(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】粘着組成物、粘着組成物の製造方法及び粘着組成物を用いた物品
(51)【国際特許分類】
C09J 153/00 20060101AFI20231031BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20231031BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20231031BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231031BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20231031BHJP
C09J 125/08 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C09J153/00
A61F13/51
A61F13/514
C09J11/04
C09J153/02
C09J125/08
(21)【出願番号】P 2020109781
(22)【出願日】2020-06-25
(62)【分割の表示】P 2019185099の分割
【原出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000143086
【氏名又は名称】株式会社光洋
(73)【特許権者】
【識別番号】501350970
【氏名又は名称】日本シーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】白井 敦子
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆三
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 秀幸
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101698111(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0108386(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
A61F 13/15-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性消臭剤と、抗菌剤と、粘着基剤と、を含み、
前記多孔性消臭剤は、亜鉛を含み、
前記抗菌剤は、銀を含み、
前記多孔性消臭剤の含有量は、0.25質量%以上であり、
前記抗菌剤の含有量は、0.1質量%以上であ
り、
前記粘着基剤は、スチレン-イソプレン-スチレンブロックポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性エラストマーを含む、
粘着組成物。
【請求項2】
前記多孔性消臭剤の含有量は、0.4質量%以上であり、
前記抗菌剤の含有量は、0.15~0.5質量%である、
請求項1に記載の粘着組成物。
【請求項3】
軟化点が70℃より高い、請求項1又は請求項2に記載の粘着組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れか1項に記載の粘着組成物を製造する方法であって、
前記多孔性消臭剤及び/又は前記抗菌剤を含むマスターバッチを、該マスターバッチに含まれる粘着基剤成分以外の粘着基剤成分と混合する工程を含むことを特徴とする、粘着組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~請求項
3の何れか1項に記載の粘着組成物により、少なくとも2つの層が互いに接合している積層構造部を備えることを特徴とする物品。
【請求項6】
前記積層構造部を有する体液吸収用物品である、請求項
5に記載の物品。
【請求項7】
体液吸収用物品であって、
粘着組成物により、少なくとも2つの層が互いに接合している積層構造部を備え、
前記粘着組成物は、多孔性消臭剤と、抗菌剤と、粘着基剤と、を含み、
前記多孔性消臭剤は、亜鉛を含み、
前記抗菌剤は、銀を含み、
前記多孔性消臭剤の含有量は、0.25質量%以上であり、
前記抗菌剤の含有量は、0.1質量%以上である、
体液吸収用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着組成物、粘着組成物の製造方法及び粘着組成物を用いた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生活空間における悪臭を効果的に除去するために、様々な形態の消臭剤がこれまでに提案されてきた。その中でも消臭剤を添加した粘着組成物は、物品を接着させる機能と消臭機能を併せ持つことから有用である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、消臭機能に加え抗菌機能も備えることが衛生面から求められている。しかし、銀等を用いた抗菌剤は一般的に高価であり、その使用量を低減することが必要である。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、高価な抗菌剤の使用量を抑えつつ、優れた消臭効果及び抗菌効果を有する接着組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、多孔性消臭剤と、抗菌剤と、粘着基剤と、を含み、前記多孔性消臭剤の含有量は、0.25質量%以上であり、前記抗菌剤の含有量は、0.1質量%以上である、粘着組成物が提供される
