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  • 特許-再生複合材料の製造方法 図1
  • 特許-再生複合材料の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】再生複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B29B17/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021155946
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047048
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】316007388
【氏名又は名称】株式会社MSC
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】麦谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】坂庭 貞夫
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167736(JP,A)
【文献】特開2006-192748(JP,A)
【文献】特開2009-073028(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035820(WO,A1)
【文献】特開2013-095001(JP,A)
【文献】国際公開第2020/166522(WO,A1)
【文献】特開2013-035272(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101054779(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ含有層と樹脂層とを有するアルミ複合フィルムの粉砕物を含む材料を用いて再生複合材料を製造する再生複合材料の製造方法であって、
前記アルミ複合フィルムの粉砕物の平均粒径を30μm以上1mm以下とした材料を200℃以上260℃以下の温度で溶融混練する溶融混練工程と、
溶融混練した材料をフィルターに通過させてろ過し、前記アルミ含有層の粉砕片の割合を25質量%以下、10質量%以上とするろ過工程とを含み、
前記ろ過工程では、目開きが350μm以下、75μm以上のフィルターを用いる
ことを特徴とする再生複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記ろ過工程では、材料を冷却しなからろ過することを特徴とする請求項1記載の再生複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ含有層と樹脂層とを有するアルミ複合フィルムを含む材料を用いて再生複合材料を製造する方法および再生複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ箔は、プラスチックフィルムに比べて湿気及び酸素を通しにくいためにバリヤー素材として優れている。そのために、アルミ箔とプラスチックフィルムと組み合わせたアルミラミネートフィルムやアルミ蒸着フィルム等のアルミ複合フィルムは、食品や医薬品等の各種分野における包装材として広く用いられている。アルミラミネートフィルムは、アルミ含有層と樹脂層とを貼り合わせたものであり、アルミ蒸着フィルムは、樹脂層にアルミ含有層を蒸着させたものである。このような包装材は、使用された後は廃棄物となるため、その処理が問題となっている。プラスチックについては、近年、再生処理が進んでおり、例えば、特許文献1には、オレフィン系樹脂フィルムと他の合成樹脂フィルムとを張り合わせた複合フィルムを再生する複合フィルムの再生方法が記載されている。しかしながら、アルミ複合フィルムはアルミ含有層を含んでいるので、プラスチックフィルムと同一の方法では再生することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6687258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、アルミ複合フィルムを材料に用いて再生複合材料を製造する方法、及び、製造された再生複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の再生複合材料の製造方法は、アルミ含有層と樹脂層とを有するアルミ複合フィルムの粉砕物を含む材料を用いて再生複合材料を製造するものであって、アルミ複合フィルムの粉砕物の平均粒径を30μm以上3mm以下とした材料を溶融混錬する溶融混錬工程と、溶融混錬した材料をフィルターに通過させてろ過し、アルミ含有層の粉砕片の割合を30質量%以下、5質量%以上とするろ過工程とを含むものである。
【0006】
本発明の再生複合材料は、アルミ含有層と樹脂層とを有するアルミ複合フィルムの粉砕物を含む材料を用いて製造されたものであって、アルミ含有層の粉砕片と樹脂とを含み、アルミ含有層の粉砕片の割合が30質量%以下、5質量%以上であり、アルミ含有層の粉砕片の最大粒子径が350μm以下のものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アルミ複合フィルムの粉砕物の平均粒径を30μm以上3mm以下として溶融混錬するようにしたので、アルミ含有層の粉砕片を均一に分散させることができ、優れた特性を有する再生複合材料を得ることができる。また、溶融混錬後にろ過してアルミ含有層の粉砕片の割合を30質量%以下、5質量%以上とするようにしたので、優れた剛性及びせん断力を有する再生複合材料を得ることができる。
