(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】新規なベンズイミダゾール誘導体、その製造方法及びその抗癌剤または抗ウイルス剤としての用途
(51)【国際特許分類】
C07H 17/02 20060101AFI20231031BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231031BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231031BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231031BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20231031BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20231031BHJP
C07H 1/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C07H17/02 CSP
A61P35/00
A61P31/12
A61P43/00 111
A61K47/54
A61K31/7056
C07H1/00
(21)【出願番号】P 2020560771
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2020013371
(87)【国際公開番号】W WO2021261663
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0076802
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520362561
【氏名又は名称】バイオメトリックス テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOMETRIX TECHNOLOGY INC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンフン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ケムソー
(72)【発明者】
【氏名】キム タイスン
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509384(JP,A)
【文献】国際公開第1992/007867(WO,A1)
【文献】国際公開第1996/001833(WO,A1)
【文献】国際公開第1997/025337(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/006424(WO,A1)
【文献】ADEKOLA, K. et al.,Glucose transporters in cancer metabolism,Current Opinion in Oncology,2012年,Vol.24, No.6,p.650-654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される新規なベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物:
【化1】
(前記式中、
-NH-R
1部位が下記構造:
【化2】
のいずれか一つを有し、
R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素、炭素原子数1~10のアルキル基、または、環原子数3~10のアリール基もしくはヘテロアリール基であり、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリールまたはヘテロアリール基から選択される置換基で置換されることができ、及び
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、-NH-、-N(R
2)-、-CH
2-、-CH(R
2)-、-CO-からなる群から選ば
れる。)
【請求項2】
下記化学式2で表される化合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物 :
【化3】
(前記式中、R
1、R
2及びXは、前記で定義されたものと同様である。)
【請求項3】
化学式1または化学式2において、
ベンズイミダゾール部位が下記構造中のいずれか一つを持つことを特徴とする、請求項1または2に記載のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物 :
【化4】
【請求項4】
アルベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノマンノース;
フェンベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノマンノース;
フルベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノマンノース;
メベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノマンノース
からなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物。
【請求項5】
下記化学式1aの2-アミノベンズイミダゾール化合物に炭水化物を反応させてイミン結合を形成させることを特徴とする、下記化学式1で表されるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物の製造方法:
【化5】
(前記化学式1及び1a中、
R
1は炭水化物の残基であって、前記炭水化物は、アルドテトロー
ス、アルドペントー
ス、アルドヘキソー
ス、ケトテトロー
ス、ケトペントー
ス、ケトヘキソー
ス、これらの酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変
換)、アミノ糖(-OHが-NHに変
換)、またはこれらの二糖類、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトースまたはキシロースから選択さ
れ、
