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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】清掃用液体生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20230101AFI20231031BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20231031BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20231031BHJP
   C04B 35/36 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 520G
C02F1/68 520V
C02F1/68 530F
B01J35/08 Z
B01J23/889 M
B01J23/02 M
C04B35/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023074891
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2022075620
(32)【優先日】2022-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523157472
【氏名又は名称】株式会社ESサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【弁理士】
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】山城 弘
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-068827(JP,A)
【文献】特開2009-268964(JP,A)
【文献】特開2012-223745(JP,A)
【文献】特開2001-089226(JP,A)
【文献】特開2007-209912(JP,A)
【文献】特開2013-013879(JP,A)
【文献】特開2005-205352(JP,A)
【文献】特開2004-188282(JP,A)
【文献】実公昭46-034222(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50、1/68、1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が供給される流路(20)と、
前記流路(20)に配設され、前記水に塩素化剤(CS)を添加する添加部(23)と、
前記流路(20)に配設され、かつ前記添加部(23)の下流側に配置されるセラミック配置領域(CA)と、を含み、
前記セラミック配置領域(CA)には、少なくとも、互いに組成が異なる1または複数の第1のセラミック体(SB1)と、1または複数の第2のセラミック体(SB2)と、1または複数の第3のセラミック体(SB3)と、が密集して隣接するもの同士で互いにその表面で接するとともに当該表面以外の、その他表面の間では隙間空間が形成されるように配置され、
前記第1のセラミック体(SB1)は、その組成がフェライト系であり、その成分として磁性体、鉄、マンガン、一酸化炭素チタンおよびマグネシウムを含み、
前記第2のセラミック体(SB2)は、その成分として酸化アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウムおよび珪藻土を含み、
前記第3のセラミック体(SB3)は、その組成がフェライト系であり、その成分として鉄およびマンガンを含み、
前記第1のセラミック体(SB1)のセラミックの配合割合は、前記第2のセラミック体(SB2)および前記第3のセラミック体(SB3)よりも大きく設定され、
前記第1のセラミック体(SB1)の個数または容積の総量は、前記複数の第2のセラミック体(SB2)および前記複数の第3のセラミック体(SB3)よりも大きく設定される、
清掃用液体生成装置(10)。
【請求項2】
前記第1のセラミック体(SB1)と、前記第2のセラミック体(SB2)と、前記第3のセラミック体(SB3)と、のそれぞれは、多面体または球体に形成される、
請求項1に記載の清掃用液体生成装置(10)。
【請求項3】
前記セラミック配置領域(CA)は、前記流路(20)の流れ方向に沿って少なくとも4分割されて、上流側に位置する第1の領域(CA1)と、下流側に位置する第4の領域(CA4)と、前記第1の領域(CA1)および前記第4の領域(CA4)の間で上流側に位置する第2の領域(CA2)と、前記第1の領域(CA1)および前記第4の領域(CA4)で下流側に位置する第3の領域(CA3)と、を有し、
前記第1の領域(CA1)において、前記第1のセラミック体(SB1)のみが配置され、
前記第2の領域(CA2)において、前記第2のセラミック体(SB2)のみが配置され、
前記第3の領域(CA3)において、前記第3のセラミック体(SB3)のみが配置され、
前記第4の領域(CA4)において、前記第1のセラミック体(SB1)のみが配置される、
請求項に記載の清掃用液体生成装置(10)。
【請求項4】
前記セラミック配置領域(CA)は、前記水の流れ方向に沿って少なくとも4分割されて、上流側に位置する第1の領域(CA1)と、下流側に位置する第4の領域(CA4)と、前記第1の領域(CA1)および前記第4の領域(CA4)の間で上流側に位置する第2の領域(CA2)と、前記第1の領域(CA1)および前記第4の領域(CA4)で下流側に位置する第3の領域(CA3)と、を有し、
前記第1の領域(CA1)において、前記第1のセラミック体(SB1)が、その個数または容積の総数が前記第2のセラミック体(SB2)および前記第3のセラミック体(SB3)のそれぞれよりも大きくなるように配置され、
前記第2の領域(CA2)において、前記第2のセラミック体(SB2)が、その個数または容積の総数が前記第1のセラミック体(SB1)および前記第3のセラミック体(SB3)のそれぞれよりも大きくなるように配置され、
前記第3の領域(CA3)において、前記第3のセラミック体(SB3)が、その個数または容積の総数が前記第1のセラミック体(SB1)および前記第2のセラミック体(SB2)のそれぞれよりも大きくなるように配置され、
前記第4の領域(CA4)において、前記第1のセラミック体(SB1)が、その個数または容積の総数が前記第2のセラミック体(SB2)および前記第3のセラミック体(SB3)のそれぞれよりも大きくなるように配置される、
請求項に記載の清掃用液体生成装置(10)。
【請求項5】
前記塩素化剤(CS)は、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸または次亜塩素酸ナトリウムのうち少なくとも1つが選択される剤であり、
前記水が前記流路(20)での流通の過程で、前記塩素化剤(CS)が添加されるとともに、前記第1のセラミック体(SB1)と、前記第2のセラミック体(SB2)と、前記第3のセラミック体(SB3)と、に触れることにより、ヒドロキシルラジカルが生成される、
請求項に記載の清掃用液体生成装置(10)。
【請求項6】
前記塩素化剤(CS)は、複数の固形からなり、少なくともその一部が前記流路(20)の内部に臨むように配置される、
