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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019228554
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021095041
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ紡織精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594066176
【氏名又は名称】株式会社遠州
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白木 晋
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤代 俊
(72)【発明者】
【氏名】笹山 美隆
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031748(WO,A1)
【文献】特開2004-090764(JP,A)
【文献】特開2013-104501(JP,A)
【文献】特開昭48-027152(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176402(JP,U)
【文献】特開2004-169863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに取り付け可能なアッパレールと、
前記アッパレールをスライド可能に保持しているロアレールと、
前記ロアレールを車体に固定するボルトと、
前記ボルトに挿通されるワッシャと、
前記車体に固定前の前記ボルトを前記ロアレールに係止する係止部材と、
を備えており、
前記ロアレールは、貫通孔を有している細長の底板と、前記底板の短手方向の両端から上方へ延びている一対の外縦板と、それぞれの前記外縦板の上端から水平方向内側へ延びている一対の上板と、それぞれの前記上板の内側端から下方へ延びている一対の内縦板と、を備えており、
前記係止部材は、前記ロアレール内に配置されつつ、前記ワッシャを通過している前記ボルトが前記貫通孔に通った状態で係止するものであって
前記ワッシャの上に樹脂で形成されており、外径が前記一対の内縦板の間隔よりも大きく、内径が前記ボルトのヘッドの外径以上の筒状のスペーサと、
前記ワッシャの内周面に設けられており、前記ボルトのネジ部が圧入される樹脂製の係止リングと、
を備えており、
前記ワッシャの表面に溝が設けられており、前記溝に充填された樹脂棒にて前記スペーサと前記係止リングがつながっている、
シートスライド装置。
【請求項2】
前記ワッシャの外縁が上方に傾斜しているとともに前記スペーサに食い込んでいる、請求項に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記ワッシャの内周面に、前記係止リングに食い込んでいる突起が設けられている、請求項に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
シートに取り付け可能なアッパレールと、
前記アッパレールをスライド可能に保持しているロアレールと、
前記ロアレールを車体に固定するボルトと、
前記ボルトに挿通されるワッシャと、
前記車体に固定前の前記ボルトを前記ロアレールに係止する係止部材と、
を備えており、
前記ロアレールは、貫通孔を有している細長の底板と、前記底板の短手方向の両端から上方へ延びている一対の外縦板と、それぞれの前記外縦板の上端から水平方向内側へ延びている一対の上板と、それぞれの前記上板の内側端から下方へ延びている一対の内縦板と、を備えており、
前記係止部材は、
前記ロアレール内に配置されつつ、前記ワッシャを通過している前記ボルトが前記貫通孔に通った状態で係止するものであって、
U字形状をなしているとともに前記底板と前記一対の内縦板の間で圧縮されて前記ロアレールに係止されており、U字の両先端が前記底板に当接しているとともにU字の中央と前記一対の内縦板の間に前記ワッシャを挟んでおり、
前記U字の中央に孔が設けられており、当該孔に前記ボルトが圧入されている、
シートスライド装置。
【請求項5】
前記係止部材に前記ワッシャを止めるツメが設けられている、請求項に記載のシートスライド装置。
