IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プリマハム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図1
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図2
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図3
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図4
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図5
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図6
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図7
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図8
  • 特許-食肉改質方法、ピックル液 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】食肉改質方法、ピックル液
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20231031BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20231031BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L13/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018229014
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020089314
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】白須 直樹
(72)【発明者】
【氏名】江田 美佳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 重城
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-070430(JP,A)
【文献】特開2007-044039(JP,A)
【文献】特開2017-189157(JP,A)
【文献】特開2008-161104(JP,A)
【文献】特開2013-121358(JP,A)
【文献】特開平05-068508(JP,A)
【文献】特開2017-163983(JP,A)
【文献】日本味と匂学会誌,1999年,Vol.6, No.3,p.691-694
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラニン、オルニチン、グリシン、システインから選択される2種以上のアミノ酸、及び、イノシン酸を含有し、前記アミノ酸の含有量は、0.5~20質量%であるピックル液を使用し、食肉の硬さを向上することを特徴とする、食肉改質方法。
【請求項2】
塩と、アラニン、オルニチン、グリシン、システインから選択される2種以上のアミノ酸、及び、イノシン酸を含有し、
前記アミノ酸の含有量は、0.5~20質量%であり、
前記アミノ酸の含有量に対する前記塩の含有量の比(塩の含有量/アミノ酸の含有量)は、3以上であることを特徴とする、食肉の硬さを向上する食肉改質用のピックル液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ハム、ハム、ベーコン、ソーセージ等の食肉加工品及びその製造方法に関する。また、本発明は、食肉の硬さを向上する食肉改質方法に関する。また、本発明は、食肉加工品を製造するためのピックル液に関する。
【背景技術】
【0002】
ハム、ソーセージ等の食肉加工品は、食塩や香辛料、グルタミン酸ナトリウムなどを含むピックル液を使用する。ピックル液は、食肉に添加することにより、本来、食肉加工品の味を調整したり、保存性を向上したりするものである。さらに近年では、食肉加工品の保水性や、硬さや弾力といった食感、結着性の改善などにも利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トランスグルタミナーゼを含有するピックル液が開示されている。このピックル液は、食肉の硬さ、弾力、結着性等を向上させることができるというものである。また、特許文献2には、粉末状大豆たん白を含有するピックル液が記載されており、このピックル液は、最終製品の保水性や強度を高めることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-255426号公報
【文献】特開2003-154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載されたように、生ハム、ハム、ベーコン、ソーセージ、焼き豚等の食肉加工品においては、硬く、歯ごたえのある食感が求められている。
