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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】四六面体ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/16 20060101AFI20231031BHJP
   B01J 27/057 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/843 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/68 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/644 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20231031BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20231031BHJP
   B22F 9/30 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B22F9/16
B01J27/057 M
B01J23/843 M
B01J23/89
B01J23/44 M
B01J23/68 M
B01J23/46 311M
B01J23/644 M
B01J23/42 M
B22F9/24 E
B22F9/30 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021505303
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019044263
(87)【国際公開番号】W WO2020028450
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】62/712,416
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】チャド エー.マーキン
(72)【発明者】
【氏名】リリアン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ハイシン リン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-069388(JP,A)
【文献】特開2007-050388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0236355(US,A1)
【文献】CHEN, Quig-Song et al.,Significantly Enhancing Catalytic Activity of Tetrahexahedral Pt Nanocrystals by Bi Adatom Decoration,Journal of the American Chemical Society,2011年08月24日,vol.133,No.33,p.12930-12933,DOI:10.1021/ja2042029
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四六面体(「THH」)ナノ粒子を調製する方法であって、第1の金属を含む粒子を、第2の金属の存在下、500℃~1300℃で0.5時間~12時間加熱して、前記THHナノ粒子を形成することを含み、前記第1の金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、またはそれらの組み合わせを含み、前記第2の金属は、Sb、Bi、Pb、Te、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項2】
前記THHナノ粒子が、高指数ファセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記THHナノ粒子が、{210}ファセット、{310}ファセット、それらの隣接平面、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の金属がバイメタル性である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の金属が、PtおよびNi、PtおよびCo、PtおよびCu、PdおよびPt、PdおよびAu、PdおよびNi、PdおよびCo、PdおよびCu、RhおよびPt、RhおよびCo、RhおよびNi、またはそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応器で実施され、前記第2の金属が前記粒子の上流に配向され、ガス流を介して前記粒子に運ばれる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガスが、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の金属を含む前記粒子は、支持体に組み込まれる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記支持体が、シリカ、チタニア、セリア、アルミナ、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記支持体が導電性である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記支持体が、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、炭化タングステン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子が前記第1の金属の塩の分解および/または還元によって形成されるか、または前記粒子が前記第1の金属の金属合金から形成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の金属が、前記第2の金属の塩の分解および/または還元によって形成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の金属が、白金、パラジウム、ロジウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の金属が白金を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の金属を含む前記粒子が非THH粒子である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の金属がSbを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の金属がBiを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
粒子の加熱が有機配位子の非存在下で実施される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
HHナノ粒子を、酸化触媒として使用することをさらに含む請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
HHナノ粒子が、ギ酸のCOおよび/またはCOへの酸化を触媒する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援に関する記述
本発明は、エネルギー省によって授与された助成金番号DE-SC0000989-0002の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
高指数ファセットを有するナノ構造は、触媒作用において非常に重要であるが、それらを大規模に生産する方法は限られている(Zhang et al.,Nano Today 11,661-677(2016)、Tian et al.,J.Phys.Chem.C 112,19801-19817(2008))。典型的には、比較的低スループットの電気化学的方法またはファセット安定化配位子に依存する高スループットの液相法のいずれかを、それらを調製するために使用する。重要なことに、そのようなファセットの原子構造は、粒子サイズおよび組成に関係なく、触媒活性に直接影響を与えることができる(Xia et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 110,6669-6673(2013)、Lee et al.,Angew.Chem.Int.Ed.118,7988-7992(2006))。しかし、粒子形状を制御するための配位子の使用は、2つの理由で制限されている。第1に、そのような薬剤の役割はよく理解されておらず、金属のタイプおよび所望の粒子形状に応じて、異なる配位子が必要である(Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.133,1106-1111(2010),Personick et al.,Nano Lett.11,3394-3398(2011)).第2に、安定化配位子は、しばしば除去が困難であり、活性部位をブロックすることによって、触媒活性に悪影響を及ぼす(Niu et al.,Chem.Mater.26,72-83(2013))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Zhang et al.,Nano Today 11,661-677(2016)、tian et al.
【文献】Tian et al.,J.Phys.Chem.C 112,19801-19817(2008)
【文献】Xia et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 110,6669-6673(2013)
【文献】Lee et al.,Angew.Chem.Int.Ed.118,7988-7992(2006)
【文献】Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.133,1106-1111(2010)
【文献】Personick et al.,Nano Lett.11,3394-3398(2011)
