(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】トランスミッション構造
(51)【国際特許分類】
F16H 61/47 20100101AFI20231031BHJP
F16H 47/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16H61/47
F16H47/04 C
F16H47/04 D
(21)【出願番号】P 2019148996
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】小和田 七洋
(72)【発明者】
【氏名】岩木 浩二
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-007819(JP,A)
【文献】特開平11-108152(JP,A)
【文献】特開昭50-136571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/40-61/478
F16H 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車輌における走行系伝動経路に介挿されるトランスミッション構造であって、
前記作業車輌の駆動源から作動的に回転動力を入力するポンプ軸、前記ポンプ軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体の容量を第1及び第2ポンプ容量の間で無段階に変化させ得るポンプ側出力調整部材、モータ軸、前記モータ軸に支持され且つ前記ポンプ本体に流体接続されたモータ本体、並びに、前記モータ本体の容量を低速モータ容量及び前記低速モータ容量より小容量の高速モータ容量の間で変化させ得るモータ側出力調整部材を有するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記駆動源から前記第1要素に作動的に入力される基準回転動力及び前記モータ軸から前記第2要素に作動的に入力されるHST出力を合成して、合成回転動力を前記第3要素から出力する遊星歯車機構であって、前記ポンプ本体の第1ポンプ容量から第2ポンプ容量への変化によるHST出力の変化に応じて前記第3要素の出力が増速するように設定された遊星歯車機構と、
人為操作可能な変速操作部材と、
前記作業車輌の車速を直接又は間接的に検出する車速センサと、
前記ポンプ本体の容量を直接又は間接的に検出するポンプセンサと、
前記モータ本体の容量を直接又は間接的に検出するモータセンサと、
前記ポンプ側出力調整部材及び前記モータ側出力調整部材の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記車速センサによって検出される車速が、前記モータ本体が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体が第1及び第2ポンプ容量の間の所定のポンプ切替容量とされた際に現出される切替速以下の際には、前記モータ本体が低速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記変速操作部材の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、
前記車速が切替速を越えている際には、前記変速操作部材の増速操作に応じて、前記ポンプ本体の容量をポンプ切替容量の側から第2ポンプ容量の側へ変化させる前記ポンプ側出力調整部材の増速作動と前記モータ本体の容量を低速モータ容量の側から高速モータ容量の側へ変化させる前記モータ側出力調整部材の増速作動とを同期して実行させ、且つ、前記変速操作部材の減速操作に応じて、前記ポンプ本体の容量を第2ポンプ容量の側からポンプ切替容量の側へ変化させる前記ポンプ側出力調整部材の減速作動と前記モータ本体の容量を高速モータ容量の側から低速モータ容量の側へ変化させる前記モータ側出力調整部材の減速作動とを同期して実行させ
、
前記ポンプ切替容量は、前記ポンプ軸の回転状態に拘わらず前記モータ軸の回転をゼロとさせる中立容量とされていることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項2】
作業車輌における走行系伝動経路に介挿されるトランスミッション構造であって、
前記作業車輌の駆動源から作動的に回転動力を入力するポンプ軸、前記ポンプ軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体の容量を第1及び第2ポンプ容量の間で無段階に変化させ得るポンプ側出力調整部材、モータ軸、前記モータ軸に支持され且つ前記ポンプ本体に流体接続されたモータ本体、並びに、前記モータ本体の容量を低速モータ容量及び前記低速モータ容量より小容量の高速モータ容量の間で変化させ得るモータ側出力調整部材を有するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記駆動源から前記第1要素に作動的に入力される基準回転動力及び前記モータ軸から前記第2要素に作動的に入力されるHST出力を合成して、合成回転動力を前記第3要素から出力する遊星歯車機構であって、前記ポンプ本体の第1ポンプ容量から第2ポンプ容量への変化によるHST出力の変化に応じて前記第3要素の出力が増速するように設定された遊星歯車機構と、
人為操作可能な変速操作部材と、
前記作業車輌の車速を直接又は間接的に検出する車速センサと、
前記ポンプ本体の容量を直接又は間接的に検出するポンプセンサと、
前記モータ本体の容量を直接又は間接的に検出するモータセンサと、
前記ポンプ側出力調整部材及び前記モータ側出力調整部材の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記車速センサによって検出される車速が、前記モータ本体が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体が所定のポンプ切替容量とされた際に現出される切替速未満の際には、前記モータ本体が低速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記変速操作部材の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、
前記車速が低速側から切替速に到達した際には、前記モータ本体の容量が低速モータ容量から高速モータ容量へ変化するように前記モータ側出力調整部材を作動させると同時に、前記モータ本体が高速モータ容量とされた状態において車速を切替速に維持できるポンプ調整容量に前記ポンプ本体の容量がなるように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、
前記車速が切替速を越えている際には、前記モータ本体が高速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記変速操作部材の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、
前記車速が高速側から切替速に到達した際には、前記モータ本体の容量が高速モータ容量から低速モータ容量へ変化するように前記モータ側出力調整部材を作動させると同時に、前記ポンプ本体の容量がポンプ調整容量からポンプ切替容量に変更するように前記ポンプ側出力調整部材を作動させることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項3】
前記ポンプ切替容量は第2ポンプ容量とされていることを特徴とする請求項
2に記載のトランスミッション構造。
【請求項4】
