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特許7376058レゾルシノール誘導体およびこれを含むチロシナーゼ活性阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】レゾルシノール誘導体およびこれを含むチロシナーゼ活性阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/18 20060101AFI20231031BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 31/7032 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20231031BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C07H15/18 CSP
A61P17/00
A61P43/00 111
A61K31/7032
A61K31/05
A61Q19/02
A61K8/60
A61K8/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019009543
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020117458
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月5日 公益社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会 2018年度 大会公演要旨集」において文書をもって発表 〔刊行物等〕平成30年3月15日~18日 名城大学 天白キャンパスにおいてプレゼンテーションソフトウェアで作成したデータをもって口頭・公開発表 〔刊行物等〕2018年11月14日 エルゼビア「Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters」においてhttps://doi.org/10.1016/j.bmcl.2018.11.029を通じて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 賢一
(72)【発明者】
【氏名】石岡 和佳奈
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-106531(JP,A)
【文献】国際公開第2014/092166(WO,A1)
【文献】特開2007-186445(JP,A)
【文献】特表2011-528719(JP,A)
【文献】特開平02-049715(JP,A)
【文献】特開2012-197269(JP,A)
【文献】Int. J. Mol. Sci.,2018年,19, 690,pp.1-14,doi:10.3390/ijms19030690
【文献】日本農芸化学会大会講演要旨集(Web),2015年,2E21P07
【文献】化学工業,2013年,64巻4号,271-274
【文献】フレグランスジャーナル,2008年,36巻9号,33-36
【文献】CAMILLE G. WERMUTH,Part VII 製薬および製剤上の化学的問題,最新 創薬化学 下巻 THE PRACTICE OF MEDICINAL CHEMISTRY ,大塚 賢一郎 株式会社テクノミック,1999年,367-392,第35章溶解促進構造単位の共有結合による水溶性有機化合物の調整
【文献】標準化学用語辞典第2版,2005年,「アスコルビン酸」の項
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表されるレゾルシノール誘導体:
【化1】
式中、nは10~18の整数を表し、Rは単糖およびオリゴ糖からなる群より選択される糖のいずれか1つの水酸基を除いて得られる糖残基を表す。
【請求項2】
前記糖がグルコースまたはキシロースである請求項1に記載のレゾルシノール誘導体。
【請求項3】
前記糖がグルコースである請求項1に記載のレゾルシノール誘導体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のレゾルシノール誘導体を含むチロシナーゼ活性阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルシノール誘導体およびこれを含むチロシナーゼ活性阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
チロシナーゼはシミやそばかす等の皮膚褐変等に関わる酵素であり、チロシナーゼ阻害活性を有する化合物はシミやそばかす等を予防または治療するための有効成分として化粧品等への応用が期待できる。
【0003】
レゾルシノール誘導体はチロシナーゼ阻害活性を示す化合物として知られており、特許文献1では4位置換アルキルレゾルシノールの活性が報告されている。4-ブチルレゾルシノール(ルシノール(登録商標))や4-ヘキシルレゾルシノールは特に高いチロシナーゼ活性阻害作用を示すことが知られている。また、特許文献2には、細胞毒性が低いメラニン生成抑制剤としてレゾルシノールの4位が炭素数3~5のヒドロキシアルキル基で置換されたレゾルシノール誘導体が開示されている。さらに、特許文献3には、4-アルコキシレゾルシノールが高いチロシナーゼ阻害活性を示すこと、また、4-O-グルコピラノシルレゾルシノールは、チロシナーゼ阻害活性は劣るが水溶性で低毒性であることが報告されている。4-O-グルコピラノシルレゾルシノールは、天然物のアルブチンと構造が類似しており、アルブチンよりも高いチロシナーゼ阻害活性を示す(非特許文献1)。非特許文献2においては、同じく天然物のロドデンドリンに類似する構造を有するレゾルシノール誘導体が4-O-グルコピラノシルレゾルシノールよりも高い活性を有することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-49715号公報
【文献】特開2007-186445号公報
【文献】特許5893442号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Carbohydr. Res. 2018, 465, 22-28
【文献】Bioorg. Med. Chem. 2015, 23, 6650-6658
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高いチロシナーゼ阻害活性を示す化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、レゾルシノール誘導体のチロシナーゼ阻害活性の研究の過程で、上記のアルブチン類似体とロドデンドリン類似体とのチロシナーゼ阻害活性の差異がレゾルシノール部位とグルコース部位の距離に起因すると推察した。そして、レゾルシノール部位とグルコース部位の間に化学的に不活性なアルキルスペーサーを導入した化合物を合成してチロシナーゼ阻害活性を測定し、得られた知見に基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の[1]~[8]を提供するものである。
【0008】
[1]式Iで表されるレゾルシノール誘導体:
【化1】
式中、nは2~20の整数を表し、Rは単糖およびオリゴ糖からなる群より選択される糖のいずれか1つの水酸基を除いて得られる糖残基を表す。
[2]上記糖がグルコースまたはキシロースである[1]に記載のレゾルシノール誘導体。
[3]上記糖がグルコースである[1]に記載のレゾルシノール誘導体。
[4]nが6~20の整数である[1]~[3]のいずれかに記載のレゾルシノール誘導体。
[5]nが13~20の整数である[1]~[3]のいずれかに記載のレゾルシノール誘導体。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のレゾルシノール誘導体を含むチロシナーゼ活性阻害剤。
[7]式IIで表されるレゾルシノール誘導体を含むチロシナーゼ活性阻害剤:
【化2】
式中、n'は6~20の整数を表す。
[8]n'が13~20の整数である[7]に記載のチロシナーゼ活性阻害剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高いチロシナーゼ阻害活性を示すレゾルシノール誘導体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「チロシナーゼ阻害活性」は、チロシナーゼの働きを阻害又は抑制する活性を意味する。具体的には、「チロシナーゼ阻害活性」はチロシナーゼの酸化還元酵素としての酵素活性を阻害または抑制する活性であればよい。本明細書において、「チロシナーゼ活性阻害剤」は、チロシナーゼ阻害活性を有する化合物または組成物を意味する。
【0011】
チロシナーゼは銅を活性中心に持つ酸化還元酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)である。チロシナーゼは日焼け、青果類や魚介類の褐変などの自然界で観察される様々な褐変現象の初期反応を触媒する。例えば、紫外線によっては、皮膚基底層の色素細胞(メラノサイト)が活性化し、生成したメラニンが皮膚に沈着するが、チロシナーゼはメラニン生合成の第一段階を司り、血中から供給されたチロシンを酸化してドーパ(DOPA)にするとともに、さらにドーパキノン(dopaquinone)へと代謝する。チロシナーゼはこの2つの反応を触媒する酵素であり、この代謝はメラニン生成における律速段階となる。また、昆虫外皮はフェノール成分がチロシナーゼの作用で重合することにより形成される。
【0012】
本発明者らは、式Iで表されるレゾルシノール誘導体および式IIで表されるレゾルシノール誘導体がそれぞれチロシナーゼ阻害活性を有し、チロシナーゼ活性阻害剤として使用できることを見出した。以下、各レゾルシノール誘導体について説明する。
【0013】
<式Iで表されるレゾルシノール誘導体>
【化3】
【0014】
式Iで表されるレゾルシノール誘導体は、その構造中にレゾルシノール部位と糖部位とを有し、その部位の間に直鎖アルキレン基を有する。
直鎖アルキレン基はレゾルシノール骨格の4位に結合し、糖残基とエーテル結合を介して結合している。直鎖アルキレン基は置換基を有していないことが好ましい。すなわち、直鎖アルキレン基は無置換の直鎖アルキレン基であればよい。
【0015】