請求項1に記載の清掃用液体生成装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用液体生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
清掃用液体として、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル、活性酸素種などとも呼ばれる)が広く知られ汚物処理に使用される。ヒドロキシルラジカルは、汚れの主な原因である有機物(汚染物質および菌など)の酸化除去を行うことで有機物の分解・除去が可能となる。結果的に、汚れおよび悪臭を除去する。菌であれば、殺菌、消毒および分解することが可能となる(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
このヒドロキシルラジカルを生成する従来技術として、短波長を照射する紫外線照射装置と、中波長を照射する紫外線照射装置と、長波長を照射する紫外線照射装置と、を有し、オゾンの殺菌作用を利用して有機汚染物質を除去する装置が知られる(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
本装置は、短波長を照射することによりオゾン発生装置として働く紫外線照射装置と、中波長を照射する紫外線照射装置と、長波長を照射する紫外線照射装置と、を有し、少なくとも、中波長を照射する紫外線照射装置には、光触媒機能体が設けられる。それにより、水に、複数の波長を選択的に照射し、この照射過程で、光触媒機能体と水とが接触し、水からより効率よくかつ短時間でヒドロキシルラジカルを生成することが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3537085号
【文献】特開2002-346556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1に記載のものは、紫外線照射装置が複数用意する必要があり、構造が複雑かつ取り扱い安全性を要するものであり、簡素化および取り扱い容易性の点で改善の余地があった。また、施設または設備の清掃の現場で容易に持ち込むことはできず、手軽さにも改善の余地があったといえる。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成であり、かつ取り扱い容易かつ手軽に現場に導入することができるとともに、清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)をさらに効率的に生成することができる清掃用液体生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前述した目的は、後記の構成により達成される。
[1]
水が供給される流路と、
前記流路に配設され、前記水に塩素化剤を添加する添加部と、
前記流路に配設され、かつ前記添加部の下流側に配置されるセラミック配置領域と、を含み、
前記セラミック配置領域には、少なくとも、互いに組成が異なる1または複数の第1のセラミック体と、1または複数の第2のセラミック体と、1または複数の第3のセラミック体と、が密集して隣接するもの同士で互いにその表面で接するとともに当該表面以外の、その他表面の間では隙間空間が形成されるように配置される、
清掃用液体生成装置。
[2]
前記第1のセラミック体と、前記第2のセラミック体と、前記第3のセラミック体と、のそれぞれは、多面体または球体に形成される、
[1]に記載の清掃用液体生成装置。
[3]
前記第1のセラミック体は、その組成がフェライト系であり、その成分として磁性体、鉄、マンガン、一酸化炭素チタンおよびマグネシウムを含み、
前記第2のセラミック体は、その成分として酸化アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウムおよび珪藻土を含み、
前記第3のセラミック体は、その組成がフェライト系であり、その成分として鉄およびマンガンを含み、
前記第1のセラミック体のセラミックの配合割合は、前記第2のセラミック体および前記第3のセラミック体よりも大きく設定され、
前記第1のセラミック体の個数または容積の総量は、前記複数の第2のセラミック体および前記複数の第3のセラミック体よりも大きく設定される、
[1]に記載の清掃用液体生成装置。
[4]
前記セラミック配置領域は、前記流路の流れ方向に沿って少なくとも4分割されて、上流側に位置する第1の領域と、下流側に位置する第4の領域と、前記第1の領域および前記第4の領域の間で上流側に位置する第2の領域と、前記第1の領域および前記第4の領域で下流側に位置する第3の領域と、を有し、
前記第1の領域において、前記第1のセラミック体のみが配置され、
前記第2の領域において、前記第2のセラミック体のみが配置され、
前記第3の領域において、前記第3のセラミック体のみが配置され、
前記第4の領域において、前記第1のセラミック体のみが配置される、
[3]に記載の清掃用液体生成装置。
[5]
前記セラミック配置領域は、前記水の流れ方向に沿って少なくとも4分割されて、上流側に位置する第1の領域と、下流側に位置する第4の領域と、前記第1の領域および前記第4の領域の間で上流側に位置する第2の領域と、前記第1の領域および前記第4の領域で下流側に位置する第3の領域と、を有し、
前記第1の領域において、前記第1のセラミック体が、その個数または容積の総数が前記第2のセラミック体および前記第3のセラミック体のそれぞれよりも大きくなるように配置され、
前記第2の領域において、前記第2のセラミック体が、その個数または容積の総数が前記第1のセラミック体および前記第3のセラミック体のそれぞれよりも大きくなるように配置され、
前記第3の領域において、前記第3のセラミック体が、その個数または容積の総数が前記第1のセラミック体および前記第2のセラミック体のそれぞれよりも大きくなるように配置され、
前記第4の領域において、前記第1のセラミック体が、その個数または容積の総数が前記第2のセラミック体および前記第3のセラミック体のそれぞれよりも大きくなるように配置される、
[3]に記載の清掃用液体生成装置。
[6]
前記塩素化剤は、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸または次亜塩素酸ナトリウムのうち少なくとも1つが選択される剤であり、
前記水が前記流路での流通の過程で、前記塩素化剤が添加されるとともに、前記第1のセラミック体と、前記第2のセラミック体と、前記第3のセラミック体と、に触れることにより、ヒドロキシルラジカルが生成される、
[3]に記載の清掃用液体生成装置。
[7]
前記塩素化剤は、複数の固形からなり、少なくともその一部が前記流路の内部に臨むように配置される、
[1]に記載の清掃用液体生成装置。
【0009】
前記[1]の構成によれば、流路に添加部およびセラミック配置領域を設けるだけの構成であるため、構造が簡素であり、紫外線が発生するものではなく取り扱い容易であり、作業者に危害を与えるものではなく作業安全性を担保することができる。また、清掃現場にそのまま持ち込み容易であり、また、供給される水に添加部の塩素の添加によって塩素添加水(塩素水)が生成される。そして、その生成される塩素添加水(塩素水)とセラミック体との接触面積を増加させることが可能であり、触媒反応効率を高めることができる。つまり、簡素な構成でありながら、かつ取り扱い容易でありかつ手軽に現場に導入することができるとともに、酸化作用の高い、すなわち汚れおよび菌など有機汚染物質の分解・殺菌能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)をさらに効率的に生成することができる。