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、所定量以上の抗菌剤と多孔性消臭剤を組み合わせて用いた場合に消臭効果及び抗菌効果に優れることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、少なくとも抗菌効果において、消臭剤と抗菌剤各々の効果を単純に合わせた場合に想定される効果よりも大きい効果が得られることがわかった。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記多孔性消臭剤の含有量は、0.4質量%以上であり、前記抗菌剤の含有量は、0.15~0.5質量%である。
好ましくは、前記多孔性消臭剤は、亜鉛を含む。
好ましくは、前記抗菌剤は、銀を含む。
好ましくは、前記粘着組成物は、軟化点が70℃より高い。
好ましくは、前記粘着基剤は、スチレン-イソプレン-スチレンブロックポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性エラストマーを含む。
【0009】
本発明の別の観点によれば、上記粘着組成物を製造する方法であって、前記多孔性消臭剤及び/又は前記抗菌剤を含むマスターバッチを、該マスターバッチに含まれる粘着基剤成分以外の粘着基剤成分と混合する工程を含むことを特徴とする、粘着組成物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の別の観点によれば、上記粘着組成物により、少なくとも2つの層が互いに接合している積層構造部を備えることを特徴とする物品が提供される。
好ましくは、前記積層構造部を有する体液吸収用物品である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】粘着組成物を使用した体液吸収用物品の好ましい形態を示す断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0013】
1.粘着組成物
本発明の一実施形態に係る粘着組成物は、多孔性消臭剤と、抗菌剤と、粘着基剤と、を含む。
【0014】
(多孔性消臭剤)
多孔性消臭剤としては、特に制限されず、活性炭、イオン交換樹脂、ドロマイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、二酸化チタン、シラスバルーン、モレキュラーシーブ、安山岩質、石英安山岩質、流紋岩質、頁岩質、砂岩質、レキ岩質、軽石凝灰岩、泥岩、砂利、砂、シルト、粘土や火山灰、多孔質岩石、スコリア、スコリア凝灰岩、スコリアを含有する物質、焼成パーライト、焼成黒曜石、焼成軽石、バーミュキュライト、珪藻土、雲母、サンゴ砂、シーシェル、麦飯石、人工軽石、人工砂利、人工砂、人工骨材、多孔質ガラス、中空ガラス、多孔質ブロック、陶磁器、ゼオライト、シリカ、シリカゲル、木炭、活性炭、炭、コークス、フライアッシュ、高炉スラッグ、発砲コンクリート(ALC)、軽量コンクリート等を必要に応じて造粒・成形したものなどが挙げられる。
【0015】
多孔性消臭剤としては特にゼオライトを好適に例示することができる。また、多孔性消臭剤は、亜鉛を含むことが好ましい。一方、コストの観点からは、銀を含まないことが好ましい。具体的には、亜鉛などの金属イオンを担持させたゼオライトを用いることが好ましい。中でも、おむつ等の製品に使用するという観点から、亜鉛イオンを担持させたゼオライト(以下、亜鉛イオン坦持ゼオライトという)を用いることが好ましい。消臭剤に亜鉛イオン坦持ゼオライトを用いることで製造時の加熱や粘着基剤との化学反応による変色が生じないため、着色のない粘着組成物を提供することができる。なお、金属イオンを担持させたゼオライトの一態様としては、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部又は全部が金属イオンで置換されてなるゼオライトが挙げられる。
【0016】
また、多孔性消臭剤としては、アンモニア、硫化水素、メルカプタン化合物等の何れか又はすべてを吸着、分解することにより消臭効果を奏するものであることが好ましい。
また、多孔性消臭剤は、白色または淡色であることが、製品化の観点から好ましい。
【0017】
また、多孔性消臭剤の平均粒径の下限は、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上を目安とすることができる。平均粒径が下限以上である多孔性消臭剤を用いることで、粘着組成物中の多孔性消臭剤の凝集が生じにくい。