前記第3要素から作動的に入力される合成回転動力を車輌前進用の回転動力として出力する前進伝動状態と前記合成回転動力を車輌後進用の回転動力として出力する後進伝動状態とを選択的に取り得る前後進切換機構を備え、
前記遊星歯車機構は、前記モータ本体が低速モータ容量とされた状態で前記ポンプ本体が所定の遊星ゼロ出力容量とされた際に前記第3要素の出力がゼロ速となり、前記ポンプ本体が遊星ゼロ出力容量から第2ポンプ容量へ容量変化されるに従って前記第3要素の出力がゼロ速から軸線回り一方側へ増速するように、設定されており、
前記制御装置は、前記変速操作部材がゼロ速位置に位置されると、前記モータ本体が低速モータ容量となるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記ポンプ本体が遊星ゼロ出力容量となるように前記ポンプ側出力調整部材を作動させることを特徴とする請求項1から
3の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項5】
前記遊星ゼロ出力容量は第1ポンプ容量とされていることを特徴とする請求項
4に記載のトランスミッション構造。
【請求項6】
前記変速操作部材は、ゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作可能とされており、
前記制御装置は、前記変速操作部材のゼロ速位置から前進側及び後進側への操作に応じて、前記前後進切換機構がそれぞれ前進伝動状態及び後進伝動状態となるように前記前後進切換機構を作動させることを特徴とする請求項
4又は
5に記載のトランスミッション構造。
【請求項7】
人為操作可能な前後進切換操作部材を備え、
前記制御装置は、前記前後進切換操作部材への操作に応じて、前記前後進切換機構が前進伝動状態及び後進伝動状態となるように前記前後進切換機構を作動させることを特徴とする請求項
4又は
5に記載のトランスミッション構造。
【請求項8】
前記第3要素から作動的に入力される回転動力を多段変速する副変速機構を備えていることを特徴とする請求項1から
7の何れかに記載のトランスミッション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静油圧式無段変速機構(HST)及び遊星歯車機構を含む静油圧・機械式無段変速構造(HMT構造)を有するトランスミッション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
HST及び遊星歯車機構によって形成されたHMT構造を含むトランスミッション構造は、例えば、特許文献1に記載されており、コンバインやトラクタ等の作業車輌の走行系伝動経路に好適に利用されている。
【0003】
図8に、前記特許文献1に記載の従来のトランスミッション構造500が適用された作業車輌の伝動模式図を示す。
図8に示されるように、前記トランスミッション構造500は、HST510及び遊星歯車機構530を有している。
【0004】
前記HST510は、前記作業車輌の駆動源210から作動的に回転動力を入力するポンプ軸512と、前記ポンプ軸512に支持されたポンプ本体514と、前記ポンプ本体514の容量を無段階に変化させるポンプ側出力調整部材520と、HST出力を出力するモータ軸516と、前記モータ軸516に支持され且つ前記ポンプ本体514に流体接続されたモータ本体518とを有しており、前記モータ本体518は固定容量とされた状態で、前記ポンプ側出力調整部材520によって前記ポンプ本体514の容量を変化させることにより、前記ポンプ軸512の回転速度に対して前記モータ軸516の回転速度を無段変速させ得るように構成されている。
【0005】
前記遊星歯車機構530は、サンギヤ532と、前記サンギヤ532と噛合する遊星ギヤ534と、前記遊星ギヤ534と噛合するインターナルギヤ536と、前記遊星ギヤ534を軸線回り回転自在に支持し且つ前記遊星ギヤ534の前記サンギヤ532回りの公転に連動して前記サンギヤ532と同一軸線回りに回転するキャリヤ538とを有しており、前記サンギヤ532、前記キャリヤ538及び前記インターナルギヤ536が遊星3要素を形成している。
【0006】
図8に示されるように、前記従来のトランスミッション構造500においては、前記インターナルギヤ536に前記駆動源210からの基準回転動力が作動的に入力され、前記サンギヤ532に前記モータ軸516からのHST出力が作動的に入力され、基準回転動力及びHST出力を合成した合成回転動力が前記キャリヤ538から出力されている。
【0007】
ところで、前記作業車輌は、仕様に応じて、必要最大牽引力及び必要最高速が定められており、前記トランスミッション構造は、この必要最大牽引力及び必要最高速をカバーすることが求められる。
【0008】
図9に、前記従来のトランスミッション構造500が適用された作業車輌の一例における必要最大牽引力Tmax及び必要最高速SmaxとHST容量(HSTポンプ容量)との関係を示す。
【0009】
ここで、前記従来のトランスミッション構造500においては、前記HST510は前記モータ本体518の容量は固定とされ、前記ポンプ本体514の容量だけが可変とされており、前記ポンプ本体514の容量を変化させることによってHST出力の回転速度を変化させるようになっている。
【0010】
しかしながら、HST出力の回転速度の変速幅だけで、必要最大牽引力Tmax及び必要最高車速Smaxの範囲をカバーすることは困難である。
【0011】
そこで、
図8に示すように、前記従来のトランスミッション構造500は、前記遊星歯車機構530から出力される合成回転動力を多段変速して、駆動輪220へ向けて出力する副変速機構570を備え、且つ、前記副変速機構570の変速段数を3段とすることによって、必要最大牽引力Tmax及び必要最高速Smaxをカバーするように構成されている。
なお、
図8中の符号550は前後進切換機構である。
【0012】
図10(a)~(c)に、前記従来のトランスミッション構造500が適用された作業車輌において、前記副変速機構570が、それぞれ、低速段伝動状態、中速段伝動状態及び高速段伝動状態とされた際に、現出可能な車速及び牽引力とHST容量(HSTポンプ容量)との関係を示す。
【0013】
図9及び
図10(a)~(c)に示すように、
図8の例においては、前記副変速機構570に設けた第1速段(低速段)、第2速段(中速段)及び第3速段(高速段)の3段の変速段によって、必要最大牽引力Tmax及び必要最高車速Smaxの範囲をカバーしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、HMT構造を形成するHST及び遊星歯車機構を有するトランスミッション構造であって、HMT出力の変速可能範囲を拡げることができるトランスミッション構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成する為に、本発明の第1態様は、作業車輌における走行系伝動経路に介挿されるトランスミッション構造であって、前記作業車輌の駆動源から作動的に回転動力を入力するポンプ軸、前記ポンプ軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体の容量を第1及び第2ポンプ容量の間で無段階に変化させ得るポンプ側出力調整部材、モータ軸、前記モータ軸に支持され且つ前記ポンプ本体に流体接続されたモータ本体、並びに、前記モータ本体の容量を低速モータ容量及び前記低速モータ容量より小容量の高速モータ容量の間で変化させ得るモータ側出力調整部材を有するHSTと、第1~第3要素を有し、前記駆動源から前記第1要素に作動的に入力される基準回転動力及び前記モータ軸から前記第2要素に作動的に入力されるHST出力を合成して、合成回転動力を前記第3要素から出力する遊星歯車機構であって、前記ポンプ本体の第1ポンプ容量から第2ポンプ容量への変化によるHST