式Iにおいてnは2~20の整数である。nは3以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、10以上であることが特に好ましく、13以上であることも特に好ましい。本発明者らは、後述の実施例で示すように、式Iにおいて、nが10となるまでは、n、すなわち、直鎖アルキレン基の炭素数が大きいほどチロシナーゼ阻害活性が高くなるが、nが10以上になると炭素数の差異によるチロシナーゼ阻害活性の差異はほとんどないことを見出した。また、製造の容易性などの観点から、nは18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましい。具体的には、nは6~18が好ましく、8~16がより好ましく、10~14がさらに好ましい。
【0016】
式Iにおいては、Rは単糖およびオリゴ糖からなる群より選択される糖のいずれか1つの水酸基を除いて得られる糖残基である。このとき、除かれる水酸基はヘミアセタール性水酸基であることが好ましい。
単糖およびオリゴ糖は水溶性の糖であることが好ましい。
【0017】
単糖としては、三~七炭糖のいずれでもよいが、好ましくは五炭糖又は六炭糖である。五炭糖の具体例としては、リボース、キシロース、アラビノース等が挙げられ、六炭糖類の具体例としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース等が挙げられる。単糖としては、キシロースまたはグルコースが好ましく、グルコースがより好ましい。オリゴ糖としては、二~六糖が好ましく、特に二糖が好ましい。二糖の具体例としては、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロース等が挙げられ、特にセロビオース又はマルトースが好ましい。その他、三糖としては、ラフィノース、パノース、メレジトース、ゲンチアノース等が、四糖としては、スタキオース等が挙げられる。その他、糖残基としては、デオキシリボース、フコース、ラムノース等のデオキシ糖、グルクロン酸等のウロン酸、グルコサミン等のアミノ糖の各残基も挙げられる。Rで示される糖残基が由来する糖は、D-体、L-体又はこれらの混合物等のいずれの異性体であってもよいが、D-体であることが好ましい。Rで示される糖残基としてはD-グルコースの1位の水酸基を除いて得られる残基が特に好ましい。すなわち、式Iで表されるレゾルシノール誘導体は以下式I-1で表されることが好ましい。
【0018】
【化4】
【0019】
式I-1においてnは式Iにおけるnと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0020】
式Iで表されるレゾルシノール誘導体の製造方法は特に限定されない。例えば、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのウィッティヒ(Wittig)反応により、炭素増炭反応を行い、その後、ヒドリド還元を行うことによりアルコールを得て、得られたアルコールの配糖体化反応を行うことにより、製造することができる。2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドの水酸基はベンジル基などの保護基による保護を行い、配糖体化の後、脱保護を行えばよい。製造方法の例の概略を以下に示す。
【0021】
【化5】
【0022】
<式IIで表されるレゾルシノール誘導体>
【化6】
【0023】
式IIで表されるレゾルシノール誘導体は、レゾルシノール骨格の4位に末端に水酸基が結合した直鎖アルキル基が結合している構造を有する。式IIで表されるレゾルシノール誘導体は式IIで表されるレゾルシノール誘導体のアグリコンに該当し、それらのうち、アルキレン基の炭素数が6以上であるものである。すなわち、式II中、n’は、6~20の整数を示す。
【0024】
n’は8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、13以上であることがさらに好ましい。本発明者らは、後述の実施例で示すように、式IIにおいて、nが10となるまでは、n’、すなわち、直鎖アルキレン基の炭素数が大きいほどチロシナーゼ阻害活性が高くなるがn’が10以上になると炭素数の差異によるチロシナーゼ阻害活性の差異はほとんどないことを見出した。また、製造の容易性などの観点から。n’は18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましい。具体的には、n’は6~18が好ましく、10~16がより好ましく、13~14がさらに好ましい。
【0025】
式IIで表されるレゾルシノール誘導体の製造方法は特に限定されない。例えば、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのウィッティヒ(Wittig)反応により、炭素増炭反応を行い、その後、ヒドリド還元を行うことにより製造することができる。2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドの水酸基はベンジル基などの保護基による保護を行い、ヒドリド還元の後、脱保護を行えばよい。
式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体は、効率的で収率よく製造できるので、グラムスケールでの供給も容易である。
【0026】
<チロシナーゼ活性阻害剤>
式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体は、チロシナーゼ阻害活性を示すことからチロシナーゼ活性阻害剤として用いることができる。式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体をチロシナーゼの活性阻害剤として使用する場合、そのまま単独で使用してもよいが、通常は、各種用途に応じた使用形態としてもよい。
【0027】
チロシナーゼ活性阻害剤は、メラニン生成を抑制する。したがって、式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体は、皮膚外用剤に美白作用を有する成分として配合することができる。皮膚外用剤は化粧品であっても医薬品であってもよい。皮膚外用剤における式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体の含有量は、皮膚外用剤の総質量に対し、0.001~10質量%であることが好ましく、0.01~5質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
皮膚外用剤には、式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体以外に、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分の1種又は2種以上を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。このような他の成分としては、例えば粉末成分、液体油脂、固体油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、エステル類、シリコーン、各種界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、抗酸化剤、酸化防止剤、酸化防止助剤色剤、防腐剤、色剤、香料、水等が挙げられる。さらに、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の他の美白剤も適宜配合することができる。
【0029】
例えば、式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体を、水やペースト剤と混合して塗布用の皮膚外用剤として使用できる。例えば、美白効果の高い皮膚外用剤として、皮膚褐色化防止機能性化粧品、すなわち皮膚の美白化粧品とすることができる。
【0030】
また、式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体は、水と混合して植物カット食材の褐変防止機能性添加剤としても使用できる。また、散布剤として使用すれば野菜の鮮度保持用の散布剤としても使用できる。式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体により、食品における着色もしくは変質または抗酸化活性のあるポリフェノール類の分解を防止することができる。
さらに、チロシナーゼ活性阻害剤は昆虫の外皮形成を阻害することができるため、式Iまたは式IIで表されるレゾルシノール誘導体は昆虫のさなぎ化抑止剤や人畜無害な殺虫剤としても使用できる。
【実施例
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
以下、実施例において、特に明記が無い限り、以下の条件で行った。
試薬と溶媒は、関東化学株式会社、和光純薬工業株式会社、シグマアルドリッチジャパン、または東京化成工業株式会社より購入した。脱水溶媒は関東化学株式会社(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエンおよびメタノール)より購入した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、関東化学株式会社より購入したシリカゲル(球状、63-210μm)を用いて行った。NMRスペクトルはJNM-ECS400(日本電子株式会社)を使用して測定した。1H-NMRスペクトルは7.24ppm(CHCl3)および3.30ppm(CH3OH)を、13C-NMRスペクトルは77.0ppm(CHCl3)および49.0ppm(CH3OH)を標準シグナルとして帰属した。精密質量はTripleTOF5600(株式会社エービー・サイエックス)を用い、ポジティブESI法によりイオン化を行って測定した。IRスペクトルはFrontier FT-IR(株式会社パーキンエルマージャパン)を用いて測定した。旋光度はP-1020(日本分光株式会社)を用いて測定し、10回の平均値を算出した。
【0033】
なお、実施例中、MOMP(Ph)3Clは(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、THFはテトラヒドロフラン、乾燥剤MS4AなどのMSはモレキュラーシーブの略である。
【0034】
<<製造例>>
<アルコール(10)の合成>
【化7】
【0035】
[2,4-ジ(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒド(9)]
