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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231031BHJP
   H02M 1/34 20070101ALI20231031BHJP
   H02M 7/21 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H02M3/28 R
H02M1/34
H02M7/21 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019082772
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020182281
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹井 涼
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 庸平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 敏夫
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131446(JP,A)
【文献】特開2015-126549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
H02M 1/34
H02M 7/00~ 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスに供給される電力を制御する一次側回路と、
前記トランスの二次側コイルを介して互いに接続される高圧側の第1スイッチ及び低圧側の第4スイッチ、並びに前記二次側コイルを介して互いに接続される高圧側の第2スイッチ及び低圧側の第3スイッチを含み、前記第1スイッチ及び前記第3スイッチは、直列に接続され、前記第2スイッチ及び前記第4スイッチは、直列に接続され、前記トランスを介して供給される電圧を変換して所定の定格電圧を出力するフルブリッジ回路と、
前記第3スイッチに並列に接続され、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチのサージ電圧を低減する第1アクティブスナバ回路と、
前記第4スイッチに並列に接続され、前記第1スイッチ及び前記第4スイッチのサージ電圧を低減する第2アクティブスナバ回路と、
前記フルブリッジ回路前記第1アクティブスナバ回路、及び前記第2アクティブスナバ回路を制御する制御部と、を備え
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、アクティブスナバ回路を並列に備えない、電力変換装置。
【請求項2】
前記第1アクティブスナバ回路、及び前記第2アクティブスナバ回路のそれぞれは、エミッタが接地されるPNP型のバイポーラトランジスタ、及び前記バイポーラトランジスタのコレクタに接続される抵抗素子を含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DC-DCコンバータなどのスイッチング電源に利用される同期整流回路は、一般的に2つの電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を交互にON/OFF制御するよう構成されることが多く、2つのFETの各ゲートに入力されるPWM信号によって所望の電圧を有する電力を安定的に出力することができる。
【0003】
これに対し、例えば20~100V程度の比較的高い電圧を高効率で出力する場合には、フルブリッジ回路による同期整流制御を行うことができ、このような構成のDC-DCコンバータが特許文献1に開示されている。より詳しくは、特許文献1に開示された従来技術は、絶縁型のDC-DCコンバータにおける二次側回路として4つのスイッチング素子を含むフルブリッジ回路が構成され、当該フルブリッジ回路に対するPWM信号のDuty比により出力電圧を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-170845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような同期整流回路は、それぞれのFETのスイッチング時に発生するサージ電圧により当該FETが破損する場合があることから、当該サージ電圧を吸収してFETを保護するためのスナバ回路が設けられることが多い。
【0006】
