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特許7376045アンモニア分解による水素生成のための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】アンモニア分解による水素生成のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20231031BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20231031BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20231031BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20231031BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01D53/22
B01D71/02 500
B01J23/58 M
H01M8/0606
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020501806
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 US2018045621
(87)【国際公開番号】W WO2019032591
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】62/541,962
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513257731
【氏名又は名称】ガス テクノロジー インスティテュート
(73)【特許権者】
【識別番号】591049136
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ サウス カロライナ
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】リ,シグアン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ミャオ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-095618(JP,A)
【文献】米国特許第03198604(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0028171(US,A1)
【文献】GIL; ET AL,CATALYTIC HOLLOW FIBRE MEMBRANE REACTORS FOR H2 PRODUCTION,A THESIS SUBMITTED FOR THE DEGREE 0F DOCTOR OF PHILOSOPHY AND THE DIPLOMA OF IMPERIAL COLLEGE LONDON,2015年,PAGE(S):1-182,file:///C:/Users/KIBAN_~1/AppData/Local/Temp/GouveiaGil-AM-2015-PhD-Thesis.pdf
【文献】Thawatchai MANEERUNG et al.,Triple-layer catalytic hollow fiber membrane reactor for hydrogen production,J. of Membrane Science,2016年,Vol.514,p.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/04
B01D 53/22
B01D 71/02
B01J 23/58
H01M 8/0606
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア分解によって水素を生成するための方法であって、当該方法は、
システムにアンモニアを導入する工程であって、前記システムは、
固定床膜反応器を含み、前記固定床膜反応器は、
NHの流入物を受け取り、NHを分解しNとHの流入を形成するように構成されたNH分解触媒の固定床を備え、前記NH分解触媒の固定床は、
複数のセラミック中空繊維を備え、当該セラミック中空繊維は、流入するNとHからHを抽出し、Hを含む透過物と主にNを含む未透過物を形成するためのH選択膜を表面に配置した中空繊維を含み、および、
固定床に配置される触媒Hバーナーを備え、当該触媒Hバーナーは、
NH分解に熱エネルギーを提供するための触媒Hバーナーと、H酸化触媒を含む金属管を含み、少なくとも未透過物の一部を受け取り、燃焼させるように構成された前記触媒Hバーナーであり、
を含むアンモニア分解生成物を
形成するために、触媒Hバーナーで生成された熱エネルギーを介して、NH分解触媒の固定床から供給されるアンモニアの少なくとも一部を分解する工程、および、
前記分解生成物からHの少なくとも一部を分離する工程を含む、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記システムに導入される前記アンモニアが10~15バールのNH蒸気を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分解生成物からのHの少なくとも一部を前記分離する工程が、Hを含む透過物を形成すること含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