【文献】Niu et al.,Chem.Mater.26,72-83(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高指数ファセット、ギ酸酸化などの酸化反応のための効率的な電気触媒、および廃触媒をリサイクルする方法を有するナノ粒子を作製するための簡単で、配位子を含まない、かつ一般化可能な方法の開発が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に提供されるのは、四六面体(「THH」)ナノ粒子を調製する方法であって、第1の金属を含む粒子を、第2の金属の存在下、500℃~1300℃で約0.5時間~約12時間加熱して、THHナノ粒子を形成することを含み、ここで、第1の金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、またはそれらの組み合わせを含み、第2の金属は、Sb、Bi、Pb、Te、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、THHナノ粒子は、高指数ファセットを含む。実施形態では、THHナノ粒子は、{210}ファセット、{310}ファセット、それらの隣接平面、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。実施形態では、第1の金属はバイメタル性である。実施形態では、第1の金属は、PtNi、PtCo、PtCu、PdPt、PdAu、PdNi、PdCo、PdCu、RhPt、RhCo、RhNi、またはそれらの組み合わせを含む。
【0006】
実施形態では、本明細書に開示される方法は、第2の金属が粒子の上流に配向され、ガス流を介して粒子に運ばれる反応器内で実行される。実施形態では、ガスは、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含む。
【0007】
実施形態では、第1の金属を含む粒子は、支持体に組み込まれる。実施形態では、支持体は、シリカ、チタニア、セリア、アルミナ、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、支持体は導電性である。実施形態では、導電性支持体は、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、炭化タングステン、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、粒子は、第1の金属の塩の分解および/または還元によって形成されるか、または粒子は、第1の金属の金属合金から形成される。実施形態では、第2の金属は、第2の金属の塩の分解および/または還元によって形成される。実施形態では、第1の金属は白金を含む。実施形態では、第1の金属を含む粒子は、非THH粒子である。実施形態では、第2の金属はSbを含む。実施形態では、第2の金属はBiを含む。実施形態では、本明細書に開示される方法は、有機配位子の非存在下で実施される。
【0008】
本明細書に開示されるTHHナノ粒子を酸化触媒として使用する方法も、本明細書に提供される。実施形態では、THHナノ粒子は、ギ酸のCOおよび/またはCOへの酸化を触媒する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、外来金属(Sb、Bi、Pb、およびTe)との合金化/脱合金化によるTHH粒子を合成するための実験セットアップおよびいくつかの実験結果を示す。(A)CVDセットアップでTHH粒子を合成するためのスキーム。およそ1mgの外来金属粉末を燃焼槽に負荷し、次いでこれを、管炉に移送した。興味のある金属塩前駆体または不規則な形状の粒子でコーティングされたシリコンウェーハを、外来金属粉末の下流の管に配置した。Ar(またはAr/H)雰囲気で熱処理した後、管を空気中で急冷し、次いで室温まで冷却した。外来金属粉末を、蒸発によって金属前駆体と共にシリコンウェーハに完全に移送し、THH粒子を形成した。(B)900℃で反応した後に合成された粒子の、時間の関数としてのEDSスペクトル。Cuシグナルは、TEMサンプルホルダーからのものである。900℃で(C)0分間(26%Pt、74%Sb)、(D)20分間(38%Pt、62%Sb)、および(E)40分間(85%Pt、<15%Sb)反応させた後の、同じ領域で合成された粒子のSTEM画像およびEDS元素マップ。(E)では、丸で囲んだ粒子のSTEM画像、および対応するEDS元素マップ(右)は、粒子の形態および元素分布の明確な図を提供する。(iおよびii)のスケールバーは50nmである。その他は300nmである。
【0010】
図2図2は、[100]、[110]、[111]の結晶配向から観察された切断THH Pt粒子の代表的なSEM画像を(A~C)に示す。(D~E)シリコンウェーハ上に分散されたPt粒子のSEM画像。(F)[001]方向に沿って記録された切断THH Ptナノ粒子のTEM画像。目のガイドとして白い線を使用して、ナノ粒子のファセットを強調する。(G)(F)のナノ粒子の対応する回折パターン。(H)[001]方向に沿って投影された{210}ファセットによって囲まれたTHH形状ナノ粒子の理想的なモデル。(F)のナノ粒子の表面平面間の角度の注意深い測定は、露出した高指数ファセットのMiller指数が、{210}であることを示す。(I)(f)でマークされたボックスで囲まれた領域から記録されたHRTEM画像。目のガイドとして赤い線を描いて、表面(210)平面を強調する。(J)(210)平面の原子モデル。シリコンウェーハ上に合成されたPt粒子のSEM画像であって、図2の(K)では、Sb粉末を使用せずにHPtClを700℃ で30分間熱分解することによって粒子を合成し、(L)では、1mgのSb粉末を使用して、(K)のサンプルを、900℃で30分間加熱することによって粒子を合成し、(M)では、Sb粉末を使用せずに(L)のサンプルを900℃で30分間加熱することによって合成したことによるSEM画像。スケールバー:(F)では20nmおよび(K~M)では300nm。
【0011】
図3図3は、Sb、Bi、Pb、およびTe修飾によって合成したPt、Pd、およびRh粒子のSEM画像を、(A)に示す。Bi修飾による、図3(B)におけるPt粒子、(C)におけるPd粒子、および(D)におけるRh粒子のSTEM画像、EDS元素マップ、TEM画像、および対応する回折パターン。Bi修飾による、図3(E)におけるNi粒子、および(F)におけるCo粒子のSEM画像、TEM画像、対応する回折パターン、およびEDS元素マップを示す。スケールバー:特に記載がない限り、50nm。
【0012】
図4図4は、種々の触媒についてのギ酸酸化の0.5Vにおける(a)分極曲線、および(b)比活性のヒストグラムを示す。
図5図5は、(a)600℃で12時間、(b)800℃で0分間、(c)800℃で30分間、(d)800℃で1時間、(e)800℃で12時間、(f)900℃で0分間、(g)900℃で30分間、(h)900℃で1時間、(i)900℃で4時間、(j)1000℃で30分間、および(k)1000℃で1時間の種々の条件下で、ソースとして約1mgのSb粉末と共に合成されたPt粒子のSEM画像を示す。スケールバー:500nm。
図6図6は、(a)ソースとしての0.1mgのSb粉末と共に30分間、(b)30分ごとに供給されるソースとしての10mgのSb粉末と共に1時間、900℃で合成したPt粒子のSEM画像を示す。スケールバー:500nm。
【0013】
図7図7は、Sbを添加せずにPt前駆体を直接分解することによってシリコンウェーハ上に合成したPtナノ粒子のSEM像を示す。スケールバー:500nm。
【0014】
図8図8は、ソースとして使用されている1mgのSb粉末と共に、(a)0分間(26%Pt、74%Sb)、(b)10分間(32%Pt、68%Sb)(c)20分間(38%Pt、62%Sb)、(d)30分間(69%Pt、31%Sb)、および(e)40分間(85%Pt、15%Sb)、900℃で反応させた後の合成された粒子のSTEM画像およびEDS元素マップを示す。図(d)および(e)では、形態および元素分布を明確に示すために丸で囲まれた粒子について、STEM画像および対応するEDSマップを右側に示す。(i~iv)のスケールバーは50nmである。その他は300nmである。
【0015】
図9図9は、(a)0分(26%Pt、74%Sb)、(b)10分(32%Pt、68%Sb)、(c)20分(38%Pt、62%Sb)、(d)30分(69%Pt、31%Sb)および(e)40分(85%Pt、15%Sb)の後の、900℃で合成された粒子のEDSスペクトルを示す。
【0016】
図10図10は、HPtCl水溶液でスピンコートしたシリコンウェーハを800℃に、10℃/分のランピングレートで加熱し、次いで氷冷水で管を急冷することによって、1mgのBi粉末ソースと共に合成されたPt粒子のSEM画像を示す。スケールバー:200nm。
【0017】
図11図11は、(a)シリコンウェーハ上で合成されたままの切断THH Pt粒子、(b)サンプル(a)を、1mgのSb粉末ソースと共に900℃30分間アニーリングした後に合成されたPt粒子、および(c)サンプル(b)を、Sb粉末ソースなしで900℃30分間アニーリングした後に合成された切断THH Ptナノ粒子のSEM画像を示す。各列は、前の列の拡大図である。(d)および(e)は、それぞれ(b)および(c)のボックスで囲まれた領域の拡大図である。スケールバー:(a~c)では500nm(第2の列)および250nm(第3の列)、(d~e)では250nm。
【0018】
図12図12は、(a)合成したままのTHH形状Ptナノ粒子および(b)余分なSb粉末ソースを使用せずに900℃で30分間アニールした後のSEM画像を示す。粒子形状は、アニーリング処理後もそのまま残る。スケールバー:500nm。
【0019】
図13図13は、(a)外部のSb粉末ソースを何も使用せずに、HPtClの水溶液で、700℃で30分間スピンコーティングしたシリコンウェーハを、直接アニーリングすることによって合成されたままのPt粒子、(b)サンプル(a)を、1mgのSb粉末ソースと共に900℃で30分間アニーリングすることによって合成されたPt粒子、および(c)サンプル(b)を、Sb粉末ソースなしで900℃30分間アニーリングすることによって合成された切断THH Pt粒子、のSEM画像を示す。(d)は(c)のボックスで囲まれた領域の拡大図である。各図の右下のシリカ残基を、粒子の位置基準として使用した。
【0020】
図14図14は、(a)前駆体を、ソースとしての1mgのSb粉末と共に900℃で1時間加熱し、続いて管を5℃/の速度で室温までゆっくりと冷却することによって合成されたPt粒子、および(b)外部Sb粉末を使用せずに、サンプルを900℃で30分間再加熱することによる滑らかな表面を有するPt粒子、のSEM画像を示す。スケールバー:500nm。
【0021】
図15図15は、(i)0分間、(ii)2時間、および(iii)12時間の種々の時間、600℃の熱アニーリング下のPt粒子のSEM画像を示す。(a)および(b)の(iv)は、余分なSb粉末ソースを使用せずに900℃で30分間アニーリングした後の同じ粒子のSEM画像である。スケールバー:300nm。
【0022】
図16図16は、合成されたままの(a、b)、および600℃で12時間熱アニーリングした後の(c、d)、THH形状粒子についてのSTEM画像、EDS元素マップおよび対応するスペクトルを示す。粒子の原子組成は、(a、b)についてはPt76Sb24、および(c、d)についてはPt79Sb21であった。Cuシグナルは、TEMサンプルホルダーからのものである。スケールバー:50nm。
【0023】
図17図17は、Pt、Pd、Rh、Ni、CoのEDSスペクトル、およびBi修飾によって合成されたバイメタル性ナノ粒子(PtRh、PdAu、PtCu、PdCu、PtCo、PdCo、RhCo、PtNi、PdNi、RhNi)のライブラリーを示す。