【0018】
また、多孔性消臭剤の平均粒径の上限は、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下とする。平均粒径が上限以下である多孔性消臭剤を用いることで、粘着組成物中の消臭剤の塗布装置のノズルやホース、ダストフィルター内での付着、沈殿が生じにくい。すなわち、塗布装置で消臭剤の搬送ロスが軽減するため、一定量の消臭剤塗布が確実に実現し、また機器内部の消臭剤除去(清掃)の手間や費用が削減できる。なお、多孔性消臭剤の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定法に従い測定することができる。
【0019】
多孔性消臭剤の含有量は、消臭効果及び抗菌効果の観点から、粘着組成物全体に対して、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上である。
また、多孔性消臭剤の含有量は、塗布適性及び接着適性の観点から、粘着組成物全体に対して、好ましくは20質量%以下である。また、多孔性消臭剤の含有量は、コスト等の観点も考慮すると、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下とする。
【0020】
(抗菌剤)
抗菌剤としては、抗菌作用を有するものであれば特に制限されないが、銀、銅等の金属を含むものが好ましい。中でも抗菌効果、人体に対する低毒性、及び入手の容易性の観点から、銀を含むものが好ましい。また、これらの金属イオンを担持させたゼオライトを用いることが好ましい。ゼオライトを用いることにより抗菌効果に加えて消臭効果を奏することも期待できる。なお、金属イオンを担持させたゼオライトの一態様としては、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部又は全部が金属イオンで置換されてなるゼオライトが挙げられる。
【0021】
また、抗菌剤は、黄色ブドウ球菌等に対して抗菌効果を奏するものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明に用いる抗菌剤の平均粒径の下限は、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上を目安とすることができる。平均粒径が下限以上である抗菌剤を用いることで、粘着組成物中の抗菌剤の凝集が生じにくい。
【0023】
また、本発明に用いる抗菌剤の平均粒径の上限は、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下とする。平均粒径が上限以下である抗菌剤を用いることで、粘着組成物中の抗菌剤の、塗布装置のノズルやホース、ダストフィルター内での付着、沈殿が生じにくい。すなわち、塗布装置での抗菌剤の搬送ロスが軽減するため、一定量の抗菌剤塗布が確実に実現し、また機器内部に付着・沈殿した抗菌剤除去(清掃)の手間や費用が削減できる。なお、本発明に用いる抗菌剤の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定法に従い測定することができる。
【0024】
抗菌剤の含有量は、消臭効果及び抗菌効果、さらにはコスト等の観点から、粘着組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15~0.5質量%である。
【0025】
(粘着基剤)
粘着基剤は、種々の粘着組成物の基剤となるものであれば特に制限はない。
例えば、粘着基剤が酢酸ビニル樹脂、可塑剤、防腐剤、界面活性剤等を含む形態とすれば、粘着組成物を酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤とすることができる。
【0026】
粘着基剤がイソブテン、無水マレイン酸共重合樹脂溶剤、SBRラテックス水性エポキシ化合物等を含む形態とすれば、粘着組成物をα-オレフィン系接着剤とすることができる。
【0027】
粘着基剤がアクリル共重合樹脂、可塑剤、充填剤等を含む形態とすれば、粘着組成物をアクリル樹脂系エマルション形接着剤とすることができる。
【0028】
粘着基剤が酢酸ビニル樹脂、酢酸エチル、メタノール等を含む形態とすれば、粘着組成物を酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤とすることができる。
【0029】
粘着基剤がアクリル共重合樹脂、粘着付与樹脂、可塑剤、架橋剤、充填剤等を含む形態とすれば、粘着組成物をアクリル樹脂系溶剤形接着剤とすることができる。
【0030】
粘着基剤がクロロプレンゴム、溶剤、粘着付与樹脂、充てん剤等の基剤を含む形態とすれば、粘着組成物をクロロプレンゴム系溶剤形マスチックタイプ接着剤とすることができる。
【0031】
粘着基剤がイソシアネート・ポリオール、樹脂、充てん剤等を含む形態とすれば、粘着組成物をウレタン樹脂系接着剤とすることができる。
【0032】
粘着基剤が変性シリコーン樹脂、充てん剤、可塑剤、シランカップリング剤等を含む形態とすれば、粘着組成物を変成シリコーン樹脂系接着剤とすることができる。
