(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/00 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A01K85/00 G
(21)【出願番号】P 2020004955
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】595136494
【氏名又は名称】バスデイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】240000235
【氏名又は名称】弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 康人
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3202084(JP,U)
【文献】特開2001-299150(JP,A)
【文献】特開2008-253205(JP,A)
【文献】特開2012-044963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0259870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 83/00 - 85/18
A01K 91/00 - 95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアー本体の内部に設けられた空間部の所定方向に配設した非磁性材料で構成された直線状のシャフトと、このシャフト
を挿通可能とする貫通孔を有し、この貫通孔に前記シャフトが挿通されて該シャフトに沿って移動可能な錘とを備えるルアーにおいて、
前記錘は、磁着可能な材料による錘本体と、この錘本体を磁着する磁石とを備え、
前記ルアー本体は、前記錘が前記シャフトに沿って所定位置まで移動したときの前記磁石によって磁着可能に配置され、該磁石の表面に対して部分的に摺接可能な摺接領域を有する磁着部を備え
、
前記磁着部は、前記シャフトを中心として前記ルアー本体の背部側に配置され、
前記錘の貫通孔は、前記シャフトとの間に適宜な遊びを有する程度に該シャフトの外径よりも大径に設けられ、前記錘が自重により該シャフトに吊り下げられる状態に設けられるものであって、前記ルアー本体の背部が上向きかつ腹部が下向きとなるとき、前記錘は前記磁着部から離れるように下降し、前記錘の表面と前記磁着部の表面との間には所定の間隙が形成されるとともに、前記錘を構成する前記磁石が前記磁着部に接近するとき、該磁石の磁力によって該磁石を摺接するように上昇させるものである
ことを特徴とするルアー。
【請求項2】
前記磁石は、外部表面形状を曲面によって構成されたものであり、前記磁着部の摺接領域は、前記磁石の外部表面における曲面との間で部分的に摺接可能な曲面で構成されたものである請求項
1に記載のルアー。
【請求項3】
前記錘本体および前記磁石は、いずれも円柱形状に形成され、前記貫通孔は、該円柱径状の軸線に沿って設けられており、前記磁着部は、前記磁石の軸線に対し直交方向の軸線を有する円柱状もしくは線状に構成され、または球体で構成されている請求項
2に記載のルアー。
【請求項4】
前記シャフトは、軸線を前記ルアー本体の後部近傍から前部へ向けて配設し、該ルアー本体の該後部近傍から前方の適宜位置までの範囲で前記錘を移動可能にするものであり、前記錘は、前記錘本体を前方側に、前記磁石を後方側に配置したものであり、前記磁着部は、前記錘が前記シャフトに沿って適宜位置まで移動したときのみ前記磁石による磁着可能な位置に設けられるものである請求項1~
3のいずれかに記載のルアー。
【請求項5】
前記磁石の後方側には、前記シャフトに挿通される緩衝部材が配置されている請求項