しかしながら、上記の従来技術のような絶縁型DC-DCコンバータにスナバ回路を設ける場合には、フルブリッジ回路における4つのスイッチング素子のそれぞれに並列にスナバ回路を設けることになる。また、この場合、特にフルブリッジ回路においては、高圧側FETのソース電圧が変動することから、当該高圧側FETのそれぞれに並列に接続されるスナバ回路の動作を安定化させるためのレベルシフト回路が必要となる。このため、フルブリッジ回路を含む絶縁型DC-DCコンバータにスナバ回路を設ける場合には、部品点数が増加することによりコストが上昇する虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フルブリッジ回路のスイッチング素子の破損を抑制しつつコストの低減を図ることができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電力変換装置は、トランスに供給される電力を制御する一次側回路と、前記トランスを介して供給される電圧を変換して所定の定格電圧を出力するフルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路の低圧側スイッチを含む部分回路に並列に接続され、前記フルブリッジ回路の高圧側スイッチ及び前記低圧側スイッチのサージ電圧を低減する1又は2のアクティブスナバ回路と、前記フルブリッジ回路及び前記アクティブスナバ回路を制御する制御部と、を備え、全ての前記アクティブスナバ回路は、低圧側の端部が接地されている。
【0009】
電力変換装置は、一次側回路に入力される電力をトランスを介して二次側におけるフルブリッジ回路へ伝達し、フルブリッジ回路での同期整流制御により所定の定格電圧に変換して出力する。ここで、電力変換装置は、フルブリッジ回路の低圧側スイッチを含む部分回路に並列に接続される1又は2のアクティブスナバ回路を備えると共に、これらのアクティブスナバ回路の低圧側の端部が設置されるように設けられている。つまり、電力変換装置のフルブリッジ回路には、2つの低圧側スイッチのそれぞれに対して並列となるように2つのアクティブスナバ回路が接続され、又はフルブリッジ回路に対して並列となるように1つのアクティブスナバ回路が接続されている。
【0010】
ここで、フルブリッジ回路においては、1つの低圧側スイッチは、これに直列に接続されない高圧側スイッチと同期して制御され、これらの低圧側スイッチ及び高圧側スイッチがトランスTを介して互いに接続される関係にある。このため、当該低圧側スイッチに並列に接続されたアクティブスナバ回路は、当該高圧側スイッチに対するトランスTのリーケージインダクタンスの影響を低減することができ、これにより当該高圧側スイッチのサージ電圧を抑制することができる。
【0011】
つまり、2つの低圧側スイッチのそれぞれに並列にアクティブスナバ回路が接続されている場合には、当該2つのアクティブスナバ回路によりフルブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子におけるサージ電圧を低減することができる。
【0012】
また、フルブリッジ回路に対して並列となるように1つのアクティブスナバ回路が接続されている場合、当該1つのアクティブスナバ回路によりフルブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子におけるサージ電圧を低減することができる。
【0013】
そして、上記のいずれの場合の電力変換装置においても、フルブリッジ回路のスイッチング素子ごとにスナバ回路を設けるよりも部品点数を削減することができ、回路基板の省スペース化を図ることができる他、フルブリッジ回路の高圧側スイッチに並列に接続するアクティブスナバ回路を持たないため、このようなスナバ回路の動作を安定化させるためのレベルシフト回路も不要となる。従って、本発明に係る電力変換装置によれば、フルブリッジ回路のスイッチング素子の破損を抑制しつつコストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フルブリッジ回路のスイッチング素子の破損を抑制しつつコストの低減を図ることができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示す回路図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る二次側回路の詳細構成を示す回路図である。
図3】従来技術に係る電力変換装置のサージ電圧を示す波形である。
図4】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置のサージ電圧を示す波形である。
図5】本発明の第2実施形態に係る二次側回路の詳細構成を示す回路図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置のサージ電圧を示す波形である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1の全体構成を示す回路図である。本実施形態における電力変換装置1は、いわゆる絶縁型DC‐DCコンバータであり、一次側回路10、トランスT、二次側回路20、及び制御部30を備える。そして本発明に係る電力変換装置1は、一次側回路10に入力される入力電圧Vinを変換して二次側回路20から出力電圧Voutとして出力することにより、安定化された所定の定格電圧Vrを出力先の負荷装置(図示せず)に供給する。
