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  • 特許-トリアジン化合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】トリアジン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/24 20060101AFI20231031BHJP
   B01J 27/128 20060101ALI20231031BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
C07D251/24
B01J27/128 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019153869
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021031442
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】磯村 優仁
(72)【発明者】
【氏名】波濤 航
(72)【発明者】
【氏名】内田 暁人
(72)【発明者】
【氏名】大洞 康嗣
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕太
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特許第7004302(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第00441004(EP,A1)
【文献】特開昭48-034890(JP,A)
【文献】特開2019-147761(JP,A)
【文献】Journal Organic Chemistry,2014年,79(15),7012-7024,doi: 10.1021/jo501144v
【文献】Organic Letters,2017年,19(20),5569-5572,doi: 10.1021/acs.orglett.7b02708
【文献】Berger, Ricarda et al.,New symmetrically substituted 1,3,5-triazines as host compounds for channel-type inclusion formation,CrystEngComm,2012年,(2012), 14(3), 768-770
【文献】Diaz-Ortiz et al.,Synthesis of 1,3,5-triazines in solvent-free conditions catalyzed by silica-supported lewis acids,Green Chemistry,2002年,(2002), 4(4), 339-343
【文献】Frost, Jamie M. et al.,From discrete molecule, to polymer, to MOF: mapping the coordination chemistry of CdII using 113Cd s,Chemical Communications,2016年,(2016), 52(70), 10680-10683
【文献】Matulaitis, T. et al.,Synthesis and properties of bipolar derivatives of 1,3,5-triazine and carbazole,Dyes and Pigments,2016年,(2016), 127, 45-58
【文献】佐藤靖 他,前周期低原子価ニオブ化合物の有機変換反応への利用―量論反応から触媒反応へ―,有機合成化学協会誌,2014年,Vol.72, No.3, Page.257-267 (2014.03.01)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
B01J
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
五塩化ニオブである触媒、および、
酢酸アンモニウム、またはフッ化アンモニウムのいずれか1つのアンモニウム塩、
の存在下、
式(1):
-CN (1)
(式中、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール基である)
で示されるニトリル化合物、および
式(2):
-CX (2)
(式中、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そして、Xは、ハロゲン原子である)
で示されるトリハライド化合物、
を反応させることを含む、式(3)または式(4):
【化1】
(式中、RおよびRは、前記に定義する通りであって、互いに相異なるものである)
で示されるトリアジン化合物の製造方法。
【請求項2】
さらに三塩化鉄の存在下で反応を行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
およびRが各々独立して、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいナフチル基であって、該置換基が、ハロゲン原子、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数3~6個のシクロアルキル基、および1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルコキシ基からなる群から選ばれる、請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項4】
三塩化鉄の使用量が、五塩化ニオブの使用量に対して、0.2倍~3.0倍モル当量である、請求項2または3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)で示されるニトリル化合物の使用量が、式(2)で示されるトリハライド化合物の使用量に対して、0.01倍~10.0倍モル当量である、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒を用いた、ニトリル化合物、およびトリハライド化合物からのトリアジン化合物の新規な製造方法に関する。具体的には、第5族金属化合物を含む触媒、およびアンモニウム塩を用いた、ニトリル化合物およびトリハライド化合物の環化付加反応によるトリアジン化合物の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアジン化合物は、医薬、農薬、または電子材料等の機能性物質の中間体原料として有用であることが知られている(非特許文献1および2)。例えば、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジンは、電子材料の原料として挙げられる。