4に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーに関し、ルアー本体の空間内に設けられたシャフトに沿って移動可能な錘を備えるルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで本願の出願人は、ルアー本体の空間内にシャフトを配置し、このシャフトに沿って錘を移動させる機構を開発した。この機構は、ルアーの中央付近において錘を保持させるため、シャフトの先端にマグネット片を設け、磁石によって磁着可能な材料を高比重の材料に混合した錘を使用するものであった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1に開示される発明は、線材がルアー本体の後端近傍から中央近傍までの範囲に配設されており、その間を錘が移動できることから、キャスティングの際には、錘を後端側に移動することで重心を偏らせることができ、飛行中の姿勢を安定させることができ、着水後には、ルアー本体の姿勢によって錘が移動し、マグネット片まで移動することにより磁着されて、重心を中央付近に移動させることができるものであった。重心が中央付近に移動することにより、リトリーブ(リーリング)に際し、ルアーの水中における姿勢が安定し、キビキビとした動作を実現できるものとされていた。
【0005】
ところが、上記の発明は、錘を保持するためのマグネット片が線材の前方端部に設けられ、このマグネット片によって錘が磁着される構成であり、錘の前面がマグネット片に広い範囲で磁着される構成となっていた。これは、磁着による錘の保持を確実とするためであるが、その磁着が強力である場合には、錘を磁着状態から開放させることが容易でない場合があった。これを解消するためには、磁着しない高比重の材料の混合割合を増大させることが想定し得るが、適当な磁着力を発揮させるには、その調整が容易でなかった。
【0006】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、移動可能な錘を適宜位置で磁着し得るものであって、磁着状態から錘を容易に開放し得る構成としたルアーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、ルアー本体の内部に設けられた空間部の所定方向に配設した非磁性材料で構成された直線状のシャフトと、このシャフトに挿通されることによって該シャフトに沿って移動可能な錘とを備えるルアーにおいて、前記錘は、磁着可能な材料による錘本体と、この錘本体を磁着する磁石とを備え、前記ルアー本体は、前記錘が前記シャフトに沿って所定位置まで移動したときの前記磁石によって磁着可能に配置され、該磁石の表面に対して部分的に摺接可能な摺接領域を有する磁着部を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、磁石は、錘本体を磁着することにより錘を構成し、当該錘が一体となってシャフトに沿って移動することができる。この錘が適宜位置まで移動した状態において、当該磁石によって磁着部が磁着されることによって、錘全体が保持されることとなる。このとき、磁石は錘の一部を構成しつつ移動し、少なくとも磁石の周縁の一部によって磁着部に対して部分的に磁着することとなり、当該磁石の磁力が強力に作用することなく、磁着の状態は緩やかなものとなる。すなわち、磁石と磁着部との磁着状態は、磁着部の一部(摺接領域)が部分的に摺接されるものであるから、磁着により接する面積が限定的となり、磁着による保持力を小さくすることができる。その結果として、磁着された状態から容易に開放し得るものとなる。
【0009】
上記構成の発明において、前記錘は、前記シャフトが適宜な遊びを有する状態により遊挿できる貫通孔が設けられたものであり、前記磁着部は、該シャフトが遊挿された状態における該錘との間に、前記遊び相当の微小な間隙を有して配置されるものとすることができる。
【0010】
上記構成の場合には、磁石を含む錘全体の貫通孔とシャフトとの間には適宜な遊びを有する状態で遊嵌されることにより、当該遊びの範囲内においてシャフトの軸線の直交方向に可動域を有することとなる。これにより、シャフトが挿通されたときの錘は、その重量によってシャフトに吊り下げられた状態となり得る。また、磁着部は錘との間には、遊びに相当する程度の微小な間隙を有する状態であることから、錘が磁着部近傍を移動するとき、錘本体(磁石でない)は磁着部との間において磁着することはなく、近傍を通過することが自在な状態となるが、磁石が通過する際には、磁着部を磁着することが可能となる。このとき、シャフトとの間に形成される上記の遊びの範囲で、磁石(これと一体化する錘全体)は磁着部に当接するように移動することができる。
【0011】
