(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
A47C 7/62 20060101AFI20231031BHJP
A47C 31/12 20060101ALI20231031BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20231031BHJP
G01B 5/207 20060101ALI20231031BHJP
G01B 5/24 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
A47C31/12
G01B5/00 U
G01B5/207
G01B5/24
(21)【出願番号】P 2017167989
(22)【出願日】2017-08-31
【審査請求日】2020-06-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2016215494
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 音田恭宏、外7名、「情報処理学会第79回全国大会講演論文集DVD 2017年3月16日(木)~18日(土) 於:名古屋大学東山キャンパス,6T-05,着座姿勢に基づくワークプレイスの高機能化の検討」、一般社団法人 情報処理学会、2017年3月16日 情報処理学会第79回全国大会,名古屋大学 東山キャンパス(名古屋市千種区不老町),2017年03月18日,「着座姿勢に基づくワークプレイスの高機能化の検討」 情報処理学会第79回全国大会 オープン・イノベーションと情報処理 大会案内/プログラム,2017年03月16日(木)~18(土),名古屋大学 東山キャンパス(名古屋市千種区不老町) WORK DESIGN ADVANCE ‐ センシング技術で見える、変える、はたらく人の行動とは?,Open Innovation Biotope ゛Sea″(東京都千代田区紀尾井町4-1ニューオータニガーデンコート3階 株式会社岡村製作所ガーデンコートショールーム内),2017年05月26日,http://workmill.jp/sea/event/wda_201705.html 第4回行動変容と社会システム研究会,グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)会議室702(大阪府大阪市北区中之島5-3-51),2017年06月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】荒川 豊
(72)【発明者】
【氏名】音田 恭宏
(72)【発明者】
【氏名】水本 旭洋
(72)【発明者】
【氏名】小花 光広
(72)【発明者】
【氏名】上西 基弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 千尋
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】沼生 泰伸
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168339(JP,A)
【文献】特開2016-87237(JP,A)
【文献】特開2012-53829(JP,A)
【文献】特開2012-71099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329012(US,A1)
【文献】特開2014-104865(JP,A)
【文献】特開2016-49853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C7/00-7/74
A47C1/00-3/40
A47C9/00-16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する
面を有する部材の
前記面に沿った異なる位置となる複数箇所
に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得部と、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習
を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部と、
を備える着座姿勢判定装置。
【請求項2】
前記識別関数は、人が複数の異なる着座姿勢で学習用椅子に着座した状態において当該学習用椅子の人が接触する部材の複数箇所であって、前記椅子の人が接触する部材の複数箇所それぞれに相当する各箇所における傾き情報を用いて前記機械学習により算出された関数である
ことを特徴とする請求項
1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項3】
前記識別関数は、人が前記学習用椅子に着座していない状態における前記複数箇所における傾き情報と、人が複数の異なる着座姿勢で前記学習用椅子に着座した状態において得られた前記複数箇所の傾き情報との差をそれぞれ用いて前記機械学習により算出された関数である
ことを特徴とする請求項
2に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項4】
