(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】高周波加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/54 20060101AFI20231031BHJP
H05B 6/52 20060101ALI20231031BHJP
H05B 6/50 20060101ALI20231031BHJP
G01N 25/00 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
H05B6/54
H05B6/52
H05B6/50
G01N25/00 Z
(21)【出願番号】P 2021089863
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390024394
【氏名又は名称】山本ビニター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰司
(72)【発明者】
【氏名】井口 健治
(72)【発明者】
【氏名】塩田 智大
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-012547(JP,A)
【文献】特表2004-534200(JP,A)
【文献】特開昭60-089095(JP,A)
【文献】特開昭59-088906(JP,A)
【文献】特開昭58-007788(JP,A)
【文献】特開2019-067751(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239995(WO,A1)
【文献】特開平09-105526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/54
H05B 6/52
H05B 6/50
G01N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が高さ方向に3段に仕切られた筐体と、
中段部に配置され、互いに対向配置された上電極板と加熱対象物を載置する下電極板とを備える加熱部と、
下段部に配置され、前記下電極板を昇降させる昇降部と、
上段部に配置され、前記上下電極板の間に高周波電力を供給する電源部とを備え
ると共に、
前記上電極板を挟んで水平面上で対向配置され、前記下電極板の上昇中に前記下電極板に載置された前記加熱対象物の外形における最大高さの存在を遠隔的に検出する高さ検出部と、
前記昇降部に連結され、前記下電極板の昇降量を計測する電極間隔計測部とを備え、
前記電極間隔計測部は、前記高さ検出部が前記最大高さを検出したタイミングに基づいて前記上電極板と前記下電極板との間隔を計測する高周波加熱装置。
【請求項2】
前記上電極板と前記下電極板とは板面サイズが同一である請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
重量検出部を備え、
前記昇降部は、前記下電極板の下部に設けられ、
前記重量検出部は、前記昇降部と前記下電極板との間に介設された請求項1
又は2に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
前記下電極板と前記筐体との間にインダクタンス素子を介設した請求項1~
3のいずれかに記載の高周波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向電極間に配置した加熱対象物を誘電加熱する高周波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波誘電加熱を適用して、-25℃~-15℃程度に冷凍された塊状の冷凍食品を-5℃~-1℃程度まで解凍する解凍装置が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の解凍装置は、略直方体の筐体を備え、筐体内に、間仕切り壁によって上下方向に3段に仕切られた収納室が形成されている。中段の収納室には上下方向に対向して冷凍食品を挟む上下電極が配設され、下段の収納室には上下電極に高周波電力を供給する電源回路、発振器、整合回路及び制御部等を含む電力供給部が配設され、上段の収納室には上電極を昇降させる昇降機構が設けられている。また、中段の収納室には整合用の可変インダクタンス素子が配置され、下段の電源回路で生成された高周波電力を、可変インダクタンス素子を含む給電回路を経て上電極の上面側に導くようにしている。さらに、筐体の正面中段部位には、冷凍食品の出し入れを行う開閉可能なドアが設けられている。
