(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】冷却手段を備えた電子機器およびその冷却方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20231031BHJP
H05K 7/18 20060101ALI20231031BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20231031BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20231031BHJP
H01L 23/34 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H05K7/18 K
G06F1/20 D
G06F1/20 B
H01L23/46 D
H01L23/34 D
(21)【出願番号】P 2021016268
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 達夫
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-123336(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123119(WO,A1)
【文献】特開2009-027071(JP,A)
【文献】特開2007-048917(JP,A)
【文献】特開2017-199786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 7/18
G06F 1/20
H01L 23/467
H01L 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筐体と、
前記筐体内に配置される、発熱部品および冷却手段と、
前記発熱部品の温度を計測する温度計測手段と、
を含む電子機器であって、
前記冷却手段は、前記発熱部品の温度が所定値以上である場合には、前記発熱部品を冷却し、前記発熱部品の温度が所定値未満である場合には、前記筐体の内壁面を冷却する構成を有
し、
前記電子機器は、さらに、前記冷却手段の設置角度を変更可能な変更手段を有し、
前記変更手段により、前記発熱部品の温度に応じて、前記冷却手段の設置角度を変更することで、冷却対象を変更する、ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記冷却手段が、ファンを含み、
前記変更手段が、前記発熱部品の温度が所定値以上である場合には、前記ファンの向きを前記発熱部品方向に変更し、前記発熱部品の温度が所定値未満である場合には、前記ファンの向きを前記筐体の内壁面方向に変更する、請求項
1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記発熱部品の温度が所定値未満である場合に、前記ファンが、前記筐体内部の上壁面方向に向けられる、請求項
2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記冷却手段が、前記筐体の側壁面に近接した位置に配置される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
金属製の筐体内に、発熱部品と、冷却手段とが配置された電子機器の冷却方法であって、
前記冷却手段によって、前記発熱部品の温度が所定値以上である場合には、前記発熱部品を冷却し、前記発熱部品の温度が所定値未満である場合には、前記筐体の内壁面を冷却
し、
前記電子機器は、さらに、前記冷却手段の設置角度を変更可能な変更手段を有し、
前記変更手段により、前記発熱部品の温度に応じて、前記冷却手段の設置角度を変更することで、冷却対象を変更する、ことを特徴とする電子機器の冷却方法。
【請求項6】
前記冷却手段が、ファンを含み、
前記発熱部品の温度が所定値以上である場合には、前記ファンの向きを前記発熱部品方向に変更し、前記発熱部品の温度が所定値未満である場合には、前記ファンの向きを前記筐体の内壁面方向に変更する、請求項
5に記載の電子機器の冷却方法。
【請求項7】
前記発熱部品の温度が所定値未満である場合に、前記ファンが、前記筐体内部の上壁面方向に向けられる、請求項
6に記載の電子機器の冷却方法。
【請求項8】
前記冷却手段が、前記筐体の側壁面に近接した位置に配置される、請求項
5~
7のいずれか一項に記載の電子機器の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却手段を備えた電子機器およびその冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の筐体内に発熱部品が配置された電子機器(例えば、ルータなどの通信機器)において、発熱部品の発熱により、温度上昇した筐体表面に使用者が接触することで、低温やけど等の事故が発生する場合があった。