【0033】
粘着基剤がでん粉、水、増量剤、安定剤、防腐剤、防カビ剤等を含む形態とすれば、粘着組成物をでん粉系接着剤とすることができる。
【0034】
粘着基剤がポリマー混和剤(アクリルエマルション、SBRラテックス等)、セメント、細骨材等を含む形態とすれば、粘着組成物をポリマーセメントモルタルとすることができる。
【0035】
粘着基剤がシリル化ウレタン樹脂、充てん剤、可塑剤、シランカップリング剤等を含む形態とすれば、粘着組成物をシリル化ウレタン樹脂系接着剤とすることができる。
【0036】
粘着基剤がエチルビニルアルコールまたは熱可塑性エラストマー、軟化剤、粘着付与樹脂等を含む形態とすれば、粘着組成物をホットメルト接着剤とすることができる。
【0037】
粘着組成物をホットメルト接着剤の形態とする場合には、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-ブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)、オレフィン系サーモプラスチックエラストマー、ポリブタジエン系サーモプラスチックエラストマー、ポリウレタン系サーモプラスチックエラストマー、ポリエステル系サーモプラスチックエラストマー、ポリアミド系サーモプラスチックエラストマー、塩化ビニル系サーモプラスチックエラストマー、ポリエステル系サーモプラスチックエラストマーなどを挙げることができる。
【0038】
なかでも、熱可塑性エラストマーとしてスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-ブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)を好適に例示することができる。
粘着基剤はこれら熱可塑性エラストマーを単独で含んでいてもよいし、2種以上を組み
合わせて含んでいてもよい。
これらの熱可塑性エラストマーを用いることで、高い接着力を有する粘着組成物を製造することができる。
【0039】
熱可塑性エラストマーの含有量は、塗布適性の観点から、粘着組成物全体に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下とする。
【0040】
また、熱可塑性エラストマーの含有量は、接着適性及びクリープ特性(特に高温環境下(例えば50℃)におけるクリープ特性)の観点から、粘着組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは12.5質量%以上とする。
【0041】
熱可塑性エラストマーの含有量を前記範囲とし、かつ、多孔性粒状消臭剤の含有量を上述した好ましい範囲とすることにより、優れた消臭効果、接着適性、塗布適性を併せ持つ粘着組成物を提供することができる。
【0042】
粘着組成物をホットメルト接着剤の形態とする場合には、粘着基剤が粘着付与樹脂を含有していることが好ましい。
粘着付与樹脂は、粘着組成物の粘着特性を向上させる樹脂であれば特に制限はないが、淡色あるいは無色であることがより好ましい。また、粘着付与樹脂は臭気がないものであることがより好ましい。また、消臭剤粘着組成物の製造時および使用時に熱による劣化のないものであることがより好ましい。
【0043】
本発明に用いることができる粘着付与樹脂としては、特に制限されず、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の天然ロジン類、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン類、灰白色ウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル等のグリセロールエステル類、灰白色ウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステル等のペンタエリスリトールエステル類、ポリテルペン樹脂類、スチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペン、ビニルトルエン/テルペン等のコポリマーやターポリマー類、フェノール変性テルペン樹脂類、脂肪族石油炭化水素樹脂類、水添石油樹脂類、芳香族石油樹脂類などを挙げることができる。
これら粘着付与樹脂は単独または2種以上を組み合わせて基剤に含有させることができる。
【0044】
粘着付与樹脂の含有量は、特に制限されないが、例えば、粘着組成物全体に対して20~90質量%、より好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~70質量%を目安とすることができる。
【0045】
また、粘着組成物をホットメルト接着剤の形態とする場合には、粘着基剤が軟化剤を含有していることが好ましい。
軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル、オレフィンオリゴマーや低分子量ポリマー、植物油、動物油、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