【0003】
これまで、ニトリル化合物の環化付加反応によるトリアジン化合物の製造方法としては、強酸である塩酸およびトリフルオロ酢酸等のブレンステッド酸を用いる製法(非特許文献3)、高温および高圧条件を用いる製法(特許文献1および非特許文献4)、および毒性の強い塩化水素ガスを用いる製法(非特許文献5)等が知られている。
【0004】
また、ニトリル化合物以外に、アミジン化合物を、イソチオシアネートおよびカルバミジン(非特許文献6)、またはアルコール(非特許文献7)等と組み合わせる等の複数の反応基質を組み合わせたトリアジン化合物の製造方法が知られているが、毒性の強い水銀等の金属の使用、用いる基質の制限、およびアンモニアなどの副生成物等の生成による低い原子効率等の欠点を有する。
【0005】
そこで、上記機能性物質の中間体原料として期待できる、相異なる2種類以上の置換基を有するトリアジン化合物を容易に製造できる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-188188号
【非特許文献】
【0007】
【文献】D. M. Shin, et al., Thin. Solid. Films., 2000, 363, 252
【文献】P. Singla, et al., Eur. J. Med. Chem., 2015, 102, 39
【文献】S. Hayami, およびK. Inoue, Chem. Lett., 1999, 28, 545
【文献】S. Bengelsdorf, J. Am. Chem. Soc, 1957, 80, 1442
【文献】S. Yanagida, S. Komori, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 1973, 46, 306
【文献】J. C. Kaila, et. al., Tetrahedron. Lett. 2010, 51, 1486
【文献】Q. You, et al., Org. Biomol. Chem., 2015, 13, 6723
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ニトリル化合物とトリハライド化合物との交差環化反応により、金属触媒を用いる温和な製法条件で簡便で効率的に、且つ高選択的に、相異なる2種類以上の置換基を有するトリアジン化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者等は、1段階で且つ高選択的に相異なる2種類以上の置換基を有するトリアジン化合物を簡便に製造するべく鋭意研究した結果、第5族金属化合物を含む触媒およびアンモニウム塩、並びに適宜、ハロゲン化金属化合物の存在下、ニトリル化合物と、ベンゾトリフルオリド(TFT)等のトリハライド化合物との交差環化反応が進行し、相異なる2種類以上の置換基を有するトリアジン化合物を1段階で且つ高選択的に製造することができることを見出し、本発明を完成することができた。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0010】
[1] 第5族金属化合物を含む触媒、および、
アンモニウム塩、
の存在下、
式(1):
-CN (1)
(式中、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール基である)
で示されるニトリル化合物、および
式(2):
-CX (2)
(式中、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そして、Xは、ハロゲン原子である)
で示されるトリハライド化合物、
を反応させることを含む、式(3)または式(4):
【化1】
(式中、RおよびRは、前記に定義する通りである)
で示されるトリアジン化合物の製造方法。
[2] さらにハロゲン化金属化合物の存在下で反応を行う、[1]に記載の製造方法。
[3] RおよびRが各々独立して、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいナフチル基であって、該置換基が、ハロゲン原子、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数3~6個のシクロアルキル基、および1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルコキシ基からなる群から選ばれる、[1]または[2]のいずれかに記載の製造方法。
[4] ハロゲン化金属化合物が、第4族金属~第13族金属から選ばれる金属を含む、[2]または[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] ハロゲン化金属化合物の使用量が、第5族金属化合物の使用量に対して、0.2倍~3.0倍モル当量である、[2]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6] アンモニウム塩が、ハロゲン化アンモニウム塩またはカルボン酸アンモニウム塩から選ばれる、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7] 式(1)で示されるニトリル化合物の使用量が、式(2)で示されるトリハライド化合物の使用量に対して、0.01倍~10.0倍モル当量である、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、第5族金属化合物を含む触媒、およびアンモニウム塩、並びに適宜、ハロゲン化金属化合物を用いて、ニトリル化合物と、トリハライド化合物とから、2種類以上の相異なる置換基を有するトリアジン化合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例と比較例との実験結果を記載する表1を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
(定義)
以下に、本明細書および特許請求の範囲中で使用する用語の定義を示す。特に断らなければ、本明細書中の基または用語について示す最初の定義を、個別にまたは別の基の一部として本明細書中の基または用語に適用する。
【0014】
