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特許7376215シリコンインゴット切断廃棄物をリサイクルするための処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】シリコンインゴット切断廃棄物をリサイクルするための処理方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/037 20060101AFI20231031BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20231031BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20231031BHJP
【FI】
C01B33/037
B09B3/00 ZAB
B09B3/70
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020569750
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 FR2019051422
(87)【国際公開番号】W WO2019239067
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】1855202
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520223860
【氏名又は名称】ロシ
【氏名又は名称原語表記】ROSI
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルオ, ユン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527279(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081725(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0081289(US,A1)
【文献】特開2015-199619(JP,A)
【文献】特開2013-189318(JP,A)
【文献】特開平05-033070(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171018(WO,A1)
【文献】特表2012-514349(JP,A)
【文献】特開2014-019603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/037
B09B 3/00
B09B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドワイヤによる研磨剤を使わないインゴットの切断から生じた廃棄物に含有されるシリコン微粒子を精製するための処理方法であって、
a)前記シリコン微粒子と、有機種と、金属混入物とを含む水性混合物によって形成された、前記廃棄物から生じた汚染スラリーを用意するステップと;
b)前記汚染スラリーに過酸化水素溶液を加えて、前記汚染スラリーと、過酸化水素と、水とのみからなる第1混合物を形成し、及び、前記第1混合物を撹拌するステップと;
c)前記第1混合物の固体/液体分離を実施して、一方で第1精製スラリーを、他方で有機種と金属混入物とが富化された第1液体を得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)において、前記汚染スラリーが、沈殿、遠心分離、サイクロン分離又はろ過から選択される固体/液体分離技術によって前記廃棄物から得られ、前記汚染スラリーが、重量パーセントで50%±10%の固形物と50%±10%の液状物とを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)において、前記過酸化水素溶液が、1%~35%の間の質量濃度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)は、前記第1混合物が重量パーセントで5~10%の間の固形物を含むように、純水を前記第1混合物に加えるステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)が、10分~5時間の範囲の期間において、20℃~95℃の間の温度で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)の前記固体/液体分離が、ろ過、沈殿、遠心分離又はサイクロン分離から選択される技術によって実施され、前記第1精製スラリーが、重量パーセントで、少なくとも40%の固形物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)の後に、ステップc’)を含み、ステップc’)中に、
