(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】バックル及びバックル雄部材
(51)【国際特許分類】
A44B 19/30 20060101AFI20231031BHJP
A44B 11/25 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A44B19/30
A44B11/25
(21)【出願番号】P 2019155065
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直幸
(72)【発明者】
【氏名】高桜 亮一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢上 智子
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215133(JP,U)
【文献】特開2013-63149(JP,A)
【文献】中国実用新案第203723552(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B11/00-11/28、19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離可能な態様で連結される雌部材(6)及び雄部材(7)を備え
、スライドファスナー(1)のスライダー(5)に対して
前記雌部材(6)が取り付けられるスライドファスナー簡易ロック用バックル(100)であって、
前記雄部材(7)は、ロック突起(73)が各々に設けられた一対のアーム部(72)と、前記一対のアーム部(72)の各基端部(72r)を連結する連結杆(79)を備え、
前記雌部材(6)との連結又は連結解除のために前記ロック突起(73)がお互いに接近するように前記アーム部(72)が撓む時、前記連結杆(79)は、前記アーム部(72)の前記ロック突起(73)の間の空間(SP73)の反対側に反り出るように構成され
る、バックル。
【請求項2】
前記雄部材(7)は、前記アーム部(72)を連結する樹脂バネ部(76)を更に備える、請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記樹脂バネ部(76)は、前記アーム部(72)の前記ロック突起(73)を連結する帯状部分である、請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記樹脂バネ部(76)は、前記ロック突起(73)に対して個別に連結した一対の傾斜帯(76p,76q)と、前記傾斜帯(76p,76q)を連結するように延びる底帯(76b)を有し、前記一対の傾斜帯(76p,76q)の間隔は、前記ロック突起(73)の間の空間(SP73)から前記底帯(76b)に向かって徐々に増加する、請求項3に記載のバックル。
【請求項5】
前記雄部材(7)は、前記樹脂バネ部(76)、前記一対のアーム部(72)、及び前記連結杆(79)によって閉じた環状部材に構成される、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のバックル。
【請求項6】
前記連結杆(79)へのテープ、ベルト又は紐の巻付に基づいて前記スライドファスナー(1)が取り付けられる物品に対して前記雄部材(7)が取り付けられる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバックル。
【請求項7】
各アーム部(72)は、アーム主部(72m)と、前記アーム主部(72m)を介して前記連結杆(79)に連結し、ロック突起(73)が設けられたアーム先端部(72n)を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバックル。
【請求項8】
前記連結杆(79)の最大厚は、前記ロック突起(73)が設けられた前記アーム先端部(72n)の最大厚未満である、請求項7に記載のバックル。
【請求項9】
前記アーム主部(72m)は、ヒトの指によって押圧される部分であり、バックル雄部材(7)の厚み方向において、前記アーム主部(72m)の厚みが前記雄部材(7)において最大である、請求項7又は8に記載のバックル。
【請求項10】
前記雌部材(6)と前記雄部材(7)の連結方向における前記連結杆(79)の長さ(L79)と前記雄部材(7)の幅方向における前記アーム部(72)の幅(W72)が、0.3<(L79/W72)<2.5を満足する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のバックル。
【請求項11】
分離可能な態様で連結される雌部材(6)及び雄部材(7)を備え、スライドファスナー(1)のスライダー(5)に対して前記雄部材(7)が取り付けられるスライドファスナー簡易ロック用バックル(100)であって、
前記雄部材(7)は、前記スライダー(5)を保持するように構成されたスライダー保持枠(71)と、前記スライダー保持枠(71)から同一方向に延び、ロック突起(73)が各々に設けられた一対のアーム部(72)を備え、
前記スライダー保持枠(71)は、前記ロック突起(73)の間の空間(SP73)に向けて前記一対のアーム部(72)の間で突出する枠部分(71a)を含む、バックル。
【請求項12】
前記スライダー保持枠(71)は、前記枠部分(71a)
に連結して一つの開口を画定する別の枠部分(71b)を更に有する、請求項
11に記載のバックル。
【請求項13】
前記スライダー保持枠(71)は、前記枠部分(71a)に対して下垂部(77)を介して連結した舌部(78)を有し、前記枠部分(71a)と前記舌部(78)の間でスライダー(5)が挟まれる、
請求項11又は12に記載のバックル。
【請求項14】
