(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】サポーター付きズボン
(51)【国際特許分類】
A41D 1/06 20060101AFI20231031BHJP
A41D 1/08 20180101ALI20231031BHJP
【FI】
A41D1/06 B
A41D1/06 J
A41D1/06 501D
A41D1/06 501Z
A41D1/08
(21)【出願番号】P 2019177276
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】395024285
【氏名又は名称】アイトス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】川内 尋行
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-010409(JP,U)
【文献】特開2018-199882(JP,A)
【文献】特開平08-302511(JP,A)
【文献】特開2004-229781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/06
A41D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の背面側腰部をサポートするサポーター付きズボンであって、
ズボン本体と、
前記ズボン本体の背面側に一体的に設けられ、最上部が前記ズボン本体のウエスト部より上方に位置するサポート面部と、
前記ズボン本体のウエスト部の内側に配置され、着用者のウエストに巻き付けられて前記サポート面部を着用者の背面側腰部に押し付ける腰帯と、
を備え
ており、
前記腰帯は、その長手方向に相対的に伸縮自在な主帯体と、該主帯体と前記サポート面部とを結合する伸縮自在な副帯体とを備え、前記主帯体を前記腰帯に対して相対的に伸張させることにより前記サポート面部が着用者の背面側腰部に押し付けられるとともに前記副帯体も伸張することにより前記サポート面部が側面視くの字状に屈曲するようになっており、
前記副帯体は、前記主帯体の左右位置と前記サポート面部の上方位置とをそれぞれ結合する左右の上側副帯体と、前記主帯体の左右位置と前記サポート面部の下方位置とをそれぞれ結合する左右の下側副帯体とを備え、これら左右の上側副帯体及び下側副帯体が略菱形に配置されていることを特徴とするサポーター付きズボン。
【請求項2】
請求項
1に記載のサポーター付きズボンにおいて、
前記サポート面部が着脱自在なサポート芯材を備えることを特徴とするサポーター付きズボン。
【請求項3】
請求項
2に記載のサポーター付きズボンにおいて、
前記サポート芯材が形状記憶素材からなることを特徴とするサポーター付きズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の背面側腰部をサポートするサポーター付きズボンに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示すものがある。特許文献1に記載の従来技術は、ウエスト部材の背面側裏面に可撓性を有する布帛素材から構成した袋体を取り付けると共に、該袋体に、ウエスト方向に三分割し腰のカーブに沿うようにしたウレタン樹脂等のハードパッドを内装し、ベルトを締めることによりハードパッドを腰に押し付けることにより、腰部のフィット感に優れるとともに、その部分をサポートするようにしたものである。
【0003】
かかる従来技術は、主にスポーツ用パンツを対象としたものであるが、腰部の安定感を向上させ負担を軽減したいという声は、スポーツ選手に限らず、長時間着席した状態での労働を余儀なくされる縫製作業者やタクシー運転手、あるいは、腰部に負担のかかる作業が多い介護労働従事者や被介護者などからも挙がっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術は、ハードパッドを内装した袋体の上端部がパンツのウエスト部に取り付けられるため(請求項3、段落[0008]等)、袋体の最上部の位置がパンツのウエスト部の高さと同一となる結果、着用者が前屈みの姿勢になると、背面側の腰部が露出して見栄えが良くないとともに、腰部を冷やす原因にもなるという問題があった。
【0006】