本明細書中で使用する用語「第5族金属化合物」とは、周期表中の第5族元素(ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはバナジウム(V))のいずれか1つの金属の化合物を意味する。ニオブまたはタンタルが好ましく、ニオブがより好ましい。化合物としては、ハロゲン化物が好ましく、塩化物がより好ましい。具体的には、五塩化ニオブ(NbCl)、五臭化ニオブ(NbBr)、五フッ化ニオブ(NbF)、および五塩化タンタル(TaCl)が挙げられ、好ましくは、五塩化ニオブ(NbCl)および五塩化タンタル(TaCl)が挙げられ、より好ましくは五塩化ニオブ(NbCl)が挙げられる。該第5族金属化合物は、本発明の製法において、ニトリル化合物とトリハライド化合物との交差環化反応によるトリアジン化合物の生成のための触媒として作用すると考えられる。
【0015】
本明細書中で使用する用語「ハロゲン化金属化合物」とは、任意の金属のフッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物を意味する。ハロゲン化金属化合物の例としては、第4族金属、第6族金属、第7族金属、第8族金属、第9族金属、第10族金属、第11族金属、第12族金属、および第13族金属から選ばれる少なくとも1つの金属のハロゲン化物が挙げられ、当該金属としては、好ましくは第6族金属~第13族金属が挙げられ、より好ましくは第6族金属~第10族金属が挙げられ、最も好ましくは第8族金属が挙げられる。具体的には、塩化アルミニウム(AlCl)、塩化ジルコニウム(ZrCl)、三フッ化鉄(FeF)、二塩化鉄(FeCl)、三塩化鉄(FeCl)、三臭化鉄(FeBr)、塩化コバルト(CoCl)、塩化ニッケル(NiCl)、塩化銅(CuCl)、塩化亜鉛(ZnCl)、臭化亜鉛(ZnBr)、および塩化ルテニウム(RuCl)が挙げられるが、鉄の塩化物が好ましい。具体的には、三塩化鉄(FeCl)が挙げられる。該ハロゲン化金属化合物は、本発明の製法において、第5族金属化合物の触媒サイクルを効率よく回すのに作用すると考えられ、適宜、本発明の製法における反応系中に添加される。
【0016】
本明細書中で使用する用語「アンモニウム塩」とは、アンモニアと任意の酸を反応させることで得られる塩を意味する。具体的には、有機アンモニウム塩(例えば、カルボン酸アンモニウム(例えば、酢酸アンモニウム(NHOAc))、カルバミン酸アンモニウム(NHOCONH))、および無機アンモニウム塩(例えば、アミド硫酸アンモニウム(NHOSONH)、フッ化アンモニウム(NHF)、塩化アンモニウム(NHCl)、臭化アンモニウム(NHBr)、およびヨウ化アンモニウム(NHI))が挙げられるが、酢酸アンモニウム、フッ化アンモニウムおよび塩化アンモニウムが好ましく、酢酸アンモニウムおよびフッ化アンモニウムがより好ましい。該アンモニウム塩は、本発明の製法において窒素源として存在し、目的生成物のトリアジン化合物の構成要素を成していると考えられる。
【0017】
本発明の1実施態様において、本発明の反応は、
第5族金属化合物が、五塩化ニオブ(NbCl)であり、ハロゲン化金属化合物が、三塩化鉄(FeCl)であり、そして、アンモニウム塩が、フッ化アンモニウム(NHF)または酢酸アンモニウム(NHOAc)である、
反応系中で実施する。
【0018】
本明細書中で使用する用語「ニトリル化合物」とは、反応基質として使用される、式(1):
-CN (1)
(式中、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール基である)
で示されるニトリル化合物を意味する。
【0019】
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、またはアントラセニル基が挙げられ、フェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、ヘテロアリール基に含有されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を意味する。ヘテロアリール基とは、5員環式ヘテロアリール基または6員環式ヘテロアリール基等を表し、該5員環式ヘテロアリール基の例としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、又はチアジアゾリル基を挙げられる。該6員環式ヘテロアリール基の例としては、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、又はピラジニル基を挙げられる。
【0020】
「ニトリル化合物」は、Rが、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基であるニトリル化合物であることが好ましい。
【0021】
次に、式(1):R-CNで示されるニトリル化合物における、置換基について記載する。Rとしてのアリール基またはヘテロアリール基は、無置換であっても、または1個以上(例えば、1個、2個、または3個、好ましくは1個)の置換基で置換されていてもよい。該置換基の例としては、本発明の製法における交差環化反応に有害な影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではないが、具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、シクロアルキル基、及びアルコキシ基等が挙げられる。
【0022】
本明細書に記載する1実施態様によれば、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいナフチル基であって、該置換基は、ハロゲン原子、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数3~6個のシクロアルキル基、および1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルコキシ基からなる群から選ばれる。
【0023】
また、本明細書中に記載する1実施態様によれば、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基であって、該置換基は、ハロゲン原子、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基、および1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルコキシ基からなる群から選ばれる。
【0024】
また、本明細書中に記載する1実施態様によれば、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基であって、該置換基は、ハロゲン原子、および1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基からなる群から選ばれる。
