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  • 特許-電子レンジ対応袋 図1
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  • 特許-電子レンジ対応袋 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電子レンジ対応袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019143485
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021024616
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 仙
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-310180(JP,A)
【文献】特開2002-284251(JP,A)
【文献】特開2000-185777(JP,A)
【文献】特開平09-040030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0129503(US,A1)
【文献】特開2021-024572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向の寸法を具備した矩形形状のシート部材を重ね、周囲を溶着することで収容物が収容される収容部と、
前記収容部を構成する一方の側面の中間位置において、前記シート部材の一部を横方向に亘って重合し、前記側面から突出するように形成されると共に易剥離性のシールとして構成される重合部と、
を有し、
前記収容部の内圧が高まって前記重合部の内縁に圧力が作用した際、横方向の複数個所で通蒸させるヒートシール部が前記重合部に形成され、
前記ヒートシール部は、前記重合部の横方向全体に亘って凹部と凸部が帯状に連続することで形成されており、前記収容部の内圧が高まって前記重合部の内縁に圧力が作用した際、前記圧力を、隣接する前記凹部の位置で点状に作用させて前記凹部の位置で通蒸させることを特徴とする電子レンジ対応袋。
【請求項2】
前記シート部材は、横/縦の比率が1.05倍以上の横長に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ対応袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に食材等を収容して電子レンジで加熱処理可能な電子レンジ対応袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の食材等を収容し、これを電子レンジで加熱、調理することが可能な電子レンジ対応袋が知られている(以下、このような電子レンジ対応袋を収容袋とも称する)。このような収容袋は、あらかじめ食材を冷凍状態で収容して販売したり、収容袋のみを販売し、ユーザが好みの食材を収容して加熱、調理するものがある。
【0003】
このような収容袋を電子レンジに入れて加熱すると、内圧が高まって収容袋が破裂してしまうので、収容袋の一部に、内圧が高まった状態で通蒸を可能にする通蒸機能を設けることが知られている。例えば、特許文献1に開示された収容袋は、収容袋の側面の一部に易剥離性の重合部(合掌部)を形成すると共に、その中央部分に半円状の未シール部を設けておき、レンジ加熱時に内圧が高まった際、未シール部分から通蒸できるようにしている。なお、このような構成の収容袋は、本出願人においても、レンジDo!(登録商標)という商品名で製造、販売を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3035484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の収容袋は、収容袋の内圧が高まると収容部が膨張し、重合部の略中央領域で通蒸がなされるが、通蒸機能に関してはさらに改良すべき余地がある。例えば、収容袋に、細長い形状の収容物(魚など)を収容する場合、その作業性を考慮すると、収容間口が広い寸法(縦長の収容袋よりも横長の収容袋)にすることが好ましいが、このような横長の収容袋において、上記したように、重合部の中央部分に半円形状の未シール部を設けても通蒸機能が十分に機能しないことがある。