(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】蛍光画像分析装置及び蛍光画像分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20231031BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N33/48 M
G01N33/48 P
(21)【出願番号】P 2019065690
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】今久保 桃子
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035621(JP,A)
【文献】特開2010-085185(JP,A)
【文献】特開2013-079971(JP,A)
【文献】特開2017-215311(JP,A)
【文献】特開2018-174828(JP,A)
【文献】特開2010-169484(JP,A)
【文献】特開2018-165649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0163681(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
G01N 33/48 - G01N 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的部位を蛍光色素により標識した複数の細胞を含む試料を測定して分析を行う蛍光画像分析装置であって、
前記試料に光を照射する光源と、
前記光が照射されることにより蛍光を発する前記細胞の蛍光画像を撮像する撮像部と、
撮像された前記蛍光画像を処理し、前記蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得する処理部と、
表示部と、を備え、
前記処理部は、
一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する、第1陽性パターンと第2陽性パターンとを含む複数の陽性パターンを選択し、
取得した前記輝点パターンと前記第1陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数、異常細胞の数の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つと、取得した前記輝点パターンと前記第2陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数、異常細胞の数の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つと、を前記表示部に表示する、
蛍光画像分析装置。
【請求項2】
前記処理部は、一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する前記複数の陽性パターンの全てを選択可能に前記表示部に表示する、
請求項1に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項3】
前記処理部は、一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する前記複数の陽性パターンと、前記複数の陽性パターンのそれぞれに対応づけて配置されるチェックボックスと、を前記表示部に表示する、
請求項2に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記複数の陽性パターンを選択可能な選択画面を操作する権限をユーザーごとに管理し、
前記権限を付与された特定ユーザーに対応づけられた前記選択画面を前記表示部に表示する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項5】
前記試料の判定結果を記憶する記憶部を更に備え、
前記処理部は、記憶された前記判定結果の全てを前記表示部に表示する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記試料に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、前記試料に含まれる細胞の蛍光画像とともに前記表示部に表示する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記試料に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報とともに、前記異常細胞の割合、又は、前記正常細胞の割合の少なくとも一方を示すグラフ画像を前記表示部に表示する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記試料に含まれる、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果を、他の陽性パターンに関する判定結果とは異なる表示形態で前記表示部に表示する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項9】
前記一の測定項目又は前記一の標識試薬の少なくとも一方に対応する前記複数の
陽性パターンは、前記標的部位を標識した前記蛍光色素から発した蛍光の輝点の色と数とに基づいて定められる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の蛍光画像分析装置。
【請求項10】
標的部位を蛍光色素により標識した複数の細胞を含む試料を測定して分析を行う蛍光画像分析方法であって、
光源から前記試料に光が照射されることにより蛍光を発する前記細胞の蛍光画像を撮像するステップと、
撮像された前記蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得するステップを含む前記蛍光画像を処理するステップと、を含み、
前記処理するステップは、
一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する、第1陽性パターンと第2陽性パターンとを含む複数の陽性パターンを選択し、
取得した前記輝点パターンと前記第1陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数、異常細胞の数の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つと、取得した前記輝点パターンと前記第2陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数、異常細胞の数の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つと、を表示部に表示する、
蛍光画像分析方法。
【請求項11】
前記処理するステップは、一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する前記複数の陽性パターンの全てを選択可能に前記表示部に表示する、
請求項10に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項12】
前記処理するステップは、一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する前記複数の陽性パターンと、前記複数の陽性パターンのそれぞれに対応づけて配置されるチェックボックスと、を前記表示部に表示する、
請求項11に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項13】
前記処理するステップは、
前記複数の陽性パターンを選択可能な選択画面を操作する権限をユーザーごとに管理し、
前記権限を付与された特定ユーザーに対応づけられた前記選択画面を前記表示部に表示する、
請求項10~12のいずれか一項に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項14】
前記試料の判定結果を記憶するステップを更に含み、
前記処理するステップは、記憶された前記判定結果の全てを前記表示部に表示する、
請求項10~13のいずれか一項に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項15】
前記処理するステップは、前記試料に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、前記試料に含まれる細胞の蛍光画像とともに前記表示部に表示する、
請求項10~14のいずれか一項に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項16】
前記処理するステップは、前記試料に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報とともに、前記異常細胞の割合、又は、前記正常細胞の割合の少なくとも一方を示すグラフ画像を前記表示部に表示する、
請求項10~15のいずれか一項に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項17】
前記処理するステップは、前記試料に含まれる、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果を、他の陽性パターンに関する判定結果とは異なる表示形態で前記表示部に表示する、
請求項10~16のいずれか一項に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項18】
前記一の測定項目又は前記一の標識試薬の少なくとも一方に対応する前記複数の
陽性パターンは、前記標的部位を標識した前記蛍光色素から発した蛍光の輝点の色と数とに基づいて定められる、
請求項10~17のいずれか一項に記載の蛍光画像分析方法。
【請求項19】
標的部位を蛍光色素により標識した複数の細胞を含む試料を測定して分析を行う蛍光画像分析装置であって、
前記試料に光を照射する光源と、
前記光が照射されることにより蛍光を発する前記細胞の蛍光画像を撮像する撮像部と、
撮像された前記蛍光画像を処理し、前記蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得する処理部と、
表示部と、を備え、
前記処理部は、
一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する、第1陽性パターンと第2陽性パターンとを含む複数の陽性パターンを選択し、
取得した前記輝点パターンと前記第1陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数と、取得した前記輝点パターンと前記第2陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数との割合を前記表示部に表示する、
蛍光画像分析装置。
【請求項20】