【0003】
特許文献1では、筐体内に排気ファンを取付け、この排気ファンによって筐体内の空気を外部に排気することで、電子機器の冷却を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、筐体表面の冷却が不十分な場合があり、上記事故を予防する観点から、より優れた冷却方法および冷却手段を備えた電子機器の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で筐体表面の温度上昇を防ぐことができる冷却手段を備えた電子機器、およびその冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷却手段を備えた電子機器は、金属製の筐体と、前記筐体内に配置される、発熱部品および冷却手段と、前記発熱部品の温度を計測する温度計測手段と、を含み、前記冷却手段は、前記発熱部品の温度が所定値以上である場合には、前記発熱部品を冷却し、前記発熱部品の温度が所定値未満である場合には、前記筐体の内壁面を冷却する構成を有する。
【0008】
また、本発明の電子機器の冷却方法は、金属製の筐体内に、発熱部品と、冷却手段とが配置された電子機器の冷却方法であり、前記冷却手段によって、前記発熱部品の温度が所定値以上である場合には、前記発熱部品を冷却し、前記発熱部品の温度が所定値未満である場合には、前記筐体の内壁面を冷却する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成で筐体表面の温度上昇を防ぐことができる冷却手段を備えた電子機器、およびその冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る冷却手段を備えた電子機器の一実施形態において、発熱部品の温度が所定値未満の場合の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る冷却手段を備えた電子機器の一実施形態において、発熱部品の温度が所定値以上の場合の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述したように、金属筐体を有する通信機器などの電子機器において、機器の使用時等に、筐体表面の温度上昇により低温やけど等の問題が生じる場合があり、これまで、製品に注意喚起等の記載を行う必要があった。特許文献1に記載の方法では、筐体表面の冷却が不十分な場合があり、更なる技術の開発が求められていた。
【0012】
本発明に係る冷却手段を備えた電子機器(以降、本電子機器と称することがある)は、発熱部品(例えば、ルータなどにおける主要装置)の温度に応じて、冷却箇所を変更することで、より効率的に筐体表面の冷却を行うことができる。したがって、本電子機器を用いることで、これまで問題とされてきた使用者による低温やけど等の事故の発生を容易に防止できる。
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0014】
<電子機器>
本電子機器は、金属製の筐体と、前記筐体内に配置される、発熱部品、冷却手段および温度計測手段とを備える。また、本電子機器は、前記冷却手段の設置角度を変更可能な変更手段を有していてもよく、当該変更手段は、発熱部品の温度に応じて、冷却手段の設置角度を変更することで、冷却対象を変更できる。
【0015】
ここで、
図1および
図2に、本電子機器の一実施形態を示す概略図を示す。
図1は、発熱部品の温度が所定値未満の場合の本電子機器の構成を示すものであり、
図2は、発熱部品の温度が所定値以上の場合の本電子機器の構成を示すものである。これらの図を用いて本電子機器の構成をより詳しく説明する。
【0016】
図1および
図2において、金属製の筐体は符号10で表される。筐体10の材質は、金属であれば特に限定されず、通常の電子機器の筐体に用いられる材質を適宜使用できる。筐体10の内部は、(筐体の)上壁面1、(筐体の)側壁面2および不図示の下壁面で囲まれた構造を有している。これらの図では、本電子機器の一部のみが記載されており、他の部分に関しては記載を省略している。
【0017】
発熱部品(不図示)は、使用時などに発熱する本電子機器の主要装置であり、筐体10内に配置される。発熱部品は用いる電子機器に応じて、適宜設定できる。
【0018】
温度計測手段(不図示)は、発熱部品の温度を計測するものであり、電子機器に用いられる通常のものを適宜使用でき、例えば、温度センサなどを用いることができる。
【0019】
冷却手段(ファン)3は、発熱部品および筐体表面の温度上昇を抑制し、冷却するために、筐体内部に配置されるものである。排気冷却ファンは、主にファンが向けられた部分の空気を、排気ダクト7などを介して、
図1および