前記舌部(78)は、前記スライダー(5)の上翼板(51)又は下翼板(52)の外形形状に部分的に一致するように形状付けられる、請求項
13に記載のバックル。
【請求項15】
前記雄部材(7)は、前記アーム部(72)を連結する樹脂バネ部(76)を更に備え、前記樹脂バネ部(76)は、前記一対のアーム部(72)がお互いに接近するように撓む時、前記スライダー保持枠(71)に接触する、
請求項11乃至14のいずれか一項に記載のバックル。
【請求項16】
ロック突起(73)が各々に設けられた一対のアーム部(72)と、前記一対のアーム部(72)の各基端部(72r)を連結する連結杆(79)を備え、
雌部材(6)との連結又は連結解除のために前記ロック突起(73)がお互いに接近するように前記アーム部(72)が撓む時、前記連結杆(79)は、前記アーム部(72)の前記ロック突起(73)の間の空間(SP73)の反対側に反り出るように構成される、バックル雄部材。
【請求項17】
スライドファスナー(1)のスライダー(5)を保持するように構成されたスライダー保持枠(71)と、
前記スライダー保持枠(71)から同一方向に延び、ロック突起(73)が各々に設けられた一対のアーム部(72)を備え、
前記スライダー保持枠(71)は、前記ロック突起(73)の間の空間(SP73)に向けて前記一対のアーム部(72)の間で突出する枠部分(71a)を含む、バックル雄部材。
【請求項18】
前記アーム部(72)を連結する樹脂バネ部(76)を更に備える、請求項
16又は17に記載のバックル雄部材。
【請求項19】
前記樹脂バネ部(76)は、前記アーム部(72)の前記ロック突起(73)を連結する帯状部分である、請求項
18に記載のバックル雄部材。
【請求項20】
前記樹脂バネ部(76)は、前記ロック突起(73)に対して個別に連結した一対の傾斜帯(76p,76q)と、前記傾斜帯(76p,76q)を連結するように延びる底帯(76b)を有し、前記一対の傾斜帯(76p,76q)の間隔は、前記ロック突起(73)の間の空間(SP73)から前記底帯(76b)に向かって徐々に増加する、請求項
19に記載のバックル雄部材。
【請求項21】
前記雌部材(6)と前記
バックル雄部材(7)の連結方向における前記連結杆(79)の長さ(L79)と前記
バックル雄部材(7)の幅方向における前記アーム部(72)の幅(W72)が、0.3<(L79/W72)<2.5を満足する、請求項
16に記載のバックル雄部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バックル及びバックル雄部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のスライドファスナーでは、スライダーの引手を引くことによって、スライドファスナーを簡単に開閉することができる。これは利便性の観点から優れているものの、防犯性の観点からは脆弱である。この点について、特許文献1には、スライドファスナーのスライダーに対してバックル雄又は雌部材の機能を一体的に付与する技術が開示されている。また、特許文献2には、スライダーに対して紐を介してロック部材を連結することが開示されている。
【0003】
他方、スライダー胴体に対して取り付けられる種々の取付部材も開発されている。例えば、特許文献3にはラッチ部をスライダー胴体に取り付け、スライダー同士の連結を可能とすることが開示されている(同文献の
図7参照)。特許文献4にはラッチ部がスライダー胴体の下側に取り付けられることが開示されている(同文献の
図2参照)。特許文献5にはスライダーを収容する収容部を有するスライダーカバーが開示されている(同文献の
図1参照)。
【0004】
なお、特許文献6にはヒトの指により操作される解除操作部が弾性片に設けられた雄部材を有するバックルにおいて、解除操作部と帯状体取付部がバックルの雄雌部材の連結方向においてオーバーラップすることが開示されている(同文献の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第1300093号明細書
【文献】特許第3034852号公報
【文献】特開2007-44535号公報
【文献】特許第4614140号公報
【文献】特許第6035342号公報
【文献】特許第5170889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バックル雄部材及び雌部材の連結方向におけるバックル雄部材の長さを短くするという新たな課題を見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るバックルは、分離可能な態様で連結される雌部材及び雄部材を備え、雌部材及び雄部材の少なくとも一方がスライドファスナーのスライダーに対して取り付けられるスライドファスナー簡易ロック用バックルであって、
(A)スライドファスナーのスライダーに対して雌部材のみが取り付けられる場合、
雄部材は、ロック突起が各々に設けられた一対のアーム部と、一対のアーム部の各基端部を連結する連結杆を備え、
雌部材との連結又は連結解除のためにロック突起がお互いに接近するようにアーム部が撓む時、連結杆は、アーム部のロック突起の間の空間の反対側に反り出るように構成され、
(B)スライドファスナーのスライダーに対して雄部材が取り付けられる場合、
雄部材は、スライダーを保持するように構成されたスライダー保持枠と、スライダー保持枠から同一方向に延び、ロック突起が各々に設けられた一対のアーム部を備え、
スライダー保持枠は、ロック突起の間の空間に向けて一対のアーム部の間で突出する枠部分を含む。
【0008】
幾つかの実施形態では、雄部材は、アーム部を連結する樹脂バネ部を更に備える。樹脂バネ部は、アーム部のロック突起を連結する帯状部分であり得る。樹脂バネ部は、ロック突起に対して個別に連結した一対の傾斜帯と、傾斜帯を連結するように延びる底帯を有し、一対の傾斜帯の間隔は、ロック突起の間の空間から底帯に向かって徐々に増加し得る。
