IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青島海爾洗衣机有限公司の特許一覧 ▶ ハイアールアジアインターナショナル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-靴磨き装置 図1
  • 特許-靴磨き装置 図2
  • 特許-靴磨き装置 図3
  • 特許-靴磨き装置 図4
  • 特許-靴磨き装置 図5
  • 特許-靴磨き装置 図6
  • 特許-靴磨き装置 図7
  • 特許-靴磨き装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】靴磨き装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 23/02 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A47L23/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019237018
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104207
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 智博
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-24750(JP,A)
【文献】特開2019-24749(JP,A)
【文献】国際公開第2019/019729(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/087788(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1277005(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102309299(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106137092(CN,A)
【文献】中国実用新案第204889924(CN,U)
【文献】中国実用新案第201469236(CN,U)
【文献】特公昭63-11892(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L23/00-23/28
D06F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外面部を有し、一足の靴を収納する収納庫と、
回転可能に前記収納庫によって支持され、前記収納庫内の一足の靴に下側から接触するモップ部と、
回転可能に前記収納庫によって支持され、前記収納庫内の一足の靴をそれぞれ支持する一対の支持部と、
前記複数の外面部における一つの外面部に設けられ、前記モップ部を回転させる駆動力を発生する第1駆動部と、
前記第1駆動部が設けられた前記一つの外面部に設けられ、前記一対の支持部を回転させる駆動力を発生する第2駆動部とを含む、靴磨き装置。
【請求項2】
前記第2駆動部において駆動力を出力する出力軸に取り付けられた駆動回転体と、前記一対の支持部のそれぞれに1つずつ取り付けられた一対の従動回転体と、前記第2駆動部の駆動力を前記駆動回転体から前記従動回転体に伝達する伝達部とを有する伝達機構をさらに含む、請求項1に記載の靴磨き装置。
【請求項3】
それぞれの前記支持部の回転軸線は、当該回転軸線の延びる方向から見て、前記支持部によって支持される靴の輪郭の内側に配置される、請求項1または2に記載の靴磨き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴磨き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1で開示された自動靴磨き機は、一足の靴における片方の靴が載せられる靴受台と、靴受台上の靴の左右両側に配置される一対の側面磨き機構と、靴受台上の靴の前側に配置される前面磨き機構とを含む。これらの磨き機構のそれぞれは、回転しながら靴受台上の靴をブラッシングする一対のブラシと、これらのブラシを回転させる駆動部と、これらのブラシを靴受台上の靴に沿って旋回させたり往復移動させたりする別の駆動部とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭63-11892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自動靴磨き機では、靴受台上の靴の左右両側および前側のそれぞれに磨き機構が設置される構造上、大型化が不可避である。