出力の変化に応じて前記第3要素の出力が増速するように設定された遊星歯車機構と、人為操作可能な変速操作部材と、前記作業車輌の車速を直接又は間接的に検出する車速センサと、前記ポンプ本体の容量を直接又は間接的に検出するポンプセンサと、前記モータ本体の容量を直接又は間接的に検出するモータセンサと、前記ポンプ側出力調整部材及び前記モータ側出力調整部材の作動制御を司る制御装置とを備え、前記制御装置は、前記車速センサによって検出される車速が、前記モータ本体が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体が第1及び第2ポンプ容量の間の所定のポンプ切替容量とされた際に現出される切替速以下の際には、前記モータ本体が低速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記変速操作部材の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、前記車速が切替速を越えている際には、前記変速操作部材の増速操作に応じて、前記ポンプ本体の容量をポンプ切替容量の側から第2ポンプ容量の側へ変化させる前記ポンプ側出力調整部材の増速作動と前記モータ本体の容量を低速モータ容量の側から高速モータ容量の側へ変化させる前記モータ側出力調整部材の増速作動とを同期して実行させ、且つ、前記変速操作部材の減速操作に応じて、前記ポンプ本体の容量を第2ポンプ容量の側からポンプ切替容量の側へ変化させる前記ポンプ側出力調整部材の減速作動と前記モータ本体の容量を高速モータ容量の側から低速モータ容量の側へ変化させる前記モータ側出力調整部材の減速作動とを同期して実行させるように構成され、前記ポンプ切替容量は、前記ポンプ軸の回転状態に拘わらず前記モータ軸の回転をゼロとさせる中立容量とされているトランスミッション構造を提供する。
【0017】
また、前記目的を達成する為に、本発明の第2態様は、作業車輌における走行系伝動経路に介挿されるトランスミッション構造であって、前記作業車輌の駆動源から作動的に回転動力を入力するポンプ軸、前記ポンプ軸に支持されたポンプ本体、前記ポンプ本体の容量を第1及び第2ポンプ容量の間で無段階に変化させ得るポンプ側出力調整部材、モータ軸、前記モータ軸に支持され且つ前記ポンプ本体に流体接続されたモータ本体、並びに、前記モータ本体の容量を低速モータ容量及び前記低速モータ容量より小容量の高速モータ容量の間で変化させ得るモータ側出力調整部材を有するHSTと、第1~第3要素を有し、前記駆動源から前記第1要素に作動的に入力される基準回転動力及び前記モータ軸から前記第2要素に作動的に入力されるHST出力を合成して、合成回転動力を前記第3要素から出力する遊星歯車機構であって、前記ポンプ本体の第1ポンプ容量から第2ポンプ容量への変化によるHST出力の変化に応じて前記第3要素の出力が増速するように設定された遊星歯車機構と、人為操作可能な変速操作部材と、前記作業車輌の車速を直接又は間接的に検出する車速センサと、前記ポンプ本体の容量を直接又は間接的に検出するポンプセンサと、前記モータ本体の容量を直接又は間接的に検出するモータセンサと、前記ポンプ側出力調整部材及び前記モータ側出力調整部材の作動制御を司る制御装置とを備え、前記制御装置は、前記車速センサによって検出される車速が、前記モータ本体が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体が所定のポンプ切替容量とされた際に現出される切替速未満の際には、前記モータ本体が低速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記変速操作部材の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、前記車速が低速側から切替速に到達した際には、前記モータ本体の容量が低速モータ容量から高速モータ容量へ変化するように前記モータ側出力調整部材を作動させると同時に、前記モータ本体が高速モータ容量とされた状態において車速を切替速に維持できるポンプ調整容量に前記ポンプ本体の容量がなるように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、前記車速が切替速を越えている際には、前記モータ本体が高速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記変速操作部材の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材を作動させ、前記車速が高速側から切替速に到達した際には、前記モータ本体の容量を高速モータ容量から低速モータ容量へ変化させるべく前記モータ側出力調整部材を作動させると同時に、前記ポンプ本体の容量をポンプ調整容量からポンプ切替容量に変更させるべく前記ポンプ側出力調整部材を作動させるように構成されているトランスミッション構造を提供する。
【0018】
前記第2態様において、好ましくは、前記ポンプ切替容量は第2ポンプ容量とされる。
【0019】
本発明に係るトランスミッション構造は、前記第3要素から作動的に入力される合成回転動力を車輌前進用の回転動力として出力する前進伝動状態と前記合成回転動力を車輌後進用の回転動力として出力する後進伝動状態とを選択的に取り得る前後進切換機構を備え得る。
【0020】
この場合、前記遊星歯車機構は、前記モータ本体が低速モータ容量とされた状態で前記ポンプ本体が所定の遊星ゼロ出力容量とされた際に前記第3要素の出力がゼロ速となり、前記ポンプ本体が遊星ゼロ出力容量から第2ポンプ容量へ容量変化されるに従って前記第3要素の出力がゼロ速から軸線回り一方側へ増速するように、設定される。
【0021】
そして、前記制御装置は、前記変速操作部材がゼロ速位置に位置されると、前記モータ本体が低速モータ容量となるように前記モータ側出力調整部材を作動させつつ、前記ポンプ本体が遊星ゼロ出力容量となるように前記ポンプ側出力調整部材を作動させる。
【0022】
好ましくは、前記遊星ゼロ出力容量は第1ポンプ容量とされる。
【0023】
一形態においては、前記変速操作部材は、ゼロ速位置から前進側及び後進側へ操作可能とされる。
この場合、前記制御装置は、前記変速操作部材のゼロ速位置から前進側及び後進側への操作に応じて、前記前後進切換機構がそれぞれ前進伝動状態及び後進伝動状態となるように前記前後進切換機構を作動させる。
【0024】
他形態においては、前記トランスミッション構造には、人為操作可能な前後進切換操作部材が備えられる。
この場合、前記制御装置は、前記前後進切換操作部材への操作に応じて、前記前後進切換機構が前進伝動状態及び後進伝動状態となるように前記前後進切換機構を作動させる。
【0025】
好ましくは、本発明に係るトランスミッション構造は、前記第3要素から作動的に入力される回転動力を多段変速する副変速機構を備えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るトランスミッション構造によれば、HST及び遊星歯車機構によって形成されるHMTの出力の変速可能範囲を、急激な速度変化を招くことなく、拡大することができる。
従って、例えば、多段式副変速機構を備える場合において、当該副変速機構の変速段数を、従来のトランスミッション構造においては必要であった変速段数から削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
【
図2】
図2は、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造における制御装置の制御ブロック図である。
【
図3】