また、腰部をサポートできる範囲についても、ハードパッドを内装した袋体の位置がパンツのウエスト部の高さを超える範囲にまでは及んでいないため、腰部を十分にサポートしているとは言い難かった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の従来技術は、ベルトを締めることによりハードパッドを腰部に押し付けるように構成されているため、パンツのウエストの締付け具合とハードパッドの密着具合とが一体不可分に関係する結果、ハードパッドを腰部に強く押し当てようとするとベルトをきつく締めなければならず、外観上見栄えが良くないとともに、例えばパンツはゆったり穿きながらサポート部材については強めに腰部に押し当てるなどといった個別の調整ができないという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、着用者の背面側の腰部の露出を防止するとともに、腰部を広い範囲にわたって十分にサポートすることができるサポーター付きズボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成されたことを特徴する。
すなわち、本発明は、
着用者の背面側腰部をサポートするサポーター付きズボンであって、
ズボン本体と、
前記ズボン本体の背面側に一体的に設けられ、最上部が前記ズボン本体のウエスト部より上方に位置するサポート面部と、
前記ズボン本体のウエスト部の内側に配置され、着用者のウエストに巻き付けられて前記サポート面部を着用者の背面側腰部に押し付ける腰帯と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ズボン本体の背面側に位置するサポート面部がズボン本体のウエスト部よりも上方の位置にまで及んでいるため、広範囲にわたって腰部をサポートすることができる。また、サポート面部がズボン本体と一体的に構成されているため、着用者が前屈みになったときでも背面側の腰部が露出することがない。
【0011】
さらに、本発明では、サポート面部がズボン本体と一体でありながら、それとは別に着用者のウエストに巻き付けられてサポート面部を着用者の背面側腰部に押し付ける腰帯がズボン本体のウエスト部の内側に設けられているため、腰帯をきつく締めても外観に悪影響を及ぼさない上、ズボン本体のウエスト部の締付け具合とは別にサポート面部と着用者の背面側腰部との密着具合を調整することができる。このため、ズボンはゆったり穿きながらサポート面部については強めに腰部に押し当てるといったことも可能となる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様の一つとして、
前記腰帯は、その長手方向に相対的に伸縮自在な主帯体を備え、この主帯体を前記腰帯に対して相対的に伸張させることにより前記サポート面部が着用者の背面側腰部に押し付けられるように構成することが好ましい。
【0013】
かかる構成により、腰帯の締結によってサポート面部を背面側腰部にあてがった上で、さらに主帯体を腰帯に対して相対的に伸張させることにより同サポート面部を背面側腰部に押し付けることができるので、サポート面部の押し付け具合を主帯体によって微調整することができる。
【0014】
また、本発明の好ましい実施態様の一つとして、
前記腰帯は、前記主帯体と前記サポート面部とを結合する伸縮自在な副帯体を備え、前記主帯体を前記腰帯に対して相対的に伸張させたときにこの副帯体も伸張することにより前記サポート面部が側面視くの字状に屈曲するように構成することが好ましい。
【0015】
かかる構成により、着用者が前屈みの姿勢になって腰帯が伸張したときに、それに応じてサポート面部も着用者の身体に沿うようにくの字状に屈曲するため、サポート面部を着用者の前屈姿勢に追随させることができる。これにより、着用者が前屈みの姿勢になったときにサポート面部が着用者の身体から乖離して両者の間に隙間ができることを防止することができる。
【0016】
さらに、本発明の好ましい実施態様の一つとして、
前記副帯体は、前記主帯体の左右位置と前記サポート面部の上方位置とをそれぞれ結合する左右の上側副帯体と、前記主帯体の左右位置と前記サポート面部の下方位置とをそれぞれ結合する左右の下側副帯体とを備え、これら左右の上側副帯体及び下側副帯体が略菱形に配置されるように構成することが好ましい。
【0017】
かかる構成により、サポート面部を効果的に着用者の姿勢に追随させることができる。