そこで、例えば、シャフトを中心として、錘の自重が作用する方向(ルアー本体の腹部方向)とは反対の側(ルアー本体の背部側)に磁着部を配置する場合には、シャフトに沿って錘が移動するとき、錘本体は磁着部に摺接せずに通過できることとなる。これに対し、磁石が磁着部近傍に到達するとき、磁石が磁着部を磁着するために浮上することができるものとなる。この場合、少なくとも錘本体は、磁着部に摺接せずに移動できることから、移動時における抵抗(摩擦抵抗)を僅少なものとすることができる。
【0012】
上記構成の発明において、前記磁石は、外部表面形状を曲面によって構成されたものであり、前記磁着部の摺接領域は、前記磁石の外部表面における曲面との間で部分的に摺接可能な曲面で構成されたものとすることができる。
【0013】
上記構成の場合には、磁石の外部表面が曲面であり、この磁石に摺接(磁着)する摺接領域も曲面となっていることから、両者による摺接する部分が極めて限定的となり、磁石は磁着部を磁着するけれども、その磁着力の作用を抑えることとなる。これにより、錘が磁着によって保持されたからの解除に要する外力は小さいものとなる。 この場合の曲面としては、円柱状の外周面によって構成することができ、磁石を円柱形状としつつ、その軸線に貫通孔を設けることにより、円柱状の長手方向に沿って移動させることができる。このとき、一体化させるべき錘本体も同様の円柱状に構成することにより、一体化により単一の円柱状の錘を形成させることとなり、また、両者の対向する端面には適度な面積を有することとなるから、相互の端面を磁着させることにより、強固かつ容易に一体化させることができる。
【0014】
他方、磁着部の形状としては、前記磁石の軸線に対し直交方向の軸線を有する円柱状もしくは線状とする場合のほか、球体による球面とすることができる。この場合には、円柱状部材が相互に軸線を直交させて配置する場合には、両者が摺接する際において、相互に点で接触することとなり、その接触面積を極めて小さくすることができる。これが線状に構成される場合も同様である。また、磁着部を球体で構成する場合においても、点接触となるため、接触面積を小さくすることができる。このように接触面積を小さくすることにより、第1に、作用する磁着力の影響を小さくすることによって磁着の開放が容易となり、第2に、摺接状態における摩擦抵抗を小さくすることにより、錘の移動を円滑にすることができる。
【0015】
上記各構成の発明において、前記シャフトは、軸線を前記ルアー本体の後部近傍から前部に向けて配設し、該ルアー本体の該後部近傍から前方の適宜位置までの範囲で前記錘を移動可能にするものであり、前記錘は、前記錘本体を前方側に、前記磁石を後方側に配置したものであり、前記磁着部は、前記錘が前記シャフトに沿って適宜位置まで移動したときのみ前記磁石による磁着可能な位置に設けられるものとすることができる。
【0016】
上記構成によれば、キャスティング時には錘を後方へ移動させ、着水後のルアー本体の姿勢、例えばリトリーブによる前傾姿勢などにより、錘が前方に移動したとき、磁石が磁着部に磁着することで、当該錘を所定の位置(適宜位置)で保持することができる。また、再度のキャスティングに際しては、陸上においてルアーの頭部側を上向きにすることにより、錘の自重により磁着は開放させ、錘は後部近傍まで落下させることができる。なお、このように錘を落下させることにより移動させる場合には、当該落下時における磁石の保護のために、シャフトに挿通される磁石の後側に緩衝部材を配置する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、錘を構成する錘本体と磁石とは、シャフトが挿通された状態であるため、当該シャフトに沿って移動可能であり、この錘が所定の位置まで移動したとき、磁石が磁着部を磁着することにより、移動可能な錘を適宜位置で停止させることができる。このときの磁着状態は、磁石の周縁の一部が部分的に磁着部を磁着する状態となるため、強力な磁着力が作用することなく、当該磁着状態から容易に開放し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】錘の貫通孔とシャフトとの関係を示す説明図である。
【
図6】実施形態の磁着部を変形した例を示す説明図である。
【
図8】実施形態の錘を変形した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態であるルアー1の内部の状態を示す断面図であり、
図1(a)は錘が中央付近に移動した状態を示し、