【0025】
また、本明細書に記載する1実施態様によれば、Rは、フェニル基、または1つの置換基で置換されたフェニル基であって、該置換基は、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選ばれ、好ましくはフッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロエチル基からなる群から選ばれ、より好ましくはフッ素原子およびメチル基からなる群から選ばれる。
【0026】
更に、本明細書に記載する1実施態様によれば、式(I)で示されるニトリル化合物は、ベンゾニトリル、4-メチルベンゾニトリル(「p-トルニトリル」とも呼称される)、4-フルオロベンゾニトリル、および4-トリフルオロメチルベンゾニトリルが挙げられ、好ましくはベンゾニトリル、4-メチルベンゾニトリル、および4-フルオロベンゾニトリルが挙げられる。
【0027】
次に、本明細書中で使用する用語「トリハライド化合物」とは、反応基質として使用される、式(2):
-CX (2)
(式中、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そして、Xは、ハロゲン原子である)
で示されるトリハライド化合物を意味する。
【0028】
ここで、アリール基またはヘテロアリール基としては、上述したRと同様のアリール基またはヘテロアリール基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられ、フェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、ヘテロアリール基の具体例としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、又はチアジアゾリル基、あるいは、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、又はピラジニル基が挙げられる。また、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、および臭素原子が好ましく、フッ素原子および塩素原子がより好ましく、フッ素原子がより一層好ましい。
【0029】
「トリハライド化合物」は、Rが、1つ以上の置換基で置換されていてもよいアリール基であるトリハライド化合物であることが好ましい。例えば、式(2)において、Rが、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基であり、そして、Xがフッ素原子または塩素原子である、化合物が好ましい。
【0030】
次に、式(2):R-CXで示されるトリハライド化合物における、置換基について記載する。Rとしてのアリール基またはヘテロアリール基は、無置換であっても、または1個以上(例えば、1個、2個、または3個、好ましくは1個)の置換基で置換されていてもよい。該置換基の例としては、本発明の製法における交差環化反応に有害な影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではないが、具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、シクロアルキル基、及びアルコキシ基等が挙げられる。
【0031】
本明細書中に記載する1実施態様によれば、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいナフチル基であって、該置換基は、ハロゲン原子、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数3~6個のシクロアルキル基、および1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルコキシ基からなる群から選ばれる。
【0032】
また、本明細書中に記載する1実施態様によれば、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基であって、該置換基は、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基からなる群から選ばれる。
【0033】
また、本明細書中に記載する1実施態様によれば、Rは、フェニル基、または1つの置換基で置換されたフェニル基であって、該置換基は、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリクロロメチル基、トリクロロエチル基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選ばれ、好ましくはフッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロエチル基からなる群から選ばれ、より好ましくはフッ素原子およびメチル基からなる群から選ばれ、より好ましくはメチル基である。
【0034】
さらに、本明細書中に記載する1実施態様によれば、式(2)で示されるトリハライド化合物は、ベンゾトリフルオリド、ベンゾトリクロリド、3-メチルベンゾトリフルオリド(「3-メチル-1-トリフルオロトルエン」とも呼称する)、3-メチルベンゾトリクロリド、4-メチルベンゾトリフルオリド(「4-メチル-1-トリフルオロトルエン」とも呼称する)、4-メチルベンゾトリクロリド、3-メトキシベンゾトリフルオリド、3-メトキシベンゾトリクロリド、4-メトキシベンゾトリフルオリド、または4-メトキシベンゾトリクロリドから選ばれ、好ましくは、ベンゾトリフルオリド、3-メチルベンゾトリフルオリド、および4-メチルベンゾトリフルオリドから選ばれる。
【0035】
本明細書中に記載する1実施態様によれば、上記式(1)および式(2)における、RおよびRは各々独立して、1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいナフチル基であって、該置換基が、ハロゲン原子、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルキル基、1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数3~6個のシクロアルキル基、および1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~6個のアルコキシ基からなる群から選ばれる。
【0036】
前記のニトリル化合物およびトリハライド化合物における、置換基として使用される用語の定義を記載する。