【0009】
(A)の場合、雄部材は、樹脂バネ部、一対のアーム部、及び連結杆によって閉じた環状部材に構成され得る。連結杆へのテープ、ベルト又は紐の巻付に基づいてスライドファスナーが取り付けられる物品に対して雄部材が取り付けられ得る。各アーム部は、アーム主部と、アーム主部を介して連結杆に連結し、ロック突起が設けられたアーム先端部を備え得る。連結杆の最大厚は、ロック突起が設けられたアーム先端部の最大厚未満であり得る。アーム主部は、ヒトの指によって押圧される部分であり、バックル雄部材の厚み方向において、アーム主部の厚みが雄部材において最大であり得る。雌部材と雄部材の連結方向における連結杆の長さ(L79)と雄部材の幅方向におけるアーム部の幅(W72)が、0.3<(L79/W72)<2.5を満足し得る。
【0010】
(B)の場合、スライダー保持枠は、枠部分と連結して一つの開口を画定する別の枠部分を更に有し得る。スライダー保持枠は、枠部分に対して下垂部を介して連結した舌部を有し、枠部分と舌部の間でスライダーが挟まれ得る。舌部は、スライダーの上翼板又は下翼板の外形形状に部分的に一致するように形状付けられ得る。雄部材は、アーム部を連結する樹脂バネ部を更に備え、樹脂バネ部は、一対のアーム部がお互いに接近するように撓む時、スライダー保持枠に接触し得る。
【0011】
本開示の一態様に係るバックル雄部材は、ロック突起が各々に設けられた一対のアーム部と、一対のアーム部の各基端部を連結する連結杆を備え、雌部材との連結又は連結解除のためにロック突起がお互いに接近するようにアーム部が撓む時、連結杆は、アーム部のロック突起の間の空間の反対側に反り出るように構成される。
【0012】
本開示の一態様に係るバックル雄部材は、スライドファスナーのスライダーを保持するように構成されたスライダー保持枠と、スライダー保持枠から同一方向に延び、ロック突起が各々に設けられた一対のアーム部を備え、スライダー保持枠は、ロック突起の間の空間に向けて一対のアーム部の間で突出する枠部分を含む。
【0013】
上述のバックル雄部材は、アーム部を連結する樹脂バネ部を更に備え得る。樹脂バネ部は、アーム部のロック突起を連結する帯状部分であり得る。樹脂バネ部は、ロック突起に対して個別に連結した一対の傾斜帯と、傾斜帯を連結するように延びる底帯を有し、一対の傾斜帯の間隔は、ロック突起の間の空間から底帯に向かって徐々に増加し得る。雌部材と雄部材の連結方向における連結杆の長さ(L79)と雄部材の幅方向におけるアーム部の幅(W72)が、0.3<(L79/W72)<2.5を満足し得る。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、バックル雄部材及び雌部材の連結方向におけるバックル雄部材の長さを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るスライドファスナー簡易ロック用バックルが取り付けられたスライドファスナーの概略的な上面模式図である。
【
図2】バックルの概略的な斜視図であり、バックル雄部材とバックル雌部材が連結している。
【
図3】バックルの概略的な斜視図であり、バックル雄部材とバックル雌部材が分離している。
【
図4】バックルの概略的な上面模式図であり、バックル雄部材のロック突起がバックル雌部材のロック部によりロックされることが模式的に示される。
【
図9】バックル雄部材及び雌部材が、各々、スライダーに取り付けられることを示す模式図である。
【
図10】第2実施形態に係るバックルが取り付けられた物品の概略的な部分図であり、バックル雌部材にはスライダー保持枠の代替としてベルト保持部が設けられる。
【
図11】バックルの概略的な斜視図であり、バックル雄部材とバックル雌部材が連結している。
【
図13】第3実施形態に係るバックルの概略的な斜視図である。バックル雌部材のみがスライダーに取り付けられる。バックル雄部材は、スライドファスナーが取り付けられた物品に取り付けられる。
【
図15】バックル雄部材の概略的な後側面図である。
【
図16】バックル雄部材の概略的な中心断面図である。
【
図17】第4実施形態に係るバックルの概略的な斜視図であり、バックル雄部材とバックル雌部材が分離している。
【
図18】バックルの概略的な斜視図であり、バックル雄部材とバックル雌部材が連結している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1乃至
図18を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示されたバックルにのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々なバックルにも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0017】
スライドファスナー又はこれに取り付けられたバックルに関して、スライダーの動きに基づいて前後方向が理解される。前方は、ファスナーストリンガーを閉じるべくスライダーが動く方向に一致する。後方は、ファスナーストリンガーを開けるべくスライダーが動く方向に一致する。左右方向は、前後方向に直交し、ファスナーテープのテープ面に平行である。上下方向は、前後方向に直交し、ファスナーテープのテープ面に直交する。
図1に示すスライドファスナー1には2つのスライダー5a,5bが含まれ、各スライダー5a,5bに対して別々の方向に関する基準が割り当てられる。スライダー5aに関する前方は、スライダー5bに関する前方とは反対である。
図1の双頭矢印について、Fが前方を示し、Reが後方を示し、Lが左方を示し、Riが右方を示す。
【0018】
