(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】差込式結合継手の差し具及び差込式結合継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/12 20060101AFI20231031BHJP
F16L 37/086 20060101ALI20231031BHJP
F16L 37/091 20060101ALI20231031BHJP
A62C 33/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L37/086
F16L37/091
A62C33/00 C
(21)【出願番号】P 2020097758
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】593140299
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】笠原 正司
(72)【発明者】
【氏名】笠原 宏文
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実公昭05-001835(JP,Y1)
【文献】国際公開第2014/162528(WO,A1)
【文献】特開2016-014477(JP,A)
【文献】特開2013-050143(JP,A)
【文献】特開2012-120560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0030025(US,A1)
【文献】特開2018-071725(JP,A)
【文献】特開2018-031464(JP,A)
【文献】特開2019-219024(JP,A)
【文献】特開2020-159550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/12
F16L 37/086
F16L 37/091
A62C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け具に挿入された状態で受け具の係止爪により結合され、押し輪により前記係
止爪が退避して結合状態が解除される差込式結合継手の差し具であって、
軸線方向基端側に前記係止爪が係合可能な係止段部を備える先端筒部、前記係止段部の軸線方向基端側に延在する基端側外周部、及び、前記基端側外周部上において軸線方向にスライド可能に装着された前記押し輪を有し、
前記押し輪の前記基端側外周部に対向する内面部と、当該内面部に対向する前記基端側外周部の外面部との間の軸線方向の限定された領域に、前記押し輪が前記基端側外周部上の基端側の非作動域に配置されたときに前記押し輪が軸線方向に対して傾斜する際の前記押し輪若しくは前記基端側外周部に対し固定された支点として機能可能な支持部が設けられ、
前記支持部は、前記内面部若しくは前記外面部の軸線周りの周方向に延在する形状を備え、
前記支持部は、前記内面部と前記外面部との間に配置されるリング状部材によって構成される、
差込式結合継手用の差し具。
【請求項2】
前記支持部は、前記内面部と前記外面部の少なくともいずれか一方の表面上において、他方に向けて突出する凸状に形成される、
請求項1に記載の差込式結合継手の差し具。
【請求項3】
前記支持部の周方向の形成範囲は、前記押し輪が軸線周りの全周のいずれの角度位置においても前記支持部による支点作用を受けることができるように設定される、
請求項1又は2に記載の差込式結合継手の差し具。
【請求項4】
前記リング状部材は、前記内面部若しくは前記外面部に設けられた環状溝に嵌合している、
請求項1-3のいずれか一項に記載の差込式結合継手の差し具。
【請求項5】
前記支持部は、前記支点として前記内面部若しくは前記外面部に当接する突端部分の軸線方向に沿った輪郭形状が山形に構成される、
請求項1-4のいずれか一項に記載の差込式結合継手。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか一項に記載の前記差し具と、
前記先端筒部を受け入れ可能に構成された受け口、及び、前記受け口の内部に突出方向に付勢され、前記係止段部と係合することで結合状態を形成し、該結合状態において前記基端側外周部上の先端側の作動域に差し込まれる前記押し輪により退避して前記結合状態が解除されるように構成された
前記係止爪を有する受け具と、を具備する、
差込式結合継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差込式結合継手の差し具及び差込式結合継手に係り、特に、消防用継手として好適な継手の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から消防用結合継手として、消防ホースを連結するための消防ホース用結合継手、或いは、管槍などの器具を連結するための消防器具用結合継手として、各種の消防用結合継手が使用されている。このうちの差込式結合継手は、