前記第1精製スラリーに純水を加えて第2混合物を形成すること、
前記第2混合物の固体/液体分離を実施して、一方で第2精製スラリーを、他方で有機種と金属混入物とを含有する第2液体を得ること
が実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップc’)が1~5回繰り返される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)の後に、ステップc’’)を含み、ステップc’’)中に、
前記第1精製スラリーを用意し、ろ過ケーキの形態で維持すること、
重量パーセントで0.1%~1%の間の希釈フッ化水素酸溶液を、前記ろ過ケーキを通して循環させること;
前記ろ過ケーキを通して純水を循環させて、前記ケーキのすすぎ処理及びフッ化水素酸の排除を可能にすること;
第3精製スラリーを得ること
が実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
d)不活性雰囲気下において前記第1精製スラリーを乾燥させて、精製されたシリコン微粒子を得るステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
d)不活性雰囲気下において前記第2精製スラリーを乾燥させて、精製されたシリコン微粒子を得るステップを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項12】
d)不活性雰囲気下において前記第3精製スラリーを乾燥させて、精製されたシリコン微粒子を得るステップを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、太陽電池産業のためのシリコン生産ラインに関する。本発明は、特に、シリコンインゴットの切断から生じる廃棄物(「カーフ(kerf)」)をリサイクルするための処理方法に関する。
【0002】
[発明の技術背景]
今日、半導体又は太陽電池産業向けのシリコンウェハは、本質的にダイヤモンドワイヤ切断法を使用して、シリコンインゴットから作製される。これらの方法は、徐々に、スラリーソーイング法に取って代わったが、その理由は、それらが、より低い生産コストでより良好な品質のウェハを提供するためである。
【0003】
ダイヤモンドワイヤの幅は、切断されるウェハの厚さと同じ桁であるが、それでも、これらのソーイング法は、インゴットの総質量の最大で40~50%のかなりの量のシリコン廃棄物を生じる。この廃棄物は、液体添加物、金属混入物(metal contaminant)、及び有機種若しくは無機種の混ざった、非常に微細な粉末(表面が酸化されたシリコン微粒子)の形態を取る。
【0004】
この混合物から適切に抽出され精製されたシリコン粉末は、太陽電池、エネルギー貯蔵、セラミック合成などの様々な産業における再使用にとって、非常に価値があり得る。このシリコン粉末の効率的な精製は、特に、以下の3つの目標を満たさなければならない。
【0005】
有機種の減少:
これらの種は、ソーイング法において使用される有機(液体)添加剤に由来するか、又は、例えば、ダイヤモンドワイヤ若しくはソー(saw)に含有される高分子化合物に由来する。シリコン粉末中における有機種の残留物の存在は、それらの再使用の可能性を低下させ、実際に、ほとんどの場合において、シリコンは、高温処理を受けなければならず、その際に、有機種は、SiC粒子を生じる傾向を有し、それは、大半の用途にとって好ましくない。
【0006】
金属混入物の減少:
これらの混入物は、主に金属性のダイヤモンドワイヤに由来する。それらは、イオン形態、原子形態、微粒子という様々な形態で存在し得、また、混合物中に分散されているか又はシリコン微粒子の表面に結合して認められる。シリコン粉末中の金属混入物の残留物の存在は、開発されたデバイス、特に半導体及び太陽電池用途において、性能に悪影響を及ぼす。
【0007】