主にNと残留Hを含む未透過物ストリームを形成する工程をさらに含み、NH分解に熱エネルギーを提供するために、残留Hの少なくとも一部は触媒バーナー内の空気で燃焼されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記固定床膜反応器の最高温度が450°C以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水素への転化が99%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
セラミック中空繊維に担持されたNH分解触媒を介して残留NH を分解する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NH分解触媒がルテニウム系触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
透過したHストリームと触媒H燃焼の排気ストリームから成る群から選択される少なくとも1つのストリームによって提供される熱で、システムに導入されたアンモニアを予熱する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記透過物は、99%より大きいHの純度を有するHからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アンモニア分解によって水素を生成するシステムであって、前記システムは、
NHの流入物を受け取り、NHを分解しNとHの流入を形成するように構成されたNH分解触媒の固定床を備え、前記NH分解触媒の固定床は、
複数のセラミック中空繊維であって、各前記セラミック中空繊維は、NとHの流入からHを抽出し、Hを含む透過物と主にNを含む未透過物を形成するためのH選択膜を表面に配置した中空繊維を含み、および、
固定床に配置される触媒Hバーナーであって、前記触媒Hバーナーは、NH分解のための熱エネルギーを提供する触媒Hバーナーと、H酸化触媒を含む金属管を含み、少なくとも未透過物の一部を受け取り、燃焼させるように構成された触媒H バーナーを含む、システム。
【請求項12】
前記未透過物がさらに 含み、NH分解に熱エネルギーを提供するために、前記固定床の中に流入する前記未透過物の少なくとも一部と酸化剤が前記触媒Hバーナーに導入される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記触媒Hバーナーが、NとHOを出す、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記セラミック中空繊維は、残留NHの分解のためにセラミック中空繊維上に担持されたNH分解触媒を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
アンモニアから99%を超える水素と、窒素への転化を提供する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
複数の前記NH分解触媒の少なくとも一部は、隣接する一対のセラミック中空繊維の周囲及びその間の空間に配置された、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記NH 分解触媒の固定床の最高温度が450°C以下である、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記NHの流入が10~15バールのNH蒸気を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
水素と窒素へのアンモニアの転化が99%を超える、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
熱器をさらに含み、前記熱器によって、透過したHストリームと触媒H燃焼の排気ストリームから成る群から選択される少なくとも1つのストリームによって提供される熱が、前記固定床へ流入するNHを予熱する予熱器をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項21】
前記透過物は、99%より大きいHの純度を有するHからなる、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<連邦政府から資金提供を受けている研究または開発に関する声明>
本発明は、DOE/ARPA-Eの付与する助成金DE―AR0000809のもと、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般に水素生成に関し、そしてより具体的には、アンモニア分解による水素生成に関し、特にそれに適した装置、システムおよび方法を含む。
【0003】
<関連技術の説明>
商業用のプロトン交換膜(PEM)燃料電池に使用される、収率が高く十分な純度を有するカーボンニュートラルな液体燃料(CNLF)からの水素生成が必要かつ需要されている。このような水素生成に対して、米国エネルギー省(DOE)高等研究計画局(APRA-E)によって設定された必要な測定基準は、以下を含む。
・水素への転化>99%
・H生成率>0.15g/h/cm
・エネルギー効率>80%
・NH分解反応装置最高温度450 °C
・目標圧力(30バール)での水素供給コスト<$4.5/kg
【0004】
次のようなさまざまな事実と要因のために、これらの測定基準を既存のNH分解技術が満たすことは非常に困難である。