【請求項6】
シートに取り付け可能なアッパレールと、
前記アッパレールをスライド可能に保持しているロアレールと、
前記ロアレールを車体に固定するボルトと、
前記ボルトに挿通されるワッシャと、
前記車体に固定前の前記ボルトを前記ロアレールに係止する係止部材と、
を備えており、
前記ロアレールは、貫通孔を有している細長の底板と、前記底板の短手方向の両端から上方へ延びている一対の外縦板と、それぞれの前記外縦板の上端から水平方向内側へ延びている一対の上板と、それぞれの前記上板の内側端から下方へ延びている一対の内縦板と、を備えており、
前記係止部材は、前記ロアレール内に配置されつつ、前記ワッシャを通過している前記ボルトが前記貫通孔に通った状態で係止するものであって、
U字形状をなしており、U字の両先端が前記底板に当接しU字の中央が前記一対の内縦板に接して圧縮されて前記ロアレールに係止されており、
前記U字の中央に孔が設けられており、当該孔に前記ボルトが圧入されているとともに、前記U字の一方の先端から前記底板に沿って腕が延びており、当該腕と前記底板の間に前記ワッシャが挟まれており、
前記貫通孔と前記ワッシャを前記ボルトが通っている、
シートスライド装置。
【請求項7】
シートに取り付け可能なアッパレールと、
前記アッパレールをスライド可能に保持しているロアレールと、
前記ロアレールを車体に固定するボルトと、
前記ボルトに挿通されるワッシャと、
前記車体に固定前の前記ボルトを前記ロアレールに係止する係止部材と、
を備えており、
前記ロアレールは、貫通孔を有している細長の底板と、前記底板の短手方向の両端から上方へ延びている一対の外縦板と、それぞれの前記外縦板の上端から水平方向内側へ延びている一対の上板と、それぞれの前記上板の内側端から下方へ延びている一対の内縦板と、を備えており、
前記係止部材は、前記ロアレール内に配置されつつ、前記ワッシャを通過している前記ボルトが前記貫通孔に通った状態で係止するものであって、
記ボルトが圧入される孔を有している薄板であり、外縁から上方へ向けて前記ワッシャを止める外ツメが延びており、前記孔の縁から下方へ向けて内ツメが延びており、当該内ツメが前記底板の前記貫通孔に引っ掛かっている、
シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車のシートをスライドさせるシートスライド装置に関する。特に、車両に容易に取り付けることのできるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートスライド装置は、シートに取り付け可能なアッパレールと、アッパレールをスライド可能に支持しており、車両に取り付けられるロアレールを備えている。ロアレールは、貫通孔を有している細長の底板と、一対の外縦板と、一対の上板と、一対の内縦板を備えている。一対の外縦板は、底板の短手方向の両端から上方へ延びている。それぞれの上板は、それぞれの外縦板の上端から水平方向内側へ延びている。それぞれの内縦板は、それぞれの上板の内側端から下方へ延びている。
【0003】
ロアレールは、底板の貫通孔を通してボルトで車体に固定される。ロアレールを車体にセットした後にボルトを一対の内縦板の間を通すのは煩わしい。特許文献1には、車体に固定する前のボルトをロアレールの内側に仮止めする技術が開示されている。特許文献1に開示されたシートスライド装置では、ワッシャとロアレールの底板に挿通されたボルトを底板の下側から歯付の止め輪で仮止めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-322678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシートスライド装置では、ロアレールを車体に取り付けた際、底板と車体の間に止め輪が残ってしまい、底板と車体の間に隙間が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するシートスライド装置は、ボルトとワッシャをロアレール内に仮止めする係止部材をロアレールの内側に配置する。それゆえ、ロアレールの底板と車体の間に隙間を生じない。
【0007】
係止部材の一態様は次の通りである。係止部材は、樹脂製のスペーサと樹脂製の係止リングを備えている。スペーサは、ワッシャの上に樹脂で形成されており、外径が一対の内縦板の間隔よりも大きく、内径がボルトのヘッドの外径以上の筒状である。係止リングは、ワッシャの内周面に設けられており、ボルトのネジ部が圧入される。ワッシャの表面に溝が設けられており、溝に充填された樹脂棒にてスペーサと係止リングがつながっている。