スライダー基準の上述の方向に依拠することなく、バックル基準の方向を参照してバックルの構造を説明する場合もある。後述の説明から分かるように、バックルは、スライドファスナーと組み合わされて用いられる形態の他、スライドファスナーと組み合わされることなく単独で用いられる形態も想定されている。特には、バックルに含まれる雌部材と雄部材の連結方向が参照される。連結方向は、雌部材と雄部材の連結のために雌部材及び/又は雄部材が動かされる方向に等しい(なお、連結方向は、スライダー基準の上述の前後方向に平行である)。連結方向に直交する幅方向及び厚み方向も参照される。幅方向は、一対のアーム部が並置される方向である。厚み方向は、連結方向及び幅方向に直交する。
【0019】
<第1実施形態>
図1乃至
図9を参照して第1実施形態について説明する。スライドファスナー1は、例えば、鞄類といった収容具に取り付けられ、収容具の開閉を可能とする。スライドファスナー1は、左右一対のファスナーストリンガー2と、これを開閉するための2つのスライダー5a,5b(総じて5)を有する。スライドファスナー1に含まれるスライダーの個数は、2つに限られることなく、1つ、3つ、又は3つ以上のスライダーが含まれる形態も想定される。各ファスナーストリンガー2は、上下のテープ面により厚みが規定されるファスナーテープ3と、ファスナーテープ3の側縁部に取り付けられたファスナーエレメント4を有する。
【0020】
ファスナーテープ3は、織物又は編み物、又はこれらの混在物であり、十分な可撓性を有する布である。ファスナーエレメント4は、金属製エレメント、樹脂製エレメント、又はモノフィラメントがらせん状に巻かれたコイル状エレメントである。ファスナーテープ3に対するファスナーエレメント4の取付は、エレメントの種類に応じて適切に決定される。金属製エレメントの場合、ファスナーテープ3の側縁部に対してエレメントが加締め付けられる。樹脂製エレメントの場合、インサート成形によりエレメントがファスナーテープ3に取り付けられる。コイル状エレメントの場合、ファスナーテープ3に対してコイル状エレメントが縫い付けられる。スライダー5は、樹脂又は金属又はセラミック製であり得る。
【0021】
スライダー5は、上翼板51、下翼板52、これらを連結する連結柱53、引手取付柱54、及びフランジ部55を有する(
図1及び
図9参照)。引手取付柱54に取り付けられる引手の図示が省略されている。上翼板51と下翼板52が対向して配置され、上下方向においてファスナーエレメント4の通過空間が画定される。左右のフランジ部55が対向して配置され、左右方向においてファスナーエレメント4の通過空間が画定される。上翼板51の前端部の左右中央に連結柱53が設けられる。連結柱53を挟むように左右一対の前口が設けられ、これらを介して左右のファスナーエレメント4がスライダー5の内外に出入りする。左右一対の前口の反対側には一つの後口が設けられ、これを介して(結合状態の)左右のファスナーエレメント4がスライダー5の内外に出入りする。
【0022】
スライドファスナー1の各スライダー5a,5bを拘束するためにスライドファスナー簡易ロック用バックル(以下、単にバックルと呼ぶ場合がある)100が用いられる。バックル100は、分離可能な態様で連結される雌部材6及び雄部材7を備える。雌部材6及び雄部材7は、各々、スライダー5a,5bに取り付けられている。雌部材6と雄部材7が連結している限りにおいてスライダー5a,5bが個別に自由に動くことができない。左右のファスナーストリンガー2が開くことが阻止され、スライドファスナー1が取り付けられる物品の防犯性が高められる。なお、本開示のバックル100は、スライドファスナー1を閉状態に維持するために用いられる他、スライドファスナー1を開状態に維持するためにも用いることができることに留意されたい。また、雄部材7と雌部材6の一方又は両方がスライドファスナー1のスライダー5に対して取り付けられない形態も想定される。
【0023】
以下、バックル100の構成について詳述する。雌部材6及び雄部材7は、各々、樹脂(例えば、ポリアセタール、ナイロン、ポリプロピレン、エラストマー、ポリカーボネート)製であり、射出成形により製造可能である。雄部材7は、スライダー5を保持するように構成されたスライダー保持枠71と、スライダー保持枠71から同一方向に延び、ロック突起73p,73q(総じて73)が各々に設けられた一対のアーム部72p,72q(総じて72)と、アーム部72を連結する樹脂バネ部76を有する。雌部材6は、スライダー保持枠61と、スライダー保持枠61に連結したアーム受容部62を有する。
【0024】
雄部材7のスライダー保持枠71は、スライダー5の上翼板51又は下翼板52を保持するように構成された枠本体71fと、枠本体71fに対して下垂部77を介して連結した舌部78を有する。汎用のスライダーでは、上翼板の上面に引手取付柱が設けられ、上翼板の上面の平坦さが損なわれている。他方、汎用のスライダーでは、下翼板の下面は平坦面である。従って、スライダー保持枠71に舌部78を設ける場合、枠本体71fは、典型的にはスライダーの上翼板を保持するように構成される。しかしながら、枠本体71fがスライダー5の下翼板52を保持するように構成される形態も当然に想定される。
【0025】
枠本体71fは、雌部材6と雄部材7の連結方向において枠部分71aと枠部分71bに区分されている。枠部分71bは、枠部分71aと連結して一つの開口を画定する。枠部分71aと枠部分71bの連結部分に対してアーム部72の基端部72rが連結する。枠部分71aは、一方のアーム部72の基端部72rと他方のアーム部72の基端部72rの間でC字又はU字状に延びる。同様、枠部分71bは、一方のアーム部72の基端部72rと他方のアーム部72の基端部72rの間でC字又はU字状に延びる。雌部材6と雄部材7の連結方向において、枠部分71aの長さL1が枠部分71bの長さL2未満である(