そこで、本発明の課題は、食肉加工品において、食肉の硬さを向上し、歯ごたえのある食感を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアミノ酸を使用することにより、食肉の硬さが向上することを見出して、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の食肉加工品、食肉加工品の製造方法、食肉改質方法及びピックル液である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の食肉加工品は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸を含有し、前記アミノ酸の含有量は、0.2質量%以上であることを特徴とするものである。
この食肉加工品によれば、食肉の硬さが向上し、歯ごたえのある食感を得ることができる。また、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンは、食肉に添加してもpHを変化させないため、食肉の味への影響が小さいという効果がある。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の食肉加工品は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸、及び、イノシン酸を含有し、前記アミノ酸及び前記イノシン酸の含有量の和は、0.2質量%以上であることを特徴とするものである。
この食肉加工品によれば、食肉の硬さをより一層向上し、より歯ごたえのある食感を得ることができる。
【0009】
さらに、本発明の食肉加工品の一実施態様によれば、アミノ酸は、アラニン、オルニチン、グリシン、システインから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、アラニン、オルニチン、グリシン、システインは、水への溶解性に優れるため、ピックル液の調製の際に、ダマが生じ難いという効果を奏する。
【0010】
さらに、本発明の食肉加工品の一実施態様によれば、食肉加工品は、非加熱の湿塩処理により得られたことを特徴とする。
非加熱の湿塩処理を行うことにより、食肉の硬さを向上するという本発明の効果をより発揮することができる。また、非加熱の湿塩処理を行う場合には、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンを2種以上添加すると、より一層硬さを向上することができる。よって、この特徴によれば、生ハムなどの非加熱の湿塩処理により得られる食肉加工品の製造に適している。
【0011】
さらに、本発明の食肉加工品の一実施態様によれば、食肉加工品は、加熱処理により得られたことを特徴とする。
加熱処理を行うことにより、食肉の硬さを向上するという本発明の効果をより発揮することができる。また、加熱処理する場合には、アラニン、グリシン、システインを含有すると、より一層硬さを向上することができる。よって、この特徴によれば、ハムやソーセージなどの加熱処理により得られる食肉加工品の製造に適している。
【0012】
さらに、本発明の食肉加工品の一実施態様によれば、塩を含有し、アミノ酸の含有量に対する塩の含有量の比(塩の含有量/アミノ酸の含有量)は、3以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、食肉の硬さをより一層向上し、より歯ごたえのある食感を得ることができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の食肉加工品の製造方法は、上記本発明の食肉加工品を製造することを特徴とするものである。
この食肉加工品の製造方法によれば、食肉の硬さをより一層向上し、歯ごたえのある食感の食肉加工品を製造することができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の食肉改質方法は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸を含有するピックル液を使用し、食肉の硬さを向上することを特徴とするものである。
この食肉改質方法によれば、ピックル液で処理しつつ、食肉の硬さを向上させることができる。また、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンは、食肉に添加してもpHを変化させないため、ピックル液及び食肉加工品の味への影響が小さいという効果がある。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の食肉改質方法は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸、及び、イノシン酸を含有するピックル液を使用し、食肉の硬さを向上することを特徴とする
この食肉改質方法によれば、ピックル液で処理しつつ、食肉の硬さをより一層向上させることができる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明のピックル液は、塩と、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸を含有し、前記アミノ酸の含有量に対する前記塩の含有量の比(塩の含有量/アミノ酸の含有量)は、3以上であることを特徴とするものである。