【0008】
薄いワッシャの内周面に設けた係止リングのみでは、係止リングとともにボルトがワッシャから外れてしまうおそれがある。係止リングはワッシャの溝に充填された樹脂棒でつながっているため、ワッシャから外れ難い。また、スペーサが一対の内縦板と底板の間に挟まり、ワッシャとボルトがロアレールから外れることを防止する。
【0009】
さらに、樹脂棒はワッシャの溝に充填されており、ワッシャの表面は樹脂で覆われていない。それゆえ、ボルトのヘッドとワッシャの間、および、ワッシャと底板の間に樹脂が挟まれず、ボルトで底板(ロアレール)を車体にしっかりと固定することができる。
【0010】
係止部材の別の一態様は次の通りである。係止部材は、逆U字形状をなしており、U字の両先端が底板に当接しU字の中央が一対の内縦板に接して圧縮されてロアレールに係止される。U字の中央に孔が設けられており、その孔にボルトが圧入されている。U字の中央と一対の内縦板の間にワッシャが挟まれている。なお、係止部材にワッシャを止めるツメが設けられていてもよい。
【0011】
ワッシャは、U字の中央と一対の内縦板との間ではなく、係止部材と底板の間に挟まれていてもよい。例えば、U字の一方の先端から底板に沿って腕が延びており、その腕と底板の間にワッシャが挟まれている構造でもよい。
【0012】
係止部材のさらに別の一態様は次の通りである。係止部材は、ボルトが圧入される孔を有している薄板であり、外縁から上方へ向けてワッシャを止める外ツメが延びている。また、孔の縁から下方へ向けて内ツメが延びている。内ツメが底板の貫通孔に引っ掛かかり、ワッシャとボルトを仮止めする。
【0013】
上記したいずれの態様も、係止部材はロアレールにてボルトとワッシャを仮止めする。それゆえ、ロアレールを車体に取り付けた際に底板と車体との間に隙間が生じない。なお、第4の態様では、内ツメが底板と車体の間に残るが、内ツメは底板と車体の間でつぶれてしまい、隙間を生じない。
【0014】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施例のシートスライド装置の外観図である。
図2】係止部材とボルトをロアレールから分解した斜視図である。
図3】係止部材の斜視図である。
図4】係止部材を縦半分にカットした斜視図である。
図5】第1実施例のシートスライド装置の断面図である。
図6】ワッシャの変形例の断面図である。
図7】第2実施例のシートスライド装置の分解図である。
図8】第2実施例のシートスライド装置の断面図である。
図9】第3実施例のシートスライド装置の分解図である。
図10】第3実施例のシートスライド装置の断面図である。
図11】第4実施例のシートスライド装置の分解図である。
図12】係止部材とワッシャの断面図である(ボルト挿通前)。
図13】係止部材とワッシャの断面図である(ボルト挿通後)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例のシートスライド装置2を説明する。図1に、自動車に取り付けられたシートスライド装置2の側面図を示す。シートスライド装置2は、ロアレール10とアッパレール20を備えている。ロアレール10は長尺である。ロアレール10は、その長手方向に移動可能(スライド可能)にアッパレール20を保持する。
【0017】
ロアレール10は複数のボルト3にて車体のフロアパネル80に固定される。アッパレール20は、シート90のシートクッション91の下部に取り付けられる。アッパレール20は、不図示のフレームを介してシートクッション91の下部に取り付けられる。シートスライド装置2は、シートクッション91の下部の左右に夫々取り付けられる。図中の座標系のX方向がロアレール10とアッパレール20のレール長手方向に相当する。Y方向がレール短手方向に相当する。図中の座標系の+Z方向が上方を示す。以下では、ロアレール10の長手方向(図中の座標系のX方向)をレール長手方向と称する。また、ロアレール10の短手方向(図中の座標系のY方向)をレール短手方向と称する。
【0018】
先に述べたように、ロアレール10は、複数のボルト3で車体のフロアパネル80に固定される。実施例のシートスライド装置2は、車体への取り付けが容易になるように、車体への取り付けに先立って、ボルト3をロアレール10に仮止めすることができる。