図4参照)。雌部材6と雄部材7の連結方向において、アーム部72と枠部分71aが重なり合う範囲を短くし、アーム部72の枢動時、アーム部72と枠部分71aが干渉してしまうことが抑制される。
【0026】
本実施形態では、枠部分71aは、ロック突起73p,73qの間の空間SP73に向けて一対のアーム部72p,72qの間で突出する。これによって、雌部材6と雄部材7の連結方向における雄部材7の長さL0(
図4参照)を短くすることができる。アーム部72と枠部分71aの間に隙間SL1,SL2が形成され、アーム部72と枠部分71aの干渉が回避される。
【0027】
枠本体71fは、アーム部72の基端部72rが連結した一対の側部71c,71dと、雄部材7の幅方向に延びて側部71c,71dの一端を連結する壁部71jと、雄部材7の幅方向に延びて側部71c,71dの他端を連結する棒部71kを有する。側部71c,71dは、スライダー5の保持に適するようにスライダー5の左右の側縁部に沿って延びる。側部71c,71dが壁部71jから離間するように延びるに応じて、雄部材7の幅方向における側部71c,71dの間隔が徐々に広がり、続いて、徐々に狭くなる。この間隔の変化点は、スライダー5のフランジ部55の前端に対応し得る。
【0028】
雄部材7の幅方向におけるスライダー保持枠71(枠本体71f)の開口幅を減じる隆起部71zを設けることができる。スライダー保持枠71(枠本体71f)によってスライダー5の上翼板51又は下翼板52がしっかりと保持されることが促進される。なお、枠本体71fは、必ずしも閉じた枠に限られない。枠本体71fは、部分的に切り欠かれた枠であっても良い。例えば、棒部71kが省略され、枠本体71fがU字状に形状付けられる。
【0029】
枠本体71fと舌部78の間でスライダー5が挟まれて保持される。舌部78は、スライダー5の上翼板51又は下翼板52の外形形状に部分的に一致するように形状付けられ、スライダー5からの舌部78の突出が回避又は低減される。典型的には、舌部78は、上翼板51又は下翼板52の前半分の外形形状に一致するように形状付けられる。舌部78は、スライダー保持枠71の内周縁の内側に配置され得る(
図3参照)。この場合、雄部材7の厚み方向においてスライダー保持枠71と舌部78が重なり合わない。スライダー5(例えば、下翼板52の下面)に対して接触する1以上の接触突起78pを舌部78に設けることができる。好適には、接触突起78pは、下垂部77に対する舌部78の連結端とは反対側の舌部78の自由端寄りに設けられる。枠本体71fと舌部78の間でスライダー5がよりしっかりと保持されることが促進される。
【0030】
スライダー5に対する雄部材7の取付は、
図9に模式的に示すように、棒部71kと舌部78の間の空間にスライダー5を圧入し、棒部71k及び舌部78の間隔を増加させることにより達成可能である。棒部71kと舌部78の少なくとも一方が変位すれば良い。幾つかの場合、舌部78は、壁部71jに連結した下垂部77の連結端部を中心として枢動する。下垂部77及び舌部78が省略され、枠本体71fのみによってスライダー5が保持される形態も想定される。
【0031】
アーム部72p,72qは、枠部分71aと枠部分71bの境界に連結した基端部72rを有し、雌部材6と雄部材7の連結方向においてスライダー保持枠71から離間するように基端部72rから同一方向に延びる。アーム部72p,72qは、その基端部72rを中心として幅方向内側に撓むことができ、アーム部72p,72qに設けられたロック突起73の接近を可能とする。なお、幅方向内側は、雄部材7の幅方向の中心線CL1(
図4参照)に向かう方向である。幅方向外側は、雄部材7の幅方向の中心線CL1(
図4参照)から離れる方向である。アーム部72は、外力によって幅方向内側に撓むことができ、外力の解放によって幅方向外側に変位して初期姿勢に復帰することができる。
図4に示す如く上から見て、左側のアーム部72pは、その基端部72rを中心として時計回り、右側に枢動することができる。右側のアーム部72qは、その基端部72rを中心として反時計回り、左側に枢動することができる。
【0032】
アーム部72p,72qは、雌部材6と雄部材7の連結方向に延びるアーム主部72mと、アーム主部72mを介してスライダー保持枠71に連結し、またロック突起73が設けられたアーム先端部72nを有する。アーム主部72mは、雌部材6と雄部材7の連結方向においてスライダー保持枠71から離間する方向にまっすぐ延びる。アーム先端部72nは、対をなす他方のアーム部72(例えば、そのロック突起73)に向けて幅方向内側に弧状に延びる。ロック突起73は、アーム先端部72nの内側端部に設けられるが、この位置に限られるべきではない。ロック突起73同士が所定の空間SP73を空けて隣接配置される場合、雌部材6のアーム受容部62の幅を減じることが促進される(
図5参照)。ロック突起73は、雄部材7の厚み方向において反対側(つまり上側及び下側)にアーム先端部72nから突出する(
図6参照)。なお、ロック突起73が上下一方のみに突出する形態も想定される。
【0033】
アーム主部72mは、ヒトの指により押され、これによりアーム部72の姿勢が操作される。アーム主部72mが幅方向内側に押されることによりアーム部72が幅方向内側に撓み、アーム先端部72nに設けられたロック突起73が幅方向内側に動く。アーム主部72mは、平帯状部分であって、雄部材7の幅方向において小さい幅を有し、雄部材7の厚み方向において大きい厚みを有する。換言すれば、アーム主部72mは、雄部材7の幅方向において薄い厚みを有し、雄部材7の厚み方向において広い幅を有する。雄部材7の厚み方向においてアーム主部72mの厚みが雄部材7において最大である場合、ヒトの指に対してより広い接触面積を提供することができる。なお、雄部材7の厚み方向において、アーム主部72mの厚みは、アーム先端部72n及びロック突起73の厚みよりも大きい。