アルゴン雰囲気下で、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(3.01g,22.8mmol)と炭酸カリウム(9.00g,65.2mmol)のDMF(20mL)懸濁液に、ベンジルブロミド(6.30mL,54.3mmol)を加え、60℃で一晩撹拌した。反応液に蒸留水(10mL)を加え、室温で30分間撹拌した後、酢酸エチル(100mL)と蒸留水(30mL)で分液操作を行った。得られた有機層を蒸留水(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物を氷冷し、生成した粗結晶をヘキサンで洗浄し、白色固体のアルデヒド(9)を6.21g(19.5mmol)得た(収率90%)。得られたアルデヒド(9)のスペクトルデータ(1H-NMRおよび13C-NMR)は文献値(Tetrahedron 2010, 66, 197-207)と一致した。
【0036】
[(E)-2-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)-2-(1-メトキシ-ビニル)-ベンゼン(trans-16)および(Z)-2-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)-2-(1-メトキシ-ビニル)-ベンゼン(cis-16)]
MOMP(Ph)3Cl(6.46g,18.8mmol)を真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で、脱水THF(16mL)に懸濁した。その懸濁液を氷冷した後、1.3Mナトリウムヘキサメチルジシラジド-THF溶液(9.4mL,17.86mmol)を滴下し、橙色のイリド溶液を得た。この溶液を室温で1時間撹拌した後、再び氷冷し、15分間撹拌した。真空乾燥したアルデヒド(9)(3.00g,9.43mmol)を脱水THF(10mL)に溶解し、上記の氷冷イリド溶液に加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で分液操作を行った。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。全ての水層を合わせて、酢酸エチル(30mL×3)で再抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のエノールエーテル(16)を3.17g(9.14mmol)得た(収率92%)。
cis体とtrans体の生成比率は、2:3であることが1H-NMRスペクトルによって確認された。
【0037】
[2-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)-アセトアルデヒド(17)]
エノールエーテル(16)(1.01g,2.90mmol)をTHF(40mL)と蒸留水(20mL)の混合溶媒に溶解し、濃塩酸(2.0mL)を加えて加熱還流しながら一晩撹拌した。反応液を室温に戻し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を炭酸ガスの発生が止まるまで滴下し、酢酸エチル(150mL)を加えて分液操作を行った。得られた有機層を蒸留水(50mL×3)および飽和食塩水(50mL×3)で洗浄した。全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で再度抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルデヒド(17)を891mg(2.68mmol)得た(収率92%)。
【0038】
[2-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)-エチルアルコール(10)]
真空乾燥したアルデヒド(17)(1.00g,3.02mmol)をジエチルエーテル(15mL)とメタノール(9mL)の混合溶媒に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(232mg,6.14mmol)を加えて30分撹拌した。反応液に酢酸エチル(50mL)および蒸留水(30mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を蒸留水(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。生成した粗結晶を酢酸エチルに溶かし、ヘキサンを加えることで再結晶化を行い、白色固体のアルコール(10)を877mg(2.62mmol)得た(収率87%)。
【0039】
<アルコール11の合成>
【化8】
【0040】
[(E)-3-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)-2-(1-メトキシ-ビニル)-ベンゼン(trans-18)および(Z)-3-(2,4-ビスベンジルオキシ)-2-(1-メトキシ-ビニル)-ベンゼン(cis-18)]
MOMP(Ph)3Cl(828mg,2.42mmol)を真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で、脱水THF(10mL)に懸濁した。その懸濁液を氷冷した後、1.3Mナトリウムヘキサメチルジシラジド-THF溶液(1.26mL,2.39mmol)を滴下し、橙色のイリド溶液を得た。この溶液を室温で1時間撹拌した後、再び氷冷し、15分間撹拌した。真空乾燥したアルデヒド(17)(0.20g,600μmol)を脱水THF(10mL)に溶解し、上記の氷冷イリド溶液に加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で分液操作を行った。得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。全ての水層を合わせて、酢酸エチル(30mL×3)で再抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のエノールエーテル(18)を133mg(369μmol)得た(収率62%)。
cis体とtrans体の生成比率は1:1であることが1H-NMRスペクトルによって確認された。
【0041】
[3-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)プロパナール(19)]
エノールエーテル(18)(635mg,1.76mmol)をTHF(40mL)と蒸留水(20mL)の混合溶媒に溶解し、濃塩酸(2.0mL)を加えて加熱還流しながら一晩撹拌した。反応液を室温に戻し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を炭酸ガスの発生が止まるまで滴下し、酢酸エチル(20mL)を加えて分液操作を行った。得られた有機層を蒸留水(30mL×3)および飽和食塩水(20mL×3)で洗浄した。全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で再度抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルデヒド(17)を549mg(1.59mmol)得た(収率90%)。
【0042】
[3-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)プロパノール(11)]
真空乾燥したアルデヒド(17)(549mg,1.59mmol)をジエチルエーテル(10mL)とメタノール(2.0mL)の混合溶媒に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(122mg,3.22mmol)を加えて30分撹拌した。反応液に酢酸エチル(20mL)および蒸留水(30mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を蒸留水(30mL×2)および飽和食塩水(20mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルコール(11)を529mg(1.52mmol)得た(収率96%)。得られたアルコール(11)のスペクトルデータ(1H-NMRおよび13C-NMR)は文献値(J. Med. Chem. 2003, 46, 16-24)と一致した。
【0043】
<アルコール12の合成>
【化9】
【0044】
[(E)-4-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)-2-ブテン酸エチル(trans-21)および(Z)-4-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)-2-ブテン酸エチル(cis-21)]
増炭反応を行う際、2,4-ジ(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒド(9)を基質として炭素数3のホスホン酸エステルを用いてHorner-Wadsworth-Emmons反応を試みた。しかしながら、その反応は進行しなかった(Org. Lett., 2004, 6, 2043-2046)。そこで、一炭素増炭したアルデヒド(17)と安定イリド(20)を用いたWittig反応を行った。
【0045】
アルデヒド(17)(944mg,2.84mmol)と安定イリドである(カルベトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(20)(1.19g,3.42mmol)を真空乾燥し、脱水トルエン(30mL)に溶解して3時間加熱還流しながら撹拌した。反応液に酢酸エチル(10mL)および蒸留水(50mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を蒸留水(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルケン(21)を1.11g(2.7mmol)得た(収率97%)。
cis体とtrans体の生成比率は1:16であり、trans体が高選択的に得られたことが、1H-NMRスペクトルによって確認された。
【0046】
[4-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)ブタン酸エチル(22)]
アルケン(21)(923mg,2.29mmol)をトルエン(35mL)に溶解し、パラジウム活性炭素-エチレンジアミン複合体(92.8mg)を加え、水素雰囲気下で4時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルカン(22)を806mg(1.99mg)得た(収率87%)。