標的部位を蛍光色素により標識した複数の細胞を含む試料を測定して分析を行う蛍光画像分析方法であって、
光源から前記試料に光が照射されることにより蛍光を発する前記細胞の蛍光画像を撮像するステップと、
撮像された前記蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得するステップを含む前記蛍光画像を処理するステップと、を含み、
前記処理するステップは、
一の測定項目又は一の標識試薬の少なくとも一方に対応する、第1陽性パターンと第2陽性パターンとを含む複数の陽性パターンを選択し、
取得した前記輝点パターンと前記第1陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数と、取得した前記輝点パターンと前記第2陽性パターンとに基づき識別された異常細胞の数との割合を表示部に表示する、
蛍光画像分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光画像分析装置及び蛍光画像分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法(FISH法)の検出にフローサイトメータ等を適用する際の細胞の処理方法が記載されている。FISH法によれば、細胞中の検出対象のDNA配列領域に標識プローブをハイブリダイズさせる前処理により細胞を染色する。そして、標識プローブに起因して生じた蛍光を検出することにより、異常細胞の検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような異常細胞の分析手法において、陽性パターンの中には、典型的な陽性パターンと非典型的な陽性のパターンとが存在する。また、非典型的な陽性のパターンには、染色体の欠失等の染色体異常によって生じる他の陽性パターンをさらに含む場合もありえる。試料が特定の疾患について陽性又は陰性のいずれであるかを精度よく判定しようとすると、オペレータは、試料に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについて漏れなく判定しなければならない。よって、上記分析手法において判定漏れが発生してしまうと、細胞の異常の有無の判定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、試料が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度を向上させることができる蛍光画像分析技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図1、3、4、及び7に示すように、本発明の一態様に係る蛍光画像分析装置(1)は、標的部位を蛍光色素により標識した複数の細胞を含む試料(10)を測定して分析を行う蛍光画像分析装置であって、試料(10)に光を照射する光源(120~123)と、光が照射されることにより蛍光を発する細胞の蛍光画像を撮像する撮像部(160)と、撮像された蛍光画像を処理する処理部(11)と、表示部(13)と、を備え、処理部(11)は、蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得し、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンを表示部(13)に表示し、取得した輝点パターンと、複数の陽性パターンとに基づいて、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を表示部(13)に表示する。
【0007】
上記態様によれば、蛍光画像分析装置(1)が、蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得し、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンを表示部(13)に表示し、取得した輝点パターンと、複数の陽性パターンとに基づいて、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を表示部(13)に表示する。よって、試料(10)に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについての判定漏れを抑止することができる。したがって、試料(10)が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度を向上させることができる。また、ユーザーが、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を容易に把握することができる。
【0008】
図1、3及び4に示すように、蛍光画像分析装置(1)において、処理部(11)は、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンの全てを選択可能に表示部(13)に表示してもよい。
【0009】
上記態様によれば、処理部(11)は、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンの全てを選択可能に表示部(13)に表示する。よって、試料(10)に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについての判定漏れを抑止する可能性が高まる。したがって、試料(10)が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度をより向上させることができる。
【0010】
図1、3及び4に示すように、蛍光画像分析装置(1)において、処理部(11)は、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンと、陽性パターンのそれぞれに対応づけて配置されるチェックボックスと、を表示部(13)に表示してもよい。
【0011】
上記態様によれば、処理部(11)は、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンと、複数の陽性パターンのそれぞれに対応づけて配置されるチェックボックスと、を表示部(13)に表示する。よって、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンの全てをチェックボックス形式で選択可能になる。したがって、オペレータによる陽性パターンの選択操作が容易になる。
【0012】
図4に示すように、上記蛍光画像分析装置(1)において、処理部(11)は、複数の陽性パターンを選択可能な選択画面を操作する権限をユーザーごとに管理し、権限を付与された特定ユーザーに対応づけられた選択画面を表示部(13)に表示してもよい。
【0013】
上記態様によれば、処理部(11)は、複数の陽性パターンを選択可能な選択画面を操作する権限をユーザーごとに管理し、権限を付与された特定ユーザーに対応づけられた選択画面を表示部(13)に表示する。よって、権限を付与された特定ユーザーは、特定ユーザーに対応づけられた選択画面を操作することが可能になる。したがって、他のユーザーによって選択画面を操作され、特定ユーザーが所望する陽性パターンを勝手に変更されることを防止できる。
【0014】
図1及び9に示すように、上記蛍光画像分析装置(1)において、試料(10)の判定結果を記憶する記憶部(12)を更に備え、処理部(11)は、記憶された判定結果の全てを表示部(13)に表示してもよい。
【0015】
上記態様によれば、処理部(11)は、記憶された判定結果の全てを表示部(13)に表示する。試料(10)に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについての判定漏れを抑止する可能性を高めることができる。したがって、試料(10)が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度をより向上させることができる。
【0016】
図9及び10に示すように、上記蛍光画像分析装置(1)において、処理部(11)は、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、試料(10)に含まれる細胞の蛍光画像とともに表示部(13)に表示してもよい。
【0017】
上記態様によれば、処理部(11)は、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、試料(10)に含まれる細胞の蛍光画像とともに表示部(1)に表示する。よって、ユーザーは、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、試料(10)に含まれる細胞の蛍光画像と併せて確認することができる。
【0018】
図9及び10に示すように、上記蛍光画像分析装置(1)において、処理部(11)は、試料(10)に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報とともに、前記異常細胞の割合、又は、前記正常細胞の割合の少なくとも一方を示すグラフ画像を表示部(13)に表示してもよい。
【0019】
上記態様によれば、処理部(11)は、試料(10)に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報とともに、前記異常細胞の割合、又は、前記正常細胞の割合の少なくとも一方を示すグラフ画像を表示部(13)に表示する。よって、ユーザーは、試料(10)に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報をグラフ画像と併せて確認することができる。
【0020】
図9及び10に示すように、上記蛍光画像分析装置(1)において、処理部(11)は、前記試料に含まれる、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果を、他の陽性パターンに関する判定結果とは異なる表示形態で表示部(13)に表示してもよい。
【0021】
上記態様によれば、処理部(11)は、前記試料に含まれる、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果を、他の陽性パターンに関する判定結果とは異なる表示形態で表示部(13)に表示する。よって、ユーザーは、様々な判定結果を含む判定結果画面において、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果をより簡単に特定することができる。
【0022】
図7に示すように、上記蛍光画像分析装置(1)において、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の輝点パターンは、標的部位を標識した蛍光色素から発した蛍光の輝点の色と数とに基づいて定められてもよい。
【0023】