【0034】
アーム主部72mと枠部分71aの間に隙間SL1,SL2が形成され、アーム部72の基端部72rを中心とした幅方向内側への撓みが許容される。隙間SL1,SL2は、雌部材6と雄部材7の連結方向に沿って略一定の横幅で延びる。アーム先端部72nと枠部分71aの間には樹脂バネ部76の配置を許容する程度の空間が設けられる。
【0035】
アーム部72が非変形状態の時、アーム部72p,72qにおいて、アーム主部72mの延在方向に一致する軸線AX1とアーム部72の基端部72rとロック突起73を結ぶ軸線AX2のなす角θは、0°<θ<80°を満足する。ロック突起73同士が所定の空間SP73を空けて隣接配置され、雌部材6のアーム受容部62の幅を減じることが促進される。
【0036】
ロック突起73p,73qの間の空間SP73の幅が可変である。雌部材6との連結又は連結解除のためにアーム主部72mが幅方向内側に押されてロック突起73がお互いに接近する時、雄部材7の幅方向における空間SP73の幅が減少する。樹脂バネ部76が設けられる場合、樹脂バネ部76とスライダー保持枠71との接触によって空間SP73の幅の減少が妨げられ得る。ただし、樹脂バネ部76の変形によって空間SP73の幅の更なる減少も可能であり得る。なお、樹脂バネ部76とスライダー保持枠71の接触によって、アーム部72が過度に撓むことが規制される。雌部材6と雄部材7の連結の過程で樹脂バネ部76がスライダー保持枠71に接触することは必ずしも必要ではない。
【0037】
樹脂バネ部76は、各アーム部72のロック突起73を連結する帯状部分であり得る。樹脂バネ部76、アーム部72p,72q、及びスライダー保持枠71によって閉じた環が形成され、雄部材7の機械的な強度が高められる。例えば、樹脂バネ部76がない場合、アーム部72p,72qの間に異物が進入してアーム部72が破損してしまうおそれがある。アーム部72p,72qが樹脂バネ部76により連結される場合、このような問題が回避又は抑制される。
【0038】
樹脂バネ部76は、アーム部72のロック突起73に対して各々が連結した一対の傾斜帯76p,76qと、傾斜帯76p,76qを連結するように延びる底帯76bを有し、一対の傾斜帯76p,76qの間隔は、ロック突起73p,73qの間の空間SP73から底帯76bに向かって徐々に増加する。幾つかの場合、雌部材6との連結又は連結解除のためにロック突起73がお互いに接近するようにアーム部72が撓む時、樹脂バネ部76とスライダー保持枠71が接触する。これは、雌部材6と雄部材7の連結方向における雄部材7の長さが短縮化されていることの帰結である。
【0039】
樹脂バネ部76(例えば、底帯76b)と枠部分71aは、相補的な対向面f1,f2を有する(
図4参照)。対向面f1は、雄部材7の中心線CL1に凸部が形成されるように隣接した一対の傾斜面を有する。対向面f2は、雄部材7の中心線CL1において凹部が形成されるように隣接した一対の傾斜面を有する。樹脂バネ部76、ひいてはロック突起73の可動範囲が拡大される。雄部材7と雌部材6の連結のために要求される力を適切な範囲にすることが促進される。なお、幾つかの場合、樹脂バネ部76の変形によってアーム部72p,72qのロック突起73同士が接触可能である。
【0040】
アーム部72におけるロック突起73の位置及び突出方向は様々であり、図示例に限られるべきではない。ロック突起73は、雄部材7の厚み方向ではなく、雄部材7の幅方向に突出しても良い。例えば、左側のロック突起73は、左側のアーム部72pの左側面から左方に突出するように設けられる。右側のロック突起73は、右側のアーム部72qの右側面から右方に突出するように設けられる。このような場合、ロック突起73p,73qの間の空間SP73には雄部材7の樹脂部分が配置され得るが、ロック突起73の間に空間SP73が存在していることには変わりない。
【0041】
雌部材6は、上述したように、スライダー保持枠61と、スライダー保持枠61に連結したアーム受容部62を有する。スライダー保持枠61は、雄部材7のスライダー保持枠71と同様、スライダー5の上翼板51又は下翼板52を保持するように構成された枠本体61fと、枠本体61fに対して下垂部67を介して連結した舌部68を有する。枠本体61fは、一対の側部61c,61dと、雌部材6の幅方向に延びて側部61c,61dの一端を連結する壁部61jと、雌部材6の幅方向に延びて側部61c,61dの他端を連結する棒部61kを有する。
【0042】
側部61c,61dは、スライダー5の保持に適するようにスライダー5の左右の側縁部に沿って延びる。側部61c,61dが壁部61jから離間するように延びるに応じて、雌部材6の幅方向における側部61c,61dの間隔が徐々に広がり、続いて、徐々に狭くなる。この間隔の変化点は、スライダー5のフランジ部55の前端に対応し得る。なお、枠本体61fは、必ずしも閉じた枠に限られない。枠本体61fは、部分的に切り欠かれた枠であっても良い。例えば、棒部61kが省略され、枠本体61fがU字状に形状付けられる。
【0043】
雄部材7と同様、雌部材6においても枠本体61fと舌部68の間でスライダー5が挟まれて保持される。雄部材7の枠本体71fと舌部78についてした説明が、雌部材6の枠本体61fと舌部68にも同様に当てはまり、重複説明は省略する。なお、スライドファスナー1において、雄部材7及び雌部材6の舌部78,68は、雄部材7及び雌部材6の下垂部77,67から反対方向に延びる(
図7~9参照)。
【0044】
アーム受容部62は、雌部材6の厚み方向において対向配置された一対の板部、端的には、上板及び下板62u,62dを有する。上板及び下板62u,62dは、スライダー保持枠61の壁部61jから(雌部材6と雄部材7の連結方向に沿って)同じ方向に略平行に延びる。上板及び下板62u,62dによってアーム部72を受け入れる受入空間62mが形成される。受入空間62mは、上板及び下板62u,62dの先端部の間の一つの主開口62m1と、上板及び下板62u,62dの側縁部の間の左右の開口62m2を有する(