酸化ケイ素の減少:
シリコン微粒子の表面は、場合によってその再使用を妨げ得る酸化ケイ素の層を含む。
【0008】
切断廃棄物(「カーフ」)から得られたシリコン微粒子を抽出及び精製するためのいくつかの方法が、現状技術水準において提案されており、特に、文献国際公開第2012125942号、国際公開第2010003456号、中国特許出願公開第103373731号に記載されている。
【0009】
文献国際公開第201125942号では、有機種を除去するためにオゾンを、金属混入物を溶解させるために塩化水素酸を、及び酸化ケイ素層を除去するためにフッ化水素酸を使用する方法が提案されている。この方法の主な欠点は、水に対するその低溶解度に起因するオゾンの限定的な効率及び濃酸の使用に存する。
【0010】
さらに、文献国際公開第2010003456号は、環境を汚染し高プロセスコストの原因となる傾向のある濃酸も使用する。
【0011】
文献中国特許出願公開第103373731号では、強酸化剤によるシリコン粉末の酸化と、その後の有機溶媒による酸化粉末の抽出とに基づく方法が提案されている。この方法の欠点は、環境を汚染する化学物質、例えば、有機溶媒及びシリコン粉末を脱酸素するための酸の使用に存する。方法中のシリコンの一部の損失(その酸化に起因する)も著しい。
【0012】
他の方法は、シリコンを清浄化するために慣習的に実践される方法(RCAクリーン)に従って、強塩基及び強酸による一連の連続処理を提示している。残念ながら、シリコンウェハに対して非常に効果的であるこれらの清浄化方法は、混合水性混合物中に分散されたシリコン微粒子の場合に必要とされる精製のレベルを達成することを可能にしない。
【0013】
[発明の主題]
本発明は、先述の欠点の全て又はいくつかを克服することを目指すものである。本発明は、研磨剤を用いずに、ダイヤモンドワイヤでソーイングすることによるシリコンインゴット切断廃棄物(「カーフ」)をリサイクルするための処理方法に関する。
【0014】
[発明の簡単な説明]
本発明は、研磨剤を用いずに、ダイヤモンドワイヤによるインゴットの切断から生じた廃棄物に含有されるシリコン微粒子を精製する処理方法であって、
a)シリコン微粒子と、有機種と、金属混入物とを含む水性混合物によって形成された、前記廃棄物から得られる汚染スラリー(contaminated slurry)を用意するステップと;
b)汚染スラリーに希釈過酸化水素溶液を加えて、汚染スラリーと、過酸化水素と、水とからなる第1混合物を形成し、第1混合物を撹拌するステップと;
c)第1混合物の固体/液体分離を実施して、一方で第1精製スラリーを、他方で有機種と金属混入物とが富化された第1液体を得るステップと
を含む方法に関する。
【0015】
本発明の他の有利な非限定的特徴によれば、以下の事項が、単独で、又は任意の技術的に実現可能な組合せで採用される。
【0016】
・ステップa)において、沈殿、遠心分離、サイクロン分離又はろ過から選択される固体/液体分離技術によって、廃棄物から汚染スラリーが得られ、汚染スラリーが、重量パーセントで約50%の固形物と約50%の液状物とを含有する。
【0017】
・ステップb)において、希釈過酸化水素溶液は、1%~35%の間の質量濃度を有する。
【0018】
・ステップb)は、前記第1混合物が重量パーセントで5~10%の間の固形物を含むように純水を第1混合物に加えることを含む。
【0019】
・ステップb)は、10分~5時間の範囲の期間において、20℃~95℃の間の温度で実施される。
【0020】
・ステップc)の固体/液体分離は、ろ過、沈殿、遠心分離、又はサイクロン分離から選択される技術によって実施され、第1精製スラリーは、重量パーセントで、少なくとも40%の固形物を含む。
【0021】
・処理方法は、ステップc)の後に、ステップc’)を含み、ステップc’)中に以下を実施する。
○第1精製スラリーに純水を加えて第2混合物を形成すること、
○第2混合物の固体/液体分離を実施して、一方で第2精製スラリーを、他方で有機種と金属混入物とを含有する第2液体を得ること。
【0022】
・撹拌ステップが、第2混合物に対して適用される。
【0023】
・ステップc’)が1~5回繰り返される。
【0024】
・処理方法は、ステップc)の後に、ステップc’’)を含み、ステップc’’)中に以下を実施する。
○第1精製スラリーを用意し、ろ過ケーキの形態で維持すること、
○重量パーセントで0.1%~1%の間の希釈フッ化水素酸溶液を、ろ過ケーキを通して循環させること、