前記識別関数は、人が予め定められた姿勢で前記学習用椅子に着座した状態における前記複数箇所における傾き情報と、人が複数の異なる着座姿勢で前記学習用椅子に着座した状態における前記複数箇所の傾き情報との差を用いて前記機械学習により算出された関数である
ことを特徴とする請求項
2に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項5】
前記傾き情報取得部は、前記椅子の座面に設けられた複数の傾きセンサから傾き情報を取得する
請求項
1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項6】
前記傾き情報取得部は、人が前記椅子に着座していない状態における前記傾きセンサにおける前記椅子の幅方向の傾き検出基準軸を基準とした傾き情報を取得する
請求項
1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項7】
前記傾き情報取得部は、少なくとも前記椅子の幅方向の中心位置における傾き情報を取得する
請求項
1に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項8】
前記椅子が背板部を備え、
前記傾き情報取得部は、前記背板部の幅方向の中心位置における傾き情報を取得する
請求項
7に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項9】
前記傾きセンサが前記椅子の人が接触する部材の裏面に設けられた請求項1から請求項
8の何れか一項に記載の着座姿勢判定装置。
【請求項10】
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する
面を有する部材の
前記面に沿った異なる位置となる複数箇所
に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得部と、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習
を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部と、有する着座姿勢判定装置
を備えた椅子。
【請求項11】
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する
面を有する部材の
前記面に沿った異なる位置となる複数箇所
に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得し、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習
を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する
着座姿勢判定方法。
【請求項12】
着座姿勢判定装置のコンピュータを、
椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する
面を有する部材の
前記面に沿った異なる位置となる複数箇所
に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得手段、
前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習
を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスワーカーは1日の約3分の1以上の時間を椅子に座って過ごすと言われている。そのため、オフィスワーカーの着座姿勢と生産性との関係を調べることで、将来のオフィス生産性向上に繋がることが期待されている。着座姿勢を計測する技術として特許文献1や特許文献2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-33506号公報
【文献】特開2006-298039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2の技術は歪みゲージや赤外線センサ等によって人の着座状態を検出しようとするものであるが、例えば歪みゲージによる着座姿勢の検出の場合には、シート全体に歪みゲージを張ることが必要となる。また赤外線センサで着座状態を検出しようとする場合には精度の高い姿勢までの判定することは難しい。したがってより簡易に精度高く椅子に着座した人の姿勢を判定する技術が求められている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、着座姿勢判定装置は、椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得部と、前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部と、を備える。
【0008】
また上述の着座姿勢判定装置によれば、前記識別関数は、人が複数の異なる着座姿勢で学習用椅子に着座した状態において当該学習用椅子の人が接触する部材の複数箇所であって、前記椅子の人が接触する部材の複数箇所それぞれに相当する各箇所における傾き情報を用いて前記機械学習により算出された関数であってよい。
【0009】