図3参照)。
【0045】
上板及び下板62u,62dの対向面それぞれに一対のロック部63p,63q(総じて63)が設けられる(
図4,5参照)。ロック部63p,63qは、雌部材6の幅方向において間隔を空けて配置される。各ロック部63p,63qには、ガイド面63a、ガイド面63aよりも主開口62m1から離れて位置するロック面63bと、ガイド面63aとロック面63bを接続する中間面63cを有する。ロック部63p,63qのガイド面63aは、スライダー保持枠61の壁部61jに向けて主開口62m1から離間するに応じてお互いに接近する。
【0046】
雄部材7が雌部材6との連結のために雌部材6に向けて動かされる時、アーム部72のロック突起73がロック部63のガイド面63aに接触する。アーム受容部62の主開口62m1から離れる方向にロック突起73がガイド面63a上を移動する時、ロック突起73が、雄部材7の中心線CL1に向かって幅方向内側に徐々に変位する。これに応じて、ロック突起73p,73qの間隔が減じられる。ロック突起73がガイド面63aを通過し、続いて中間面63cを通過すると、ロック突起73は、バックル100の幅方向外側に動くことができる。バックル100の幅方向におけるロック突起73の間隔が増加し、ロック突起73とロック面63bが接触又は対面する。雄部材7から離れるように雄部材7を動かしても、ロック突起73がロック部63のロック面63bに接触するため、雌部材6から雄部材7を分離することができない。
【0047】
<第2実施形態>
図10乃至
図12を参照して第2実施形態について説明する。
図10から理解されるように、雄部材7のみがスライドファスナー1のスライダー5に対して取り付けられる。雌部材6は、スライドファスナー1のスライダー5に対して取り付けられず、スライドファスナー1が取り付けられた物品P1にテープ、ベルト又は紐により取り付けられる。第1実施形態と同様、本実施形態においても、雄部材7において、枠部分71aは、ロック突起73p,73qの間の空間SP73に向けて一対のアーム部72p,72qの間で突出する。これによって、雌部材6と雄部材7の連結方向における雄部材7の長さを短くすることができる。
【0048】
図11及び
図12から理解できるように、雄部材7の構造は、第1実施形態で説明したものと同一である。雌部材6については、スライダー保持枠61の代替として、ベルト又はテープといった帯体取付部65を有する。帯体取付部65は、杆部65mと杆部65mの端部を支持する左右一対の支持部65p,65qを有する。支持部65p,65qに対して上板62u及び下板62dが連結される。
【0049】
<第3実施形態>
図13乃至
図16を参照して第3実施形態について説明する。
図13から理解されるように、雌部材6のみがスライドファスナー1の一つのスライダー5に対して取り付けられる。雄部材7は、スライドファスナー1の一つのスライダー5に対して取り付けられず、スライドファスナー1が取り付けられた物品P1にテープ、ベルト又は紐により取り付けられる。本実施形態においても、上述の実施形態と同様、雌部材6と雄部材7の連結方向における雄部材7の長さを短くすることができる。以下、この点について説明する。
【0050】
雄部材7は、ロック突起73が各々に設けられた一対のアーム部72と、一対のアーム部72の各基端部72rを連結する連結杆79を備える。雌部材6との連結又は連結解除のためにロック突起73がお互いに接近するようにアーム部72が撓む時、連結杆79(例えば、一対のアーム部72の各基端部72rの間の連結杆79の中心部)は、アーム部72のロック突起73p,73qの間の空間SP73の反対側に反り出るように構成される(
図14の点線参照)。これによって雌部材6と雄部材7の連結方向における雄部材7の長さL3(
図14参照)を短くすることができる。雌部材6と雄部材7の連結方向におけるアーム部72の長さL3を短くしつつもロック突起73の必要な変位量を得ることができる。なお、一対のアーム部72の各基端部72rの間の連結杆79の中心部は中心線CL1上にある。アーム部72及び樹脂バネ部76の構成については、第1実施形態で説明したものと同様であり、第1実施形態で説明したものと同様の効果が得られる。
【0051】
アーム部72がお互いに接近するように撓む時に中心線CL1上で連結杆79に向かって変位する樹脂バネ部76の底帯の移動距離D2(
図14参照)は、アーム部72がお互いに接近するように撓んでいない時の中心線CL1上の樹脂バネ部76の底帯と連結杆79の距離D1(
図14参照)の2/3以下又は1/2以下であり、雄部材7の小型化が促進される。
【0052】
幾つかの場合、雌部材6と雄部材7の連結方向における連結杆79の長さL79と雄部材7の幅方向におけるアーム部72の幅W72について、0.3<(L79/W72)<2.5を満足する。アーム部72が撓むことと連結杆79が空間SP73の反対側に反り出ることが上手く両立される。連結杆79の非変形時の連結杆79の長さL79は、幾つかの場合、実質的に一定であるが、これに限られず、最大値、最小値、又は平均値が用いられ得る。アーム部72の幅W72は、アーム主部72mの幅であり得る。アーム主部72mの幅W72は、雌部材6と雄部材7の連結方向において実質的に一定であるが、これに限られず、最大値、最小値、又は平均値が用いられ得る。
【0053】
幾つかの場合、アーム部72の幅W72は、0.9~1.7mmであり、及び/又は、雌部材6と雄部材7の連結方向における連結杆79の長さL79は、1.5~2.8mmである。これによって、アーム部72が撓むことが促進され、及び/又は、連結杆79が空間SP73の反対側に反り出ることが促進される。