【0018】
一次側回路10は、公知のフルブリッジインバータ回路であり、コンデンサC1、複数の電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)Q11~Q14、及びコイルL1を含む。尚、本発明においては、一次側回路10は、フルブリッジ方式に限定されるものではなく、例えばハーフブリッジ、フライバック、フォーワード等、他の方式のインバータ回路であってもよい。
【0019】
コンデンサC1は、図示しない外部電源から入力される直流の入力電圧Vinを平滑化する入力フィルタである。
【0020】
電界効果トランジスタQ11は、ドレインがコンデンサC1のハイサイド出力端、及び電界効果トランジスタQ12のドレインに接続されると共に、ソースが電界効果トランジスタQ13のドレインに接続されている。また、電界効果トランジスタQ14は、ドレインが電界効果トランジスタQ13のソースに接続されると共に、ソースが電界効果トランジスタQ13のソース、及び上記のコンデンサC1のローサイド出力端、すなわち一次側グランドGND1に接続されている。
【0021】
コイルL1は、一端が電界効果トランジスタQ11と電界効果トランジスタQ13との接続点に、他端がトランスTの一次巻線にそれぞれ接続される。コイルL1は、電界効果トランジスタQ11~Q14とのLC共振により電流と電圧とのクロス時間を減らし、スイッチング損失を低減することができる。
【0022】
トランスTは、一次側コイルL11及び二次側コイルL21を含み、一次側回路10と二次側回路20とを直流的に絶縁しつつ、一次側回路10から供給される交流電力を二次側回路20に伝達する。ここで、一次側コイルL11は、巻き始め端が電界効果トランジスタQ12と電界効果トランジスタQ14との連結点に接続され、巻き終わり端がコイルL1を介して電界効果トランジスタQ11と電界効果トランジスタQ13との連結点に接続されている。
【0023】
二次側回路20は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24、コイルL2、コンデンサC2、分圧抵抗R21、R22、及びを含む。第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のそれぞれは、例えばNチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。第1スイッチQ21は、ドレインがコイルL2の一端、及び第2スイッチQ22のドレインに接続され、ソースが第3スイッチQ23のドレイン、及び二次側コイルL21の巻き始め端に接続されている。第4スイッチQ24は、ドレインが第2スイッチQ22のソース、及びトランスTの二次側コイルL21の巻き終り端に接続され、ソースが第3スイッチQ23のソース、及び二次側グランドGND2に接続されている。すなわち、本実施形態においては、第1スイッチQ21及び第2スイッチQ22が「高圧側スイッチ」に相当し、第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24が「低圧側スイッチ」に相当し、これらによって「フルブリッジ回路」が構成されている。
【0024】
また、二次側回路20は、上記したフルブリッジ回路の高圧側スイッチ及び低圧側スイッチのサージ電圧を低減するアクティブスナバ回路(図1では図示を省略)を含む。アクティブスナバ回路の構成及び動作については詳細を後述する。
【0025】
コイルL2及びコンデンサC2は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24からなるフルブリッジ回路から出力される電圧を平滑化して出力電圧Voutとして出力する。
【0026】
分圧抵抗R21、R22は、二次側グランドGND2と出力電圧Voutの出力端子との間に直列に設けられ、設定される抵抗値の比率により出力電圧Voutを分圧することで後述する制御部30が当該出力電圧Voutを読み取ることができる。尚、分圧抵抗R21、R22の直列抵抗体に対して並列となるように、回路保護のための抵抗器が別途設けられてもよい。
【0027】
制御部30は、一次側ドライバ31、二次側ドライバ32、制御回路33、及びアイソレータ34を含み、一次側回路10及び二次側回路20を駆動することにより、出力電圧Voutが所定の定格電圧Vrとなるように電力変換制御を行う。
【0028】
一次側ドライバ31は、電界効果トランジスタQ11~Q14のそれぞれのゲートを制御する駆動回路であり、電界効果トランジスタQ11及び電界効果トランジスタQ14に対して電界効果トランジスタQ12及び電界効果トランジスタQ13が逆位相となるようにON/OFFをPWM制御(Pulse Width Modulation)することで、トランスTに供給する電力を制御する。
【0029】