また上述の着座姿勢判定装置によれば、前記識別関数は、人が前記学習用椅子に着座していない状態における前記複数箇所における傾き情報と、人が複数の異なる着座姿勢で前記学習用椅子に着座した状態において得られた前記複数箇所の傾き情報との差をそれぞれ用いて前記機械学習により算出された関数であってよい。
【0010】
また上述の着座姿勢判定装置によれば、前記識別関数は、人が予め定められた姿勢で前記学習用椅子に着座した状態における前記複数箇所における傾き情報と、人が複数の異なる着座姿勢で前記学習用椅子に着座した状態における前記複数箇所の傾き情報との差を用いて前記機械学習により算出された関数であってよい。
【0011】
また上述の着座姿勢判定装置によれば、前記傾き情報取得部は、前記椅子の座面に設けられた複数の傾きセンサから傾き情報を取得してよい。
【0012】
また上述の着座姿勢判定装置において、前記傾き情報取得部は、人が前記椅子に着座していない状態における前記傾きセンサにおける前記椅子の幅方向の傾き検出基準軸を基準とした傾き情報を取得してよい。
【0013】
また上述の着座姿勢判定装置において、前記傾き情報取得部は、少なくとも前記椅子の幅方向の中心位置における傾き情報を取得してよい。
【0014】
また上述の着座姿勢判定装置において、前記椅子が背板部を備え、前記傾き情報取得部は、前記背板部の幅方向の中心位置における傾き情報を取得してよい。
【0015】
また上述の着座姿勢判定装置において、前記傾きセンサが前記椅子の人が接触する部材の裏面に設けられてよい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、椅子は、椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得部と、前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定部と、有する着座姿勢判定装置を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、着座姿勢判定方法は、椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得し、前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する。
【0018】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、着座姿勢判定装置のコンピュータを、椅子に人が着座した状態における前記椅子の人が接触する面を有する部材の前記面に沿った異なる位置となる複数箇所に設けられた傾きセンサのそれぞれから傾き情報を取得する傾き情報取得手段、前記複数箇所において取得された傾き情報及び取得された前記傾き情報と対応する着座姿勢を含む計測情報を複数用いて機械学習を行うことにより算出された識別関数に前記複数箇所における傾き情報を入力して着座姿勢を判定する着座姿勢判定手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より信頼性の高い着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】第一の実施形態による椅子の概観を示す第一の図である。
【
図1B】第一の実施形態による椅子の概観を示す第二の図である。
【
図2】着座姿勢判定装置とセンサとの接続関係を示す図である。
【
図3】着座姿勢判定装置のハードウェア構成図である。
【
図4A】識別関数の算出概要を示す第一の図である。
【
図4B】識別関数の算出概要を示す第二の図である。
【
図5】第一の実施形態による着座姿勢判定装置の機能ブロック図である。
【
図6】第一の実施形態による着座姿勢判定装置の処理フローを示す図である。
【
図7】センサ傾き検出基準軸を基準とした傾き量の変化が姿勢判定へ影響を及ぼす重要度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態による着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラムを図面を参照して説明する。
図1Aは第一の実施形態による椅子の概観を示す第一の図である。
この図で示すように椅子10には着座姿勢判定装置1と、複数のセンサ2とが設けられている。着座姿勢判定装置1と複数のセンサ2は、椅子10の座面と背板面に設けられている。なお、複数のセンサ2は椅子10の座面のみに設けられていてもよい。複数のセンサ2はそれぞれ、椅子10の座面や背板面などの人が接触する部材の裏面に設けられてよい。
図1Aでは椅子10の座面に4か所、背板面に2か所のセンサ2が取り付けられている状態を示しているが、それ以外の数の複数のセンサ2が取り付けられる態様であってよい。椅子10の座面や背板面は例えばメッシュ生地で構成されており、当該メッシュ生地の裏にセンサ2が接着固定されてよい。
【0022】
センサ2は傾きを検出することのできるセンサである。より具体的にはセンサ2は傾きを検出できる加速度センサや角速度センサであってよい。着座姿勢判定装置1はコンピュータであり、センサ2それぞれから信号を受信して、センサ2それぞれが検出した傾きを検出する。センサ2は例えば1秒に1回程度の間隔で傾きを計測して着座姿勢判定装置1へ出力してよい。
【0023】
図1Bは第一の実施形態による椅子10の概観を示す第二の図である。
図1Bで示すように椅子10には、
図1Aで示した椅子10とは異なる位置にセンサ2が設けられてよい。