前記[2]の構成によれば、添加部の添加によって生成される塩素水とセラミック体との接触面積をさらに増加させて、反応効率をより高めることができる。
前記[3]の構成によれば、より一層効率的に清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
前記[4]の構成によれば、より一層効率的かつより洗浄能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
前記[5]の構成によれば、より一層効率的かつより洗浄能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
前記[6]の構成によれば、より一層効率的かつより洗浄能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
前記[7]の構成によれば、より効率的に清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成でありながら、取り扱い容易でありかつ手軽に現場に導入することができるとともに、酸化作用の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)をさらに効率的に生成することができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る第1実施形態の清掃用液体生成装置の外観の一例を説明する斜視図
図2図1に示す装置の内部構造の一例を説明する模式図
図3図2に示す第1のセラミック体の外観の一例を説明する写真
図4図2に示す第2のセラミック体の外観の一例を説明する写真
図5図2に示す第3のセラミック体の外観の一例を説明する写真
図6図3図5のそれぞれに示すセラミック体のそれぞれの性状の一例を示す表
図7図1に示す装置を用いたOHラジカルの生成工程の一例を説明するフロー図
図8】第1実施例に係る、第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤を用いて水拭きした場合の残留成分の様子を示す写真
図9】第1実施例に係る、本発明に係る触媒水を用いて水拭きした場合の残留成分の様子を示す写真
図10】第2実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用して手洗いする前の手指の汚染状況の様子を示す写真
図11】第2実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用して手洗いした後の手指の汚染状況の様子を示す写真
図12】第3実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してゴミ保管庫を洗浄する前の様子を示す写真
図13】第3実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してゴミ保管庫を洗浄した後の様子を示す写真
図14】第4実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してガスレンジを洗浄する前の様子を示す写真
図15】第4実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してガスレンジを洗浄した後の様子を示す写真
図16】第5実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してスーパーマーケットの床を洗浄する前の様子を示す写真
図17】第5実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してスーパーマーケットの床を洗浄した後の様子を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本発明に係る清掃用液体生成装置を具体的に開示する1または複数の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、すでによく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。また、添付図面のそれぞれは符号の向きにしたがって参照するものとする。
【0016】
また、特段のことわりがない限り、この明細書および添付された請求項において使用されるパラメータ、反応条件および成分の濃度などを表す全ての数は、全ての例において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対に指示されない限り、以下の明細書および添付の請求項において示された数的パラメータは、少なくとも特定の分析技法に依存して変化し得る近似である。
【0017】
<用語の説明>
「を含む」および「を含有する」と同義である用語「を含む」または「により特徴づけられる」は、包括的または開放型な意味で解釈されるものであり、追加の、挙げられていない要素または方法のステップを排除しない。「を含む」は、請求項の言語で使用される技術用語であり、それは名を挙げられた請求項要素は必須であるが、他の請求項要素が追加されて請求項の範囲内で構成物をさらに形成してもよいことを意味する。
【0018】
また、本明細書において使用する、「からなる」という語句は、請求項で特定されていない、いかなる要素、ステップまたは成分も排除する。語句「からなる(またはその変形)」が、プリアンブルの直後ではなくむしろ、請求項の本体の節に現れる場合、それは、その節において示された要素のみを限定し、他の要素が当該請求項全体から排除されるのではない。本明細書において使用する語句「から本質的になる」は、請求項の範囲を、特定された要素または方法ステップに加えて、請求された対象事物の主成分および新規な特徴(単数または複数)に実質的に影響しないものに限定する。
【0019】
用語「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」に関して、これら3つの用語の1つが本明細書において使用される場合、本発明で開示されたおよび請求された対象事物は、他の2つの用語のいずれかの使用も含むこともある。したがって、そうではないと明示的に挙げなかったいくつかの実施形態において、「を含む」の任意の場合が、「からなる」または「から本質的になる」によって置き換えられ得る。
【0020】
用語「工程」もしくは「ステップ」は、プロセスまたは方法の特徴に関連して、明示的に用いられ、または暗示的に用いられ得る。しかしながら、順番または手順について明記されない限り、このような明示的な工程もしくはステップの間、または暗示的な工程もしくはステップの間における、順番または手順は、限定されない。
【0021】
<清掃用液体について>
本発明の清掃用液体はヒドロキシルラジカル(以下「OHラジカル」ともいう)であり、本発明では塩素などを使用することでOHラジカルを生成させる。
【0022】
一般論として、塩素、次亜塩素酸ナトリウムまたはカルシウムを水に添加して溶かすと、次亜塩素酸(HOCl)が生成される。そのpHは2.5~7.5程度の範囲を示し、また、その分子種が主となって強力な酸化機能が発揮される。また、塩素は光(紫外線)が照射されると活性化され、その結果、OHラジカルという極めて反応性の高い状態となる。それにより、水中での酸化力が高まり殺菌および消毒の効果が発揮されるとされる。