【0019】
シートスライド装置2は、ボルト3をロアレール10に仮止めする係止部材30を有している。図2に、係止部材30とボルト3をロアレール10から分離した分解斜視図を示す。図2には、シートスライド装置2が取り付けられるフロアパネル80と、ボルト3を固定するナット81も仮想線で描いてある。図2を参照してまず、ロアレール10の構造を説明する。
【0020】
ロアレール10は、底板11、一対の外縦板12、一対の上板13、一対の内縦板14を備えている。底板11、一対の外縦板12、一対の上板13、一対の内縦板14は、一枚の鋼板から作られているが、説明の便宜上、上記のとおり、いくつかのパートに分ける。
【0021】
底板11には、貫通孔15が設けられている。一対の外縦板12のそれぞれは、底板11の短手方向(Y方向)の両端のそれぞれから上方へ延びている。一対の上板13のそれぞれは、一対の外縦板12のそれぞれの上端から水平方向内側へ延びている。ここで、内側とは、ロアレール10のレール短手方向の中央へ向かう方向を意味する。別言すれば、一対の上板13のそれぞれは、互いに近づく方向に延びている。
【0022】
一対の内縦板14は、一対の上板13のそれぞれの内側端から下方へ延びている。一対の内縦板14は平行かつ対向している。外縦板12と上板13と内縦板14で囲まれた空間にアッパレール20の車輪(不図示)が収容される。なお、アッパレール20は従来のアッパレールと同じであるので詳細な図と説明は割愛する。
【0023】
ロアレール10(シートスライド装置2)は、ボルト3でフロアパネル80に固定される。ボルト3は、貫通孔15とフロアパネル80を通過し、ナット81で固定される。ナット81は、フロアパネル80の裏面に溶接されているが、図1では理解を助けるためにフロアパネル80から離して描いてある。
【0024】
ボルト3のヘッド3aの頭頂面に六角孔が設けられている。ボルト3は、六角レンチで締め付けるタイプであり、ヘッド3aは円柱形状を有している。また、ロアレール10の底板11とボルト3のヘッドとの間にはワッシャが挟まれるが、ワッシャは係止部材30の下部に埋設されており、図1では見えない。
【0025】
図3に、係止部材30の斜視図を示し、図4に、係止部材30を縦半分にカットした斜視図を示す。係止部材30は、樹脂製のスペーサ31と係止リング33を備えている。図3では、ワッシャ40の構造が理解できるように、スペーサ31と係止リング33は仮想線で描いてある。先に述べたように、ワッシャ40は、係止部材30の下部に埋設されている。スペーサ31と係止リング33は、ワッシャ40を金型に入れて溶融樹脂を射出するインサート成形法で作られる。
【0026】
スペーサ31は中央孔32を有する筒状である。中央孔32は、ワッシャ40の孔と同軸に位置する。実施例のスペーサ31は、円筒形状であるが、スペーサ31は、上方に向かうにつれて径が小さくなる円錐筒状であってもよい。
【0027】
係止リング33は、ワッシャ40の内周面に設けられている。図3に描かれているように、ワッシャ40の表面には外周縁から内周縁に達する複数の溝41が設けられている。図4に描かれているように、溝41には樹脂棒34が埋設されており(充填されており)、スペーサ31と係止リング33は、樹脂棒34でつながっている。スペーサ31、係止リング33、樹脂棒34は、樹脂の射出成型にて同時に形成される。図3では樹脂棒を示す符号34は省略している。
【0028】
係止リング33の内径はボルト3の直径よりもわずかに小さい。ボルト3は、係止リング33に圧入される。係止リング33にボルト3が圧入されることで、ボルト3は係止部材30に係止される。係止リング33は複数の樹脂棒34でスペーサ31とつながっているため、ボルト3が圧入されてもワッシャ40から外れない。
【0029】
図5に、シートスライド装置2の断面図を示す。図5は、レール長手方向に直交する平面でシートスライド装置2をカットした断面を示している。図5には、ボルト3を係止した係止部材30の断面も示してある。係止部材30はボルト3を係止しており、ボルト3の先端はロアレール10の底板11の貫通孔15を通過している。スペーサ31の外径D1(係止部材30の外径D1)は、一対の内縦板14の間の隙間D2よりも大きい。それゆえ、係止部材30(ボルト3)は、上方(+Z方向)へは外れない。また、ボルト3が貫通孔15を通過しているため、ボルト3の水平面内(XY面内)の動きも規制される。すなわち、係止部材30は、ボルト3をその先端が貫通孔15を通過した状態に保持することによって、ボルト3をロアレール10の内部に仮止めする。ワッシャ40も係止部材30に保持されているため、係止部材30はボルト3が通過している状態でワッシャ40を仮止めする。