すなわち、重合部が横方向(幅方向)に長いと、収容部が加熱によって膨らんだ際、重合部には幅方向に亘って直線状に内圧が掛かる(中央部分に対して点状に内圧が加わり難い)ことから、重合部が過大開口することがあり、高温になった収容物が飛散する可能性がある。したがって、収容袋の構成については、重合部の中央領域に内圧が掛かり易くなるように縦長状にして横方向を短くする等、収容袋の形状に制約が生じている。勿論、収容袋の形状に関係なく、確実かつ安定した通蒸機能が得られることが好ましいと考えられる。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、確実かつ安定した通蒸機能が得られる電子レンジ対応袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子レンジ対応袋は、縦方向及び横方向の寸法を具備した矩形形状のシート部材を重ね、周囲を溶着することで収容物が収容される収容部と、前記収容部を構成する一方の側面の中間位置において、前記シート部材の一部を横方向に亘って重合し、前記側面から突出するように形成されると共に易剥離性のシールとして構成される重合部と、を有し、前記収容部の内圧が高まって前記重合部の内縁に圧力が作用した際、横方向の複数個所で通蒸させるヒートシール部を前記重合部に形成したことを特徴とする。
【0008】
上記した電子レンジ対応袋は、加熱処理して収容部の内圧が高まると、重合部の横方向に沿った内縁領域に圧力が作用する。前記重合部には、横方向の複数個所で通蒸するようにヒートシール部が形成されているため、収容部(収容袋)の形状などに関係なく、内圧が高まったときの外部への通蒸を容易かつ安定して行えるようになる。この場合、重合部に形成されるヒートシール部の形状については、重合部の内縁に沿って圧力が作用した際、複数個所で均等に通蒸が成されることが望ましく、例えば、前記重合部の横方向に沿って、少なくとも一部に凹部と凸部が連続するように溶着することで、複数の凹部の位置で通蒸させることが可能となる。すなわち、連続する凹部の位置は、重合部の内縁に近いことから、これらの位置で点状に圧力を受けて、各位置で通蒸が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、確実かつ安定した通蒸機能が得られる電子レンジ対応袋が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電子レンジ対応袋の一実施形態を示す平面図であり、重合部にヒートシール部を形成する前の状態を示す図。
図2図1に示す構成において、重合部に形成されたヒートシール部の形状を示す平面図。
図3】(a)及び(b)は、図1に示す構成において、重合部のヒートシール部の凹部位置で通蒸する状態を示す平面図。
図4】重合部で通蒸した状態をした斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子レンジ対応袋(収容袋)の一実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
【0012】
本実施形態の収容袋1は、略矩形状のシート部材3と、シート部材3と略同じ形状で上下に分割された分割シート4A,4Bで構成されるシート部材4とを重ね合わせて、周囲を溶着(溶着部分を斜線で示す)することで構成される袋状の収容部Sを備えた本体2を有している。なお、図1では、両側部2aと下端部2bを溶着しており、上端部2cについては未溶着となっているが、これは、本体2の収容部Sに食材などの収容物を充填した後、溶着される部分となる。このため、上記した本体2の両側の下端側には、切込み(カットライン)2Aが形成されており、電子レンジで加熱処理された本体2を開封し易いように構成されている。
【0013】
本実施形態の本体2は、いわゆる三方体として構成されるが、本発明は、底部を有する自立袋、ガゼット袋、ピロー袋として構成しても良い。また、上端部2cを溶着するのではなく、封止/開封が可能な公知のチャック(図示せず)を取着しておき、ユーザが収容物を充填して電子レンジで調理できるように構成しても良い。
【0014】
本実施形態のシート部材3,4は、本体2の側面を構成しており、本体2は、縦方向の長さ(高さ)よりも横方向の長さ(幅)が長い形状で構成されている。具体的には、横方向の長さLが220mm、高さHが120mmで形成されており、横長状の食材を収容し易い形状に構成している。
【0015】