図3(a)及び(b)は、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、車速及び牽引力とHST容量(ポンプ本体及びモータ本体の容量)との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の第1速段(低速段)係合時及び第2速段(高速段)係合時のグラフである。
【
図4】
図4は、
図2の変形例に係る制御装置の制御ブロック図である。
【
図5】
図5(a)及び(b)は、本発明の実施の形態2に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、車速及び牽引力とHST容量(ポンプ本体及びモータ本体の容量)との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の第1速段(低速段)係合時及び第2速段(高速段)係合時のグラフである。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、前記実施の形態2の変形例に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、車速及び牽引力とHST容量(ポンプ本体及びモータ本体の容量)との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の第1速段(低速段)係合時及び第2速段(高速段)係合時のグラフである。
【
図7】
図7(a)及び(b)は、前記実施の形態3に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、車速及び牽引力とHST容量(ポンプ本体及びモータ本体の容量)との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の第1速段(低速段)係合時及び第2速段(高速段)係合時のグラフである。
【
図8】
図8は、従来のトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す従来のトランスミッション構造が適用された作業車輌の一例における、必要最大牽引力及び必要最高車速とHST容量(HSTポンプ容量)との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10(a)~(c)は、それぞれ、前記従来のトランスミッション構造が適用された作業車輌における副変速機構が低速段伝動状態、中速段伝動状態及び高速段伝動状態とされた際に、現出可能な車速及び牽引力とHST容量(HSTポンプ容量)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施の形態1
以下、本発明に係るトランスミッション構造の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係るトランスミッション構造1が適用された作業車輌200の伝動模式図を示す。
【0029】
図1に示すように、前記作業車輌200は、駆動源210と、駆動輪220と、前記駆動源210から前記駆動輪220へ至る走行系伝動経路に介挿された前記トランスミッション構造1とを備えている。なお、
図1中の符号210aは前記駆動源210に含まれるフライホイールである。
【0030】
図1に示すように、前記トランスミッション構造1は、静油圧式無段変速機構(HST)10と、前記HST10と共働してHMT構造(静油圧・機械式無段変速構造)を形成する遊星歯車機構30とを備えている。
【0031】
前記HST10は、前記駆動源210からの回転動力を作動的に入力するポンプ軸12と、前記ポンプ軸12に支持されたポンプ本体14と、前記ポンプ本体14の容量を無段階に変化させ得るポンプ側出力調整部材20と、モータ軸16と、前記モータ軸16に支持され且つ前記ポンプ本体14に流体接続されたモータ本体18と、前記モータ本体18の容量を変化させ得るモータ側出力調整部材25とを備えている。
【0032】
なお、
図1に示すように、本実施の形態においては、前記駆動源210及び前記ポンプ軸12の間には増速ギヤ列214が介挿されており、前記駆動源210の回転動力が前記増速ギヤ列214を介して前記ポンプ軸12の軸線方向一端側の第1端部に作動的に入力されている。
これに代えて、前記駆動源210と前記ポンプ軸12とを直接的に接続することも可能である。
【0033】
前記ポンプ本体14は、前記ポンプ軸12に軸線回り相対回転不能に支持されたポンプ側シリンダブロック(図示せず)と、前記ポンプ側シリンダブロックに軸線回り相対回転不能且つ軸線方向進退自在に収容されたポンプ側ピストン(図示せず)とを有する可変容積型のアキシャルピストン機械であり、前記ポンプ側ピストンの進退範囲に応じて容量が変化するように構成されている。ピストンポンプ方式には、斜板型、斜軸型、ラジアル型等、種々の形態をとり得る。
【0034】
前記ポンプ側出力調整部材20は、前記ポンプ本体14の容量を第1ポンプ容量及び第2ポンプ容量の間で無段階に変化させ得るように構成されており、前記トランスミッション構造1に備えられる制御装置100によって作動制御されるように構成されている。
【0035】
図2に、前記制御装置100の制御ブロック図を示す。
図2に示すように、前記ポンプ側出力調整部材20は、前記ポンプ軸12と直交するポンプ側揺動軸線上に配置されたポンプ側制御軸21aと、前記ポンプ側ピストンの自由端部に直接又は間接的に係合された状態で前記ポンプ側制御軸21aの軸線回りの回転に応じてポンプ側揺動軸線回りに揺動とされるように前記ポンプ側制御軸21aに作動連結され、前記ポンプ側揺動軸線回りの揺動位置に応じて前記ポンプ側ピストンの進退範囲を画するポンプ側可動斜板21bと、前記ポンプ側制御軸21aを軸線回り回転させるポンプ側アクチュエータ21cとを有している。
【0036】
前記ポンプ側アクチュエータ21cは、前記制御装置100によって作動制御可能な限り、例えば、電磁弁及び油圧シリンダを含む電気・油圧アクチュエータや、電動モータを含む電気アクチュエータ等、種々の形態をとり得る。
【0037】
前記第1ポンプ容量は、例えば、前記ポンプ側可動斜板21bが前記ポンプ側揺動軸線回りに、前記ポンプ軸12の回転方向に対して前記モータ軸16を正転方向へ回転させる正転側及び逆転方向に回転させる逆転側の一方(例えば、逆転側)の揺動端へ揺動された際のポンプ容量とされ、前記第2ポンプ容量は、正転側及び逆転側の他方(例えば、正転側)の揺動端へ揺動された際のポンプ容量とされる。
【0038】
この場合には、前記ポンプ側可動斜板21bが前記ポンプ側揺動軸線回り中立位置に位置された際に、前記ポンプ本体14は中立容量(ゼロ容量)となり、前記ポンプ軸12が回転しているか否かに拘わらず、前記モータ軸16の回転がゼロとなる。
【0039】
本実施の形態においては、前記ポンプ側可動斜板21bが逆転側の揺動端に位置された際のポンプ容量(逆転側最大容量)が第1ポンプ容量とされ、前記ポンプ側可動斜板21bが正転側の揺動端に位置された際のポンプ容量(正転側最大容量)が第2ポンプ容量とされている。
【0040】
前記モータ本体18は、前記モータ軸16に軸線回り相対回転不能に支持されたモータ側シリンダブロック(図示せず)と、前記モータ側シリンダブロックに軸線回り相対回転不能且つ軸線方向進退自在に収容されたモータ側ピストン(図示せず)とを有する可変容積型のアキシャルピストン機械であり、前記モータ側ピストンの進退範囲に応じて容量が変化するように構成されている。ピストンモータ方式には、斜板型、斜軸型、ラジアル型等、種々の形態をとり得る。
【0041】
前記モータ側出力調整部材25は、前記モータ本体18の容量を、所定の低速モータ容量(L)と、前記低速モータ容量よりも小容量とされた所定の高速モータ容量(H)との間で変化させ得るように構成されている。
【0042】