【0018】
さらに、本発明の好ましい実施態様の一つとして、前記サポート面部が着脱自在なサポート芯材を備えることが好ましい。
【0019】
かかる構成により、サポート芯材の交換が可能となる上、サポート芯材を複数の分割体から構成してその各々を着脱自在に構成すれば、着用者の体型や好みに応じて装着本数ないし装着個数を調整することができるため、より適合性の高い腰部のサポートが可能になる。
【0020】
さらに、本発明の好ましい実施態様の一つとして、前記サポート芯材が形状記憶素材からなるように構成することが好ましい。
【0021】
かかる構成により、個々の着用者の姿勢に馴染んだ形状や好みの形状を自在に造形できる上、それを安定的に保持することができるため、適合性の高いサポーター付きズボンを容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明によれば、着用者の背面側の腰部の露出を防止できるとともに、腰部を広い範囲にわたって十分にサポートすることができるサポーター付きズボンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るサポーター付きズボンの側面図
【
図2】
図2は本実施形態の上部付近の拡大図であり、
図2(A)はその正面図、
図2(B)はその背面図。
【
図3】
図3(A)は本実施形態におけるズボン本体の概略正面図、
図3(B)はその側面図。
【
図4】
図4は本実施形態の上部付近の展開図であり、
図4(A)はそれを内側(人体側)からみた図、
図4(B)はそれを外側からみた図。
【
図5】
図5は本実施形態のサポート面部の分解図のうち内側面部の内外の構成を示した図であり、
図5(A)はそれを内側(人体側)からみた図、
図5(B)はそれを外側(人体とは反対側)からみた図(但し、腰帯のサポート面部に近い基端側の部分については主帯体がみえるようにその内部を開示してある)。
【
図6】
図6は本実施形態のサポート面部の分解図のうち外側面部の内外の構成を示した図であり、
図6(A)はそれを外側(人体とは反対側)からみた図(但し、ズボン本体との関係についても同時に示している)、
図6(B)はそれを内側(人体側)からみた図(但し、主帯体の両端部の位置を示すべく腰帯の一部を破断して示している)。
【
図7】主帯体及び副帯体の自然状態と伸張状態との対比図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下において、左右方向は着用者からみた左右を意味する。
【0025】
図1,2及び4に示すように、本発明の実施形態に係るサポーター付きズボン1は、ズボン本体2と、ズボン本体2に一体に設けられたサポート面部3と、腰帯4とを備える。ズボン本体2は、
図3(B)に示すように、背面側のウエスト付近が下方に大きく抉り取られたような形状を有する抉り部2bを備えており、この点で通常のズボンとは異なる。
【0026】
サポート面部3は、内側面部3a及び外側面部3bという2枚の通気性のあるメッシュ生地(比較的厚手で硬めのものが好ましい)をズボン本体2の抉り部2bを覆うように重ね合せた上でその周縁部を縫合することによりズボン本体2と一体化されている。本実施形態では、内側面部3a及び外側面部3bは、その周縁部が互いに縫い合わされることで一体化(ズボン本体2とも一体化)されている。サポート面部3の最上部はズボン本体2のウエスト部2aより上方に位置し、その最下部はズボン本体2のウエスト部2aより下方に位置するようになっており、これにより着用者の背面側の腰部を広範囲にわたって覆うようになっている。なお、本実施形態のサポート面部3は八角形の形状を有しているが、かかる形状に限定されるものではない。
【0027】
サポート面部3の内側面部3aの内側表面(人体側の表面)には、
図4(A)に示すように、サポート芯材5を収納する収納ポケット6が上下方向に平行するように設けられている。本実施形態では、長短二組合計四つのサポート芯材5が装着できるようになっており、それに対応して収納ポケット6も長短二組合計四つ設けられている。本実施形態では、長短二組合計四つのサポート芯材5が左右対称に装着できるようになっており、外側に短いサポート芯材5が、内側に長いサポート芯材5がそれぞれ装着できるようになっている。
【0028】