【0003】
かかる構成を備えた解凍装置で解凍処理を実行する場合、まずドアを開いて加熱対象である塊状の冷凍食品を下電極の上面に載置してドアを閉め、昇降機構によって上電極が降下させる。昇降機構には、降下中に冷凍食品の上面に接することで冷凍食品の高さを検知する検知機構が備えられ、併せてエンコーダ等を利用して上下電極間隔を計測する。また、冷凍食品の重量は自動で乃至マニュアルで計測可能にしている。これらの検出結果及び食品種類と解凍条件設定テーブルの内容とを参照することで、高周波電力のレベル及び給電時間が設定されて好適な解凍処理が実行されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の解凍装置は、発振器や整合器等の電力供給部が下段の収納室に配置される構成であるため、上電極に高周波電力を供給する給電回路を、中段の仕切り壁の開口を経て、下段から中段の上方位置まで導く構成が必要となり、構成が複雑であった。また、電極等の水洗いを含む清掃作業では、前記開口を経て下段の電力供給部に水が入り込まないように注意を要していた。また、下段の収納室に嵩さのある電力供給部を配置した構成であるため、中段の収納室のドア、すなわち加熱対象物の出し入れのためのパスラインが高めとなり、作業者に適した高さに設定されない場合もあった。さらに、中段の収納室に給電回路が介在される構造であるため、加熱対象物の出し入れは筐体の正面のみから行う構造になっていた。
【0006】
また、特許文献1に記載の解凍装置は、上電極が昇降される構成であるため、陰極側となる下電極が相対的に大きく、筐体との距離がより近いため、電界分布が下電極側で分散気味となり、加熱状態が上下方向で多少不均一となっていた。さらに、冷凍食品の高さをリミットスイッチとの接触によって検知するものであるため、構造が複雑で、かつ冷凍食品がむき出しの場合には接触に伴う衛生上の問題もあり得る。加えて、上電極と電力供給部の整合器とが離れているためインダクタンス素子が長尺になるため、適用周波数が低域側に制限的となる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、簡易かつ作業性の高い構成を採用しつつ、電極間方向に対して均一加熱を行う高周波加熱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る高周波加熱装置は、内部が高さ方向に3段に仕切られた筐体と、中段部に配置され、互いに対向配置された上電極板と加熱対象物を載置する下電極板とを備える加熱部と、下段部に配置され、前記下電極板を昇降させる昇降部と、上段部に配置され、前記上下電極板の間に高周波電力を供給する電源部とを備えたものである。
【0009】
本発明によれば、電源部を上段部に配置したので上電極板と近接して設置でき、それによって配線が簡易となる。また、電源部と上電極板との配置を短寸法にできるので、インダクタンス成分を抑制でき、より高い周波数の高周波を適用することが容易となり、汎用性に富むものとなる。しかも、周波数を高くすると(例えば13.56MHzに代えて27MHz及び40MHzへ変更)、解凍効率が高まる。加えて、電源部を上段部に配置し、下段部に昇降に関連する機構部を配置したので、下段部に電源部を配置した従来構成とは異なり中段部の水洗いを含む洗浄作業が容易となる。また、嵩のある電源部を上段部に配置したので下段部の高さをより低く設計することが可能となり、加熱対象物の出し入れのためのパスラインが作業者に適した高さに設定可能となる。さらに、上下電極板を付け替えることが可能な態様では、上電極板を大きく、下電極板を小さくすることや、上電極板を小さく、下電極板を大きくすることで上下の温度バランスがコントロール可能となる。したがって、簡易かつ作業性の高い構成で電極間方向に対して均一加熱が可能となる。
【0010】
また、本発明は、前記上電極板と前記下電極板とは板面サイズが同一であることを特徴とする。この構成によれば、上下電極板の方向で電界分布が均一化される。
【0011】
また、本発明は、前記上電極板を挟んで水平面上で対向配置され、前記下電極板の上昇中に前記下電極板に載置された前記加熱対象物の外形における最大高さの存在を遠隔的に検出する高さ検出部を備えたものである。この構成によれば、高さ検出部は、上電極板より多少下方位置で水平面上に対向配置されて加熱対象物の外形について遠隔的な検出を行う。このように加熱対象物と非接触で計測を行うので衛生的となる。