図2に示すように、前記モータ側出力調整部材25は、前記モータ軸16と直交するモータ側揺動軸線上に配置されたモータ側制御軸26aと、前記モータ側ピストンの自由端部に直接又は間接的に係合された状態で前記モータ側制御軸26aの軸線回りの回転に応じてモータ側揺動軸線回りに揺動とされるように前記モータ側制御軸26aに作動連結され、前記モータ側揺動軸線回りの揺動位置に応じて前記モータ側ピストンの進退範囲を画するモータ側可動斜板26bと、前記モータ側制御軸26aを軸線回り回転させるモータ側アクチュエータ26cとを有している。
【0043】
前記モータ側アクチュエータ26cは、前記制御装置100によって作動制御可能な限り、例えば、電磁弁及び油圧シリンダを含む電気・油圧アクチュエータや、電動モータを含む電気アクチュエータ等、種々の形態をとり得る。
【0044】
前記モータ本体18の容量が小容量になるに従って、前記ポンプ軸12に対する前記モータ軸16の回転速度が上昇する。
従って、前記モータ本体18が低速モータ容量(大容量)から高速モータ容量(小容量)へ容量変化されるに従って、前記モータ軸16の回転速度が上昇する。
【0045】
なお、
図1に示すように、前記ポンプ軸12の軸線方向他端側の第2端部は、前記作業車輌200に備えられるPTO軸280に作動連結されている。
【0046】
詳しくは、
図1に示すように、前記作業車輌200は、前記PTO軸280と、前記ポンプ軸12から前記PTO軸280へ至るPTO系伝動経路を形成するPTO伝動構造とを有している。
【0047】
本実施の形態においては、前記PTO伝動構造は、前記ポンプ軸12の軸線方向他端側の第2端部に軸線回り相対回転不能に連結されたPTO駆動軸260と、前記PTO駆動軸260に減速ギヤ列217を介して作動連結された第1PTO伝動軸261と、第2PTO伝動軸262と、前記第1PTO軸261から前記第2PTO軸262への動力伝達を係脱するPTOクラッチ機構265と、前記第2PTO伝動軸262の回転動力を多段変速して前記PTO軸280へ伝達可能なPTO変速機構270とを有している。
【0048】
図1に示すように、前記遊星歯車機構30は、サンギヤ32と、前記サンギヤ32と噛合する遊星ギヤ34と、前記遊星ギヤ34と噛合するインターナルギヤ36と、前記遊星ギヤ34を軸線回り回転自在に支持し且つ前記遊星ギヤ34の前記サンギヤ32回りの公転に連動して前記サンギヤ32の軸線回りに回転するキャリヤ38とを有しており、前記サンギヤ32、前記キャリヤ38及び前記インターナルギヤ36が遊星3要素を形成している。
【0049】
前記遊星歯車機構30は、前記遊星3要素のうちの第1要素に前記駆動源210からの基準回転動力が作動的に入力され且つ第2要素に前記モータ軸16からのHST出力が作動的に入力されて、第3要素から基準回転動力及びHST出力を合成した合成回転動力を出力するものとされ、さらに、前記ポンプ本体14の第1ポンプ容量から第2ポンプ容量への容積変化によるHST出力の変化に応じて前記第3要素から出力される合成回転動力が増速するように構成されている。
【0050】
図1に示すように、本実施の形態においては、前記インターナルギヤ36が前記第1要素として作用し、前記サンギヤ32が前記第2要素として作用し、且つ、前記キャリヤ38が前記第3要素として作用している。
【0051】
詳しくは、前記第2要素として作用する前記サンギヤ32はサンギヤ軸32aに相対回転不能に支持されており、前記サンギヤ軸32aはギヤ列215を介して前記モータ軸16に作動連結されている。
【0052】
前記サンギヤ軸32aには筒状の伝動軸36aが相対回転自在に外挿されている。
前記伝動軸36aはギヤ列216を介して前記PTO駆動軸260に作動連結されている。
前記第1要素として作用する前記インターナルギヤ36は前記伝動軸36aに作動連結されており、前記ポンプ軸12、前記PTO駆動軸260、前記ギヤ列216及び前記伝動軸36aを介して前記駆動源210からの回転動力を入力するようになっている。
【0053】
前記サンギヤ軸32aには、前記伝動軸36aとは軸線方向に関し異なる位置において、筒状の遊星出力軸39が相対回転自在に外挿されており、前記第3要素として作用する前記キャリヤ38は前記遊星出力軸39に連結されている。
【0054】
図2に示すように、前記トランスミッション構造1は、さらに、人為操作可能な変速操作部材110と、前記作業車輌200の車速を直接又は間接的に検出する車速センサ120と、前記ポンプ本体14の容量を直接又は間接的に検出するポンプセンサ130と、前記モータ本体18の容量を直接又は間接的に検出するモータセンサ140とを備えている。
なお、
図2中の符号112は、前記変速操作部材110の操作状態(操作位置)を検出するセンサである。
【0055】
前記車速センサ120は、前記制御装置100が車速を認識し得る限り、前記遊星歯車機構30の第3要素から前記駆動輪220へ至る伝動経路の任意の回転部材の回転速度を検出するように構成され得る。
【0056】
前記ポンプセンサ130及び前記モータセンサ140は、それぞれ、前記制御装置100が前記ポンプ本体14及び前記モータ本体18の容量を認識し得る限り、種々の構成を取り得る。
【0057】
前記ポンプセンサ130は、例えば、前記ポンプ側アクチュエータ21cの作動状態を検出するセンサや前記ポンプ側制御軸21aの軸線回りの回転角度を検出するセンサとされ得る。
同様に、前記モータセンサ140は、例えば、前記モータ側アクチュエータ26cの作動状態を検出するセンサや前記モータ側制御軸26aの軸線回りの回転角度を検出するセンサとされ得る。
【0058】
図1に示すように、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造1は、前記遊星歯車機構30の第3要素から出力される回転動力の回転方向を正逆方向に切換可能な前後進切換機構50を備えている。
【0059】
即ち、前記トランスミッション構造1における前記HST10及び前記遊星歯車機構30は、前記第3要素から出力される合成回転動力の回転方向が軸線回り一方側のみとなるように、設定されている。
【0060】
そして、前記前後進切換機構50は、前記第3要素から作動的に入力される合成回転動力を車輌前進用の回転動力として出力する前進伝動状態と、前記合成回転動力を車輌後進用の回転動力として出力する後進伝動状態とを選択的に取り得るように構成されている。
【0061】
詳しくは、
図1に示すように、前記トランスミッション構造1は、前記遊星歯車機構30より伝動方向下流側に走行伝動軸45を有している。
前記前後進切換機構50は、前記第3要素から出力される合成回転動力を車輌前進用の回転動力回転動力として前記走行伝動軸45に作動伝達可能な前進伝動機構55Fと、前記合成回転動力を車輌後進用の回転動力として前記走行伝動軸45に作動伝達可能な後進伝動機構55Rと、前記前進伝動機構55Fの動力伝達を係脱させる前進クラッチ機構60Fと、前記後進伝動機構55Rの動力伝達を係脱させる後進クラッチ機構60Rと、前記前進クラッチ機構60F及び前記後進クラッチ機構60Rを作動する前後進切換アクチュエータ65とを備えている。
【0062】
前記前進伝動機構55Fは、前記遊星出力軸39に相対回転不能に支持された前進駆動ギヤ56Fと、前記前進駆動ギヤ56Fに噛合された状態で前記走行伝動軸45に相対回転自在に支持された前進従動ギヤ57Fとを有している。
【0063】
前記後進伝動機構55Rは、前記遊星出力軸39に相対回転不能に支持された後進駆動ギヤ56Rと、前記走行伝動軸45に相対回転自在に支持された後進従動ギヤ57Rと、前記後進駆動ギヤ56Rの回転動力を逆転させて前記後進従動ギヤ57Rに伝達する逆転ギヤ列58Rとを有している。
【0064】