図10に示すように、相互に着脱可能に構成された差し具10と受け具20を有し、差し具10を、内部に係止爪24が出没自在に設置された受け具20の受け口内に挿入すると、差し具10の先端筒部11の基端にある係止段部11bが、板ばね25によって内側へ突出する方向に付勢された係止爪24に係合し、上記係止段部11bが抜け止めされることにより、互いに結合される(例えば、以下の特許文献1参照)。この結合状態においては、差し具10の外周に移動可能に装着された押し輪14を受け具20の側へ押し込むことにより、押し輪14の先端が係止爪24の曲面状の被動面24aに当接し、板ばね25に抗して係止爪24を受け具20の外周側に退避させるため、係止爪24と係止段部11bとの係合が外れることで、差し具10と受け具20の結合状態が解除されるようになっている。
【0003】
ところで、上記押し輪14は、フランジ状に外周側へ広がる鍔部14aと、この鍔部14aから受け具20の側へ延在する筒部14bとを備えている。鍔部14aは、作業を行う者が押し輪14を受け具20の側へ押し込む際に指を引掛けるための部分であり、筒部14bの先端は前述のように係止爪24を外周側へ押し込み退避させるための部分である。しかし、上記のような差込式結合継手を消防ホースの間の連結箇所などに用いる場合には、消防活動に際して、差込式結合継手が地面、床、階段等に接触したときに、鍔部14aが軸線方向の外力を受けることにより、押し輪14が誤作動し、差込式結合継手の差し具10と受け具20が外れてしまう場合があるという問題がある。
【0004】
そこで、従来においては、以下の特許文献2及び3に示すように、C字状部材(外れ防止具20、ロック部材20)を押し輪14(鍔部14a)と受け具20の間に装着したり、特許文献4及び5に示すように、受け具20の保護部材(バンド)27を、一部が押し輪14の鍔部14aと締め輪23との間に配置されるように構成することにより、押し輪14が受け具20の側へ移動することを妨げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-185079号公報
【文献】特開2000-329280号公報
【文献】特開2004-011860号公報
【文献】特開2017-213065号公報
【文献】特開2018-031464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2及び3のように、押し輪14の動作を妨げる部材を着脱する方法では、差込式結合継手の差し具と受け具の結合時及び解除時に上記部材を装着したり取り外したりする必要があるために煩雑であるとともに、緊急時には上記部材の装着が忘れられる場合もあり、また、上記部材をなくしてしまう場合もある。一方、特許文献4及び5のように、押し輪14の動作を妨げる形状の保護部材27を用いる方法では、結合状態を解除する際の操作が煩雑になるとともに、保護部材27の耐久性が低下したり、特殊形状の保護部材を製造することによって製造コストが増大したりするなどの問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、押し輪に外力が加わっても誤動作による結合状態の解除を防止できる差込式結合継手の構造、特に、差し具の新規な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の差込式結合継手用の差し具は、受け具に挿入された状態で受け具の係止爪により結合され、押し輪により前記係止爪が退避して結合状態が解除される差込式結合継手の差し具であって、軸線方向基端側に前記係止爪が係合可能な係止段部を備える先端筒部、前記係止段部の軸線方向基端側に延在する基端側外周部、及び、前記基端側外周部上において軸線方向にスライド可能に装着された前記押し輪を有し、前記押し輪の前記基端側外周部に対向する内面部と、当該内面部に対向する前記基端側外周部の外面部との間の軸線方向の限定された領域に、前記押し輪が前記基端側外周部上の基端側の非作動域に配置されたときに前記押し輪が軸線方向に対して傾斜する際の前記押し輪若しくは前記基端側外周部に対し固定された支点として機能可能な支持部が設けられる。ここで、前記支持部は、前記内面部と前記外面部の少なくともいずれか一方の表面上において、他方に向けて突出する凸状に形成されることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、差し具の基端側外周部に対向する押し輪の内面部と、当該内面部に対向する前記基端側外周部の外面部との間の軸線方向の限定された領域に、前記押し輪が前記基端側外周部上の基端側の非作動域に配置されたときに前記押し輪が軸線方向に対して傾斜する際の支点として機能可能な支持部が設けられる。これにより、押し輪に外力が加わった場合に、上記支持部を支点として基端側外周部上で押し輪が傾斜することにより、押し輪の傾斜姿勢が安定して維持され得るようになるとともに、基端側外周部と押し輪の接触点が増えて軸線方向先端側への摺動抵抗も増大するため、上記外力が押し輪の軸線方向の先端側への移動の原動力とならず、差し具の基端側外周部に対する力のモーメントに変換されやすくなる。したがって、外力が加わっても押し輪の安定した傾斜姿勢により軸線方向の移動に対するロック作用が生じるので、外力による押し輪の誤動作が生じにくくなることから、差込式結合継手の意図しない結合状態の解除を防止することができる。また、上記支持部がない場合に比べると、当該支持部の分だけ、基端側外周部と押し輪の間の半径方向のガタを低減できるため、継手の結合を解除する際の押し輪の操作性を高めることも可能である。特に、上記支持部を、内面部と外面部の少なくともいずれか一方の表面上において、他方に向けて突出する凸状に形成することにより、さらに安定した支持部を支点として押し輪を傾斜姿勢とすることができるので、外力を受けたときのロック作用をより確実に得ることができる。