【0054】
幾つかの場合、雄部材7の幅方向の中心線CL1における連結杆79の断面積は、1.1~1.7mm2である。連結杆79は、一定又は上記範囲内の断面積を有しつつ、アーム部72p,72qの間を延び得る。連結杆79は、矩形状、楕円状といった断面形状を有し得る。幾つかの場合、連結杆79の変形によって生じる連結杆79の曲率半径の最大値は、200~300mmであり、好ましくは、104mm~134mmである。連結杆79の撓み量は、樹脂バネ部76の底帯の撓み量よりも小さい。
【0055】
アーム部72p,72qは、雌部材6と雄部材7の連結方向に延びるアーム主部72mと、アーム主部72mを介して連結杆79に連結し、またロック突起73p,73qが設けられたアーム先端部72nを有する。アーム主部72mは、連結杆79の一端に連結し、アーム先端部72nは、アーム主部72mを介して連結杆79の一端に連結する。アーム主部72mは、連結杆79から離間する方向に連結方向に沿って延びる。アーム先端部72nは、対をなす他方のアーム部72(例えば、そのロック突起73)に向けて幅方向内側に延びる。ロック突起73は、アーム先端部72nの内側端部に設けられるが、この位置に限られるべきではない。ロック突起73同士が所定の空間SP73を空けて隣接配置される場合、雌部材6のアーム受容部62の幅を減じることが促進される。
【0056】
アーム主部72mは、ヒトの指により押され、これによりアーム部72の姿勢が操作される。アーム主部72mが幅方向内側に押されることによりアーム部72が幅方向内側に撓み、アーム部72に設けられたロック突起73が幅方向内側に動く。アーム主部72mは、雄部材7の幅方向において薄く、雄部材7の厚み方向において幅広の平板部分である。雄部材7の厚み方向においてアーム主部72mの厚みが雄部材7において最大である場合、ヒトの指に対してより広い接触面積を提供することができる。
【0057】
アーム部72が非変形状態の時、アーム部72p,72qにおいて、アーム主部72mの延在方向に一致する軸線AX1とアーム部72の基端部72rとロック突起73を結ぶ軸線AX2のなす角θは、0°<θ<80°を満足する。ロック突起73同士が所定の空間SP73を空けて隣接配置され、雌部材6のアーム受容部62の幅を減じることが促進される。
【0058】
アーム部72p,72qのロック突起73の間には空間SP73が存在している。雄部材7の幅方向における空間SP73の幅は、可変である。雌部材6との連結又は連結解除のためにアーム主部72mが幅方向内側に押されてロック突起73がお互いに接近する時、雄部材7の幅方向における空間SP73の幅が減少する。なお、本実施形態では、樹脂バネ部76と連結杆79の間には両者がお互いに接触しないように十分な間隔が空けられている。
【0059】
好適には、樹脂バネ部76、一対のアーム部72、及び連結杆79によって雄部材7が閉じた環状部材に構成される。連結杆79へのテープ、ベルト又は紐の巻付に基づいて物品に対して雄部材7が取り付けられる。雄部材7が環状部材であるため、テープ、ベルト又は紐から雄部材7が外れてしまうことが抑制される。
【0060】
好適には、連結杆79の最大厚は、ロック突起73が設けられたアーム先端部72nの最大厚未満であり、又は、樹脂バネ部76の最大厚未満である(
図15及び16参照)。これによって連結杆79の十分な可撓性を確保することができる。最大厚は、雄部材7の幅方向に直交する方向(例えば、雄部材7の厚み方向)において測定される。明示されない限り、雄部材7の幅方向に直交する方向は、連結方向及び幅方向に直交する方向に限られない。
【0061】
幾つかの場合、連結杆79の最大厚TH79と樹脂バネ部76の最大厚TH76について、0.5<(TH79/TH76)<2.0を満足し、有利には、0.5<(TH79/TH76)<1.0を満足する。幾つかの場合、樹脂バネ部76の最大厚TH76は、ロック突起73の最大厚に等しい。連結杆79の最大厚TH79は、1mm以上であり、5.9mm以下であり得る。
【0062】
<第4実施形態>
最後に
図17及び
図18を参照して第4実施形態について説明する。
図17及び
図18に示すように、バックル100は、スライドファスナー1のスライダー5に対して取り付けられず、バックル単体として用いられる。雄部材7は、第3実施形態で説明したものと同一である。雌部材6は、第2実施形態で説明したものと同一である。第3実施形態と同様、本実施形態においても、雌部材6との連結又は連結解除のためにロック突起73がお互いに接近するようにアーム部72が撓む時、連結杆79(例えば、一対のアーム部72の各基端部72rの間の連結杆79の中心部)は、ロック突起73p,73qの間の空間SP73の反対側に反り出るように構成される。これによって雌部材6と雄部材7の連結方向における雄部材7の長さを短くすることができる。雌部材6と雄部材7の連結方向におけるアーム部72の長さを短くしつつもロック突起73の必要な変位量を得ることができる。
【0063】
幾つかの場合、雌部材6と雄部材7が連結したバックル100の最大長さが、15mm以下である。雄部材の長さの短縮化によって雄部材、ひいてはバックルの小型化を効果的に促進することができる。追加又は代替として、雌部材6と雄部材7が連結したバックル100の最大幅は、15mm以下である。バックル100の最大厚は自由に設定可能であるが、例えば、6mm以下である。
【0064】
上述の説明を踏まえ、当業者は、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0065】
100 バックル
1 スライドファスナー
5 スライダー
6 雌部材
7 雄部材
71 スライダー保持枠
71a 枠部分
72 アーム部
73 ロック突起
79 連結杆
SP73 空間