本実施の形態においては、前記逆転ギヤ列58Rは、前記PTO駆動軸260に相対回転自在に外挿された筒状の中間軸58aと、前記後進駆動ギヤ56Rに噛合された状態で前記中間軸58aに相対回転不能に支持された第1中間ギヤ58bと、前記後進従動ギヤ57Rに噛合された状態で前記中間軸58aに相対回転不能に支持された第2中間ギヤ58cとを有している。
【0065】
本実施の形態においては、前記前進クラッチ機構60F及び前記後進クラッチ機構60Rは摩擦板式クラッチ機構とされている。
【0066】
詳しくは、
図1に示すように、前記前進クラッチ機構60Fは、前記走行伝動軸45に相対回転不能に支持された前進クラッチハウジング62Fと、前記前進クラッチハウジング62Fに相対回転不能に支持された前進従動側摩擦板及び前記前進従動側摩擦板に対向された状態で前記前進従動ギヤ57Fに相対回転不能に連結された前進駆動側摩擦板を含む前進摩擦板群64Fと、前記前進摩擦板群64Fを摩擦係合させる前進ピストン(図示せず)とを有している。
【0067】
前記後進クラッチ機構60Rは、前記走行伝動軸45に相対回転不能に支持された後進クラッチハウジング62Rと、前記後進クラッチハウジング62Rに相対回転不能に支持された後進従動側摩擦板及び前記後進従動側摩擦板に対向された状態で前記後進従動ギヤ57Rに相対回転不能に連結された後進駆動側摩擦板を含む後進摩擦板群64Rと、前記後進摩擦板群64Rを摩擦係合させる後進ピストンとを有している。
本実施の形態においては、前記前進クラッチハウジング62F及び前記後進クラッチハウジング62Rは単一の共通ハウジングとされている。
【0068】
前記前後進切換機構50は、前記制御装置100によって作動制御される。
本実施の形態においては、
図2に示すように、前記前後進切換アクチュエータ65は、前記前進クラッチハウジング62Fの油室及び前記後進クラッチハウジング62Rの油室にそれぞれ流体接続された前進ライン66F及び後進ライン66Rと、前記前進ライン66F及び前記後進ライン66Rに対する圧油の給排を切り換える電磁弁67とを備えている。
【0069】
前記電磁弁67は、油圧源からの圧油を前記前進ライン66Fへ供給し且つ前記後進ライン66Rをドレンラインに流体接続する前進位置と、油圧源からの圧油を前記後進ライン66Rへ供給し且つ前記前進ライン66Fをドレンラインに流体接続する後進位置と、前記前進及び後進ライン66F、66Rを開放する動力遮断位置とを取り得る。
【0070】
前記電磁弁67は、操縦者の人為操作に応じて前記制御装置100によって作動制御される。
図2に示すように、本実施の形態においては、前記変速操作部材110は手動レバー形であり、停止位置(ゼロ速位置)から前進側及び後進側へ操作可能とされている。
この場合、前記制御装置100は、前記変速操作部材110の前進側及び後進側への操作に応じて、それぞれ、前記電磁弁67を前進位置及び後進位置に位置させる。
【0071】
本実施の形態においては、前記前後進切換アクチュエータ65は電気・油圧アクチュエータとされているが、これに代えて、前記前後進切換アクチュエータ65を電動モータ等の電気アクチュエータとすることも可能である。
【0072】
図1及び
図2に示すように、前記トランスミッション構造1は、作動的に入力される前記遊星歯車機構30の合成回転動力を多段変速して、前記駆動輪220へ向けて出力する副変速機構70を備えている。
本実施の形態においては、前記副変速機構70は、低速段となる第1速段及び高速段となる第2速段の2段階の変速を行うように構成されている。
【0073】
本実施の形態においては、前記副変速機構70は、前記走行伝動軸45と前記走行伝動軸45より伝動方向下流側に配置された走行出力軸47との間で2段階の変速を行うように構成されている。
【0074】
詳しくは、
図1に示すように、前記副変速機構70は、所定の変速比で前記走行伝動軸45から前記走行出力軸47へ回転動力を伝達可能な第1速段ギヤ列71(1)と、前記所定変速比よりも高い変速比(前記走行出力軸47が高速回転する変速比)で前記走行伝動軸45から前記走行出力軸47へ回転動力を伝達可能な第2速段ギヤ列71(2)と、前記第1速段ギヤ列71(1)の動力伝達を係脱する第1速段クラッチ機構75(1)と、前記第2速段ギヤ列71(2)の動力伝達を係脱する第2速段クラッチ機構75(2)とを有している。
【0075】
本実施の形態においては、前記第1速段ギヤ列71(1)は、前記走行伝動軸45に支持された第1速段駆動ギヤ72(1)と、前記第1速段駆動ギヤ72(1)に噛合された状態で前記走行出力軸47に支持された第1速段従動ギヤ73(1)とを有している。
【0076】
前記第2速段ギヤ列71(2)は、前記走行伝動軸45に支持され、前記第1速段駆動ギヤ72(1)より大径とされた第2速段駆動ギヤ72(2)と、前記第2速段駆動ギヤ72(2)に噛合された状態で前記走行出力軸47に支持され、前記第1速段従動ギヤ73(1)より小径とされた第2速段従動ギヤ73(2)とを有している。
【0077】
前記第1速段及び第2速段駆動ギヤ72(1)、72(2)によって形成される駆動側ギヤ群、並びに、前記第1速段及び第2速段従動ギヤ73(1)、73(2)によって形成される従動側ギヤ群の一方は、対応する軸に相対回転不能に支持され、且つ、他方は対応する軸に相対回転自在に支持されている。
【0078】
その上で、前記第1速段及び第2速段クラッチ機構75(1)、75(2)は、対応する軸に相対回転自在に支持されたギヤを、当該対応する軸に係脱させるように構成されている。
【0079】
本実施の形態においては、
図1に示すように、前記駆動側ギヤ群が対応する前記走行伝動軸45に相対回転自在に支持されており、従って、前記第1速段クラッチ機構75(1)は前記第1速段駆動ギヤ72(1)を前記走行伝動軸45に選択的に係脱させ得るように構成され、前記第2速段クラッチ機構75(2)は前記第2速段駆動ギヤ72(2)を前記走行伝動軸45に選択的に係脱させ得るように構成されている。
【0080】
本実施の形態においては、前記第1速段クラッチ機構75(1)及び前記第2速段クラッチ機構75(2)はドグクラッチ式とされている。
【0081】
詳しくは、前記第1速段クラッチ機構75(1)は、対応する軸(本実施の形態においては前記走行伝動軸45)に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持された第1速段スライダと、前記第1速段駆動ギヤ72(1)の対向面に設けられた凹凸部の一方及び前記第1速段スライダの対向面に設けられた凹凸係合部の他方を含む第1速段凹凸部とを有している。
【0082】
前記第2速段クラッチ機構75(2)は、対応する軸(本実施の形態においては前記走行伝動軸45)に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持された第2速段スライダと、前記第2速段駆動ギヤ72(2)の対向面に設けられた凹凸部の一方及び前記第2速段スライダの対向面に設けられた凹凸係合部の他方を含む第2速段凹凸部とを有している。
なお、本実施の形態においては、前記第1速段スライダ及び前記第2速段スライダは単一の共通スライダとされている。
【0083】
本実施の形態においては、
図2に示すように、前記副変速機構70は、人為操作可能な手動レバー形の副変速操作部材115の操作に応じて前記制御装置100によって作動制御されるように構成されている。
【0084】
即ち、前記副変速機構70には、前記第1速段スライダ及び前記第2速段スライダ(本実施の形態においては前記共通スライダ)を作動させる、電気・油圧アクチュエータ又は電気アクチュエータによって形成される副変速切換アクチュエータが備えられる。
そして、前記制御装置100は、前記副変速操作部材115の操作状態(操作位置)を検出するセンサ117からの信号に基づき、前記副変速切換アクチュエータの作動制御を実行する。
【0085】