【0010】
本発明において、前記支持部は、前記内面部若しくは前記外面部の軸線周りの周方向に延在する形状を備えることが好ましい。これによれば、支持部が軸線周りの周方向に延在する形状を備えることにより、支持部が延在する周方向の角度範囲内のいずれの方向から外力が加わっても、支持部が支点となることにより、押し輪の傾斜姿勢を実現することができる。この場合において、前記支持部は、前記内面部と前記外面部との間に配置されるリング状部材によって構成されることが好ましい。特に、上記支持部は、前記内面部若しくは前記外面部の表面上に形成された周方向に延在する溝に嵌合し、その断面の一部が当該溝内から外部へ突出するリング状部材によって構成されることが望ましい。このとき、前記リング状部材は、前記溝に対して着脱可能に嵌合することがさらに望ましい。
【0011】
本発明において、前記支持部は、前記内面部若しくは前記外面部に対して、軸線方向に固定されていることが好ましい。これによれば、支持部が内面部若しくは外面部に対して軸線方向に固定されるため、固定された支点により押し輪が傾斜姿勢とされるため、安定したロック作用を得ることができる。特に、上記支持部は、前記内面部若しくは前記外面部の表面上に形成された周方向に延在する溝に嵌合し、その断面の一部が当該溝内から外部へ突出する嵌合部材によって構成されることが望ましい。このとき、前記嵌合部材は、前記溝に対して着脱可能に嵌合することがさらに望ましい。また、前記支持部は、前記内面部若しくは前記外面部のいずれか一方の表面上において、他方に向けて突出する凸状に形成する場合に、前記基端側外周部若しくは前記押し輪と一体に構成されていてもよい。
【0012】
本発明において、上記支持部の周方向の形成範囲は、前記押し輪が軸線周りの全周のいずれの角度位置においても前記支持部による支点作用を受けることができるように設定されることが好ましい。このようにすると、いずれの角度位置に外力が加わっても、支持部の支点作用により、効果を得ることができる。このとき、上記支持部が軸線周りの全周に亘り連続的に形成されていなくても、実質的に全周に亘り形成されている場合と同等の効果を得ることができる場合がある。例えば、上記支持部を、周方向に沿って僅かな欠如部分を間に挟んで断続的に形成された複数の部分によって構成してもよい。また、上記支持部が上記リンク状部材によって構成される場合、当該リング状部材を、一部に欠けた領域を僅かに備えたリング状部材、例えば、Cリングで構成することも可能である。
【0013】
本発明において、前記支持部は、前記押し輪が前記非作動域に配置されたときに、前記内面部と前記外面部が対面する軸線方向の範囲のうちの軸線方向の基端側及び先端側の1/4未満の部分を除く領域内に配置されることが好ましい。これによれば、前記基端側外周部上の基端側の非作動域に押し輪が配置されたときに、内面部と外面部が対面する軸線方向の範囲のうちの軸線方向の基端側及び先端側の1/4未満の部分を除く領域内、すなわち、上記範囲のうちの軸線方向先端側から1/4~3/4の領域内に支持部が配置されることにより、支持部が押し輪の支点になったときの押し輪の傾斜角度を大きくすることができる。このため、外力が加えられたときの上記ロック作用をさらに生じさせやすくなる。特に、支持部の軸線方向の配置は、上記範囲のうちの基端側及び先端側の1/3未満の部分を除く領域内、すなわち、上記範囲のうちの軸線方向先端側から1/3~2/3の領域内であることがさらに望ましい。
【0014】
本発明において、前記支持部は、前記押し輪が前記非作動域に配置されたときに、前記内面部と前記外面部が対面する軸線方向の範囲のうちの半分よりも基端側の領域内に配置されることが好ましい。これによれば、押し輪に対して基端側から先端側へ向かう外力が加えられたときに、支点となる支持部が上記範囲のうちの基端側の領域内に配置されることから、外力が加えられた角度位置において、押し輪の先端側部分が外面部に当接する態様の傾斜姿勢になりやすい。したがって、誤作動を招きやすい向きの外力を受けたときに押し輪が傾斜姿勢になり易く、したがって、ロック作用も生じ易くなる。
【0015】
本発明において、前記支持部は、前記支点として前記内面部若しくは前記外面部に当接する突端部分の軸線方向に沿った輪郭形状が山形に構成されることが好ましい。これによれば、支持部の突端部分の軸線方向に沿った輪郭形状が平坦化されている場合に比べると、押し輪を軸線方向の傾斜姿勢にしやすくなるため、外力を受けた時の押し輪のロック作用をより確実に生じさせることが可能になる。
【0016】
上記各発明において、前記支持部の軸線方向の幅は、前記内面部と前記外面部とが対面する軸線方向の範囲のうちの1/3未満であることが好ましく、1/4未満であることが望ましい。特に、1/5未満であることがさらに望ましい。上記幅が上記範囲に比べて小さくなるほど、支持部が押し輪の支点として機能しやすくなるため、上記ロック作用を高めることができる。