・反応温度が低いこと(<450°C)とNH圧力が高いこと(10~15バール)が、NHの転化を95%未満に制限している;
・NH分解は吸熱反応であるため、エネルギー入力を必要とする;そして、
・分解されたHはNと混合され、そのことによりPEM燃料電池の効率が低下する。例えば、Nで60%希釈していると、電流密度は60°Cで8~30%減少する場合がある。
【0005】
アポロエネルギーシステム社(アメリカ)は、燃料電池用にHを生成するNH分解装置を設計した。Hを含むアノード排出ガスが、分解装置に熱エネルギーを供給するための燃焼用燃料として使用された。反応器が高温(480~660°C)のため、Hへの転化は高かった(99.99%)。エネルギー効率は報告されなかったが、反応器の加熱にH燃焼からの熱エネルギーを効率的に使用したため、おそらく高いであろう。Ruで改良された効率の良い市販触媒(Ni70wt%のAl)が使用された。したがって、高いH生成率も得られた。NH分解からのH生成のため、膜反応器が研究されてきた。しかしながら、技術は未だに初期研究段階にあり、H生成率とHへの転化の双方ともに、ARPA-Eの目標に比べ、はるかに低い(表1を参照)。
【発明の概要】
【0006】
本開発は、上記で特定された固有の問題の少なくともいくつか、好ましくはその各々を解決し、上記で特定された測定基準の少なくともいくつか、好ましくはその各々を満たすことが望ましいと期待される。
【0007】
本開発は、PEM燃料電池用途向けにNH分解から高速および低コストで高純度のHを供給し、燃料輸送ならびに貯蔵コストを大幅に削減するために採用され得る。以下に詳述する通り、本新規小型膜反応器は、H燃料を利用するその他多くの潜在的な用途のための効果的なH源としてNHを使用することをも可能にする。これは、まったく新しい市場に繋がり得る。さらに、NHは、このプラットフォームを介して、成長を続けるH利用技術と効果的に結びつき、幅広い用途のための新世代燃料となり得る。
【0008】
本開発の選ばれた態様に係るシステムおよび方法は、以下を含む膜反応器を有利に使用することができる:低コストで高活性のNH分解用触媒、NからHを抽出するための、高い表面積対体積比を持つセラミック中空繊維上にあるH選択膜(同時にNH分解反応をシフトする)、および、NH分解に熱エネルギーを提供する触媒Hバーナー。
【0009】
本発明開発の特定の実施形態に係る、アンモニア分解による水素生成システムは、望ましくは、NHおよび酸化剤の流入物を受け取り、高純度のHを含む流出物を生成するよう構成された固定床反応器を含む。固定床反応器は、NとHを形成するためにNHが分解するNH分解触媒の固定床;固定床に配置された表面積対体積比の高い複数のセラミック中空繊維であって、前記中空繊維は、NからHを抽出し、高純度Hを含む透過物と主にNを含む未透過物を形成するためのH選択膜を表面に配置した中空繊維;および、同様に固定床に配置される触媒Hバーナーであって、前記触媒Hバーナーは、熱エネルギーをNH分解に供給するためにH酸化剤で燃焼させるための触媒Hバーナー;を含む、あるいは有する。
【0010】
本開発の一態様に係るアンモニア分解による水素生成のための方法は、水素ガスを含むアンモニア分解生成物を形成するために、アンモニアの少なくとも一部を分解するための膜反応器にアンモニアを導入する工程、その後に、分解生成物から水素ガスの少なくとも一部を分離する工程を含む。
【0011】
一実施形態においては、アンモニア分解による水素生成のための方法が提供され、その方法は、水素を形成するためにアンモニアを導入および分解する工程と、そしてその後に、特定の固定床反応器システムを介して高純度の水素を分離および回収する工程を含む。より具体的には、固定床反応器システムは、NおよびHを形成するためのNH分解のためのNH分解触媒の固定床を含む固定床膜反応器を含む。反応器はまた、固定床に配置され高い表面積対体積比を有する、複数のセラミック中空繊維を含む。中空繊維は、表面に配置された、NからHを抽出し、高純度Hを含む透過物と主にNを含む未透過物を形成するための、H選択膜を有する。反応器はさらに、同様に固定床に配置された触媒Hバーナーを含む。触媒Hバーナーは、Hの一部を燃焼させ、NH分解に熱エネルギーを提供するのに適応しており、且つ効果的である。したがって、アンモニアの少なくとも一部を分解する工程は、望ましくは、NH分解触媒の固定床と、Hを含むアンモニア分解生成物を形成するために触媒Hバーナーによって生成または提供される熱エネルギーとを介して達成される。固定床に配置された高い表面積対体積比を有する複数のセラミック中空繊維は、望ましくは、分解生成物から高純度の水素を分離および回収する働きをし、且つ効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の目的および特徴は、以下の図面と記述からよりよく理解される。
図1】アンモニア分解による水素生成システムの簡略図であり、より具体的には、本開発の一態様に係る、熱触媒NH分解によるH生成のための膜反応器の簡略図である。
図2図1に示される指定部A、例えば本開発の一態様に係る、膜反応器内に含まれるNH分解用の低コストで高活性なルテニウム系触媒の顕微鏡写真である。
図3図1に示される指定部Bの簡略図による描写であり、例えば本開発の一態様に係る、NからHを抽出する(同時にNH分解反応をシフトする)ための高い表面積対体積比を有するセラミック中空繊維上のH選択膜を示す。
図4図1に示される指定部C、例えば本開発の一態様に係る、NH分解に熱エネルギーを提供する触媒Hバーナーの簡略図による描写である。