また、自動靴磨き機では、一度に片方の靴しか磨けないので、一足分の靴を磨くのに時間がかかる。さらに、それぞれの磨き機構のブラシが靴受台上の靴における靴底側の領域に届きにくいので、この領域における磨き残しが懸念される。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、磨き残しがないように一足の靴をまとめて磨くことができ、小型化を図れる靴磨き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の外面部を有し、一足の靴を収納する収納庫と、回転可能に前記収納庫によって支持され、前記収納庫内の一足の靴に下側から接触するモップ部と、回転可能に前記収納庫によって支持され、前記収納庫内の一足の靴をそれぞれ支持する一対の支持部と、前記複数の外面部における一つの外面部に設けられ、前記モップ部を回転させる駆動力を発生する第1駆動部と、前記第1駆動部が設けられた前記一つの外面部に設けられ、前記一対の支持部を回転させる駆動力を発生する第2駆動部とを含む、靴磨き装置である。
【0007】
また、本発明は、前記靴磨き装置が、前記第2駆動部において駆動力を出力する出力軸に取り付けられた駆動回転体と、前記一対の支持部のそれぞれに1つずつ取り付けられた一対の従動回転体と、前記第2駆動部の駆動力を前記駆動回転体から前記従動回転体に伝達する伝達部とを有する伝達機構をさらに含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、それぞれの前記支持部の回転軸線が、当該回転軸線の延びる方向から見て、前記支持部によって支持される靴の輪郭の内側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、靴磨き装置の収納庫には、一足の靴を収納することができ、収納庫内の一足の靴は、一対の支持部によってそれぞれ支持された状態で、モップ部の上側に配置される。第1駆動部が作動すると、モップ部が回転しながら一足の靴のそれぞれに接触するので、一足の靴をまとめて磨くことができる。第2駆動部が作動すると、一対の支持部が回転するので、これらの支持部によって支持された一足の靴のそれぞれも、回転することによって姿勢を変える。そのため、一足の靴においてモップ部が接触できる領域を調整することができるので、例えば靴の表面においてコバ付近までモップ部を届かせることによって、磨き残しがないように一足の靴をまとめて磨くことができる。さらに、第1駆動部および第2駆動部は、収納庫の複数の外面部における同一の外面部にまとめて設けられるので、これらの駆動部のコンパクトな配置が可能になる。これにより、靴磨き装置の小型化を図れる。
【0010】
また、本発明によれば、第2駆動部が発生する駆動力は、第2駆動部の出力軸に取り付けられた駆動回転体から、一対の支持部のそれぞれに1つずつ取り付けられた一対の従動回転体に同時に伝達される。これにより、一対の支持部が第2駆動部の作動に連動して同期回転するので、これらの支持部によって支持された一足の靴は、同期回転することによって一様に姿勢を変える。そのため、モップ部が一足の靴における同じ領域に同時に接触できるので、一足の靴を一様に磨くことができる。そのため、どちらかの靴だけに磨き残しがないように一足の靴をまとめて磨くことができる。
【0011】
また、本発明によれば、それぞれの支持部の回転軸線は、当該回転軸線の延びる方向から見て、支持部によって支持される靴の輪郭の内側に配置されるので、靴の回転軌跡を小さく抑えて省スペースで靴を回転させることができる。これにより、靴を収納する収納庫の内部空間を狭くすることができるので、靴磨き装置のさらなる小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施形態に係る洗濯機および靴磨き装置の斜視図である。
図2】靴磨き装置の斜視図である。
図3図2とは違う方向から見た靴磨き装置の斜視図である。
図4】靴磨き装置の平面図である。
図5図4のA-A矢視断面図である。
図6図4のB-B矢視断面図である。
図7】靴を支持する支持部が左45度位置にあるときの靴磨き装置の縦断面正面図である。
図8】支持部が左90度位置にあるときの靴磨き装置の縦断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機100および靴磨き装置1の斜視図である。以下では、図1の洗濯機100および靴磨き装置1を正面から見たときを基準として、これらの左右方向X、前後方向Yおよび上下方向Zを定義する。左右方向Xは、図1の左上側に相当する左側X1と、図1の右下側に相当する右側X2とを含む。前後方向Yは、図1の左下側に相当する前側Y1と、図1の右上側に相当する後側Y2とを含む。上下方向Zは、図1の上側に相当する上側Z1と、図1の下側に相当する下側Z2とを含む。左右方向Xおよび前後方向Yは、横方向、詳しくは水平方向に含まれる。上下方向Zは、垂直方向、換言すれば洗濯機100や靴磨き装置1の高さ方向と同じである。