図1(b)は後方端部近傍に移動した状態を示すものである。これらの図に示されるように、ルアー1は、ルアー本体2と、このルアー本体2に複数のアイレット11,12,13を装着し、ルアー本体2の前方端部(頭部)21に設けられるアイレット11はラインアイとして使用され、後方端部(尾部)22および中央23の各近傍のアイレット12,13はフックアイとして、それぞれフック14,15が設けられるものである。また、ルアー本体2の内部には空間部20が構成されている。
【0020】
本実施形態のルアー1は、上記構成のルアー本体2の空間部20を利用するものであり、この空間部20の前後方向に向かってシャフト3を配設するものである。また、シャフト3を挿通させた状態で錘4が配設され、錘4は、錘本体41と磁石42とで構成されている。シャフト3は、磁石42によって磁着されないように、ステンレス等の非磁性材料で構成され、挿通状態における錘4を直線的に移動させるため、直線状の線材で構成されている。シャフト3の両端は、ルアー本体2の内部に設けられるストッパ24,25によって支持されるものである。錘4の一部を構成する錘本体41は、磁着可能な材料(軟磁性体)で設けられる。錘本体41の位置によってルアー1の重心を移動させるものであることから、比重の大きいものが使用され、磁着可能であることを考慮すると、鉄などの金属製を用いることができ、さらに、各種の合金を使用することができる。例えば、タングステンと鉄との合金(粉末冶金による合金)を使用すれば、高比重かつ磁着可能な錘本体を構成し得る。磁石42は、僅かな接点において磁着部5を磁着させるために磁力の大きいネオジムなどが使用される。これらの両者41,42は、磁石42の磁力によって磁着された状態で一体化することが可能である。従って、両者41,42は、必ずしも常に一体化した状態ではなく、何らかの外力(例えば衝撃等)によって分離することはあり得るが、両者41,42がシャフト3に沿って移動することにより、磁着によって一体化し得る構成となっている。
【0021】
ところで、本実施形態は、シャフト3をルアー本体2の後方端部22の近傍から所定位置(例えば図示のような中央23の近傍)に至る範囲に設けられるものであり、従って、錘4は当該範囲内において移動可能となっている。また、錘4は、ルアー本体2の前後方向に対して、前側に錘本体41を、後側に磁石42を配置しており、磁着部5は、錘4がシャフト3に沿って移動するときの中央23の側における終端(ストッパ24)に到達したとき、磁石42に接することができる位置に設けられている。従って、磁着部5の近傍を錘本体41が通過する際には、錘本体41が磁着部5によって移動を阻害されることはなく、錘4が中央23の側の終端(ストッパ24)に到達したとき、磁石42が磁着部5を磁着し、錘4の全体を当該位置に留める(保持させる)ようになっている(
図1(a)参照)。
【0022】
なお、磁石42が磁着部5から十分に離れた位置にあるときは、磁石42による磁着部5の磁着はなされず、シャフト3に沿った自由な移動が確保されている。また、シャフト3はステンレス等の非磁性材料によって設けられることにより、シャフト3が磁石42によって磁着されることもない。従って、磁着部5から離れた錘4は、ルアー本体2の後方端部22の側の終端(ストッパ25)まで自在に移動し得ることとなる(
図1(b)参照)。
【0023】
次に、錘4および磁着部5の形態について詳述する。
図2は、両者4,5の一例を示すものである。
図2(a)に示すように、錘4は円柱状に形成することができる。この場合、錘本体41および磁石42は、いずれも同じ外径による円径断面の円柱状に構成され、両者41,42が磁着した状態においても、全体として円柱状を形成し得るものとしている。このような円柱形状の錘4により、その外部表面形状を曲面で構成することができる。
【0024】
また、磁着部5は、球体で構成することができ、この場合において、この磁着部5に形成される摺接領域は、球体表面の一部となり、極めて限定的な摺接領域を形成することができるものである。
【0025】
すなわち、
図2(b)および(c)に示されるように、磁石42の表面と、磁着部5の表面とが、極めて限定的な範囲で摺接し得る状態となっており、両者5,42の表面がともに平滑である場合には、両者5,42の表面の接点(一点)において摺接されることとなる。このような摺接状態とすることにより、磁石42による磁着部5の磁着力を限定的なものとすることができ、さらに、錘4(磁石42)がシャフト3に沿って移動する際に、両者5,42の間に生ずる摩擦抵抗は極めて小さくすることができる。従って、磁着された状態から、錘4(磁石42)を移動させる場合であっても、大きい抵抗を受けることなく移動し得ることとなる。