収納ポケット6には、横方向に伸びた切れ目6aが設けられており、この切れ目6aからサポート芯材5を収納ポケット6の内部に収納することができるとともに、この切れ目6aからサポート芯材5を取り出すこともできるようになっている。サポート芯材5は偏平で細長い板状の形状を有しており、形状記憶樹脂で構成されている。サポート面部3の外側面部3bの外側表面(人体とは反対側の表面)にはベルトを通すためのベルトループ10が設けられている。但し、外側面部3bにベルトループ10を設けることは必須の構成ではない。
【0029】
本実施形態におけるズボン本体2のウエスト部2aとサポート芯材5との位置関係は、サポート芯材5の最上部がズボン本体2のウエスト部2aより上方に位置し、その最下部がズボン本体2のウエスト部2aより下方に位置するようになっており(臀部の上方付近に相当)、これにより着用者の背面側腰部を上下方向の広い範囲にわたってサポートすることができるようになっている。なお、横方向ないし水平方向については、複数のサポート芯材5を並列させて配置することにより対応している(サポート芯材を複数の分割体から構成した場合の一例がこれに相当する)。
【0030】
腰帯4は、サポート面部3の左右両側に設けられており、ズボン本体2のウエスト部2aの内側(人体側)に配置されている。腰帯4の両端部の外側表面(人体とは反対側の表面)には面ファスナー20がそれぞれ設けられており、腰帯4の左側端部の内側表面(人体側の表面)には面ファスナー21が設けられている。そして、腰帯4をウエストに巻き付けたときに、右側端部の外側表面(人体とは反対側の表面)に設けられた面ファスナー20と、左側端部の内側表面(人体側の表面)に設けられた面ファスナー21とを係合させることにより、腰帯4の両端部を適宜位置で締結固定することができるようになっている。なお、本実施形態では、腰帯4の右側端部の内側表面(人体側の表面)には面ファスナーが設けられていない。また、腰帯4の左側端部の外側表面(人体とは反対側の表面)に設けられた面ファスナー20の機能については後述する。
【0031】
図5(B)に示すとおり、左右の腰帯4の内部には、一本の伸縮自在なゴム製の主帯体4aがサポート面部3の内側面部3a及び外側面部3bの間を通って挿通しており、この主帯体4aの両端部は腰帯4の外側面(人体とは反対側の面)の中間部分において腰帯4の外部に導出されている。主帯体4aの各端部の表裏両面には面ファスナー22が設けられている。この主帯体4aは腰帯4に対して相対的に伸張できるようになっており、この主帯体4aを腰帯4に対して相対的に伸張させることにより腰帯4の内部から引っ張り出すことができる。そして、主帯体4aの左右の各端部に設けられた面ファスナー22(上述のとおり、これは表裏両面に設けられている)を腰帯4の左右の各端部の外側表面(人体とは反対側の表面)に設けられた面ファスナー20と係合させることにより、その位置で伸張状態を保持できるようになっている。さらに、主帯体4aが挿通されている腰帯4の基端側の表面も伸縮性のある素材で構成されており、これにより腰帯4自体も伸縮自在に構成されている。但し、主帯体4aが伸縮自在に構成されていれば、腰帯4自体の伸縮自在性は必須ではない。なお、
図5及び6は、主帯体4aに負荷が作用していない自然状態(主帯体4aを腰帯4に対して相対的に伸張させていない状態)にある場合を示している。
【0032】
このように主帯体4aはサポート面部3の内部(内側面部3a及び外側面部3bの間)を挿通して左右の腰帯4の内部に延出しているが、主帯体4aはさらに、サポート面部3の内部において、伸縮自在なゴム製の副帯体4b・4cによって内側面部3aと一体化されている。具体的には、内側面部3aの上半部において、主帯体4aの左右位置と内側面部3aの外側表面(人体とは反対側の表面)の上方位置とを連結する上側副帯体4bが左右それぞれに設けられているとともに、内側面部3aの下半部において、主帯体4aの左右位置と内側面部3aの外側表面(人体とは反対側の表面)の下方位置とを連結する下側副帯体4cが左右それぞれに設けられている。これら左右の上側副帯体4b及び下側副帯体4cは平面視において略菱形に配置されている。このように主帯体4aと副帯体4b・4cとを構成することにより、主帯体4aが長手方向に伸張したときに上記の菱形部分も横方向に伸ばされる作用を受けることとなるが、かかる作用の結果、どのような効果がもたらされるかについては後述する。
【0033】