【0012】
また、本発明は、前記昇降部に連結され、前記下電極板の昇降量を計測する電極間隔計測部を備え、前記電極間隔計測部は、前記高さ検出部が前記最大高さを検出したタイミングに基づいて前記上電極板と前記下電極板との間隔を計測するものである。この構成によれば、前記上電極板と前記下電極板との間隔が非接触で計測できる。
【0013】
また、本発明は、重量検出部を備え、前記昇降部は、前記下電極板の下部に設けられ、前記重量検出部は、前記昇降部と前記下電極板との間に介設されたものである。この構成によれば、昇降部を利用して重量検出部を簡易に配置することができる。
【0014】
また、本発明は、前記下電極板と前記筐体との間にインダクタンス素子を介設したものである。この構成によれば、上下電極板の上流と下流との整合のバランスが細やかになって、より効率的な給電が図れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易かつ作業性の高い構成で電極間方向に対して均一加熱が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る高周波加熱装置の一実施形態である高周波解凍装置を示す外観図で、(A)は正面図、(B)は右上前方斜視図である。
【
図2】高周波解凍装置の正面側を開放した状態の内部概略構成を示す正面図である。
【
図3】高周波解凍装置の右側面側を開放した状態の内部構成を示す右側面図である。
【
図4】高周波解凍装置の筐体側壁を除いた、主に電源部の概略構成を示す左上前方斜視図である。
【
図5】高さ検出部の構成及び動作を説明する図で、(A)は塊状の冷凍食品が1個の場合の正面視の縦断面図、(B)は塊状の冷凍食品が複数個の場合の正面視の縦断面図、(C)は高さ検出部の平面視の全体構成と検出動作方法を示す図である。
【
図6】高周波解凍装置の回路及び機能部の一実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係る高周波解凍装置1を示す外観図で、(A)は正面図、(B)は右上前方斜視図である。高周波解凍装置1は、所定の外形形状、例えば、平面視で4角の位置に支柱111,112を立設した直方体形状の筐体10を有する。筐体10は、金属材で構成され、仕切り部材により上下方向3層の収納室に区分けされている。収納室は、それぞれ所要の高さ寸法を有する下段部20、中段部30及び上段部40からなる。また、筐体10の外部は、周囲の4面に配設されたカバー板11、天板12及び底板201(
図2参照)によって構成されている。
【0018】
筐体10の上段部40の正面には、例えばタッチセンサである操作部131が積層された表示部132を有するタッチパネル13が配置されている。筐体10の中段部30の対向する正面と背面には開口302が形成されている。開口302の上下半分ずつには、板状で左右に長尺のカバー303及び扉304が開閉可能に配置されている。
【0019】
さらに、筐体10の下面の4角には下方に向けて設けられたキャスタ14及び伸縮可能な脚15が対応して配置されている。脚15は、筐体移動時には下半部を押し込むなどして縮尺し、キャスタ14で作業位置まで移動させた後、脚15を元に伸長して(
図3参照)位置決めを行う。
【0020】
図2は、高周波解凍装置1の正面側を開放した状態の内部概略構成を示す正面図、
図3は、高周波解凍装置1の右側面側を開放した状態の内部概略構成を示す右側面図である。なお、
図2では、可変インダクタンス素子4131は機能的に表記している。
図2、
図3に示すように、筐体10内の下段部20、中段部30及び上段部40は、底板201及びその上方の仕切り板301,401、天板12で仕切られることで構成されている。より具体的には、下段部20は、底板201と仕切り板301との間に、中段部30は、仕切り板301と仕切り板401との間に、上段部40は、仕切り板401と天板12との間に設けられる。
【0021】
次に、各段部20,30,40内に配置される構成について、中段部30、上段部40、下段部20の順で説明する。
【0022】
まず、中段部30には、加熱部30Aとして、上下方向で対向する上電極板31及び下電極板32などが配置される。上電極板31及び下電極板32は、アルミニウム製やステンレス製などの金属材で、所定の板面形状、例えば所定サイズで同一の長方形形状を有する。同一形状を採用することで、上下方向に対する電界がより均一化されて均一加熱が可能となる。上電極板31は、仕切り板401の下面に取り付けられた所要本数の絶縁材からなる支持部材33の下端に支持されると共に、仕切り板401の中央の開口4011を経て下方に延びる給電回路311と上面で接続されている。なお、給電回路311は、板状線路でインダクタンス素子として機能する。