このピックル液によれば、食肉加工品の製造において、簡単に食肉の硬さを向上し、歯ごたえのある食感を有する食肉加工品を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食肉加工品において、食肉の硬さを向上し、歯ごたえのある食感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】アミノ酸を含有する加熱ハムについて、官能評価により「食感」を評価した結果を示すグラフである。
図2】アミノ酸を含有する加熱ハムについて、クリープメーターにより「硬さ」を評価した結果を示すグラフである。
図3】アミノ酸を含有する湿塩漬ハムについて、クリープメーターにより「硬さ」を評価した結果を示すグラフである。
図4】アラニン及びイノシン酸を含有する湿塩漬ハムについて、クリープメーターにより「硬さ」を評価した結果を示すグラフである。
図5】グリシン及びイノシン酸を含有する湿塩漬ハムについて、クリープメーターにより「硬さ」を評価した結果を示すグラフである。
図6】システイン及びイノシン酸を含有する湿塩漬ハムについて、クリープメーターにより「硬さ」を評価した結果を示すグラフである。
図7】オルニチン及びイノシン酸を含有する湿塩漬ハムについて、クリープメーターにより「硬さ」を評価した結果を示すグラフである。
図8】アミノ酸及びイノシン酸を含有する低塩濃度加熱ハムについて、官能評価により「食感」を評価した結果を示すグラフである。
図9】アミノ酸及びイノシン酸を含有する高塩濃度加熱ハムについて、官能評価により「食感」を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[食肉加工品]
本発明の食肉加工品は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸を含有し、前記アミノ酸の含有量は、0.2質量%以上であることを特徴とするものである。
【0020】
食肉加工品は、食肉を含有する加工品である。食肉は、豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉、羊肉、兎肉などの動物の食肉であり、その形態としては、肉塊、挽肉、成型肉など、どのような形態のものを使用してもよい。食肉加工品としては、例えば、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、サラミソーセージなどの乾燥食肉製品、生ハムなどの非加熱食肉製品、ローストビーフ、ローストポーク、スモークドビーフなどの特定加熱食肉製品、ロースハム、プレスハム、ソーセージ、ベーコンなどの加熱食肉製品などが挙げられる。なお、ドライソーセージとしては、製品の水分量が55質量%以下の「セミドライソーセージ」、製品の水分量が35質量%以下の「ドライソーセージ」などが挙げられ、ソーセージとしては、直径20mm未満の「ウィンナーソーセージ」、直径20mm以上36mm未満の「フランクフルトソーセージ」、直径36mm以上の「ボロニアソーセージ」などが挙げられる。その他、ハンバーグ、しゅうまい、とんかつ、ぎょうざ、ミートボール、焼き豚などでもよい。硬く、歯ごたえのある食感を特に求められるという観点から、好ましくは非加熱食肉製品や加熱食肉製品である。
【0021】
また、食肉加工品は、より硬さを向上させるという観点から、塩漬け処理することが好ましい。塩漬け処理としては、例えば、乾塩法と湿塩法が挙げられる。食肉に対して均等に塩分を浸透させることができることから、湿塩法による湿塩処理が好ましい。
【0022】
湿塩処理では、ピックル液を使用して食肉に塩分を添加する。ピックル液は、食塩を水に溶解した水溶液であり、その他、亜硝酸塩などの発色剤、砂糖、ニコチン酸アミドなどの発色助剤、アスコルビン酸などの酸化防止剤、重合リン酸塩などの結着補強剤、グルタミン酸ナトリウムなどの調味料類などを含有してもよい。本発明の食肉加工品に含まれるアラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン又はメチオニンは、食肉に対して均等に浸透させるという観点から、ピックル液に添加することが好ましい。
【0023】
ピックル液を食肉に添加する方法としては、挽肉にピックル液を練り込む方法や、食肉をピックル液に漬け込む塩漬法や、ピックル液を注射針で食肉に注入するインジェクション法などが挙げられる。
【0024】
また、食肉加工品は、より硬さを向上させるという観点から、加熱処理することが好ましい。加熱処理の条件は、食肉を加熱する処理であれば特に制限されないが、加熱温度は、例えば、40~100℃である。加熱温度の下限値として、より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。加熱温度の上限値として、より好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは80℃以下である。また、加熱時間は、例えば、5~120分間である。加熱時間の下限値として、より好ましくは10分間以上であり、更に好ましくは20分間以上である。加熱時間の上限値として、より好ましくは60分間以下であり、更に好ましくは40分間以下であり、特に好ましくは30分間以下である。
