを調節する必要がある。
【0028】
サンプリング位相における後の時間において、プリチャージオペレーションを完了するためにサンプリング位相制御信号の第2の部分(φ_SMP2)が用いられる。より具体的には、サンプリング位相の第2の部分の間S19が閉じられると、C7はN8(第1の差動アナログ入力信号ノード)に結合し、その結果、C7はその電荷をサンプリング位相の第1の部分からN8に放電する(注:N3とN8は、同じであるか又は共に結合される)。同様に、サンプリング位相の第2の部分の間S20が閉じられると、C8はN9(第2の差動アナログ入力信号ノード)に結合し、その結果、C8はその電荷をサンプリング位相の第1の部分からN9に放電する(注記、N4とN9は、同じであるか又は共に結合される)。
【0029】
デルタシグマ変調器200の積分位相の間、以下のように積分位相制御信号(φ_INT)を用いて種々のコンデンサが充放電される。積分位相の間S1が閉じられると、C1はN1に結合し、その結果、C1は、N1で利用可能な信号b×V_REFに基づいて充電される。積分位相の間S3が閉じられると、C4はN6に結合し、その結果、C4は、N6で利用可能な信号-1×b×V_REFに基づいて充電される。積分位相の間S1、S2、S3、S4、及びS5が閉じられると、C1~C4はそれぞれの電荷を差動積分器104Aに供給する。同様に、積分位相の間S6、S7、及びS8が閉じられると、C7及びC8はそれぞれの電荷を差動積分器104Aに供給する。
図3は、種々の例に従ったデルタシグマ変調器に対する制御信号のタイミング
図300を示す。図示のように、制御信号は、
図2において紹介されたφ_SMP、φ_INT、φ_SMP1、及びφ_SMP2を含む。タイミング
図300の場合、各制御信号の高状態は、関連するスイッチを閉じることに対応し、各制御信号の低状態は、関連するスイッチを開くことに対応する。タイミング
図300に示すように、φ_SMPが高状態にあるとき、φ_INTは低状態にあり、その逆も同様である。同様に、φ_SMP1が高状態にあるとき、φ_INTは低状態にあり、その逆も同様である。同様に、φ_SMP2が高状態にあるとき、φ_INTは低状態にあり、その逆も同様である。少なくとも幾つかの例において、φ_INTと他の制御信号(φ_SMP、φ_SMP1、φ_SMP2)のエッジの間にいくらかのオフセットがある。図示のように、φ_SMP1の高状態は、φ_SMPの高状態の第1の部分と重なる。また、φ_SMP2の高状態は、φ_SMPの高状態の第2の部分と重なる。φ_SMP1、φ_SMP2は重ならない信号である。
【0030】
図4は、種々の例に従ったADCデバイス400のブロック図を示す。図示されるように、ADCデバイスは種々のADCモジュール100A~100Hを含み、ADCモジュール100A~100Hの各々は、
図1のADCモジュール100の一例である。異なるADCのデバイス例において、ADCモジュールの数は変化する。ADCデバイス400はまた、V_REFを提供するための電圧基準を含む種々の構成要素を含み、V_REFはモジュール100A~100Hの各々に提供される。ADCモジュール100A~100Hの各々は、それぞれの信号線を介して受け取ったアナログ入力をデジタル化するように動作する。
図4の例では、MUX404が内部及び/又は外部信号をADCチャネルに配路する。他の例において、MUX404は省かれる。また、ADCデバイス400は、ADCモジュール100A~100Hからのデジタル出力を受信、格納、及び/又は分析するコントローラ402を含む。異なる例において、コントローラ402のオペレーション及びクロックレート(発振器406に基づく)は変化する。デジタルシグナリングを介して他の構成要素と通信するために、ADCデバイス400は、シリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)及び種々の入力/出力(
図4にGPIO及び制御と標示されている)を含む。
【0031】
幾つかの例において、ADCデバイス400は、アナログセンサ出力をデジタル化するために用いられる。必要に応じて、デジタル化されたセンサ出力は、コントローラ402によってストア及び分析されるか、又は外部ストレージ及び/又は処理構成要素に搬送される。ADCモジュール100A~100Hの各々に対するトポロジー及びプリチャージオペレーションにより、入力信号バッファが回避される。入力信号バッファを回避することで、ADCデバイス400のサイズとコストが低下する。また、ビットストリームに基づくプリチャージオペレーションは、他のADCデバイストポロジーと比較して、より高い入力インピーダンスを有するADCモジュール100A~100Hをもたらす。ADCモジュール100A~100Hのより高い入力インピーダンスにより、ADCデバイス400は、ADCデバイス400に接続されるソースのインピーダンス(例えば、受動センサからのアナログセンサ出力信号)が高い場合においても使用可能である。
【0032】
図5は、種々の例に従ったADC方法500のフローチャートを示す。図示のように、ADC方法500は、ブロック502でアナログ入力信号を受信することを含む。ブロック504において、アナログ入力信号に関連する量子化器出力コードが、デルタシグマ変調器サンプリング位相(例えば、φ_SMP)及び積分位相(例えば、φ_INT)に基づいて生成される。ブロック506において、量子化器出力コードに基づいてプリチャージ信号が生成される。幾つかの例において、ブロック506でプリチャージ信号を生成することは、量子化器出力コードに基準電圧を掛けること(例えば、OC×V_REF)を含む。他の例において、ブロック506でプリチャージ信号を生成することは、量子化器出力コードに基準電圧及び重み係数を掛けること(例えば、OC×V_REF×α)を含む。注:ブロック506でプリチャージ信号を生成することは、デルタシグマ変調器DACのオペレーションとは別個のプロセスである。
【0033】
ブロック508において、生成されたプリチャージ信号に基づいて、後続のデルタシグマ変調器サンプリング位相のためのプリチャージオペレーションが行われる。幾つかの例において、ブロック508のプリチャージオペレーションは、プリチャージ信号に基づいてプリチャージコンデンサバンク(例えば、プリチャージコンデンサバンク110)を充電するために、サンプリング位相の第1の部分(例えば、φ_SMP1)の間に、プリチャージコンデンサバンク(例えば、110)に関連する、スイッチの第1のセット(例えば、
図1のスイッチ128、又は
図2のS17、S18)を閉じることを含む。幾つかの例において、ブロック508のプリチャージオペレーションはまた、サンプリング位相の第2の部分(例えば、φ_SMP2)の間に、スイッチの第1のセット(例えば、
図1のスイッチ128、又は
図2のS17、S18)を開くこと、及び、プリチャージコンデンサバンクをアナログ入力信号ノード(例えば、
図1の178、又は
図2のN8及びN9)に放電するために、サンプリング位相の第2の部分(例えば、φ_SMP2)の間に、プリチャージコンデンサバンク(例えば、プリチャージコンデンサバンク110)に関連する、スイッチの第2のセット(例えば、
図1のスイッチ132、又はS19、S20)を閉じることを含む。
【0034】
本記載において、「結合する(“couple” or “couples”)」という用語は、間接的又は直接的な有線又はワイヤレス接続のいずれかを意味する。そのため、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接接続を介するもの、又は、他のデバイス及び接続を介した間接的接続を介するものであり得る。また、本記載において、「~に基づく」は、「少なくとも部分的に~に基づく」ことを意味する。従って、XがYに基づく場合、Xは、Y及び任意の数の他の要因の関数であり得る。
【0035】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。幾つかの例において、本明細書に記載のプリチャージオペレーション(出力コードに基づくプリチャージ)は、デルタシグマ変調器を採用しないADCの場合に適用される。