図1Bで示す椅子10には
図1Aで示す椅子10と同様に、着座姿勢判定装置1と、複数のセンサ2とが設けられている。
図1Bに示す椅子10は、座面の前方端部中心位置と後方端部中心位置とを結ぶ直線に直交する幅方向線の中央部(第一中央部)に2つのセンサ2が設けられた態様を示している。
図1Bの当該第一中央部に設けられた2つのセンサ2をセンサ2b、センサ2eと呼ぶこととする。また
図1Bに示す椅子10には、
図1Aに示す椅子10と同様に背板面の上端中央部と下端中央部とを結ぶ直線に直交する幅方向の中央部(第二中央部)に2つのセンサ2が設けられた態様を示している。
図1Bの当該第二中央部に設けられた2つのセンサ2をセンサ2g、センサ2hと呼ぶこととする。
図1Bの椅子10に設けられる複数のセンサ2も、椅子10の座面や背板面などの人が接触する部材の裏面に設けられてよい。
【0024】
図1Cは人が着座していない状態におけるセンサの傾き検出基準軸方向を示す図である。
図1Cに示すように座面に設けられたセンサ2は、人が着座していない状態におけるセンサ2が取り付けられた座面上の点における接平面を構成した直交2軸方向、すなわちX軸方向およびY軸方向と、そのセンサ2が取り付けられた点における接平面の法線方向を示すZ軸方向の、各3軸方向をそれぞれセンサ2の傾き検出基準軸方向とし、各傾き検出基準軸方向を基準とした傾きを検出する。具体的には、重力により発生する各軸方向の加速度Accを検出することで、人が着座したことによる各傾き検出基準軸方向を基準とした傾き量を算出する。
また
図1Cに示すように背板面に設けられたセンサ2は、人が着座していない状態におけるセンサ2が取り付けられた背板面上の点における接平面を構成した直交2軸方向、すなわちX軸方向およびY軸方向と、そのセンサ2が取り付けられた点における接平面の法線方向示すZ軸方向の、各3軸方向をそれぞれセンサ2の傾き検出基準軸方向とし、各傾き検出基準軸方向を基準とした傾きを検出する。つまり各センサ2が取り付けられた点における接平面は異なる為、それぞれのセンサ2の傾き検出基準軸方向であるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向は異なる。なお
図1Cにおいては座面および背板面に取り付けられた各1つのセンサについてのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を示している。
ここでX軸方向の加速度をAccx、Y軸方向の加速度をAccy、Z軸方向の加速度をAcczとするとセンサ2から得られた各加速度AccによるX軸の傾き角度θ、Y軸の傾き角度ψ、Z軸の傾き角度φは、
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
の様に表すことができる。センサ2はこれらの算出式に基づいて得られた傾き角度の情報を着座姿勢判定装置1へ送信してもよいし、着座姿勢判定装置1が各センサ2から得られた加速度の値を用いて傾き角度の情報を算出してもよい。
【0029】
図2は着座姿勢判定装置とセンサとの接続関係を示す図である。
図1A,
図1Bには図示していないが、着座姿勢判定装置1とセンサ2とは通信接続されている。通信接続は有線接続であってもよいし無線接続であってもよい。着座姿勢判定装置1は端末装置100などと無線通信接続されてよい。着座姿勢判定装置1は端末装置100に判定結果を送信する。端末装置100はPC(Personal Computer)や、タブレット端末、スマートフォン、腕時計型、眼鏡型などのウェアラブル端末などであってよい。
【0030】
図3は着座姿勢判定装置のハードウェア構成図である。
着座姿勢判定装置1は、CPU(Central Processing Unit)11,RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、通信モジュール14などを備えてよい。着座姿勢判定装置1はこのような各機能を備えたコンピュータである。
【0031】
人が椅子10に着座すると、人の荷重により椅子10の座面及び背板面は全体として凹む方向に変形する。この変形を座面及び背板面で見ると面の傾きが変化する。この傾きの変化量は着座姿勢が同じ場合はほぼ同じ値となり、着座姿勢が変わると異なる値となる。担当者の操作に基づいて着座姿勢判定装置1は傾きと着座姿勢との関係、あるいは傾きの変化量、すなわち人が椅子10に着座していない時と着座している時との傾きの差異と着座姿勢との関係を求めることで、傾きや傾き差異から着座姿勢を判定するための識別関数を算出することができる。識別関数の算出は端末装置100が行うようにしてもよい。
【0032】
傾きや傾き差異から着座姿勢を判定するための識別関数の算出をより具体的に説明する。
図1Aや
図1Bに示すように座面や背板面などの椅子10の複数箇所について面の傾きを計測するセンサ2を設ける。センサ2の設置箇所については人が椅子10に着座した場合に傾き変化が大きい場所が適切である。より好ましくは
図1Bで示すようなセンサ2の椅子10への取り付け態様とする。なお傾きを検出するセンサ2に代えて、椅子10の座面や背板面の裏側から距測計で傾き変化を捉えたり、裏側から撮像して画像解析を行って形状変化を捉えたりするようにしてもよい。
【0033】