R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素、炭素原子数1~10のアルキル基、または、環原子数3~10のアリール基もしくはヘテロアリール基であり、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリールまたはヘテロアリール基から選択される置換基で置換されることができ、及び
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、-NH-、-N(R
2)-、-CH
2-、-CH(R
2)-、-CO-からなる群から選ば
れる。)
【請求項6】
化学式1aの2-アミノベンズイミダゾール化合物において、イミン反応を進行することができる置換基は、あらかじめ保護または遮蔽することを特徴とする、請求項5に記載のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物を含む、医薬組成物。
【請求項8】
ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は
、微小管の形成を抑制して炭水化物、またはブドウ糖を含む糖類(sugar compound)の吸収を抑制することを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
坑癌または抗ウイルス活性を示すことを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なベンズイミダゾール誘導体、その製造方法及びその抗癌剤または抗ウイルス剤としてのその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンズイミダゾール(benzimidazole)は、ベンゼン環にイミダゾール環が付いた化合物であって、多様な生理活性及び生理作用を有しており、様々な薬物の母核として注目を浴びている。このようなベンズイミダゾール構造を持っている化合物は置換基によって多様な疾病に効果を示すということが報告されており、例えば、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗癌剤、駆虫薬、抗ヒスタミン剤などとして開発されている。
【0003】
ベンズイミダゾールは、細胞壁を介して細胞内に入り込んで微小管(microtubule)の形成を抑制する特性が多くの論文に発表されている(参照: Chem Biol Drug Des., 2017 Jul;90(1):40-51; Scientific REPORTS, 2018, 8:11926; および ANTICANCER RESEARCH, 29: 3791-3796,2009)。しかし、ベンズイミダゾールは正常細胞と異常細胞(すなわち、癌発現細胞及びウイルス感染細胞)とを区分しないで進入し、これによって正常細胞及び異常細胞で等しく微小管の形成を抑制することと知られている。
【0004】
また、癌細胞及びウイルス感染細胞などはブドウ糖を大量で吸収する特性を示すが、GLUTチャネルを細胞壁に移動させるために必須に微小管を利用しており、癌細胞の場合には正常細胞に比べて1000倍程度のGLUTチャネルを生成すると報告されている(参照:L. Quan et al. / Journal of Molecular Structure 1203 (2020) 127361)。
【0005】
そこで、ベンズイミダゾール誘導体を正常細胞よりは癌細胞またはウイルス感染細胞に集中的に投入して微小管の形成を抑制させると、GLUTチャネルの生成が抑制され、ブドウ糖の吸収が遮断でき、その結果、癌細胞の増殖やウイルス感染細胞内のウイルスの増殖が著しく抑えられることができ、これにより、体内免疫体系が前記のように増殖が抑制された癌細胞またはウイルス感染細胞を攻撃して坑癌効果または抗ウイルス効果を示すと知られている(参照:EXPERIMENTAL AND THERAPEUTIC MEDICINE 13: 595-603, 2017)。
【0006】
しかし、ベンズイミダゾール誘導体は、通常、水溶解度が低くて生体吸収率が低いので、癌細胞の増殖またはウイルス感染細胞内のウイルス増殖を効率よく抑制するためには高濃度あるいは相当な量を投与しなければならなく、このため、正常細胞にも相当な副作用を示すことが報告されている(参照:Vojnosanit Pregl. 2008 Jul;65(7):539-44, Infect Chemother 2018;50(1):1-10)。
【0007】
したがって、ベンズイミダゾール誘導体は、胃腸管での吸収を向上させることができる薬物(例えば、シメチジンのようなH2受容体拮抗薬または胃酸分泌抑制剤)と一緒に投与するか、ベンズイミダゾール誘導体自体の水溶性を向上させるために水溶性置換基を導入することが提案されている。
例えば、特許文献1には、2-カバーメートベンズイミダゾール誘導体が哺乳動物の腫瘍及び癌の増殖を抑制し、ウイルス性感染症を治療することができることを開示しているが、水溶解度及び生体吸収率が前述のように低くて十分な薬効が得られない。
【0008】
特許文献2には、1-アリール-2-アミノベンズイミダゾール誘導体の2-アミノ基に3-ヒドロキシプロピル基、2、3-ジヒドロキシプロピル基または2-カルボキシアミドエチル基のように水溶性を増加させることができる置換基を付けた化合物を呼吸器細胞融合ウイルス複製阻害剤として使用することが開示されているが、水溶解度及び生体吸収率が十分ではない。
【0009】
特許文献3には、ベンズイミダゾール誘導体の1位の窒素原子にβ-D-リボピラノースに由来するピラノース環を置換させた化合物及びこれを用いたウイルス感染の治療並びに予防での用途を開示している。前記特許文献におけるピラノース環は、2~3個以上のヒドロキシル基を含むことができるため、ベンズイミダゾール誘導体の水溶性を大幅に上昇させており、注射剤としての使用可能性も開示している。しかし、ピラノース環がベンズイミダゾールの1位に連結されている誘導体のみを開示しており、ベンズイミダゾールが2-アミノ基を含む場合にも2-アミノ基への反応を避ける反応経路を採択していることが分かる。
【0010】
これらのベンズイミダゾール誘導体の中、駆虫薬として知られているアルベンダゾール、フェンベンダゾール、メベンダゾール、フルベンダゾールなどのような2-アミノベンズイミダゾール誘導体が驚くべき坑癌効果を示すことが知られるにつれ新たに関心を集めており、これらの低い水溶性及び生体利用率を向上させることができる方案についても関心が寄せられている 。