【0023】
また、上電極板31の高さ方向所定位置には、開口302から中段部30に投入された解凍対象となる塊状の冷凍食品Wの最大高さを検出する高さ検出部34が配置されている。なお、高さ検出部34の構成及び動作については、
図5で後述する。
【0024】
下電極板32は、その上面に冷凍食品Wが載置される。下電極板32の上面には、ステンレス製等の金属材で、板面の端縁に立直辺を有する箱型の補助電極板321が着脱可能に被せられ、冷凍食品Wの解凍時に部分的に解凍肉汁が垂れたような場合でも下電極板32自体が汚れることを防止している。
【0025】
下段部20には、下電極板32を昇降させる下電極板昇降部21を備える。本実施形態では、下電極板昇降部21は、下段部20を構成する底板201上に搭載され、仕切り板301の中央の開口3011から上方に露出して下電極板32の下面と連結している。なお、下電極板昇降部21の上端と下電極板32の下面との間には、例えば圧電材料を利用した絶縁性の重量検出部22が介設されている。重量検出部22は、下電極板32とその上面に載置される冷凍食品Wとの重量の合計を検出する。下電極板昇降部21を利用して重量検出部222を一体的に設けることで重量検出を可能にした。
【0026】
下電極板昇降部21は、一般的なアクチュエータが適用可能であり、本実施形態では、防水型で、駆動源となるモータ、互いに螺合したボールねじ及びロッドから構成され、ロッドが上方に向けて出退する公知の電動シリンダが採用される。また、電極間隔計測部23は、下電極板昇降部21内のモータの回転量から上、下電極板31,32の間隔を計測する。より具体的には、電極間隔計測部23は、モータの回転量(昇降量)を例えばロータリーエンコーダなどの回転量センサを利用して検出することによって下電極板32の下端基準位置からの高さ位置を計測し、所定高さ位置にある上電極板31との間隔を算出する。
【0027】
また、下段部20には、下電極板昇降部21の他、後述する電源部41の一部を構成する高圧トランスやシリコン整流器を含む電源回路411と、下電極板32と筐体10(アース側)との間に介設された板状の可変インダクタンス素子4131とが配置される。より具体的には
図3に示すように、可変インダクタンス素子4131は、リン青銅製等の金属材からなり、下電極板32の昇降に伴って変形することで、インダクタンスを変化させる可変型とされている。なお、可変インダクタンス素子4131としては、長さ又は幅などを可変にする形態が採用でき、またインダクタンス調整器を備えた態様でもよい。一方、本発明では、可変インダクタンス素子4131に代えて、インダクタンスを固定型とする構成乃至変化の小さい構成のインダクタンス素子を採用してもよい。
【0028】
補助電極板321及びそれより下方の各部は、防水処理乃至加工が施されて水洗いが可能にされており、清掃が容易かつ清掃効率が高い。また、最も汚れやすい補助電極板321を取り外して水洗い等が可能となる。さらに、扉304を開いた姿勢では板面が水平となるので、仕切り板301と合わせて清掃が容易となる。
【0029】
上段部40には、電源部41が配置されている。電源部41は、電源回路411、発振器412、整合器413、及び制御部414を備える。本実施形態では、上段部40の収納スペースの関係から、電源回路411は下段部20の空きスペースを利用して収納している。なお、電源回路411は、下段部20の他の配置部材と防水壁202(
図3参照)等で区切られている。
【0030】
続いて、中段部30のカバー303及び扉304について説明する。開口302は、左右の支柱111,112の間に形成され、その支柱間にカバー303が下方側から嵌め込まれている。カバー303は、扉304が開いた状態で抜き差し可能にされる。扉304は、開口302の下端で、かつ左右方向の水平軸3041によって支柱111,112の間に回動可能に支持される。扉304には、円弧状の第1リンク3042と、第1リンク3042の他端にピン3043で軸支された棒状の第2リンク3044と、第2リンク3044の他端にピン3045で軸支され、上下方向にスライド可能なスライダ4046とが、左右一対の構造として備えられている。第1リンク3042は、90度の円弧状を有し、水平軸3041回りに取り付けられている。