【0014】
洗濯機100の一例は、水平または略水平に沿って前後方向Yに延びる回転軸線を有する回転ドラム(図示せず)を内蔵したドラム式洗濯機である。洗濯機100は、ボックス状の筐体101を有する。筐体101の正面部101Aには、回転ドラムに洗濯物を出し入れするための出入口101Bが形成される。正面部101Aには、出入口101Bを開閉する扉102が設けられる。正面部101Aにおける出入口101Bの周辺には、使用者向けの情報が表示される表示部103と、ダイヤルなどによって構成されて洗濯機100の運転のために使用者によって操作される操作部104とが設けられる。
【0015】
靴磨き装置1は、洗濯機100の下側Z2に配置される。この実施形態では、靴磨き装置1と洗濯機100とが別々の装置であって、洗濯機100が靴磨き装置1の上に載せられるが、靴磨き装置1は、洗濯機100の一部として、筐体101の下部に内蔵されてもよい。いずれにせよ、靴磨き装置1は、洗濯機100の下部スペースを有効利用して配置される。靴磨き装置1は、その外殻をなす直方体ボックス状のキャビネット2と、引出部3とを含む。キャビネット2の下面の四隅には、床面などの水平な載置面に接触する脚4が1つずつ設けられる。
【0016】
引出部3は、正面扉5と収納庫6とを含み、キャビネット2によって前後方向Yへスライド可能に支持される。図1における引出部3は、収容位置にある。収容位置の引出部3では、収納庫6が、キャビネット2の内部空間に収容された状態にある。正面扉5は、前後方向Yに一致した板厚方向を有する板状に形成され、キャビネット2よりも前側Y1に配置される。左右方向Xにおける正面扉5の両端部は、キャビネット2よりも外側へ突出して配置される。正面扉5の上端面には、使用者が引出部3をスライドさせるために指を掛ける凹部5Aと、靴磨き装置1の運転のために使用者によって操作される操作部5Bとが、例えば左側X1からこの順番で設けられる。
【0017】
図2は、収納庫6の斜視図である。収納庫6は、キャビネット2よりも一回り小さい樹脂製または金属製の直方体であって、正面扉5の後側Y2に配置される。収納庫6は、正面扉5に固定される前壁6Aと、前壁6Aの後側Y2に配置された後壁6Bと、前壁6Aおよび後壁6Bの左端間に架設された左壁6Cと、前壁6Aおよび後壁6Bの右端間に架設された右壁6Dとを有する。収納庫6は、前壁6Aおよび後壁6Bの下端間に架設されるとともに左壁6Cおよび右壁6Dの下端間にも架設された矩形状の底壁6Eも有する。前壁6Aの前面部と、後壁6Bの後面部と、左壁6Cの左面部と、右壁6Dの右面部と、底壁6Eの下面部(後述する下面部6H)とは、収納庫6における複数、具体的には5つの外面部である。
【0018】
収納庫6は、前壁6A、後壁6B、左壁6C、右壁6Dおよび底壁6Eによって囲まれた直方体状の内部空間6Fを有する。内部空間6Fは、一足の靴Sを収納できる大きさを有する。この実施形態における靴Sは、革靴であるが、革靴以外の靴であってもよい。収納庫6の上端には、前壁6A、後壁6B、左壁6Cおよび右壁6Dの各上端によって区画されて収納庫6の内部空間6Fを上側Z1へ開放した矩形状の出入口6Gが形成される。
【0019】
底壁6Eの上面部には、底壁6Eの中央部によって支持されて縦軸まわりに回転可能な円盤状の回転盤7と、回転盤7を挟んで十字に配置された4つの隆起部8とが設けられる。各隆起部8は、回転盤7寄りに配置されて回転盤7から離れるにつれて上側Z1へ傾斜した三角形状の第1傾斜面8Aと、第1傾斜面8Aにおける二辺にそれぞれ接続された一対の第2傾斜面8Bとを有する。一対の第2傾斜面8Bは、底壁6Eの上面部から上側Z1へ隆起した山型をなす。
【0020】
引出部3は、収納庫6内において一足の靴Sをそれぞれ支持する一対の支持部11と、回転盤7に取り付けられたモップ部12とをさらに含む。一対の支持部11は、左側X1の左支持部11Lと、右側X2の右支持部11Rとによって構成される。左支持部11Lと右支持部11Rとは、平面視において回転盤7を基準に左右対称に配置される。各支持部11は、いわゆるシューキーパと同様の構造を有する。具体的には、各支持部11は、収納庫6の後壁6Bによって支持された円盤状の根元部11Aと、根元部11Aの外周部の周上1箇所から前側Y1へ延びるロッド部11Bと、ロッド部11Bの途中に設けられた踵支持部11Cと有する。各支持部11は、ロッド部11Bの前側Y1に設けられた爪先支持部11Dと、爪先支持部11Dから後側Y2へ延びてロッド部11Bに連結された一対の針金状の連結部11Eとを有する。