【0011】
駆虫薬で使われるアルベンダゾールとフェンベンダゾールは、ベンズイミダゾールカルバメート(benzimidazole carbamate)系の化合物であって、細胞に吸収される際に細胞壁を介して吸収されるので、ウイルス感染細胞と正常細胞に等しく吸収される。それゆえ、これらの化合物を癌細胞やウイルス感染細胞にのみ選択的に吸収させにくい。
【0012】
一方、あらゆる細胞のエネルギー源であるグルコースは、細胞のGLUTチャネルを介して吸収されるが、ウイルスに感染された細胞は正常細胞よりも多量のグルコースをエネルギー源として使用すると多くの文献に既に報告されている(参照:BMC Biology (2019) 17:59), (J Virol 89:2358 -2366.)、 (Virology. 2013;444(1-2):301-9)。その上、ウイルス感染細胞は正常細胞よりも多量のグルコースをエネルギー源として使用するために、宿主細胞のエネルギー代謝を変形させ、GLUTチャネルを正常細胞よりも活性化させてグルコースをGLUTチャネルを介して速やかに吸収してウイルス増殖をすると報告されている(参照: Mol Cancer Ther. 2012 January ; 11(1): 14-23)。
【0013】
結論的に、癌細胞及びウイルスに感染された細胞は、ブドウ糖を含む糖化合物を、正常細胞やウイルスに感染されない細胞に比べて相対的に遥かに多く吸収するとみられる。
【0014】
以上のことに鑑み、癌細胞及びウイルスに感染された細胞がブドウ糖を含む糖化合物(sugar compound)を正常細胞やウイルス感染されない細胞に比べて過量で吸収する現象を新しいベンズイミダゾール誘導体の設計に活用し、このような新しいベンズイミダゾール誘導体を簡単な工程及び経済的な費用で提供することができる方法を開発しようとし た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際特許公開WO1998/051304号公報(1998年11月19日公開)
【文献】国際特許公開WO2005/058870号公報(2005年6月30日公開)
【文献】国際特許公開WO1998/056761号公報(1998年12月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、上述した問題点を解決することができる新しいベンズイミダゾール誘導体を設計し、その簡単でかつ経済的な製造方法及びこれを用いる抗癌剤または抗ウイルス剤としての用途を提供することである。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、前述した課題に制限されなく、言及されない他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解することができるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を達成するために、本発明は下記化学式1で表される新規なベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物を提供する。
【化1】
【0019】
前記式中、
R1は炭水化物の残基であって、前記炭水化物は、アルドテトロース(例えば、エリトロース、トレオース)、アルドペントース(例えば、リボース、アラビノ-ス、キシロース、リキソース)、アルドヘキソース(例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グルオース、イドース、ガラクトース、タロース)、ケトテトロース(例えば、エリトルロース)、ケトペントース(例えば、リブロース、キシルロース)、ケトヘキソース(例えば、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、これらの異性体、酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変換、例えば、2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース)、アミノ糖(-OHが-NHに変換、例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン)、配糖体(グルコシド)、またはこれらの二糖類から選択されることができ、望ましくはグルコース、フラクトース、ガラクトース、マルトースまたはキシロースから選択されることができ、
R2及びR3は、同一又は異なって、水素または置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基またはヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリールまたはヘテロアリール基から選択される置換基で置換されることができ、及び
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-N(R2)-、-CH2-、-CH(R2)-、-CO-からなる群から選ばれることができる。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、下記化学式2で表される化合物であることができる:
【化2】
(前記式中、R
1、R
2及びXは、前記で定義されたものと同様である。)
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1または化学式2において、-NH-R
1部位が下記構造中のいずれか一つを持つことができる:
【化3】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1または化学式2において、ベンズイミダゾール部位が下記構造中のいずれか一つを持つことができる:
【化4】
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記ベンズイミダゾール-炭水化物結合体
化合物は、下記化合物の中から選択されることができる:
アルベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノマンノース;
フェンベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノマンノース;
フルベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノマンノース;
メベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノマンノース。
【0023】
前記目的を解決するために、本発明は下記化学式1aの2-アミノベンズイミダゾール化合物に炭水化物を反応させることを特徴とする、下記化学式1で表されるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物の製造方法を提供する。具体的に、本発明は化学式1aの2-アミノベンズイミダゾール化合物の2-アミノ基に炭水化物のアルデヒド基またはケトン基を反応させてイミン結合を形成させ、炭水化物部位が環化され、化学式1で表されるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物が製造されることができる:
【化5】
(前記化学式1及び1a中、R
1、R
2、R
3及びXは、前記で定義されたものと同様である。)
【0024】
前記目的を解決するために、本発明は前記化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物を含む医薬組成物を提供する。
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、微小管の形成を抑制して炭水化物、望ましくはブドウ糖を含んだ糖類(sugar compound)の吸収を抑制することができる。
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、坑癌または抗ウイルス活性を示すことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、坑癌または抗ウイルス活性を有する新規なベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物及びその製造方法が提供される。
本発明の効果は前記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むことに理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】GLUTチャネルでグルコース吸収を減少させてウイルス増殖を抑制することを概念的に示す模式図である。
【
図2】癌細胞株の成長抑制効果を示す図であって、肺癌細胞株での毒性試験(24時間)の結果である。
【
図3】癌細胞株の成長抑制効果を示す図であって、肺癌細胞株での毒性試験(72時間)の結果である。
【
図4】正常細胞株での細胞生存率を示す図であって、正常細胞株での毒性試験(72時間)の結果である。
【
図5】実施例1-Aで製造されたアルベンダゾール-グルコース結合体化合物の1H-NMRスペクトラムである。
【
図6】実施例1-Bで製造されたフェンベンダゾール-グルコース結合体化合物の1H-NMRスペクトラムである。
【
図7】実施例2-Aで製造されたフルベンダゾール-グルコース結合体化合物の1H-NMRスペクトラムである。
【
図8】実施例2-Bで製造されたメベンダゾール-グルコース結合体化合物の1H-NMRスペクトラムである。
【発明の実施するための形態】
【0027】
本発明を詳細に説明するに先立って、本明細書で使われた用語や単語は、一般的または辞書的な意味に無条件限定して解釈してはならず、本発明の発明者が自分の発明を最良の方法で説明するために各種用語の概念を適宜定義して使用することができ、ひいてこれらの用語や単語は本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されるべきであることを理解されたい 。
【0028】
すなわち、本明細書で使われた用語は、本発明の望ましい実施例を説明するために使われるものに過ぎず、本発明の内容を具体的に限定しようとする意図で使われたものではなく、これらの用語は本発明の色々な可能性を考慮して定義された用語であるということを理解されたい。
【0029】
また、本明細書において、単数の表現は文脈上明確に他の意味を示す以外は、複数の表現を含むことができ、同様に、複数で表現されているとしても単数の意味を含むことができることを理解されたい。
【0030】
本明細書の全体に亘って、ある構成要素が他の構成要素を「含む」と記載する場合には、特に反対の意味の記載がない限り、任意の他の構成要素を除くわけではなく、任意の他の構成要素をさらに含むこともできるということを意味することができる。
【0031】
なお、以下で、本発明を説明するにあたり、本発明の要旨を無駄に乱すおそれがあると判断される構成、たとえば、従来の技術を含む公知の技術に対する詳細な説明は省略されることもできる。
【0032】
先に、本発明の理解のために本明細書で使われる用語について下記のように簡略に定義する。しかし、本発明はこれらの用語や用語の定義によって限定されない。
【0033】
用語「抗癌剤」は、癌細胞の発育や増殖を抑制する物質、またはそのような薬物を意味する。
【0034】
用語「抗ウイルス」は、ウイルスに感染された細胞の増殖を抑制することを意味し、「抗ウイルス剤」は、ウイルスに感染された細胞の増殖を抑制する物質、またはその薬物を意味する。
【0035】
用語「炭水化物」(carbohydrate)は、糖(sugar)からなる有機化合物の総称として使われる。
用語「糖化合物吸収阻害」とは、糖化合物が細胞内に吸収され、または進入することを阻害することを意味する。
用語「チューブリン(tubulin)」は、生物のほぼすべての細胞に存在する微小管(microtubule)を構成するタンパク質を意味する。
用語「微小管(microtubule)」は、チューブリンというタンパク質の重合体からなり、細胞骨格を構成し、細胞内の物質が移動する管を意味する。
【0036】
用語「細胞分裂(cell division)」は、生物における一つの母細胞が核分裂及び細胞質分裂を経て二つの細胞に分けられる現象を意味する。
次に本発明をより詳しく説明する。
【0037】
(1)ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物
