(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】指令装置
(51)【国際特許分類】
H04M 3/42 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
H04M3/42 101
(21)【出願番号】P 2019193622
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】野地 真一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆道
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅弥
(72)【発明者】
【氏名】村田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】森 政人
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 匡人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊平
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-125088(JP,A)
【文献】特開2001-007931(JP,A)
【文献】特開2001-061015(JP,A)
【文献】特開平6-113039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令装置に固定された第1固定通信部を備える常用通信装置と,
前記指令装置に固定された第2固定通信部と,前記指令装置から取り外し可能な可搬通信部とを備える非常用通信装置と,を備え,
前記第1固定通信部及び前記第2固定通信部は,緊急通報を緊急呼プロトコルで通信可能であり,
前記可搬通信部は,緊急通報を少なくとも通常電話回線プロトコルで通信可能である指令装置。
【請求項2】
前記指令装置は,前記可搬通信部は,緊急通報を衛星回線で受信する外部の衛星回線通信部と接続し,緊急通報を通常電話回線プロトコルで通信する,請求項1に記載の指令装置。
【請求項3】
前記常用通信装置は,第1指令制御部と,第1指令通信部と,を備え,
前記常用通信装置を運用している場合,
前記第1固定通信部は,緊急呼プロトコルに基づく発信者情報を受信し,
前記第1指令制御部は,指令を送信する送信先を指示し,
前記第1指令通信部は,前記送信先に前記発信者情報を送信する,請求項1または2に記載の指令装置。
【請求項4】
前記非常用通信装置は,取り外し可能な第2指令制御部と,取り外し可能な第2指令通信部と,を備える請求項1から3のいずれかに記載の指令装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指令装置に関し,例えば緊急通報を受け付ける指令装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、消防指令管制センターは、あらゆる用途のコンピュータ群で構成される大規模システムを、本局又は特定指令センター建屋に備えている。例えば特許文献1には,複数の消防指令本部の各々に配置され、各々の消防指令本部への119番通報を受け付け、通報内容に応じた指令を送出する消防指令システムが記載されている。
【0003】
高機能な消防指令管制システムは高度な管制業務を提供できる利点はあるが、有事により消防指令管制センター設置建屋に倒壊及びインフラ(電力供給、重要回線等)停止等が発生した場合、消防指令管制業務の維持継続が不可能となる事が考えられる。
【0004】
また、昨今消防組織の拡大化(広域、共同運用、業務委託等)により、一消防の管轄面積が拡大しており、有事が発生した場合でも全く影響を受けない署所等が多くみられる。
【0005】
これらの背景により、消防指令管制センターが有事で影響を受けた場合でも、同一の有事で影響がないと想定される署所を選択し、バックアップ用の消防指令管制システムを備えることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,バックアップ用の消防指令管制システムを構築するためには莫大なコストが発生するという問題がある。また、バックアップ用消防指令管制システムを構築した署所が有事により倒壊やインフラ(電力供給、重要回線等)停止が発生した場合、消防指令管制業務の維持継続が不可能となるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の指令装置は,指令装置に固定された第1固定通信部を備える常用通信装置と,前記指令装置に固定された第2固定通信部と,前記指令装置から取り外し可能な可搬通信部とを備える非常用通信装置と,を備え,前記第1固定通信部及び前記第2固定通信部は,緊急通報を緊急呼プロトコルで通信可能であり,前記可搬通信部は,緊急通報を少なくとも通常電話回線プロトコルで通信可能であるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,指令装置の設置場所において電源や通信等インフラ設備が利用できない等の状況が発生したときに,通常電話回線が可能な場所にて指令装置の運用を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる指令装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態2にかかる指令装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態2の指令装置の運用形態の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態2の指令装置の運用形態の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態2の指令装置の運用形態の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態2の指令装置の運用形態の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態2の指令装置の運用形態の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態2の指令装置の運用形態の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態2の指令装置の運用形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
以下,図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は,実施の形態1にかかる指令装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において,指令装置100は,常用通信装置110と,非常用通信装置120とを備える。常用通信装置110は,第1固定通信部111を備える。また,非常用通信装置120は,第2固定通信部121と,可搬通信部122を備える。
【0012】
第1固定通信部111は,指令装置100に固定された通信部である。第1固定通信部111は,外部のネットワーク網と接続し,緊急通報の通信を緊急呼プロトコルで通信可能な通信回路を備える。
【0013】
第2固定通信部121は,指令装置100に固定された通信部である。第2固定通信部121も,外部のネットワーク網と接続し,緊急通報の通信を緊急呼プロトコルで通信可能な通信回路を備える。
【0014】
可搬通信部122は,指令装置100から取り外し可能な通信部である。可搬通信部122は,緊急通報の通信を少なくとも通常電話回線プロトコルで通信可能である通信回路を備える。
【0015】
指令装置100は,通常,常用通信装置110を用いて緊急通報の通信を受ける。そして,何らかの理由で常用通信装置110が使用できない場合,常用通信装置110から非常用通信装置120に運用する装置を切り換える。そして,非常用通信装置120を用いて緊急通報の通信を受ける。
【0016】
さらに,指令装置100の設置場所において,指令装置100が使用できない理由が発生した場合(例えば,電源や通信等インフラ設備が利用できない等),指令装置100から可搬通信部122を取り外す。そして,可搬通信部122を通常電話回線に接続することにより,可搬通信部122は,転送される緊急通報をこの通常電話回線を経由して受信する。
【0017】
このように,実施の形態1の指令装置によれば,非常用通信装置に取り外し可能な可搬通信部を備え,この可搬通信部を緊急通報の通信を少なくとも通常電話回線プロトコルで通信可能とすることにより,指令装置の設置場所において電源や通信等インフラ設備が利用できない等の状況が発生したときに,通常電話回線が可能な場所にて指令装置の運用を継続することができる。
【0018】
実施の形態2
実施の形態2では,実施の形態1の指令装置の詳細な構成と具体的な運用の一例を説明する。
図2は,実施の形態2にかかる指令装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2において,
図1と同一の構成は,同じ番号を付して説明を省略する。
【0019】
常用通信装置110は,第1固定通信部111と,第1指令制御部112と,第1指令通信部113を備える。また,非常用通信装置120は,第2固定通信部121と,可搬通信部122と,第2指令制御部123と,第2指令通信部124を備える。
【0020】
第1指令制御部112は,第1固定通信部111が受けた緊急通報の通信の発信者情報を表示する。また,第1指令制御部112は,指令を送信する送信先を受け付ける。例えば,第1指令制御部112は,また,緊急通報の通信の発信者情報を表示する表示部を有する。また,第1指令制御部112は,入力を受け付ける入力インターフェースを有する。
【0021】
第1指令通信部113は,第1固定通信部111が受けた緊急通報の通信の発信者情報を第1指令制御部112が指示する送信先に送信する。
【0022】
第2指令制御部123は,取り外し可能な制御部である。第2指令制御部123は,上述した第1指令制御部112と同じ構成を有するようにしてもよい。
【0023】
第2指令通信部124は,取り外し可能な通信部である。また,第2指令通信部124は,送信先と通信を行う。第2指令通信部124は,上述した第1指令通信部113と同じ構成を有するようにしてもよい。
【0024】
以上の構成により,緊急通報を受け,指令を出す。次に,指令装置100の動作について説明する。
図3は,実施の形態2の指令装置100の運用形態の一例を示す図である。