これに代えて、前記副変速操作部材115への人為操作に応じて機械リンクを介して前記副変速切換アクチュエータが作動されるようにも構成され得る。
前記機械リンクは、人為操作による前記副変速操作部材115の機械的動きを利用して、前記第1速段スライダ及び前記第2速段スライダ(本実施の形態においては前記共通スライダ)を作動させるように構成される。
なお、この場合においても、前記センサ117によって前記制御装置100が前記副変速操作部材115の操作状態(操作位置)を認識し得るように構成することも可能である。
【0086】
本実施の形態においては、前記作業車輌200は、前記駆動輪220として作用する一対の主駆動輪と、前記一対の主駆動輪をそれぞれ駆動する一対の主駆動車軸250と、ディファレンシャルギヤ機構300とを有しており、前記走行出力軸47の回転動力が前記ディファレンシャルギヤ機構300を介して前記一対の主駆動車軸250に差動伝達されている。
【0087】
なお、
図1中の符号255は、前記主駆動車軸250に選択的に制動力を付加する走行ブレーキ機構であり、符号310は、前記走行出力軸47からの回転動力によって前記一対の主駆動車軸250を強制的に同期駆動するデフロック機構である。
【0088】
以下、前記制御装置100による制御構造について説明する。
図3(a)及び(b)に、それぞれ、前記副変速機構70が第1速段及び第2速段に係合している状態での、車速及び牽引力とHST容量(ポンプ本体14及びモータ本体18の容量)との関係を示す。
【0089】
図3(a)及び(b)に示すように、前記制御装置100は、前記車速センサ120によって検出される車速が、前記モータ本体18が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体14が所定のポンプ切替容量とされた際に現出される切替速以下の際には、前記モータ本体18が低速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材25を作動させつつ、前記変速操作部材110の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させる通常制御モードを実行する。
【0090】
そして、前記制御装置100は、前記車速が切替速を越えている際には、前記ポンプ本体14が前記ポンプ切替容量に固定されるように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させつつ、前記変速操作部材110の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記モータ側出力調整部材25を作動させる高速制御モードを実行する。
【0091】
斯かる構成によれば、通常作動制御及び高速作動制御の切替時に車速変化が生じることを防止しつつ、前記HST10及び前記遊星歯車機構30によって形成されるHMT構造の変速可能範囲を拡げることができる。
【0092】
従って、従来のトランスミッション構造(
図8~
図10参照)においては、3段の変速段を有する副変速機構570を備えなければカバーできなかった必要最大牽引力Tmax及び必要最高速Smaxの範囲を、2段の変速段の前記副変速機構70を備えるだけでカバーすることができ、作業車輌200の伝動構造のコンパクト化及び低廉化を有効に図ることができる。
【0093】
なお、本実施の形態においては、前記車速センサ120は、前記副変速機構70によって多段変速された後の状態の回転動力(即ち、前記走行出力軸47又は前記走行出力軸47より伝動方向下流側の駆動車軸250等の回転部材)の速度を検出するように構成されており、従って、前記制御装置100は、前記切替速として、前記副変速機構70が第1速段伝動状態及び第2速段伝動状態の際にそれぞれ用いる第1速段切替速(
図3(a))及び第2速段切替速(
図3(b))を有している。
【0094】
これに代えて、前記車速センサ120が、前記副変速機構70によって多段変速される前の状態の回転動力(例えば、前記第3要素38、前記遊星出力軸39又は前記走行伝動軸45の回転動力)の回転速度を検出するように構成されている場合には、前記制御装置100は、前記副変速機構70の変速段係合状態の如何に関わらず、単一の切替速を用いて作動制御を行うように構成される。
【0095】
図3(a)及び(b)に示すように、本実施の形態においては、第2ポンプ容量を前記ポンプ切替容量に設定することによって、前記ポンプ本体14の容量変化によって変速させ得る前記遊星歯車機構30の合成回転動力の速度範囲の拡大を図っているが、本発明は斯かる構成に限定されるものではなく、第2ポンプ容量の90%のポンプ容量等、任意のポンプ容量を前記ポンプ切替容量として設定することができる。
【0096】
また、
図3(a)及び(b)に示すように、本実施の形態においては、前記ポンプ本体14が第1ポンプ容量とされた際に前記遊星歯車機構30の合成回転動力がゼロ速(車速ゼロ)となるように前記遊星歯車機構30が設定されており、これにより、前記ポンプ本体14の容量変化によって変速させ得る前記遊星歯車機構30の合成回転動力の速度範囲の拡大を図っているが、本発明は斯かる構成に限定されるものではなく、第1ポンプ容量の90%のポンプ容量等、所定のポンプ容量の際に合成回転動力がゼロ速となるように前記遊星歯車機構30を設定することも可能である。
【0097】
また、本実施の形態においては、
図2に示すように、前記変速操作部材110が停止位置(ゼロ速位置)から前進側及び後進側へ操作可能とされているが、斯かる構成の前記変速操作部材110に代えて、
図4に示すように、停止位置(ゼロ速位置)から一方向へのみ操作可能な足動ペダル形の変速操作部材150を用いることも可能である。
【0098】
この場合には、前記変速操作部材150とは別体とされた独立の手動レバー形の前後進切換操作部材160が備えられ、前記制御装置100は、前記前後進切換操作部材160の操作状態(操作位置)を検出するセンサ162からの信号に基づき、前記前後進切換機構70の作動制御を行うように構成される。
【0099】
実施の形態2
以下、本発明に係るトランスミッション構造の他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図5(a)及び(b)に、本実施の形態に係るトランスミッション構造において前記副変速機構70が第1速段及び第2速段にそれぞれ係合している状態での車速及び牽引力とHST容量(ポンプ本体14及びモータ本体18の容量)との関係を示す。
なお、本実施の形態に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図は
図1と同様のものとなり、制御ブロック図は
図2と同様のものとなる。
【0100】
本実施の形態に係るトランスミッション構造は、前記制御装置100が実行する制御構造においてのみ、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1と相違している。
以下、相違点についてのみ説明する。
【0101】
前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1においては、前記制御装置100は、
・車速が、前記モータ本体18が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体14がポンプ切替容量とされた際に現出される切替速以下においては、前記モータ本体18を低速モータ容量に固定した状態で、前記変速操作部材110の増速操作に応じて前記ポンプ本体14の容量を第1ポンプ容量の側からポンプ切替容量の側へ変化させ且つ前記変速操作部材110の減速操作に応じて前記ポンプ本体14の容量をポンプ切替容量の側から第1ポンプ容量の側へポンプ切替容量の側へ変化させ、