【0017】
上記各発明において、前記押し輪は、軸線方向の基端側若しくは中間部において外周側へ張り出したフランジ状の鍔部(15a)と、該鍔部(15a)から軸線方向先端側へ延在する筒部(15b)と、を有することが好ましい。これによれば、基端側若しくは中間部に鍔部を設けることにより、この鍔部により押し輪を容易に先端側へ押し込むことができるので操作性が向上するとともに、この鍔部から先端側へ延在する筒部を設けることにより、係止爪を確実に退避させることができる。
【0018】
次に、本発明の差込式結合継手は、上記のいずれかの差し具と、前記先端筒部を受け入れ可能に構成された受け口、及び、前記受け口の内部に突出方向に付勢され、前記係止段部と係合することで結合状態を形成し、該結合状態において前記基端側外周部上の先端側の作動域に差し込まれる前記押し輪により退避して前記結合状態が解除されるように構成された係止爪を有する受け具と、を具備する差込式結合継手である。
【0019】
この場合において、前記非作動域にある前記押し輪の先端部は、前記基端側外周部に対する前記押し輪の傾斜姿勢により前記受け具の前記受け口の先端内縁部に当接可能に構成されることが好ましい。これによれば、押し輪の先端部が係止爪の手前において受け口の先端内縁部に当接することで、それ以上の押し輪の傾斜が規制される。この受け口の内側への当接により、押し輪の係止爪への作用がより確実に回避されるとともに、外力を受けた押し輪の傾斜姿勢も固定されるため、押し輪の誤動作をさらに確実に防止できる。ここで、上記先端内縁部は、前記受け口の先端側に配置された第1の内縁部(例えば、後述する内縁23a)と、該第1の内縁部の基端側に配置された第2の内縁部(例えば、後述する内縁26a)とを有し、前記第2の内縁部の内寸法は、前記第1の内縁部の内寸法より小さく、前記押し輪の前記先端部は、前記傾斜姿勢により、前記第1の内縁部に当接可能に構成されることが望ましい。なお、押し輪が傾斜姿勢になるとき、前記先端部が第1の内縁部に当接しない場合であっても、押し輪の先端部が第2の内縁部の内寸法よりも外周側に配置され、第1の内縁部に近づくように構成されていれば、押し輪の先端部よりも軸線方向の先端側に内寸法のより小さい第2の内縁部が立ちはだかるので、押し輪が軸線方向先端側へ移動して上記先端部が第2の内縁部に当接すれば、押し輪のそれ以上のスライドを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、押し輪の内面部と基端側外周部の外面部の間において支持部を支点として機能させることにより、非作動域にある押し輪の傾斜姿勢を安定させるとともに、基端側外周部と押し輪の接触点が増えて軸線方向先端側への摺動抵抗も増大することから、押し輪の傾斜姿勢によるロック作用により外力を受けても押し輪を作動域へ移動しにくくすることができる。したがって、差込式結合継手の結合状態において外力による押し輪の誤作動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る差込式結合継手の第1実施形態において、差し具と受け具が結合された状態を示す縦断面図である。
【
図2】同第1実施形態において、差し具と受け部の押し輪を中心とした接続部分の一部を拡大して示す拡大部分断面図である。
【
図3】同第1実施形態において、押し輪に外力Fが加わった時の様子を示す縦断面図である。
【
図4】同第1実施形態において、押し輪に外力Fが加わった時の差し具と受け部の押し輪を中心とした接続部分の一部を拡大して示す拡大部分断面図である。
【
図5】同第1実施形態において、押し輪に外力Fが加わった時の差し具と受け部の押し輪を中心とした接続部分の他の一部を拡大して示す拡大部分断面図である。
【
図6】本発明に係る差込式結合継手の第2実施形態において、差し具と受け具が結合された状態を示す縦断面図である。
【
図7】同第2実施形態において、差し具と受け部の押し輪を中心とした接続部分の一部を拡大して示す拡大部分断面図である。
【
図8】同第2実施形態において、押し輪に外力Fが加わった時の様子を示す縦断面図である。
【
図9】同第2実施形態において、押し輪に外力Fが加わった時の差し具と受け部の押し輪を中心とした接続部分の一部を拡大して示す拡大部分断面図である。
【
図10】従来の消防用の差込式結合継手の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、
図1及び
図2を参照して、本発明に係る第1実施形態の差込式結合継手1について説明する。ここで、
図1は消防用結合継手1の差し具10を受け具20の受け口20aに挿入し、係止爪24が先端筒部11の係止段部11bに完全に係止され、結合した状態を示す縦断面図である。また、
図2は、差込式結合継手1の結合した状態における押し輪15及びその周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【0023】