図1、3、4、及び7に示すように、本発明の一態様に係る蛍光画像分析方法は、標的部位を蛍光色素により標識した複数の細胞を含む試料を測定して分析を行う蛍光画像分析方法であって、光源から試料に光が照射されることにより蛍光を発する細胞の蛍光画像を撮像するステップと、撮像された蛍光画像を処理するステップと、を含み、処理するステップは、蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得し、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンを表示部(13)に表示し、取得した輝点パターンと、陽性パターンとに基づいて、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を表示部(13)に表示する。
【0024】
上記態様によれば、処理するステップは、蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得し、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンを表示部(13)に表示し、取得した輝点パターンと、陽性パターンとに基づいて、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を表示部(13)に表示する。よって、試料(10)に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについての判定漏れを抑止することができる。したがって、試料(10)が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度を向上させることができる。また、ユーザーが、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を容易に把握することができる。
【0025】
図1、3及び4に示すように、上記蛍光画像分析方法において、処理するステップは、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンの全てを選択可能に表示部(13)に表示してもよい。
【0026】
上記態様によれば、処理するステップは、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンの全てを選択可能に表示部(13)に表示する。よって、試料(10)に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについての判定漏れを抑止する可能性が高まる。したがって、試料(10)が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度をより向上させることができる。
【0027】
図1、3及び4に示すように、上記蛍光画像分析方法において、処理するステップは、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンと、陽性パターンのそれぞれに対応づけて配置されるチェックボックスと、を表示部(13)に表示してもよい。
【0028】
上記態様によれば、処理するステップは、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンと、複数の陽性パターンのそれぞれに対応づけて配置されるチェックボックスと、を表示部(13)に表示する。よって、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンの全てをチェックボックス形式で選択可能になる。したがって、オペレータによる陽性パターンの選択操作が容易になる。
【0029】
図4に示すように、上記蛍光画像分析方法において、処理するステップは、複数の陽性パターンを選択可能な選択画面を操作する権限をユーザーごとに管理し、権限を付与された特定ユーザーに対応づけられた選択画面を表示部(13)に表示してもよい。
【0030】
上記態様によれば、処理するステップは、複数の陽性パターンを選択可能な選択画面を操作する権限をユーザーごとに管理し、権限を付与された特定ユーザーに対応づけられた選択画面を表示部(13)に表示する。よって、権限を付与された特定ユーザーは、特定ユーザーに対応づけられた選択画面を操作することが可能になる。したがって、他のユーザーによって選択画面を操作され、特定ユーザーが所望する陽性パターンを勝手に変更されることを防止できる。
【0031】
図1、9及び11に示すように、上記蛍光画像分析方法において、試料(10)の判定結果を記憶するステップを更に含み、処理するステップは、記憶された判定結果の全てを表示部(13)に表示してもよい。
【0032】
上記態様によれば、処理ステップは、記憶された判定結果の全てを表示部(13)に表示する。試料(10)に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについての判定漏れを抑止する可能性を高めることができる。したがって、試料(10)が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度をより向上させることができる。
【0033】
図9~11に示すように、上記蛍光画像分析方法において、処理するステップは、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、判定された試料(10)に含まれる細胞の蛍光画像とともに表示部(13)に表示してもよい。
【0034】
上記態様によれば、処理部(11)は、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、試料(10)に含まれる細胞の蛍光画像とともに表示部(131)に表示する。よって、ユーザーは、試料(10)に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、試料(10)に含まれる細胞の蛍光画像と併せて確認することができる。
【0035】
図9~11に示すように、上記蛍光画像分析方法において、処理するステップは、試料(10)に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報とともに、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すグラフ画像を表示部(13)に表示してもよい。
【0036】
上記態様によれば、処理部(11)は、試料(10)に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報とともに、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すグラフ画像を表示部(13)に表示する。よって、ユーザーは、試料(10)に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報をグラフ画像と併せて確認することができる。
【0037】
図9~11に示すように、上記蛍光画像分析方法において、処理するステップは、前記試料に含まれる、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果を、他の陽性パターンに関する判定結果とは異なる表示形態で表示部(13)に表示してもよい。
【0038】
上記態様によれば、処理部(11)は、前記試料に含まれる、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果を、他の陽性パターンに関する判定結果とは異なる表示形態で表示部(13)に表示する。よって、ユーザーは、様々な判定結果を含む判定結果画面において、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果をより簡単に特定することができる。
【0039】
図7に示すように、上記蛍光画像分析方法において、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の輝点パターンは、標的部位を標識した蛍光色素から発した蛍光の輝点の色と数とに基づいて定められてもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、試料が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、実施形態に係る蛍光画像分析装置及び前処理装置の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置により取得される第1~第3画像および明視野画像を例示する図である。
図2(b)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置が行う核の領域の抽出を説明するための図である。
図2(c)、(d)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置が行う輝点の領域の抽出を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の表示部における、測定項目及び標識試薬を特定するための特定画面の一例を示す説明図である。
図4(b)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の表示部における陽性パターン選択画面の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態に係る読取装置を用いた、標識試薬が格納された格納箱に付着されたコードの読取処理の一例を示す説明図である。
図5(b)は、実施形態に係る読取装置を用いた、標識試薬に関する添付文書に記載されたコードの読取処理の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の表示部における、輝点パターンに関する情報を登録するための登録画面の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7(a)~(d)は、それぞれ、実施形態に係る陰性パターン、陽性パターン1、陽性パターン2、陽性パターン3の輝点の配置例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るBCR/ABL融合遺伝子を標的とする各プローブがハイブリダイズする標的部位の例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の表示部における判定結果画面の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の輝点パターンの取得処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の輝点パターンの選択処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の判定処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の判定処理の他の一例を説明するフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の表示制御処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略す。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0043】