○ろ過ケーキを通して純水を循環させることにより、前記ケーキのすすぎ処理及びフッ化水素酸の排除を可能にすること、
○第3精製スラリーを得ること。、
【0025】
・処理方法は、ステップc’)の後に、ステップc’’)を含み、ステップc’’)中に以下を実施する。
○第2精製スラリーを用意し、ろ過ケーキの形態で維持すること、
○重量パーセントで0.1%~1%の間の希釈フッ化水素酸溶液を、ろ過ケーキを通して循環させること、
○ろ過ケーキを通して純水を循環させて、前記ケーキのすすぎ処理及びフッ化水素酸の排除を可能にすること、
○第3精製スラリーを得ること。
【0026】
・処理方法は、d)不活性雰囲気下において精製スラリーを乾燥させて、精製されたシリコン微粒子を得るステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の詳細な説明から明らかとなる。
図1図1は、本発明による処理方法のステップを示す。
図2図2a、2b、及び、2cは、本発明による、シリコン微粒子の精製のための処理方法の説明図を提示する。
図3図3a、3b、3c、及び、3dは、本発明による処理方法の一連のステップ中のろ過ケーキの断面図を示す。
【0028】
[発明の詳細な説明]
本発明は、研磨剤を用いない、ダイヤモンドワイヤによるインゴットの切断から生じた廃棄物中に含有されるシリコン微粒子を精製するための処理方法に関する(図1)。先に述べたように、この廃棄物中のシリコンは、液体添加物、金属混入物、及び有機種又は無機種が混ざった、非常に微細な粉末の形態(表面が少なくとも部分的に酸化されているシリコン微粒子)を取る。この廃棄物は、液状物を本質的に含有し、シリコン(固形物の大部分を構成する)の重量パーセントは、2%~5%の間である。
【0029】
本発明による処理方法は、水性混合物中における、シリコン微粒子と、有機種と、金属混入物とによって形成された、ソーイング廃棄物から得られる汚染スラリーを用意することで構成されるステップa)を含む。概して、シリコン微粒子は、約10nm~5マイクロメートルの間の、典型的には1ミクロンを中央とする、粒度分布を有する。
【0030】
本開示のこれ以降において、本発明者らは、用語「スラリー」を、水性溶液中に混合された、40%超(重量パーセント)の固形物(主にシリコン微粒子からなる)を含む物質を特定するために使用する。本開示におけるスラリーに関する全ての割合は、重量パーセントで与えられる。
【0031】
有利には、ステップa)において、汚染スラリーは、およそ50%の固形物とおよそ50%の液状物とを含む。ここで、用語「およそ」は、重量パーセントの値が、±10%(絶対値:つまり、およそ50%の重量パーセントは、40%~60%の間で変わり得る)、又はさらには±5%(絶対値)であることを意味する。汚染スラリーは、ろ過(例えば、吸引ろ過)若しくは接線ろ過、沈殿、遠心分離又はサイクロン分離から選択される固体/液体分離の公知の方法によって、切断廃棄物(本質的に液状物で構成され、シリコンの重量パーセントは2%~5%の間である)から得ることができる。したがって、得られた汚染スラリーは、40%超の固形物(重量パーセント)を有する。
【0032】
次いで、本発明による処理方法は、希釈過酸化水素溶液(H)が汚染スラリーに加えられ、その結果、第1混合物を形成する、ステップb)を含む。「希釈溶液」は、過酸化水素と水とからなる溶液を意味する。希釈過酸化水素溶液は、1%~35%の間の過酸化水素の質量濃度を有し得、残りのパーセントは水である。第1混合物を形成するために他の酸性又は塩基性物質は加えてられていなことに留意されたい。したがって、第1混合物は、汚染スラリー、過酸化水素及び水からなる。
【0033】
第1混合物中における希釈溶液及び汚染スラリーのそれぞれの割合は、H濃度に依存することになる。一例として、H濃度35%の場合、第1混合物は、好ましくは、汚染スラリーの体積に対して同体積の希釈Hを含み、H濃度10%の場合、第1混合物は、好ましくは、汚染スラリーの1体積量に対して3体積量の希釈溶液を含む。
【0034】
ステップb)は、シリコンの微粒子1と他の有機種3又は金属混入物4の間において希釈H溶液の分布を均一にするために、この第1混合物を撹拌するステップも含む。
【0035】