図3において,指令システム200は,指令装置100と,広域イーサネット網201と,署所202~204と,緊急回線網210と,一般回線網211~213と,端末221~223とを備える。なお,署所,一般回線網及び端末の数は,
図3に示す数に限定されるものではない。
【0025】
広域イーサネット網201は,指令装置100と,署所202~204とを接続するネットワークである。例えば,広域イーサネット網201は,地理的に離れたLAN間などをイーサネット(登録商標)インターフェースで接続する通信ネットワークである。
【0026】
また署所202~204は,指令装置100からの指令を受ける各エリアの拠点である。署所202~204は,指令装置100と通信を行う通信装置が備えられている。例えば,指令装置100は,緊急通報を受け,署所202~204に指令を出す指令センターに設置される。
【0027】
緊急回線網210は,指令装置100と,一般回線網211~213とを接続する通信ネットワークである。また,一般回線網211~213は,緊急回線網210と端末221~223とを接続する通信ネットワークである。端末221~223は,一般回線網211~213及び緊急回線網210を介して指令装置100に緊急通報を行うことができる。緊急通報は例えば,警察や消防などの緊急対応機関への通報である。
【0028】
端末221~223から緊急通報が発せられると,一般回線網211~213及び緊急回線網210を介して指令装置100に緊急通報に伝えられる。
【0029】
通常では,常用通信装置110の第1固定通信部111が緊急通報を受信する。第1指令制御部112において,緊急通報の発信元の位置情報等から指令を出すべき署所202~204が選択される。ここでは,一例として指令を出すべき署所が署所202である場合について説明する。第1指令通信部113から署所202に指令が出されると共に,第1固定通信部111が受け取った緊急通報の発信者情報を第1指令通信部113から署所202に送信する。このような運用により,署所202は,端末221~223からの緊急通報を受けることができ,緊急事態に対する対処を開始することができる。
【0030】
常用通信装置110が運用できない状態(例えば,故障またはメンテナンス等)にある場合,非常用通信装置120の第2固定通信部121及び可搬通信部122の少なくとも一方が緊急通報を受信する。そして,第2指令制御部123において,緊急通報の発信元の位置情報等から指令を出すべき署所202~204が選択される。ここでも,一例として指令を出すべき署所が署所202である場合について説明する。第2指令通信部124から署所202に指令が出されると共に,第2固定通信部121及び可搬通信部122の少なくとも一方が受け取った緊急通報の発信者情報を第2指令通信部124から署所202に送信する。このような運用により,常用通信装置110が運用できない状態にある場合でも,署所202は,端末221~223からの緊急通報を受けることができ,緊急事態に対する対処を開始することができる。
【0031】
さらに指令装置100が緊急回線網210と通信できない状態が発生した場合,指令装置100の可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124を取り外し,緊急回線網210と通信可能な署所に移送する。
【0032】
図4は,実施の形態2の指令装置100の運用形態の一例を示す図である。例えば,署所202に指令機能を移す場合,
図4に示すように指令装置100から取り外した可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124を署所202に移す。そして,署所202に備えられた衛星回線通信部131を可搬通信部122に接続する。衛星回線通信部131は,通信衛星230と通信を行う通信部である。通信衛星230は,一般回線網211と衛星回線通信部131との通信を中継する衛星である。
【0033】
仮に移送中に指令装置100が緊急回線網210との通信に回復した場合,指令装置100は,常用通信装置110を用いて緊急通報を受け続けることができる。すなわち,指令装置100は,可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124を取り外して移送する間も,常用通信装置110により継続して指令機能を提供することができる。
【0034】
次に,指令装置100の可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124を,署所202に指令機能を移す場合の手順について説明する。
図5は,実施の形態2の指令装置100の運用形態の一例を示す図である。
図5では,通常の緊急通報の運用形態を示している。
図5に示すように,端末221が発した緊急通報は,一般回線網211及び緊急回線網210を介して指令装置100に伝えられる。
【0035】
そして,指令装置100が緊急回線網210と通信できない状態が発生した場合,
図6に示す運用に切り換えられる。
図6は,実施の形態2の指令装置100の運用形態の一例を示す図である。
図6において,指令装置100が緊急回線網210と通信できなくなった場合,緊急通報は,一般回線網を介して各エリアの署所に通報される(署落とし)。例えば,端末221が発した緊急通報は,一般回線網211を介して署所204に通報される。また,端末222が発した緊急通報は,一般回線網212を介して署所203に通報される。そして,端末223が発した緊急通報は,一般回線網213を介して署所202に通報される。