【0023】
OHラジカルは、ほとんど全ての汚染物質(有機物質、有機汚染物質)に対し殺菌および消毒の作用を示し化学的に分解し除去することが可能である。
【0024】
その一方、OHラジカルは、人体には無害な天然物質である。現存する物質のうちOHラジカルの酸化力(殺菌能力、消毒能力、分解能力など)はフッ素(F)に相当し、オゾン(O3)および塩素(CL2)よりも高いが、これらフッ素、塩素、オゾンのように人体に対し有害ではない。OHラジカルはオゾンよりも数千倍、太陽の紫外線よりも数百倍速い酸化速度を示すことが実証されている。
【0025】
そのようなOHラジカルの生成について、本発明では、流路に供給される水に塩素を添加し、その添加後、複数種類のセラミック体にその塩素添加水(塩素水)を接触させ触媒反応させる。そして、その触媒作用により生成される触媒水には前述のOHラジカルが含有されており、その触媒水を清掃用液体として清掃現場または一般的作業現場などで使用して清掃が実行されることになる。
【0026】
本発明は、簡素な構成でありながら、かつ取り扱い容易であり手軽に現場に導入し、さらに効率的に酸化作用の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成するため、以下に説明する1または複数の実施形態のように特別な構成を有する。
【0027】
<第1実施形態>
図1図5に基づいて、本発明に係る清掃用液体生成装置10の第1実施形態について説明する。
【0028】
[・装置の構成について]
図1図5を参照しながら、清掃用液体生成装置10の構成の一例について説明する。
図1は、本実施形態の清掃用液体生成装置10の外観の一例を説明する斜視図である。
図2は、図1に示す装置の内部構造の一例を説明する模式図である。
図3は、図2に示す第1のセラミック体SB1の外観の一例を説明する写真である。
図4は、図2に示す第2のセラミック体SB2の外観の一例を説明する写真である。
図5は、図2に示す第3のセラミック体SB3の外観の一例を説明する写真である。
【0029】
図1および図2に示すように、清掃用液体生成装置10(以下「装置」ともいう)は、筐体11と、筐体11の内部において水平面に沿って延在する流路20と、流路20の中間部に連結する塩素添加部23(添加部の一例)と、流路20の最上流側に配設される水供給口25と、流路20の最下流側に配設される触媒水吐出口26と、を含んで構成される。
【0030】
筐体11は、たとえばステンレス製の板材からなり、箱状に形成される。筐体11は、矩形状の底壁部12と、底壁の四辺から上方に向けて立設される複数の側壁部13と、複数の側壁によって画成される開口を閉塞する蓋部14と、を含んで構成される。そのようにして、筐体11の内部には、流路20を収納するための収納空間SPが画成される。
なお、蓋部14には取っ手15が配設される。
【0031】
筐体11の複数の側壁部13には、流路20の水供給口25および触媒水吐出口26が外部に露出して配設される。また、蓋部14には幅方向(図1で奥行き方向)で片寄る位置に貫通孔が形成されており、塩素添加部23がこの貫通孔を通過してその一部が外部に突出するように配設される(後述参照)。
【0032】
流路20は、合成樹脂製の管材からなり、略U字状に延設される。流路20は、第1のエルボー部21Aと、第1の直管部22Aと、第2のエルボー部21Bと、第2の直管部22Bと、第3のエルボー部21Cと、第3の直管部22Cと、を含んで構成される。これら第1エルボー部、第2のエルボー部21B、第3のエルボー部21C、第1の直管部22A、第2の直管部22Bおよび第3の直管部22Cは、軟素材の合成樹脂管SRを介して結束バンド(不図示)で筐体11の底壁部12に固定される。
【0033】
第1のエルボー部21Aは、その上流端で水供給口25に接続して連通する。第1の直管部22Aは、その上流端で第1のエルボー部21Aの下流端に接続して連通する。第2のエルボー部21Bは、その上流端で第1の直管部22Aの下流端に接続して連通する。第2の直管部22Bは、その上流端で第2のエルボー部21Bの下流端に接続して連通する。第3のエルボー部21Cは、その上流端で第2の直管部22Bの下流端に接続して連通する。第3の直管部22Cは、その上流端で第3のエルボー部21Cの下流端に接続するとともに、その下流端で触媒水吐出口26に接続して連通する。
【0034】
そのようにして、水供給口25から触媒水吐出口26までに亘って水が流通可能な1本の流路20が構成される。
なお、流路20の素材としては、たとえば硬質ポリ塩化ビニル管{UnplasticizedPoly(VinylChloride)(PVC-U)Pipes}などが好適である。
【0035】
塩素添加部23は、流路20と同じ素材の管材からなり、その基端部で前述の第1の直管部22Aの長手方向中間部に接続して連通する。また、塩素添加部23は、鉛直方向に沿って延設され、その先端部(末端部)がキャップ部材24によって閉塞される。
【0036】
塩素添加部23の内部には、複数の固形の塩素化剤CS(固体塩素薬剤)、具体的にはトリクロロイソシアヌル酸がその塩素添加部23の長手方向に沿って並列して(重積して)配置される。そのとき、複数の固形である塩素化剤CSは、少なくともその一部が流路20の内部に臨むように配置されることになる。
なお、塩素化剤CSとしては、トリクロロイソシアヌル酸に限定されず、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸または次亜塩素酸ナトリウムのうち少なくとも1つが選択される剤であればよい。
【0037】
水供給口25には、供給ホース(不図示)の端部が連結され、たとえば水として水道水がこの供給ホースを介して供給される。それにより、流路20に水が供給、流通されることになる。流路20を流通してその流路20の内部通過する水は、後述のように塩素化剤CSが添加される。その後、その塩素化剤CSが添加された水は、塩素水として、流路20の内部に配置される、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3(後述参照)のそれぞれに接触して触媒反応する。
【0038】
その触媒反応の結果、触媒水(OHラジカルを含む水:後述参照)が生成され、その触媒水が触媒水吐出口26を通過して装置の外部に吐出される。触媒水吐出口26にも吐出ホース(不図示)の端部が連結されており、そのようにして生成される触媒水は、たとえば有機汚染物質が付着した設備または施設に対し、その有機汚染物質を除去するための清掃用液体として使用される。
【0039】
そして、本実施形態では、前述のように、流路20の内部に、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3の、互いに組成が異なる(後述参照)複数のセラミック体SB1,SB2,SB3が配置される。つまり、流路20には、塩素添加部23の下流側にセラミック配置領域CAが配設されており、このセラミック配置領域CAにはそれら第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3が密集して隣接するもの同士で互いにその表面で接して配置される。それとともに、それら第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3は、当該表面以外の、その他表面の間では隙間空間が形成されるように設けられる。