【0031】
正面側(
図3の左側)の扉304に着目して、その開閉動作について、
図3に示す開いた状態から閉じる場合を想定して説明する。まず、扉304を水平軸3041回りに起立させるように操作すると、第1リンク3042が
図3の時計回り方向に回動し、第2リンク3044の下端を
図3の右方向にスライドさせる。このスライド動作を受けて、第2リンク3044の上端が次第に降下する。扉304をさらに筐体10側に押し込むと、扉304は起立姿勢に達して開口302を閉じる。この状態では第1、第2リンク3042,3044の合成重心は、開口302(起立状態の扉304の重心位置)を超えて筐体10内側で作用することになり、扉304はより閉じる方向に付勢される。その結果、扉304は閉じた状態を維持する。なお、例えば第2リンク3044が外方側へ傾倒しないように規制される態様では、扉304の開成姿勢は、
図3に示すように水平までとなる。
【0032】
また、扉304を対向する正面側と背面側とに設けることで、汚染区域側の背面側の扉304を開いて冷凍食品Wを取り込み、そして、解凍処理後に、清掃区域側である正面側から取り出すことが可能となる。
【0033】
以上のように、電源部41を上段部40に配置し、下段部20に下電極板昇降部21等を配置したので、中段部30の高さ位置、すなわち扉304の高さ位置を従来に比べて下げて、作業面を作業者に合わせるように調整可能にした。また、下段部20の高さ寸法を調整し得ることにより、筐体底面とフロアラインとの間のスペースがより大きく確保でき、清掃が容易となり、かつより大型のキャスタを採用できて装置のスムーズな移動が容易となる。
【0034】
図4は、高周波解凍装置1の筐体側壁を除いた、主に電源部41の概略構成を示す左上前方斜視図である。
図4に示すように上段部40には、フレーム410を組み付けて形成された複数のブロックを備えた電源部41が搭載されている。電源部41は、左前部のブロックに外気の吸引を行うブロア部415を備え、吸気したエアを右側のブロックの発振器412を経由させて天板12側へ導き、さらに天板12の周囲の隙間121から、内部で発生した熱を外部に排出している。また、筐体10の内、下段部20の側壁部分に外部との間で適度な隙間を設けておき、そこから吸引した外気を、筒状の支柱111の側面に形成した所要数の孔1111から吸引し、上方の孔1111を経て筐体10内に導入し、隙間121から外方へ導出している。なお、
図4中の矢印Bは、気流の流れ方向を示している。このように、吸気した空気を装置の上面から上方に排出するようにしたので、装置筐体の左右側面を作業場の壁面及び他の装置に隣設して配置することができる。
【0035】
図5は、高さ検出部34の構成及び動作を説明する図で、(A)は塊状の冷凍食品が1個の場合の正面視の縦断面図、(B)は塊状の冷凍食品が複数個(W1,W2,W3)の場合の正面視の縦断面図、(C)は高さ検出部34の平面視の全体構成と検出動作方法を示す図である。
【0036】
図5(A)(B)に示すように、上電極板31の所定距離だけ下方位置には、電極板を水平方向に挟んで対向された環状の構成を有する高さ検出部34が配置されている。より具体的には、高さ検出部34は、環状の寸法が上電極板31(下電極板32)の板面形状より大きな寸法を有している。高さ検出部34は、遠隔的な、この例では光学的な検出手段であり、
図5(C)に示すように、複数対の発光素子341と受光素子342とが互いに環状かつ水平面内で対向配置され、発光素子からのビーム状の発光光が対向する受光素子で受光される構成である。対向する受光素子で光が受光されないとき、その間に障害物、すなわち冷凍食品Wの一部分が介在したことを検出する。
【0037】
高さ検出部34による検出動作は、下電極板32の上昇動作中に継続的に行われる。
図5(C)では、例えば冷凍食品Wの上面側の左右方向の3か所で(破線の等高線に示すように)起伏が見られ、かつ最大高さWpが最も高い部位とすれば、図中、斜線を施した発光、受光素子341,342によって最初に検出される。このように多方面から検出を行うことで、最大高さWpの位置をより的確かつ最初に検出することが可能となる。かかる遠隔的な検出方法を採用することで、従来のような接触式検知に比して衛生的となる。
【0038】