以下の実施形態は、蛍光色素により標識した核酸プローブと核酸中の標的部位とをハイブリダイズさせる工程を含む前処理において調製された試料を測定して分析を行う装置に、本発明を適用したものである。具体的には、以下の実施形態では、核酸中の標的部位を22番染色体にあるBCR遺伝子および9番染色体にあるABL遺伝子とし、FISH法に基づいて、慢性骨髄性白血病に見られる9番染色体と22番染色体との間における転座が生じている細胞を異常細胞として検出する。つまり、以下の実施形態では、例えば、BCR遺伝子又はABL遺伝子が転座してBCR-ABL融合遺伝子を生成している細胞を異常細胞として検出する。
【0044】
図1は、本実施形態の蛍光画像分析装置1の概略構成を示す。
図1に示す蛍光画像分析装置1は、例示的に、測定装置100と処理装置200とを備えており、前処理装置300による前処理により調製された試料10を測定し、分析を行う。オペレータ(ユーザー)は、被検者から採取した血液検体に対して、例えばフィコール等の細胞分離用媒体を用いて遠心分離等を行って、測定対象細胞である有核細胞を回収する。有核細胞の回収にあたっては、遠心分離による有核細胞の回収に代えて溶血剤を用いて赤血球等を溶血させることにより有核細胞を残してもよい。
【0045】
前処理装置300は、遠心分離等により得られた有核細胞浮遊液と試薬とを混合させるための混合容器、有核細胞浮遊液と試薬を混合容器に分注するための分注ユニット、混合容器を加温するための加温部等を含む。前処理装置300は、例えば、被検者から採取した細胞内の標的部位を蛍光色素により標識する工程と、細胞の核を核染色用色素により染色する工程と、を含む前処理を行って試料10を調製する。具体的には、標的部位を蛍光色素により標識する工程では、標的配列と、標的配列と相補的な配列を有する核酸配列を含み蛍光色素により標識されたプローブとをハイブリダイズされる。
【0046】
FISH法は、1以上の蛍光色素を使用して染色体上の標的部位を検出する。好ましくは、FISH法は、2以上の蛍光色素を使用して第1の染色体上の標的部位と第2の染色体上の標的部位を検出する(「染色体」を修飾する「第1」及び「第2」は染色体番号を意味しない、包括的な数の概念である)。例えば、BCR遺伝子座とハイブリダイズするプローブは、BCR遺伝子座の塩基配列に相補的な配列を有する核酸が、波長λ11の光が照射されることにより波長λ21の第1蛍光を生じる第1蛍光色素によって標識されたものである。このプローブを使うことで、BCR遺伝子座が、第1蛍光色素によって標識される。ABL遺伝子座とハイブリダイズするプローブは、ABL遺伝子座の塩基配列に相補的な配列を有する核酸が、波長λ12の光が照射されることにより波長λ22の第2蛍光を生じる第2蛍光色素によって標識されたものである。このプローブを使うことで、ABL遺伝子座が、第2蛍光色素によって標識される。核は、波長λ13の光が照射されることにより波長λ23の第3蛍光を生じる核染色用色素によって染色される。波長λ11、波長λ12及び波長λ13はいわゆる励起光である。
【0047】
具体的には、前処理装置300は、例示的に、脱水により細胞が収縮しないよう細胞を固定する処理、プローブを細胞内に導入できる大きさの穴を細胞に開ける膜透過処理、細胞に熱を加える熱変性処理、標的部位とプローブとをハイブリダイゼーションさせる処理、細胞から不要なプローブを除去する洗浄処理、及び、核を染色する処理を含んでいる。
【0048】
測定装置100は、例示的に、フローセル110と、光源120~123と、集光レンズ130~133と、ダイクロイックミラー140~141と、集光レンズ150と、光学ユニット151と、集光レンズ152と、撮像部160と、を備えている。フローセル110の流路111には、試料10が流される。
【0049】
光源120~123は、フローセル110を流れる試料10に光を照射する。光源120~123は、例えば半導体レーザー光源により構成される。光源120~123からは、それぞれ波長λ11~λ14の光が出射される。
【0050】
集光レンズ130~133は、光源120~123から出射された波長λ11~λ14の光をそれぞれ集光する。ダイクロイックミラー140は、波長λ11の光を透過させ、波長λ12の光を屈折させる。ダイクロイックミラー141は、波長λ11及びλ12の光を透過させ、波長λ13の光を屈折させる。こうして、波長λ11~λ14の光が、フローセル110の流路111を流れる試料10に照射される。なお、測定装置100が備える半導体レーザー光源の数は1以上であれば制限されない。半導体レーザー光源の数は、例えば、1、2、3、4、5又は6の中から選択することができる。
【0051】
フローセル110を流れる試料10に波長λ11~λ13の光が照射されると、細胞を染色している蛍光色素から蛍光が生じる。例えば、波長λ11の光がBCR遺伝子座を標識する第1蛍光色素に照射されると、第1蛍光色素から波長λ21の第1蛍光が生じる。波長λ12の光がABL遺伝子座を標識する第2蛍光色素に照射されると、第2蛍光色素から波長λ22の第2蛍光が生じる。波長λ13の光が核を染色する核染色用色素に照射されると、核染色用色素から波長λ23の第3蛍光が生じる。フローセル110を流れる試料10に波長λ14の光が照射されると、この光は細胞を透過する。細胞を透過した波長λ14の透過光は、明視野画像の生成に用いられる。例えば、実施形態では、第1蛍光は緑色の光の波長帯域であり、第2蛍光は赤色の光の波長帯域であり、第3蛍光は青色の光の波長帯域である。
【0052】
集光レンズ150は、フローセル110の流路111を流れる試料10から生じた第1蛍光~第3蛍光と、フローセル110の流路111を流れる試料10を透過した透過光とを集光する。光学ユニット151は、4枚のダイクロイックミラーが組み合わせられた構成を有する。光学ユニット151の4枚のダイクロイックミラーは、第1蛍光~第3蛍光と透過光とを、互いに僅かに異なる角度で反射し、撮像部160の受光面上において分離させる。集光レンズ152は、第1蛍光~第3蛍光と透過光とを集光する。
【0053】
撮像部160は、TDI(Time Delay Integration)カメラにより構成される。撮像部160は、第1蛍光~第3蛍光と透過光とを撮像して第1蛍光~第3蛍光にそれぞれ対応した蛍光画像と、透過光に対応した明視野画像とを、撮像信号として処理装置200に出力する。第1蛍光~第3蛍光に対応する蛍光画像を、以下、それぞれ「第1画像」、「第2画像」、「第3画像」と称する。「第1画像」、「第2画像」及び「第3画像」は、輝点の重なりを分析するため同じ大きさであることが好ましい。「第1画像」、「第2画像」及び「第3画像」は、カラー画像であってもよいし、グレースケール画像であってもよい。
【0054】
本実施形態における輝点とは、蛍光画像に生じる小さな蛍光の点を意味する。より具体的には、輝点とは、核中の標的部位となる遺伝子に結合した核酸プローブの蛍光色素から得られる蛍光の点を意味する。
【0055】
図2(a)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置により取得される第1~第3画像および明視野画像を例示する図である。
図2(a)の第1画像において黒く点状に見える部分は、第1蛍光の輝点、つまり第1蛍光色素で標識された標的部位を示す。第2画像において第1画像ほどではないが核を示す淡い灰色の中に濃い灰色の点が認められる。これは、第2蛍光の輝点、つまり第2蛍光色素で標識された標的部位を示す。第3画像では、略円形の核の領域が黒く表されている。明視野画像では、実際の細胞の状態を観察できる。なお、
図2(a)の各画像は、前処理後の白血球をスライドガラス上に配置して顕微鏡で観察したものを例として示す画像であり、蛍光画像は生データ(ローデータ)では、蛍光強度が高いほど白く、蛍光強度が低いほど黒く撮像される。
図2(a)の第1~第3画像は、撮像された生データの階調を反転させグレースケールで表したものである。上記のようにフローセル110を流れる試料10を撮像部160により撮像した場合は、細胞が互いに分離した状態で流路111を流れるため、蛍光画像および明視野画像は、細胞ごとに取得されることになる。
【0056】
図1に戻り、処理装置200は、ハードウェア構成として、例示的に、処理部11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14と、を備える。処理部11は、プロセッサ(CPU)により構成される。記憶部12は、処理部11の各種処理の作業領域に使用する読み出し及び書き込み可能メモリ(RAM)、コンピュータプログラム及びデータを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)及びハードディスク等により構成される。処理部11及び記憶部12は、汎用コンピュータで構成することができる。ハードディスクは、コンピュータ内に含まれていてもよいし、コンピュータの外部装置として置かれてもよい。表示部13は、例えば、ディスプレイにより構成される。入力部14は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル装置等により構成される。処理部11は、バス15を介して記憶部12との間でデータを伝送し、インターフェース16を介して表示部13、入力部14、測定装置100との間でデータの入出力を行う。
【0057】
処理部11は、例えば、ROMやハードディスクに記憶されている各種コンピュータプログラムをRAMに読み出して実行することにより、測定装置100による試料10の測定により取得された細胞の蛍光画像の処理を行い、表示部13、入力部14などの動作を制御する。
【0058】
図3は、実施形態に係る蛍光画像分析装置1の処理部11のブロック構成の一例を示す図である。
図3に示すように、処理部11は、機能的に、取得部21と、選択部23と、判定部25と、表示制御部27と、を備える。
【0059】
取得部21は、例えば、撮像部160により撮像された生データを階調反転、グレースケール表示された第1~第3画像を取得する。取得部21は、取得した第1~第3画像を記憶部12に記憶させる。
【0060】
取得部21は、蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得する。例えば、第1蛍光に基づく第1画像における第1蛍光の輝点パターンを取得するとともに、第2蛍光に基づく第2画像における第2蛍光の輝点パターンを取得する。
【0061】
図2に戻り、
図2(b)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置が行う核の領域の抽出を説明するための図である。
図2(c)、(d)は、実施形態に係る蛍光画像分析装置が行う輝点の領域の抽出を説明するための図である。