前記収容部Sを形成する本体2の一方の側面には、その中間位置(本実施形態ではやや上方寄りとしている)に、シート部材の一部を幅方向に亘って重合し、側面から突出するように構成された重合部(合掌部)7が形成されている。この重合部7は、例えば、上記したシート部材4を構成する分割シート4Aの下端と、分割シート4Bの上端をそれぞれ同じ長さで屈曲してそれぞれ屈曲部4a,4bを形成し、これらの屈曲部4a,4bを面接させて、後述するヒートシール部12となるように、ヒートバーで圧着することで形成することが可能である。
【0016】
なお、前記重合部7は、収容袋1を作成する際、一般的に公知の手法によって形成することが可能であり、重合部7は、収容部Sの内圧が高まった際に、周囲の溶着部に対して容易に剥離し易いように、易剥離層を備えた易剥離部(イージーオープン)として構成されている。すなわち、重合部7が、ヒートシール部12によって溶着された状態では、その溶着部分は、周囲の溶着部よりも剥離し易い状態となっている。
【0017】
前記シート部材3,4については、電子レンジで加熱処理した際、必要な耐熱性を有する食品用包装材料(プラスチック材料)として使用されるものであれば、特に限定されることはない。例えば、シート部材3,4を構成する基材については、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ポリオレフィン系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の二軸延伸又は無延伸樹脂フィルム、ポリプロピレン/エチレン-ビニルアルコール共重合体共押出し樹脂フィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)などを用いることが可能である。また、その基材の内層側には、周囲で溶着できるように、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-αオレフィン共重合体等の熱溶融性樹脂によるシーラント層が積層される。
【0018】
前記シート部材3,4については、多層構造の複合シート材を用いることが可能であり、その積層構造については、収容部Sに収容される収容物に応じて適宜選択することができ、特定の形態に限定されることはない。なお、上記した積層構造については、各種公知の手法、例えば、押出機などを用いて、溶融した樹脂を製膜して、積層体状に層形成したり、あらかじめフィルム状に形成したものをドライラミネーション等によるラミネート法を用いて作成することが可能である。
【0019】
前記重合部7は、前記シート部材3,4の高さ方向の中間位置に設けられるのであれば、その位置については特に限定されることはなく、本実施形態では、高さ方向のやや上端側に設けられている。また、重合部7には、内圧が高まった際に、ヒートシール部12で容易に剥離できるように、剥離強度が低い易剥離層(ポリオレフィン系の樹脂を積層したもの、或いは、そのようなフィルムテープを介在したもの;シーラント層)が設けられている。
【0020】
前記重合部7は、分割シート4Aの下端及び分割シート4Bの上端の屈曲部4a,4bが重なった部分であり、本体2の側面の横方向に亘って形成されており、図2のドット領域で示すような形態(ヒートシール部12)によって溶着されている。
【0021】
ヒートシール部12は、収容部Sの内圧が高まって、重合部7の内縁7aを介して圧力が作用する際、横方向の複数個所で通蒸が可能となるように、各屈曲部4a,4bを溶着する。具体的に、本実施形態のヒートシール部12は、重合部7の横方向全体に亘って、湾曲状の凹(谷部)12aと湾曲状の凸部(山部)12bを連続形成することで構成されている。
【0022】
このように凹凸形状のヒートシール部12を形成することで、図3(a)に示すように、電子レンジ内で収容部Sの内圧が高まった際、水蒸気によって重合部7の内縁7aを介して、圧力が隣接する凹部12aの位置で、横方向の複数個所で点状に作用するようになり、その後、凹部12aの部分のシールが剥がれ、それがヒートシールされていない領域(隣接する凸部の間の未シール部)に達すると、図3(b)図4に示すように、同時に通蒸が成されるようになる。
【0023】
すなわち、特許文献1のように、重合部の中央領域の上端縁に、略半円形状の未シール部が形成されるような溶着形態(1カ所の通蒸部)では、内縁7aの幅方向全体に亘って内圧が作用する(線状に内圧が作用する)ことから、かなりの内圧が作用しないと、略半円形状の未シール部で通蒸することができないか、或いは、重合部で過大開口してしまう可能性もあるが、上記したように、横方向に連続する凹凸状のヒートシール部12の凹部12aの位置で内圧が作用して通蒸し易くすることで、低い内圧でも通蒸させることが可能となる。特に、高さHに対して横方向の長さLが長い収容袋では、高い内圧が作用しなくても、効果的に通蒸機能を発揮させることが可能となる。