【0025】
また、食肉加工品は、湿塩処理と加熱処理を併用してもよい。特に、湿塩処理を行った後に、加熱処理を行うことが好ましい。湿塩処理と加熱処理を併用して行うことにより、食肉の硬さを向上するという本発明の効果をより一層発揮することができる。
【0026】
(アミノ酸)
本発明の食肉加工品に含有するアミノ酸は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンである。さらに、水に溶解しやすくダマになり難いという観点から、アミノ酸は、アラニン、オルニチン、グリシン、システインであることが好ましい。これらのアミノ酸を含有することにより、食肉が硬くなり、歯ごたえのある食感の食肉加工品を得ることができる。また、これらのアミノ酸を添加しても、pHが変化しにくいため、食肉加工品の風味に対して大きな影響を与えることなく食肉を硬くすることができるという効果がある。
【0027】
これらのアミノ酸の含有量は、食肉加工品中に0.2質量%以上である。より好ましくは0.25質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。上限値としては、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.6質量%以下である。0.2質量%以上とすることにより、食肉の硬さを向上することができる。また、1質量%以下である場合には、各アミノ酸の固有の風味が食肉加工品の風味に影響することを抑制することができる。
【0028】
また、本発明のアミノ酸は、2種以上を含有することが好ましい。本発明のアミノ酸を2種以上含有する場合には、1種のみを含有する場合と比較して、食肉を硬くするという本発明の効果がより一層発揮される。
【0029】
さらに、本発明のアミノ酸を2種以上含有する場合には、非加熱の湿塩処理により得られた食肉加工品であることが好ましい。
本発明のアミノ酸を2種以上添加する場合には、非加熱の湿塩処理を行うと、より一層硬さを向上することができる。よって、生ハムなどの非加熱食肉製品や、乾燥食肉製品の製造に適している。
【0030】
食肉加工品は、より硬さを向上させるという観点から、塩漬け処理することが好ましい。食肉加工品中のアミノ酸の含有量に対する塩の含有量の比(塩の含有量/アミノ酸の含有量)は、特に制限されないが、好ましくは3以上である。塩とアミノ酸の含有量の比をこの範囲とすることにより、本発明のアミノ酸の作用が促進され、食肉を硬くするという本発明の効果をより一層向上することができる。アミノ酸の含有量に対する塩の含有量の比は、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは6以上である。上限値として、好ましくは100以下であり、より好ましくは40以下であり、更に好ましくは15以下であり、特に好ましくは10以下である。
【0031】
食肉加工品には、イノシン酸を含有することが好ましい。イノシン酸を含有することにより、本発明のアミノ酸の作用効果が促進するという効果がある。イノシン酸の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上である。
【0032】
また、イノシン酸を含有することにより、本発明のアミノ酸の含有量を低下しても同等以上の作用効果を得ることができる。このような観点から、本発明のアミノ酸とイノシン酸の含有量の和は、0.2質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.25質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。上限値としては、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.3質量%以下であり、特に好ましくは0.2質量%以下である。1質量%以下である場合には、イノシン酸の固有の風味が食肉加工品の風味に影響することを抑制することができる。
【0033】
さらに、イノシン酸の含有量に対する本発明のアミノ酸の含有量の比(アミノ酸の含有量/イノシン酸の含有量)は、1以上であることが好ましい。アミノ酸とイノシン酸の含有量の比をこの範囲とすることにより、本発明のアミノ酸の作用が促進され、食肉を硬くするという本発明の効果をより一層向上することができる。
【0034】
<アラニン>
アラニンとイノシン酸を含有する場合には、アラニンの含有量は、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上である。アラニンの含有量が0.15質量%以上である場合、イノシン酸の含有量を低下することが可能である。
この場合のイノシン酸の含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、イノシン酸の上限値は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.15質量%以下である。
【0035】
また、イノシン酸の含有量が0.1質量%以上である場合には、アラニンの含有量を低下することができる。この場合のアラニンの含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、アラニンの上限値は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0036】