【0024】
図18図18は、THH形状(A)PtCu、(B)PtNi、(C)PtCo、(D)PdCu、(E)PdAu、および(F)RhPtナノ粒子のTEM画像、対応する回折パターン、およびEDS元素マップを示す。目のガイドとして白い線を使用して、粒子ファセットを強調する。スケールバー:20nm。
【0025】
図19図19は、900℃で(a、b)0分間、(c、d)10分間(e、f)20分間)、(g、h)30分間、および(i、j)40分間加熱した後に合成された粒子のSEM画像(左の列)および対応するXRDパターン(中央の列)を示す。(d)、(f)および(h)において、挿入図は、金属間相が基準線でマークされたPtSbのボックスで囲まれた領域およびピーク位置の拡大図である。右の列のXRDパターンは、(k)シリコンウェーハ、(l)HPtCl塩を900℃で10分間直接分解することによって合成されたシリコンウェーハ上の純粋なPt粒子、および(m)この作業で使用された純粋なSb粉末からのものである。スケールバー:500nm。
【0026】
図20図20は、外来金属(Sb、Bi、Pb、およびTe)で装飾されたPtファセットのスラブ構造を示す。銀色および茶色の原子は、それぞれPtおよび外来金属(Sb、Bi、Pb、およびTe)を表す。
【0027】
図21図21は、外来金属(Sb、Bi、Pb、およびTe)で装飾されたPtファセットのスラブ構造を示す。銀色および茶色の原子は、それぞれPtおよび外来金属(Sb、Bi、Pb、およびTe)を表す。
【0028】
図22図22は、外来金属(Sb)の表面被覆率の関数として、種々の修飾Ptファセットの比表面エネルギーを示す。各外来金属の最低化学ポテンシャルを使用して、比表面エネルギーを計算した。
【0029】
図23図23は、外来金属(Te)の表面被覆率の関数として、種々の修飾Ptファセットの比表面エネルギーを示す。各外来金属の最低化学ポテンシャルを使用して、比表面エネルギーを計算した。
【0030】
図24図24は、外来金属(Bi)の表面被覆率の関数として、種々の修飾Ptファセットの比表面エネルギーを示す。各外来金属の最低化学ポテンシャルを使用して、比表面エネルギーを計算した。
【0031】
図25図25は、外来金属(Pb)の表面被覆率の関数として、種々の修飾Ptファセットの比表面エネルギーを示す。各外来金属の最低化学ポテンシャルを使用して、比表面エネルギーを計算した。
【0032】
図26図26は、外来金属(Sb、Te、Bi、およびPb)の化学ポテンシャルの関数として、種々の修飾Ptファセットの比表面エネルギーを示す。各ファセットについて、最低の表面エネルギーを与えた外来金属の表面被覆率を、図22~25で考慮した。
【0033】
図27図27は、Ar飽和0.5 MHSO溶液中の、THH形状Pt-M(M=Sb、Bi、PbおよびTe)触媒、Pt対照サンプル、および市販のPt/C触媒のサイクリックボルタモグラムを示す。スキャン速度:50mVs-1
【0034】
図28図28は、Ar飽和0.5M HCOOH+0.5MHSO溶液中0.5Vで3600秒間のPt-M(M=Sb、Bi、Pb、およびTe)触媒、Pt対照サンプル、および市販のPt/C触媒のクロノアンペロメトリー曲線を示す。挿入図は、ボックスで囲まれた領域の拡大図を示す。
【0035】
図29図29は、(a)分極曲線、および(b)種々の触媒の0.5Vでのギ酸酸化での比活性のヒストグラムを示す。
【0036】
図30図30は、カーボンブラック上で合成された触媒のSTEM画像を示す。切断THH形状を、時折観察される大きな粒子から明確に識別することができる。スケールバー:50nm。
【0037】
図31図31は、0.5Vで3600秒間のギ酸電解酸化に使用する前(A)および後(B)の、Bi修飾によって合成したPt THH形状ナノ粒子のSEM画像を示す。スケールバー:400nm。
【0038】
図32図32は、(A)不活性化した市販Pt/C触媒、および(B)(A)の市販触媒を、ソースとして1mgのBi粉末ともに900℃で1時間加熱することによって形成されたTHH形状Pt粒子のSTEM画像を示す。(A)および(B)で画像化された領域は同一である。各列は、前の列の拡大図である。(C)リサイクル前および後の、市販のPt/C触媒の分極曲線。
【0039】
図33図33は、Bi修飾によって合成されたTHH形状バイメタル性粒子を示す。図33の(A)は、シリコンウェーハ上で合成されたTHH形状PtPd粒子のSEM画像を示す。図33の(B)は、THH形状PtPd粒子のTEM画像、対応する回折パターン、およびEDS元素マップを示す。図33の(C)一連のTHH形状バイメタル性粒子のSTEM画像(第1の列)、およびEDS元素マップ(第2および第3の列)。スケールバー:(A)で500nm、(BおよびC)で20nm。
【0040】
図34図34は、THH粒子の合成に使用する代替的な方法を示す。(A)外来金属粉末および興味のある金属前駆体の混合物をシリコンウェーハ上で直接加熱することによって、THH粒子を合成するためのスキーム。(B)Sb修飾によって合成されたTHH Pt粒子のSEM画像。(C)外来金属粉末、金属前駆体、およびカーボンブラック粉末の混合物を直接加熱することによって、高比表面積のカーボンブラック粉末上でTHH粒子を調製するためのスキーム。(D)Bi修飾(炭素XC-72への20%Pt負荷)を有する約1.3gのTHH Pt触媒粒子の写真。(E)カーボンブラック粉末上のTHH Pt粒子のSTEM画像。(F)外来金属粉末および事前合成された均一粒子を、シリコンウェーハ上で直接加熱することによって、単分散THH粒子を生産するためのスキーム。(G)液相法によって合成されたPdナノキューブのSTEM画像。(H)Pdナノキューブのサイズ分布を示すヒストグラム(サンプルサイズ:100)。(I)(G)のPdナノキューブから変換されたPd THHのSTEM画像。(J)Pd THH粒子のサイズ分布を示すヒストグラム(サンプルサイズ:100)。Pd THH粒子の体積および分散度は、最初のPdナノキューブのものと同様である。等体積のナノキューブおよび{210}ファセットで囲まれたTHH粒子の場合、b=1.31*a。(G)および(I)の挿入画像のスケールバーは、それぞれ20nmおよび30nmである。
【0041】
図35図35は、市販のPt/C触媒であるTHH Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、Te)触媒、および市販のPt/C触媒(Pt/C-Bi THH)からBi修飾によって合成されたTHH Pt触媒によるギ酸酸化の(A)分極曲線および(B)0.5Vでの質量活性のヒストグラムを示す。市販のPd/C触媒およびTHH Pd-Bi触媒でのギ酸酸化についての0.5Vでの(C)分極曲線および(D)の質量活性のヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書で提供されるのは、四六面体(「THH」)ナノ粒子を、外来金属の存在下で加熱される金属粒子の混合物から調製する方法である。場合によっては、この方法は、第1の金属を含む粒子を、第2の金属の存在下、800℃~1300℃で約30分~約120分間加熱して、THHナノ粒子を形成することを含み、ここで、第1の金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、またはそれらの組み合わせを含み、第2の金属は、Sb、Bi、Pb、Te、またはそれらの組み合わせを含む。これらの方法は、産業規模で触媒活性のあるTHHナノ粒子を合成することができる、1ステップの配位子フリーの一般化可能な方法を提供することができる。これらの方法はまた、産業における廃触媒などの非THH形状ナノ粒子をリサイクルし、本明細書に記載の触媒的に活性なTHHナノ粒子を形成する方法を提供することができる。
【0043】
本明細書の方法は、適切な熱処理後、外来金属に関係なく、四六面体(THH)形状Pt、Pd、Rh、Ni、Co、および二金属ナノ粒子を調製するために使用することができる。場合によっては、これらの方法は、THH形状PT、Pd、およびRhナノ粒子を提供する。密度汎関数理論(DFT)および電子顕微鏡研究の両方を使用して、このプロセスが発生する理由および方法を決定する。
【0044】
THHナノ粒子は、例えば電気化学的酸化反応の触媒として使用することができる。例えば、THHナノ粒子は、例えば、ギ酸をCOおよび/またはCOに酸化させるために使用することができる。場合によっては、この方法は、電流を、THHナノ粒子、HSO、およびギ酸の混合物に印加して、COおよび/またはCOを形成することを含む。Sb、Bi、Pb、およびTeで修飾されたTHH形状ナノ粒子を、ギ酸酸化用の電気触媒として評価す、市販のPt/C触媒よりも優れていると判断され、それによって、次世代燃料電池の開発で重要になる可能性のある有望な代替手段を提供する。
【0045】
本開示を説明する文脈における(特に特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」、「the」との用語、および類似の指示対象の使用は、別段の指示がない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、その範囲内に含まれる各個別の値を個々に指す簡潔な方法として役立つことを意図しており、各個別の値は、あたかも本明細書中で個々に列挙されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書に提供される任意およびすべての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良好に例解することを意図しており、特に請求されない限り、本発明の範囲の限定ではない。本明細書中の言語は、特許請求の範囲に記載されていない任意の要素を、本開示の実施に必須であることを示すとして解釈されるべきではない。単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上特に明記されていない限り、複数形の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「材料」という用語は、1つ以上の材料、またはそれらの組み合わせを意味することを意図している。
【0046】
本明細書で使用する場合、「約」および「およそ」という用語は、一般に、記載された値のプラスマイナス10%を意味する。例えば、約0.5には0.45および0.55が含まれ、約10には9~11が含まれ、約1000には900~1100が含まれる。
【0047】
本明細書に開示される方法、およびそれらの個々のステップの実施は、手動で、および/または電子機器によって提供される自動化の助けによって行われ得る。方法は、特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者は、方法に関連する行為を実施する他の手段が使用され得ることを容易に認識するであろう。例えば、種々のステップの順序は、別途記載のない限り、その方法の範囲または主旨から逸脱することなく変更されてもよい。加えて、個々のステップの一部を、組み合わせること、省略すること、またはさらなるステップにさらに再分割することができる。