この差込式結合継手1は、差し具10と受け具20を備える。差し具10は、差し口10aを備えた先端筒部11を有している。この先端筒部11は、所定の外寸法(図示例では外径、以下同様)を備えた筒状(図示例では円筒状)に構成され、軸線方向の先端外縁11pから基端外縁11qまで筒面状(図示例では円筒面状)の外周面11aを備える。また、先端筒部11の軸線方向基端には、軸線方向基端側(図示右側)に向いた係止段部11bが設けられる。この係止段部11bによって、それ以降の軸線方向基端側の外周部(以下、基端側外周部という。)12における差し具本体の外寸法は、上記先端筒部11の外寸法より小さくなっている。なお、先端筒部11の軸線方向の長さと、上記先端筒部11及び基端側外周部12の外寸法とは、JISのB9911-1968(消防用ホースの差込み式結合金具の寸法、以下同様)において、それぞれ規定されている。なお、本明細書において、「軸線方向」とは、差し具10若しくは受け具20の軸線10xに沿った方向を言う。
【0024】
また、差し具10は、基本的には従来の押し輪14と同等の構造を有する押し輪15が装備される。この押し輪15において、基端側に設けられたフランジ状の鍔部15aと、先端側に設けられた筒状の筒部15bとが備えられる点も、
図10に示す従来例と同様である。押し輪15は基端側外周部12上で軸線方向にスライド可能に配置される。また、止め輪13は、押し輪15の軸線方向の基端側の規制位置を定める基端側規制構造である。図示の状態では、押し輪15は、係止爪24に対して当接せず、作動しない非作動域に配置される。この押し輪15の非作動域は、上記基端側外周部12の外面12a上の軸線方向の基端側に、すなわち、図示二点鎖線で示す係止爪24に対する作動位置よりも軸線方向の基端側に、設定される。
【0025】
一方、受け具20は、従来構造と同様の受け口20a、受け具本体22、締め輪23、係止爪24、板ばね25、爪座26、保護部材27、パッキン28を備える。受け口20aの奥側(軸線方向基端側、図示左側)には複数(図示例では3つ)の上記係止爪24が板ばね25によって受け口20の内周側に突出する向きにそれぞれ付勢された状態で取付けられている。係止爪24の軸線方向先端側(図示右側)には、係止爪24の被動面24aに向けて押し輪15の筒部15bの先端を通過可能に構成する受け口20aの内側外周部分が存在する。ここで、受け具20では、係止爪24の軸線方向先端側にある受け口20aの先端内縁部21は、
図2に示すように、上記締め輪23の内縁23aと、上記爪座26の内縁26aとによって構成される。図示例の場合、軸線方向の先端側(外側、すなわち図示右側)の内縁23aよりも、軸線方向の基端側(内側、すなわち図示左側)の内縁26aの方が内寸法(図示例では内径)が小さくなっている。
【0026】
図10に示す従来例では、押し輪14の内面部が軸線方向に平坦であり、基端側外周部も軸線方向に平坦であるため、基端側外周部の外寸法(外径)と押し輪14の内寸法(内径)の内外寸法差も軸線方向に一定である。このとき、押し輪14の傾斜可能な角度範囲は、上記内外寸法差と、押し輪14の軸線方向の長さとの関係で定まる。このときの傾斜可能な角度範囲は、通常、極めて狭い。当該範囲を広くするためには、上記内外寸法差を大きくすればよい。しかし、このようにすると、全体のガタが大幅に増大するので、結合状態の解除時における押し輪14の操作性が著しく悪化する。
【0027】
これに対して、本実施形態では、差し具10の基端側外周部12の外面12aのうち、非作動域に配置された押し輪15の上記鍔部15a及び上記筒部15bの内周側にある内面部15iと対面する外面部12bにおいて、
図2に示すように、環状(周回状の)溝12cが形成される。この溝12cには、弾性体からなるCリングで構成されるリング状部材16が嵌合している。この嵌合構造により、リング状部材16は、基端側外周部12に対して、軸線方向に固定されている。このリング状部材16は、その断面の一部が溝12c内から外側へ突出している。このリング状部材16の外面12aから突出した部分である支持部16aが支点として機能するものとして上記外面部12b上に形成される。支持部16aは、図示例では、軸線方向に沿った輪郭形状(断面形状)が半円弧状に構成される。ただし、支持部16aは、軸線方向に沿った輪郭形状は特に限定されず、基端側外周部12の外面12aより突出した凸状に構成されていればよい。もっとも、支持部16aの支点となる突端部分(内面部15iに当接する部分)の軸線方向に沿った輪郭形状が山形に構成されることにより、後述するように押し輪15が軸線方向に傾斜した姿勢になりやすくなる。山形とは、上記半円弧状に限らず、三角状、台形状なども含む。
【0028】
本実施形態では、上記支持部16aは、押し輪15の内面部15iを支持し、支点となることによって押し輪15を軸線方向に対して傾斜した姿勢とすることができるものであればよい。ここで、基端側外周部12の外面12aのうちの、非作動域に配置された押し輪15の内面部15iと対面する外面部12bでは、上記支持部16aが設けられることにより、外寸法(軸線10xからの距離(外半径)若しくは、外直径)が軸線方向の位置によって変化している。すなわち、上記支持部16aが設けられた位置では、外寸法はRo1であるが、それ以外の外面部12bの外寸法はRo2であり、Ro1がRo2よりも大きい。ここで、上記支持部16aの外面部12bからの突出量をRpとすれば、Ro1-Ro2=Rpとなる。これにより、上記基端側外周部12の外面部12bと内面部15iとの間の内外寸法差(外径と内径の差若しくは外直径と内直径の差)を軸線方向に変化させることにより、基端側外周部12上の非作動域における押し輪15の傾斜可能な角度範囲を増大させることができる。