【0024】
ここで、従来型の通蒸部(重合部の略中間位置に、略半円形状の未シール部を有するヒートシール部)を形成した収容袋と、重合部に図2に示すようなヒートシール部12を形成した収容袋について、収容部に内圧を加えてどの程度の圧力で通蒸するかについて試験を行った。以下、その試験結果について説明する。
【0025】
本体を構成するフィルムシートは、透明蒸着で、PET12,ナイロン15,CPP60(ハイレトルトタイプ)の複合材で、図1に示すような形態で、横幅Lが220mm、高さHが120mm、重合部の位置を袋上端位置から35mmとし、図2で示すような形状のシール部12を形成した収容袋(本発明品)と、同じ構成で、重合部の略中間位置に、略半円形状の未シール部を有するヒートシール部を形成した収容袋(従来品)を準備し、両収容袋について、破裂強度試験機にて袋の収容部に内圧をかけて重合部のシール部から空気が抜けたときの内圧(通蒸時の内圧)を測定した。測定環境は、常温下と、100℃の温風加温下の2条件で測定を行った。
【0026】
【表1】
【0027】
上記の試験結果から、本発明品は、従来品と比較すると、常温下では、重合部7のヒートシール部12が通蒸するのに必要な圧力が約30%低下し、レンジ加熱を想定した100℃加温下では、約50%低下することが確認された。これは、従来型の収容袋では、通蒸し難く、特に、高さ方向よりも横方向の長さが長い収容袋では、収容部が高圧にならないと通蒸せず、破裂等の危険性があるのに対し、本発明品では、収容部がそれほど高圧にならなくても通蒸することができることから、確実かつ安定した通蒸機能が得られる。
【0028】
また、上記した2つのタイプの収容袋をそれぞれ60袋作成し、それぞれ水50gを封入し、600Wの電子レンジで重合部のシール部より蒸気が抜けるまで加熱を行ない、破裂が生じるか否かの試験を行った。ここでの破裂とは、蒸気が抜ける際に大きな破裂音がする、又は、重合部が20mm以上の幅で開口したものを破裂として扱った。
【0029】
【表2】
【0030】
上記したように、従来品では、60袋の内、48袋については異常が見られなかったが、12袋については破裂が認められた。一方、本発明品では、60袋の内、異常が見られなかった。すなわち、従来品では、20%の確率で発生した破裂が、本発明品では破裂が生じないとして改善された結果が得られた。
【0031】
以上のように、重合部7に、上記したような複数個所で通蒸可能となるヒートシール部12を形成することで、横方向に長く形成された収容袋を破裂等させることなく、安定した通蒸機能が得られるようになる。この場合、ヒートシール部12は、図2に示したように、重合部7の横方向に沿って全体に亘って形成するのではなく、少なくとも横方向の一部に、凹部12aと凸部12bが連続して形成する構成であっても良い。
【0032】
また、ヒートシール部12である凹部12aと凸部12bの形状については、湾曲状に形成したが、直線状に屈曲させたり、頂部を直線状にしても良く、その通蒸個所については、中心に対して、横方向両側の対称位置で通蒸するように形成することが好ましい。
【0033】
また、本発明では、上記した試験結果のように、横方向の長さが高さ方向の長さよりも長い収容袋の場合であっても、加熱時に破裂等を生じさせることなく、通蒸機能を発揮することが可能である。具体的には、シート部材3,4については、横/縦の比率が1.05倍以上の横長に形成したものであっても、安定した通蒸機能を発揮することが可能である。
【0034】
さらに、上記した実施形態では、前記収容袋、及び、重合部を形成するシート部材については、複数枚のシート部材3,4A,4Bで構成したが、これらは1枚のシート部材で構成することが可能である。例えば、ロール状(原反)に巻回されている1枚のシート部材を引き出しながら製袋機に供給する際、引き出し方向に沿って順次加工(折り曲げ加工、溶着加工、カット加工等)を施すことで、1枚のシート部材で、上記した収容袋を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 収容袋(電子レンジ用対応袋)
2 本体
3,4,4A,4B シート部材
7 重合部
12 ヒートシール部
12a 凹部
12b 凸部
S 収容部
図1
図2
図3
図4