本発明の食肉加工品にアラニンを含有する場合には、加熱処理を行うことにより食肉を硬くするという本発明の効果をより一層発揮することができる。より一層硬さを向上することができる。よって、アラニンを含有する食肉加工品は、ハムやソーセージなどの加熱処理により得られる食肉加工品に適している。
【0037】
また、アラニンを含有する場合には、食肉の硬さが向上するという効果の他、塩角が和らぐなどの効果がある。よって、アラニンを含有する食肉加工品は、塩漬け処理により得られる食肉加工品に適している。
【0038】
<グリシン>
グリシンとイノシン酸を含有する場合には、グリシンの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、更に好ましくは0.2質量%以上である。グリシンの含有量が0.1質量%以上である場合、イノシン酸の含有量を低下することが可能である。
この場合のイノシン酸の含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、イノシン酸の上限値は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.15質量%以下である。
【0039】
また、イノシン酸の含有量が0.1質量%以上である場合には、グリシンの含有量を低下することができる。この場合のグリシンの含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、グリシンの上限値は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0040】
本発明の食肉加工品にグリシンを含有する場合には、加熱処理を行うことにより食肉を硬くするという本発明の効果をより一層発揮することができる。より一層硬さを向上することができる。よって、グリシンを含有する食肉加工品は、ハムやソーセージなどの加熱処理により得られる食肉加工品に適している。
【0041】
<システイン>
システインとイノシン酸を含有する場合には、システインの含有量は、好ましくは0.25質量%以上である。システインの含有量が0.25質量%以上である場合、イノシン酸の含有量を低下することが可能である。
この場合のイノシン酸の含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上である。また、イノシン酸の上限値は、好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.12質量%以下である。
【0042】
また、イノシン酸の含有量が0.08質量%以上である場合には、システインの含有量を低下することができる。この場合のシステインの含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、システインの上限値は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0043】
本発明の食肉加工品にシステインを含有する場合には、加熱処理を行うことにより食肉を硬くするという本発明の効果をより一層発揮することができる。より一層硬さを向上することができる。よって、システインを含有する食肉加工品は、ハムやソーセージなどの加熱処理により得られる食肉加工品に適している。
【0044】
<オルニチン>
オルニチンとイノシン酸を含有する場合には、オルニチンの含有量は、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.25質量%以上である。オルニチンの含有量が0.15質量%以上である場合、イノシン酸の含有量を低下することが可能である。
この場合のイノシン酸の含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、イノシン酸の上限値は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.15質量%以下である。
【0045】
また、イノシン酸の含有量が0.1質量%以上である場合には、オルニチンの含有量を低下することができる。この場合のオルニチンの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、更に好ましくは0.2質量%以上であり、特に好ましくは0.25質量%以上である。また、オルニチンの上限値は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0046】
<その他のアミノ酸>
本発明の食肉加工品は、上記アミノ酸以外のアミノ酸を含有してもよい。その他のアミノ酸としては、例えば、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、セリン、チロシン、トリプトファン、トレオニン、バリン、ヒスチジン、プロリン、リシン、ロイシンなどが挙げられる。
【0047】
[食肉加工品の製造方法]
本発明の食肉加工品の製造方法は、上記本発明の食肉加工品を製造することを特徴とするものである。
この食肉加工品の製造方法によれば、食肉の硬さをより一層向上し、歯ごたえのある食感の食肉加工品を製造することができる。