担当者の操作により着座姿勢判定装置1は人が着座していない状態での表面の傾きを取得する。着座姿勢判定装置1はこの着座していない状態の基準の傾き値と、後述する人が着座した際の傾き値との差異を算出する(
図4Aで示す式(4)参照)。基準の傾きの計測は1回だけで無く、複数回の計測結果を平均化した値や中央値でもって基準の傾き値としても良い。例えばセンサ2における着座していない状態での計測を1分間、すなわち各センサ2は60回計測を繰り返す。着座姿勢判定装置1は各センサ2からの出力値の平均値を求め、基準の傾き値を決定する。
【0034】
図4Aは識別関数の算出概要を示す第一の図である。
図1Bで示したセンサ2の椅子10への取り付け態様によれば、センサ2は8個椅子10に取り付けられる。この場合センサ2a~センサ2hの8個のセンサ2による傾き角度はセンサ2bの3軸の各傾き角度をθ1,ψ1,φ1、センサ2eの3軸の各傾き角度をθ2,ψ2,φ2、・・・センサ2eの3軸の各傾き角度をθ8,ψ8,φ8とする。この場合の各姿勢における着座時と離席時の傾き角度の相対角度(上述の着座していない状態の基準の傾き値と、人が着座した際の傾き値との差異)は、
図4Aで示す式(4)により表される。なお
図4Aで示す式(4)においてθ1
ini,ψ1
ini,φ1
ini・・・は人が着座していない時の各センサの各3軸の初期値を示す。また
図4Aで示す式(4)においてθ1’,ψ1’,φ1’・・・は各センサの各3軸についての着座時と離席時の傾き角度の相対角度を示す。
【0035】
なお上述においては、着座姿勢判定装置1は、着座していない状態の基準の傾き角度と、人が着座した際の傾き角度との差異を算出しているが(第二特徴量算出手法と呼ぶ)、着座姿勢判定装置1は、人が着座している際にセンサから得られる傾き角度のみから算出してもよい(第一特徴量算出手法と呼ぶ)。
また上述においては、着座していない状態の基準の傾き値と、人が着座した際の傾き値との差異を算出しているが、着座姿勢判定装置1は、下記の
図4Bで示す各姿勢状態である時の傾き角度と、人が着座している際の標準姿勢時との相対角度(差異)を算出してもよい(第三特徴量算出手法と呼ぶ)。
【0036】
図4Bは識別関数の算出概要を示す第二の図である。
着座姿勢判定装置が着座姿勢の判定に利用する識別関数を算出するために、担当者はさらに椅子10に被験者を着座させる。担当者は被験者の背の位置を変化させた体幹の異なる姿勢状態(
図4Bのa1,a2,a3)における各センサ2それぞれの傾きを計測する。
図4B中a1は被験者が背を前傾させた姿勢状態を示す。
図4B中a2は被験者が背を直立させた状態を示す。
図4B中a3は背を後傾させた姿勢状態を示す。
【0037】
また担当者は被験者の臀部の位置を変化させた異なる姿勢状態(
図4B中b1,b2)における各センサ2それぞれの傾きを計測する。
図4B中b1は被験者が臀部を座面上の背板面のある奥側に位置させた姿勢状態(奥座状態)を示す。
図4B中b2は被験者が臀部を座面上の前方側に位置させた姿勢状態(前座状態)を示す。
【0038】
また担当者は被験者の上半身の姿勢の左右の傾きを変化させた異なる姿勢状態(
図4B中c1,c2,c3)における各センサ2それぞれの傾きを計測する。
図4B中c1は被験者が上半身を右に傾けた姿勢状態を示す。
図4B中c2は被験者が上半身を傾けない姿勢状態を示す。
図4B中c3は被験者が上半身を左に傾けた状態を示す。
【0039】
着座姿勢判定装置1は体幹の異なる3通りの姿勢状態aの何れか一つと、臀部の位置を変化させた異なる2通りの姿勢状態bの何れか一つと、姿勢の左右の傾きを変化させた異なる3通りの姿勢状態cの何れか一つと、を組み合わせた、3通り×2通り×3通り=18通りの各姿勢状態におけるセンサ情報を取得してよい。本実施形態においてはこの18通りの各姿勢状態におけるセンサ情報を着座姿勢判定装置1が取得する。着座姿勢判定装置1はその18通りの姿勢状態における各センサ2のセンサ情報が示す基準の傾きからの差分と、3つの姿勢状態a,b,cのそれぞれがどの状態であるかを示す状態情報との対応関係を示す計測情報を記憶する。
【0040】
着座姿勢判定装置1は上記18通りの各姿勢状態におけるセンサ情報より多い組み合わせの各姿勢状態におけるセンサ情報を、複数箇所のセンサ2から取得してもよい。例えば、被験者が背を前傾させた姿勢状態を前傾の角度の大きさで2段階に分け、被験者が背を前傾させた姿勢状態を後傾の角度の大きさで2段階に分けることにより、被験者の背の位置を変化させた体幹の異なる姿勢状態が5通りとなる。この場合、5通り×2通り×3通り=30通りの各姿勢状態におけるセンサ情報を取得してよい。
また、着座姿勢として、体幹の異なる姿勢状態、臀部の位置、上半身の姿勢の左右の傾きの3種類の姿勢状態を求めているが、この3種類以外の姿勢状態を組合せても良い。例えば、背の左右旋回状態(左旋回、中立、右旋回)の3通りをさらに求めても良く、この場合は、3通り×2通り×3通り×3通り=54通りの各姿勢状態を判定する。
【0041】
各姿勢状態におけるセンサの傾きの計測は、例えば担当者が端末装置100を操作して、端末装置100と着座姿勢判定装置1とを通信接続させる。担当者はこの状態で上記の各姿勢状態における各センサ2の傾きの情報を、着座姿勢判定装置1で受信させる。
担当者は複数の被験者について同様の各姿勢状態での各センサ2の傾きの情報を着座姿勢判定装置1で取得させてよい。担当者は異なる年代の被験者について同様の各姿勢状態での各センサ2の傾きの情報を着座姿勢判定装置1で取得させてよい。各被験者はさらに男女それぞれであることが好ましい。また、各被験者はさまざまな体格であることが好ましい。