本発明の第一の目的は、下記化学式1で表されるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物を提供することである:
【化6】
(前記式中、
R
1は炭水化物の残基であって、前記炭水化物は、アルドテトロース(例えば、エリトロース、トレオース)、アルドペントース(例えば、リボース、アラビノ-ス、キシロース、リキソース)、アルドヘキソース(例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グルオース、イドース、ガラクトース、タロース)、ケトテトロース(例えば、エリトルロース)、ケトペントース(例えば、リブロース、キシルロース)、ケトヘキソース(例えば、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、これらの異性体、酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変換、例えば、2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース)、アミノ糖(-OHが-NHに変換、例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン)、配糖体(グルコシド)、またはこれらの二糖類から選択されることができ、望ましくはグルコース、フラクトース、ガラクトース、マルトースまたはキシロースから選択されることができ、
【0038】
R2及びR3は、同一又は異なって、水素または置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基またはヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリールまたはヘテロアリール基から選択される置換基で置換されることができ、及び
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-N(R2)-、-CH2-、-CH(R2)-、-CO-からなる群から選ばれることができる。)
【0039】
前記化学式1の化合物は、2-アミノベンズイミダゾール構造体の2-アミノ基に炭水化物残基が結合されている形態またはベンジイミダゾール構造体の2位にアミノ化炭水化物が結合されている形態で理解されることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、前記ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、下記化学式2で表される化合物であることができる:
本発明の一実施形態によれば、前記ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、下記化学式2で表される化合物であることができる:
【0041】
【化7】
(前記式中、R
1、R
2及びXは、前記で定義されたものと同様である。)
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1または化学式2において、-NH-R
1部位が下記構造中のいずれか一つを持つことができる:
【0042】
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1または化学式2において、ベンズイミダゾール部位が下記構造中のいずれか一つを持つことができる:
【化9】
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、下記化合物の中から選択されることができる:
アルベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(プロピルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノマンノース;
フェンベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミノマンノース;
フルベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-(4-フルオロベンゾイル)-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノマンノース;
メベンダゾール-D-炭水化物結合体化合物として、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノグルコース、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノフルクトース、
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノガラクトース、及び
6-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミノマンノース。
【0045】
本発明によるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、炭水化物部分が鎖状構造及び環状構造を両方とも持っており、五炭糖及び六炭糖では熱力学的に鎖状構造の方がもっと安定するとされているが、溶液内で鎖状構造及び環状構造が平衡をなしているため、どちらか一つだけが薬効を持っているとしても、全体的な薬理学的効果には大きな影響はない。
【0046】
(2)ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物の製造方法
本発明の第二の目的は、、本発明は下記化学式1aの2-アミノベンズイミダゾール化合物に炭水化物を反応させてイミン結合を形成させることを特徴とする、下記化学式1で表されるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物の製造方法を提供する。具体的に、本発明は化学式1aの2-アミノベンズイミダゾール化合物の2-アミノ基に炭水化物のアルデヒド基またはケトン基を反応させてイミン結合を形成させ、炭水化物部位が環化され、化学式1で表されるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物が製造されることができる。
【化10】
【0047】
(前記化学式1及び1a中、R1、R2、R3及びXは、前記で定義されたものと同様である。)