【0029】
リング状部材16は、溝12c内に嵌合し、外面部12bの軸線周りの周方向に延在する。図示例では、溝12cは環状の溝12cであり、また、リング状部材16は、周方向の一部に切り欠き部が設けられたCリング(弾性体)となっている。ここで、リング状部材16は、上記切り欠き部を備えるものであるが、当該切り欠き部の長さが十分に短ければ、押し輪15の円筒状の内面部15iとの対面関係により、実質的に全周に亘り上記支持部16aが形成されている場合と同様の作用効果(全周のいずれの角度位置においても支点機能を実現できる効果)を得ることができ、実際に、このように構成することが好ましい。
【0030】
また、図示例では、リング状部材16の断面は円形である。したがって、リング状部材16の上記支持部16aは、半円状若しくは部分円状に構成される。このため、上記支持部16aの支点となる突端部分の軸線方向に沿った輪郭は、全体として山形となる。これにより、支持部16aが内面部15iに当接して支点として作用したとき、押し輪15が軸線方向に対して傾斜し易くなるため、外力Fを受けた時のロック作用をより確実に生じさせることが可能になる。なお、リング状部材16や支持部16aの断面形状は、図示例に限らず、多角形状、楕円状など、種々の形状とすることができることは勿論である。
【0031】
本実施形態とは異なるものの、上記構成の代わりに、或いは、上記構成とともに、上記押し輪15の内面部15iの内寸法(軸線10xからの距離(内半径)若しくは、内直径)Riを軸線方向に変化させることによって、押し輪15の傾斜姿勢の範囲を増大させてもよい。ここで、上記構成の代わりに内面部15iの内寸法を軸線方向に変化させた例は後述する第2実施形態に相当する。なお、この場合の内寸法の変化は、基端側外周部12の外面部12bの本実施形態の図示の態様と同様のものに限らず、例えば、内面部15iが軸線方向の少なくとも一方に向けて、段差状に増大するように、若しくは、傾斜状に徐々に大きくなるように、構成されるものであればよい。これにより、押し輪15の傾斜角度をさらに増大させることができる。
【0032】
本実施形態の場合、図示例では、外面部12bは、上記支持部16aを備えた外寸法Ro1の第1の外面領域と、上記支持部16aを備えず、外面12aと同じに軸線方向に平坦な外面部分で構成される外寸法Ro2の第2の外面領域のみで構成される。一方、押し輪15の内面部15iは、軸線方向に沿って平坦な内寸法Riの面(円筒面)で構成される。これにより、第1の外面領域と内面部15iとの間には、内外寸法差ΔR1=Ri-Ro1、第2の外面領域と内面部15iとの間には、内外寸法差ΔR2=Ri-Ro2が設けられる。そして、ΔR2-ΔR1=Ro1-Ro2=Rpとなる。本実施形態では、上記支持部16aを設けることにより、内外寸法差ΔR1とΔR2の変化が生じ、これにより、上記支持部16aを支点として押し輪15が軸線方向に対して傾斜する姿勢をとることができる。
【0033】
ここで、
図10に示す従来例であっても、差し具本体の基端側外周部の外寸法と押し輪14の内寸法の差を大きく確保することによって、押し輪14の軸線方向に対する大きな傾斜角度を備えた傾斜姿勢をとることは可能である。しかし、従来例では、差し具本体の外面と押し輪14の内面とがいずれも軸線方向に沿って平坦な面で構成されているため、押し輪14は、大きな傾斜角度の傾斜姿勢を安定して維持することはできない。したがって、軸線方向の外力が押し輪14の鍔部14aに対して軸線方向の先端側へ加えられたときに、傾斜姿勢が維持されにくく、差し具本体の外面と押し輪14の内面との当接部分が滑ることにより、押し輪14が軸線方向の先端側へ移動しやすくなる。このため、外力による誤動作を好適に防ぐことはできない。また、差し具本体の基端側外周部の外寸法と押し輪14の内寸法の差が大きくなることによって、ガタが大きくなるため、押し輪14を軸線方向に操作して結合状態を解除しようとする際の操作性が悪化するという問題もある。
【0034】
これに対して、本実施形態では、
図3-
図5に示すように、外面部12bに凸状の上記支持部16aを設け、この支持部16aを押し輪15の内面部15iに当接させ、支点として用いることにより、支持部16aを中心に押し輪15を軸線方向に対して傾斜した姿勢とすることができる。このとき、当該傾斜した姿勢は、支持部16aを支点として押し輪15の他の接触箇所を外面部12bの他の箇所に当接させることによって生ずるので、安定して維持されやすくなるとともに、接触点が増大して軸線方向の摺動抵抗が増大する。したがって、押し輪15の外面部12bに対するロック作用により、外力Fを受けたときの誤動作を防止することができる。また、上記支持部16aを設けることによって基端側外周部12と押し輪15の内外寸法差によるガタを低減できるため、結合状態の解除操作時における操作性の悪化を抑制できる。なお、上記支持部16aは、押し輪15の内面部15iと基端側外周部12の外面部12bとの対面する軸線方向の範囲のうち軸線方向の限定された領域に設けられているため、押し輪15の傾斜角度が小さいとき(結合解除操作時)の上記支持部16aの軸線方向の摩擦抵抗は低く、これによって、押し輪15を基端側外周部12上でスムーズにスライドさせることが可能になるので、結合状態を解除する際の押し輪15の操作性の障害になることは少ない。したがって、外力Fによる押し輪15の誤動作の抑制と、押し輪15の操作性とを両立させることができる。