図2に示すように、ファン内に取り込んで排出する。
【0020】
本電子機器では、冷却手段は、発熱部品の温度が所定値以上である場合には、発熱部品を冷却し、発熱部品の温度が所定値未満である場合には、筐体の内壁面を冷却する構成を有する。発熱部品における上記所定温度(所定値)は、適宜設定でき、特に限定されないが、例えば、30℃以上とすることができる。
【0021】
変更手段は、発熱部品の温度が所定値以上である場合には、ファンの向きを発熱部品方向に変更し、発熱部品の温度が所定値未満である場合には、ファンの向きを筐体の内壁面方向に変更することができる。
【0022】
ここで、これらの図では、変更手段は、固定用ばね4、回転用軸5および電気スイッチ6を含む構成となっている。電気スイッチ6は、発熱部品の温度が所定値以上になると、
図1に示すように、電源がONにされ、ファン3の角度(設置角度)を変更させ、具体的には、ファン3の角度を筐体の内壁面(
図1では上壁面1)方向に変更する。そして、発熱部品の温度が所定値未満になると、
図2に示すように、電気スイッチ6の電源がOFFにされ、固定用ばね4と回転用軸5との作用により、ファン3は、元の角度、すなわち、発熱部品方向に戻る。
【0023】
なお、使用者が誤って触れる可能性があるのは、筐体の上部であることが多いため、発熱部品の温度が所定値未満である場合に、ファンは、筐体内部の上壁面方向に向けられ、冷却を行うことが好ましい。また、冷却手段は、冷却手段を駆動する観点から、筐体の側壁面に近接した位置に配置することが好ましい。具体的には、筐体内の筐体側壁面に近接した、側壁面の上側、中央部、下側などに配置することができる。
【0024】
このように、本電子機器は、強制空冷する通信装置などの内部に設置するファンの実装向きを可変させることにより、筐体表面(特に上壁面)の温度上昇を優先的に低減させる、すなわち、筐体放熱させることにより、使用者の低温やけどなどの事故を容易に防止できる。
【0025】
<電子機器の冷却方法>
本発明に係る電子機器の冷却方法(以下、本冷却方法と称することがある)は、金属製の筐体内に、発熱部品(主装置)と、冷却手段とが配置された電子機器の冷却方法である。ここで、本冷却方法では、冷却手段によって、発熱部品の温度が所定値以上である場合には、発熱部品を冷却し、前記発熱部品の温度が所定値未満である場合には、前記筐体の内壁面を冷却する。
【0026】
上述したように、本冷却方法では、冷却手段が、ファンを含み、発熱部品の温度が所定値以上である場合には、ファンの向きを前記発熱部品方向に変更し、発熱部品の温度が所定値未満である場合には、ファンの向きを筐体の内壁面方向に変更する。特に、発熱部品の温度が所定値未満である場合に、ファンを、筐体内部の上壁面方向に向けることで、より使用者の低温やけどなどを容易に防止できる。
【0027】
なお、本冷却方法では、ルータなどの通信機器の金属製の筐体内部の側壁面近傍に
図1および
図2に示すような、物理的に取付け角度が変更可能な機構を有する排気冷却用のファンを設置することが好ましい。通常(発熱部品に発熱が生じていない場合など)は、
図1に示すように、回転用軸5に取付けられたファン3を、固定用ばね4および電気スイッチ6の作用により、筐体10の上壁面1の少なくとも一部を優先的に冷却するようにする。このように、通常時は、筐体表面を直接冷却し、筐体の表面温度を低下させる。この際、ファン3は、発熱部品用の排気ダクト7に向けられずに、発熱部品用の排気ダクト方向からの排気は優先されない。
【0028】
そして、発熱部品等に搭載している温度計測手段(温度検出回路)により、発熱部品の温度が設定値(所定値)以上に上昇した場合には、以下のような動作が行われる。すなわち、
図2に示すように、電気スイッチ6の動作により回転用軸5に取り付けられたファン3の向きを、発熱部品用の排気ダクト7の方向に変えることにより、排気ダクト7を通じて排気を行い、発熱部品の温度を優先的に設定値未満に低下させる。そして、発熱部品の温度が温度計測手段の設定値未満となった場合に、再度、
図1に示すように、固定用ばね4及び電気スイッチ6の作用によりファン3の取付け角度を斜め方向、すなわち、筐体の内壁面方向(具体的には、上壁面方向)に傾かせる。これによって、筐体表面の排気を優先的に行い放熱させ、筐体の表面温度を定常的に低下させることができる。このように、本冷却方法では、金属筐体の表面温度を優先的に低下させるため、温度センサなどの温度計測手段により設定した値以上または未満になった場合にファンの傾きを制御する。
【0029】
このように、冷却手段を備えた本電子機器は、ルータなどの通信装置に適用することができる。しかしながら、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 (筐体の)上壁面
2 (筐体の)側壁面
3 冷却手段(ファン)
4 固定用ばね
5 回転用軸
6 電気スイッチ
7 排気ダクト
10 筐体