【0047】
[4-(2’,4’-ジ(ベンジロルオキシ)フェニル)ブタノール(12)]
真空乾燥したアルカン(22)(999mg,2.47mmol)をジエチルエーテル(30mL)に溶解し、15分間の氷冷の後に水素化リチウムアルミニウム(LAH)(194mg,4.9mmol)を加えて室温で2時間撹拌した。10分間氷冷したのちエタノールを少量ずつ気泡が発生しなくなるまで滴下し、同様に蒸留水も滴下して反応を停止させた。反応液に酢酸エチル(30mL)および10%硫酸水溶液(50mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を10%硫酸水溶液(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20-25%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルコール(12)を900mg(2.48mmol)得た(収率100%)。
【0048】
<アルコール13の合成>
【化10】
【0049】
[(E)-6-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)-2,4-ヘキサジエン酸エチル(trans-24)と(Z)-6-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)-2,4-ヘキサジエン酸エチル(cis-24)]
乾燥剤にMS4A(2.28g)を用い、真空乾燥したアルデヒド(17)(2.01g,6.04mmol)および4-ホスホノクロトン酸トリエチル(23)(2.26g,9.03mmol)を脱水テトラヒドロフラン(25mL)に溶解した。水酸化リチウム一水和物(379mg,9.05mmol)を加え、50℃で1時間撹拌した。セライトを用いてMS4Aを除去し、反応液に酢酸エチル(30mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のジエン(24)を2.08g(4.86mmol)得た(収率81%)。
この反応におけるcis体とtrans体の生成比率は1:22であり、trans体が高選択的に得られたことが、1H-NMRスペクトルによって確認された。
【0050】
[6-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)ヘキサン酸エチル(25)]
ジエン24(1.00g,2.34mmol)をトルエン(30mL)に溶解し、パラジウム活性炭素-エチレンジアミン複合体(100mg)を加え、水素雰囲気下で4時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルカン(25)を998mg(2.31mmol)得た(収率99%)。
【0051】
[6-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)ヘキサノール(13)]
真空乾燥したアルカン(25)(400mg,926μmmol)を、脱水ジエチルエーテル(12mL)および脱水テトラヒドロフラン(5mL)の混合溶媒に溶解し、氷冷しながら15分間撹拌した。この溶液に水素化リチウムアルミニウム(70.8mg,1.87mmol)を加え、室温で30分撹拌した。10分間氷冷したのちエタノールを少量ずつ気泡が発生しなくなるまで滴下し、さらに蒸留水を滴下して反応を止めた。反応液に酢酸エチル(30mL)および10%硫酸水溶液(50mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を10%硫酸水溶液(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後にろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルコール(13)を352mg(901μmol)得た(収率97%)。
【0052】
<アルコール14の合成>
【化11】
【0053】
[6-(2’,4’-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)ヘキサナール(26)]
乾燥剤にMS4A(7.00g)を用い、二クロム酸ピリジニウム(PDC)(1.90g,5.13mmol)を脱水ジクロロメタン(40mL)に溶解した。真空乾燥したアルコール(13)(1.00g,2.57mmol)を脱水THF(10mL)に溶解し、上記の溶液に加え、室温で2時間撹拌した。上記の溶液に無水硫酸ナトリウム10gとジエチルエーテル10mLを加えて10分撹拌した後、セライトおよびシリカゲルを用いてMS4Aを除去した。ろ液を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルデヒド(26)を721mg(1.86mmol)得た(収率72%)。
【0054】
[(E)-エチル10-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)デカ-2,4-ジエノエート(trans-27)および(Z)-エチル10-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)デカ-2,4-ジエノエート(cis-27)]
乾燥剤にMS4A(98.6mg)を用い、真空乾燥したアルデヒド(26)(102mg,261μmol)および4-ホスホノクロトン酸トリエチル(23)(101mg,402μmol)を脱水テトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、水酸化リチウム一水和物(31.6mg,753μmol)を加え、50℃で2時間撹拌した。セライトを用いてMS4Aを除去し、反応液に酢酸エチル(30mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のジエン(27)を108mg(224μmol)得た(収率86%)。
この反応におけるcis体とtrans体の生成比率は1:7であり、trans体が高選択的に得られたことが、1H-NMRスペクトルによって確認された。
【0055】
[エチル10-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)デカノエート(28)]
ジエン(27)(2.44g,5.03mmol)をトルエン(100mL)に溶解し、パラジウム活性炭素-エチレンジアミン複合体(247mg)を加え、水素雰囲気下で7時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルカン(28)を2.31g(4.73mmol)得た(収率94%)。
【0056】
[10-(2,4-ジ(べンジルオキシ)フェニル)デカノール(14)]
真空乾燥したアルカン(28)(382mg,782μmol)をジエチルエーテル(20mL)に溶解し、15分間の氷冷の後に水素化リチウムアルミニウム(61.4mg,1.62mmol)を加えて室温で2時間撹拌した。10分間氷冷したのちエタノールを少量ずつ気泡が発生しなくなるまで滴下し、同様に蒸留水も滴下して反応を停止させた。反応液に酢酸エチル(30mL)および10%硫酸水溶液(50mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を10%硫酸水溶液(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20-25%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルコール(14)を340mg(760μmol)得た(収率97%)。
【0057】
<アルコール15の合成>
【化12】
【0058】
[10-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)デカナール(29)]
乾燥剤にMS4A(8.26g)を用い、二クロム酸ピリジニウム(1.96g,5.28mmol)を脱水ジクロロメタン(40mL)に溶解した。真空乾燥したアルコール(14)(1.18g,2.64mmol)を脱水THF(10mL)に溶解し、上記の溶液に加え、室温で2時間撹拌した。上記の溶液に無水硫酸ナトリウム10gとジエチルエーテル20mLを加えて10分撹拌した後、セライトおよびシリカゲルを用いてMS4Aを除去した。ろ液を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-15%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルデヒド(29)を930mg(2.09mmol)得た(収率79%)。
【0059】
[エチル14-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)テトラデカ-2,4-ジエノエート(30)]
乾燥剤にMS4A(89.3mg)を用い、真空乾燥したアルデヒド(29)(102mg,230μmol)および4-ホスホノクロトン酸トリエチル(23)(84.3mg,337μmol)を脱水テトラヒドロフラン(10mL)に溶解した。水酸化リチウム一水和物(17.0mg,405μmol)を加え、50℃で1時間撹拌した。セライトを用いてMS4Aを除去し、反応液に酢酸エチル(10mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL×2)および飽和食塩水(10mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(15mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のジエン(30)を98.1mg(181μmmol)得た(収率79%)。
この反応におけるcis体とtrans体の生成比率は1:10であり、trans体が高選択的に得られたことが、1H-NMRスペクトルによって確認された。
【0060】
[エチル14-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)テトラデカノエート(31)]
ジエン(30)(100mg,185μmol)をトルエン(10mL)に溶解し、パラジウム活性炭素-エチレンジアミン複合体(12.5mg)を加え、水素雰囲気下で3時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルカン(31)を95.8mg(175μmol)得た(収率95%)。