【0048】
本発明の一実施形態によれば、化学式1aの2-アミノベンズイミダゾール化合物において、イミン反応を進行することができる置換基は、あらかじめ保護または遮蔽することができる。
【0049】
本発明によるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、多様な方法に製造されることができ、次にその製造方法の一例を提示する。
【0050】
本発明によるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物を製造する一例として、下記反応式1を提示することができる。
【0051】
反応式1は、アルベンダゾールまたはフェンベンダゾールの前駆体である6-アルキルチオ-2-アミノベンズイミダゾールの2-アミノ基にD-グルコース単位を結合させる反応を示す。
【化11】
【0052】
反応式1において、アミノベンズイミダゾールの2-アミノ基をD-グルコース(直鎖状(open chain form))のアルデヒド基と反応させてイミン結合を形成させることでベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物、すなわちベンズイミダゾール-D-グルコース(直鎖状)結合体化合物を製造する。
【0053】
前記ベンズイミダゾール-D-グルコース(直鎖状)結合体化合物は熱力学的に安定した環型ベンズイミダゾール-D-グルコース(環状(cyclic form))に変換されることができる。
【0054】
本発明によるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物を製造するまた他の例として、下記反応式2を提示することができる。
【0055】
反応式2は、フルベンダゾールまたはメベンダゾールの前駆体である6-アルキルカルボニル-2-アミノベンズイミダゾールの2-アミノ基にD-グルコース単位を結合させる反応を示す。
【0056】
【0057】
前記反応式1及び2で結果物として得られたベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、通常の方法で単離及び/または精製した後、分光学的手法(例えば、1H-NMR)などで確認できる。
【0058】
(3)ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物の薬理学的効果及び用途
本発明の第三の目的は、前記化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物を含有する医薬組成物または薬理学的組成物を提供することである。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、微小管の形成を抑制して炭水化物、望ましくはブドウ糖を含む糖類(sugar compound)の吸収を抑制する薬理学的効果を示すことができるので、グルコースを含む炭水化物の摂食障害または代謝障害を活用することができる疾病の治療に有用な薬理学的組成物が提供されることができる。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、坑癌または抗ウイルス活性を示すので、坑癌または抗ウイルス活性を有する医薬組成物が提供されることができる。
【0061】
本発明の特徴中の一つは、ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物中の一つであるフェンベンダゾール-グルコース化合物(FB-G)は、フェンベンダゾールにグルコースが結合された形態で細胞に吸収される時に、この化合物に結合されたグルコースによって細胞壁ではないGLUTチャネルを通じて吸収されるように設計された。GLUTチャネルは正常細胞よりも癌細胞やウイルス感染細胞で多く活性化されていると知られている。特に、正常細胞よりも癌細胞で1000倍程度GLUTチャネルを形成すると報告されている。本発明によるベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、正常細胞よりもGLUTチャネルが活性化された癌細胞及びウイルス感染細胞に集中的に吸収されることと見込まれる(参照: L. Quan et al. / Journal of Molecular Structure 1203 (2020) 127361)。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物が細胞壁ではないGLUTチャネルを介して吸収される薬理学的組成物が提供される。
【0063】
本発明による化学式1のベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物が抗ウイルス活性を示すことは、次のように説明されることができる。
【0064】
ウイルスとは、細菌よりも小さくて細菌ろ過器(0.22μm)によってもろ過できない微粒子(平均0.1μm以下)であって、生存に必要な物質として核酸(DNAまたはRNA)と少数のタンパク質のみを持っていて宿主に依存して生きて行く生命体であり、人体に感染されればウイルス性疾患を起こしたりする。
【0065】
ウイルスは大部分の性質が細菌とは異なり、一般的な抗生剤ではウイルス増殖が抑制されない。ウイルスによって惹起される疾病に対する治療剤であって、体内に侵入したウイルスの作用を弱化または消滅させる薬を抗ウイルス治療剤といい、ウイルス感染症は既存の抗生剤では治療しにくいため、抗ウイルス治療剤で治療するしかない。
【0066】
現在開発されて使用されている抗ウイルス製剤は、ウイルスの増殖過程を抑制、つまりウイルスに感染された細胞内ウイルス増殖速度を抑制し、窮極的にウイルスに感染された細胞が増えることを抑制して体内免疫体系がウイルスに感染された細胞を攻撃することで除去が可能な水準以下にウイルスの増殖過程を抑制する薬物である。
【0067】
ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス製剤は、細胞内でウイルスの増殖過程中の特定の段階を阻害してウイルス増殖を抑制して治療する薬物である。
【0068】
抗ウイルス剤は、治療対象疾患群によって、インフルエンザ治療薬、ヘルペス治療薬、B型肝炎治療剤、C型肝炎治療剤、エイズ治療薬などに分けられ、薬物の特性に応じて多くの疾患に使われたりする。