これら軟化剤は単独または2種以上を組み合わせて基剤に含有させることができる。
【0046】
軟化剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、粘着組成物全体に対して、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~25質量%を目安とする
ことができる。
【0047】
軟化剤は、無彩色であることが、製品化の観点から好ましい。
【0048】
粘着基剤には、前述した粘着基剤の他にも、本発明の効果を損しない範囲において任意の成分を含むことができる。例えば、任意成分としては安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、増粘剤、レオロジー調整剤、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、ガラスビーズなどの無機フィラー、難燃剤、着色剤、溶剤などが挙げられる。
任意成分の含有量は本発明の効果を妨げない限りは特に限定されないが、例えば、0.1~2質量%、好ましくは0.1~1質量%を目安とすることができる。
【0049】
(粘着剤組成物の特性)
粘着組成物は、塗布適性の観点から、160℃、1気圧での粘度が、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは8000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以下であることが好ましい。
【0050】
また、粘着組成物は、接着適性の観点から、160℃、1気圧での粘度が、好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上であることが好ましい。
【0051】
粘着組成物の粘度は、JIS K6862-1984に記載された加熱チャンバー付きブルックフィールド粘度計により計測できる。
【0052】
なお、粘着組成物の粘度は、多孔性粒状消臭剤の含有量や粘着基剤の組成を変更することにより調整することができる。例えば、粘着基剤に粘着付与剤、軟化剤、熱可塑性エラストマーを用いる場合には、熱可塑性エラストマーの含有量の増減によって、所望の粘度に調整することができる。
【0053】
粘着組成物の軟化点は、塗布適性の観点から、好ましくは70℃より高く、より好ましくは73℃より高いことが好ましい。粘着組成物の軟化点は、多孔性消臭剤の含有量や粘着基剤の組成を変更することによっても調整することができる。
【0054】
なお、塗布適性とは塗布のしやすさのことをいい、特に塗布装置による塗布への適用性のことをいう。このような塗布装置としては、スプレー塗布やカーテン塗布が可能な塗布装置(例えばノードソン社のノンウーブン&コーティングシステム)が挙げられる。
【0055】
また、接着適性とは、剥離のしにくさのことをいう。
例えば、常温剥離強度の高い場合に接着適性があるということができる。具体的には、剥離強度が、好ましくは5N/25mm以上、さらに好ましくは10N/25mm以上のときに、接着適性があるということができる。
【0056】
剥離強度を測定する方法としては、例えば、180度はく離試験により測定する方法、T形はく離試験により測定する方法等を挙げることができる。
【0057】
また、接着された試験片を低温(例えば-10℃)に一定時間置き、取り出した後、直ちに高速手剥離(低温手剥離)したときに十分な抵抗があるときに、接着適性があるということもできる。
【0058】
さらに、常温剥離強度と低温手剥離の2つの評価を総合して、粘着組成物の接着適性を評価することもできる。
【0059】
2.粘着組成物の製造方法
粘着組成物は、多孔性消臭剤及び抗菌剤と粘着基剤を常法により混合することにより製造することができるが、予め調製された多孔性消臭剤及び抗菌剤を含むマスターバッチを、余の粘着基剤成分と混合することにより製造することが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る粘着組成物の製造方法は、多孔性消臭剤及び抗菌剤を含むマスターバッチを、該マスターバッチに含まれる粘着基剤成分以外の粘着基剤成分と混合する工程を含む。これにより、高い消臭効果を奏する粘着組成物を製造することができる。なお、多孔性消臭剤を含むマスターバッチ、抗菌剤を含むマスターバッチをそれぞれ調製して2つのマスターバッチを用いてもよく、多孔性消臭剤及び抗菌剤の両方を含むマスターバッチを調製して用いてもよい。
【0060】
マスターバッチは、例えば、粘着基剤の一部と、多孔性消臭剤及び/又は抗菌剤を混合釜で加熱混合することにより調製することができる。
【0061】
マスターバッチにおける多孔性消臭剤及び抗菌剤のそれぞれの含有量は、例えば、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~45質量%とする。
マスターバッチの含有量を上記範囲内とすることで、多孔性消臭剤及び抗菌剤がより均一に分散し、消臭・抗菌効果が優れた粘着組成物を製造することができる。