【0061】
[14-(2,4-ジ(ベンジルオキシ)フェニル)テトラデカノール(15)]
真空乾燥したアルカン(31)(531mg,974μmol)をジエチルエーテル(30mL)に溶解し、15分間の氷冷の後に水素化リチウムアルミニウム(78.1mg,2.06mmol)を加えて室温で30分撹拌した。10分間氷冷したのちエタノールを少量ずつ気泡が発生しなくなるまで滴下し、同様に蒸留水も滴下して反応を停止させた。反応液に酢酸エチル(30mL)および10%硫酸水溶液(50mL)を加え、分液操作を行った。得られた有機層を10%硫酸水溶液(50mL×2)および飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。得られた全ての水層を合わせて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のアルコール(15)を438mg(872μmol)得た(収率90%)。
【0062】
<配糖体(3~8)の合成>
上記で得られたアルコール10,11,12,13,14および15とグルコースから誘導したピバロイル(Pv)化糖供与体(32)とのKoenigs-Knorr反応により以下のように合成した。
【0063】
【化13】
【0064】
[1-(2’’,3’’,4’’,6’’-テトラ-O-ピバロイル-β-D-グルコピラノシル)-2-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)エタン(33)]
真空乾燥したアルコール(10)(999mg,2.99mmol)とグルコース供与体(32)(2.60g,4.49mmol)を、脱水ジエチルエーテル(30mL)に溶解した。この溶液に活性化MS3A(3.90g)および炭酸銀(1.65g,5.99mmol)を加え、遮光下で一晩撹拌した。セライトを用いてMS3Aと炭酸銀をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-15%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体の配糖体(33)を1.93g(2.32mmol)得た(収率78%)。
【0065】
[1-β-D-グルコピラノシル-2-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)エタン(39)]
真空乾燥した配糖体(33)(99.6mg,120μmol)をメタノール(4mL)に溶解し、ナトリウムメトキシド(0.186mL,929μmol)を加え、加熱還流しながら3時間撹拌した。反応液を室温に戻し、Amberlite IR120-Hを加えて中和した。Amberlite IR120-Hを濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をメタノール(30mL)に溶解し、シクロヘキサン(10mL×3)で洗浄した後、分液操作で得られたシクロヘキサン層を集め、メタノール(50mL)で再抽出した。全てのメタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体のテトラオール(39)を56.6mg(114μmol)得た(収率95%)。
【0066】
[1-β-D-グルコピラノシル-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)エタン(3)]
テトラオール(39)(46.3mg,93.2μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(4.5mg)を加え、水素雰囲気下で4時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体の配糖体(3)を29.5mg(93.2μmol)得た(収率100%)。
【0067】
[α]D 25 -26.15 (c 1.00, MeOH); IR (film) νmax 2980, 1132, 809 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.90 (d, J = 8.2 Hz, 1H, H-6’), 6.26 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.2, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 4.29 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-1’’), 3.99 (ddd, J = 9.4, 8.4, 6.8 Hz, 1H, H-1), 3.85 (dd, J = 12.0, 2.1 Hz, 1H, H-6’’), 3.70 (m, 1H, H-1), 3.66 (dd, J = 12.0, 5.3 Hz, 1H, H-6’’), 3.29 (m, 3H, H-3’’-H-5’’), 3.17 (dd, J = 9.0, 7.8 Hz, 1H, H-2’’), 2.82 (m, 2H, H-2); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.9 (C-4’), 157.4 (C-2’), 132.2 (C-6’), 117.2 (C-1’), 107.5 (C-5’), 104.4 (C-1’’), 103.5 (C-3’), 78.1 (C-3’’), 77.9 (C-5’’), 75.1 (C-2’’), 71.6 (C-4’’), 71.2 (C-1), 62.7 (C-6’’), 31.3 (C-2); ESIHRMS m/z 339.1054 [M+Na]+ (calcd for C14H20NaO8, 339.1055).
【0068】
[1-(2’’,3’’,4’’,6’’-テトラ-O-ピバロイル-β-D-グルコピラノシル)-3-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)プロパン(34)]
真空乾燥したアルコール(11)(107mg,308μmol)とグルコース供与体(32)(252mg,434μmol)を、脱水ジエチルエーテル(5mL)に溶解した。この溶液に活性化MS3A(0.374g)と炭酸銀(162mg,588mmol)を加えて遮光下で4時間撹拌した。セライトを用いてMS3Aと炭酸銀をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体の配糖体(34)を243mg(287μmol)得た(収率93%)。
【0069】
[1-β-D-グルコピラノシル-3-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)プロパン(40)]
真空乾燥した配糖体(34)(201mg,237μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、ナトリウムメトキシド(0.38mL,1.90mmol)を加えて加熱還流しながら2時間撹拌した。反応液を室温に戻し、Amberlite IR120-Hを加えて中和した。Amberlite IR120-Hを濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をメタノール(30mL)に溶解し、シクロヘキサン(10mL×3)で洗浄した後、分液操作で得られたシクロヘキサン層を集め、メタノール(50mL)で再抽出した。全てのメタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-15%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体のテトラオール(40)を121mg(237μmol)得た(収率100%)。
【0070】
[1-β-D-グルコピラノシル-3-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン(4)]
テトラオール(40)(113mg,222μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(13.0mg)を加え、水素雰囲気下で4時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体の配糖体(4)を71.6mg(217μmol)得た(収率98%)。
【0071】
[α]D 24 -18.14 (c 0.49, MeOH); IR (film) νmax 3329, 1040, 879 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.86 (d, J = 8.1 Hz, 1H, H-6’), 6.25 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.20 (dd, J = 8.1, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 4.38 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-1’’), 3.90 (dt, J = 9.6, 7.2 Hz, 1H, H-1), 3.85 (dd, J = 12.0, 2.1 Hz, 1H, H-6’’), 3.66 (dd, J = 12.0, 5.3 Hz, 1H, H-6’’), 3.53 (dt, J = 9.6, 7.2 Hz, 1H, H-1), 3.29 (m, 3H, H-3’’-H-5’’), 3.18 (dd, J = 9.0, 7.8 Hz, 1H, H-2’’), 2.57 (t, J = 7.2 Hz, 2H, H-3), 1.85 (quin, J = 7.2 Hz, 2H, H-2); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.4 (C-4’), 157.0 (C-2’), 131.6 (C-6’), 120.6 (C-1’), 107.4 (C-5’), 104.4 (C-1’’), 103.5 (C-3’), 78.1 (C-3’’), 77.9 (C-5’’), 75.2 (C-2’’), 71.7 (C-4’’), 70.5 (C-1), 62.8 (C-6’’), 31.2, 26.9 (C-2, C-3); ESIHRMS m/z 353.1198 [M+Na]+ (calcd for C15H22NaO8, 353.1212).