【0035】
上述の作用効果をより詳細に説明する。
図3は、結合状態の差込式結合継手1が地面、床面、階段などに接触したときに、押し輪15の鍔部15aの接触部が外力Fを受け、その結果、押し輪15が基端側外周部12の軸線10xに対して大きく傾斜した姿勢となった様子を示す。このとき、押し輪15は、基端側外周部12上で上記支持部16aを支点として傾斜することによって、その傾斜姿勢が安定するとともに、基端側外周部12と押し輪15の接触点が増えて軸線方向先端側への摺動抵抗も増大するから、それ以上受け口20aの内側へ向けて軸線方向にスライドしにくくなる。これは、後述するように、鍔部15aに軸線方向に沿った外力Fを受けても、外力Fが押し輪15に力のモーメントを与えるが、このモーメントは押し輪15を基端側外周部12に押し付けるものの、軸線方向の先端側へ移動させることがほとんどないためと考えられる。
【0036】
図4及び
図5は、
図3に示す状態における押し輪15の図示上側の断面部分及び図示下側の断面部分を拡大して示す拡大部分断面図である。本実施形態では、外面部12bに凸状の支持部16aが設けられ、この支持部16aを支点として押し輪15が傾斜姿勢となるように構成される。このため、支持部16aがない場合(従来構造)よりも、軸線10xに対する押し輪15の傾斜姿勢を安定して維持することが可能になる。
【0037】
本実施形態では、
図2に示すように、押し輪15の内面部15iの軸線方向の全長Lに対して、上記支持部16a(実際には支点として作用する点)から内面部15iの先端内縁15dまでの距離Ldと、上記支持部16a(実際には支点として作用する点)から内面部15iの基端内縁15pまでの距離Lpとがそれぞれ確保されるように、押し輪15の非作動域における配置の範囲が設定されている。ここで、上記LdとLpは、基端側外周部12の外面12a上における押し輪15の軸線方向の位置に依存するが、一般的には、上記支持部16aが全長Lの先端側及び基端側のそれぞれ1/4未満の範囲には配置されないように、すなわち、押し輪15の軸線方向先端側から見て全長Lの1/4~3/4の範囲に含まれるように、非作動域の押し輪15の配置が設定されることが好ましい。これは、上記支持部16aの位置が押し輪15の内面部15iの軸線方向の先端側及び基端側の各縁部に近づきすぎると、外力Fが加えられたときの傾斜姿勢の傾斜角度が小さくなり、上記ロック作用が生じにくくなると考えられるからである。この意味では、上記支持部16aが全長Lの先端側及び基端側のそれぞれ1/3未満の範囲には配置されないように、すなわち、押し輪15の軸線方向先端側から見て全長Lの1/3~2/3の範囲に含まれるように、非作動域の押し輪15の配置が設定されることが望ましい。
【0038】
また、本実施形態では、非作動域に押し輪15が配置された場合において、上記支持部16aは、軸線方向の全長Lのうちの半分よりも基端側に配置されるように設定されることが好ましい。すなわち、上記先端側の距離Ldが上記基端側の距離Lpより大きくなる(Ld>Lp)ことが好ましい。これは、
図3及び
図4に示すように、本実施形態において誤作動を招くおそれが高い外力Fは、押し輪15の鍔部15aに対して、軸線方向の基端側から先端側へ向けて加えられるものであり、このような外力Fによってロック作用を生じ易くするためには、外力Fによって押し輪15の軸線方向の先端側(例えば、先端内縁15d)が基端側外周部12の外面12aに押し付けられる態様の傾斜姿勢とすることが望ましく、この傾斜姿勢を生じやすくするには、支持部16aは、押し輪15の内面部15iのうちの半分よりも軸線方向の基端側に配置されることがさらに望ましいからである。すなわち、支持部16aの軸線方向の位置範囲Pは、全長Lの1/2よりも軸線方向の基端側に配置されていることが好ましく、特に、この範囲内のうちの全長Lの2/3以降であることがより望ましい。
【0039】
なお、外力Fが
図4に示す押し輪15の角度位置に加わったときにおいて、当該角度位置では、押し輪15は、先端内縁15dが基端側外周部12の外面12aに当接する態様の傾斜姿勢をとる。しかし、当該傾斜姿勢において、
図5に示す反対側の角度位置の先端外縁15eは、上記
図4に示す部分とは逆に、基端側外周部12の外面12aから離れた状態となる。このとき、図示例よりも押し輪15の傾斜角度が大きくなることにより、上記先端外縁15eが、先端内縁部21(締め輪23の内縁23aや爪座26の内縁26a)の内寸法(内径)よりも大きくなることができるように設定されることにより、押し輪15が先端内縁部21に干渉を受けるようになるため、それ以上の軸線方向の先端側への移動が規制される。このような押し輪15の大きな傾斜角度を得るためには、上記支持部16aの突出量Rpを図示例の場合よりも大きくすることが考えられる。
【0040】