【0030】
スペーサ31の筒の内径D3は、ボルト3のヘッド3aの外径D4よりも大きい。ヘッド3aは、スペーサ31の内側に保持される。
【0031】
図5の右下に、係止リング33の付近の拡大図を示す。先に述べたように、樹脂棒34は、ワッシャ40の表面に設けられた溝41に埋設されており、ワッシャ40の表面は露出している。ボルト3をフロアパネル80に締め付けると、ヘッド3aの下面がワッシャ40の表面に直接に接する。ボルト3を締め付けるときにヘッド3aとワッシャ40の間に樹脂が挟まれないので、ボルト3で底板11をしっかり固定することができ、また、締め付けられたボルト3は緩みにくい。
【0032】
図5の右下の拡大図では、ボルト3は仮想線で描いてある。ワッシャ40の内周面には、突起42が設けられており、その突起42は、樹脂製の係止リング33に食い込んでいる。突起42も、係止リング33をワッシャ40から外れ難くすることに貢献する。
【0033】
係止リング33の内側には、リング内側の下方へ延びるフラップ35が設けられている。フラップ35がボルト3に引っ掛かり、係止リング33(係止部材30)がボルト3を保持する。図4ではフラップ35の図示は省略した。
【0034】
以上説明したように、係止部材30は、ロアレール10の内側でボルト3とワッシャ40を仮止めする。実施例のシートスライド装置2は、ロアレール10の底板11の下側に別の部材を配置することなく、ボルト3とワッシャ40をロアレール10に仮止めすることができる。シートスライド装置2をフロアパネル80にセットし、仮止めされているボルト3を六角レンチで締め付けると、ボルト3がナット81(図1参照)に固定され、ロアレール10がフロアパネル80に固定される。ワッシャ40はボルト3のヘッド3aと底板11の間に挟まれる。ボルト3をフロアパネル80(図1図2参照)に固定する際、ロアレール10とフロアパネル80の間に挟まれるものがなく、両者の間に隙間が生じない。
【0035】
樹脂製の係止部材30は、ワッシャ40の表面(溝41を除く表面)を露出した状態で保持する。ボルト3を締め付ける際、ヘッド3aの下面とワッシャ40が直接に触れ合うので、底板11をしっかりと固定することができるとともに、締め付けたボルト3は緩み難くなる。
【0036】
なお、図1で示したように、ロアレール10は、複数のボルト3でフロアパネル80に固定される。複数のボルト3のそれぞれが、図2図5に示した係止部材30でロアレール10に仮止めされる。
【0037】
図6を参照して変形例のワッシャ140を含む係止部材30を説明する。図6では、係止部材30を仮想線で描いてある。ワッシャ140は、その外縁141が上方に傾斜しており、その外縁141がスペーサ31に食い込んでいる。この構造により、ワッシャ140はスペーサ31から外れ難くなる。
【0038】
(第2実施例)図7図8を参照して第2実施例のシートスライド装置2aを説明する。図7は、係止部材230とワッシャ240をロアレール10から分離した分解図である。図7には、フロアパネル80とナット81を仮想線で示してある。図7はロアレール10の断面を示しており、ロアレール10は、図中の座標系の+X方向に続いており、ワッシャ240と係止部材230は、ロアレール10の中に納まる。
【0039】
図8は、レール短手方向に交差する平面でシートスライド装置2aをカットした断面を示している。図8には、係止部材230とワッシャ240の断面が示されている。
【0040】
第2実施例のシートスライド装置2aも、フロアパネル80への固定に先立って、ボルト3とワッシャ240をロアレール10の内部に仮止めすることができる。
【0041】
ワッシャ240は、孔241を有する略矩形の本体と、本体のレール長手方向の端から上方へ折り返されている4個の腕242を備えている。上方へ折り返されている腕242は、ワッシャ240とロアレール10の底板11の間に塵埃が挟まれないようにするために設けられている。
【0042】
レール短手方向に並ぶ2個の腕242の間には切欠243が設けられている。また、ワッシャ240の本体のレール短手方向の端は、外側上方に傾斜している。
【0043】