【0008】
また、ろ過工程において、目開きが350μm以下、75μm以上のフィルターを用いるようにすれば、引張伸度及び剛性をより向上させることができる。
【0009】
更に、ろ過工程において、材料を冷却しなからろ過するようにすれば、ろ過時における材料の温度上昇を抑制することができ、樹脂の特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る再生複合材料の製造方法の工程を表す流れ図である。
図2図1に示した再生複合材料の製造方法において用いるろ過装置の一構成例を表すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る再生複合材料の製造方法の工程を表すものである。本実施の形態に係る再生複合材料の製造方法は、アルミ含有層と樹脂層とを有するアルミ複合フィルムの粉砕物を含む材料を用いて再生複合材料を製造する再生複合材料の製造方法であって、アルミ複合フィルムを原料として、新しい材料を製造するものである。
【0013】
アルミ複合フィルムとしては、例えば、アルミ含有層と樹脂層とを貼り合わせたアルミラミネートフィルムや、樹脂層にアルミ含有層を蒸着させたアルミ蒸着フィルムが挙げられる。アルミラミネートフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる第1樹脂層と、アルミ含有層と、ポリエチレン(PE)よりなる第2の樹脂層とをこの順に貼り合わせたものや、ナイロン(NY)よりなる第1の樹脂層と、アルミ含有層と、ポリエチレンよりなる第2の樹脂層とを貼り合わせたもの、又は、ポリエチレンテレフタレートよりなる第1の樹脂層と、アルミ含有層と、ポリプロピレンよりなる第2の樹脂層とを貼り合わせたものが代表的に挙げられる。アルミ蒸着フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートよりなる樹脂層にアルミ含有層を蒸着させたものが代表的に挙げられる。なお、アルミ含有層というのは、アルミニウムよりなる層、又は、アルミニウム合金よりなる層を意味している。
【0014】
アルミ複合フィルムは、未使用品(新材)でも、使用済みの廃材でもよく、新材と廃材の混合物でもよい。アルミ複合フィルムは、例えば、食品や医薬品の包装に多く用いられており、廃材はその使用済材料から得られるが、生産工程で生じる未使用の端材や成形不良品等からも得ることができる。また、材料には、アルミ複合フィルムに加えて、他の材料を混合して用いてもよい。他の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)とポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる複層フィルムや、ポリプロピレン(PP)とナイロン(PA)よりなる複層フィルムが挙げられる。
【0015】
本実施の形態に係る再生複合材料の製造方法では、まず、例えば、アルミ複合フィルムを粉砕し、アルミ複合フィルムの粉砕物を含む材料を用意する(ステップS101;粉砕工程)。アルミ複合フィルムの粉砕物の平均粒径は、アルミ含有層の厚みにより変わるが、30μm以上、3mm以下とすることが好ましく、30μm以上、1mm以下とすればより好ましい。3mm以下に微粉化することにより、樹脂の中にアルミ含有層の粉砕片を均一に分散させることができ、樹脂とアルミ含有層の粉砕片とが偏ることなく混合され、特性の安定した再生複合材料を得ることができると共に、機械的強度の引張強度、及び、引張破断伸び率を向上させることができるからである。また、30μmよりも小さくすると、比重が大きくなり生産能力が低下するからである。
【0016】
次いで、アルミ複合フィルムの粉砕物の平均粒径を上記のように調整した材料を加熱すると共にせん断力を加えて溶融混錬する(ステップS102;溶融混錬工程)。溶融混錬には、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機を用いればせん断力により材料をより細分化することができ、材料を十分に混錬することができるからである。二軸押出機は、例えば、2本のスクリューを噛み合わせて混錬するものである。加熱温度は、例えば、200℃以上260℃以下とすることが好ましく、210℃以上230℃以下とすればより好ましい。温度が低いと樹脂とアルミ含有層の粉砕片との溶融混合を十分に達成することができず、温度が高いと樹脂が熱劣化して分解がおき、樹脂特性が著しく低下してしまうからである。
【0017】
なお、溶融混錬の際には、各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、発泡防止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、熱安定剤、無機鉱物、着色剤、又は、機能性樹脂が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
続いて、溶融混錬した材料をフィルターに通過させてろ過する(ステップS103;ろ過工程)。これにより、ろ過後の材料におけるアルミ含有層の粉砕片の割合を30質量%以下、5質量%以上とすることが好ましく、25質量%以下、10質量%以上とすればより好ましい。アルミ含有層の粉砕片の割合を5質量%以上とすることにより、剛性を向上させることができ、また、アルミ含有層の粉砕片の割合が30質量%を超えると、伸びや引張に悪影響を与え、せん断力が低下してしまうからである。