【0062】
ホットメルト接着剤を製造する場合には、マスターバッチには粘着基剤のうち粘着付与樹脂、軟化剤、必要に応じて酸化防止剤を配合する。
【0063】
この場合、マスターバッチにおける粘着付与樹脂の含有量は、例えば、20~80質量%、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~45質量%とする。
【0064】
また、マスターバッチにおける軟化剤の含有量は、例えば、5~40質量%、より好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%とする。
【0065】
マスターバッチと、その余の粘着基剤成分を混合する方法は常法により行うことができる。例えば、混合釜で粘着基剤を混合しながら、そこへマスターバッチを添加する方法が好ましく例示できる。
【0066】
3.粘着組成物を用いた物品
本発明の粘着組成物が塗布された物品は優れた消臭・抗菌効果を発揮する。より具体的には、部材同士の接合に上記粘着組成物を適用し物品を構成することが好ましい。
本発明の粘着組成物を適用できる物品に制限は無いが、互いに接合した2以上の層を有する物品に適用することが好ましい。このような物品における層間の接合を本発明の粘着組成物により実現すれば、物品の製造と物品への消臭効果の付与を同時に行うことができる。
すなわち、本発明は、少なくとも2つの層が上述した粘着組成物により互いに接合している積層構造部を備える物品にも関する。
【0067】
このような積層構造を備える物品としては、例えば、紙おむつ、ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、ペット用トイレシーツ等の体液吸収用物品や、ガウン等の手術時に用いる使い捨て着用物品、マスク、包材、フィルター、吸音材、遮音材、断熱材、オイル吸着材、絶縁セパレータ等を挙げることができる。
なかでも、体液吸収用物品は尿や血液に由来する臭いの消臭に課題があることから、本発明を好ましく適用することができる。
【0068】
以下、本発明を体液吸収用物品のうち紙おむつに適用した場合の実施の形態について、
図1の断面略図を用いて詳細に説明する。
【0069】
紙おむつ1は、肌接触面において、液透過性シート21及び非液透過性シート22と、これら2つのシートの間に吸収体5を備える。吸収体5は、液体を吸収することのできるものであれば、その材質、形状に特に制限はなく、例えば、不織布、ティシュー、綿毛等を挙げることができ、高吸収性樹脂(SAP)等を含有していてもよい。
【0070】
液透過性シート21は、例えば熱可塑性繊維で形成された、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、開孔フィルム、またはそれらの積層体で形成されていることが好ましい。また、液透過性シート21は肌接触面に親水処理を施したものであることがより好ましい。
【0071】
また、非液透過性シート22は、熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性繊維で形成されたスパンレース不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、あるいはそれらの積層体であって、撥水性を有するものが好ましく使用される。
【0072】
紙おむつ1は、端部に糸ゴム6が固定され伸縮性が付与されたサイドシート23を備えることがより好ましい。サイドシート23を備えることで、着用時に肌に紙おむつ1が密着するため、液漏れを防止することができる。
サイドシート23はエアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、フィルム、開孔フィルムなどにより構成することができる。
【0073】
紙おむつ1は、非肌接触面側に、外装非液透過性シート31及び外装シート32を備える。そして、これら2つのシートは本発明の粘着組成物4により接合されている。
外装非液透過性シート31は、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系の樹脂シートなどで構成することが好ましい。
また、外装シート32は不織布で構成することが好ましい。
【0074】
紙おむつ1は、股部に当たる部分を構成する積層構造部(外装非液透過性シート31及び外装シート32)が本発明の粘着組成物4により接合される構成をとるため、吸収した尿などの体液に由来する臭いを効果的に抑制することができる。
【0075】
なお、液透過性シート21、非液透過性シート22、及びサイドシート23の接合に本発明の粘着組成物4を用いても構わない。
【0076】
また、
図1に示す構造以外の構造をとる体液吸収用物品に本発明を適用する場合には、本発明の粘着組成物の塗布箇所は、その構造に合わせて適宜設計することができる。
また、不織布などの繊維状のシートの接合に本発明の粘着組成物を適用することも好ましい。
【0077】