図2(b)の左端に示す第3画像と、
図2(c)の左端に示す第1画像と、
図2(d)の左端に示す第2画像は、
図1に示すフローセル110を流れる試料20aの同じ領域から取得されたものである。
【0062】
図2(b)の左端に示すように第3画像が取得された場合、取得部21は、第3画像上の各画素における輝度に基づいて、
図2(b)の中央に示すように輝度と度数のグラフを作成する。縦軸の度数は、画素の個数を示している。取得部21は、このグラフにおいて輝度の閾値を設定する。そして、取得部21は、閾値よりも大きい輝度を有する画素が分布する範囲を、
図2(b)の右端において破線で示すように、核の領域として抽出する。なお、第3画像において、2つの核が重なり合っている場合、重なった細胞に関する第1~第3画像は、前処理の適否判定および異常細胞の判定には用いられず除外される。
【0063】
図2(c)の左端に示すように第1画像が取得された場合、取得部21は、第1画像上の各画素における輝度に基づいて、
図2(c)の中央に示すように輝度と度数のグラフを作成する。取得部21は、このグラフにおいて、たとえば大津法に基づいて輝点とバックグランドとの境界として輝度の閾値を設定する。そして、取得部21は、閾値よりも大きい輝度を有する画素が分布する範囲を、
図2(c)の右端において破線で示すように、輝点の領域として抽出する。なお、第1画像から輝点の領域を抽出する場合に、極端に小さい領域を有する輝点、極端に大きい領域を有する輝点、および、
図2(b)の右端に示した核の領域に含まれない輝点は除外される。
【0064】
図2(d)の左端に示すように第2画像が取得された場合、第1画像の場合と同様、取得部21は、第2画像上の各画素における輝度に基づいて、
図2(d)の中央に示すように輝度と度数のグラフを作成する。取得部21は、このグラフにおいて、輝度の閾値を設定し、閾値よりも大きい輝度を有する画素が分布する範囲を、
図2(d)の右端において破線で示すように、輝点の領域として抽出する。なお、第2画像から輝点の領域を抽出する場合に、極端に小さい領域を有する輝点、極端に大きい領域を有する輝点、および、
図2(b)の右端に示した核の領域に含まれない輝点は除外される。
【0065】
なお、取得部21は、
図2(b)~(d)の中央に示すようにグラフを作成することなく、上記のような手順に沿って、演算により、第3画像から核の領域を抽出し、第1画像および第2画像輝点から輝点の領域を抽出してもよい。また、輝点の抽出は、正常とされる輝点の分布波形と判定対象の領域との整合の度合いを判定し、整合の度合いが高い場合に、判定対象の領域を輝点として抽出してもよい。取得部21は、第3画像から核の領域を抽出することにより細胞を検出したが、明視野画像に基づいて細胞を検出してもよい。明視野画像に基づいて細胞が検出される場合、第3画像の取得を省略することもできる。
【0066】
図3に戻り、処理部11の選択部23は、オペレータからの指示に基づいて、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた、1又は複数の陽性パターンを含む複数の輝点パターンから、少なくとも一つの輝点パターンを選択する。以下では、輝点パターンの選択処理の一例について説明する。例えば、処理部11は、記憶部12に記憶された複数の測定項目又は複数の標識試薬の少なくとも一方に対応した複数の輝点パターンから、試料の測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に対応した、少なくとも一つの輝点パターンを選択する処理を実行する。
【0067】
図4(a)は、実施形態に係る表示部13における、測定項目及び標識試薬を特定するための特定画面SC1の一例を示す説明図である。
図4(a)に示すように、特定画面SC1において、例えば項目「測定項目」又は項目「プローブ名」(標識試薬)をプロダウン方式で特定することができる。「測定項目」に関して、例えば、BCR/ABL融合遺伝子、ALK遺伝子、又は、第5染色体長腕欠失等を細胞ごとに選択可能である。「プローブ名」に関して、例えば、「測定項目」がBCR/ABL融合遺伝子であれば、DFプローブあるいはESプローブまで選択することが可能である。なお、BCR/ABL融合遺伝子等、DFプローブ及びESプローブの詳細については、後述する。
【0068】
処理部11は、試料10の測定項目及び標識試薬を特定するための特定画面SC1であって、オペレータに対して、標識試薬の内容よりも測定項目の内容を優先して特定させることが可能な特定画面SC1を表示部13に表示する。処理部11は、例えば、
図4(a)に示すように、特定画面SC1において項目「測定項目」が項目「プローブ名」の上位にくるように表示制御してもよい。また、処理部11は、特定画面SC1において項目「測定項目」のみ強調表示してもよい。さらに、処理部11は、特定画面SC1において項目「測定項目」が特定された後に、特定された項目「測定項目」の内容に応じた項目「プローブ名」を特定させることができるように制御してもよい。さらにまた、処理部11は、オペレータに対して、標識試薬の内容よりも測定項目の内容を優先して特定させるために、まず、項目「測定項目」を含む特定画面を表示し、「測定項目」が特定された後に、項目「測定項目」を含む特定画面とは異なる、項目「プローブ名」を含む特定画面を表示してもよい。この場合、処理部11は、項目「プローブ名」を含む特定画面を表示する際に、「測定項目」を含む特定画面は非表示となるように制御してもよい。
【0069】
上記構成によれば、オペレータに対して、標識試薬の内容よりも測定項目の内容を優先して特定させることが可能である。よって、測定項目に対応づけられた輝点パターンを絞り込んだ後に、さらに標識試薬に対応づけられた輝点パターンを特定することができる。したがって、効率的に輝点パターンを選択することができる。
【0070】
図4(b)は、実施形態に係る表示部13における陽性パターン選択画面SC3の一例を示す説明図である。
図4(b)に示すように、処理部11は、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた1又は複数の陽性パターンの全てを選択可能に表示部13に表示する。例えば、オペレータが、
図4(a)に示す特定画面SC1において、測定項目「BDR-ABL」とプローブ名「ES」とを特定すると、
図1に示す表示部13には、
図4(b)に示す陽性パターン選択画面SC3が表示される。ここで、
図1に示す記憶部12に記憶された複数の陽性パターンのうち、測定項目「BDR-ABL」及びプローブ名「ES」に対応づけられた陽性パターンは、
図4(b)に示す「典型パターン G1R2F1」、「マイナーパターン G1R1F2」、「9q欠失パターン G2R1F1」、及び「9q・22q欠失パターン G1R1F1」であるので、
図4(b)の各パターンのチェックボックスにはすべてチェックが入ることになる。つまり、判定結果を表示する陽性パターンが全て選択されたことになる。しかしながら、例えば、オペレータは陽性パターン選択画面SC3を操作し、チェックボックス内のチェックを外すことにより、少なくとも一つの陽性パターンを判定結果の表示対象から除外することが可能である。他方で、一旦、判定結果の表示対象から除外されたとしても、オペレータが陽性パターン選択画面SC3を操作し、「全て表示」ボタンBTを押下すると、「典型パターン G1R2F1」、「マイナーパターン G1R1F2」、「9q欠失パターン G2R1F1」、及び「9q・22q欠失パターン G1R1F1」に対応するチェックボックスの全てにチェックが入るように構成されてもよい。なお、陽性パターン選択画面SC3は、不図示であるが全てのチェックを外すためのボタン、例えば、「全て非表示」ボタンを更に備えてもよい。
【0071】
なお、
図4(b)に示す陽性パターン選択画面SC3は、陽性パターンのみ表示されているが、測定項目「BDR-ABL」及びプローブ名「ES」に対応づけられた陰性パターンを含んでもよい。つまり、処理部11は、特定された測定項目及びプローブ名に対応づけられた陽性パターン及び陰性パターンを含む輝点パターンを含む画面を表示してもよい。
【0072】
処理部11は、オペレータからの指示に基づいて、選択された少なくとも一つの輝点パターンを変更してもよい。例えば、処理部11は、オペレータに対して、各陽性パターンをプルダウン方式で変更可能なように陽性パターン選択画面SC3を表示部13に表示してもよい。そして、オペレータが陽性パターン選択画面SC3を操作することによって、「典型パターン G1R2F1」、「マイナーパターン G1R1F2」、「9q欠失パターン G2R1F1」、及び「9q・22q欠失パターン G1R1F1」の少なくとも一つの内容を他のパターンに変更することが可能である。
【0073】
上記構成によれば、オペレータからの指示に基づいて、選択された少なくとも一つの輝点パターンを変更する。よって、選択された少なくとも一つの輝点パターンを自由に変更することができる。
【0074】
処理部11は、少なくとも一つの陽性パターンを選択可能な陽性パターン選択画面SC3を操作する権限をオペレータごとに管理する。例えば、処理部11は、選択画面SC3の識別情報とオペレータの識別情報とを関連づけて記憶部12に記憶させる。処理部11は、記憶部12に記憶した情報を参照することによって、権限を付与された特定オペレータに対応づけられた陽性パターン選択画面SC3を表示部13に表示してもよい。
【0075】
上記構成によれば、権限を付与された特定オペレータは、特定オペレータに対応づけられた陽性パターン選択画面SC3を操作することが可能になる。よって、他のオペレータによって陽性パターン選択画面SC3を操作され、特定オペレータが所望する陽性パターンを勝手に変更されることを防止できる。
【0076】
図5(a)は、実施形態に係る読取装置を用いた、標識試薬が格納された格納箱に付着されたコードの読取処理の一例を示す説明図である。
図5(b)は、実施形態に係る読取装置を用いた、標識試薬に関する添付文書に記載されたコードの読取処理の一例を示す説明図である。
図5(a)及び(b)に示すように、
図1に示す蛍光画像分析装置1は、標識試薬が格納された格納箱B又は標識試薬に関する添付文書Dに付着されたコードCを読み取る読取装置Rを更に備えてもよい。そして、
図3に示す処理部11の取得部21は、読取装置Rによって読み取られたコードCに含まれる情報を取得する。コードCに含まれる情報は、例えば、プローブ名(標識試薬)に関する情報と、当該プローブ名に対応づけられた陽性パターン又は陰性パターンの少なくとも一方と、を含む。
【0077】
なお、コードCは、一次元コードであるバーコードのみならず、二次元コードであるQRコード(登録商標)を含んでもよいし、他のコードを含んでもよい。
【0078】
図6は、実施形態に係る表示部13における、輝点パターンに関する情報を登録するための登録画面RC1の一例を示す説明図である。
図6に示すように、処理部11は、コードCに新たな輝点パターンに関する情報が含まれる場合、新たな輝点パターンに関する情報を登録するための登録画面RC1を表示部13に表示する。例えば、