【0037】
置換基としての用語「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、フッ素原子および塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0038】
置換基としての用語「アルキル基」とは、炭素数1~6個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、の直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味する。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、およびヘキシル基等が挙げられ、好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。
【0039】
置換基としての用語「アルコキシ基」とは、上記直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基が酸素原子に連結した基を意味する。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、およびブトキシ基等が挙げられる。
【0040】
置換基としての用語「シクロアルキル基」とは、炭素数3~7個、好ましくは3~6個の脂環式アルキル基を意味する。具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロヘプチル基が挙げられ、好ましい例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基が挙げられる。
【0041】
置換基としての用語「ハロゲン化アルキル基」とは、1個以上のハロゲン原子(フッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい)によって置換されたアルキル基を意味する。ペルフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)がより好ましい。具体例としては、1-フルオロメチル基、1-クロロメチル基、1,1-ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、およびヘプタフルオロプロピル基等を挙げられ、好ましい例としては、トリフルオロメチル基、およびペンタフルオロエチル基が挙げられる。
【0042】
本発明の製造方法で製造される生成物としてのトリアジン化合物は、下記式(3)または式(4):
【化2】
(式中、RおよびRは、前記に定義する通りである)
で示されるトリアジン化合物を意味する。
ここで、式(3)で示されるトリアジン化合物は、そのトリアジン環における環内炭素原子上の3つの置換基のうち、2つの置換基がニトリル化合物に由来する置換基Rであり、残りの1つの置換基がトリハライド化合物に由来する置換基Rである。一方で、式(4)で示されるトリアジン化合物は、そのトリアジン環における環内炭素原子上の3つの置換基のうち、2つの置換基がトリハライド化合物に由来する置換基Rであり、残りの1つの置換基がニトリル化合物に由来する置換基Rである。
【0043】
式(3)の化合物および式(4)の化合物の生成比は、分光学的分析法(核磁気共鳴スペクトル法(例えば、H NMR)、質量スペクトル法(MS))またはクロマトグラフィー分析法(例えば、液体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィー)の解析により決定しうるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0044】
また、本明細書中に記載する1実施態様によれば、生成物としての、式(3)で示されるトリアジン化合物および式(4)で示されるトリアジン化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化3】
【化4】
【0045】
生成物としてのトリアジン化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物を包含するが、これらに限定されるものではない。
2,4-ジフェニル-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-フェニル-4,6-ジ(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-フェニル-4,6-ジ(3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ(4-フルオロフェニル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、
2-(4-フルオロフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン。
【0046】
本発明の製造方法を以下に詳しく説明する。
(反応式1)
【化5】
(式中、R、RおよびXは、前掲と同義である)
【0047】
本発明の製造方法は、上記の反応式1に従って、第5族金属化合物からなる触媒、ハロゲン化金属化合物(任意)、およびアンモニウム塩の存在下、ニトリル化合物(1)と、トリハライド化合物(2)とを反応(すなわち、交差環化反応)させることにより、式(3)および/または式(4)で示されるトリアジン(化合物)を製造することができる。
【0048】
該「第5族金属化合物」、該「ハロゲン化金属化合物」、該「アンモニウム塩」、「ニトリル化合物(1)」、「トリハライド化合物(2)」は、いずれも市販されているか、あるいは当該有機化学もしくは有機金属化学の分野において知られる方法、またはこれらに準じた方法により製造することができる。
【0049】
トリハライド化合物(2)の使用量は、ニトリル化合物(1)の配合量基準で、例えば、0.1倍~110.0倍モル当量、好ましくは0.5倍~12.0倍モル当量で使用することができる。あるいは、ニトリル化合物(1)の使用量は、トリハライド化合物(2)の配合量基準で、例えば、0.01倍~10.0倍モル当量、好ましくは0.1倍~2.0倍モル当量で使用することができる。
【0050】
第5族金属化合物の使用量は、ニトリル化合物(1)の配合量基準で、触媒量~当量で使用することができる。具体的には、ニトリル化合物(1)の配合量基準で0.5~100%モル当量、好ましくは5~50%モル当量、より好ましくは10%モル当量以上(例えば、10~30%モル当量、具体的には20%モル当量)で使用することができる。