【0026】
なお、磁着部5は、
図2(c)に示されるように、ルアー本体2のほぼ中心に配置されるものであるが、ルアー本体2は、左右両側に二分割された構成部材2a,2bを貼り合わせて構成されるものであるから、その両者2a,2bの内側表面から突出する支持部51,52を設けることによって、この支持部51,52の先端に挟持される状態で配置することが可能となる。
【0027】
また、磁石42が磁着部5を磁着している状態においては、その磁着の程度が弱いものであるとしても、磁石42が磁着部5に磁着していることには変わりがなく、当該磁着によって磁石42が磁着部5に摺接しつつ保持されるものである。つまり、磁着を解除させる方向への外力が作用しなければ、当該保持状態は維持されることとなるのである。従って、所定の位置に錘4を留めることができるうえ、故意に錘4を移動させることが容易となる。
【0028】
ところで、
図3(a)に示すように、錘4(錘本体41および磁石42)の中心(軸心)には、貫通孔40が穿設されている。この貫通孔40は、シャフト3との間に遊び(間隙C1)を有することができる程度に、シャフト3の外径よりも大径に設けられるものである。従って、シャフト3は貫通孔40に遊挿されるものである。本実施形態では、シャフト3の上下に上記のような遊び(間隙C1)を有する状態において磁石42が磁着部5と磁着できる状態に配置されるものとしている。このように、シャフトが貫通孔40に遊挿された状態とすることにより、錘4は、シャフト3に沿って移動することが自在な状態なり、また、接触面積が微小となるため、摩擦抵抗を小さく抑えることができる。
【0029】
また、使用時のルアー1の状態(水中での姿勢)は、前方端部(頭部)21を進行方向へ向けて移動することから、前方端部(頭部)21と後方端部(尾部)22とは、進行方向に沿って前後に位置する。従って、シャフト3の軸線は概略水平な状態となる(
図1参照)。このとき、錘4の自重は、ほぼ水平な状態のシャフト3の軸線に対し直交かつ下向きに作用することか、磁石42が磁着部5と磁着していない場合においては、前述の遊び(間隙C1)の部分は、自重によって偏った状態となる。
【0030】
すなわち、
図3(b)に示すように、シャフト3は、錘4(錘本体41および磁石42)を吊下するような状態となり、シャフト3の軸心に対して、錘4の軸心は下降した位置となる。また、シャフト3および磁着部5の位置は不動であるから、両者3,5の中心間の距離Lは一定であり、上記のような錘4の下降によって、当該錘4の表面と、磁着部5の表面との間には、前述の遊び(間隙C1)と同程度の微小な間隙C2を形成させることが可能となる。
【0031】
上記のような構成によって、磁石42による磁着部5の磁着がない場合には、錘4は磁着部5から離れており(下降した状態であり)、錘4と磁着部5との間は上述の間隙C2が形成されることとなるのである(
図3(b)参照)。これに対し、磁石42が磁着部5に接近することにより、磁石42の磁力(引力)によって引き合うこととなり、磁石42が磁着部5に摺接するように移動する(上昇する)のである(
図3(a)参照)。
【0032】
このように、シャフト3が錘4に遊挿されるように構成したことから、
図4に示すように、例えば、錘4が後方のストッパ25の付近に位置する状態(
図4(a))において、シャフト3に沿って前方へ移動するとき、錘4を構成する錘本体41のみが磁着部5の近くを通過する状態(
図4(b))では、錘4(錘本体41)と磁着部5とは磁着しないために、所定の間隙(前記間隙C2)が形成され、両者41,5はともに摺接(接触)することなく通過し得ることとなる。これに対し、磁石42が磁着部5に接近する状態(
図4(c))では、磁石42の磁力によって、引き上げられ、両者42,5は摺接することとなる。
【0033】
なお、磁石42が磁着部5に接近する状態(
図4(c))において、錘4は、前方のストッパ24によって移動が制限されることにより、磁石42の停止位置を決定することができ、磁石42が磁着部5を通過するような(磁着されない)事態を回避し得る。また、