汚染スラリーから得られるシリコン微粒子1は、その表面上に、主に、酸化ケイ素の層2を含み、その上、それらは、有機種3の長鎖によって形成された層によって完全に又は部分的に「覆われている」(図2a)。過酸化水素は、有機種3の酸化反応によって、有機長鎖3のセグメント化を引き起こし、それは、シリコン微粒子1の表面からの有機長鎖3の脱離を促進する。結果として、有機層3を介してシリコン微粒子1に結合していた金属混入物4も、脱離されることになる(図2b)。この酸化反応は、ガス形態の二酸化炭素(CO)も生じることに留意されたい。
【0036】
有利には、第1混合物は、およそ5%~10%の固形物と残りのパーセントの液状物(重量パーセント)を含み、この液体の濃度は、第1混合物中でのシリコン微粒子1及び他の有機種3又は金属混入物4の懸濁を促進する。用語「およそ」は、先に述べられた通りに定義されることに留意されたい。
【0037】
第1混合物のそのような濃度は、低濃度のHの溶液が汚染スラリーと混合される場合に、直接的に実現される。より高いH濃度(例えば、10~35%の間)を有する溶液の場合、加えられる希釈H溶液の体積は、第1混合物における固形物の5%~10%に達するには十分ではなく、前記第1混合物における所望の濃度を達成するために、純水が加えられる。「純水」は、脱イオン水又は超純水を意味し、それぞれ、数百kΩ・cmの抵抗率及び18.2MΩ・cm超の抵抗率を有する。
【0038】
次いで、第1混合物の撹拌は、第1混合物中に懸濁しているシリコン微粒子1及び他の有機種3又は金属混入物4の分布を均一にすることを可能にし、撹拌は、有機鎖3をセグメント化する酸化反応の効率を増加させることも可能にする。
【0039】
ステップb)は、10分~5時間の範囲の期間において、20℃~95℃の間の温度で実施することができる。
【0040】
ステップb)の終了時に、第1水性混合物は、均一な懸濁液中に粒子を含み、これは、シリコン微粒子1と、主にセグメント化された鎖の形態の有機種3と、金属混入物4とを含む。
【0041】
次いで、本発明による処理方法は、第1混合物の固体/液体分離を実践して、一方で第1精製スラリーを、他方で有機種及び金属混入物の富化された第1液体を得るステップc)を含む。第1精製スラリーは、少なくとも40%の固形物で構成される(図2c)。第1液体は、排出され、液体排出物として処理することができる。
【0042】
有機鎖のセグメント化により、有機層の断片が、シリコン微粒子から脱離され(ステップb))、ステップc)において、それらの小さくなったサイズ及び/又はそれらの水への溶解により、液体部分(第1液体)と共に排出され、結果として、固体材料(第1精製スラリー)から分離される。
【0043】
本出願人は、固体/液体分離のためのステップc)の後に、汚染スラリー中に最初に存在していた有機種の少なくとも90%が第1液体へと排出されることを観察することができた。汚染スラリー中に約1%~3%(重量パーセント)で最初に存在していた金属混入物(全てまとめて)も、特に有機種とのそれらの初期結合により、このステップc)の後に著しく減少する。
【0044】
ステップc)の固体/液体分離技術は、沈殿、遠心分離、サイクロン分離、ろ過、又は他の好適な既知の技術から選択することができる。
【0045】
有利には、処理方法は、すすぎ処理ステップc’)を含み、ステップc’)中に、第2混合物を形成するために、純水が第1精製スラリーに加えられる(図1)。第2混合物は、好ましくは、第1スラリーの1体積量に対して少なくとも10体積量の水を含む。第2混合物を均一にするために、撹拌が行われる。
【0046】
次いで、ステップc’)は、一方で第2精製スラリーを、他方で残留する有機種及び金属混入物を含有する第2液体を得るための、第2混合物の固体/液体分離を含む。第2精製スラリーは、少なくとも40%の固形物で構成される。第1液体と同様に、第2液体は、排出し、液体排出物として処理することができる。
【0047】
この第2精製スラリーは、第1スラリーと比較してさらなる時間、すすぎ処理される。したがって、第2精製スラリーは、より高いレベルの純度を有し、汚染スラリー中に最初に存在していた有機種の少なくとも95%は、このステップc’)の後に排除される。金属混入物のレベルも、このステップc’)の後に改善される。
【0048】
有利には、ステップc’)は、最適なレベルの純度(典型的には、初期汚染スラリーと比較して少なくとも100倍の、有機種及び金属混入物の減少)を達成するために、1~5回繰り返され、その一方で、(ステップc’)の繰り返しによって発生する)コストは妥当に保たれる。
【0049】