さらに、本実施形態では、主帯体4aは、内側面部3aの中心部30(左右方向及び上下方向の中心部)において内側面部3aと一体に縫合されている。但し、かかる構成は必須ではなく、主帯体4aと内側面部3a(ないしサポート面部3)とは副帯体4b・4cを介してのみ結合するようにしてもよい。
【0034】
以上のように構成された本実施形態のサポーター付きズボン1は、以下のとおり作用する。
まず、着用者は通常のズボンを穿くときのようにズボン1に両足を通した上、ウエスト部2aをウエストの高さまで引き上げる。サポート面部3はズボン本体2のウエスト部2aと一体に構成されているため、それに伴ってサポート面部3も着用者の背面側腰部付近まで引き上げられ、そこに位置することとなる。その状態で腰帯4を着用者のウエストに巻き付けて締め付けると、サポート面部3が着用者の背面側腰部に押し付けられることになる。本実施形態では、腰帯4自体が伸縮自在に構成されているため、腰帯4自体の伸縮性によってサポート面部3の密着具合を調整してもよいし、また、主帯体4aが腰帯4に対して相対的に伸張可能であるため、腰帯4をウエストに巻き付けた上でさらに主帯体4aを腰帯4から伸張させてサポート面部3の密着具合を調整してもよい。
【0035】
このように腰帯4ないし主帯体4aによってサポート面部3の密着具合を調整しながら、適当な位置で左右の腰帯4の面ファスナー20・21及び主帯体4aの面ファスナー22を係止してサポート面部3を固定する。これにより腰部のサポートが完了する。その後は、通常のズボンを穿くときのように腰帯4の上からズボン本体2のウエスト部2aを装着し、必要な場合はベルトを締結すれば完成する。このように、本実施形態では、着用者の背面側腰部に対するサポート面部3の密着具合ないし押し付け具合は、ズボン本体2のウエスト部2aの締付け具合とは別に調整されることになる。
【0036】
以上の着用過程おいて、腰帯4を着用者のウエストに巻き付けて腰帯4自体ないし主帯体4aを締め付けると、
図7に示すように、主帯体4aが左右に伸張することにより上側副帯体4b及び下側副帯体4cも左右に引っ張られる結果、これらが構成する菱形形状も左右方向に引っ張られることになる。なお、
図7において、破線で示す状態が伸張状態、実線で示す状態が自然状態である。かかる作用に加えて、主帯体4aが着用者のウエストに円環状に巻き付けられるという作用により、副帯体4b・4cの一端が結合されたサポート面部3も側面視くの字状に屈曲することになる。この結果、着用者が前屈みの姿勢になって腰帯4が伸張したときに、それに応じてサポート面部3も着用者の身体に沿うようにくの字状に屈曲し、サポート面部3を着用者の前屈姿勢に追随させることができる。
【0037】
また、本実施形態のサポート芯材5は形状記憶樹脂からなるため、予め着用者にとって好ましい形状に変形させた上で用いることもできる。これによりサポート面部3の形状を着用者の好みに応じて適宜調整することができる。
【0038】
以上のとおり、本実施形態のサポーター付きズボン1によれば、サポート芯材5を備えたサポート面部3がズボン本体2のウエスト部2aよりも上方の位置にまで及んでいるため、広い範囲にわたって腰部を十分にサポートすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、このサポート面部3がズボン本体2と一体的に構成されているため、着用者が前屈みになったときでも背面側の腰部が露出することがない。
【0040】
さらに、本実施形態では、サポート面部3がズボン本体2と一体でありながら、それとは別に着用者のウエストに巻き付けられてサポート面部3を着用者の背面側腰部に押し付ける腰帯4がズボン本体2のウエスト部2aの内側に設けられているため、腰帯4をきつく締めても外観に悪影響を及ぼさない上、ズボン本体2のウエスト部2aの締付け具合とは別にサポート面部3の着用者の背面側腰部への密着具合を調整することができる。このため、ズボンはゆったり穿きながらサポート面部3については強めに腰部に押し当てるといったことも可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、サポート芯材5がサポート面部3に着脱自在に構成されているため、サポート芯材5の交換が容易な上、着用者の体型に応じてサポート芯材5の本数を調整することができる。具体的には、ウエストサイズの小さな人が使用する場合は、外側に位置する2つのサポート芯材5を取り外して内側の2つのサポート芯材5のみを使用し、ウエストサイズの大きな人が使用する場合は4つのサポート芯材5をすべて使用するといったような着用者の体型に合わせた対応が可能となる。また、サポート芯材5をすべて取り外して着用してもよい。