【0051】
ハロゲン化金属化合物の使用量は、ニトリル化合物(1)の配合量基準で触媒量~当量で使用してもよい。具体的には、ニトリル化合物(1)の配合量基準で0.5~100%モル当量、好ましくは5~50%モル当量、より好ましくは10%モル当量以上(例えば、10~40%モル当量、具体的には30%モル当量)で使用してもよい。ハロゲン化金属化合物の使用量は、第5族金属化合物の使用量基準で、触媒量~過剰量(例えば、0.1倍~10.0倍モル当量)で使用することができる。具体的には、例えば、第5族金属化合物の配合量基準で0.2倍~5.0倍モル当量、好ましくは0.2倍~3.0倍モル当量、より好ましくは1.0倍~1.5倍モル当量(例えば、1.0倍モル当量)で使用することができる。
【0052】
本発明の反応は、反応基質として使用するトリハライド化合物(2)が溶媒として作用し得て、無溶媒下で行うことができる。あるいは、1種類以上の反応溶媒中で行うこともできる。使用する反応溶媒としては、本発明の製造方法における交差環化反応に有害な影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではないが、配位性でない極性溶媒中で行うことができ、例えばハロゲン化極性溶媒中で行うことができる。ハロゲン化極性溶媒とは、例えばクロロホルムを挙げられる。
【0053】
本発明の反応は、常温(例えば、室温)から、高温(例えば、使用する反応溶媒の沸点)で行うことができる。例えば、40℃~130℃が挙げられ、60℃~100℃が好ましく、80℃~100℃がより好ましい。
【0054】
本発明の反応は、不活性気体(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)の雰囲気下で行ってもよい。
【0055】
本発明の反応は、常圧から加圧容器(例えば、市販のステンレス加圧容器)中での加圧条件下で行なうことができ、通常常圧で行なう。
【0056】
また、本発明の反応時間は、反応基質、反応試薬、使用する溶媒、反応温度などの反応条件に依存して変わり得るが、例えば、数時間~数日間で完結し、通常2時間~72時間が好ましく、6時間~48時間が好ましい。
【実施例
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。化合物の確認は、各種分光学的分析法による解析により行なった。具体的には、一次元プロトン核磁気共鳴スペクトル(H NMR)法、質量スペクトル(MS)法による解析により行った。核磁気共鳴スペクトルには、テトラメチルシランを内部標準として用いた。反応収率は、内部基準物質(例えば、ヘキサデカン)を用いるガスクロマトグラフィー分析法による定量によって算出した。
【0058】
まず、各種トリアジン化合物の製造例を記載する。
ここで、以下の実施例および比較例において、ニトリル化合物(1)、トリハライド化合物(2)、第5族金属化合物、ハロゲン化金属化合物、およびアンモニウム塩の各種類および/または使用量を変えて、トリアジン化合物生成物の収率および前記式(3)または式(4)で示される2種類のトリアジン化合物の生成比率を調べた。その結果を図1中の表1に示す。
表中、ニトリル化合物のA1とは、p-トルニトリルを意味し、ニトリル化合物のA2とは、4-フルオロベンゾニトリルを意味し、ニトリル化合物のA3とは、ベンゾニトリルを意味する。トリハライド化合物のB1とは、ベンゾトリフルオリド(TFT)を意味し、トリハライド化合物のB2とは、4-メチル-1-トリフルオロトルエンを意味し、トリハライド化合物のB3とは、3-メチル-1-トリフルオロトルエンを意味する。第5族金属化合物のC1とは、五塩化ニオブ(NbCl)を意味する。ハロゲン化金属化合物のD1とは、三塩化鉄(FeCl)を意味し、ハロゲン化金属化合物のD2とは、塩化セリウム(CeCl)を意味する。アンモニウム塩のE1とは、フッ化アンモニウム(NHF)を意味し、アンモニウム塩のE2とは、酢酸アンモニウム(NHOAc)を意味する。記号「nd」とは、「検出せず」を意味する。
【0059】
(実施例1)
2,4-ジフェニル-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、および
2-フェニル-4,6-ジ(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの製法
アルゴン雰囲気下、枝付きシュレンク管に、五塩化ニオブ(NbCl)(0.3mmol)、三塩化鉄(FeCl)(0.45mmol)、およびフッ化アンモニウム(NHF)(1.5mmol)をそれぞれ加えた後、ついでp-トルニトリル(1.5mmol)およびベンゾトリフルオリド(8.14mmol)(1mL)を加えた。その後、80℃で反応開始した。24時間後、シュレンク管を冷却し、THFを10mL、およびトリエチルアミン(3mL)を加えて反応を停止させて、2,4-ジフェニル-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、および2-フェニル-4,6-ジ(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンを生成物として含む反応液を得た。反応収率は、当該反応液に内部基準物質としてヘキサデカン(40mg)を加えてガスクロマトグラフィーを用いた定量測定により算出した。
収率:
2,4-ジフェニル-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン:2%
2-フェニル-4,6-ジ(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン:17%
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 323(85)[M]+,117(100),103(22),90(13),76(6)
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 337(58)[M]+,117(100),104(4),90(17),76(2)
【0060】
(実施例2および3)
フッ化アンモニウムの使用量を1.5mmolの代わりに0.45mmol(実施例2)または0.75mmol(実施例3)用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、実施例1と同様の生成物を得た。
【0061】
(実施例4)