【0072】
[1-(2’’,3’’,4’’,6’’-テトラ-O-ピバロイル-β-D-グルコピラノシル)-4-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)ブタン(35)]
真空乾燥したアルコール(12)(502mg,1.39mmol)とグルコース供与体(32)(1.60g,2.76mmol)を、脱水ジエチルエーテル(15mL)に溶解した。この溶液に活性化MS3A(2.41g)と炭酸銀(761mg,2.76mmol)を加えて遮光下で一晩撹拌した。セライトを用いてMS3Aと炭酸銀をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体の配糖体(35)を1.09g(1.27mmol)得た(収率92%)。
【0073】
[1-β-D-グルコピラノシル-4-(2,4-ジベンジロキシフェニル)ブタン(41)]
真空乾燥した配糖体(35)(501mg,581μmol)をメタノール(20mL)に溶解し、ナトリウムメトキシド(0.95mL,4.75mmol)を加え、加熱還流しながら3時間撹拌した。反応液を室温に戻し、Amberlite IR120-Hを加え中和した。Amberlite IR120-Hを濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をメタノール(30mL)に溶解し、シクロヘキサン(10mL×3)で洗浄した後、分液操作で得られたシクロヘキサン層を集め、メタノール(50mL)で再抽出した。全てのメタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体のテトラオール(41)を242mg(462μmol)得た(収率80%)。
【0074】
[1-β-D-グルコピラノシル-4-(2,4-ジヒドロキシフェニル)ブタン(5)]
テトラオール(41)(51.5mg,982μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(5.9mg)を加え、水素雰囲気下で2時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-15%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体の配糖体(5)を32.3mg(93.8μmol)得た(収率96%)。
【0075】
[α]D 25 -26.13 (c 0.95, MeOH); IR (film) νmax 3313, 1015, 841 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.82 (d, J = 8.2 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.2, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 4.23 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-1’’), 3.91 (dt, J = 9.4, 6.5 Hz, 1H, H-1), 3.85 (dd, J = 11.7, 1.7 Hz, 1H, H-6’’), 3.65 (dd, J = 11.7, 5.3 Hz, 1H, H-6’’), 3.55 (dt, J = 9.4, 6.5 Hz, 1H, H-1), 3.28 (m, 3H, H-3’’-H-5’’), 3.15 (dd, J = 8.8, 7.8 Hz, 1H, H-2’’), 2.50 (t, J = 7.0 Hz, 2H, H-4), 1.62 (m, 4H, H-2, H-3); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.3 (C-4’), 157.0 (C-2’), 131.4 (C-6’), 121.2 (C-1’), 107.3 (C-5’), 104.3 (C-1’’), 103.4 (C-3’), 78.1 (C-3’’), 77.9 (C-5’’), 75.1 (C-2’’), 71.6 (C-4’’), 70.9 (C-1), 62.7 (C-6’’), 30.4, 30.2, 27.7 (C-2-C-4); ESIHRMS m/z 363.1372 [M+Na]+ (calcd for C16H24NaO8, 367.1368).
【0076】
[1-(2’’,3’’,4’’,6’’-テトラ-O-ピバロイル-β-D-グルコピラノシル)-6-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)ヘキサン(36)]
真空乾燥したアルコール(13)(101mg,258μmol)とグルコース供与体(32)(221mg,381μmol)を、脱水ジエチルエーテル(5mL)に溶解した。その溶液に活性化MS3A(332mg)および炭酸銀(142mg,515mmol)を加え、遮光下で一晩撹拌した。セライトを用いてMS3Aと炭酸銀をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-15%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体の配糖体(36)を222mg(250μmol)得た(収率97%)。
【0077】
[1-β-D-グルコピラノシル-6-(2,4-ジベンジロキシフェニル)ヘキサン(42)]
真空乾燥した配糖体(36)(103mg,116μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、ナトリウムメトキシド(0.18mL,900μmol)を加え、加熱還流しながら3時間撹拌した。反応液を室温に戻し、Amberlite IR120-Hを加えて中和した。Amberlite IR120-Hを濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をメタノール(30mL)に溶解し、シクロヘキサン(10mL×3)で洗浄した後、分液操作で得られたシクロヘキサン層を集め、メタノール(50mL)で再抽出した。全てのメタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体のテトラオール(42)を56.4mg(102μmol)得た(収率88%)。
【0078】
[1-β-D-グルコピラノシル-6-(2,4-ジヒドロキシフェニル)ヘキサン(6)]
テトラオール(42)(96.6mg,175μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(11.0mg)を加え、水素雰囲気下で2時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体の配糖体(6)を63.7mg(171μmol)得た(収率98%)。
【0079】
[α]D 25 -25.60 (c 0.79, MeOH); IR (film) νmax 3325, 1041, 880 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.80 (d, J = 8.1 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.0 Hz, 1H, H-3’), 6.18 (dd, J = 8.1, 2.0 Hz, 1H, H-5’), 4.23 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-1’’), 3.88 (dt, J = 9.3, 6.8 Hz, 1H, H-1), 3.86 (dd, J = 11.8, 1.4 Hz, 1H, H-6’’), 3.65 (dd, J = 11.8, 5.0 Hz, 1H, H-6’’), 3.52 (dt, J = 9.3, 6.3 Hz, 1H, H-1), 3.29 (m, 3H, H-3’’-H-5’’), 3.15 (dd, J = 8.7, 7.8 Hz, 1H, H-2’’), 2.46 (m, 2H, H-6), 1.57 (m, 4H, H-2, H-5), 1.37 (m, 4H, H-3, H-4); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.2 (C-4’), 156.9 (C-2’), 131.3 (C-6’), 121.5 (C-1’), 107.2 (C-5’), 104.4 (C-1’’), 103.4 (C-3’), 78.1 (C-3’’), 77.9 (C-5’’), 75.1 (C-2’’), 71.7 (C-4’’), 70.9 (C-1), 62.8 (C-6’’), 31.3, 30.8, 30.5, 30.4, 27.0 (C-2-C-6); ESIHRMS m/z 395.1672 [M+Na]+ (calcd for C18H28NaO8, 395.1681).