【0021】
根元部11Aは、その中心を通って前後方向Yに延びる回転軸線J(後述する図6参照)まわりに360度回転可能である。そのため、支持部11全体も回転軸線Jまわりに回転可能である。ロッド部11Bには、一対の連結部11Eが差し込まれる溝11Fと、溝11Fの左右両側に設けられて前後方向Yに並ぶ複数の調節穴11Gとが形成される。踵支持部11Cは、前後方向Yに延びるロッド部11Bに直交するようにロッド部11Bから突出して配置される。爪先支持部11Dは、踵支持部11Cの突出方向とは反対の方向に膨出した円弧面を有する半円筒状である(図5および図6参照)。一対の連結部11Eの後端部は、互いに離れるように折り曲げられ、ロッド部11Bにおけるいずれかの調節穴11Gに1つずつ嵌め込まれる。各連結部11Eの後端部が嵌め込まれる調節穴11Gを変更することによって、ロッド部11Bからの各連結部11Eの前側Y1への突出量を調節し、これにより、靴Sのサイズに応じて支持部11の前後方向Yの長さを調節することができる。
【0022】
図2に示すようにロッド部11Bの後端が根元部11Aの下端に位置するときの支持部11は、回転方向における0度位置にある。以下では、各支持部11の回転方向における位置つまり回転位置について、正面視における0度位置を基準として、0度位置から時計回りの位置を「左」と「回転角度」との組み合わせによって定義したり、0度位置から反時計回りの位置を「右」と「回転角度」との組み合わせによって定義したりすることがある。例えば、後述する図7における各支持部11の位置は、0度位置から正面視で時計回りに45度回転した「左45度位置」にある。
【0023】
モップ部12は、例えば円盤状に形成された布製のモップによって構成される。モップ部12の中央部は、回転盤7を包み込むことによって回転盤7に取り付けられることにより、回転盤7を介して収納庫6の底壁6Eによって支持される。そのため、モップ部12全体は、回転盤7と一体回転可能である。そのため、モップ部12の中央部には、回転盤7を包む込んだ状態を維持するために互いに密着した一対の面ファスナ12Aが設けられる。
【0024】
図3は、図2とは違う方向から見た靴磨き装置1の斜視図である。引出部3は、モップ部12が取り付けられた回転盤7を回転させる駆動力を発生する第1駆動部31と、一対の支持部11のそれぞれを回転させる駆動力を発生する第2駆動部32と、第2駆動部32の駆動力を各支持部11に伝達する伝達機構33とを含む。
【0025】
第1駆動部31は、電動のモータであり、収納庫6が有する複数の外面部における一つである底壁6Eの下面部6Hの中央部に設けられる。第1駆動部31は、発生した駆動力を出力する出力軸31A(図2参照)を有する。出力軸31Aは、底壁6Eを貫通して上側Z1へ突出し、収納庫6内の回転盤7に同軸上で固定される。第2駆動部32も、電動のモータであり、第1駆動部31が設けられた下面部6Hに設けられ、具体的には、第1駆動部31に後側Y2から隣接するように下面部6Hの後端部に配置される。第2駆動部32は、発生した駆動力を出力する出力軸32Aを有する。出力軸32Aは、後側Y2へ突出し、その後端部は、下面部6Hよりも後側Y2に配置される。
【0026】
伝達機構33は、第2駆動部32の出力軸32Aに取り付けられた駆動回転体の一例としての駆動歯車34と、一対の支持部11のそれぞれに1つずつ取り付けられた従動回転体の一例としての左右一対の従動歯車35と、これらの従動歯車35のそれぞれと噛み合う中継歯車36と、第2駆動部32の駆動力を駆動歯車34から中継歯車36に伝達する伝達部37とを有する。
【0027】
駆動歯車34は、出力軸32Aと一体回転可能な平歯車である。従動歯車35に関連して、各支持部11の根元部11A(図2参照)には、根元部11Aの中心から後側Y2へ突出して収納庫6の後壁6Bを貫通した回転軸11Hが設けられる。前述した回転軸線J(図6参照)は、回転軸11Hの中心を通る。各従動歯車35は、各支持部11の回転軸11Hの後端部に1つずつ直結された平歯車であり、対応する支持部11と一体回転可能である。中継歯車36は、後壁6Bから後側Y2へ突出した支持軸38によって回転可能に支持された平歯車であり、駆動歯車34よりも大径であるが、従動歯車35よりも小径である。中継歯車36は、左右の従動歯車35の間に配置され、かつ駆動歯車34の上側Z1に配置される。中継歯車36は、左右の従動歯車35のそれぞれと噛み合う大歯車36Aと、大歯車36Aと同軸上に配置されて大歯車36Aの前面部に固定された小歯車36Bとを有する。伝達部37は、駆動歯車34と小歯車36Bとに掛けられる歯付きのエンドレスベルトである。第2駆動部32が作動して駆動力を発生すると、この駆動力は、駆動歯車34から出力されて伝達部37を周回移動させ、中継歯車36を回転させる。これにより、中継歯車36と噛み合った左右の従動歯車35が、互いに同じ方向に回転する。中継歯車36は、伝達部37の一部とみなすことができ、伝達部37は、このように、第2駆動部32の駆動力を駆動歯車34から各従動歯車35に伝達する。なお、中継歯車36を省略して、1本または複数本の伝達部37によって駆動歯車34と各従動歯車35とを連結するベルト駆動方式も採用できる。この場合、各歯車の代わりに、プーリを用いてもよい。