【0069】
インフルエンザ治療薬として使われる抗ウイルス剤は、インフルエンザA及びインフルエンザBウイルス感染の治療に使われるタミフル(R)、リレンザロタディスク(R)、 ペラミビル(R)などが代表的である。
【0070】
ヘルペス治療剤として、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)及び水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus、VZV)感染の治療に使われる抗ウイルス剤は、ゾビラックス(R)、バルトレックス(R)、ファムビル(R) 、オキュフリジン(OcuFridine(R))などが代表的である。
【0071】
C型肝炎治療剤は、C型肝炎ウイルスの増殖を抑制して疾病の進行を遅らせる薬物である。長い間免疫体系を増強させるインターフェロン注射薬とリバビリンとの併用療法が使用されてきたが、比較的最近に直接作用型抗ウイルス剤(direct acting antivirals、DAA)が開発されて服用薬だけで治療が可能になっており、ビラミド(R)、エクスビエラ (R)、 ソバルディ(R)、ダクルインザ(R)、 ハーボニー (R)などが代表的である。
【0072】
エイズ治療薬として、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖を抑制して疾病の進行を遅らせる薬物は、3種以上の薬剤を同時に服用するカクテル療法を用いて耐性発現を防止し、コンビビル(R)、 カイベクサ(R)、 ツルバダ(R)、 インテレンス(R)などが代表的である。
【0073】
その他抗ウイルス剤として、ヒトの免疫反応を増強させたり調節したりすることでウイルスの増殖を抑制する薬物があるが、感染時兔疫細胞で生産されて分泌される物質であって、抗ウイルス効果および免疫調節能を有しており、ロフェロンA(R) 、イントロンA(R)、 ペガシス(R)、アルダラ(R)などが代表的である(参照:薬学情報院(Korea Pharmaceutical Information Center))。
【0074】
しかし、現在までウイルス感染を成功的に治療する抗ウイルス製剤の種類や数が非常に貧弱であるため、ほとんどのウイルス感染症は患者の免疫機能によって自ら治癒することを期待する状況である(Rider et al., 2011 )。
【0075】
ウイルスに感染された細胞内ウイルス増殖速度を抑制して、窮極的にウイルスに感染された細胞が増えることを抑制して、体内免疫体系がウイルスに感染された細胞を攻撃して除去が可能な水準以下にウイルスの増殖過程を抑制する薬物の開発が急がれている実情である。
【0076】
本発明のメリットの一つは、本発明による新規なベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物が正常細胞よりも主に癌細胞及びウイルス感染細胞にのみ吸収され、それから従来のベンズイミダゾール化合物誘導体の公知の特性である微小管を形成するチューブリンに結合して、微小管の形成を妨害して細胞分裂を阻害し、これによって細胞エネルギー源であるグルコースを含む炭水化物(carbohydrate)の吸収を遮断させることで、癌細胞及びウイルス感染細胞の死滅を効果的に誘導することができるという点である。
【0077】
したがって、本発明による新規なベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物は、主に癌細胞及びウイルス感染細胞に集中的に吸収されるので、正常細胞には毒性を最小化できるように設計されているのみならず、癌及びウイルス感染治療のための坑癌及び抗ウイルス剤化合物として有用に使われることができることと期待される。
【発明を実施するための形態】
【0078】
次に、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されない。下記の実施例は本発明の範囲内で当業者によって適切に修正、変更できる。
【0079】
【0080】
前記反応式によってアルベンダゾール-グルコース結合体化合物を製造したし、反応手続き及び条件は文献(Gokhale, Kearney, and Kirsch, AAPS PharmSciTech, Vol. 10, No. 2, June 2009)に記載された方法を参照した。
【0081】
塩酸溶液(pH3.45)に1.2mMのアミノアルベンダゾール(CAS#80983-36-4)(市販名:Albendazole amine)及び0.5Mグルコースを添加して反応混合物を製造し、テフロンコーティングされたゴム栓付バイアル瓶にて40±1℃で反応させた後、アセテート緩衝液(0.5M、pH5.8)で希釈して反応を終決させた。
【0082】
溶媒を除去し、ジクロロメタン及び10%メタノールを用いてコラムクロマトグラフィーで精製して、アルベンダゾール-グルコース結合体化合物を62%の収率で得た。
【0083】
前記生成物を1H-NMRスペクトラムを分析してアルベンダゾール-グルコース結合体化合物の生成を確認した(
図5参照)。
【化14】
【0084】
アミノアルベンダゾールの代わりにアミノフェンベンダゾール(CAS#1448346-29-9)(塩酸塩の形態)を使用するとを除き、実施例1-Aと同様に進行し、ベンズイミダゾール-炭水化物結合体化合物としてフェンベンダゾール-グルコース結合体化合物を66%の収率で得た。
前記生成物を1H-NMRスペクトラムを分析してフェンベンダゾール-グルコース結合体化合物の生成を確認した(
図6参照)。
【0085】
【0086】
前記反応式に従って、フルベンダゾール-グルコース結合体化合物を製造したし、反応手続き及び条件は文献(Gokhale, Kearney, and Kirsch, AAPS PharmSciTech, Vol. 10, No. 2, June 2009)に記載された方法を参照した。
【0087】
塩酸溶液(pH3.45)に1.2mMのアミノフルベンダゾール(CAS#82050-13-3)(市販名:2-Aminoflubendazole)及び0.5Mグルコースを添加して反応混合物を製造し、テフロンコーティングされたゴム栓付バイアル瓶にて40±1℃で反応させた後、アセテート緩衝液(0.5M、pH5.8)で希釈して反応を終決させた。
【0088】