【0042】
なお、被験者がどのような着座姿勢であるかを判定する手法としては、着座する人が意識して姿勢を取り着座姿勢判定装置1にその情報を取得させる手法、観察者が着座姿勢を判定し着座姿勢判定装置1にその情報を取得させる手法、着座状態を撮像した画像から着座姿勢を着座姿勢判定装置1が自動判定する手法などを用いることができる。なお、傾きの差分は、計測結果の平均値、最頻値、中央値などであってよい。
【0043】
着座姿勢判定装置1は所定の計測情報が所定のデータ量に達したかを判定する。着座姿勢判定装置1は所定のデータ量に達していない場合には所定のデータ量に達するまで計測情報を取得する。着座姿勢判定装置1は上記計測情報を例えば500例など多数得ることにより、機械学習を用いて各センサ2で得られた傾きの基準の傾きからの差分を入力としてその入力応じた着座姿勢を出力する識別関数を算出する。着座姿勢判定装置1が行う機械学習については例えばランダムフォレスト法などの公知の技術を用いることができる。着座姿勢判定装置1は算出した識別関数に対応するプログラムを用いて、各センサ2から取得した傾き値に基づいて着座姿勢を判定する。
【0044】
なお、上述のランダムフォレスト法を用いた機械学習により
図7で示すように実際に算出した特徴量の重要度(ジニ係数)を比較すると、センサ2b、2e、2g、2hのX軸(2b_x,2e_x,2g_x,2h_x)の傾き角度、すなわち水平方向の軸の傾き情報の重要度が高いことが確認された。
図7のグラフは、8つの各センサのX軸、Y軸、Z軸の各傾き角度(特徴量)の重要度を、上記第一特徴量算出手法~第三特徴量算出手法で得られた角度あるいは相対角度を用いて算出した場合についてそれぞれ示したグラフである。この結果より、着座姿勢判定装置1の傾き情報取得部101は、椅子10における水平方向の軸の傾き情報が特に重要であることがわかる。また、同様に椅子10には椅子の幅方向の中心位置に設けられたセンサ2(2b、2e、2g、2h)の傾き情報が重要であることがわかる。
着座姿勢判定装置1はそれらセンサ2b、2e、2g、2hで得られた傾きの基準の傾きからの差分を入力としてその入力応じた着座姿勢を出力する識別関数を算出してもよい。そして椅子の幅方向の中心位置に設けられたセンサ2(2b、2e、2g、2h)には計測精度の高いセンサ2を用い、他のセンサにはそれらのセンサよりも精度の低い安価なセンサを用いれば、全体のコストを抑えつつ、着座姿勢判定の精度を向上させることが可能となる。なお椅子10に背板面が設けられていない場合には、着座姿勢判定装置1は、センサ2b、センサ2eから得た傾き情報(基準の傾きからの差分)を入力としてその入力応じた着座姿勢を出力する識別関数を算出してもよい。
【0045】
着座姿勢判定装置1は被験者の属性に応じた識別関数をそれぞれ算出するようにしてもよい。例えば年齢、性別、体重別、身長別などの属性に応じた識別関数を算出するようにしてもよい。この場合、着座姿勢判定装置1は、識別関数を算出する前提として被験者の上記属性のうちの何れか一つまたは複数の情報を取得する。そして被験者の属性に応じて被験者を分類し、分類された被験者ごとの識別関数を算出するようにしてもよい。
【0046】
なお識別関数を算出する着座姿勢判定装置1が備えられた椅子10は、人の姿勢を判定する際に当該人が着座する椅子10と同一であっても良いし、識別関数の算出の為にある学習用椅子であってもよい。つまり識別関数の算出の為にある学習用椅子と、実際に人の姿勢を判定する際に当該人が着座する椅子10とは異なってよい。この場合、学習用椅子と実際に人の姿勢を判定する際に当該人が着座する椅子10の構造は同一または類似した構造とし、識別関数算出に用いる傾きを測定するセンサの学習用椅子における設置箇所は、実際に人の姿勢を判定する際に当該人が着座する椅子10におけるセンサの設置箇所に相当する箇所(すなわち、同じ箇所、あるいは近傍箇所)とする。
【0047】
図5は第一の実施形態による着座姿勢判定装置の機能ブロック図である。
この図が示すように着座姿勢判定装置1は、着座姿勢判定プログラムを実行することにより、傾き情報取得部101と着座姿勢判定部102の機能を備える。
傾き情報取得部101は、椅子10に人が着座した状態における椅子10の人が接触する部材(座面や背板面)における傾き情報を取得する。着座姿勢判定部102は、機械学習により算出された識別関数に各センサ2の傾き情報を入力して着座姿勢を判定する。
【0048】
図6は第一の実施形態による着座姿勢判定装置の処理フローを示す図である。
着座姿勢判定装置1の傾き情報取得部101は、人が着座した後に各センサ2が検出した傾き値を1秒間隔毎などの所定の間隔毎に取得する(ステップS601)。傾き情報取得部101は取得した傾き値を着座姿勢判定部102へ出力する。この時、傾き情報取得部101は各センサ2のX軸の傾き検出基準軸の傾き値のみを着座姿勢判定部102に出力して、当該X軸の傾き検出基準軸の傾き値のみを以下の処理に用いるようにしてもよい。着座姿勢判定部102は、1分間の間に各センサ2から取得したセンサ値を、各センサ2に対応する傾き値毎に平均などして統計値(平均値、中央値など)を算出する(ステップS602)。着座姿勢判定部102は各センサ2の統計値の基準の傾き値からの差分を算出する(ステップS603)。なお着座姿勢判定部102はステップS602の処理を行わずに、各センサ2から得た傾き値と、各センサ2についての基準の傾き値のそれぞれの差分を算出するようにしてもよい。着座姿勢判定部102はそれら差分の値を識別関数に入力する。着座姿勢判定部102は識別関数に対応するプログラムを用いて各センサ2において計測された基準の傾きからの差分に応じた姿勢情報を算出する(ステップS604)。なお各センサの差分と、その差分に応じた姿勢情報との関係は