【0080】
[1-(2’’,3’’,4’’,6’’-テトラ-O-ピバロイル-β-D-グルコピラノシル)-10-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)ブタン(37)]
真空乾燥したアルコール(14)(101mg,225μmol)とグルコース供与体(32)(192mg,332μmol)を、脱水ジエチルエーテル(5mL)に溶解した。その溶液に活性化MS3A(0.30g)および炭酸銀(125mg,452μmol)を加え、遮光下で一晩撹拌した。セライトを用いてMS3Aと炭酸銀をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体の配糖体(37)を199mg(210μmol)得た(収率94%)。
【0081】
[1-β-D-グルコピラノシル-6-(2,4-ジベンジロキシフェニル)デカン(43)]
真空乾燥した配糖体(37)(859mg,908μmol)をメタノール(30mL)に溶解し、ナトリウムメトキシド(1.45mL,7.25mmol)を加え、加熱還流しながら2時間撹拌した。反応液を室温に戻し、Amberlite IR120-Hを加えて中和した。Amberlite IR120-Hを濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をメタノール(30mL)に溶解し、シクロヘキサン(10mL×3)で洗浄した後、分液操作で得られたシクロヘキサン層を集め、メタノール(50mL)で再抽出した。全てのメタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3-10%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体のテトラオール(43)を517mg(849μmol)得た(収率94%)。
【0082】
[1-β-D-グルコピラノシル-6-(2,4-ジヒドロキシフェニル)テトラデカン(7)]
テトラオール(43)(517mg,852μmol)をメタノール(40mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(51.0mg)を加え、水素雰囲気下で2時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、目的の配糖体(7)を331mg(773μmol)得た(収率91%)。
【0083】
[α]25 D -19.22 (c 1.14, MeOH); IR (film) νmax 3370, 2918, 1032, 838 cm-1; 1H-NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.80 (d, J = 8.2 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.2, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 4.24 (d, J = 7.9 Hz, 1H, H-1’’), 3.89 (dt, J = 9.5, 6.8 Hz, 1H, H-1), 3.85(dd, J = 11.8, 1.7 Hz, 1H, H-6’’), 3.66 (dd, J = 11.9, 5.4, Hz, 1H, H-6’’), 3.52 (dt, J = 9.5, 6.8 Hz, 1H, H-1), 3.29 (m, 3H, H-3’’-H-5’’), 3.16 (dd, J = 8.6, 7.8 Hz, 1H, H-2’’), 2.45 (t, J = 8.0 Hz, 2H, H-10), 1.57 (m, 4H, H-2, H-9), 1.30 (m, 12H, H-3-H-8); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.1 (C-4’), 156.9 (C-2’), 131.3 (C-6’), 121.6 (C-1’), 107.2 (C-5’), 104.4 (C-1’’), 103.4 (C-3’), 78.1 (C-3’’), 77.9 (C-5’’), 75.1 (C-2’’), 71.7 (C-4’’), 70.9 (C-1), 62.8 (C-6’’), 31.4, 30.8, 30.70, 30.67, 30.6, 30.5, 27.1 (C-2-C-10); ESIHRMS m/z 429.2482 [M+H]+ (calcd for C22H37O8, 429.2488).
【0084】
[1-(2’’,3’’,4’’,6’’-テトラ-O-ピバロイル-β-D-グルコピラノシル)-4-(2,4-ジベンジルオキシフェニル)テトラデカン(38)]
真空乾燥したアルコール(15)(98.3mg,196μmol)とグルコース供与体(32)(175mg,302μmol)を、脱水ジエチルエーテル(10mL)に溶解した。その溶液に活性化MS3A(262mg)および炭酸銀(110mg,400μmol)を加え、遮光下で4時間撹拌した。セライトを用いてMS3Aと炭酸銀をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3-10%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体の配糖体(38)を187mg(187μmol)得た(収率95%)。
【0085】
[1-β-D-グルコピラノシル-6-(2,4-ジベンジロキシフェニル)テトラデカン(44)]
真空乾燥した配糖体(38)(99.8mg,99.7μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、ナトリウムメトキシド(0.16mL,800μmol)を加え、加熱還流しながら3時間撹拌した。反応液を室温に戻し、Amberlite IR120-Hを加えて中和した。Amberlite IR120-Hを濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をメタノール(30mL)に溶解し、シクロヘキサン(10mL×3)で洗浄した後、分液操作で得られたシクロヘキサン層を集め、メタノール(50mL)で再抽出した。全てのメタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体のテトラオール(44)を63.4mg(95.4μmol)得た(収率96%)。
【0086】
[1-β-D-グルコピラノシル-6-(2,4-ジヒドロキシフェニル)テトラデカン(8)]
テトラオール(44)(328mg,493μmol)をメタノール(30mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(35.6mg)を加え、水素雰囲気下で3時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%メタノール-クロロホルム)で精製し、白色固体の配糖体(8)を203mg(419μmol)得た(収率85%)。
【0087】
[α]D 26 -18.71 (c 1.14, MeOH); IR (film) νmax 3373, 1033, 838 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.80 (d, J = 8.2 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.1, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 4.23 (d, J = 7.8 Hz, 1H, H-1’’), 3.89 (dt, J = 9.5, 6.8 Hz, 1H, H-1), 3.85 (dd, J = 11.8, 1.9 Hz, 1H, H-6’’), 3.66 (dd, J = 11.8, 5.3 Hz, 1H, H-6’’), 3.52 (dt, J = 9.5, 6.8 Hz, 1H, H-1), 3.30 (m, 3H, H-3’’-H-5’’), 3.16 (dd, J = 9.0, 7.8 Hz, 1H, H-2’’), 2.45 (m, 2H, H-14), 1.57 (m, 4H, H-2, H-13), 1.28 (m, 20H, H-3-H-12); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.1 (C-4’), 156.9 (C-2’), 131.3 (C-6’), 121.6 (C-1’), 107.2 (C-5’), 104.4 (C-1’’), 103.4 (C-3’), 78.1 (C-3’’), 77.9 (C-5’’), 75.1 (C-2’’), 71.7 (C-4’’), 70.9 (C-1), 62.8 (C-6’’), 31.4, 30.8, 30.78, 30.75, 30.7, 30.63, 30.56, 30.5, 27.1 (C-2-C-14); ESIHRMS m/z 485.3107 [M+H]+ (calcd for C26H45O8, 485.3114).
【0088】
<アグリコン45~50の合成>
【化14】
【0089】
[2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)エタノール(45)]
アルコール(10)(102mg,304μmol)をメタノール(10mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(10.6mg)を加え、水素雰囲気下で2時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(70%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のトリオール(45)を46.9mg(304μmol)得た(収率100%)。
【0090】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.85 (d, J = 8.1 Hz, 1H, H-6’), 6.26 (d, J = 2.2 Hz, 1H, H-3’), 6.49 (dd, J = 8.2, 2.2 Hz, 1H, H-5’), 3.67 (t, J = 7.1 Hz, 2H, H-1), 2.72 (t, J = 7.1 Hz, 2H, H-2); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.9 (C-4’), 157.5 (C-2’), 132.3 (C-6’), 117.8 (C-1’), 107.5 (C-5’), 103.6 (C-3’), 63.6 (C-1), 34.5 (C-2).