【0048】
本発明の食肉加工品の製造方法は、食肉に対して、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンを添加するアミノ酸添加工程を備える。また、イノシン酸を添加するイノシン酸添加工程を備える。なお、アミノ酸及びイノシン酸は、別々に食肉に添加しても、アミノ酸とイノシン酸を混合したものを食肉に添加してもよい。
【0049】
アミノ酸添加工程及びイノシン酸添加工程は、上記アミノ酸及びイノシン酸をどのように食肉に添加してもよく、例えば、上記アミノ酸及びイノシン酸を粉末として添加したり、水又はピックル液に溶解して溶液として添加したりしてもよい。ピックル液に溶解して添加することにより、食肉に均等に上記アミノ酸及びイノシン酸を浸透させることができる。さらに、ピックル液での処理の間に上記アミノ酸及びイノシン酸を食肉に添加することができるため、食肉加工品の製造が簡易化することができる。
【0050】
ピックル液を食肉に添加する方法としては、挽肉にピックル液を練り込む方法や、食肉をピックル液に漬け込む塩漬法や、ピックル液を注射針で食肉に注入するインジェクション法などが挙げられる。
【0051】
(ピックル液)
本発明のピックル液は、塩と、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸を含有し、前記アミノ酸の含有量に対する前記塩の含有量の比(塩の含有量/アミノ酸の含有量)は、3以上であることを特徴とするものである。
【0052】
ピックル液中の塩の含有量は、特に制限されないが、好ましくは5~50質量%である。下限値として、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。上限値として、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは35質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
【0053】
また、ピックル液中の本発明のアミノ酸の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.5~20質量%である。下限値として、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。上限値として、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
【0054】
ピックル液中の本発明のアミノ酸の含有量に対する塩の含有量の比(塩の含有量/アミノ酸の含有量)は、特に制限されないが、好ましくは3以上である。塩とアミノ酸の含有量の比をこの範囲とすることにより、本発明のアミノ酸の作用が促進され、食肉を硬くするという本発明の効果をより一層向上することができる。アミノ酸の含有量に対する塩の含有量の比は、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは6以上である。上限値として、好ましくは100以下であり、より好ましくは40以下であり、更に好ましくは15以下であり、特に好ましくは10以下である。
【0055】
ピックル液には、イノシン酸を添加してもよい。その他、亜硝酸塩などの発色剤、砂糖、ニコチン酸アミドなどの発色助剤、アスコルビン酸などの酸化防止剤、重合リン酸塩などの結着補強剤、グルタミン酸ナトリウムなどの調味料類などを含有してもよい。
【0056】
[食肉改質方法]
本発明の食肉改質方法は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸を含有するピックル液を使用し、食肉の硬さを向上することを特徴とするものである。
この食肉改質方法によれば、ピックル液で処理しつつ、食肉の硬さを向上させることができる。また、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンは、食肉に添加してもpHを変化させないため、ピックル液及び食肉加工品の味への影響が小さいという効果がある。
【0057】
また、本発明の食肉改質方法は、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、シスチン、システイン、フェニルアラニン、メチオニンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸、及び、イノシン酸を含有するピックル液を使用し、食肉の硬さを向上することを特徴とするものである。
この食肉改質方法によれば、ピックル液で処理しつつ、食肉の硬さをより一層向上させることができる。
【0058】
なお、上記の食肉加工品、食肉加工品の製造方法、食肉改質方法の各発明については、同じ技術的思想により構成されるものであり、各発明について重複する記載は省略しているが、各発明についての詳細な記載は他の発明にも適用されるものである。
【実施例
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[試験例1]<アミノ酸の食感への効果について>