図4(c)では、錘4(錘本体41および磁石42)の全体が同時に上昇し、シャフト3の軸線と錘4の軸線が平行な状態となっているように示しているが、現実には、磁石42の部分が上昇し、錘本体41の先端は、上昇せず全体としてシャフト3の軸線に対して斜状となることが想定される。ただし、個々の間隙C1,C2(
図3)は、現実的には微小なものであるため、錘4がシャフト3に対して大きく傾斜することはないものである。
【0034】
以上のような構成であるから、使用に際しては、まず、キャスティング前において、
図5(a)に示すように、ルアー1の頭部(前方端部)21を上向きとすることにより、シャフト3は、概略鉛直方向に配置されることとなり、錘4の自重は尾部(後方端部)22の方向に作用させることができる。この自重によって、磁石42と磁着部5との磁着状態を解消させ、錘4を尾部(後方端部)22の近傍へ移動させることができる。なお、単にルアー1の向きを上下にしたのみで錘4が移動しない場合は、適宜な衝撃(振動等)を与えることにより、容易に移動させることができる。
【0035】
この状態(錘4が尾部22の近傍に位置する状態)において、ルアー1の全体における重心は尾部側に移動しており、これを維持しつつキャスティングすることにより、重い尾部(後方端部)22を先頭として空中を飛行させることができる。このときの飛行姿勢は、錘4の進行方向に対して他の部分が追随するような状態であるから安定したものとなり、キャスティングできる距離を長くすることの一助となり得る。
【0036】
また、キャスティング後に着水したルアー1は、リトリーブ(リーリング)によって、姿勢が調整される。このとき、前方端部21(アイレット11)が釣り糸6によって引き寄せられることで、当該前方端部21のみを沈下するように調整される。例えば、リップ7に水流抵抗を受けさせることにより、前方端部(頭部)21のみを容易に沈下させることができるものである。そして、前方端部21が斜め下方に向かう状態となれば、錘4は自重によって移動を開始し、最終的にはシャフト3の前側ストッパ24まで移動する。このとき、磁石42が磁着部5を磁着することにより、当該錘4が保持され、その位置を維持させることができる。
【0037】
なお、錘4が保持された状態において、ルアー1が水中を移動させる(リトリーブされる)場合、例えばリップ7やルアー本体2の側面が、水の抵抗を受けることにより、全体として振動することがあるとしても、その振動は、重心位置(錘4の近傍)を軸として揺動するような動きであり、錘4に対する振動は小さいものとなる。そのため、錘4(磁石42)が停止した位置から後退する可能性は極めて低いものとなる。また、仮に後退した場合であっても、リトリーブされている間のルアー1の姿勢は、頭部21を斜め下方とするものであるから、再び前方へ移動することができることとなる。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、錘4は、磁石42と、この磁石42によって磁着された錘本体41とが一体化され、錘4の全体が一体化された状態で、貫通孔40にシャフト3が挿通された状態であるため、このシャフト3に沿って移動可能となる。そして、錘4が所定の位置(前部ストッパ24)まで移動することにより、磁石42が磁着部5を磁着することにより、その所定の位置において錘4の移動を停止させることができる。これにより、錘4を保持させることとなる。他方、上記の磁着状態は、磁石42の周縁(外部表面)の一部が部分的に磁着部5を磁着した状態であるから、強力に磁着されるものではなく、容易に磁着を解除し得るものとなる。
【0039】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明が上記実施形態に限定されるものではない。従って、上記実施形態の一部の要素を変更し、また他の要素を追加するものであってもよい。
【0040】
すなわち、上記実施形態における磁着部5の形態は、球体としたものを例示したが、磁石42との間で部分的に摺接できる形状であればよく、例えば、
図6に示すように変形することができる。これらの変形例は、錘4(磁石42)を円柱状としたものであるが、
図6(a)に示す変形例は、磁着部5も円柱状に構成し、その軸線を錘4の軸線に直交する状態で配置したものである。二つの円柱が直交する軸線で接する場合には、当該接点は一箇所となるため、極めて限定的な摺接領域を形成することができる。
【0041】
また、
図6(b)の変形例は、磁着部5を線材で構成し、その軸線を錘4の軸線に直交する状態で設けたものである。この場合においても、