溶媒を除去し、ジクロロメタン及び10%メタノールを用いてコラムクロマトグラフィーで精製して、フルベンダゾール-グルコース結合体化合物を68%の収率で得た。
【0089】
前記生成物を1H-NMRスペクトラムを分析してフルベンダゾール-グルコース結合体化合物の生成を確認した(
図7参照)。
【化16】
【0090】
アミノフルベンダゾールの代わりにアミノメベンダゾール(CAS#52329-60-9)を使用したことを除き、実施例2-Aと同様に進行し、メベンダゾール-グルコース結合体化合物を66%の収率で得た。
【0091】
前記生成物を1H-NMRスペクトラムで分析してメベンダゾール-グルコース結合体化合物の生成を確認した(
図8参照)。
【0092】
試験例1:癌細胞株成長抑制試験
ヒト肺癌細胞株A549、子宮頸部癌細胞株Hela、大膓癌細胞株HT-29は、韓国細胞株銀行(KCLB、ソウル、韓国)から分譲を受けて、培養培地で培養した。
【0093】
DMEM、10%培養フラスコを使用して37℃で5%CO2を含有する加湿された細胞培養インキュベータ内で牛胎児血清(FBS)、0.1mMMEM非必須アミノ酸(NEAA)、2mML-グルタミン、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンをKCLBによって提供された指針に従い、2~3日ごとにトリプシン処理して細胞を継代培養した。培養物が80~90%合流度になるまで培養して癌細胞株成長抑制実験のために細胞を培養フラスコへ連続的に移した。
【0094】
試験されるべき癌細胞株(ヒト肺癌細胞株A549、子宮頸部癌細胞株Hela及び大膓癌細胞株HT-29)を96ウェルプレートにウェル当たり約10000個の細胞で接種(seeding)した。24時間後、下記表1に示した3つの化合物をそれぞれ7つの濃度でそれぞれのウェルに添加して、72時間の間インキュベーションした。
【0095】
【0096】
前記表1において、アミノフェンベンダゾール及びドキソルビシンは市販される化合物を使用し、フェンベンダゾール-ブドウ糖結合体は、実施例1-Bで製造されたものを使用した。
【0097】
インキュベーション後、培地を捨ててそれぞれのウェルで細胞生存率をWST-8細胞生存力分析キット(Quanti-MaxTM、BIOMAX)を用いて、製造社から指示された手続きによって測定した。
【0098】
分析は生存細胞の脱水素酵素がテトラゾリウム塩を分解してホルマザン(formazan)を生成する原理を利用したし、これを通じて生きている細胞を定量的に評価した。
【0099】
還元されたホルマザン塩(formazan salt)は、細胞培養培地に可溶性であり、ホルマザンの量は生存細胞の数に正比例する(参照:Slater, T. et al. (1963) Biochem. Biophys. Acta 77:383; van de Loosdrecht, A.A., et al. J. Immunol. Methods 174: 311-320, 1994. Alley, M.C., et al.; and Cancer Res. 48: 589-601, 1988.)
【0100】
本試験例で行われた癌細胞株成長抑制試験の結果は、
図2及び
図3に示されている。
【0101】
図2は、肺癌細胞株での毒性試験(24時間)の結果であり、
図3は肺癌細胞株での毒性試験(72時間)結果である。
【0102】
試験例2:正常細胞株での毒性試験
【0103】
正常肺細胞株MRC-5及び正常結腸CCD-18Co細胞株は、韓国細胞株銀行(KCLB、ソウル、韓国)から分譲を受けて培養培地で培養した。
【0104】
DMEM、10%培養フラスコを使用して37℃で5%CO2を含有する加湿された細胞培養インキュベータ内で牛胎児血清(FBS)、0.1mMMEM非必須アミノ酸(NEAA)、2mML-グルタミン、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンをKCLBによって提供された指針に従い2~3日ごとにトリプシン処理して細胞を継代培養した。培養物が80~90%合流度になるまで培養して癌細胞株成長抑制実験のために細胞を培養フラスコへ連続的に移した。
【0105】
正常細胞株(MRC-5及びCCD-18Co)を96ウェルプレートにウェル当たり約10000個の細胞で接種した。24時間後、下記表2に示した3つの化合物をそれぞれ7つの濃度でそれぞれのウェルに添加し、72時間の間インキュベーションした。
【0106】
【0107】
試験例1と同様に、正常細胞株での細胞生存率及び分析を行い、正常細胞株での毒性試験(72時間)の結果は
図4に示した。
【0108】
下記表3は、アミノフェンベンダゾールとフェンベンダゾール-ブドウ糖結合体化合物の試験結果をドキソルビシンと対比して相手評価したことを示す。
【0109】
【0110】
前記表3から分かるように、従来の技術のアミノフェンベンダゾールは、ドキソルビシンに比べて正常細胞株毒性試験結果は非常に優れていたが(AAA)、癌細胞株成長抑制試験結果は普通(C)であったし、反面、本発明によるフェンベンダゾール-ブドウ糖結合体は、ドキソルビシンに比べて癌細胞株成長抑制試験及び正常細胞株毒性試験が二つとも非常に優れている(AAA)ということが確認される。
【0111】
今まで本発明による新規なベンズイミダゾール誘導体、その製造方法及びその抗癌剤または抗ウイルス剤としての用途に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内では多様な実施の変形が可能であることは自明である。
【0112】
したがって、本発明の範囲は、前述の実施例に限って定められるべきではなく、後述する特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等なものなどによって定めなければならない。
【0113】
すなわち、前述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なのではないものと理解されなければならず、本発明の範囲は詳細な説明よりは後述される特許請求の範囲によって規定され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、ならびに、その等価概念から導出されるすべての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は医薬、医療及び保健産業において利用可能性がある。