係止部材230は樹脂あるいは金属板で作られる。係止部材230は、逆U字形状をなしている。逆U字形状を有することで、係止部材230は上下方向に弾性的に撓むことができるようになっている。係止部材230は、底板11と一対の内縦板14の下端14aの間で圧縮されてロアレール10に係止される(図8参照)。係止部材230のU字の腕の部分にはスリット236が設けられている。スリット236を設けることで、係止部材230の弾性定数を下げ、ロアレール10に係止されやすいようになっている。
【0044】
係止部材230のU字の両先端234が底板11に当接する。U字の中央と一対の内縦板14の下端14aとの間にワッシャ240が挟まれており、係止部材230によってワッシャ240はロアレール10の内部に保持される。
【0045】
係止部材230のU字の中央に孔231が設けられており、その孔231にボルト3が圧入されて仮止めされている。係止部材230は、ボルト3の先端が底板11の貫通孔15に通った状態でボルト3を保持する。
【0046】
係止部材230の孔241の近くにツメ232が設けられている。ツメ232は、ワッシャ240の切欠243に引っ掛かり、ワッシャ240を保持する。
【0047】
係止部材のレール長手方向の両端には上方へ傾斜している傾斜面235が設けられている。
【0048】
係止部材230も、ロアレール10の内側でボルト3とワッシャ240を仮止めする。第2実施例のシートスライド装置2aは、ロアレール10の底板11の下側に別の部材を配置することなく、ボルト3とワッシャ240をロアレール10に仮止めすることができる。シートスライド装置2aをフロアパネル80にセットし、仮止めされているボルト3を六角レンチで締め付けると、ボルト3がナット81(図1参照)に固定され、ロアレール10がフロアパネル80に固定される。ワッシャ240はボルト3のヘッド3aと底板11の間に挟まれる。ボルト3をフロアパネル80(図1図2参照)に固定する際、ロアレール10とフロアパネル80の間に挟まれるものがなく、両者の間に隙間が生じない。
【0049】
ロアレール10は複数のボルト3でフロアパネル80に固定される。複数のボルト3のそれぞれは、係止部材230でロアレール10の内側に仮止めされる。
【0050】
(第3実施例)図9図10を参照して第3実施例のシートスライド装置2bを説明する。図9は、係止部材330とワッシャ340をロアレール10から分離した分解図である。ワッシャ340は、単純な円板形状である。図9には、フロアパネル80とナット81を仮想線で示してある。図9はロアレール10の断面を示しており、ロアレール10は、図中の座標系の+X方向に続いており、ワッシャ340と係止部材330は、ロアレール10の中に納まる。
【0051】
図10は、レール短手方向に交差する断面でシートスライド装置2bをカットした断面を示している。図10には、係止部材330とワッシャ340の断面が示されている。
【0052】
第3実施例のシートスライド装置2bも、フロアパネル80への固定に先立って、ボルト3とワッシャ340をロアレール10の内部に仮止めすることができる。
【0053】
係止部材330は樹脂あるいは金属板で作られる。係止部材330は、逆U字形状をなしている。係止部材330も逆U字形状であり、上下方向に弾性的に撓むことができるようになっている。係止部材330は、底板11と一対の内縦板14の下端14aの間で圧縮されてロアレール10に係止されている(図10参照)。係止部材330のU字の腕の部分にはスリット336が設けられている。スリット336を設けることで、U字の係止部材330の弾性定数を下げ、ロアレール10に係止されやすいようになっている。
【0054】
係止部材330のU字の両先端334から底板11に沿って腕335が延びている。腕335の先端が底板11との間にワッシャ340を挟み、ワッシャ340を保持する。
【0055】
係止部材330の逆U字の中央に下方にへこむ窪み332が設けられており、その窪み332に孔331が設けられている。孔331にボルト3が圧入されて仮止めされる。係止部材330は、ボルト3の先端が底板11の貫通孔15に通った状態でボルト3を保持する。
【0056】
係止部材330も、ロアレール10の内側でボルト3とワッシャ340を仮止めする。第3実施例のシートスライド装置2bも、ロアレール10の底板11の下側に別の部材を配置することなく、ボルト3とワッシャ340をロアレール10に仮止めすることができる。ボルト3をフロアパネル80(図1図2参照)に固定する際、ロアレール10とフロアパネル80の間に挟まれるものがなく、両者の間に隙間が生じない。