粘着組成物を塗布する方法に特に制限はなく、例えば、非接触での塗布、接触での塗布が上げられるが、スプレー塗布、カーテン塗布などのような非接触での塗布がより好ましい。
流体搬送方式としては容積式が一般的で、往復ポンプ(ピストンポンプやプランジャーポンプ等)、回転ポンプ(ギアーポンプやベーンポンプ等)による方式が上げられる。
【0078】
粘着組成物を塗布する場合、その塗布形態は制限されない。例えば非接触での塗布方法として、スプレー・スパイラル塗布、ミニスプレー・ミニスパイラル塗布、ファイバー・カーテン塗布といった塗布形態によって粘着組成物を塗布することができる。
【0079】
なかでも、少ない量でも均一に塗布が可能な、ミニスプレー・ミニスパイラル塗布、ファイバー・カーテン塗布により本発明の粘着組成物を塗布することが、抗菌効果、消臭効率の観点から好ましい。
【実施例】
【0080】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0081】
(粘着組成物の製造)
多孔性消臭剤として亜鉛イオン坦持ゼオライト消臭剤(平均粒子径1.5μm、ダッシュライトZH10N:株式会社シナネンゼオミック製)、抗菌剤として銀イオン坦持ゼオライト抗菌剤(平均粒子径2.5μm、HW10N:株式会社シナネンゼオミック製)、粘着基剤としてスチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(TR2827:JSR株式会社製)、水添石油樹脂(アルコンM100:荒川化学工業株式会社製)、プロセスオイル(サンピュアNX90:日本サン石油株式会社製)、フェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)、リン系酸化防止剤(イルガフォス168:BASF社製)を用いて以下の方法でホットメルト接着剤を製造した。
【0082】
まず、140℃、1時間の条件で多孔性消臭剤40質量%、水添石油樹脂42質量%、プロセスオイル18質量%、フェノール系酸化防止剤0.2質量%、リン系酸化防止剤0.2質量%を混合し、消臭マスターバッチを製造した。
同様にして、抗菌剤40質量%、水添石油樹脂42質量%、プロセスオイル18質量%、フェノール系酸化防止剤0.2質量%、リン系酸化防止剤0.2質量%を混合し、抗菌マスターバッチを製造した。
次に、表1に示す組成(質量%)となるように、2種類のマスターバッチと残りの粘着基剤成分を混合し実施例1の粘着組成物を製造した。実施例2及び比較例1~6についても同様に製造した。
【0083】
(消臭効果の測定)
実施例1~2及び比較例1~6の粘着組成物を塗布膜厚5μm、塗布面積100cm2(5×20)でPETフィルムに塗布し、これを各ガス(アンモニア及び硫化水素)についてガス濃度10ppm環境下にある5リットルバック内に置いた。一定時間経過後、バック内のガスの残留濃度をJIS K0804-1998に準拠し、検知管式ガス測定器を用いて測定した。測定に際しては、バック内にアンモニアのみを封入したブランク試験も併せて行った。結果を表1に示す。
なお、減少率の算出方法は、ブランクのバック内残留濃度をA(ppm)とし、各検体のバック内残留濃度をB(ppm)としたときは、下記式により算出される。
減少率(%)=100×(A-B)/A
【0084】
(抗菌効果の測定)
実施例1~2及び比較例1~6の粘着組成物をJIS L1902の試験方法に準拠し培養した後の培養後黄色ブドウ球菌数を測定した。結果を表1に示す。なお、E2~E4等の「E」は指数を意味し、例えば「E5=1×105~9×105」である。また、「ND」は検出されなかったことを意味する。そして、ND及びE2を評価A、E3を評価B、E4及びE5を評価Cとした。
【0085】
(粘着組成物の粘度)
なお、粘着組成物の粘度は、JIS K6862-1984に準拠して、加熱チャンバー付きブルックフィールド粘度計により、160℃において測定した。結果を表1に示す。
【0086】
(軟化点)
粘着組成物の軟化点は、JAI 7-1999(日本接着剤工業規格)に準拠して環球法により測定した。結果を表1に示す。
【0087】
また、粘着組成物の接着適性は、剥離強度の測定値と低温手剥離の結果により評価した。結果を表1に示す。
(剥離強度)
粘着組成物の剥離強度は、JIS Z0237-2009に準拠し、支持体38ミクロンコロナ処理PETフィルムに粘着組成物を50μmの厚みで塗布し、未処理表面のPETフィルムを貼り合わせ作製した試験片を、所定時間放置した後に、クロスヘッドスピード100mm/分で引きはがしたときの力を測定することにより測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(低温手剥離)
また、低温手剥離による評価は、前述と同条件の試験片を-10℃の恒温槽中に1時間保管後、取り出した直後に高速手剥離し、その抵抗の程度を観察することにより行った。
高速手剥離時に、室温で市販のポリプロピレン基材アクリル系粘着テープをアルミ板に貼り合わせたものを高速に引きはがしたときの抵抗と同等の抵抗がある場合に(○)、抵抗が不十分である場合に不良(×)と評価した。結果を表1に示す。
【0089】