【0048】
THHナノ粒子の調製方法
本明細書のTHHナノ粒子は、第1の金属を含む粒子を、第2の金属の存在下で500℃~1300℃で約0.5時間~約12時間加熱することによって調製することができる。第1の金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、またはそれらの組み合わせを含むことができる。場合によっては、第1の金属は、Pt、Pd、Rh、またはそれらの組み合わせを含むことができる。場合によっては、第1の金属はバイメタル性であることがすることができる。実施形態では、バイメタル性の第1の金属は、Pt、Ni、Co、Cu、Pd、Au、Rh、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、バイメタル性の第1の金属は、PtNi、PtCo、PtCu、PdPt、PdAu、PdCo、PdCu、RhPt、RhCo、RhNi、またはそれらの組み合わせを含むことができる。第2の金属は、Sb、Bi、Pb、Te、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0049】
固体状態の前駆体の熱分解は、貴金属ナノ粒子を大規模に生産するために業界で広く使用されている手法である(M.V.Twigg,Catalyst handbook(CRC,1989))。しかし、その方法で作成された粒子は典型的には、低指数のファセットおよび熱力学的に有利な触媒的に非理想的な形状を有する(Barnard,ACS Nano 3,1431-1436(2009))。本明細書に記載の微量の形状調節金属元素または第2の金属のアンダーポテンシャルな堆積(Personick et al.,Nano Lett.11,3394-3398(2011))を使用して、本明細書に記載の高指数ファセットナノ粒子を合成することができる。本明細書の方法を使用して、微量の外来形状調整金属元素による異方性成長を制御する。
【0050】
場合によっては、第1の金属前駆体および第2の金属粉末の混合物を、シリコンウェーハ上で加熱する(図34のA)。反応が完了し、続いて冷却すると、得られたナノ粒子の形態はTHHであり、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認することができる(例えば、図34のB)。平らなウェーハを、ナノ粒子と強い相互作用を有する高い比表面積を有する典型的な触媒支持体(カーボンブラックなど)と置き換えることによって、合成をグラム量に容易にスケール(scaled)することができる(例えば、図34、CおよびD)。実施形態では、これによって、合成されたままのTHH粒子のサイズが、平均して約200nmよりも大きいものから約20nm以下に劇的に減少する(例えば、図34のE)。実施形態では、金属塩前駆体から直接変換されたTHH粒子は、サイズが多分散([100]方向に沿ったエッジ長:206±144nm、サンプルサイズ:100)であることができるが、単分散THH粒子([100]方向に沿ったエッジ長:63±6.0nm、サンプルサイズ:100)は、単分散の立方体形状ナノ粒子(エッジ長:46±3.7nm、サンプルサイズ:100)を出発材料として使用し、同じ方法でそれらを単分散THH粒子に形質転換することによって得ることができる(図34、F~J)。
【0051】
THH形成プロセスをよりよく理解するために、化学蒸着(CVD)チャンバーを使用することができる。このチャンバーでは、第2の金属が管炉の上流に配置され、熱処理時にアルゴン/水素流によって第1の金属前駆体に運ばれる(図1)。反応器を使用して、Sb修飾PtなどのTHHナノ粒子の構造的および形態学的進化を決定することができる。SEM画像は、CVDによるTHH粒子の高収率(1000個中1000個)の形成を確認した(図2のA~E)。主要な露出ファセットは、透過型電子顕微鏡(TEM)画像およびそれに対応する制限視野電子回折(SAED)パターンによって指数化された高指数{210}平面であった。{210}ファセットに囲まれた理想的なTHHモデルは、TEM画像の構造とよく相関した。ナノ粒子の高分解能TEM(HRTEM)画像は、(210)平面上の原子の原子配列を示し、これは、(210)ファセットの原子モデルともよく相関した(図2のF~J)。
【0052】
反応温度、時間、およびSb粉末の量を体系的に調査して、それらの相対的な重要性を決定した(図5~10)。より高い温度は、より迅速なTHH形状粒子形成につながるが、高品質のTHHを生成するための時間枠の短縮につながる。より高温では、Sbの脱合金化がより速く発生し、滑らかな表面を有するTHH形状Pt粒子を生産するには、900℃以上の温度が必要である。興味深いことに、より大量のSbを使用する場合、脱合金化プロセスが発生するためにより長くかかるため、THH形状の形成が遅れる(図7)。実際、走査透過電子顕微鏡法(STEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDS)は、この結論を裏付けている(図1のB~Eおよび図8~9)。具体的には、Sbが最初のSbに富んだPt-Sb合金粒子から除去されるにつれて、THH形状Pt粒子が形成することを、2つの手法は示す。この新規な合金化/脱合金化形状調整プロセスは、従来の湿式化学法を定義する古典的な添加剤成長プロセスとは異なる。最後に、THH粒子から始めて、同じセットアップを使用してSbをそれらに移送するならば、この合金化プロセスは不規則な形状粒子という結果となり、このことは、ほぼ完全なTHH粒子を生成するためには、Sb脱合金化プロセスが重要であることを示す(図11~12)。
【0053】
Ptナノ粒子の、Sb蒸気との合金化および脱合金化は、どちらも最初のナノ粒子形状とは独立的に進行したため、この方法は、貴金属触媒の大規模な用途にとって重要な産業上の懸念である、形状悪いPt廃触媒をリサイクルする効果的な方法として使用することができる。実施形態では、HPtClを700℃で熱分解することによって、Ptナノ粒子をシリコンウェーハ上で合成することができる(図2のKおよび図13のA)。得られたナノ粒子は、廃触媒で観察されたランダムな形状と同様の不規則な形状を示し、それによって、合金化-脱合金化プロセスの形状修復能力をテストするためのモデルシステムを確立した。実施形態では、サンプルを次に、第2の金属ソースとしての1mgのSbと共に900℃に30分間加熱することができる。得られたPt-Sb合金ナノ粒子は、主に低指数の立方体形状を示した(図2のLおよび図13のB)。Sbソースを除去し、ナノ粒子をさらに、900℃でさらに30分間加熱した。得られたナノ粒子のSEM画像(図2のMおよび図13のCおよびD)は、それらの>99%が切断THH形態を示したことを確認し、このことは、本明細書の方法が、失活した触媒から触媒的に重要なTHH粒子を再確立するのに有用であることができることを示した。熱処理の完了後、THHナノ粒子を含む管を炉から除去することによって、THHナノ粒子を室温に急冷した。代わりに、徐冷を使用すると、急冷で得られた滑らかな表面を有する粒子とは対照的に、粗い表面を有するTHHナノ粒子が得られた(図14)。滑らかな表面は、高指数平面のSbで安定化することができ、900℃未満の温度で加熱すると、それらは安定せず、ナノスコピックなテラスアンドステップ構造を有するファセットに再構築する。実際、高品質のTHH構造を600℃で12時間アニールしたならば、そのプロセスを電子顕微鏡によって視覚化することができた(図15および16)。滑らかな{210}ファセットは、粒子を900℃で再加熱することによって再生することができ、それは、Sb脱合金化プロセスを開始した(図14および15)。Sbの内部再分布によって引き起こされる、Ptなどの第1の金属{210}ファセットのこの可逆的な表面再構成は、新しいタイプの形状回復プロセスである。
【0054】
Sbに加えて、微量元素であるBi、Pb、およびTeも、切断THH形状Ptナノ粒子の形成を誘導することができる(図3のA)。この戦略は、形状制御がこれまで報告されていない貴金属PdおよびRh、並びにNiおよびCoのTHH形状ナノ粒子を合成するのに有用であることが判明した(図3および図17)。これらの粒子の露出平面のMiller指数は、{210}であることが確認された。これは、Sb修飾Pt THH形状ナノ粒子のそれらと同じである。この方法の一般化可能性を、Bi修飾によってバイメタル性ナノ粒子のライブラリーを合成することによってさらに実証した(図33および図17および18)。
【0055】
fcc構造を有するPtナノ粒子について、種々の結晶ファセットの比表面エネルギー(面積当たりベース)は、σ(111)<σ(100)<σ(110)<σ(210)の順序でランク付けされ(Zhang et al.,Appl.Surf.Sci.229,34-42(2004))、単結晶Pt粒子についての平衡形状は、切断八面体である。合成されたPt粒子における{210}ファセットの卓越した存在は、それらの比表面エネルギーを低減させることによって、Sb修飾が{210}ファセットを安定化させることを示す。X線回折データ(図19)は、粒子内のPtおよびSbの原子順序が、THH形状Pt粒子の形成の理由となることができないことを証明した。実際、経時的な研究は、より早い時点で形成された金属間相(PtSb)粒子がTHH形態をとらないことを示す。THHの形態が観察されるのは、Sbの大部分が除去され、バルクが純粋なPtになるまでのみである。したがって、そのような粒子におけるSb修飾は主に表面上にあると結論付けることができる。この仮説をテストするために、DFTを使用して、(210)平面、3つの低指数ファセット(100)、(111)、および(110)、およびSb修正後の種々のタイプの高指数平面の比表面エネルギーを計算した(図20~25、表1~4)。重要なことに、計算結果は、これらのファセットの比表面エネルギーがSbの修飾後に劇的に変化し、Pt(210)-Sbの比表面エネルギーが考慮されたファセットの中で最も低いことを確認し、これは、粒子の表面のSbがTHH形態の安定化において中心的な役割を果たしているという結論と一致した。
【0056】
種々の実施形態において、THHナノ粒子を調製する方法は、任意の高指数ファセットを有するTHHナノ粒子を含むことができる。場合によっては、THHナノ粒子を調製する方法は、{210}ファセット、{310}ファセット、それらの隣接平面、またはそれらの組み合わせを含むTHHナノ粒子を含むことができる。
【0057】