図4Bを用いて説明した手法に基づいて、予め着座姿勢判定装置1が記憶していてよい。着座姿勢判定部102は算出した姿勢情報を端末装置100へ送信する(ステップS605)。
【0049】
端末装置100は受信した姿勢情報を出力する。または端末装置100は受信した姿勢情報を記憶するようにしてもよい。着座姿勢判定装置1の着座姿勢判定部102は、算出した姿勢情報を自装置に記憶してもよい。または着座姿勢判定装置1に液晶モニタやスピーカなどの出力装置が設けられている場合には、着座姿勢判定部102は当該出力装置を用いて算出した姿勢情報を出力するようにしてもよい。
【0050】
第一の実施形態による着座姿勢判定装置1によれば機械学習により算出された各センサ2の傾きから姿勢を識別する識別関数を用いることで、各センサ2について計測した傾きの差異による着座姿勢を判定することが可能となる。
また第一の実施形態による着座姿勢判定装置によれば、座面や背板面における広い領域にセンサを設けることなく、より精度の高い着座姿勢を判定することができる。
【0051】
椅子10には被験者の属性を取得する装置が設けられていてもよい。例えば着座姿勢判定装置1に属性を入力する入力ボタンが備わっていてもよい。または例えば椅子10の沈み具合に応じた体重を検出する体重検出器が椅子10に設けられており、着座姿勢判定装置1は体重検出器から取得した値によって着座する人の体重を推定してもよい。着座姿勢判定装置1は取得した人の属性に応じた識別関数を用いてセンサ2から得た情報に基づく姿勢情報を算出するようにしてもよい。
【0052】
上述の説明では、着座姿勢判定装置1は、人が椅子10に着座していない時と着座している時との傾きの差異と着座姿勢との関係を求めることで、傾き差異から着座姿勢を判定するための識別関数を算出しているが、他の手法により識別関数を算出してもよい。
より具体的に説明すると、人が椅子10に着座していない状態を状態A、人が椅子10に着座して基本姿勢(予め定められた姿勢)である奥座・直立・中央に座っている状態を状態B、人が椅子10に実際に自由に着座している状態を状態Cとする。上述の説明では状態Aと状態Cとの差異により識別関数を算出している。しかし、状態Bと状態Cとの差異により識別関数を算出してもよい。
【0053】
または着座姿勢判定装置1は、状態Cにおける各センサ2の傾き情報と姿勢との関係に基づいて、識別関数を算出するようにしてもよい。この場合、着座姿勢判定装置1は、状態Cにおける各センサ2の傾き情報と姿勢との複数の組み合わせに基づいて識別関数を算出する。
【0054】
(第二の実施形態)
次に本発明の第二の実施形態による着座姿勢判定装置、椅子、着座姿勢判定方法、プログラムを参照して説明する。
第二の実施形態による着座姿勢判定装置や椅子10の構成は
図1A,
図1B,
図2,
図3で示した第一の実施形態の着座姿勢判定装置や椅子10と同様である。
第二の実施形態による着座姿勢判定装置1は、計測開始時刻から計測終了時刻までの時間の人が着座している状況において、所定の時間間隔で第一の実施形態に記載の手法で求めた姿勢情報(姿勢変化)を記憶する。また着座姿勢判定装置1は測定装置等で計測された椅子10に着座している人の集中度を取得する。例えば、着座姿勢判定装置1は脳波計、瞳孔観察装置、呼吸計測装置などの測定装置と通信接続されてよい。着座姿勢判定装置1は、これら測定装置から得た、椅子10に着座した人の脳波、瞳孔の開度などを示す情報、単位時間当たりの呼吸回数の情報などから公知の手法にて集中度を求め、その集中度を示す情報を、計測開始時刻から計測終了時刻までの時間における所定の時間間隔で記録する。着座姿勢判定装置1は、所定の時間間隔毎の姿勢情報(姿勢変化)と、所定の時間間隔毎の集中度と用いて、姿勢変化から集中度を識別する第二の識別関数を機械学習により算出する。
【0055】
着座姿勢判定装置1は集中度の代わりにストレス度合、眠気度合などの情報を用いて機械学習により上記と同様の手法を用いて第二の識別関数を同様に算出するようにしてよい。この場合着座姿勢判定装置1は、姿勢変化から、脳波計、瞳孔観察装置、呼吸計測装置から得られた情報を用いて求めたストレス度合、眠気度合を識別する第二の識別関数を算出してもよい。着座姿勢判定装置1は、椅子10に備わるその他の装置からストレス度合や眠気度合の算出の元となる情報を取得するようにしてもよい。集中度、ストレス度合、眠気度合の算出の元となる情報を計測する装置は椅子10とは別体に設けられてよい。
着座姿勢判定装置1が所定の時間間隔毎の姿勢情報(姿勢変化)と、集中度、ストレス度合、眠気度合の何れか一つまたは複数の情報を用いて第二の識別関数を算出することにより、所定の時間間隔毎の姿勢情報(姿勢変化)から集中度、ストレス度合、眠気度合を求めることができる。当該識別関数を用いることで、例えば姿勢に応じて、現在椅子10に着座している人の集中度、ストレス度合、眠気度合を判定することができる。