図示例では、押し輪15の内寸法Riと、上記支持部16aの外寸法Ro1とがほぼ等しいように描いてあるが、通常、両寸法の間には、ΔR=Ri-Ro1の寸法差が存在する。この寸法差ΔRが小さすぎても大きすぎても、通常の結合解除操作時における操作性が悪化するため、適宜の範囲内に設定することが好ましい。ただし、寸法差ΔRが大きくなるほどガタが大きくなるので、押し輪15の傾斜姿勢の安定性が却って低下することも考慮する必要がある。
【0041】
本実施形態では、押し輪15を従来例と同様に構成することができるとともに、差し具10の差し具本体の基端側外周部12の外面12aに溝12cを形成し、リング状部材16を嵌合させるだけでよいため、製造コストを低減することができ、また、既存の製品にも、容易に支持部を形成することができるという利点がある。なお、リング状部材16は基端側外周部12に対して着脱可能に構成されているので、容易に交換することができる。このため、リング状部材16の補修や突出量Rpの変更も容易に行うことができる。
【0042】
次に、
図6-
図9を参照して、本発明に係る第2実施形態の差込式結合継手1′について説明する。ここで、
図6は消防用結合継手1の差し具10′を受け具20の受け口20aに挿入し、係止爪24が先端筒部11の係止段部11bに完全に係止され、結合した状態を示す縦断面図である。また、
図7は、差込式結合継手1′の結合した状態における押し輪15′及びその周辺を拡大して示す拡大断面図である。なお、本実施形態において、差し具10′の差し具本体の基端側外周部12′及び押し輪15′以外は第1実施形態と同様に構成できるので、同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0043】
本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、基端側外周部12の外面12aを従来例と同様に非作動域において軸線方向に平坦な面とし、その代わりに、押し輪15′の内面部15i′に周回方向に延在する溝15c′を形成し、この溝15c′にリング状部材17を嵌合させることにより、内面部15i′と外面部12b′との間に支持部17aを形成している。なお、この溝15c′、リング状部材17、及び、支持部17aは、第1実施形態における溝12c、リング状部材16、及び、支持部16aと同様に構成でき、同様に変形することも可能である。例えば、リング状部材17の切り欠き部や支持部17aの軸線方向に沿った輪郭も、第1実施形態と同様に構成できる。
【0044】
本実施形態においても、
図7に示すように、内面部15i′の軸線方向の全長L′に対して、支持部17aの先端内縁15d′からの距離Ld′、基端内縁15p′からの距離Lp′の関係は、基本的には、第1実施形態の全長L、距離Ld及びLpと同様である。ただし、支持部17aが押し輪15′の内面部15i′に設けられ、軸線方向に固定されているため、押し輪15′の軸線方向の位置に拘わらず、内面部15i′における支持部17aの位置が定まる点で、第1実施形態とは異なる。すなわち、支持部17aの位置は、内面部15i′において、軸線方向先端側から1/4~3/4の範囲内であることが好ましく、特に、1/3~2/3の範囲内であることが望ましい。また、支持部17aの位置は、内面部15i′の軸線方向の半分よりも基端側に配置されていることが好ましい。すなわち、支持部17aの位置は、軸線方向先端側から全長L′の1/2よりも基端側に配置されることが好ましく、特に、2/3以降に配置されることが望ましい。
【0045】
本実施形態では、上述のように押し輪15′において支持部17aの位置が固定されていることから、ロック作用時の動作によっても、押し輪15′の支点が動かないため、支持部17aの形成位置の設定によって押し輪15′の傾斜姿勢に最適な設計を行うことができる。
【0046】
なお、本発明に係る差込式結合継手及びその差し具は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。上記第1実施形態では、差し具本体の基端側外周部12の外面12a上に支持部16aを設け、上記第2実施形態では、押し輪15′の内面部15i′上に支持部17aを設けたが、結果的に、外面部12b,12b′と内面部15i,15i′の間に、押し輪15,15′の傾斜姿勢の支点となる支持部16a、17aが形成され、それによって、押し輪15,15′の傾斜姿勢の安定性が高められるものであればよく、上述の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1,1′…結合継手、10…差し具、10a…差し口、10x…軸線、11…先端筒部、11a…外周面、11b…係止段部、11p…先端外縁、11q…基端外縁、12,12′…基端側外周部、12a,12a′…外面、12b,12b′…外面部、12c…溝、Ro…基端側外周部の外寸法、Ro1,Ro2…外面部12bの外寸法、13…止め輪、14,15,15′…押し輪、15a,15a′…鍔部、15b,15b′…筒部、15c′…溝、15d…先端内縁、15e…先端外縁、15p…基端内縁、15i,15i′…内面部、16,17…リング状部材、16a、17a…支持部、Rp…支持部の突出量、Ld…先端側長さ、Lp…基端側長さ、L…押し輪の軸線方向の全長、20…受け具、20a…受け口、21…先端内縁部、22…受け具本体、23…締め輪、23a…内縁、24…係止爪、25…板ばね、26…爪座、26a…内縁、27…保護部材、28…パッキン