実施形態では、第1の金属は、当業者に適した任意の貴金属を含むことができる。実施形態では、第1の金属は、Pt、Pd、Rh、Ni、Co、またはそれらの組み合わせを含むことができるか、または第1の金属は、バイメタル性であることができる。実施形態では、第1の金属は、Pt、Pd、Rh、またはそれらの組み合わせを含むことができる。実施形態では、バイメタル性の第1の金属は、Pt、Ni、Co、Cu、Pd、Au、Rh、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、バイメタル性の第1の金属は、PtNi、PtCo、PtCu、PdPt、PdAu、PdCo、PdCu、RhPt、RhCo、RhNi、またはそれらの組み合わせを含むことができる。実施形態では、第1の金属は白金を含むことができる。実施形態では、THHナノ粒子を調製する方法は、第1の金属の塩の分解および/または還元によって形成される粒子を含むことができ、または粒子は、第1の金属の金属合金から形成される。実施形態では、THHナノ粒子を調製する方法は、HPtCl・6HO、NaPdCl、NaRhCl、Ni(NO・6HO、Co(NO・6HO、Cu(NO・xHO(式中、xは1~10である)、HAuCl・3HO、またはそれらの組み合わせの分解および/または還元によって形成される粒子を含むことができる。実施形態では、THHナノ粒子を調製する方法は、HPtCl・6HO、NaPdCl、NaRhCl、またはそれらの組み合わせの分解および/または還元によって形成される粒子を含むことができる。
【0058】
実施形態では、THHナノ粒子を調製する方法は、第2の金属を含むことができ、第2の金属は、当業者に適した任意の形状指向金属である。「形状指向」という用語は、本明細書に記載されており、Personick et al.NanoLett.11,3394-3398(2011)にさらに記載されている。場合によっては、第2の金属は、Bi、Pb、Sb、Te、またはそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の金属は、Biを含むことができる。場合によっては、第2の金属はSbを含むことができる。場合によっては、THHナノ粒子を調製する方法は、第2の金属の塩の分解および/または還元によって形成される第2の金属を含むことができる。実施形態では、第2の金属は、出発する第1の金属粒子および出発する第2の金属の総量に対するある量で存在する。例えば、第2の金属は、使用される第1の金属粒子および第2の金属の総量に対して、0.01重量%~25重量%の量で存在することができる。実施形態では、第2の金属は、0.01重量%~15重量%、または0.01重量%~10重量%、または0.01重量%~5重量%、または0.01重量%~1重量%、例えば、0.1重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、または15重量%の量で存在することができる。
【0059】
粒子の第2の金属蒸気との合金化および脱合金化は、最初の粒子形状とは独立的であるため、本明細書の方法は、貴金属触媒の大規模な適用についての重要な産業上の懸念である、非THH(「不規則な形状」)の第1の金属ナノ粒子(「廃触媒」)をリサイクルするための効果的な方法として使用することができる(Morgan et al.,ACS Catal.5,3430-3445(2015))。実施形態では、HPtClを700℃で熱分解することによって、Pt粒子をSiウェーハ上で合成した(図13のa)。得られた粒子は、廃触媒で観察されたランダムな形状と同様の不規則な形状を示し、それによって、合金化/脱合金化プロセスの形状修復能力をテストするためのモデルシステムを確立した。そのため、外来金属ソースとしての1mgのSbと共に、サンプルを900℃で30分間加熱した。得られたSb-Pt合金粒子は、主に低指数の立方体形状を示した(図13のb)。Sbソースを除去し、粒子をさらに、900℃でさらに30分間加熱した。得られた粒子のSEM画像(図13のc~d)は、本質的にすべてのそれらが切断THH形態を示したことを確認し、このことは、この方法が、不活性化された触媒から触媒的に重要なTHH粒子を再確立するのに有用であり得ることを確認した。
【0060】
実施形態では、熱処理の完了時に、粒子を含む管を炉から除去することによって、粒子を室温まで急冷した。もし代わりに、徐冷を使用するならば、急冷によって得られる滑らかな表面を有する粒子とは対照的に、粗い表面を有するTHH粒子が得られる(図14)。滑らかな表面は、高指数平面のSbで安定化され、900℃未満の温度で加熱されると、それらは安定性がなく、ナノスコピックのテラスアンドステップ構造のファセットに再構築する。実際、もし高品質のTHH構造を600℃で12時間アニールするならば、このプロセスを電子顕微鏡によって明確に視覚化することができる(図15~16)。滑らかな{210}ファセットは、同じ粒子を900℃で再加熱することによって再生することができ、それは、Sb脱合金化プロセスを開始する(図14~15)。Sbの内部再分布によって引き起こされる、Pt{210}ファセットのこの可逆的な表面再構成は、形状回復プロセスである。
【0061】
実施形態では、THHナノ粒子を調製する方法は、第2の金属が粒子の上流に配向され、ガス流を介して粒子に運ばれる反応器で実施することができる。本明細書に記載のガスは、当業者に適切な任意のガスであることができる。実施形態では、ガスは、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0062】
実施形態では、第1の金属を含む粒子を、支持体に組み込むことができる。本明細書に記載の支持体は、当業者に適した任意の支持体であり得る。実施形態では、支持体は、当業者に適した任意の酸化物を含むことができる。実施形態では、支持体は、シリカ、チタニア、セリア、アルミナ、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組み合わせを含むことができる。場合によっては、支持体は導電性であることができる。実施形態では、導電性支持体は炭素を含むことができる。実施形態では、導電性支持体は、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、炭化タングステン、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0063】
実施形態では、THHナノ粒子を調製する方法は、当業者に適した任意の配位子の非存在下で実施することができる。実施形態では、THHナノ粒子を調製する方法は、有機配位子の非存在下で実施することができる。
【0064】
酸化性触媒
本明細書に記載されているTHHナノ粒子を酸化触媒として使用する方法が、本明細書に提供される。実施形態では、本明細書に記載のTHHナノ粒子は、ギ酸、メタノール、エタノール、一酸化炭素、またはアンモニウムなどの適切な小分子適切などの酸化を触媒することができる。実施形態では、本明細書に記載のTHHナノ粒子は、ギ酸のCOおよび/またはCOへの酸化を触媒することができる。
【0065】
元素Sb、Bi、Pb、およびTeは、ギ酸の電解酸化に対する触媒の効率および安定性を促進するのに有利であり(L.An et al.,Nano Energy 15,24-32(2015))、燃料電池の化学燃料のために魅力的な選択肢である。さらに、{210}ファセットは、[001]ゾーンで最も密度の高いステップ原子を保有し、fcc結晶の最も「開いた」平面である。最後に、{210}ファセットを有するPtナノ粒子は、ギ酸電解酸化に対して非常に高い触媒活性を示すことが報告されている(Sun et al.,J.Electroanal.Chem 370,273-280(1994))。バルクスケールで合成された、カーボンブラック上のPt-M(M=Sb、Bi、Pb、Te)およびPd-Bi THH NPの、ギ酸電解酸化に対する触媒活性を調べ、本明細書に記載のPt-M(M=Sb、Bi、Pb、Te)THH NPが、市販のPt/CおよびPd/C触媒よりも比較的、触媒的により活性であることを確認した(図4図27~31、図34のC~Eおよび図35)。バルクスケールで合成された、カーボンブラック上のPt-M(M=Sb、Bi、Pb、Te)ナノ粒子の、ギ酸電解酸化に対する触媒活性を、市販のPt/C触媒のそれと比較してテストした(図4図26~28)。よく知られているように、触媒の表面上でのギ酸電解酸化は通常、1)直接脱水素経路、および2)間接脱水経路の2つの経路に従う(Yu et al.,J.Power Sources 182,124-132(2008),Rice et al.,J.Power Sources.111,83-89(2002))。約0.5VのピークIは、脱水素経路を介したギ酸酸化に対応し、0.9V以下のピークIIは、脱水経路を介して形成されたCOadsの酸化に対応する(図4のa)。市販のPt/C触媒における間接経路の卓越は、直接ギ酸燃料電池でのその適用を妨げる(Yu et al.,J.Power Sources 182,124-132(2008),Rice et al.,J.Power Sources.111,83-89(2002))。しかし、合成されたTHH形状Pt-Bi触媒は、直接経路を優先し、間接経路を介した寄与の証拠はほとんどない。市販のPt/C触媒(R=0.5)と比較して、THH形状Pt-Pb触媒についてのより高いiピークI対iピークII比(R)(R=2.1)、THH形状Pt-Sb触媒についてのより高いiピークI対iピークII比(R)(R=1.8)、およびTHH形状Pt-Te触媒についてのより高いiピークI対iピークII比(R)(R=1.1)はまた、直接脱水経路がこれらの触媒にとってより有利であることを示す。具体的には、0.5Vにおいて、Pt-Bi触媒の電流密度(13.25mA/cm)、Pt-Pb触媒の電流密度(3.43mA/cm)、Pt-Sb触媒の電流密度(2.71mA/cm)、およびPt-Te触媒の電流密度(2.26mA/cm)は、市販のPt/C触媒のそれ(0.21mA/cm)よりもそれぞれ63、16、13、および11倍より高かった。重要なことに、外来金属元素を使用せずに合成されたPtナノ粒子は、触媒活性が低く(Pt対照サンプル、0.5Vで0.28mA/cm)、このことは、形状制御および外来金属修飾に由来する触媒利益を強調する。さらに、形状制御の重要性を外来金属の修飾と区別するために、Bi原子を有する修飾された市販のPt/C触媒を繰り返し電気化学的堆積によって作成し、その触媒特性を評価した。同一条件下では、この材料は、0.5Vで3.65mA/cmの電流密度を示し、これは、THH形状Pt-Bi触媒の4分の1であった(図29)。まとめると、外来金属の修飾に加えて、高指数ファセットが触媒性能の主要な要因であると結論付けなければならない。最後に、電流測定のi-t曲線(図28)は、これらのTHH形状触媒が堅牢であることを示す。0.5Vの固定ポテンシャルにおいて連続運転の1時間後に測定した電流密度は、以下のとおりであった。THH形状Pt-Biで0.44mA/cm、THH形状Pt-Pbで0.34mA/cm、THH形状Pt-Sbで0.30mA/cm、THH形状Pt-Teで0.21mA/cmであり、商用のPt/C触媒でのそれらよりも、それぞれ、(22、17、15および11倍より高い(0.02mA/cm))。
【0066】
従来の高指数ファセットナノ粒子合成法とは異なり、本明細書に記載の方法は、非常に使いやすく、拡張性があり、産業生産に効果的である。さらに、高指数ファセットを失った不活性化構造は、本明細書に記載する方法によってリサイクルすることができるため、この方法は、市販の触媒サンプルでさらに調査および特性評価されてきたプロセスである、触媒回収および再活性化について特に魅力的である(図32)。
【実施例
【0067】
材料および方法