【0040】
具体的には、図3図5に示すように、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3は、直径15mmの球状に形成される。この形成により、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3が密集して配置される状態で、それらセラミック体SB1,SB2,SB3の間において隙間空間が形成されることになる。塩素水は、この隙間空間を通過しながら、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3のそれぞれと触媒反応することになる。つまり、その隙間空間の存在により、塩素水が流路20の内部をそれらセラミック体SB1,SB2,SB3と適宜触媒反応しながら円滑に通過することが可能である。
【0041】
なお、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3の形状は、球状に限定されない。密集状態でその隣接するもの同士で隙間空間が形成可能であればよく、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3のそれぞれは多面体に形成されてもよい。多面体の具体的一例として、正多面体(たとえば正八面体、正十二面体など)、半正多面体、截頂立方体、柱などが例示される。また、図2では、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3のそれぞれが直線状に配置されるが、流路20の内径に比較してより小径に形成してその個数を多数にしてより密集状態となるように設けてもよい。
【0042】
図2に示すように、本実施形態では、セラミック配置領域CAは、流路20の流れ方向に沿って4分割されて、第1の領域CA1と、第2の領域CA2と、第3の領域CA3と、第4の領域CA4と、を少なくとも有する。
【0043】
第1の領域CA1は、セラミック配置領域CAにおいて上流側に位置し、第1の直管部22Aの下流側端部、第2のエルボー部21Bおよび第2の直管部22Bの上流側端部に亘って配置される。第4の領域CA4は、セラミック配置領域CAにおいて下流側に位置し、第3の直管部22Cの下流側端部に配置される。第2の領域CA2は、第1の領域CA1および第4の領域CA4の間で上流側に位置し、第2の直管部22Bの下流側端部および第3のエルボー部21Cの上流側端部に亘って配置される。第3の領域CA3は、第1の領域CA1および第4の領域CA4の間で下流側に位置し、第3のエルボー部21Cの上流側端部および第3の直管部22Cの上流側端部に亘って配置される。
【0044】
第1の領域CA1には第1のセラミック体SB1のみが配置される。第2の領域CA2には第2のセラミック体SB2のみが配置される。第3の領域CA3には第3のセラミック体SB3のみが配置される。第4の領域CA4には第1のセラミック体SB1のみが配置される。
【0045】
[・セラミック体の性状について]
図6を参照しながら、前述の第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3の性状(たとえば組成または材料など)について説明する。
図6は、図3図5のそれぞれに示すセラミック体SB1,SB2,SB3のそれぞれの性状の一例を示す表である。
【0046】
図6に示すように、第1のセラミック体SB1は、その組成がフェライト系であり、その成分として磁性体、鉄、マンガン、一酸化炭素チタンおよびマグネシウムを含んで焼成してなる。塩素水と第1のセラミック体SB1とが接触して触媒反応し、その結果得られる触媒水は特に殺菌および消臭の効果が高い。
【0047】
第2のセラミック体SB2は、その成分として酸化アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウムおよび珪藻土を含んで焼成してなる。塩素水と第2のセラミック体SB2とが接触して触媒反応し、その結果得られる触媒水は特に油分解および殺菌の効果が高い。
【0048】
第3のセラミック体SB3は、その組成がフェライト系であり、その成分として鉄およびマンガンを含んで焼成してなる。塩素水と第3のセラミック体SB3とが接触して触媒反応し、その結果得られる触媒水は特に油分解の効果が高い。
【0049】
すなわち、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3は、前述の成分(図6参照)のそれぞれを含み、それぞれをバインダーとして樹脂およびガラス質などのセラミックを使用し、1600度以上の高熱で焼結したものである。
【0050】
そのとき、第1のセラミック体SB1のセラミックの配合割合は、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3よりも大きく設定される。その具体的一例として、第1のセラミック体SB1の配合割合は30%と例示される。第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3の配合割合は10%と例示される。
なお、本実施形態では、第1のセラミック体SB1の外観は黒色であり、第2のセラミック体SB2の外観は白色であり、第3のセラミック体SB3の外観は茶色である。
【0051】
そして、前述のように第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3はセラミック配置領域CAに配置される。この配置により、結果的に、第1のセラミック体SB1の個数または容積の総量は、複数の第2のセラミック体SB2および複数の第3のセラミック体SB3よりも大きく設定されることになる。
【0052】
ここで、以上説明する以外の、第1のセラミック体SB1、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3の性状に係る技術内容については、特許第3537085号の明細書に具体的に開示されており、その開示内容の全部は本明細書に取り込まれる。
【0053】
なお、特許第3537085号の明細書には、以下の内容が具体的に開示(記載)されおり、本発明および本実施形態はその開示内容を前提として鋭意検討されたものである。
【0054】
『上記のようにして生成されるOHラジカルの酸化還元電位は、2.80eVであり、これは、対標準水素電極電位、2H+2e/H2 の酸化還元電位をゼロとしたときの値である。一方、酸化第2鉄のエネルギー帯構造は、図2に示すように2.2eVであるが、その価電子帯の上端の電位(Valence Band,VB)は、2.3eVであり、伝導帯の下端の電位(Conduction Band,CB)は、0.1eVである。
この酸化第2鉄の表面に塩素などによって得られるOHラジカルが接触することにより、電子が励起され正孔が生じる。すなわち、図3に示すように価電子帯から伝導帯に電子が励起し、価電子帯に、電子の脱け殻である正孔が生成されると、電子はO2を還元するとともに、正孔は酸化反応を起こし、水中でH2Oを酸化してOHラジカルを発生させる(H2O→OH・)。伝導帯に励起された電子のエネルギーは、標準水素電極(NME)に対する電位で表すと、ほぼ0.1V vs.NMEであるので(斉藤 烈・松郷誠一「活性酸素の化学」p18)、熱力学的にO2を還元してO2ラジカルを発生させることができる(O2+e→O2)。このスーパーオキサイドイオンは、水中で過酸化水素を経てOHラジカルを生成する。したがって、これらが強い還元剤、酸化剤となる。