図6(a)の場合と同様に、接点を一箇所とすることができる。さらに、
図6(c)に示すように、磁着部5の摺接側のみを球面とした構成としてもよい。いずれの形態においても摺接領域は接点における一箇所のみとなり、極めて限定的な領域において摺接させることができるものである。
【0042】
なお、シャフト3と錘4の貫通孔40との遊び(間隙C1)は、大きいものである必要はなく、錘4が移動できる程度の極めて微小なものとしてもよい。間隙C1を小さくする場合には、シャフト3に対して錘4が振動することを抑える効果を有するため、両者3,4の衝突音の発生を抑えることとなる。この場合には、磁石42が磁着部5に磁着する際の可動域を小さく(または無くす)こともあり得るが、摺接領域が限定的であるため、錘4と磁着部5との間で生ずる摩擦抵抗は大きいものではなく、磁着状態からの錘4の移動は容易である。
【0043】
また、磁石42と磁着部5との間に作用する磁着力を弱くするために、磁石42そのものの磁力を低減させた構成とすることも想定できるが、その場合には、摺接面積が大きくなるため、上記実施形態のように両者42,5の接点における限定的な摺接形態とすることによって、当該磁着の程度を調整することが好ましい。
【0044】
他の変形例としては、
図7に示すように、錘4を構成する錘本体41と磁石42のうち、磁石42が配置される側において、さらに緩衝部材8をシャフト3に挿通したものがある。これは、一般的に、永久磁石が脆いこととされていることから、終端への移動時に受ける衝撃によって損傷することを抑止するためである。緩衝部材8はウレタン等の柔軟な素材で構成されるものであり、終端まで移動したときの衝撃を吸収させることができる。図示の変形例は、磁石42が後方側に配置される錘4を使用したものであるため、この磁石42よりも後方側に緩衝部材8を配置している。これにより、キャスティング時に錘4を尾部(後方端部)22に移動させるときの衝撃を吸収させることができる。
【0045】
錘4を構成する錘本体41と磁石42の配置は、錘本体41を前方側とすることが基本である。これは、少ない移動によって、錘本体41を所定の位置まで移動させ、ルアー1の全体の重心バランスを所望の状態にするためである。ただし、キャスティングの際の飛行姿勢が安定しないような事情がある場合は、錘本体41を後方側に配置してもよい。この場合、錘本体41が磁着部5の近くを通過することはないが、磁石42と磁着部5との関係は、上述のように、極めて限定的な範囲で摺接されることから、磁着状態の解除を容易にすることができることに変わりはない。
【0046】
さらに、錘4(特に磁石42)の形状は円柱状でなくてもよく、例えば、
図8に示すように、大きく面取りしたドーナツ状に形成してもよい。この場合、
図8(a)に示すように、磁着部5の摺接領域を平面とすることができ、このような摺接領域を形成した場合であっても部分的に摺接させることが可能となる。なお、錘本体41が磁石42の前方側に配置されるものであって、円柱状に形成されるものである場合には、少なくとも当該錘本体41の外径を磁石42の外径と同等にしておけば、磁着部5の近くを容易に通過させることができる。
【0047】
また、
図8(b)に示すように、錘本体41の前後両端を大きく面取りした形状とすることができる。この場合には、錘4が磁着された状態から移動する際に、磁着部5との衝突を緩和させることができる。さらに、
図8(c)に示すように、比較的短尺な錘本体41a,41bの中間に磁石42を配置させる構成としてもよい。この場合において、両側の錘本体41a,41bを同じ重量で構成することにより、磁石42が磁着される位置を中心に重量バランスを設計することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ルアー
2 ルアー本体
2a,2b ルアー本体の構成部材
3 シャフト
4 錘
5 磁着部
6 釣り糸
7 リップ
8 緩衝部材
11,12,13 アイレット
14,15 フック
21 ルアー本体の前方端部(頭部)
22 ルアー本体の後方端部(尾部)
23 ルアー本体の中央
24 ストッパ(中央側の終端)
25 ストッパ(後方端部側の終端)
41,41a,41b 錘本体
42 磁石
51,52 支持部
C1 貫通孔とシャフト3との遊び(間隙)
C2 錘の表面と磁着部の表面と間隙
L シャフトと磁着部の中心間の距離