二次側ドライバ32は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のそれぞれのゲートを制御する駆動回路であり、第1スイッチQ21及び第4スイッチQ24に対して第2スイッチQ22及び第3スイッチQ23が逆位相となるようにPWM制御で交互にON/OFFする同期整流制御を行う。
【0030】
制御回路33は、公知の制御ICからなり、電力変換装置1の全体を統括制御する。より具体的には、制御回路33は、互いに反転する2つのパルス信号からなるPWM信号を生成し、一次側ドライバ31を介して一次側回路10を制御すると共に、二次側ドライバ32を介して二次側回路20を制御する。ここで、制御回路33が出力するPWM信号は、同時にONになる状態が生じないように僅かなデッドタイムが形成されている。そして、制御回路33は、二次側ドライバ32を同期して制御することにより、第1スイッチQ21及び第4スイッチQ24に対して第2スイッチQ22及び第3スイッチQ23が逆位相となるようにPWM制御で交互にON/OFFすることで、所定の定格電圧Vrを有する直流の出力電圧Voutを生成する。
【0031】
また、制御回路33は、出力電圧Voutが定格電圧Vrとなるよう制御するために、分圧抵抗R21、R22を介して出力電圧Voutを取得する。
【0032】
ここで、制御回路33から一次側ドライバ31へはアイソレータ34を介して制御が行われることで、一次側と二次側との接続を直流的に絶縁している。尚、本実施形態においては、制御回路33が二次側に配置されているが、一次側と二次側とを上記のようにアイソレータを介して接続していれば制御回路33を一次側に配置してもよい。
【0033】
次に、二次側回路20の構成について、より詳細に説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る二次側回路20の詳細構成を示す回路図である。本実施形態における二次側回路20は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のサージ電圧を低減するための第1スナバ回路SNB1及び第2スナバ回路SNB2を含むアクティブスナバ回路を備える。
【0034】
より具体的には、本実施形態における二次側回路20においては、フルブリッジ回路の「低圧側スイッチを含む部分回路」が第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24そのものである場合として、第3スイッチQ23に対して第1スナバ回路SNB1が並列に接続され、第4スイッチQ24に対して第2スナバ回路SNB2が並列に接続されている。
【0035】
第1スナバ回路SNB1は、スナバコンデンサCs、スナバ抵抗Rs、スナバスイッチTRs、及びスナバダイオードDsを含む。スナバコンデンサCsは、一端が第1スイッチQ21のドレインに接続されると共に、他端がスナバ抵抗Rsの一端及びスナバダイオードDsのアノードにそれぞれ接続されている。スナバスイッチTRsは、PNP型のバイポーラトランジスタであり、コレクタがスナバ抵抗Rsの他端に接続され、エミッタが第3スイッチQ23のソース及びスナバダイオードDsのカソードにそれぞれ接続されている。すなわち、第1スナバ回路SNB1は、第3スイッチQ23のソースと同様に、二次側グランドGND2に接続されていることで、低圧側の端部が接地されていることになる。
【0036】
また、第2スナバ回路SNB2は、上記の第1スナバ回路SNB1と同様の構成を有し、第4スイッチQ24に並列に接続されているため、低圧側の端部が接地されていることになる。
【0037】
そして、第1スナバ回路SNB1及び第2スナバ回路SNB2のそれぞれは、二次側ドライバ32からスナバスイッチTRsのベースへ駆動信号が入力されることにより、サージ電圧を吸収するためのON/OFF動作が制御される。
【0038】
より具体的には、第1スナバ回路SNB1は、第3スイッチQ23のゲート制御電圧と同期した駆動信号が二次側ドライバ32から入力されることにより、第3スイッチQ23がOFFするタイミングでONしてサージ電圧を吸収する。
【0039】
ここで、二次側回路20のフルブリッジ回路における各スイッチは、ONからOFFに切り替わるタイミングにおいて、トランスTのリーケージインダクタンスの影響により発生する。そして、第2スイッチQ22は、ソースがトランスTを介して第1スナバ回路SNB1の高圧側の端部に接続されている。このため、第1スナバ回路SNB1は、第3スイッチQ23のサージ電圧を吸収するタイミングにおいて、第3スイッチQ23と連動する第2スイッチQ22におけるリーケージインダクタンスの影響を低減し、これにより第3スイッチQ23のサージ電圧を抑制することができる。
【0040】