アミノ酸を食肉加工品に添加することにより、22種類のアミノ酸の食肉の硬さを向上する効果について検証した。また、各アミノ酸を含有するピックル液について、pHを測定し、アミノ酸の添加によるpHの変化を確認した。また、各アミノ酸のピックル液への溶けやすさについて評価した。
【0060】
アミノ酸を含有する食肉加工品は、以下のとおり調製した。
(食肉加工品の調製1)
精製塩24.0質量%、亜硝酸Na0.6質量%、各アミノ酸3.0質量%を水に溶解し、ピックル液を調製した。豚挽肉100gに対し20gのピックル液を加え、よく混合したものを真空パックしたのち、80℃で30分間加熱し、アミノ酸を含有する食肉加工品を調製した。なお、食肉加工品中の各成分の濃度は、精製塩4.0質量%、亜硝酸Na0.1質量%、各アミノ酸0.5質量%となる。
【0061】
得られた食肉加工品について、「食感」、「pHの変化」、「アミノ酸の溶けやすさ」を評価した。「食感」、「pHの変化」、「アミノ酸の溶けやすさ」は、以下の方法で評価した。
【0062】
(食感)
一口大にカットした各食肉加工品を3名のパネラーが食し、各食肉加工品の食感について評価した。評価方法は、アミノ酸を添加しないピックル液により得られた食肉加工品をコントロールとし、各アミノ酸を添加することにより食肉加工品の硬さが向上するかを評価した。評価結果は、3名の評価者で総意に基づくものである。結果を表1に示す。
【0063】
(pHの変化)
各アミノ酸を添加する前にピックル液のpHを測定した。pHは5.6であった。次に、ピックル液に各アミノ酸を添加した後にpHを測定し、pHの変化を確認した。結果を表1に示す。
【0064】
(アミノ酸の溶けやすさ)
ピックル液を撹拌器で撹拌しながら、アミノ酸を添加し、溶けやすさを評価した。評価方法は、1名の作業者により目視で評価した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1の結果から、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、グルタミン酸、シスチン、システイン、セリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、リシンを添加することにより、食肉の硬さを向上する効果が認められた。
また、アスパラギン、アラニン、イソロイシン、オルニチン、グリシン、グルタミン、シスチン、システイン、チロシン、トリプトファン、トレオニン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、ロイシンについては、アミノ酸を添加してもpHの変化がないことがわかる。
また、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、オルニチン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、システイン、トレオニン、ヒスチジン、リシンは、ピックル液に溶けやすいことがわかる。
【0067】
[試験例2]<複数のアミノ酸の相乗効果について>
複数のアミノ酸を食肉加工品に添加した場合について、食肉の硬さを向上する効果について評価した。
【0068】
アミノ酸を含有する食肉加工品は、以下のとおり調製した。
(食肉加工品の調製2)
<加熱ハム>
豚肉中の各成分の濃度が、精製塩4.0質量%、亜硝酸Na0.1質量%、各アミノ酸が単独の場合は0.5質量%となるように、2種のアミノ酸を混合した場合はそれぞれが0.25質量%(2種を合わせると0.5質量%)となるように加え、さらにイノシン酸Naが0.10質量%となるように加えて混合したものを真空パックした。次いで、80℃で30分間加熱し、加熱ハムを得た。アミノ酸は、アラニン、オルニチン、グリシン、システインを使用した。
<湿塩漬ハム>
豚肉中の各成分の濃度が、精製塩4.0質量%、亜硝酸Na0.1質量%、各アミノ酸が単独の場合は0.5質量%となるように、2種のアミノ酸を混合した場合はそれぞれが0.25質量%(2種を合わせると0.5質量%)となるように加え、さらにイノシン酸Naが0.10質量%となるように加えて混合したものを真空パックした。次いで、0℃で一晩塩漬し、湿塩漬ハム(生ハム)を得た。アミノ酸は、アラニン、オルニチン、グリシン、システインを使用した。
【0069】
得られた加熱ハムについて、「食感」を評価した。また、得られた加熱ハム及び湿塩漬ハムについて、「硬さ」を評価した。評価方法を以下に示す。
【0070】
(食感)
「食感」は、3名のパネラーによる官能評価で評価した。対照となるアミノ酸無添加の加熱ハム(ブランク)の硬さを「0」とし、各アミノ酸を添加した加熱ハムの硬さを5段階評価(-2から+2)で評価した。ブランクに比べて、硬いと感じられたものを「+1」又は「+2」、柔らかいと感じられたものを「-1」又は「-2」とし評価した。評価結果は、3名のパネラーの評価点の平均で表した。結果を図1に示す。
【0071】
(硬さ)
「硬さ」は、クリープメーター(株式会社山電製)を用いて評価した。加熱ハム又は湿塩漬ハムの試料を、カッター刃により上部から一定速度でせん断し、その際の破断応力を確認し、その最大荷重(N)を測定した。試料は、幅・奥行き共に約30mm、高さ約15mm程度にカットしたものを用いた。1試験区につき試料を2つ準備し、各試料を2等分する形で測定した。結果は、2つの試料の平均値とした。加熱ハムの硬さの結果を図2に示し、湿塩漬ハムの硬さの結果を図3に示す。