Sb粉末(99.5%)、Bi粉末(99.99+%)、Pb粉末(99.95%)、Te粉末(99.997%)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB、>99%)、L-アスコルビン酸(>99%)、金属化合物(HPtCl・6HO、NaPdCl、NaRhCl、HAuCl・3HO、Co(NO・6HO、Ni(NO・6HO、およびCu(NO・xHO)、ギ酸(95%)、硫酸(99.999%)、Pt/C触媒(20重量%Pt負荷)、Pd/C触媒(10重量%Pd負荷)、およびNafion溶液(5重量%)を、Sigma-Aldrichから購入した。カーボンブラックパウダー(Vulcan XC-72)をCabotから購入した。シリコンウェーハをNova Electronic Materialsから購入した。上記の材料を、受け取ったままの状態で使用した。実験に使用したすべての水は、Milliporeの超純水(18.2MΩ・cm)であった。
【0068】
Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、またはTe)、Pd-M(M=Sb、Bi、Pb、またはTe)、Rh-M(M=BiまたはTe)、Ni-Bi、Co-Bi、およびバイメタル-Bi THH形状粒子のシリコンウェーハ上での合成。
シリコンウェーハの1片を最初に、60Wで5分間酸素プラズマで処理し、続いて、興味のある金属前駆体(混合物)(Ptのために10.75mg/mL HPtCl・6HO、Pdのために6.11mg/mL NaPdCl、Rhのために97mg/mL NaRhCl、Niのために12.08mg/mL Ni(NO・6HO、Coのために12.07mg/mLCo(NO・6HO、Cuのために7.78mg/mL Cu(NO・xHO、およびAuのために16.33 mg/mL HAuCl・3HO)の200μLの水溶液を、500rpm/秒のランピングレートで、1000rpmで60秒間スピンコーティングした。空気中で乾燥させた後、シリコンウェーハを管状炉の中央に配置した。燃焼槽に負荷されたおよそ1mgのSb(またはBi、Pb、およびTe)粉末を、炉の上流のシリコンウェーハの近くに配置した。便宜上、外来金属粉末をSiウェーハ上に直接負荷することもできる。熱処理を、Hガス流下で、12分以内に600℃にランプし、600℃で10分間保持し、1時間以内に25℃に冷却し、雰囲気をAr(またはAr/H混合)に切り替える、のようにプログラムした。高温処理は、種々の組み合わせによって異なった。(1)Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、またはTe)、Ni-Bi、Co-Bi、PtNi-Bi、PtCo-Bi、およびPtCu-Bi粒子を合成するには、20分間で900℃にランプし、900℃で1時間保持する。(2)Pd-Bi、Rh-Bi、PdPt-Bi、PdAu-Bi、PdNi-Bi、PdCo-Bi、PdCu-Bi、RhPt-Bi、RhCo-Bi、およびRhNi-Bi粒子を合成するには、20分間で1000℃にランプし、1000℃で1時間保持する。(3)Pd-M(M=Sb、Pb、またはTe)およびRh-Te粒子を合成するには、4時間で1200℃にランプし、1200℃で1時間保持する。すべての組み合わせで、熱処理の完了時に管を室温まで急冷した(サンプルは、なおもArまたはAr/H雰囲気にあった)。Ar(またはAr/H混合物)の流速は200sccmである。
【0069】
Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、Te)、Pd-M(M=Sb、Bi、Pb、Te)、およびRh-M(M=Bi、Te)切断THH形状粒子の、シリコンウェーハ上の代替合成:
燃焼槽に負荷されたおよそ1mgのSb(またはBi、Pb、Te)粉末を、管状炉の中央にソースとして配置した。シリコンウェーハの一片を、最初に60Wで5分間酸素プラズマ処理し、続いてHPtCl・6HO(Pdの場合はNaPdCl、Rhの場合はNaRhCl)の水溶液を、500rpm/秒のランピングレートで1000rpmで60秒間スピンコーティングした。空気中で乾燥させた後、シリコンウェーハを、炉の下流の金属粉末ソースの近くに配置した。熱処理を、Hガス流下で、12分以内に600℃にランプし、600℃で10分間保持し、1時間以内に25℃に冷却し、雰囲気をArに切り替える、のようにプログラムした。高温処理はそれぞれ異なった。(1)Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、およびTe)粒子を合成する場合:20分間で900℃にランプし、900℃で1時間保持する。(2)Pd-BiおよびRh-Bi粒子を合成する場合:20分間で1000℃にランプし、1000℃で1時間保持する。(3)Pd-M(M=Sb、Pb、Te)およびRh-Te粒子を合成する場合:4時間で1200℃までランプし、1200℃で1時間保持する。熱処理が完了したら、管を室温まで急冷した(サンプルはなおもAr雰囲気中にあった)。
【0070】
均一なPdナノキューブの合成。
単分散Pdナノキューブを、文献の方法に基づいて合成したが、わずかな変更を加えた(Niu et al.,Cryst.Growth Des.8,4440-4444(2008))。(1)22nmのPdエッジ長のナノキューブを、1つのアリコートの10mMのHPdCl溶液の1mLを12.5mMのCTAB溶液の20mLに撹拌しながら添加することによって合成した。得られた溶液を、95℃のオイルバスで5分間加熱した。次に、1つのアリコートの100mMアスコルビン酸溶液の160μLを混合物に加えた。さらに95°Cで30分間攪拌、加熱した後、溶液を室温まで冷却し、精製せずに、より大きなPdナノキューブを成長させるためのシード溶液として使用した。(2)約50nmのエッジ長のPdナノキューブの合成。10mMのHのPdCl溶液の125μLおよび調製したままのシード溶液の80μLを、100mMのCTABの5mLを加え、続いて、100mMのアスコルビン酸溶液の50μLを加えた。得られた溶液をボルテックスミキサーで完全に混合し、40℃の水浴に24時間配置した。ナノキューブを遠心分離(8000rpmで2サイクル)によって収集し、水に再懸濁してから、基板上に分散させた。空気中で乾燥させた後、これらをTHH形状調整実験の出発材料として使用した。形状調整処理は、Pd-Bi THHの合成に使用したものと同じであった。
【0071】
作業電極の調製。
カーボンブラック上でTHH形状Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、またはTe)粒子を合成するために、カーボンブラック粉末およびHPtCl・6HO(20重量%Pt負荷)の5mg/mL水性混合物を、60分間超音波処理した。燃焼槽内において空気中で乾燥させた後、サンプルを管状炉の中央に配置した。1mgのM粉末を燃焼槽に負荷し、カーボンブラック粉末および金属前駆体の混合物の上流の管に配置した。便宜上、外来金属粉末をカーボンブラック粉末および金属前駆体と共に1つの燃焼槽で混合することもできる。熱処理は、シリコンウェーハ上でTHH形状Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、またはTe)粒子を合成する場合と同じであった。調製したままのサンプルを収集し、水に分散させた(5mg/mL)。5μLの分散液を回転ディスク電極(RDE)(直径3mm)上に移送した。室温で乾燥させた後、2μLのNafion溶液(0.5重量%)を電極表面に堆積させ、乾燥させた。
【0072】
作用電極の代替的調製。
カーボンブラック上でTHH形状Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、およびTe)粒子を合成するために、燃焼槽に負荷された1mgのSb(またはBi、Pb、およびTe)粉末を、ソースとして管状炉中央に配置した。カーボンブラック粉末およびHPtCl・6HO(20%Pt負荷)の5mg/mLの水性混合物を、60分間超音波処理した。燃焼槽内において空気中で乾燥させた後、サンプルを粉末ソースの下流の管に配置した。熱処理は、シリコンウェーハ上でTHH形状Pt-M(M=Sb、Bi、Pb、およびTe)粒子を合成する場合と同じであった。調製したままのサンプルを収集し、水に分散させた(5mg/mL)。5μLの分散液を、回転ディスク電極(RDE)(直径3mm)上に移送した。室温で乾燥させた後、2μLのNafion溶液(0.5重量%)で電極表面を覆い、乾燥させた。
【0073】
種々の触媒についての電気化学的表面積(ECSA)およびギ酸電解酸化反応活性の測定。
電気化学的測定を、Epsilon Eclipse Workstationを使用して、298Kの3電極ガラスセルで実行した。コイル状の白金線およびAg/AgCl電極を、それぞれ対極および参照電極として使用した。すべてのポテンシャルを、可逆水素電極(RHE)に対して校正した。0.05および0.4Vの間の水素の吸脱着、およびPt表面上に吸着された水素の単層を210μC/cmと推定することによって、ECSAを電気化学的に決定した。サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を、50mV/秒の掃引速度のArガス流下、0.5M HSO中で実行した。ギ酸電解酸化のすべての測定を、50mV/秒の掃引速度で、0.5M HSO+0.5M HCOOH中で実行した。2回目のスイープが記録された。
【0074】
種々の触媒についての電気化学的表面積(ECSA)およびギ酸電解酸化反応活性の代替的測定。
電気化学的測定を、Epsilon Eclipse Workstationを使用して、298Kの3電極ガラスセルで実行した。コイル状の白金線およびAg/AgCl電極をそれぞれ対極および参照電極として使用した。すべてのポテンシャルを、可逆水素電極(RHE)に対して校正した。0.05および0.4V間の水素の吸脱着、およびPt表面上に吸着された水素の単層を210μC/cmと推定することによって、ECSAを電気化学的に決定した。サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を、50mV/秒の掃引速度でArガスの流下、0.5M HSO中で実行した。ギ酸電解酸化のすべての測定を、50mV/秒の掃引速度で、0.5M HSO+0.5M HCOOH中で実行した。2回目のスイープを記録した。
【0075】
特性評価。
走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、Hitachi SU-8030電界放出SEMで撮影した。走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像を、Hitachi HD-2300STEMで200kVの加速電圧で撮影した。エネルギー分散型X線分光法(EDS)スペクトルおよび元素マップを、Thermo Scientific NSS 2.3で取得した。HRTEM画像を、JEOL ARM 300F GrandARMTEMで300kVの加速電圧で撮影した。X線回折(XRD)スペクトルを、Cu Kαソースを有するRigaku Ultima上で収集した。
【0076】
計算の詳細。