同様に、第2スナバ回路SNB2は、第4スイッチQ24のゲート制御電圧と同期した駆動信号が二次側ドライバ32から入力されることにより、第4スイッチQ24がOFFするタイミングでONしてサージ電圧を吸収する。また、第2スナバ回路SNB2は、第4スイッチQ24のサージ電圧を吸収するタイミングにおいて、トランスTを介して接続される第1スイッチQ21におけるリーケージインダクタンスの影響を低減し、これにより第1スイッチQ21のサージ電圧を抑制することができる。
【0041】
つまり、二次側回路20のフルブリッジ回路においては、第1スナバ回路SNB1及び第2スナバ回路SNB2の2つのアクティブスナバ回路により、フルブリッジ回路を構成する第1スイッチQ21~第4スイッチQ24の4つのスイッチング素子におけるサージ電圧を低減することができる。
【0042】
ここで、本実施形態に係るアクティブスナバ回路は、エミッタが接地されるPNP型のバイポーラトランジスタとしてのスナバスイッチTRs、及び当該バイポーラトランジスタのコレクタに接続される抵抗素子としてのスナバ抵抗Rsを含んでいる。これにより、サージ電圧の吸収時においてスナバスイッチTRsに流れるピーク電流を抑制することができるため、スナバスイッチTRsとしては小型のバイポーラトランジスタを採用することができ、小型化及び低コスト化に寄与することができる。
【0043】
続いて、本発明の効果について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、従来技術に係る電力変換装置のサージ電圧を示す波形である。また、図4は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1のサージ電圧を示す波形である。ここで、従来技術に係る電力変換装置は、アクティブスナバ回路が設けられていない点を除き図1に図示した電力変換装置1と同じ構成である。
【0044】
より具体的には、図3及び図4は、横軸を時間とし、縦軸を電圧とした場合に、図1に示す二次側回路20のフルブリッジ回路における高圧側スイッチとしての第1スイッチQ21のドレイン-ソース間電圧Vds(Q21)、及び低圧側スイッチとしての第3スイッチQ23のドレイン-ソース間電圧Vds(Q23)の波形を表している。図3及び図4において、Vds(Q21)及びVds(Q23)の波形は、電圧の立ち上がり時において、スパイク状のサージ電圧が発生していることがわかる。
【0045】
このとき、従来技術の電力変換装置においては、アクティブスナバ回路が設けられていないために、図3に見られるように、Vds(Q21)及びVds(Q23)の最大電圧Vmaxがそれぞれ190V、194Vに達している。これに対し、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1においては、第1スナバ回路SNB1及び第2スナバ回路SNB2が設けられていることにより、図4に見られるように、Vds(Q21)及びVds(Q23)の最大電圧Vmaxがいずれも169Vに抑えられている。
【0046】
このように、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1は、二次側回路20のフルブリッジ回路において、2つの低圧側スイッチのそれぞれに並列に第1スナバ回路SNB1及び第2スナバ回路SNB2がそれぞれ接続されている。そして、第1スナバ回路SNB1は、第3スイッチQ23に加えて第2スイッチQ22のサージ電圧を低減し、第2スナバ回路SNB2は、第4スイッチQ24に加えて第1スイッチQ21のサージ電圧を低減する。
【0047】
これにより、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1は、2つのアクティブスナバ回路により、フルブリッジ回路の4つのスイッチング素子におけるサージ電圧を低減することができる。また、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1は、フルブリッジ回路の高圧側スイッチに対して並列にアクティブスナバ回路を備えないことにより、当該アクティブスナバ回路の動作を安定化させるためのレベルシフト回路が不要となる。従って、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1によれば、フルブリッジ回路のスイッチング素子の破損を抑制しつつコストの低減を図ることができる。
【0048】
また、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1は、第3スイッチQ23に対する駆動信号により第1スナバ回路SNB1を制御することができ、第4スイッチQ24に対する駆動信号により第2スナバ回路SNB2を制御することができる。このため、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1によれば、第1スナバ回路SNB1及び第2スナバ回路SNB2をそれぞれ制御するための特別な駆動信号を新たに生成する必要がない。