フッ化アンモニウムの使用量を1.5mmolの代わりに0.75mmol用い、且つ塩化鉄の使用量を0.45mmolの代わりに無使用とした以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、実施例1と同様の生成物を得た。表1に示すように、生成物は得られるものの実施例1に比して収率が低下したことから、塩化鉄(ハロゲン化金属化合物)の存在が好ましいことが示唆される。
【0062】
(実施例5および6)
塩化鉄の使用量を0.45mmolの代わりに0.75mmol(実施例5)または1.5mmol(実施例6)用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、実施例1と同様の生成物を得た。
【0063】
(実施例7)
ベンゾトリフルオリドの使用量を8.14mmolの代わりに0.75mmol用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、実施例1と同様の生成物を得た。
【0064】
(実施例8)
実施例1のフッ化アンモニウム(1.5mmol)の代わりに酢酸アンモニウムを0.75mmol用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、実施例1と同様の生成物を得た。
【0065】
(実施例9)
2,4-ジ(4-フルオロフェニル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、および
2-(4-フルオロフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンの製法
実施例1のp-トルニトリル(1.5mmol)の代わりに4-フルオロベンゾニトリル(1.5mmol)を用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、対応する目的生成物を含む反応液を得た。反応収率は、実施例1と同様の測定により算出した。
収率:
2,4-ジ(4-フルオロフェニル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン:27%
2-ジ(4-フルオロフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン:6%
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 345(55)[M]+,121(100),103(42),76(8)
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 327(12)[M]+,121(34),103(100),76(13)
【0066】
(実施例10)
2,4-ジフェニル-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、および
2-フェニル-4,6-ジ(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの製法
実施例1のp-トルニトリル(1.5mmol)の代わりにベンゾニトリル(1.5mmol)を、実施例1のベンゾトリフルオリド(8.14mmol)の代わりに4-メチル-1-トリフルオロトルエン(0.75mmol)を、それぞれ用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、対応する目的生成物を含む反応液を得た。反応収率は、実施例1と同様の測定により算出した。
収率:
2,4-ジフェニル-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン:25%
2-フェニル-4,6-ジ(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン:4%
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 323(83)[M]+,117(100),103(18),90(14),76(7)
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 337(65)[M]+,117(100),90(17)
【0067】
(実施例11)
2,4-ジフェニル-6-(3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、および
2-フェニル-4,6-ジ(3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの製法
実施例1のp-トルニトリル(1.5mmol)の代わりにベンゾニトリル(1.5mmol)を、実施例1のベンゾトリフルオリド(8.14mmol)の代わりに3-メチル-1-トリフルオロトルエン(0.75mmol)を、それぞれ用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行い、対応する目的生成物を含む反応液を得た。反応収率は、実施例1と同様の測定により算出した。
収率:
2,4-ジフェニル-6-(3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン:21%
2-フェニル-4,6-ジ(3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン:2%
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 323(83)[M]+,117(100),103(18),90(14),76(7)
GC-MS (EI) m/z (relative intensity): 337(65)[M]+,117(100),90(17)
【0068】
(比較例1)
実施例7の五塩化ニオブの使用量を0.3mmolの代わりに無使用とした以外は実施例7の方法に準じて反応を行ったが、目的とする生成物は得られなかった。このことから第5族金属化合物は、本発明の製法に必要不可欠であることが示唆された。
【0069】
(比較例2)
実施例1の塩化鉄(0.3mmol)の代わりに塩化セリウム(CeCl)(0.3mmol)を用いた以外は実施例1の方法に準じて反応を行ったが、目的とする生成物は得られなかった。このことから塩化セリウム(セリウムは第3族金属である)はハロゲン化金属化合物として適当でないことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明により、医薬、農薬、または電子材料等の機能性物質の中間原料として有用な、相異なる2種類以上の置換基を有するトリアジン化合物を、温和な製法条件で簡便に且つ効率的に、ニトリル化合物およびトリハライド化合物から製造することができるため、本発明の製法は有用であり、工業的に利用価値が高い。
図1