すべての密度汎関数理論(DFT)計算を、射影増強波(PAW)ポテンシャルとVienna Ab-initio Simulation Package(VASP)、および一般化勾配近似(GGA)(32~34)のPerdew-Burke-Ernzerhof(PBE)定式化を使用して実行した。この研究では、スーパーセル近似を使用し、ここで、表面に垂直な方向に沿って周期的に配置された結晶スラブおよび真空領域によって表面をモデル化した。スラブの厚さを15オングストローム以上に保つため、種々の数の原子層を、種々の表面に対して選択した(表1)。真空領域の厚さはすべての表面に対して15オングストロームであった。真ん中の3つの層を固定し、残りの層を解放させた。電子波動関数を表すために使用する平面波基底関数系には、400eVのエネルギーカットオフを使用した。Brillouinゾーン統合を、Γ-中心のk点メッシュを使用してサンプリングした(表1)。比表面エネルギーを、
【数1】
によって計算し、ここで
【数2】
はスラブの総エネルギーであり、nはスラブ中のi原子の数であり、μは元素iの化学ポテンシャルであり、Aは表面積である。
【0077】
実験計画
合成パラメータの影響:
THH形態の形成は、反応温度、時間、およびSb粉末ソースの量によって影響を受けた(図5~6)。1mgのSb粉末をソースとして使用した場合、600℃では12時間反応させた後でもPt粒子の形状は不規則なままであった。800℃での反応の開始時点では、粒子は不規則な形状を示した。30分間反応させた後、立方体の粒子を観察した。1~12時間の熱処理後、Pt粒子はTHH形状をとることができたが、これらの粒子の表面は非常に粗く、ナノスケールのテラスアンドステップ構造が高指数平面上に形成されていた。900℃では、粒子の形態もまた反応の開始時点では不規則であった。しかし、1時間の熱処理後、滑らかな表面を有するTHH形状粒子が生産された。これらの観察結果は、滑らかな表面を有するTHH形状Pt粒子を生産するためには、約900℃の高温が必要であることを示す。さらに3時間の熱処理で、エッジが切断されると共に元の鋭いTHH粒子は破壊され、より球形になる傾向があった。1000℃で1時間反応させた後に合成されたTHH形状粒子はすでにわずかに破壊されており、このことは、1000℃で高品質のTHHを生成するための時間枠が、900℃でのそれよりも減少したことを示した。
【0078】
Sb粉末ソースの量も、またTHH形態の形成に大きな影響を及ぼす。Sb量を0.1mgに減らすと、THH形状Pt粒子を形成するのに必要な時間が30分に短縮された。30分ごとに10mgのSb粉末を供給した場合、1時間反応させても、THH形状Pt粒子は観察されなかった。上記の結果は、過剰量のSb粉末ソースを使用すると、THH形状の形成が遅れることを示す。しかし、合成中のPt THH形状形成の誘導にはSbが必要であることがわかった。Sb粉末を使用せずに900℃で1時間反応させた後に合成されたPt粒子は、低指数ファセットによって囲まれた不規則な形状を示すことがわかり、THH形状Pt粒子は見られなかった(図7)。
【0079】
STEMおよびEDSの結果(図8~9)は、900℃での反応開始時に観察された不規則な形状の粒子が、Sbに富むPtSb合金であったことを確認した。900℃への温度ランピング期間中に、Sbは溶融して蒸発し、次いで、流れるArガスによってPtナノ粒子部位に運ばれた。SbおよびPtの間の強い相互作用は、PtSb合金粒子の形成につながった。反応が進むにつれて粒子は形状再構築を受け続け、粒子中の平均Sb含有量は、Sb粉末ソースの消費のために連続的に低下した。30分の処理後、Sbは粒子表面上でより濃縮され、THH形状は形成し始めた。さらに10分間のアニーリングで、Sbは粒子からさらに放出されたが、THH形態は維持された。これらの結果は、THH形状Pt粒子の形成が、粒子内からの過剰なSbの抽出によって開始されることを示す。
【0080】
本明細書で合成されたPt粒子の形状は、完全に鋭いTHHではなかったが、角および先端が切断され、{100}および{111}平面が露出されていた。これらの低指数ファセットの存在が、過剰アニールによるものであった可能性を排除するために、1mg Bi粉末をソースとして使用して、スピンコートしたサンプルを、10℃/分のランピングレートで800℃に加熱し、続いて管を氷冷水で急冷することによって、Pt粒子を合成した。文献の結果によると、直径約200nmのTHH形状Pt粒子は、7℃/分のランピングレートで約815℃に加熱しても、それらの形状を保存することができる(Tian et al.,Science 316,732-735(2007))。しかし、本明細書で提供され、THH形状を示したPt粒子は、文献の報告と比較して、熱処理がより穏やかでより短時間でかつより低い仕上げ温度であったとしても、すでに角および先端が切断されていた(図10)。この結果は、合成プロセス中に生産される完全に鋭いTHH形状粒子がなかったことを証明することができる。
【0081】
THH形態に対する外部Sb浸透の影響:
THH形態に対する外部Sb浸透の影響をチェックするために、切断THH形状Pt粒子を、シリコンウェーハ上で最初に合成した(図11のa)。1mgのSb粉末ソースと共に900℃で30分間加熱した後には、これらの粒子のTHH形状は破壊された(図11のb)。別の対照実験は、追加のSb粉末ソースがない場合、切断THH形状Pt粒子は、その他は同じ処理の後にそれらの形態を保持することができたことを示した(図12)。これらの観察は、外部Sbとの合金化が、Pt粒子がTHH形状を形成するのを防ぐことを証明する。前述の継時のEDS特性評価の結果(図8~9)によると、THH形状が破壊した粒子内の過剰量のSbが予想された。したがって、Sbを900℃で抽出できたならば、粒子は依然としてTHH形態を形成することが可能であるはずである。これを証明するために、同じサンプルを、余分なSb粉末ソースを使用せずに900℃で30分間さらに加熱し、SEM画像は、Pt粒子についてのTHH形状の再形成を確認した(図11のc)。処理後のこれらの粒子の移動および粗大化は、1mg Sb粉末ソースとの最初のステップの熱アニーリングのそれらほどには激しくはなかった。しかし、粒子の配向は、Sbの抽出中にわずかに変化した(図11のd~e)。
【0082】
{210}高指数平面の可逆的再構築:
THH形状Pt粒子を合成する場合、熱処理の完了時に、管を炉から除去して、より低い温度範囲での滞留時間を減少させることによって、粒子を室温に急冷することが重要であった。粒子を、5℃/分の速度でゆっくりと室温に冷却するならば、粗い表面を有するTHH形状粒子が形成した(図14)。この結果は、Sbで安定化された高指数平面が安定ではなく、900℃より低い温度でアニールされた後、ナノスコピックなテラスアンドステップ構造に再構築することを示す。この現象をさらに理解するために、600℃での熱アニーリング時の原子的に滑らかな{210}平面を有するTHH形状Pt粒子の形態進化を、SEMによって追跡した(図15)。アニーリング処理後に、ナノスコピックなテラスは現れ、{111}平面のサイズは縮小した。Pt族金属の高指数平面についての、吸着物誘導マイクロファセット形成は、表面科学ではよく知られている(Ermanoski et al.,Surf.Sci.596,89-97(2005))。しかし、報告された研究は、単結晶性貴金属表面およびO、COなどの非金属ガスの間の相互作用に主に焦点を当てている。本明細書に開示されるように、金属元素Sbによって誘導されるPtナノ粒子の形態変化。供給される外部Sbソースがなかったため、理論に拘束されることを意図しないが、Pt粒子の表面再構成は、Pt表面上のSbの再分布に主によるものであった。EDSマッピングはまた、600℃で12時間の熱アニーリング後に粒子内に組成変化がほとんどなかったことを確認した(原子組成がPt76Sb24からPt79Sb21に)(図16)。粒子を900℃で再加熱することによって、原子的に滑らかな{210}ファセットを再形成することができた(図14~15)。Pt高指数ファセットのこの可逆的表面再構成は、[110]の結晶学的ゾーンに属するPt(557)およびPt(332)平面(39)でも報告されており、それは、この仕事でのPt{210}平面についての[001]ゾーンとは異なる。また、報告された表面再構成は、外部COガスによって誘導されたが、この研究では、可逆的なPt粒子表面構造形成は、新規のタイプの粒子形状回復プロセスである、内部Sb再分布によって引き起こされた。
【0083】
DFT計算:
表面スラブ構造(図19)を、Atomic Simulation Environment(ASE)を使用して構築し、VESTA(Momma et al.,J.Appl.Crystallogr.44,1272-1276(2011))を使用して、これらの表面を視覚化した。外来金属(Sb、Bi、Pb、およびTe)原子は、すべての表面構造の中で最上部の表面層にのみ現れた。ここでは、原子あたりのバルクPtの総エネルギーを、Ptの化学ポテンシャル、すなわち
【数3】
として選択した。Pt表面に吸着した外来金属(Sb、Bi、Pb、およびTe)については、それらの化学ポテンシャルを定義する必要がある。ここでは、Sbを例として取り上げ、それらの化学ポテンシャルをどのように決定したかを説明する。理論に縛られることを意図せずに、表面安定性の環境への依存性を研究するために、μsbは、熱力学的に許容される化学ポテンシャル
【数4】
の間で変化すると仮定した。ここで、
【数5】
は原子あたりの元素バルクSbの総エネルギーであり、
【数6】
はμPtを介して
【数7】
に関連する((
【数8】
は、化合物SbPtの原子当たりの総エネルギーである。)。化合物SbPtは、Open Quantum Materials Database(OQMD)(Saal et al.,JOM 65,1501-1509(2013),Kirklin et al.npj Comput.Mater.1,15010(2015))からの凸包に従うPt-Sb合金領域内の最大のSbパーセントを有する。したがって、
【数9】
は、Sbの化学ポテンシャルの下限になる。同様に、化学ポテンシャルの範囲を、他の3つの金属Bi、Pb、およびTeについて得た(表2)。
【0084】
{210}ファセットを安定化するSbの能力を確認するために、DFTを使用して、Sb修飾の前後の(210)平面および3つの低指数ファセット(100)、(111)、および(110)の比表面エネルギーを計算した(図19~20、表1~4)。Sb修飾前のこれらのファセットのエネルギーの計算結果は、以前の報告(Nicholas et al.,Phys.Today 18,67(1965))であって考慮される4つのファセットの中で、(111)平面は、最低の比表面エネルギー(1.519J/m)を有し、(210)平面のエネルギーは最高である(1.900J/m)という報告と一致していた。しかし、Sb修飾の後、これらのファセットの比表面エネルギーは劇的に変化し、それらの順序も変化し、ここで、Pt(111)-Sbのエネルギーが今最高であり(4.357J/m)、Pt(210)-Sbは最低のエネルギーを有した(0.392J/m)。
【0085】