図5】実施例1で参照される、本開発の一態様に係るH生成試験システムの簡略図である。
図6】実施例2で参照される、HYSISシミュレーションシステムの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開発は、比較的低温(<450°C)で高転化および高エネルギー効率(>70%)を有する、新規性があり小型で集中的なモジュール式NH分解(2NH⇔N+3H)装置を提供する。
【0014】
本開発に係る例示的なシステムまたは装置は、容積の小さな反応器で、高純度のHを完全に近いNH転化から高速で生成することを期待される。
【0015】
一般に参照番号(10)で指定される、本開発の一実施形態に係る、アンモニア分解による水素生成システムまたはデバイスが、図1に示されている。システム(10)は、三つのキーコンポーネントを含むまたは有する膜反応器(12)を含む:i)一般に参照番号(14)で指定され図2でより具体的に示される、NH分解用の低コストで高活性な触媒用の固定床、ii)一般に参照番号(16)で指定され図3でより具体的には示される、NからHを抽出すると同時にNH分解反応をシフトするための、高い表面積対体積比を有するセラミック中空繊維上のH選択膜、および、iii)一般に参照番号(18)で指定され図4でより具体的に示される、NH分解に熱エネルギーを提供するための触媒Hバーナー。
【0016】
これらの図では、特定の工程ストリームは次のように識別される:
101 供給 ―― NH
102 分解ストリーム ―― N+H(-75%)
103 生成物 ―― H(高純度)
104 未透過物 ―― N+H(-25%)
105 空気 ―― 触媒バーナーに供給
106 副生成物 ―― N+H
【0017】
図1-4に示される通り、NHの供給ストリーム(101)が、入口(22)を通るなどして膜反応器(12)に導入される。反応器(12)において、NHがNH分解触媒固定床(14)と接触し、分解/クラッキングを経て窒素(N)および水素(H)ガスを形成する(図2参照)。高い表面積対体積比を有するセラミック中空繊維上のH選択膜(16)は、分解ストリーム(102)から、NよりHを分離または抽出し、図3参照、生成物出口(24)を介する等して反応器から排出または回収されるなどの高純度Hのストリーム(103)を形成する働きをする。適切なセラミック中空繊維としてはアルミニウム中空繊維が挙げられるが、要求に応じて、当業者に知られているような他のセラミック素材を使用することができる。示される通り、望ましくは、触媒は中空繊維(30)の外部表面上に担持され得る。図3に示される通り、例えばステンレス鋼管等の高密度管(31)内のセラミック中空繊維(30)は、H透過物がそこを通して回収され(ストリーム103)、そして膜未透過物はそこを通り過ぎる(ストリーム104)。図3に示される通り、残留NHの分解を助けるために、活性触媒(32)をセラミック中空繊維(30)に担持することもできる。
【0018】
上述のように、反応器(12)は、熱エネルギーをNH分解に提供するなどのために、触媒Hバーナー(18)を含むおよび/または有す。図4に示される通り、触媒Hバーナー(18)は、望ましくは、当技術分野で知られているようなH酸化触媒(42)を含むような金属管(40)で形成されるか、これを含むことができる。図1および図4に示される通り、触媒Hバーナー(18)は、望ましくは、熱エネルギーをNH分解に提供するために、生成されたHの一部を燃焼させる(例えば、膜未透過物(ストリーム104)中の水素等が吸入酸化剤、例えば空気(ストリーム105)と反応する)という働きをする。
【0019】
本開発は、以下の利点/特性を提供または結果としてもたらす事が可能であり、望ましくは実際にそうなる:
・10~15バールに加圧されたNH蒸気(ストリーム101)が原料として直接使用される;
・低コストの高活性触媒(例えば、当技術分野で知られているルテニウムベースのNH分解触媒、または当技術分野で知られている他の適切なNH分解触媒)が、高速NH分解(2NH⇔N+3H)用の小型固定床反応器で、反応温度450°C未満で使用される;
・表面積対体積比の高いセラミック中空繊維上のH選択膜は、反応生成物から高純度のHを抽出するための反応器境界として使用される。Hを取り除くことでも、反応をより高い転化に移行させる;
・必要に応じて、残留NHを分解するために活性触媒もセラミック中空繊維に担持される;
・未透過物(ストリーム104)中の低濃度の残留Hを触媒バーナーで空気と燃焼させ、NH分解用に均一に必要とされる熱エネルギーを提供する;
・透過高純度H(ストリーム103)および触媒H燃焼からの高温の排気(ストリーム106)を使用し、NH供給(ストリーム101)を予熱する;そして
・熱交換後の高純度H(>99%)(ストリーム103)は、使用に備え圧縮する。
【0020】
以下の表1は、本発明と熱触媒NH分解からのH生成のための現在および新興の技術、そして本発明とARPA-E技術目標との比較を示す。
【0021】
【表1】
【0022】
上で確認される通り、アポロエネルギーシステム社(アメリカ)は、燃料電池用にHを生成するNH分解装置を設計した。Hを含有するアノード排出ガスは、分解装置に熱エネルギーを供給する燃焼用燃料として使用される。反応器が高温(480~660°C)のため、Hへの転化は高かった(99.99%)。エネルギー効率は報告されなかったが、反応器の加熱にH燃焼からの熱エネルギーを効率的に使用したため、おそらく高いであろう。ルテニウムで改良された効率の良い市販触媒(Ni70wt%のAl)が使用された。したがって、高いH生成率を得られた。 NH分解からのH生成のため、膜反応器が研究されてきた。[9][10]しかしながら、技術は未だに初期研究段階にあり、H生成率とHへの転化の双方ともに、ARPA-Eの目標に比べ、はるかに低い(表1を参照)。