【0042】
さらに、本実施形態では、着用者が前屈みの姿勢になって腰帯4が伸張したときに、それに応じてサポート面部3も着用者の身体に沿うようにくの字状に屈曲するため、サポート面部3を着用者の姿勢に追随させることができる。これにより、着用者が前屈みの姿勢になったときにサポート面部3が着用者の身体から乖離して両者の間に隙間ができることを防止することができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、サポート面部3が通気性のあるメッシュ生地でできているため、たとえ広い範囲を覆うことになったとしても、むれや暑苦しさを軽減することができ、着心地の良さを保つことができる。
【0044】
以上、本発明に実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態の構成に限定されるものではない。本実施形態では、主帯体4aが腰帯4に対して相対的に伸縮自在に構成されていたが、両者が一体的にのみ伸縮自在となるように構成してもよい。本実施形態では、主帯体4aとサポート面部3とを結合する副帯体4b・4cの一端がサポート面部3の内側面部3aに結合されていたが、外側面部3bに結合されるように構成してもよい。
【0045】
本実施形態では、面ファスナー20・21によって左右の腰帯4を互いに係止するように構成していたが、腰帯4を係止する手段は面ファスナーに限られるものではない。また、腰帯4に対して相対的に伸張させた主帯体4aを腰帯4に係止するための手段としても面ファスナー22が用いられていたが、両者を係合させるための手段は面ファスナーに限られるものではない。但し、これらの手段に面ファスナーを用いた場合は、着用者のサイズに自在に適合させることができる上、ウエストの締付け具合やサポート面部の背面側腰部への密着具合についても面ファスナーが設けられている範囲で自由に調整することができるため、利便性が高い。
【0046】
本実施形態では、長さのみが異なる長短二組合計四つのサポート芯材5が上下方向に平行な四つの収納ポケット6内に収納されるように構成されていたが、サポート芯材5の本数は本実施形態のものに限られるものではない。また、本実施形態では、サポート芯材5が板状で細長い形状を有していたが、かかる形状に限定されるものではない。さらに、サポート芯材5の装着態様についても、本実施形態では、内側面部3aの内側表面(人体側の表面)に収納ポケット6を設け、そこにサポート芯材5を挿抜自在に収納するように構成されていたが、かかる構成に限定されるものではない。サポート芯材5の本数及び具体的形状並びにサポート面部3への装着の仕方等は適宜の構成を採用することができる。
【0047】
例えば、サポート芯材5として1枚の大きな板状のものを採用してもよい。また、サポート芯材5をサポート面部3に着脱自在に構成する必要はなく、サポート面部3に一体的に設けてもよい。さらに、そもそも、サポート芯材5のような補強部材を使用せず、サポート面部3のみで腰部をサポートするようにしてもよい。一般に腰痛は腹筋の衰えによって引き起こされるといわれているところ、サポート芯材5のような補強部材を用いずとも、サポート面部3を腰部にあてがい、腰帯を締め付けるだけでも十分に腰部のサポート効果を期待することができる。
【0048】
本実施形態では、サポート芯材5として形状記憶樹脂製のものを使用していたが、かかる構成に限定されるものではない。一般的な合成樹脂製であってもよく、また、合成樹脂以外の素材からなるものであってもよい。さらに、形状記憶素材を用いる場合も、形状記憶樹脂に限定されず、形状記憶合金等の他の形状記憶素材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 サポーター付きズボン
2 ズボン本体
2a ウエスト部
2b 抉り部
3 サポート面部
3a 内側面部
3b 外側面部
4 腰帯
4a 主帯体
4b 上側副帯体
4c 下側副帯体
5 サポート芯材
6 (サポート芯材の)収納ポケット部
6a 切れ目
10 ベルトループ
20 面ファスナー
21 面ファスナー
22 面ファスナー
30 内側面部の中心部