【0072】
図1図2の結果から、クリープメーターの結果は、官能評価の結果と同様の傾向を示していた。図2図3の結果から、2種のアミノ酸を添加した場合、単独のアミノ酸を添加した場合と比較して、同等以上の効果が認められた。
また、図2の結果から、加熱処理をした場合には、「システイン」が特に優れた効果を示した。
【0073】
[試験例3]<イノシン酸の添加による効果について>
アミノ酸とイノシン酸を食肉加工品に添加した場合について、食肉の硬さを向上する効果について評価した。
【0074】
アミノ酸及びイノシン酸を含有する食肉加工品は、以下のとおり調製した。
(食肉加工品の調製3)
<湿塩漬ハム>
豚肉中の各成分の濃度が、精製塩4.0質量%、亜硝酸Na0.1質量%、各アミノ酸が0.10質量%、0.25質量%、0.50質量%となるように、イノシン酸Naを0.05質量%、0.10質量%、0.15質量%となるように加えて混合したものを、袋中に真空パックした。次いで、0℃で一晩塩漬し、湿塩漬ハム(生ハム)を得た。アミノ酸は、アラニン、オルニチン、グリシン、システインを使用した。
【0075】
得られた湿塩漬ハムについて、「硬さ」を評価した。評価方法を以下に示す。
(硬さ)
「硬さ」は、クリープメーター(株式会社山電製)を用いて評価した。湿塩漬ハムの試料を、カッター刃により上部から一定速度でせん断し、その際の破断応力を確認し、その最大荷重(N)を測定した。試料は、幅・奥行き共に約30mm、高さ約15mm程度にカットしたものを用いた。1試験区につき試料を1つ準備し、各試料を4等分する形で3回測定した。結果は、3回の測定結果の平均値とした。
アラニンを含有する湿塩漬ハムの硬さの結果を図4に示し、グリシンを含有する湿塩漬ハムの硬さの結果を図5に示し、システインを含有する湿塩漬ハムの硬さの結果を図6に示し、オルニチンを含有する湿塩漬ハムの硬さの結果を図7に示す。なお、図中の「IN」は、イノシン酸を表す。
【0076】
図4図7の結果から、イノシン酸を添加することにより、アミノ酸の食肉を硬くするという効果が高まることがわかる。
【0077】
[試験例4]<アミノ酸及びイノシン酸の添加による食感への効果について>
アミノ酸とイノシン酸を食肉加工品に添加した場合について、食肉加工品の食感への効果について評価した。
【0078】
アミノ酸及びイノシン酸を含有する食肉加工品は、以下のとおり調製した。
<低塩濃度加熱ハム>
豚肉中の各成分の濃度が精製塩1.4質量%、亜硝酸Na0.1質量%、各アミノ酸が単独の場合は0.5質量%となるように、さらにイノシン酸Naが0質量%又は0.10質量%となるように加えて混合したものを真空パックした。次いで、80℃で30分間加熱した。アミノ酸は、アラニン、オルニチン、グリシン、システインを使用した。
<高塩濃度加熱ハム>
豚肉中の各成分の濃度が精製塩4.0質量%、亜硝酸Na0.1質量%、各アミノ酸が単独の場合は0.5質量%となるように、さらにイノシン酸Naが0質量%又は0.10質量%となるように加えて混合したものを真空パックした。次いで、80℃で30分間加熱した。アミノ酸は、アラニン、オルニチン、グリシン、システインを使用した。
【0079】
得られた低塩濃度加熱ハム及び高塩濃度加熱ハムについて、「食感」を評価した。「食感」は、7名のパネラーによる官能評価により評価した。評価方法を以下に示す。
(食感)
官能評価は、硬さを5段階評価(1から5)で評価した。なお、5段階評価の「5」は最も硬く、5段階評価の「1」は最も柔らかいことを示す。パネラー数は7名で行い、平均を取って比較した。初めに対照となるアミノ酸無添加の試料(ブランクと記載)を食べ、その硬さをパネラー共通の認識として「3」と評価し、それと比較する形で各加熱ハムを評価した。評価は低塩濃度加熱ハム、高塩濃度加熱ハムで分けて行った。
低塩濃度加熱ハムの結果を図8に示し、高塩濃度加熱ハムの結果を図9に示す。なお、図中の「IN」は、イノシン酸を表す。
【0080】
図8図9の結果から、低塩濃度加熱ハム及び高塩濃度加熱ハムのいずれについても、アラニン、オルニチン、グリシン、システインを添加することにより食感が硬くなることがわかった。
また、イノシン酸のみでも食感が硬くなることが確認された。さらには、各アミノ酸とイノシン酸を併用することにより、一層効果が高まった。
また、低塩濃度加熱ハムよりも、高塩濃度加熱ハムの方が、より高い効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の食肉加工品は、食肉を含有する加工品に利用することができる。例えば、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、サラミソーセージなどの乾燥食肉製品、生ハムなどの非加熱食肉製品、ローストビーフ、ローストポーク、スモークドビーフなどの特定加熱食肉製品、ロースハム、ウインナーソーセージ、プレスハム、ソーセージ、ベーコンなどの加熱食肉製品などが挙げられる。その他、ハンバーグ、しゅうまい、とんかつ、ぎょうざ、ミートボール、チャーシューなどでもよい。
【0082】
本発明の食肉改質方法は、食肉の硬さを向上して、歯ごたえのある食感を食肉に付与する加工方法に利用することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9