理論に拘束されることを意図することなく、Pt{210}ファセットの優先的な形成はまた、これらのファセットの比表面エネルギーがすべてのタイプの高指数ファセットの中で最も低いことを暗示する。結晶平面座標を説明するために広く使用されている単位立体三角形では、(210)ファセットは[001]結晶学的ゾーンに位置し、2(100)×(110)として表すことができ、ステップ状の表面が、(100)対称性の原子幅のテラスで構成され、(110)対称性の単原子のステップによって分離されたことを示す。DFTで、Sb修飾Ptの比表面エネルギーも計算し、(310)(=3(100)×(110))およびPt(320)(=3(110)×(100))ファセットは、[001]ゾーン中の過剰の(110)または(100)下位表面を有するステップ状の平面を表した。さらに、Sb修飾Pt(221)およびPt(211)の比表面エネルギーを、他の2つの結晶学的ゾーンのステップ状の平面を表した比較のために選択した。検討したすべてのファセットについて、それらの比表面エネルギーを、外来金属Sbの種々の表面被覆率で計算した(図22~25)。計算結果は、表面Sb原子の1単分子層(ML)で覆われたPt(210)の比表面エネルギーが最も低かったことを確認し、これは実験的観察を裏付けた。さらに、これらのファセットの比表面エネルギーに対するSb化学ポテンシャルの影響を調査し、Sb修飾後、Pt(210)ファセットが常に、最低の比表面エネルギーを有することを確認した(図26)。最後に、DFT計算を、他の3つの外来金属(Bi、Pb、およびTe)について同じ方法で実行し、修飾後、Pt(210)ファセットの比表面エネルギーが、外来金属のタイプに関わらず、考慮したファセットの中で最も低いままであったことを確認した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
電気化学的特性評価:
触媒表面上でのギ酸電解酸化は通常、2つの経路、1)直接脱水素経路および2)間接脱水経路をたどる(D.Loffler,et al.,Surf.Sci.59,195-204(1976)およびT.Avanesian,et al.,J.Am.Chem.Soc.139,4551-4558(2017))。約0.5VのピークIは、脱水素経路を介したギ酸酸化に対応し、約0.9VのピークIIは、脱水経路を介して形成されたCOadsの酸化に対応した(図4のA)。市販のPt/C触媒上の間接経路の卓越は、直接ギ酸燃料電池へのそれらの応用を妨げる。しかし、合成されたTHH形状Pt-Bi触媒は、直接経路を優先し、間接経路からの寄与がほとんどない。市販のPt/C触媒(R=0.5)と比較して、THH形状Pt-Pb触媒ついてのより高いiピークI対iピークII比(R)(R=2.1)、THH形状Pt-Sb触媒ついてのより高いiピークI対iピークII比(R)(R=1.8)、およびTHH形状Pt-Te触媒ついてのより高いiピークI対iピークII比(R)(R=1.1)はまた、直接脱水経路がこれらの触媒にとってより有利であることを示す。具体的には、0.5Vでは、Pt-Bi触媒の電流密度(13.25mA/cm)、Pt-Pb触媒の電流密度(3.43mA/cm)、Pt-Sb触媒の電流密度(2.71mA/cm)およびPt-Te触媒の電流密度(2.26mA/cm)は、市販のPt/C触媒のそれ(0.21mA/cm)よりも、それぞれ63、16、13および11倍より高かった。重要なことに、外来金属元素を使用せずに合成されたPtナノ粒子は、低い触媒活性を示し(Pt対照サンプル、0.5Vで0.28mA/cm)、このことは、形状制御および外来金属修飾に由来する触媒利益を強調する。さらに、形状制御の重要性を外来金属の修飾と区別するために、市販のPt/C触媒を、繰り返し電気化学的堆積によってBi吸着原子で修飾し(Q.S.Chen,et al.,J.Am.Chem.Soc.133,12930-12933(2011))、それらの触媒特性を評価した。同じ条件下で、この材料は0.5Vで3.65mA/cmの電流密度を示し、THH形状Pt-Bi触媒のそれの4分の1であった(図29)。まとめると、外来金属の修飾に加えて、高指数ファセットが触媒性能の主要な要因である。最後に、定常状態の電流密度を数分~1時間運用した後の市販のPt/C触媒からのそれらと比較することによって、触媒の安定性を典型的に評価する。アンペロメトリックi-t曲線(図28)は、これらのTHH形状触媒が堅牢であることを示す。0.5Vの固定ポテンシャルで、3600秒間連続運用した後に、測定された電流密度は、THH形状Pt-Biで0.44mA/cm、THH形状Pt-Pbで0.34mA/cm THH形状Pt-Sbで0.30mA/cm、およびTHH形状Pt-Teで0.21mA/cmであった(市販のPt/C触媒(0.02mA/cm)のそれよりも、それぞれ、22、17、15および11倍より高かった)。電気化学的試験後、合成されたままのTHH形状Pt-Biについては明らかな形態変化は観察されず、このことは、触媒の固有の安定性をさらに確認した(図31)。本明細書におけるTHH触媒の実際の適用可能性をさらに評価するために、それらの質量活性を比較した(図35のAおよびB)。0.5Vの過ポテンシャルでは、THH Pt-Bi触媒の電流密度(1.49A/mg)、THH Pt-Pb触媒の電流密度(0.42A/mg)、THH Pt-Te触媒の電流密度(0.22A/mg)、およびTHH Pt-Sb触媒の電流密度(0.21A/mg)は、市販のPt/C触媒のそれ(0.07A/mg)よりも、それぞれ21、6、3、および3倍より高かった。重要なことに、市販のPt/C触媒からBi修飾によって合成されたTHH Pt触媒(Pt/C-Bi THH)は、0.5Vで1.37A/mgの電流密度を示し、市販のPt/C触媒のそれよりも20倍より高かった。Ptに加えて、Pdはギ酸酸化用の電気触媒としても広く使用される。Bi修飾によって合成されたPd THH粒子は、0.5Vで1.44A/mgの電流密度を示し、これは、市販のPd/C触媒のそれ(0.47A/mg)の3倍より高い(図35のCおよびD)。
【0091】
廃触媒:
ギ酸酸化用の電気触媒として使用した後、不活性化した市販のPt/C触媒のサンプルを、微量元素の形状指示金属としてBiを使用することによるこの戦略でリサイクルした。同じ領域のSTEM画像は、粒子がTHHに変換されたことを確認する(図32のAおよびB)。さらに、リサイクル後、触媒の性能は顕著に向上し、0.5Vの過ポテンシャルでは、リサイクル前およびリサイクル後の触媒の電流密度は、0.09mA/cm(リサイクル前)および12.65mA/cm(リサイクル後)である(図32のC)。
本発明は、次の実施態様を含む。
[1]四六面体(「THH」)ナノ粒子を調製する方法であって、第1の金属を含む粒子を、第2の金属の存在下、500℃~1300℃で約0.5時間~約12時間加熱して、前記THHナノ粒子を形成することを含み、前記第1の金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、またはそれらの組み合わせを含み、前記第2の金属は、Sb、Bi、Pb、Te、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
[2]前記THHナノ粒子が、高指数ファセットを含む、[1]に記載の方法。
[3]前記THHナノ粒子が、{210}ファセット、{310}ファセット、それらの隣接平面、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、[2]に記載の方法。
[4]前記第1の金属がバイメタル性である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記第1の金属が、PtNi、PtCo、PtCu、PdPt、PdAu、PdNi、PdCo、PdCu、RhPt、RhCo、RhNi、またはそれらの組み合わせを含む、[4]に記載の方法。
[6]反応器で実施され、前記第2の金属が前記粒子の上流に配向され、ガス流を介して前記粒子に運ばれる、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記ガスが、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含む、[6]に記載の方法。
[8]前記第1の金属を含む前記粒子は、支持体に組み込まれる、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記支持体が、シリカ、チタニア、セリア、アルミナ、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組み合わせを含む、[8]に記載の方法。
[10]前記支持体が導電性である、[8]に記載の方法。
[11]前記支持体が、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、炭化タングステン、またはそれらの組み合わせを含む、[10]に記載の方法。
[12]前記粒子が前記第1の金属の塩の分解および/または還元によって形成されるか、または前記粒子が前記第1の金属の金属合金から形成される、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記第2の金属が、前記第2の金属の塩の分解および/または還元によって形成される、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記第1の金属が、白金、パラジウム、ロジウム、またはそれらの組み合わせを含む、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]前記第1の金属が白金を含む、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]前記第1の金属を含む前記粒子が非THH粒子である、[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17]前記第2の金属がSbを含む、[1]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記第2の金属がBiを含む、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]有機配位子の非存在下で実施される、[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20][1]~[19]に記載のTHHナノ粒子を、酸化触媒として使用する方法。
[21][1]~[19]に記載のTHHナノ粒子が、ギ酸のCOおよび/またはCO への酸化を触媒する、[20]に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図12a
図12b
図13a
図13b
図13c
図13d
図14a
図14b
図15a
図15b
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
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図18F
図19
図20
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