以上のような触媒的酸化機構は、酸化第2鉄に限るものではなく、図2及び図3に示すように価電子帯の上端の電位がヒドロキシラジカルの酸化還元電位より低く伝導帯の下端の電位が標準水素電極電位より高いエネルギー帯構造のものであれば、他の金属酸化物、さらには金属硫化物又はセレン化物を含む機能セラミックの粒体によっても実現可能である。
機能セラミックの粒体は、成分濃度を制御し、原子パーセントを変えることにより、イオンの反応の効率を良くすることができ、第1の粒体では、特に殺菌、脱臭作用に顕著な効果を有し、第2の粒体では、油分解、殺菌作用に顕著な効果を有し、第3の粒体では、油分解作用に顕著な効果を有することが確認された。また、第1の粒体と第2の粒体とを混合させると、第1の粒体と第2の粒体とは、成分濃度が違うためお互いに反応しあい、イオンの発生の効率がよくなり、さらに、第3の粒体を少量追加することにより、油分解がより進むことも実証されている。しかも、第3の粒体は、凝結作用が強く、分子をフロック状に形成し、油分を親水、親油性にする作用がある。そのため、汚泥の沈降速度が早くなる効果も、排水処理場で多数確認されている。つまり、有機分解する働きがよくなるので、水質の改善に寄与し、油の酸化臭を除去して脱臭効果をさらによくすることにつながっている。このことは、長年の機能セラミックの研究にわたる経験と繰り返し試験によるものであり、この経験値により、脱臭、水質改善等に応用して各粒体の比率基準が決定される。
したがって、成分濃度を制御し、さらに第1~第3の粒体の混合比率を変えることにより、処理目的に応じた効果を高めることができる。例えば養豚等の畜産業の排水や農業集落排水、一般家庭生活雑排水に対しては、アンモニアや硫化水素、チッソ、リン等が多く、脱臭の効果が特に要求される。また、食品工場の排水や食堂、レストランの排水を含む工場排水に対しては、油、チッソ、リン等が多く、油分解の効果が特に要求される。このようなそれぞれの要求に応じて第1~第3の粒体の混合比率が設定される。
本発明に係るスーパーオキサイドイオン発生法を用いた脱臭浄化及び水触媒処理装置では、次亜塩素酸ソーダ水溶液を散水ノズル14によりシャワリングして上段の機能セラミックの粒体2から順次通過接触させ、さらに下方に貯留して排水部7までの間に下段の機能セラミックの粒体2と通過接触させて、触媒作用を利用した水処理を行って触媒水を生成し、その触媒水13を底付近の排水部7からバルブ11を通して取り出し、汚水や排水、汚泥に添加して処理効果を改善したり、業務用水などの水質を改善したりする触媒水として利用する。一方、次亜塩素酸ソーダ水溶液を上記のように機能セラミックの粒体2に通過接触させて生成された触媒水により、ガス中のアンモニア、ダイオキシン、炭酸ガス(CO2)、硫化水素が除去され、脱臭、浄化を行うことができる。』(特許第3537085号の明細書の段落[0024]~段落[0029]に記載)
【0055】
[・OHラジカルの生成工程について]
図7を参照しながら、本実施形態においてOHラジカルの生成工程について説明する。
図7は、図1に示す装置を用いたOHラジカルの生成工程の一例を説明するフロー図である。
【0056】
図7に示すように、前述のように構成される装置を使用して、水供給口25を通じて装置本体に内設される、前述の流路20に水が供給される(S1)。
【0057】
供給される水は、第1の直管部22Aに配設される塩素添加部23のトリクロロイソシアヌル酸(塩素化剤CSの一例)に触れ、その結果、塩素が添加されて塩素水が生成される(S2)。
【0058】
生成された塩素水は、セラミック配置領域CAに進入して、まずは第1のセラミック体SB1に触れて触媒反応する。そして、当該触媒反応後、その塩素水は、次に第2のセラミック、さらに第3のセラミックに順次触媒反応し、最終的に再度、第1のセラミック体SB1に触れて触媒反応する(S3)。
【0059】
そのように塩素水が複数種類のセラミック体に順次触媒反応することで、次亜塩素酸水が生成され(S4)、強力酸素水が生成される(S5)。最終的にはOHラジカルが生成され(S6)、触媒水吐出口26から外部に吐出される。
【0060】
つまり、本実施形態では、触媒水吐出口26から吐出される触媒水にOHラジカルが含有されており、その触媒水が清掃用液体として清掃の現場で使用される。この触媒水は酸化作用が強く、汚染物質(特に有機汚染物質)の分解能力が高く、汚れおよび菌などに対して非常に高い洗浄能力および除去能力(殺菌力)を示す(後述参照)。
【0061】
[・本実施形態の特徴および利点について]
以上説明したように本実施形態の清掃用液体生成装置10によれば、水が供給される流路20と、流路20に配設され、水に塩素化剤CSを添加する塩素添加部23(添加部の一例)と、流路20に配設され、かつ添加部の下流側に配置されるセラミック配置領域CAと、を含む。また、セラミック配置領域CAには、少なくとも、互いに組成が異なる1または複数の第1のセラミック体SB1と、1または複数の第2のセラミック体SB2と、1または複数の第3のセラミック体SB3と、が密集して隣接するもの同士で互いにその表面で接するとともに当該表面以外の、その他表面の間では隙間空間が形成されるように配置される。
【0062】
このため、流路20に塩素添加部23(添加部の一例)およびセラミック配置領域CAを設けるだけの構成であるため、構造が簡素であり、紫外線が発生するものではなく取り扱い容易である。また、作業者に危害を与えるものではなく作業安全性を担保することができる。また、清掃現場にそのまま持ち込み容易であり、また、供給される水に塩素添加部23の塩素の添加によって塩素添加水(塩素水)が生成される。そして、その生成される塩素添加水(塩素水)とセラミック体との接触面積を増加させることが可能であり、触媒反応効率を高めることができる。つまり、簡素な構成でありながら、かつ取り扱い容易でありかつ手軽に現場に導入することができるととともに、酸化作用の高い、すなわち汚れおよび菌など有機汚染物質の分解・殺菌能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)をさらに効率的に生成することができる。
【0063】
また、本実施形態の清掃用液体生成装置10によれば、第1のセラミック体SB1と、第2のセラミック体SB2と、第3のセラミック体SB3と、のそれぞれは、多面体または球体(本実施形態では球体)に形成される。
【0064】
このため、塩素添加部23(添加部の一例)の添加によって生成される塩素水とセラミック体との接触面積をさらに増加させて、反応効率をより高めることができる。
【0065】
また、本実施形態の清掃用液体生成装置10によれば、第1のセラミック体SB1は、その組成がフェライト系であり、その成分として磁性体、鉄、マンガン、一酸化炭素チタンおよびマグネシウムを含む。第2のセラミック体SB2は、その成分として酸化アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウムおよび珪藻土を含む。第3のセラミック体SB3は、その組成がフェライト系であり、その成分として鉄およびマンガンを含む。第1のセラミック体SB1のセラミックの配合割合は、第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3よりも大きく設定される。第1のセラミック体SB1の個数または容積の総量は、複数の第2のセラミック体SB2および複数の第3のセラミック体SB3よりも大きく設定される。