【0036】
この状態で,
図4を用いた指令機能を移す作業が行われる。
図7は,実施の形態2の指令装置100の運用形態の一例を示す図である。
図7において,指令装置100から取り外した可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124が署所202に移されると,署所202~204は,緊急通報に,衛星回線を介した転送を行うよう設定する。一般回線網211~213及び衛星回線を運用する通信業者は,この転送設定に従い,緊急通報の転送を実施する。この結果,緊急通報は,一般回線網211~213及び通信衛星230を介して,通常電話回線プロトコルで通信される。
【0037】
そして,署所202は,これらの緊急通報を受ける指令センターとして機能する。具体的には,署所202は,衛星回線通信部131において,一般回線網211~213及び通信衛星230を介した緊急通報を受信する。
【0038】
次に,署所202が指令センターとして他の署所203及び204に指令を送信する運用について説明する。
図8は,実施の形態2の指令装置100の運用形態の一例を示す図である。
図8に示すように,通常の運用では,指令装置100から広域イーサネット網201を介して署所202~204に指示が送信される。
【0039】
上述したように指令装置100が緊急回線網210と通信できない状態が発生した場合,署所202に指令機能を移す。
図9は,実施の形態2の指令装置100の運用形態の一例を示す図である。
図9に示すように署所202に可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124を移した後,指令装置100の運用を止める。そして,署所202において,移設した可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124により指令機能が運用される。
【0040】
第2指令通信部124が指令装置100から署所202に移設されたことにより,広域イーサネット網201内でルーティング情報が更新される。この結果,署所202内の第2指令通信部124と署所203及び204との通信が可能となる。
以上の運用により,指令機能を移設しつつ緊急通報への対応を継続することができる。
【0041】
このように,実施の形態2の指令装置によれば,可搬通信部が,緊急通報を衛星回線で受信する外部の衛星回線通信部と接続し,緊急通報を通常電話回線プロトコルで通信することにより,有線の通信インフラが断線する等の障害が発生しても,指令装置の運用を継続することができる。
【0042】
また,実施の形態2の指令装置によれば,第1固定通信部において,緊急呼プロトコルに基づく発信者情報を受信し,第1指令通信部において,指令の送信先に発信者情報を送信することにより,通常の運用において緊急対応に必要な情報を送ることができる。
【0043】
また,実施の形態2の指令装置によれば,非常用通信装置に,取り外し可能な第2指令制御部と,取り外し可能な第2指令通信部と,を備えることにより,指令装置の設置場所において電源や通信等インフラ設備が利用できない等の状況が発生したときに,通常電話回線が可能な場所にて指令装置の運用を継続することができ,緊急対応に必要な情報を送ることができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば,指令装置は緊急通報を受ける分野のいずれにも適用できる。例えば,本発明は,消防,警察,鉄道,ライフライン(ガス,電気,水道),報道機関,自衛隊,航空管制,政府機関,救急医療業務,コンビニエンスストアグループ等の物流,運輸及びコールセンター業務に適用してもよい。
【0045】
また,可搬通信部122,第2指令制御部123及び第2指令通信部124は,人力で移送可能なサイズ及び重量単位で分割されたユニットとしてもよい。例えば,1ユニットあたり20kg以下とすることが好適である。また,これらのユニットは脱着可能なキャスターを備えても良い。また,これらのユニットは,複数の人員で輸送するための取っ手を備えるようにしてもよい。また,これらのユニットは,一般的な電源である交流100V電源で動作可能な装置とすることが好適である。また,複数の電源電圧に対応するようにしてもよい。また,これらのユニットは,直流電源及び交流電源の両方に対応させてもよい。
【0046】
また,可搬通信部122及び第2指令通信部124は,無線機から着信信号(制御信号)が送出できない場合を考慮してもよい。たとえば,可搬通信部122及び第2指令通信部124は,単体無線(車載無線機、可搬型無線機または携帯無線機)との接続を可能とし、音声信号を受信することで着信信号に変換し着信を検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 指令装置
110 常用通信装置
111 第1固定通信部
112 第1指令制御部
113 第1指令通信部
120 非常用通信装置
121 第2固定通信部
122 可搬通信部
123 第2指令制御部
124 第2指令通信部
131 衛星回線通信部
200 指令システム
201 広域イーサネット網
202~204 署所
210 緊急回線網
211~213 一般回線網
221~223 端末
230 通信衛星