【0049】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る電力変換装置1は、上記の第1実施形態における二次側回路20の構成が第1実施形態とは異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
図5は、本発明の第2実施形態に係る二次側回路40の詳細構成を示す回路図である。本実施形態における二次側回路40は、上記の第1実施形態における第1スナバ回路SNB1及び第2スナバ回路SNB2に替えて、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のサージ電圧を低減するための第3スナバ回路SNB3を備える。
【0051】
より具体的には、本実施形態における二次側回路40においては、「低圧側スイッチを含む部分回路」がフルブリッジ回路である場合として、当該フルブリッジ回路に対して第3スナバ回路SNB3が並列に接続されている。
【0052】
第3スナバ回路SNB3は、上記した第1実施形態における第1スナバ回路SNB1と同様の構成を有している一方、フルブリッジ回路に対して並列に接続されていることにより、高圧側の端部が第1スイッチQ21及び第2スイッチQ22のドレインに接続され、低圧側の端部が二次側グランドGND2に接続されて接地されていることになる。
【0053】
そして、第3スナバ回路SNB3は、二次側ドライバ32からスナバスイッチTRsのベースへ駆動信号が入力されることにより、サージ電圧を吸収するためのON/OFF動作が制御される。ここで、二次側ドライバ32は、高圧側スイッチとしての第1スイッチQ21及び第2スイッチQ22、並びに低圧側スイッチとしての第3スイッチQ23及び第4スイッチQ24を制御する駆動信号の合成信号で第3スナバ回路SNB3を駆動する。すなわち、二次側ドライバ32は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のいずれかにサージ電圧が発生し得るタイミングにおいて第3スナバ回路SNB3をONに制御することにより、フルブリッジ回路の各スイッチに生じるサージ電圧を纏めて吸収することができる。
【0054】
図6は、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1のサージ電圧を示す波形である。より具体的には、図6は、横軸を時間とし、縦軸を電圧とした場合に、図5に示す二次側回路40のフルブリッジ回路における高圧側スイッチとしての第1スイッチQ21のドレイン-ソース間電圧Vds(Q21)、及び低圧側スイッチとしての第3スイッチQ23のドレイン-ソース間電圧Vds(Q23)の波形を表している。
【0055】
本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1においては、第3スナバ回路SNB3が設けられていることにより、図6に見られるように、Vds(Q21)及びVds(Q23)の最大電圧Vmaxがそれぞれ170V、171Vに抑えられている。
【0056】
このように、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1は、二次側回路40において、フルブリッジ回路に並列に第3スナバ回路SNB3が接続されている。そして、第3スナバ回路SNB3は、第1スイッチQ21~第4スイッチQ24のサージ電圧を纏めて低減する。
【0057】
これにより、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1は、1つのアクティブスナバ回路により、フルブリッジ回路の4つのスイッチング素子におけるサージ電圧を低減することができる。また、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1は、フルブリッジ回路の高圧側スイッチに対して並列にアクティブスナバ回路を備えないことにより、当該アクティブスナバ回路の動作を安定化させるためのレベルシフト回路が不要となる。更に、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1は、フルブリッジ回路の高圧側スイッチ及び低圧側スイッチに対する制御信号を合成した合成信号に同期する駆動信号で第3スナバ回路SNB3を駆動するため、二次側ドライバ32からの当該駆動信号を1つに纏めることができる。従って、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1によれば、フルブリッジ回路のスイッチング素子の破損を抑制しつつコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電力変換装置
10 一次側回路
20、40 二次側回路
30 制御部
31 一次側ドライバ
32 二次側ドライバ
33 制御回路
T トランス
Q21~Q24、 第1スイッチ~第4スイッチ
SNB1~SNB3 第1スナバ回路~第3スナバ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6