【0066】
このため、より一層効率的に清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
【0067】
また、本実施形態の清掃用液体生成装置10によれば、セラミック配置領域CAは、流路20の流れ方向に沿って少なくとも4分割されて、上流側に位置する第1の領域CA1と、下流側に位置する第4の領域CA4と、第1の領域CA1および第4の領域CA4の間で上流側に位置する第2の領域CA2と、第1の領域CA1および第4の領域CA4で下流側に位置する第3の領域CA3と、を有する。第1の領域CA1において、第1のセラミック体SB1のみが配置される。第2の領域CA2において、第2のセラミック体SB2のみが配置される。第3の領域CA3において、第3のセラミック体SB3のみが配置される。第4の領域CA4において、第1のセラミック体SB1のみが配置される。
【0068】
このため、より一層効率的かつより洗浄能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
【0069】
また、本実施形態の清掃用液体生成装置10によれば、塩素化剤CSは、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸または次亜塩素酸ナトリウムのうち少なくとも1つが選択される剤である。水が流路20での流通の過程で、塩素化剤CSが添加されるとともに、第1のセラミック体SB1と、第2のセラミック体SB2と、第3のセラミック体SB3と、に触れることにより、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)が生成される。
【0070】
このため、より一層効率的かつより洗浄能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
【0071】
また、本実施形態の清掃用液体生成装置10によれば、塩素化剤CSは、複数の固形からなり、少なくともその一部が流路20の内部に臨むように配置される。
【0072】
このため、より効率的に清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
【0073】
[・本実施形態に係る第1の変形例について]
前述した本実施形態に係る第1の変形例について説明する。
【0074】
本変形例では、前述の実施形態とは異なり、前述のセラミック配置領域CAにおいて、第1の領域CA1において、第1のセラミック体SB1が、その個数または容積の総数が第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3のそれぞれよりも大きくなるように配置される。第2の領域CA2において、第2のセラミック体SB2が、その個数または容積の総数が第1のセラミック体SB1および第3のセラミック体SB3のそれぞれよりも大きくなるように配置される。第3の領域CA3において、第3のセラミック体SB3が、その個数または容積の総数が第1のセラミック体SB1および第2のセラミック体SB2のそれぞれよりも大きくなるように配置される。第4の領域CA4において、第1のセラミック体SB1が、その個数または容積の総数が第2のセラミック体SB2および第3のセラミック体SB3のそれぞれよりも大きくなるように配置される。
【0075】
この場合も同様に、より一層効率的かつより洗浄能力の高い清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる。
【実施例
【0076】
本発明に係る実施例(適用例および/または具体例)として1または複数の試験を挙げ、本発明の有用性についてより詳細に説明する。
【0077】
<第1実施例:本発明に係る触媒水と第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤との比較試験>
図8および図9を参照しながら、本発明に係る触媒水と第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤との比較試験について説明する。
図8は、本実施例に係る、第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤を用いて水拭きした場合の残留成分の様子を示す写真である。
図9は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を用いて水拭きした場合の残留成分の様子を示す写真である。
【0078】
市販の除菌剤入り洗剤は、界面活性剤の成分に過酸化水素(加速化)または/および第四級アンモニウム塩等の除菌剤が含有される。そのため、市販の除菌剤入り洗剤は、汚れ除去を界面活性剤の力で除去しながら、菌・ウイルスの除菌を過酸化水素や第四級アンモニア塩で行うメカニズム(仕組み)となっている。
【0079】
ここで、その第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤の問題点として以下の4つが指摘可能である。
(1) 界面活性剤が建材に残り再汚染原因になり、汚れが早くなる。
(2) 床の場合、ワックスの変色原因になる。
(3) 残留界面活性剤によるワックスの密着不良原因になる可能性がある。
(4) 作業従事者の健康被害の可能性がある。
【0080】
当該(4)については、「第四級アンモニウム化合物」は健康にさまざまな影響を与えることが知られる。たとえば、軽度の皮膚や呼吸器の炎症から皮膚の焼灼性熱傷、胃腸炎、吐き気、嘔吐、昏睡、痙攣、低血圧および死などが知られる。また、「過酸化水素水」は強い腐食性を持ち、高濃度のものが皮膚に付着すると痛みをともなう白斑が生じる。また、当該物質は可燃物と混合すると過酸化物を生成し、発火する可能性がある。さらに、当該物質は水に溶けると、分解されるまでは水生生物に対して若干の毒性を示すことが知られる。
【0081】
そのように、第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤を用いる清掃では、その清掃対象物に
「第四級アンモニウム化合物」または「過酸化水素水」などの薬剤が残留する場合、作業者のみならずその清掃対象物の設備を使用する使用者にも健康被害を及ぼす可能性がある。
【0082】
そこで、本実施例では、第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤、および前述の本発明に係る触媒水のそれぞれを用いて水拭きした場合の、その清掃対象物の表面での残留の有無またはその程度について確認試験を行った。第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤を用いて水拭きした場合の残留成分の様子が図8に示される。本発明に係る触媒水を用いて水拭きした場合の残留成分の様子が図9に示される。
なお、図8において粒々に観察されるのが残留成分(残留洗剤)である。
【0083】
図8に示すように、第四級アンモニア塩入り除菌洗浄剤を用いて水拭きした場合には、残留成分が観察される。その一方、図9に示すように、本発明に係る触媒水を用いて水拭きした場合には残留成分はほとんど観察されない。
【0084】
そのように、本発明に係る触媒水の有用性が確認された。
【0085】
<第2実施例:本発明に係る触媒水を使用した手洗い試験>