・車速が切替速を越えている際には、前記ポンプ本体14をポンプ切替容量に固定した状態で、前記変速操作部材110の増速操作に応じて前記モータ本体18の容量を低速モータ容量の側から高速モータ容量の側へ変化させ且つ前記変速操作部材110の減速操作に応じて前記モータ本体18の容量を高速モータ容量の側から低速モータ容量の側へ変化させている。
【0102】
これに対し、本実施の形態に係るトランスミッション構造においては、
図5(a)及び(b)に示すように、前記制御装置100は、
・車速が、前記モータ本体18が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体14が第1及び第2ポンプ容量の間の所定のポンプ切替容量とされた際に現出される切替速以下の際には、前記モータ本体18が低速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材25を作動させつつ、前記変速操作部材110の増速操作及び減速操作に応じて車速が増速及び減速するように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させる通常制御モードを実行し、
・車速が切替速を越えている際には、前記変速操作部材110の増速操作に応じて、前記ポンプ本体14の容量をポンプ切替容量の側から第2ポンプ容量の側へ変化させる前記ポンプ側出力調整部材20の増速作動と前記モータ本体18の容量を低速モータ容量の側から高速モータ容量の側へ変化させる前記モータ側出力調整部材25の増速作動とを同期して実行させ、且つ、前記変速操作部材110の減速操作に応じて、前記ポンプ本体14の容量を第2ポンプ容量の側からポンプ切替容量の側へ変化させる前記ポンプ側出力調整部材20の減速作動と前記モータ本体18の容量を高速モータ容量の側から低速モータ容量の側へ変化させる前記モータ側出力調整部材25の減速作動とを同期して実行させる高速制御モードを実行するように構成されている。
【0103】
斯かる構成の本実施の形態においても、前記実施の形態1におけると同様の効果を得ることができる。
【0104】
図5(a)及び(b)に示すように、本実施の形態においては、前記ポンプ切替容量は、前記ポンプ軸12の回転状態に拘わらず前記モータ軸16の回転をゼロとさせる中立容量(ゼロ容量)とされている。
斯かる構成によれば、通常制御モード及び高速制御モードの切替を円滑に行うことができる。
【0105】
なお、前記ポンプ切替容量は、中立容量(ゼロ容量)以外の所望容量に設定することが可能である。
例えば、第1ポンプ容量が逆転側最大容量(-100%)とされ且つ第2ポンプ容量が正転側最大容量(+100%)とされている場合において、
図6(a)及び(b)に示すように、前記ポンプ切替容量を中立容量及び第2ポンプ容量の間の正転側中間容量(例えば、+50%)に設定することも可能である。
【0106】
実施の形態3
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図7(a)及び(b)に、本実施の形態に係るトランスミッション構造において前記副変速機構70が第1速段及び第2速段にそれぞれ係合している状態での車速及び牽引力とHST容量(ポンプ本体及びモータ本体の容量)との関係を示す。
なお、本実施の形態に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図は
図1と同様のものとなり、制御ブロック図は
図2と同様のものとなる。
【0107】
本実施の形態に係るトランスミッション構造は、前記制御装置100が実行する制御構造においてのみ、前記実施の形態1及び2に係るトランスミッション構造と相違している。
【0108】
即ち、本実施の形態に係るトランスミッション構造においては、
図7(a)及び(b)に示すように、前記制御装置は、車速が、前記モータ本体18が低速モータ容量とされ且つ前記ポンプ本体14が所定のポンプ切替容量とされた際に現出される切替速(前記副変速機構70の第1速段係合時には第1速段切替速(
図7(a))、及び、前記副変速機構70の第2速段係合時には第2速段切替速(
図7(b)))未満の際には、前記モータ本体18が低速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材25を作動させつつ、前記変速操作部材110の増速操作に応じて、前記ポンプ本体14の容量を第1ポンプ容量からポンプ切替容量の側へ変更させることで車速を増速させるように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させ、且つ、前記変速操作部材110の減速操作に応じて、前記ポンプ本体14の容量をポンプ切替容量の側から第1ポンプ容量の側へ変更させることで車速を減速させるように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させる通常制御モードを実行する。
【0109】
本実施の形態においては、
図7(a)及び(b)に示すように、第2ポンプ容量を前記ポンプ切替容量に設定することによって、前記ポンプ本体14の容量変化によって変速させ得る前記遊星歯車機構30の合成回転動力の速度範囲の拡大を図っているが、本発明は斯かる構成に限定されるものではなく、第2ポンプ容量の90%のポンプ容量等、任意のポンプ容量を前記ポンプ切替容量として設定することができる。
【0110】
そして、前記制御装置100は、車速が低速側から切替速に到達した際には、前記モータ本体18の容量が低速モータ容量から高速モータ容量へ変化するように前記モータ側出力調整部材25を作動させると同時に、前記モータ本体18が高速モータ容量とされた状態において車速を切替速に維持できるポンプ調整容量に前記ポンプ本体14の容量がなるように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させる高速移行時切替制御モードを実行する。
【0111】
さらに、前記制御装置100は、車速が切替速を越えている際には、前記モータ本体18が高速モータ容量に固定されるように前記モータ側出力調整部材25を作動させつつ、前記変速操作部材110の増速操作に応じて、前記ポンプ容量をポンプ調整容量の側から第2ポンプ容量の側へ変更させることで車速を増速させるように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させ、且つ、前記変速操作部材110の減速操作に応じて、前記ポンプ容量を第2ポンプ容量の側からポンプ調整容量の側へ変更させることで車速を減速させるように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させる高速制御モードを実行する。
【0112】
そして、前記制御装置100は、車速が高速側から切替速に到達した際には、前記モータ本体18の容量が高速モータ容量から低速モータ容量へ変化するように前記モータ側出力調整部材25を作動させると同時に、前記ポンプ本体14の容量がポンプ調整容量からポンプ切替容量に変更するように前記ポンプ側出力調整部材20を作動させる通常移行時切替制御モードを実行する。
【0113】
斯かる構成の本実施の形態においても、前記実施の形態1及び2におけると同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0114】
1 トランスミッション構造
10 HST
12 ポンプ軸
14 ポンプ本体
16 モータ軸
18 モータ本体
20 ポンプ側出力調整部材
25 モータ側出力調整部材
30 遊星歯車機構
50 前後進切換機構
70 副変速機構
100 制御装置
110 変速操作部材
120 車速センサ
130 ポンプセンサ
140 モータセンサ
160 前後進切換操作部材
200 作業車輌
210 駆動源