【0023】
HYSYSのシミュレーション/計算(実施例1および2)では、表1に示す通り、高いH生成率、目標圧力での低いH供給コスト、および400°Cでの高いエネルギー効率が、本開発に期待される。反応温度がより低くなれば、膜と触媒の両方の寿命を延ばすと期待される。選択的なH抽出による平衡反応の実施により、NH転化は99%を超えると期待される。全体として、既存の技術と比較すると本開発は以下の利点をもたらす可能性がある:
・十分に一体化された、触媒、膜およびHバーナーの合理的且つモジュール形式の設計;
・我々の事前結果で裏付けられた三つのキーコンポーネントの高いパフォーマンス;
・完全に近いNH分解が行われている間の低い動作温度(350-450°C);
・高いH純度(>99%);および、
・より高いエネルギー効率とはるかに小さな機器寸法(より少ない二酸化炭素排出量を意味する)。
【0024】
CNLFの候補および効果的なH源であるアンモニアは、再生可能なエネルギー源を使用して、空気と水(空気から抽出したNおよび水から抽出したH)から合成できる。中間体としてのHを生成するためには、効果的で経済的なNH分解技術を開発することが不可欠である。本開発は(図1に示されるシステム概略図で説明される通り)、新しく革新的なソリューションを意味する。その革新性は次の態様に反映される:
・高速NH分解用の低コストで高活性な触媒;
・純度>99%のHを抽出するための低コストな高H選択膜(同時に転化率>99%へとNH分解反応をシフトする);
・全体的なエネルギー効率を88%にまで上げるためにNH分解に熱エネルギーを提供する、反応器に埋め込まれた触媒Hバーナー;そして、
・さらなる膜モジュールを追加するだけで線形にスケールアップできる小型のモジュール型システムを実現できるような、高充填密度(高表面積対体積比)の中空繊維中の膜。
【0025】
本発明の実施にあたって含まれる様々な態様を例示またはモデル化している以下の例に関連して、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の趣旨の範囲内にあるすべての変更は保護されることが望まれ、したがって、本発明はこれらの例によって限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例
【0026】
実施例1―膜反応器中のH生成率の計算
【0027】
図5は、本開発の一態様に係るH生成試験システム(500)を示す。システム(500)は、NHシリンダー(502)などのNH供給源、上述のような膜反応器(504)システム、および水素生成物タンク(506)などの水素生成物貯蔵部を含む。システム(500)は予熱器交差熱交換器(510)および交差熱交換器(512)をさらに含み、それぞれ、膜反応器(502)への供給物(例えば、ストリーム(101))を適切に予熱し、水素生成物(ストリーム(103))および反応器の煙道ガス(ストリーム(106))から熱を回収する。
【0028】
システム(500)は、NH供給ストリーム(25°Cのストリーム(101)で10バール、供給速度0.3434mol/min)、透過物ストリーム(400°Cのストリーム(103)で2.5バール、0.4464mol/min=10L/minのHと0.004509mol/minのNで構成される透過物)、および未透過物ストリーム(400°Cのストリーム(104)で2.5バール、0.0687mol/minのHと0.1673mol/minのNで構成される未透過物)、および400°Cで動作する膜反応器(504)を示す。
【0029】
生成率:10L/minのH
入力:
触媒:
カリウムで促進されたルテニウム/γ―Al
400°Cでの触媒活性:Hが4.5mmol/min/gの触媒
充填密度:1g/cm
膜:
金属管(2mm od×1.6mmid)に収容されている中空繊維(1.5mm od)上の合成SAPO-34膜:
400°CでのH浸透度:1.5×10-7mol/(m・s・Pa)
/N選択性:>700
触媒Hバーナー:
Ptが浸み込んだNiフォーム
熱伝達率:1.5kcal/(cm・h)
出力:
触媒容積:116cm
膜面積:0.2m
膜容量:133cm
触媒Hバーナー容量:10cm(供給NHを分解するのに必要なエネルギー量から推定)
膜反応器の推定上部スペース:10cm
膜反応器総容量:269cm
生成率計算値:0.20g/h/cmのH
【0030】
実施例2―HYSYSシミュレーションを使用したエネルギー効率計算
【0031】
図6に示されるHYSISシミュレーションシステム(600)を参照。
HYSYSフローチャート:
ストリームとエネルギーの要約:
生成;10L(STP)/min、で供給圧力30バール
【0032】
【数1】
【0033】
前述の詳細な説明では、本発明の特定の好ましい実施形態に関連して本発明を説明し、説明を目的として多くの詳細を述べてきたが、本発明が追加の実施形態に影響を受けやすいこと、および、本明細書で説明される特定の詳細は本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更できることは、当業者には明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6