【0028】
収納庫6の底壁6Eには、その左端縁および右端縁から1つずつ下側Z2へ延びる板状のガード39が一対設けられる。一対のガード39の下端部は、互いに接近する方向に折り曲げられる。第1駆動部31および第2駆動部32は、一対のガード39の間に配置されるので、外部と衝突しないように一対のガード39によって保護された状態にある。
【0029】
靴磨き装置1は、CPUやメモリやタイマなどを含むマイコンによって構成された制御部40(図1参照)をさらに含む。制御部40には、前述した操作部5B(図1参照)、第1駆動部31および第2駆動部32のそれぞれが電気的に接続される。靴磨き装置1は、各支持部11の回転位置を検出して制御部40に入力するセンサなどの検出部(図示せず)を含んでもよい。
【0030】
次に、靴磨き装置1において実行される汚れ除去運転について詳しく説明する。汚れ除去運転により、靴Sから埃やゴミなどの汚れが除去される。汚れ除去運転には、汚れの度合いに応じた複数のコースが設定されてもよく、使用者は、いずれかのコースを選択することができる。使用者によるコースの選択結果は、制御部40に一時記憶される。
【0031】
汚れ除去運転の開始に先立って、使用者は、靴磨き装置1の引出部3を引出位置まで引き出して収納庫6の出入口6Gを開放し、図4に示すように一足の靴Sを出入口6Gから収納庫6内に収納する。なお、図4では、モップ部12の図示が省略される。図4のA-A矢視断面図である図5を参照して、使用者は、靴Sを収納庫6内に収納する際に、それぞれの支持部11の爪先支持部11Dおよび踵支持部11Cを、この順番で靴Sの履き口SHに挿通した後に、靴Sの内部空間に挿入する。これにより、収納庫6内では、一足の靴Sが、互いの爪先が前側Y1を向いて左右方向Xに並んだ状態で一対の支持部11によってそれぞれ支持される。
【0032】
図4のB-B矢視断面図である図6を参照して、靴Sの収納時における各支持部11の待機位置は、0度位置である。そのため、各支持部11によって支持された各靴Sは、下向きの姿勢にある。下向きになった一対の靴Sのそれぞれでは、甲部分SUおよび履き口SHが真下を向いて、靴底SZが真上を向く。なお、以下では、靴Sの外面において靴底SZ以外の部分を、靴Sの表面ということがある。また、この状態において、それぞれの支持部11の回転軸線Jは、回転軸線Jの延びる方向である前後方向Yから見て、支持部11によって支持された靴Sの輪郭(図6において靴Sを示した二点鎖線)の内側に配置される。
【0033】
支持部11によって支持された状態における一足の靴Sのそれぞれの内部空間では、支持部11の爪先支持部11Dが、靴Sの内側から靴底SZに接触した状態にあり、支持部11の踵支持部11Cが、靴Sの内側から靴Sの踵部分SKに接触した状態にある(図5参照)。このような2点接触によって爪先支持部11Dと踵支持部11Cとが靴Sの内部空間で突っ張った状態にあるので、一足の靴Sのそれぞれは、対応する支持部11によって、支持部11から不意に外れないように支持される。その後、使用者は、引出部3を、収容位置まで戻す。これにより、汚れ除去運転の準備が完了する。
【0034】
次に、使用者が正面扉5の操作部5Bを操作することによって汚れ除去運転の開始を指示すると、制御部40は、第1駆動部31を作動させて、回転盤7およびモップ部12の回転を開始する。モップ部12は、収納庫6内で下向きになった一対の靴Sのそれぞれに下側Z2から接触しながら回転する。特に、モップ部12は、収納庫6の底壁6Eの上面部に十字に配置された4つの隆起部8のそれぞれを乗り越える際に、上側Z1へ盛り上がることによって靴Sに積極的に接触する。モップ部12の回転中において、制御部40は、第2駆動部32を作動させて各支持部11を回転させることによって、一対の靴Sのそれぞれの姿勢を変更する。具体的には、モップ部12が靴Sの表面における靴底SZの近くまで届くように、制御部40は、各支持部11を、0度位置から時計回りや半時計回りに45度回転させたり(図7参照)、0度位置から時計回りや半時計回りに90度回転させたりする(図8参照)。なお、0度位置からの支持部11の回転角度は、45度や90度以外の任意の角度であってもよい。また、モップ部12は、一方向にのみ連続回転してもよいし、正転および逆転を繰り返してもよい。
【0035】