図10および図11を参照しながら、本発明に係る触媒水を使用した手洗い試験について説明する。
図10は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用して手洗いする前の手指の汚染状況の様子を示す写真である。
図11は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用して手洗いした後の手指の汚染状況の様子を示す写真である。
【0086】
本発明に係る触媒水を用いて手洗いを行い、その前後の汚染度数を、ATP検査を用いて計測した。その手洗い前の様子は、図10に示される。その手洗い後の様子は、図11に示される。
【0087】
図10に示すように、手洗い前の汚染度数は36,663値を示す。その一方、図11に示すように、手洗い後の汚染度数は1,260値を示し、その数値は大幅に減少することが分かる。手指清潔基準値が1,500値以下であることから、本発明に係る触媒水による除菌能力の高さが示される。
【0088】
つまり、本試験を通じて、本発明に係る触媒水を用いた手洗いの有用性が明らかにされた。
【0089】
<第3実施例:本発明に係る触媒水を使用したゴミ保管庫の洗浄および消臭試験>
図12および図13を参照しながら、本発明に係る触媒水を使用したゴミ保管庫の洗浄および消臭試験について説明する。
図12は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してゴミ保管庫を洗浄する前の様子を示す写真である。
図13は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してゴミ保管庫を洗浄した後の様子を示す写真である。
【0090】
前述の本発明に係る触媒水を使用してゴミ保管庫を洗浄した。その洗浄前の様子は、図12に示される。洗浄後の様子は、図13に示される。
【0091】
図12に示すように、本発明に係る触媒水を使用する洗浄前は、油汚れがひどく廃油臭で悪臭を放っていた。その一方、図13に示すように、本発明に係る触媒水を使用した洗浄後は、油汚れが除去され消臭効果が認められた。また、油による床汚れの改善も認められた。
【0092】
つまり、本試験を通じて、本発明に係る触媒水を用いた油汚れ除去および消臭についての有用性が明らかにされた。
【0093】
<第4実施例:本発明に係る触媒水を使用したガスレンジ洗浄試験>
図14および図15を参照しながら、本発明に係る触媒水を使用したガスレンジの洗浄試験について説明する。
図14は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してガスレンジを洗浄する前の様子を示す写真である。
図15は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してガスレンジを洗浄した後の様子を示す写真である。
【0094】
前述の本発明に係る触媒水を使用してガスレンジを洗浄した。具体的には、汚れまたは焦げ付きが付着した部分に対し本発明に係る触媒水を十分に塗布し、さらに噴霧しながら柔らかいスチールタワシで擦る。さらに、その擦った部分をウエスで拭き取った(除去・清掃した)。その洗浄前の様子は、図14に示される。洗浄後の様子は、図15に示される。
【0095】
図14に示すように、本発明に係る触媒水を使用する洗浄前は、油汚れおよび焦げ付きがひどく市販品の洗剤を用いた洗浄でも可能ではあるが、洗浄後の残留洗剤や再汚染問題が残る。その一方、図15に示すように、本発明に係る触媒水を使用した洗浄後は油汚れおよび焦げ付きが除去されるとともに残留洗剤がほとんどなく再汚染のおそれもない。
【0096】
つまり、本試験を通じて、本発明に係る触媒水を用いた油汚れおよび焦げ付きの除去についての有用性が明らかにされた。
【0097】
<第5実施例:本発明に係る触媒水を使用したスーパーマーケットの床の洗浄試験>
図16および図17を参照しながら、本発明に係る触媒水を使用したスーパーマーケットの床の洗浄(清掃)試験について説明する。
図16は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してスーパーマーケットの床を洗浄する前の様子を示す写真である。
図17は、本実施例に係る、本発明に係る触媒水を使用してスーパーマーケットの床を洗浄した後の様子を示す写真である。
【0098】
前述の本発明に係る触媒水を使用してスーパーマーケットの床を洗浄(清掃)した。清掃は、その対象の床に本発明に係る触媒水を噴霧し、その噴霧後モップで拭き取った。その洗浄前の様子は、図16に示される。洗浄後の様子は、図17に示される。
【0099】
図16に示すように、本発明に係る触媒水を使用する洗浄前は、汚れでひどく床表面がくすんでいた状態であった。その一方、図17に示すように、本発明に係る触媒水を使用した洗浄後は、汚れが除去され、その表面に照明器具からの光が反射して見えるほど綺麗になった。
【0100】
つまり、本試験を通じて、本発明に係る触媒水を用いた床の汚れ除去についての有用性が明らかにされた。
【0101】
<さいごに>
以上で1または複数の具体的実施形態および1または複数の具体的実施例の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態または実施例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、簡素な構成であり、かつ取り扱い容易かつ手軽に現場に導入することができるととともに、より効率的に清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)を生成することができる清掃用液体生成装置として有用である。
【符号の説明】
【0103】
10 :清掃用液体生成装置
11 :筐体
12 :底壁部
13 :側壁部
14 :蓋部
15 :取っ手
20 :流路
21A :第1のエルボー部
21B :第2のエルボー部
21C :第3のエルボー部
22A :第1の直管部
22B :第2の直管部
22C :第3の直管部
23 :塩素添加部
24 :キャップ部材
25 :水供給口
26 :触媒水吐出口
CA :セラミック配置領域
CA1 :第1の領域
CA2 :第2の領域
CA3 :第3の領域
CA4 :第4の領域
CS :塩素化剤
SB1 :第1のセラミック体
SB2 :第2のセラミック体
SB3 :第3のセラミック体
SP :収納空間
SR :合成樹脂管
【要約】
【課題】簡素な構成であり、かつ取り扱い容易かつ手軽に現場に導入することができるととともに、清掃用液体(ヒドロキシルラジカル)をさらに効率的に生成することができる清掃用液体生成装置を提供する。
【解決手段】本開示の清掃用液体生成装置10は、水が供給される流路20と、流路20に配設され、水に塩素化剤CSを添加する塩素添加部23(添加部の一例)と、流路20に配設され、かつ添加部の下流側に配置されるセラミック配置領域CAと、を含む。また、セラミック配置領域CAには、少なくとも、互いに組成が異なる1または複数の第1のセラミック体SB1と、1または複数の第2のセラミック体SB2と、1または複数の第3のセラミック体SB3と、が密集して隣接するもの同士で互いにその表面で接するとともに当該表面以外の、その他表面の間では隙間空間が形成されるように配置される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図15
図16
図17