図5(a)及び(b)に示すように、読取装置Rは、標識試薬が格納された格納箱B又は標識試薬に関する文書Dに付着されたコードCを読み取る。そして、処理部11は、記憶部12に予め記憶されている情報、例えば、プローブ名(標識試薬)に関する情報、及び、当該プローブ名に対応づけられた陽性パターン又は陰性パターンの少なくとも一方に関する情報を参照する。処理部11は、記憶部12に予め記憶されている情報以外の情報がコードCに含まれている場合、新たな輝点パターンに関する情報をオペレータに登録させるために、登録画面RC1を表示部13に表示する。
【0079】
図6の例では、登録内容に関する情報(例えば、「測定項目」、「プローブ名」、「陰性パターン名」、「陰性パターン名」の「輝点情報」、「陽性パターン名」、及び「陽性パターン名」の「輝点情報」)がすでに入力されている。しかしながら、通常、登録画面RC1が表示される際には、未入力の状態であり、オペレータは、
図5(b)に示す添付文書Dに記載の登録内容を参照しながら各項目に対して登録(例えば手入力)する。登録内容について、他社製あるいは市販の標識試薬の添付文書Dには、例えば、標識位置とその標識試薬を採用した場合の陽性パターン及び陰性パターンが記載されている。他方、自社(シスメックス株式会社)製の標識試薬に添付されたコードには、登録内容に関する情報が含まれている。読取装置Rで、この情報を読み取ることで、自動的に、登録内容に関する情報が登録画面RC1に登録されてもよい。なお、登録画面RC1の登録内容はオペレータが自由に編集できてもよいし、
図4(b)に示す陽性パターン選択画面SC3のように権限が付与されたオペレータのみが編集可能に管理されてもよい。
【0080】
上記構成によれば、読取装置(R)により、標識試薬が格納された格納箱(B)又は標識試薬に関する文書(D)に付着されたコード(C)が読み取られる。読み取られたコード(C)に新たな輝点パターンに関する情報が含まれる場合、新たな輝点パターンに関する情報を登録するための登録画面が表示部(13)に表示される。よって、新たな輝点パターンに関する情報を確実に、且つ、容易に取得することができ、且つ、新たな輝点パターンに関する情報を登録するための登録画面を表示することができる。
【0081】
処理部11は、新たな輝点パターンに関する情報の登録をオペレータに促すために予め定められた表示形態で登録画面RC1を表示部13に表示してもよい。処理部11は、例えば、標識試薬が他社製あるいは市販の場合、上記したとおり、登録内容に関する情報はオペレータによって手入力される。そこで、例えば、登録画面RC1における「輝点情報」において共通して登録することが予想される、第1輝点を示す「G」、第2輝点を示す「R」、及び第3輝点を示す「F」を予め表示してもよい。具体的には、登録画面RC1を表示部13に表示する際に、「陽性パターン名」の「輝点情報」において「G R F 」と予め表示することによって、オペレータには、「 (スペース)」の部分にのみ、0、1、2又は3を登録させるように促すことができる。
【0082】
上記構成によれば、新たな輝点パターンに関する情報の登録を行う際のオペレータの負担が軽減される。
【0083】
図3に戻り、処理部11の判定部25は、取得した輝点パターンと選択した輝点パターンとに基づいて、取得した輝点パターンが、選択した輝点パターンに含まれる1又は複数の陽性パターンのいずれに該当するかを判定する。
【0084】
以下では、判定処理の一例について説明する。一例として、細胞が染色体異常を有する異常細胞であるか否かの判定方法について説明する。
【0085】
図7(a)は、染色体異常を有していない正常細胞の輝点の配置例つまり輝点パターン(陰性パターン)を例示し、
図7(b)~(d)は異常細胞の輝点パターン(陽性パターン)を例示している。なお、
図7(a)~(d)のいずれにおいても、各画像には第3画像を重ね合わせた状態で表示している。
【0086】
図7(a)に示すように、BCR遺伝子座とABL遺伝子座の転座等の染色体に異常が生じていない場合、それぞれの遺伝子は1つの核内に1対ずつ、各対立遺伝子が独立して存在する。したがって、第1画像において、第1輝点は1つの核領域内に2つ存在する。また、第2画像において、第2輝点は1つの核領域内に2つ存在する。この場合、同じ大きさで撮像された第1画像と第2画像とを重ね合わせて合成すると、合成画像においては、2つの第1輝点と2つの第2輝点とが、1つの核領域内に重ならずに存在することになる。そのため、
図7(a)に示すように核領域内に第1輝点及び第2輝点が2つずつ存在する細胞は、染色体異常が認められない、つまり染色体異常が陰性の正常細胞であると判定する。
【0087】
陽性パターンの一例をBCR/ABL融合遺伝子を標的とするプローブ[Cytocell BCR/ABL Translocation, Extra Signal (ES) Probe (シスメックス株式会社)](以下、単に「ESプローブ」ということがある)を使用した場合を例にして説明する。なお、BCR/ABL融合遺伝子を標的とするプローブは複数種存在する。
【0088】
図8は、各プローブがハイブリダイズする標的部位の一例を示す図である。BCR遺伝子は染色体22q11.22-q11.23に位置し、BCR遺伝子座にハイブリダイズするプローブは第1蛍光(例えば、緑)で標識されている。ABL遺伝子は染色体9q34.11-q34.12に位置し、ABL遺伝子座にハイブリダイズするプローブは第2蛍光(例えば、赤)で標識されている。
図8Aは、上述のESプローブの結合部位を示し、
図8Bは、Cytocell BCR/ABL Translocation, Dual Fusion (DF) Probe (シスメックス株式会社、Cat No. LPH007)(以下、単に「DFプローブ」ということがある)の結合部位を示す。
【0089】
図7(b)に示すように、転座によりABL遺伝子座の一部が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に2点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に3点存在する。この場合に、第1画像と第2画像とを合成すると、合成画像においては、1つの第1輝点と、2つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった1つの第4蛍光(例えば黄色)の輝点(融合輝点)とが、1つの核内に存在することになる。そのため、
図7(b)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子とABL遺伝子について転座が生じている、つまり染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
【0090】
図7(c)に示すように、転座によりBCR遺伝子座の一部が22番染色体に移動し、ABL遺伝子の一部が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に3点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に3点存在する。この場合に、第1画像と第2画像とを合成すると、合成画像においては、1つの第1輝点と、1つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった2つの融合輝点とが、1つの核内に存在することになる。そのため、
図7(c)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子座とABL遺伝子座について転座が生じている、つまり染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
【0091】
図7(d)に示すように、転座によりABL遺伝子座が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に2点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に2点存在する。この場合に、第1画像と第2画像を合成すると、合成画像において、1つの第1輝点と、1つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった1つの融合輝点とが、1つの核内に存在することになる。そのため、
図7(d)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子座とABL遺伝子座について転座が生じている、つまり染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
【0092】
上述したように、第1画像及び第2画像を合成した合成画像における各輝点の位置、数に基づき、細胞ごとに染色体異常を有する異常細胞であるかどうかを判定することができる。そのため、処理部11は、細胞ごとに、蛍光画像の蛍光の輝点パターンとして、第1画像及び第2画像の合成画像の各輝点の位置ごとの数、つまり、第2輝点と重ならない位置の第1輝点の数と、第1輝点と重ならない位置の第2輝点の数と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なる位置の融合輝点の数とをカウントする。例えば、
図7(d)では、輝点パターンを、単体の第1輝点の数を「1」、単体の第2輝点の数を「1」、第1輝点及び第2輝点からなる融合輝点の数を「1」として作成することができる。
【0093】
なお、第1輝点、第2輝点及び融合輝点は、色として示してもよい。例えば単体の第1輝点を緑(G)、単体の第2輝点を赤(R)、融合輝点を黄(F)として表すことができ、G、R、Fの直後に、それぞれ、G、R、Fの輝点の数を示すことで、輝点パターンとすることができる。例えば、
図7(d)では、輝点パターンが「G1R1F1」で表示することができる。
【0094】
また、蛍光画像の蛍光の輝点パターンとしては、上述した第1輝点の数を、第1画像における第1輝点の総数とし、上述した第2輝点の数を、第2画像における第2輝点の総数として作成することができる。例えば、
図7(d)では、輝点パターンを、第1画像における第1輝点の数を「2」、第2画像における第2輝点の数を「2」、合成画像における第1輝点及び第2輝点が互いに重なる融合輝点の数を「1」として作成し、「G2R2F1」と表示することができるが、意味は同じである。
【0095】
合成画像において、第1画像の第1輝点と第2画像の第2輝点とが重なっているか否かは、第1輝点及び第2輝点の互いに重なる領域の割合、例えば、第1輝点に含まれる複数の画素のうち、第2輝点に含まれる各画素と同じ位置(座標情報(x、y))にある画素の割合が閾値よりも大きいか否かで判定することができる。また、第1輝点の中心点(最も蛍光強度が高い画素の位置)と、第2輝点の中心点(最も蛍光強度が高い画素の位置)との距離が閾値よりも小さいか否かで判定することができる。
【0096】