このようにモップ部12が靴Sの表面に接触することにより、靴Sの表面の汚れがモップ部12に拭き取られる。なお、回転中のモップ部12が靴Sに引っ掛かった場合には、モップ部12における一対の面ファスナ12A(図2参照)が互いに分離することによって、回転盤7が一対の面ファスナ12Aの間を通ってモップ部12から外れる。これにより、靴Sに引っ掛かったままモップ部12が回転し続けることによって靴Sが傷むことを防止できる。そして、モップ部12の回転開始から所定時間が経過すると、制御部40は、第1駆動部31を停止させてモップ部12の回転を停止する。その際、制御部40は、第2駆動部32を作動させて各支持部11を0度位置まで戻し、靴Sを下向きにする。これにより、汚れ除去運転が終了する。汚れ除去運転の終了後に、使用者は、靴磨き装置1の引出部3を引出位置まで引き出して収納庫6の出入口6Gから洗浄後の靴Sを取り出す。
【0036】
なお、汚れ除去運転では靴Sの汚れがモップ部12に拭き取られるが、使用者は、適当なタイミングに、モップ部12の一対の面ファスナ12Aを分離してモップ部12を回転盤7から取り外して水洗いなどすることによってモップ部12をメンテナンスすることができる。
【0037】
また、制御部40は、汚れ除去運転の最後に、第1駆動部31を再度作動させてモップ部12を回転させながら第2駆動部32を作動させて靴Sの姿勢を変更してもよい。これにより、汚れ除去運転において汚れが取り除かれた靴Sの表面が、回転するモップ部12によって軽く拭かれることにより、簡単に磨かれる。
【0038】
以上のように、靴磨き装置1の収納庫6には、一足の靴Sを収納することができ、収納庫6内の一足の靴Sは、一対の支持部11によってそれぞれ支持された状態で、モップ部12の上側Z1に配置される。第1駆動部31が作動すると、モップ部12が回転しながら一足の靴Sのそれぞれに接触するので、一足の靴Sをまとめて磨くことができる。第2駆動部32が作動すると、一対の支持部11が回転するので、これらの支持部11によって支持された一足の靴Sのそれぞれも、回転することによって姿勢を変える。そのため、一足の靴Sにおいてモップ部12が接触できる領域を調整することができるので、例えば靴Sの表面においてコバ付近までモップ部12を届かせることによって、磨き残しがないように一足の靴Sをまとめて磨くことができる。なお、コバとは、靴底SZの外縁部のことである。さらに、第1駆動部31および第2駆動部32は、収納庫6の複数の外面部における同一の外面部、この実施形態では下面部6Hにまとめて設けられるので、これらの駆動部のコンパクトな配置が可能になる。これにより、靴磨き装置1の小型化を図れる。
【0039】
また、第2駆動部32が発生する駆動力は、第2駆動部32の出力軸32Aに取り付けられた駆動歯車34から中継歯車36に伝達された後に、一対の支持部11のそれぞれに1つずつ取り付けられた一対の従動歯車35に中継歯車36から同時に伝達される。これにより、一対の支持部11が第2駆動部32の作動に連動して同期回転するので、これらの支持部11によって支持された一足の靴Sは、同期回転することによって一様に姿勢を変える。そのため、モップ部12が一足の靴Sにおける同じ領域に同時に接触できるので、一足の靴Sを一様に磨くことができる。そのため、どちらかの靴Sだけに磨き残しがないように一足の靴Sをまとめて磨くことができる。
【0040】
また、それぞれの支持部11の回転軸線Jは、当該回転軸線Jの延びる方向から見て、支持部11によって支持される靴Sの輪郭の内側に配置されるので、靴Sの回転軌跡を小さく抑えて省スペースで靴Sを回転させることができる。これにより、靴Sを収納する収納庫6の内部空間を狭くすることができるので、靴磨き装置1のさらなる小型化を図れる。
【0041】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0042】
第1駆動部31および第2駆動部32は、前述した実施形態では収納庫6の底壁6Eの下面部6Hにまとめて配置されるが、収納庫6において下面部6Hとは別の側面部、例えば後壁6Bの後面部6Iにおいて伝達機構33とともにまとめて配置されてもよい。また、収納庫6が天壁を備える場合には、第1駆動部31および第2駆動部32は、天井つまり当該天壁の上面部に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 靴磨き装置
6 収納庫
6H 下面部
11 支持部
12 モップ部
31 第1駆動部
32 第2駆動部
32A 出力軸
33 伝達機構
34 駆動歯車
35 従動歯車
36 中継歯車
37 伝達部
J 回転軸線
S 靴
Z2 下側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8