本発明による処理方法は、有利には、精製されたシリコン微粒子を得るために、精製されたスラリー(第1及び第2)を不活性雰囲気下において乾燥させるステップd)を含む。
【0050】
好ましくは、乾燥ステップは、真空下、50℃~80℃の間の温度において、撹拌しながら実施される。例えば、機械式撹拌機を取り付けられたフィルター乾燥タイプの設備を使用することができる。
【0051】
処理方法の終了時に、シリコン微粒子の非常に良好なレベルの精製(有機及び金属)、典型的には:
0.3%(重量ベース)未満の炭素;
100ppm(重量ベース)未満の金属混入物(全てまとめて)
が達成される。
【0052】
そしてこれは、非常に汚染性の製品、例えば、現状技術水準の方法において使用される塩基及び濃酸などを使用しない。
【0053】
それでもなお、シリコン微粒子は、それらの表面上に酸化物層を保持する。
【0054】
1つの変形例によれば、本発明による処理方法は、シリコン微粒子上に存在する酸化物の全て又は一部を除去することを意図するステップc’’)を含む。ステップc’’)は、ステップc)の後、又はステップc’)の後に実施することができる(図1)。
【0055】
ステップc’’)は、まず、ろ過ケーキ10の形態に維持された第1精製スラリー11(又は第2精製スラリー12)を用意することを含む(図3a)。ろ過ケーキ10は、特に、加圧下でのろ過後に得ることができ(「フィルタープレスケーキ」)、したがって、第1精製スラリー11(又は第2精製スラリー12)は、ケーキ10の形態を想定した2つの多孔質膜20の間において加圧状態に維持される。
【0056】
次いで、ステップc’’)は、0.1%~1%(重量パーセント)の希釈フッ化水素酸(HF)溶液30を、ろ過ケーキ10を通して循環させることを含む(図3b)。したがって、HF溶液30は、ケーキ10のシリコン微粒子と接触し、それらを囲む酸化物層を、全て2つの膜20の間のその経路に沿って、侵食することになる。一例として、ケーキ10の1体積量に対して、2体積量の0.5%HF溶液30が循環される。より低いHF濃度の場合、ケーキ10を通過させるために、より多い体積量の溶液30が使用されることになる。
【0057】
次いで、ステップc’’)は、ろ過ケーキ10を通して純水40を循環させ、前記ケーキ10のすすぎ処理及びフッ化水素酸の排除を可能にすることを含む(図3c)。実際に、純水40は、HF溶液30とおおむね同じ経路及び隙間を採用することによってケーキ10を通って循環することになり、結果として、前記ケーキ10の効果的なすすぎ処理を確実とする。例えば、ケーキ1体積量に対して、10体積量の純水40が、ケーキ10を通して循環される。吐水口膜でのpH測定は、すすぎ処理の有効性をチェックすることを可能にし、完全なすすぎ処理のために、7のpH値が目標とされる。
【0058】
ステップc’’)は、40%超の固形物で構成される第3精製スラリー13を得ることで終了する(図3d)。第3精製スラリー13は、表面酸化物層を主に欠いたシリコン微粒子で形成される。
【0059】
この変形例によれば、処理方法は、有利には、第3精製スラリーを不活性雰囲気下において乾燥させて、精製されたシリコン微粒子上に酸化層が形成されるのを防ぐ乾燥ステップd)を含む。
【0060】
乾燥シリコン粉末を不活性非酸化雰囲気下に維持するために、このステップの後にコンディショニングも実施される。
【0061】
この変形例による処理方法の終了時に、低い酸化ケイ素含有量の精製されたシリコン微粒子が得られ、それらは、以下の特徴を有し得る:
1%(重量ベース)未満の酸素、
0.3%(重量ベース)未満の炭素、
50ppm(重量ベース)未満の金属混入物(全てまとめて);酸化物を除去するためのステップc’’)は、金属混入物のレベルを下げることを可能にするが、その理由は、後者が、多くの場合、シリコン微粒子を覆う表面酸化物中に統合されているため、この層を排除することは、金属粒子の排除に助力するためであることに留意されたい。
【0062】
そのような特徴は、シリコン粉末を、大半の用途、特に太陽電池産業、に適合させる。
【0063】
本発明による処理方法は、ソーイング廃棄物中に微粒子の形態で含有されるシリコンの95%超のリサイクルを可能にする。
【0064】
当然のことながら、本発明は、説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変更を加えることが可能である。
図1
図2
図3