なお、細胞ごとに取得する蛍光画像における蛍光の輝点パターンとしては、合成画像における輝点の色ごとの数であってもよい。つまり、各画像をグレースケールで表示することに代えて、第1画像の各画素の色をその画素値に基づく緑色の色階調(RGB値)で表示し、第2画像の各画素の色を赤色の色階調(RGB値)で表示する。そして、各画像を重ねて合成した際には、合成画像の各画素のRGB値の組み合わせに基づき、細胞が異常細胞であると、核領域に、緑色の第1輝点と、赤色の第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が重なることで黄色の融合輝点とが存在する。よって、輝点パターンとして、輝点の色ごとの数をカウントすることでも、細胞が異常細胞であるか否かを判定できる。
【0097】
上記のとおり、処理部11は、細胞ごとに取得した輝点パターンに基づいて、細胞が異常細胞であるか正常細胞であるかを判定する。本実施形態では、記憶部12は、細胞が異常細胞であるか正常細胞であるかを判定するための参照パターン(測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた、1又は複数の陽性パターンを含む複数の輝点パターン)を記憶する。処理部11は、細胞ごとに取得した輝点パターンと、記憶部12に記憶された複数の参照パターンから選択部23により選択された参照パターン(少なくとも一つの輝点パターン)とを比較することで、細胞ごとに異常細胞であるか否かを判定する。
【0098】
なお、参照パターンとは、例えば
図7で示したような、染色体異常を有する異常細胞の蛍光画像における蛍光の輝点パターン(陽性パターン)、及び、染色体異常を有していない正常細胞の蛍光画像における蛍光の輝点パターン(陰性パターン)の少なくとも一方を含むものである。本実施形態では、参照パターンに、異常細胞の輝点パターン(陽性パターン)及び正常細胞の輝点パターン(陰性パターン)の両方を含んでいる。
【0099】
処理部11は、輝点パターンの比較処理に関して、分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致する場合には、当該細胞が正常細胞であると判定する。一方、分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致しない場合には、典型陽性パターンと比較する。典型陽性パターンに合致する場合には、当該細胞が典型異常細胞であると判定する。一方で、典型陽性パターンに合致しない場合には、当該細胞が非典型異常細胞であると判定する。処理部11は、同様の比較処理を分析対象の細胞の全てに対し繰り返し行って、細胞ごとに異常細胞又は正常細胞の判定を行う。処理部11は、判定結果を細胞ごとに記憶部12に記憶させる。
【0100】
上記のとおり、蛍光画像分析装置1は、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた輝点パターンは、陰性パターンを更に含み、処理部11は、取得した輝点パターンと選択した輝点パターンとに基づいて、試料10が、選択された輝点パターンに含まれる陰性パターンに該当するかを判定してもよい。
【0101】
上記構成によれば、陽性パターンのみならず、選択された輝点パターンに含まれる陰性パターンをさらに参照することができる。したがって、試料に含まれる細胞の異常の有無の判定精度をより向上させることができる。
【0102】
図3に戻り、処理部11の表示制御部27は、各種画面を表示部13に表示するように制御する。各種画面は、例えば、上記した
図4(a)に示す特定画面SC1と、
図4(b)に示す陽性パターン選択画面SC3と、
図6に示す登録画面RC1と、後述する
図9に示す判定結果画面RC3と、を含む。
【0103】
図9は、実施形態に係る表示部13における判定結果画面RC3の一例を示す説明図である。
図9に示すように、表示制御部27は、分析対象の細胞ごとの判定結果に関する情報を表示部13に表示させる。判定結果に関する情報として、処理部11は、例えば、異常細胞と判定した細胞の蛍光画像(第1画像、第2画像及び第3画像の合成画像)、正常細胞と判定した細胞の蛍光画像(第1画像、第2画像及び第3画像の合成画像)等を、表示部13に表示させる。
【0104】
図9の判定結果画面RC3では、分析対象の細胞のうち、所定の分析方法に基づき検出した細胞ごとに蛍光画像が縦横に並べて表示される。判定結果画面RC3には、細胞の分析に用いた測定項目33が表示されるとともに、分析方法を選択可能な分析方法選択欄34が設けられている。分析方法選択欄34では、正常細胞の分析方法としてDFパターンを検出するか否かを選択できる。また、分析方法選択欄34では、異常細胞の分析方法として、典型異常細胞(ESメジャーパターン)を検出するか、非典型異常細胞(ESマイナーパターン、ESディリーションパターン)を検出するか等を選択できる。また、判定結果画面RC3には、分析方法選択欄34で選択された分析方法に基づき検出された細胞について、異常細胞(ポジティブ)と判定された細胞の蛍光画像を表示させる選択肢、正常細胞(ネガティブ)と判定された細胞の蛍光画像を表示させる選択肢、分析した全ての細胞の蛍光画像を表示させる選択肢、を例えばプルダウン方式で選択可能な表示画像選択欄38が設けられている。
【0105】
処理部11は、分析方法選択欄34で選択された分析方法に基づいて検出した細胞について、表示画像選択欄38で選択された細胞の蛍光画像を判定結果画面RC3の画像表示欄35に表示させる。画像表示欄35に表示される細胞の蛍光画像には、細胞の蛍光画像ごとに、Cell IDの他、異常細胞(ポジティブ)であるか正常細胞(ネガティブ)であるかの判定結果が表示される。なお、表示画像選択欄38の選択に応じて、正常細胞と判定された細胞の蛍光画像、あるいは、分析した全ての細胞の蛍光画像を表示させることができる。
【0106】
これにより、オペレータ等は、異常細胞と判定された細胞の蛍光画像を表示部13で観察することができる。なお、オペレータ等の観察により、異常細胞であると判定された細胞が正常細胞であると判断された場合には、処理部11は、表示部13に表示された異常細胞の蛍光画像の中から、オペレータ等に入力部14により正常細胞であるとして選択され、改訂ボタン(「Revise Judgement」)36で改訂された異常細胞については正常細胞に判定結果を修正する。そして、処理部11は、改訂後の判定結果を記憶部12に記憶する。同様に、オペレータ等の観察者の観察により、正常細胞であると判定された細胞が異常細胞であると判断された場合には、処理部11は、表示部13に表示された正常細胞の蛍光画像の中から、オペレータ等に入力部14で異常細胞であるとして選択され、改訂ボタン36で改訂された正常細胞については異常細胞に判定結果を修正する。そして、処理部11は、改訂後の判定結果を記憶部12に記憶する。これにより、異常細胞及び正常細胞の検出精度を高めることができる。また、処理部11は、改訂後の異常細胞あるいは正常細胞と判定した細胞の蛍光画像を表示部13に再表示させることもできる。
【0107】
このように、処理部11は、取得した輝点パターンが、輝点パターンに含まれる1又は複数の陽性パターンのいずれに該当するかを判定した結果を含む判定結果画面RC3を表示部13に表示する。
【0108】
上記構成によれば、オペレータが判定結果を容易に把握することができる。
【0109】
処理部11は、細胞ごとの異常細胞であるか否かの判定結果に基づいて、試料10の判定結果に関する情報を生成する。例えば、処理部11は、分析方法選択欄34で選択された分析方法による分析結果に基づき、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を生成する処理を行う。異常細胞の数の割合及び正常細胞の数の割合は、例えば、検出した全ての細胞の数(異常細胞と判定した細胞の数及び正常細胞と判定した細胞の数の合算値)に対する割合であってもよいし、分析した細胞の総数に対する割合であってもよい。
【0110】
処理部11は、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を記憶部12に記憶させるとともに表示部13に表示させる。
図9の判定結果画面RC3の一例では、判定結果欄37が設けられており、この判定結果欄37に、異常細胞と判定した細胞の数及び割合、正常細胞と判定した細胞の数及び割合が表示されている。ここでは、判定結果欄37に、判定結果が「G2R3F1」の典型異常細胞(ポジティブメジャー)の数及び割合、判定結果が「G3R3F3」の典型異常細胞(ポジティブマイナー)の数及び割合、判定結果が「G2R2F1」の非典型異常細胞(ポジティブエイティピカル)の数及び割合、及び、判定結果が「G2R2F0」の正常細胞(ネガティブ)の数及び割合が表示されている。なお、その他にも、例えば、分析方法選択欄34で非典型異常細胞(ESマイナーパターン、ESディリーションパターン)を検出する分析方法が選択されると、判定結果が非典型異常細胞(ポジティブ)の数及び割合、判定結果が正常細胞(ネガティブ)の数及び割合等が分析結果欄37に表示されてもよい。
【0111】
図9の判定結果欄37に示すように、処理部11は、試料10に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を表示部13に表示する。
【0112】
上記構成によれば、オペレータは、試料10に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を容易に把握することができる。
【0113】
図9の画像表示欄35及び判定結果欄37に示すように、処理部11は、試料10に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、判定された試料10に含まれる細胞の蛍光画像とともに表示部13に表示する。
【0114】
上記構成によれば、オペレータは、試料10に含まれる、異常細胞の数、異常細胞の割合、正常細胞の数、又は、正常細胞の割合の少なくとも一つの情報を、試料10に含まれる細胞の蛍光画像と併せて確認することができる。
【0115】
図9の判定結果欄37に示すように、処理部11は、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターン(例えば、典型異常細胞(ポジティブメジャー))に関する判定結果を、他の陽性パターンに関する判定結果とは異なる表示形態で表示部13に表示してもよい。例えば、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する情報を赤色で表示し、他の輝点パターンの情報は黒色で表示してもよい。また、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する情報をハイライト表示してもよい。さらに、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する情報を太字で表示してもよい。
【0116】
上記構成によれば、オペレータは、様々な判定結果を含む判定結果画面RC3において、異常細胞の数、又は、異常細胞の割合が最も多い陽性パターンに関する判定結果をより簡単に特定することができる。