【0091】
[3-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノール(46)]
アルコール(11)(147mg,422μmol)をメタノール(15mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(15.8mg)を加え、水素雰囲気下で4時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50-60%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のトリオール(46)を65.1mg(387μmol)得た(収率92%)。
【0092】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.83 (d, J = 8.1 Hz, 1H, H-6’), 6.25 (d, J = 1.2 Hz, 1H, H-3’), 6.20 (dd, J = 8.1, 1.2 Hz, 1H, H-5’), 3.53 (t, J = 6.6 Hz, 2H, H-1), 2.53 (t, J = 7.2 Hz, 2H, H-3), 1.75 (m, 2H, H-2); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.4 (C-4’), 157.1 (C-2’), 131.5 (C-6’), 120.7 (C-1’), 107.4 (C-5’), 103.5 (C-3’), 62.6 (C-1), 34.1 (C-2), 26.7 (C-3).
スペクトルデータは先行論文(Tetrahedron 1968, 24, 2495-2498)に記載のものと一致した。
【0093】
[4-(2,4-ジヒドロキシフェニル)ブタノール(47)]
アルコール(12)(241mg,665μmol)をメタノール(20mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(23.0mg)を加え、水素雰囲気下で5時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(60-70%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のトリオール(47)を121mg(665μmol)得た(収率100%)。
【0094】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.82 (d, J = 8.1 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.1, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 3.67 (t, J = 6.4 Hz, 2H, H-1), 2.49 (t, J = 7.2 Hz, 2H, H-4), 1.56 (m, 4H, H-2, H-3); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.3 (C-4’), 157.0 (C-2’), 131.4 (C-6’), 121.2 (C-1’), 107.3 (C-5’), 103.4 (C-3’), 63.1 (C-1), 33.4 (C-2), 30.2, 27.6 (C-3, C-4).
【0095】
[6-(2,4-ジヒドロキシフェニル)ヘキサノール(48)]
アルコール(13)(150mg,384μmol)をメタノール(15mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(15.3mg)を加え、水素雰囲気下で3時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(60%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のトリオール(48)を80.7mg(384μmol)得た(収率100%)。
【0096】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.80 (d, J = 8.2 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.1, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 3.52 (t, J = 6.6 Hz, 2H, H-1), 2.47 (t, J = 7.4 Hz, 2H, H-6), 1.53 (m, 4H, H-2, H-5), 1.35 (m, 4H, H-3, H-4); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.1 (C-4’), 156.9 (C-2’), 131.3 (C-6’), 121.5 (C-1’), 107.2 (C-5’), 103.4 (C-3’), 63.1 (C-1), 33.7 (C-2), 31.4, 30.5, 30.4, 26.9 (C-3-C-6).
【0097】
[10-(2,4-ジヒドロキシフェニル)デカノール(49)]
アルコール(14)(153mg,342μmol)をメタノール(15mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(16.1mg)を加え、水素雰囲気下で4時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のトリオール(49)を88.2mg(331μmol)得た(収率97%)。
【0098】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.80 (d, J = 8.1 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.1, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 3.53 (t, J = 6.6 Hz, 2H, H-1), 2.45 (t, J = 7.4 Hz, 2H, H-10), 1.51 (m, 4H, H-2, H-9), 1.35 (m, 12H, H-3-H-8); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.1 (C-4’), 156.9 (C-2’), 131.3 (C-6’), 121.6 (C-1’), 107.2 (C-5’), 103.4 (C-3’), 63.0 (C-1), 33.7 (C-2), 31.4, 30.74, 30.71, 30.67, 30.6, 30.53, 30.51, 26.9 (C-3-C-10).
【0099】
[14-(2,4-ジヒドロキシフェニル)トリデカノール(50)]
アルコール(15)(152mg,302μmol)をメタノール(20mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム活性炭素(16.3mg)を加え、水素雰囲気下で3時間撹拌した。セライトを用いて触媒をろ過した後、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40-60%酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、白色固体のトリオール(50)を92.0mg(298μmol)得た(収率93%)。
【0100】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 6.80 (d, J = 8.1 Hz, 1H, H-6’), 6.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H, H-3’), 6.19 (dd, J = 8.1, 2.4 Hz, 1H, H-5’), 3.53 (t, J = 6.6 Hz, 2H, H-1), 2.45 (t, J = 7.4 Hz, 2H, H-14), 1.51 (m, 4H, H-2, H-13), 1.28 (m, 20H, H-3-H-12); 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 157.1 (C-4’), 156.9 (C-2’), 131.3 (C-6’), 121.6 (C-1’), 107.2 (C-5’), 103.4 (C-3’), 63.0 (C-1), 33.7 (C-2), 31.4, 30.77, 30.76, 30.73, 30.70, 30.60, 30.55, 30.51, 26.9 (C-3-C-14).
【0101】
<<チロシナーゼ阻害活性の評価>>
合成した配糖体3~8、アグリコン45~50につき、逆相高速クロマトグラフィー(RP-HPLC)で精製を行い、精製物を用いて、以下のチロシナーゼ阻害活性試験を行った。
DOPA49mgを精製水に溶解し、5mMのDOPA水溶液を調製した。精製した配糖体3~8、アグリコン45~50、4-ヘキシルレゾルシノール(Sigma-Aldrich製)、コウジ酸(和光純薬工業株式会社製)をそれぞれDMSOに溶解し、3mMのサンプル溶液を調製した。チロシナーゼは、マッシュルーム由来のチロシナーゼ(「E.C.1.14.18.1」、購入先:Sigma-Aldrich)を用い、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、0.67mg/mLのチロシナーゼ溶液を調製した。
【0102】
キュベット(3mL容)に、DMSOで10段階(0~0.1mM)に希釈したサンプル溶液0.1mL、250mMリン酸ナトリウム緩衝液0.6mL、5mMのDOPA水溶液0.3mL、精製水1.9mL及びチロシナーゼ溶液0.1mLを加え、よく混合し、分光光度計で475nmの吸光値の変化を計測した。各測定は30℃で30秒間行い、1秒ごとに吸光値をコンピュータに保存した。得られた吸光度を直線回帰し、ブランク測定時の傾きを100%として50%阻害濃度(IC50)を算出した。結果を表1、表2に示す。表1、表2中のIC50に示されるデータは、50%阻害する各誘導体の濃度を示し、値が低いほどチロシナーゼに対する阻害活性が強いことを示している。
【0103】
【表1】
【0104】
表1に示す結果から分かるように、配糖体3~8はいずれもコウジ酸よりも高いチロシナーゼ阻害活性を示した。また、配糖体7と8は、市販の強力なチロシナーゼ阻害剤である4-ヘキシルレゾルシノールよりも高いチロシナーゼ阻害活性を示した。
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示す結果から分かるように、トリオール48~50はトリオール45~47よりも高いチロシナーゼ阻害活性を示した。