【0057】
ロアレール10は複数のボルト3でフロアパネル80に固定される。複数のボルト3のそれぞれは、係止部材330でロアレール10の内側に仮止めされる。
【0058】
(第4実施例)図11図13を参照して第4実施例のシートスライド装置2cを説明する。図11は、係止部材430とワッシャ240をロアレール10から分離した分解図である。図11には、フロアパネル80とナット81を仮想線で示してある。図11はロアレール10の断面を示しており、ロアレール10は、図中の座標系の+X方向に続いており、ワッシャ240と係止部材430は、ロアレール10の中に納まる。ワッシャ240は、第2実施例のシートスライド装置2aが有するワッシャ240と同一であるので、詳しい説明は割愛する。
【0059】
第4実施例のシートスライド装置2cも、フロアパネル80への固定に先立って、ボルト3とワッシャ240をロアレール10の内部に仮止めすることができる。
【0060】
係止部材430は、金属の薄板で作られている。係止部材430は、孔431を有している略矩形の本体と、レール長手方向で本体の両縁から上方へ延びている外ツメ433と、孔431の縁から下方へ延びている内ツメ432を備えている。
【0061】
図12に、ロアレール10の底板11の上にセットされた係止部材430とその上にセットされたワッシャ240の断面図を示す。図12は、ボルト3を挿通する前の状態を示している。係止部材430の外ツメ433にワッシャ240が係止される。外ツメ433は、ワッシャ240の切欠243に引っ掛かり、ワッシャ240を保持する。
【0062】
内ツメ432は、孔431の縁から孔431の中央下方に向けて延びている。内ツメ432の先端432aは、外側に向けて突出している。
【0063】
図13は、孔431にボルト3を挿通した状態を示している。ボルト3は、孔431に圧入される。ボルト3が孔431に圧入されると、内ツメ432が外側へ折り曲げられ、外側へ突出した先端432aが底板11の貫通孔15の縁に係止される。すなわち、係止部材430は、ロアレール10の内側でワッシャ240とボルト3を仮止めする。
【0064】
ロアレール10は複数のボルト3でフロアパネル80に固定される。複数のボルト3のそれぞれは、係止部材430でロアレール10の内側に仮止めされる。
【0065】
第4実施例の係止部材430は金属の薄板で作られているが、外ツメ433と内ツメ432を含めて同じ機能を有する係止部材は、樹脂で作られていてもよい。
【0066】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。第1実施例から第4実施例のシートスライド装置はいずれも、係止部材によってボルトとワッシャをロアレールの内側に仮止めすることができる。ボルトはワッシャに挿通されるとともにロアレール10の貫通孔15に挿通された状態で保持される。シートスライド装置を車両(フロアパネル80)にセットし、仮止めされたボルト3を締めるとロアレールが車両(フロアパネル80)に固定される。実施例のシートスライド装置はボルトを仮止めするのにロアレールの下側に部品を必要としない。それゆえ、シートスライド装置を車両に固定する際に底板とフロアパネル80の間に挟まれるものが無い。ボルト3をフロアパネル80(図1図2参照)に固定する際、ロアレール10とフロアパネル80の間に挟まれるものがなく、両者の間に隙間が生じない。
【0067】
第4実施例のシートスライド装置2cの場合、内ツメ432の一部が底板11とフロアパネル80の間に挟まれる可能性はある。しかし、内ツメ432は小さいので、底板11と車両の間に挟まれても障害にはならない。
【0068】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0069】
2、2a-2c:シートスライド装置 3:ボルト 10:ロアレール 11:底板 12:外縦板 13:上板 14:内縦板 15:貫通孔 20:アッパレール 30、230、330、420:係止部材 31:スペーサ 32:中央孔 33:係止リング 34:樹脂棒 35:フラップ 40、140、240、340:ワッシャ 41:溝 42:突起 80:フロアパネル 81:ナット 90:シート 91:シートクッション
図1
図2
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図10
図11
図12
図13