【0056】
例えば着座姿勢判定装置1は第一の実施形態と同様に着座している人の姿勢判定の結果を所定の時間間隔毎に取得する。そして着座姿勢判定装置1はその所定の時間間隔毎の姿勢情報(姿勢変化)を第二の識別関数に入力して現在までの姿勢変化に対応する着座している人の集中度、ストレス度合、眠気度合を算出する。着座姿勢判定装置1は人の集中度、ストレス度合、眠気度合などに基づいて、端末装置100の挙動を制御するようにしてもよい。例えば着座姿勢判定装置1は椅子10に着座している人の集中度が高い場合には、端末装置100に対して緊急以外のメール通知を行わないなどの制御を行って良い。または着座姿勢判定装置1は高ストレス状態と判定した際にはリラックス緩和作用のある芳香を出力する指示を芳香発生装置などに送信するようにしてもよい。または着座姿勢判定装置1は眠気度合が大きいと判定した場合には休憩を促すような警告情報を出力するようにしてもよい。
【0057】
また着座姿勢判定装置1は、複数のセンサ2から得た傾き情報を用いて、人の集中度、ストレス度合、あるいは眠気度合を一つの識別関数により識別するようにしてもよい。例えば集中度を識別する場合、着座姿勢判定装置1は、まず、人が着座していない状況における、各センサ2から得た傾き情報を記憶する。人が着座していない状況における傾き情報は、センサ2からいつ得てもよい。次に、着座姿勢判定装置1は、計測開始時刻から計測終了時刻までの時間の人が着座している状況において、所定の時間間隔で各センサ2から得た傾き情報を記憶する。着座姿勢判定装置1は計測開始時刻から計測終了時刻までの時間における所定の時間間隔毎に、人が着座していない場合と着座している場合の各センサ2から得た傾き情報の差異を算出する。また着座姿勢判定装置1は、計測開始時刻から計測終了時刻までの時間における所定の時間間隔毎に、測定装置等で計測された椅子10に着座している人の集中度を取得する。例えば、着座姿勢判定装置1は脳波計、瞳孔観察装置、呼吸計測装置などの測定装置と通信接続されてよい。着座姿勢判定装置1は椅子10に着座した人の集中度を表す脳波、瞳孔の開度などを示す情報、単位時間あたりの呼吸回数の情報などから公知の手法にて集中度を求め、計測開始時刻から計測終了時刻までの時間における所定の時間間隔で記録する。着座姿勢判定装置1は、着座していない場合と着座している場合における所定の時間間隔毎の各センサ2から得た傾き情報の差異と、所定の時間間隔毎の集中度とを用いて、各センサ2の傾き情報から集中度を識別する第三の識別関数を機械学習により算出する。
【0058】
第一実施形態および第二実施形態において説明した着座姿勢判定装置1は、椅子10に人が着座した状態における椅子10の人が接触する部材の複数箇所の傾き情報を取得し、機械学習により算出された識別関数に傾き情報を入力して着座姿勢を判定する。着座姿勢判定装置1は、椅子10に設けられた複数の傾きセンサから傾き情報を取得する。識別関数は人が複数の異なる着座姿勢で椅子10に着座した状態において傾きセンサから得られた複数の傾き情報それぞれを用いて前記機械学習により算出された関数である。具体的には識別関数は人が着座していない状態における傾きセンサから得られた複数の傾き情報と、人が複数の異なる着座姿勢で椅子10に着座した状態において傾きセンサから得られた複数の傾き情報との差をそれぞれ用いて機械学習により算出された関数である。
これにより、機械学習により算出された各センサ2の傾きと姿勢との対応関係を示す識別関数を用いることで、各センサ2について計測した傾きの差異による着座姿勢を判定することが可能となる。
【0059】
第一実施形態および第二実施形態において説明した着座姿勢判定装置1は椅子10の座面のみに設けられた複数の傾きセンサから傾き情報を取得してよい。
人が椅子10に座るときに最も荷重がかかるのは座面であるため、座面の表面が傾き変化量が最も大きくなる。変化量の大きい箇所のデータ用いることができるため、精度の高い識別関数を算出でき、結果、精度の高い姿勢の判定を行うことが可能となる。
また背板面は、椅子10に座った人が前傾姿勢から後傾姿勢に変わった場合に座面よりも大きく表面の傾きが変化する。変化の大きい箇所のデータを用いることができるため、椅子10に座った人の後方向の動きを顕著に捉えることが可能となり、特に後傾姿勢の判定精度が向上する。
なお、センサが取り付けられる箇所自体には着座する人が接触する必要は無く、着座による傾き変化量が大きい箇所であればどこでも良い。
【0060】
なお上述の第一実施形態や第二実施形態における椅子10は、
図1A,
図1Bで示すような椅子10以外にも、自動車のシート、鉄道や飛行機の乗員用シート、乗客用シート、あるいは映画館・劇場の観客用シートなどであってもよい。
【0061】
第一実施形態および第二実施形態において説明した着座姿勢判定装置1や端末装置100は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0062】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
1・・・着座姿勢判定装置,2・・・センサ,10・・・椅子,11・・・CPU,12・・・RAM,13・・・ROM,14・・・通信モジュール,100・・・端末装置,101・・・傾き情報取得部,102・・・着座姿勢判定部