【0019】
ろ過工程(ステップS103)では、例えば、目開きが350μm以下、75μm以上のフィルターを用いることが好ましい。すなわち、アルミ含有層の粉砕片の最大粒子径を350μm以下とすることが好ましい。アルミ含有層の粉砕片に大きなものが存在すると、樹脂とアルミ含有層の粉砕片との混合に偏りが生じ、均一分散が妨げられ、これにより引張伸度及び剛性が低下してしまうからである。メッシュであれば、40以上のフィルターを用いることが好ましい。
【0020】
また、ろ過工程(ステップS103)では、材料を冷却しながらろ過することが好ましい。ろ過時における材料の温度上昇により材料がゲル化したり、焼けたり、炭化してしまうことを抑制するためである。特に、アルミ複合フィルムを含む材料の場合、アルミ含有層の粉砕片が含まれているので、ろ過時の圧力が高くなりやすく、温度上昇により樹脂の特性が低下しやすい。よって、冷却することにより、再生複合材料の特性を向上させることができる。ろ過工程(ステップS103)における材料の温度は、例えば、200℃以上260℃以下とすることが好ましく、210℃以上230℃以下とすればより好ましい。
【0021】
図2は、ろ過工程(ステップS103)で用いるろ過装置10の一例を表すものである。このろ過装置10は、例えば、内部にろ過室11を有するろ過室体12を有している。ろ過室体12の内部、すなわちろ過室11には、例えば、2枚のフィルター13が対向するように配設されている。また、ろ過室体12には、例えば、2枚のフィルター13の対向方向に対して垂直な方向における一方に、二軸押出機等の溶融混錬機により処理された材料が流入する流入口12Aと、流入口12Aと対向する方向に、フィルター13によりろ過した材料を排出する排出口12Bが設けられている。ろ過室11は、例えば、2枚のフィルター13の対向方向における外側がろ過前の材料が流入する前室11Aとされ、2枚のフィルター13の対向方向における内側がろ過後の材料が流入する後室11Bとされている。前室11Aには流入口12Aが連通され、後室11Bには排出口12Bが連通されている。
【0022】
各フィルター13の前室11Aの側には、例えば、各フィルター13により分離された分離物を各フィルター13から取り除く回転式の回転加圧ブレード14がそれぞれ配設されている。各回転加圧ブレード14は、例えば、回転軸15にそれぞれ配設されている。回転軸15にはモータ等の駆動手段16が配設され、回転可能とされている。各フィルター13の後室11Bの側には、例えば、与圧混合ディスク17が配設されている。与圧混合ディスク17には、例えば、ろ過室11の排出口12Bに対応して材料を排出する開口17Aが設けられている。
【0023】
また、ろ過装置10は、ろ過室体12の内部において、材料を冷却する冷却手段18を有している。冷却手段18は、例えば、ろ過室体12の壁面内部に、水などの冷却媒体を流通させる冷媒流通路18Aを有している。なお、図2に冷媒流通路18Aを具体的に示したが、これは冷媒流通路18Aがろ過室体12の壁面内部に設けられていることを概念的に表したものであり、実際の配設例を表したものではない。冷媒流通路18Aは、図示しない水源などの冷却媒体源に対して接続されており、ポンプ等の冷媒流通手段18Bにより冷却媒体を冷媒流通路18Aに流通させるように構成されている。冷却手段18は、例えば、ろ過室体12の内部における材料の温度を検出し、材料の温度が所定の温度以上である場合に、冷媒流通手段18Bを駆動する制御手段18Cを備えていることが好ましい。
【0024】
ろ過された材料は、例えば、冷却され、アルミ含有層の粉砕片と樹脂とを含む再生複合材料が得られる。得られた再生複合材料は、アルミ含有層の粉砕片の割合が30質量%以下、5質量%以上であり、かつ、アルミ含有層の粉砕片の最大粒子径が350μm以下である。これにより、優れた剛性及びせん断力を得ることができ、再生材料として活用することができる。
【0025】
このように、本実施の形態によれば、アルミ複合フィルムの粉砕物の平均粒径を30μm以上3mm以下として溶融混錬するようにしたので、アルミ含有層の粉砕片を均一に分散させることができ、優れた特性を有する再生複合材料を得ることができる。また、溶融混錬後にろ過してアルミ含有層の粉砕片の割合を30質量%以下、5質量%以上とするようにしたので、優れた剛性及びせん断力を有する再生複合材料を得ることができる。
【0026】
また、ろ過工程において、目開きが350μm以下、75μm以上のフィルターを用いるようにすれば、引張伸度及び剛性をより向上させることができる。
【0027】
更に、ろ過工程において、材料を冷却しなからろ過するようにすれば、ろ過時における材料の温度上昇を抑制することができ、樹脂の特性の低下を抑制することができる。
【0028】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
アルミ含有層と樹脂層とを有するアルミ複合フィルムを用いた再生複合材料の製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
10…ろ過装置、11…ろ過室、11A…前室、11B…後室、12…ろ過室体、12A…流入口、12B…排出口、13…フィルター、13A…貫通孔、14…ブレード、15…回転軸、16…駆動手段、17…与圧混合ディスク、17A…開口、17B…貫通孔、18…冷却手段、18A…冷媒流通路、18B…冷媒流通手段、18C…制御手段
図1
図2