また、最大高さWpが検出されたタイミングで下電極板32の上昇を停止するように制御することで、塊状の冷凍食品Wの形状に凸凹があるなどの多少いびつな形状を有していても、上電極板31との間に所要寸法の隙間を確保することができ、部分接触などで生じるような局部的な異常加熱が阻止できる。なお、高さ検出部34では、最大高さWpの検出タイミングが検出できればよく、どの受光素子342で検出されたかは必要ない。そして、下電極板32の上昇動作を停止させた時点でのロータリーエンコーダで計測された回転量を参照することで、上下電極間隔の計測が可能となる。なお、高さ検出部34を構成する発光、受光素子341,342の配置及び個数は多点検出が可能であれば適宜に設計してよく、また
図5(C)のよう環状型の配置に限らず適宜設定可能である。さらに、発光、受光素子341,342の配置形状は環状に限定されず、前後側に対向配置したり、あるいは左右側に対向配置したりする構成でもよく、さらに90度以外で各光ビームが交差するように発光、受光素子341,342の向きを調整してもよい。
【0039】
図6は、高周波解凍装置1の回路及び機能部の一実施形態を示すブロック図である。電源部41は、所定の高電圧を生成する電源回路411、電源電力から所定周波数の電力信号を生成する発振器412、及び電源側から見た出力インピーダンスを負荷側のインピーダンスと整合させる整合器413を備える。電源部41は、所定周波数として例えば数MHz~数十MHz、高周波電力として例えば1KW~数十KWのような比較的小~中電力を出力する。なお、発振器412から上電極板31までを従来に比して接近させてインダクタンス成分を抑制したので、その分、発振周波数をより高周波化でき、例えば従来の27MHz仕様の他に、例えば40MHz仕様で設計するなど、用途に応じた仕様が採用でき、また発振器412の小型化も可能となる。
【0040】
整合器413は、直列に接続されたコンデンサ及び可変インダクタンス素子と、その間に並列に接続された可変コンデンサとを備える。可変容量及び可変インダクタンスは、解凍の進行に応じて変化する負荷側のインピーダンスを公知の方法で検出するなどして自動的に調整されて、マッチング状態が維持される。また、負荷側の陰極とアースとの間に可変インダクタンスを設けて、上、下電極板31,32の上流と下流とに整合調整用の成分を設けることで整合のバランスが細やかになって、より効率的な給電が図れ、均一加熱にも資するものとなる。
【0041】
制御部414は、プロセッサを備えて構成され、操作部131、表示部132及び記憶部4141と接続されている。操作部131は、表示部132に表示された内容に応じて選択操作や動作開始の指示操作を行う。また、制御部414は、下電極板32の昇降動作を行う下電極板昇降部21、下電極板32及び積載物の総重量を検出する重量検出部22、上下電極板間の間隔を計測する電極間隔計測部23、及び下電極板32の上昇動作中に積載物の最大高さタイミングを検出する高さ検出部34と接続されている。
【0042】
記憶部4141は、解凍動作を行う制御プログラムが記憶されると共に、制御プログラムの実行に必要な各種のデータテーブルが記憶されている。データテーブルとしては、例えば、設定条件と高周波電力レベル及び解凍(誘電加熱)時間との関係がある。設定条件としては、冷凍食品Wの種類情報(例えば牛肉、豚肉、魚類又はミンチその他)、冷凍食品Wの重量、電極間隔が対象となる。なお、冷凍食品Wの重量は、重量検出部22の検出結果から下電極板32の既知の重量分を差し引いて算出すればよい。制御部414は、下電極板32の昇降動作の他、操作部131を介して入力された内容及び各種の検出・計測情報を設定条件として参照して、データテーブルから対応する高周波電力レベル及び解凍時間を設定し、かつ解凍制御を行う。なお、解凍時間による制御に代えて、内部に放射温度計などを備え、解凍温度が所定の温度(例えば、-1℃~-5℃)まで上昇したことが検出されたら解凍動作を終了するようにしてもよい。
【0043】
また、本発明は、解凍装置を例にして説明したが、食品等の解凍の他、木材の乾燥、積層木材や積層樹脂材の加熱接着、加熱殺菌等を処理する高周波加熱装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 高周波解凍装置
10 筐体
11 側面
12 天井板
121 隙間
111,112 支柱
20 下段部
21 下電極板昇降部
22 重量検出部
23 電極間隔計測部
201 下段板
30 中段部
30A 加熱部
31 上電極板
32 下電極板
321 補助電極板
301,401 仕切り板
34 高さ検出部
302 開口
304 扉
40 上段部
41 電源部
4131 可変インダクタンス素子(インダクタンス素子)
W 冷凍食品
Wp 最大高さ