【0117】
なお、試料10の判定結果に関する情報としては、「陽性の可能性がある」、「陰性の可能性がある」等のテキスト情報等、他の様々な情報を、処理部11は生成して表示部13に表示させることができる。
【0118】
図10は、
図9に示す判定結果画面RC3の一部を拡大した図である。
図9及び
図10に示すように、処理部11は、判定結果に関する情報をグラフで表示したグラフ表示欄32を含む判定結果画面RCを表示部13に表示してもよい。
図10に示すように、「Type」に関する円グラフは、典型異常細胞、非典型異常細胞、及び正常細胞の割合を示し、「Nega/Posi」に関する円グラフは、異常細胞と正常細胞との割合を示し、「Positive」に関する円グラフは、典型異常細胞及び非典型異常細胞の割合を示す。
【0119】
図9及び10に示すように、処理部11は、試料10に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報とともに、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すグラフ画像を表示部13に表示してもよい。なお、円グラフに限られず、棒グラフ等の他のグラフで表示してもよい。
【0120】
上記構成によれば、オペレータは、試料10に含まれる、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合の少なくとも一方を示すテキスト情報をグラフ画像と併せて確認することができる。オペレータは、グラフ画像を確認できるので、異常細胞の割合、又は、正常細胞の割合を容易に把握することができる。
【0121】
以下、細胞の蛍光画像を分析するための処理手順を規定したコンピュータプログラムに基づき、処理部11により実行される蛍光画像の分析方法の一例について、
図11を参照して説明する。
図11は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の動作の一例を説明するフローチャートである。なお、当該コンピュータプログラムは、予め
図1に示す記憶部12に格納されているが、例えばCD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体(図示せず)からインストールしてもよいし、例えば外部のサーバ(図示せず)からネットワーク(図示せず)を介してダウンロードしてインストールしてもよい。
【0122】
図11に示すように、処理部11は、例えば、撮像部160により撮像された生データを階調反転、グレースケール表示された第1~第3画像を取得する(ステップS1)。処理部11は、蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得する(ステップS3)。処理部11は、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた1又は複数の陽性パターンを表示部13に表示する(ステップS5)。処理部11は、取得した輝点パターンと、陽性パターンとに基づいて、試料10の判定結果を表示部13に表示する(ステップS7)。以下、ステップS3の詳細は、
図12を参照して説明し、ステップS5の詳細は、
図13を参照して説明し、ステップS7の詳細は、
図14~
図16を参照して説明する。
【0123】
図12は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の輝点パターンの取得処理の一例を説明するフローチャートである。
図12に示すように、
図3に示す取得部21は、
図2(b)の左端に示すように第3画像が取得された場合、第3画像上の各画素における輝度に基づいて、
図2(b)の中央に示すように輝度と度数のグラフを作成する(ステップS31)。
図2(c)の左端に示すように第1画像が取得された場合、取得部21は、第1画像上の各画素における輝度に基づいて、
図2(c)の中央に示すように輝度と度数のグラフを作成する(ステップS33)。
図2(d)の左端に示すように第2画像が取得された場合、第1画像の場合と同様、取得部21は、第2画像上の各画素における輝度に基づいて、
図2(d)の中央に示すように輝度と度数のグラフを作成する(ステップS35)。取得部21は、第3画像から核の領域を抽出し、第1画像および第2画像輝点から輝点の領域を抽出する(ステップS37)。取得部21は、抽出した核の領域、及び、輝点の領域に基づいて、輝点パターンを作成する(ステップS39)。
【0124】
図13は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の輝点パターンの選択処理の一例を説明するフローチャートである。
図13に示すように、
図3に示す表示制御部27は、測定項目及び標識試薬を特定するための特定画面SC1(
図4(a)参照)を表示部13に表示する(ステップS51)。オペレータは、表示部13に表示された特定画面SC1において測定項目を特定する(ステップS53)。表示制御部27は、測定項目が特定された後に、特定された測定項目の内容に応じたプローブ名を特定可能に、特定画面SC1を表示部13に表示する(ステップS55)。オペレータは、表示部13に表示された特定画面SC1においてプローブ名を特定する(ステップS57)。選択部23は、特定された測定項目及びプローブ名に関連づけられた陽性パターンを選択する。表示部13は、陽性パターンを表示する(ステップS59)。
【0125】
図14は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図14に示すように、
図3に示す選択部23は、記憶部12に記憶された複数の参照パターンから参照パターン(少なくとも一つの輝点パターン)を選択する(ステップS71)。判定部25は、輝点パターンの比較処理に関して、分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致する場合には、ステップS72でYesとなり、ステップS73に進み、当該細胞が正常細胞であると判定する。一方、判定部25は、分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致しない場合には、ステップS72でNoとなり、ステップS74に進み、典型陽性パターンと比較する。判定部25は、典型陽性パターンに合致する場合には、ステップS74でYesとなり、ステップS75に進み、当該細胞が典型異常細胞であると判定する。一方で、判定部25は、典型陽性パターンに合致しない場合には、ステップS74でNoとなり、ステップS76に進み、当該細胞が非典型異常細胞であると判定する。判定部25は、同様の比較処理を分析対象の細胞の全てに対し繰り返し行って、細胞ごとに異常細胞又は正常細胞の判定を行う。判定部25は、判定結果を細胞ごとに記憶部12に記憶させる。
【0126】
図15は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図15に示す判定処理は、最初に分析対象の細胞の輝点パターンが陽性パターンに合致するか否かを判定する点で、最初に分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致するか否かを判定する
図14に示す判定処理と相違する。
図15に示すように、
図3に示す選択部23は、記憶部12に記憶された複数の参照パターンから参照パターン(少なくとも一つの輝点パターン)を選択する(ステップS81)。判定部25は、輝点パターンの比較処理に関して、分析対象の細胞の輝点パターンが典型陽性パターンに合致する場合には、ステップS82でYesとなり、ステップS83に進み、当該細胞が典型異常細胞であると判定する。一方、判定部25は、分析対象の細胞の輝点パターンが典型陽性パターンに合致しない場合には、ステップS82でNoとなり、ステップS84に進み、非典型陽性パターンと比較する。判定部25は、非典型陽性パターンに合致する場合には、ステップS84でYesとなり、ステップS86に進み、当該細胞が非典型異常細胞であると判定する。一方で、判定部25は、非典型陽性パターンに合致しない場合には、ステップS84でNoとなり、ステップS85に進み、当該細胞が正常細胞であると判定する。判定部25は、同様の比較処理を分析対象の細胞の全てに対し繰り返し行って、細胞ごとに異常細胞又は正常細胞の判定を行う。判定部25は、判定結果を細胞ごとに記憶部12に記憶させる。
【0127】
なお、
図14及び
図15に記載の判定処理において、陰性パターンは複数存在してもよい。つまり、分析対象の細胞の輝点パターンが陰性パターンに合致するか否かの判定において、分析対象の細胞の輝点パターンが複数の異なる陰性パターンと比較されてもよい。また、
図14及び
図15において、分析対象の細胞の輝点パターンが参照対象の陽性パターンのいずれにも該当しない場合、又は、分析対象の細胞の輝点パターンが参照対象の陰性パターンのいずれにも該当しない場合、エラーが発生したことを示す情報を表示部13に表示してもよい。さらに、
図14及び
図15において、分析対象の細胞の輝点パターンが参照対象の陽性パターンのいずれにも該当しない場合、又は、分析対象の細胞の輝点パターンが参照対象の陰性パターンのいずれにも該当しない場合、当初参照対象ではなかった、他の陽性パターン又は他の陰性パターンを記憶部12から読みだして分析対象の細胞の輝点パターンとの比較処理を実行してもよい。
【0128】
図16は、実施形態に係る蛍光画像分析装置の処理部の表示制御処理の一例を説明するフローチャートである。
図16に示すように、
図3に示す表示制御部27は、判定部25又は記憶部12から判定結果を取得する(ステップS91)。表示制御部27は、判定結果を表示部13に表示するための表示情報を生成し、生成した表示情報を表示部13に出力する(ステップS93)。表示部13は、受信した表示情報に基づいて、
図9に示す判定結果画面RC3を表示する(ステップS95)。
【0129】
以上のとおり上記実施形態によれば、蛍光画像分析装置1が、蛍光画像における蛍光の輝点パターンを取得し、測定項目又は標識試薬の少なくとも一方に予め対応づけられた複数の陽性パターンを表示部13に表示し、取得した輝点パターンと、陽性パターンとに基づいて、試料10の判定結果を表示部13に表示する。よって、試料10に含まれる細胞が複数の陽性パターンのうちどの陽性パターンに該当するかについての判定漏れを抑止することができる。したがって、試料10が陽性又は陰性のいずれであるかの判定精度を向上させることができる。
【0130】
<他の実施形態>
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更/改良(たとえば、各実施形態を組み合わせること、各実施形態の一部の構成を省略すること)され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1:蛍光画像分析装置、10:試料、11:処理部、12:記憶部、13:表示部、120~123:光源、160:撮像部、B:格納箱、C:コード、D:添付文書、R:読取装置